【一心不乱の】オリキャラウォーズ【大戦争を!!!】2
(イザベラ)
>253
>「いえいえ、立場が上といっても、私はそもそも軍人ではありませんから、まあここでこうしてあなたの兵士に囲まれているのもとても怖いのですが、
>私も2.3.恨まれるような事をしまから本国でもいつどんな輩が策謀をしかけてくるか不安で怖くて仕方がありません。病院に癒しを求めているのかもしれませんね。おっと話がそれてしまいました」
イザベラは腕組みをし、いらだだしげに指でリズムを刻んでいる。先程からずっとこの調子だ。
カァラはのらりくらりと此方の言動をやり過ごし、掴み処の無い雰囲気を醸し出しながら、あくまでマイペースの物事を運んでいる。
>「少しでも負傷兵が少ない方があなたの負担も軽くなるでしょう?
>もしかして、負傷兵を交渉の材料として取って置く事を、患者の治療の効率よりも優先しているのでしょうか?いえ、いえ、あなたに限ってそんな事はないはずです」
「…私だって出来ることなら彼らを本国に帰してあげたいわ。でも、上層部はそのまま彼らを捕虜にし、本国の捕虜収容所に送ることを私達に命令しているわ…
私だって軍人の端くれ。命令は絶対だし、何よりも、指揮官が命令に背く訳にはいかないわ。それに、彼らを独断で引渡したともなれば、野戦病院の補給にも係わってくる…」
この五年間は百年の月日に思えるほど、険しい日々だった…総督府で野戦病院設立に奔走していた時、色々な妨害を受けていたことがあった。
書類通りの予算が下りなかったり、人材を集めようにも上からの圧力があったり…様々な妨害を受けながらも、イザベラは何とか野戦病院を設立したのであった。
既に彼らの陰湿な嫌がらせは嫌と言うほど身に染みている。ようやく設立出来た野戦病院を、彼らに穢されたくは無い。その為にも、イザベラは迂闊な行動を取る事が出来ないのであった。
自分が下手なことをすれば、彼らからしてみれば格好の餌となってしまう。もし、独断で捕虜を逃がしたともなれば…どのような圧力を掛けられるか分かったものではない。
「貴女が考えているほど単純ではないのよ…こっちは。色々と古い御偉方には煙たがれているんだから…」
そう力無く呟くイザベラ。400歳以上という高齢なエルフながらも、若々しい外見を持つイザベラではあったが、その呟きには永い年月を感じさせる重みがあった。
>「先ほどカイザーと言いましたが、あなたはなぜその名前を知っているのでしょうか?。
>それにカイザーと私が同じだというような事を言いました。あなたは今回初めて配備される事になった召喚されし者と知り合いなのでしょうか?」
「ああ…その子は何を考えたのか、単独で野戦病院に来たのよ?しかも正面玄関から…まったく、仮にも敵地のど真ん中だって言うのに…」
溜息と共に、心底呆れたと言わんばかりの顔をする。滅多なことでは驚かないイザベラではあったが、カイザーの奇行には流石に舌を巻いた。
「今頃は野戦病院を後にしているかもしれないわね…私が追い出しちゃったから」
イザベラはカイザーと出会った時の事を思わず思い出してしまい、くすくすと笑ってしまった。
「それと…あの精霊の良からぬ方陣は私が解呪します。それについてはあしからず」
イザベラは衛生白書を手に二言、三言唱えると、空間に白い魔法陣が一つだけ顕現した。
「仲間とは駅で別れろ…朝、街へ入るときは上着のボタンをきちんと留めろ、ねぐらを探せ、たとえ仲間がノックしようとも、いいか、ドアは開けるな…其れよりまず」
イザベラの言霊に反応し、空中に浮かんでいた方陣から白い燐光が漏れ出し始めた。
「痕跡を消せ!…どこであれ、親に出くわしたら素知らぬ顔でやり過ごし、角を曲がれ、気付かぬ振りをして、親に貰った帽子を目深に被れ
…見せるな、いいか、顔は見せるな…何よりもまず」
方陣の中心に、装甲兵が顕現した時と同じように、淡い光を発しながら何かがこの世に実体を持ち始めていた。
「痕跡を消せ!肉があれば其れを喰らえ!取っておこうと思うな!…いいか!痕跡を消すのだ!」
最後の力強い言霊が実体を持ち始めた何かに命を与えた。白い霞であったそれは、はっきりとした実体を持ち、この世に完全に顕現していた。
装甲兵とは違い、それは完全な人の姿をしたものではなかった。背には八枚の光粒子で形成された羽が備わっており、頭部、腕も四つずつある。
更なる相違点は、全身を覆う装甲板には金色の壮麗な装飾が施されており、体を形作る装甲板も薄く、全体的にほっそりとした印象を受ける。
装甲板で形作られた頭部は、帝國軍兵士が着用するフルフェイス型兜に似ており、がらんどうな頭部内には淡くエメラルドに輝く魂魄が見て取れた。
>285の続き
「智天使(ケルビム)…ラジエル顕現化」
四つの頭部に光り輝く輪が出現し、背の光粒子の羽が一層輝きを増した。それは神々しい『天使』そのものの姿であった…だが、神話に登場する天使とは違い、
その外見は無機質なものであった。全身を魔術文字が刻み込まれた魔道装甲板で装甲化され、がらんどうな内部には賢者の魂が封入されているのである。
それは術者であるイザベラの命令を忠実に聞く僕(ゴーレム)であり、魔術による支援と索敵を担当する兵器であった。
聖書に描かれているほど高尚な存在ではないし、血肉の通わない鉄屑にも等しい存在であった。
「ラジエル。命令よ…大型束縛系方陣の解呪を行いなさい」
命令を受けたラジエルは背中の八枚の光粒子状の羽を展開すると、白い軌跡を残して飛び去っていった。
「あとはあの子が方陣の解呪を行うから心配ないわ…それと、貴女が何もせず、且つ捕虜を勝手に引き取らないというのなら、私の客人として特別に当野戦病院に招待します」
カァラに向き直り、にっこりと微笑むイザベラ。
「別に身構える必要はないわ…誰も貴女の命を奪うおうだなんて考えている訳でもないし、野戦病院は相変わらずよ」
イザベラは衛星白書の項を捲り、二言、三言唱えると、周りに控えていた屈強な装甲兵達は淡い光となって送還された。
「ほら…ご覧の通り。私だって貴女と戦いたい訳じゃないわ」
更に、衛生白書もすぅっと消えた。そして右袖を捲くってみせる。イザベラの細い腕には赤十字を表した刻印が彫られていた。
それは衛生白書の普段の姿であり、使用時以外はこうしてイザベラの腕の刻印に戻るのである。イザベラは袖を元に戻し、野戦病院に向かって歩き始めた。
(名無しの看護婦達)
>247
紅羽にファンシー&プリティーな服と、可愛らしい化粧を施し、散々彼を玩具にした看護婦達は満足していた。
持っていたカメラにも色々なポーズの写真を収めることに成功し、後は後片付け…後片付けが終了すれば、又負傷者の治療に繰出さなければならない。
「先生…何時までもめそめそ泣いていないで、さっさと患者さんの治療に行きましょう?」
看護婦の一人が床にぺたんと座り込み、さめざめと泣いている紅羽の傍にしゃがみ込んだ。
「まぁ…ショックだったとは思いますが、過ぎたことは過ぎたこととして……」
そしてごそごそと何かを取り出し、ぽんと紅羽の目の前の置く。
「新しいことに挑戦しましょう」
紅羽の目の前の差し出されたもの…それは女医の服であった。
「はい、これで患者さんの治療をお願いしますね?」
その言葉を合図に、紅羽はまた看護婦達に押さえつけられ、女医の服を着せると、そのまま彼女達は紅羽を治療室まで引っ張っていった。
>287
>紅羽にファンシー&プリティーな服と、可愛らしい化粧を施し、散々彼を玩具にした看護婦達は満足していた。
紅羽はかなりの時間に渡って、女の子の服を着させられて、恥ずかしい格好をさせられてしまった。
しかも、カメラ撮影までされてしまったのだった。
「うっく……酷いですよ……こんなの……。」
紅羽は、恥ずかしさに耐え切れずその場に座り込んでしくしく泣いていた。
確かに、紅羽は他の18歳の男子に比べて、背も低いし、体の線も細くて顔もかなりの童顔だ。
だからと言って、こんな事をされて嬉しいわけがなかった…。
>紅羽の目の前の差し出されたもの…それは女医の服であった。
>「はい、これで患者さんの治療をお願いしますね?」
>その言葉を合図に、紅羽はまた看護婦達に押さえつけられ、女医の服を着せると、そのまま彼女達は紅羽を治療室まで引っ張っていった。
「そ、そんな…!それだけは……恥ずかしくてできな……!わっ!?だ、ダメですって!うわああ!」
結局紅羽は、また何の抵抗も出来ずに女医の服を着せられてしまった。
「い……イヤ……!こんな格好で、患者の治療なんて出来るわけ…!」
しかし、看護婦達は聞く耳を持たない。
(あー……こんな格好を患者さんたちに見られたら……。)
女装趣味の変態と思われるか、女と勘違いされて男にセクハラされるか…。
「……どっちも死んでもイヤだ…。」
>285
> イザベラは腕組みをし、いらだだしげに指でリズムを刻んでいる。先程からずっとこの調子だ。
カァラは ゴーレムに片手をついてイザベラの方を見ながら考えていた
(支配権を奪えるとしたらこの一匹、必要な呪文は2、唱える時間は2秒、
支配権を奪い返されるまでの時間は長くて3秒、その間ゴーレムを暴れさせて時間を稼ぐ…次に目を欺く為の呪文、感覚を狂わせる為の呪文、逃げる為の呪文、ここで攻撃系の呪文を仕掛けたら勝てません、…逃げられたら病院に向かいましょう。やはり気になります)
カァラはいつも危険よりも好奇心が勝ってしまう
(用意している魔法は何かあるでしょうか?
呪符…無し 呪文…無し 魔方陣……魔方陣?)
>「…私だって出来ることなら彼らを本国に帰してあげたいわ。でも、上層部はそのまま彼らを捕虜にし、本国の捕虜収容所に送ることを私達に命令しているわ…
私だって軍人の端くれ。命令は絶対だし、何よりも、指揮官が命令に背訳にはいかないわ。それに、彼らを独断で引渡したともなれば、野戦病院の補給にも係わってくる…」
(予想以上に病院への監視の目は厳しいようです。この人なら書類の改竄や、隠れて医療機具や薬や病人を運んだり、は平気でやっていると思ったのですが…)
(随分大事な事を忘れていたみたいですね…解除しておかなければ……闇の精霊、闇の精霊………闇の精霊、闇の精霊………?)
> 「貴女が考えているほど単純ではないのよ…こっちは。色々と古い御偉方には煙たがれているんだから…」
(なかなかゴーレムを奪うために十分なスキがありません…)
「ほう、なかなか自由には動けないものですね」
(これは先ほどとは違った事を考えているようです、不安な感じではありません…的を外してしまったようです…
(…闇の精霊から反応がありません、どうしたというのでしょうか…これはいよいよ危ないです)
>「ああ…その子は何を考えたのか、単独で野戦病院に来たのよ?しかも正面玄関から…まったく、仮にも敵地のど真ん中だって言うのに…」
>「今頃は野戦病院を後にしているかもしれないわね…私が追い出しちゃったから」
(へええ、何とも無謀な… )
> イザベラはカイザーと出会った時の事を思わず思い出してしまい、くすくすと笑ってしまった。
(さて、今度は笑っています、また的を外してしまったようです…となると何が…)
> 「それと…あの精霊の良からぬ方陣は私が解呪します。それについてはあしからず」
「はは…ばれてましたか」
(ゴーレムを奪うのに始めのに混乱させる呪文という手もありますが…)
カァラはここから脱出し病院の様子を確かめた後、逃亡する計算をしていた
>「仲間とは駅で別れろ…朝、街へ入るときは上着のボタンをきちんと留めろ、ねぐらを探せ、たとえ仲間がノックしようとも、いいか、ドアは開けるな…其れよりまず」
イザベラの言霊に反応し、空中に浮かんでいた方陣から白い燐光が漏れ出し始めた。
「痕跡を消せ!…どこであれ、親に出くわしたら素知らぬ顔でやり過ごし、角を曲がれ、気付かぬ振りをして、親に貰った帽子を目深に被れ
…見せるな、いいか、顔は見せるな…何よりもまず」
(やはり呪文省略の一種ですね、あるいは暗号化の可能性もありますが…)
>「智天使(ケルビム)…ラジエル顕現化」
四つの頭部に光り輝く輪が出現し、背の光粒子の羽が一層輝きを増した。それは神々しい『天使』そのものの姿であった…
(おや、この召喚獣は知っています…)
カァラはイザベラが命令をしているちょっとした隙をついて
ケルビムにちょっとした仕掛けをした
それは単純なセンサーと通信魔法で、ケルビムに闇の気が近づくとカァラに反応を送る仕掛けだ
(ふう、流石にこの状況では複雑なものは組めませんからね、彼女には見つからなかったようです、もし闇の精霊が未だに私の命令を聞いているならば、このゴーレムが魔法陣を破れば、闇の精霊が魔法陣を修復しに来るでしょう、
そうすると闇の精霊とケルビムははち合わせてしまいますから…ケルビムが勝ってくれるといいのですが…)
(あの本を彼女の手から落とすのもいい手かも知れません…算段は整いました、始めますか…3…2…1)
>「別に身構える必要はないわ…誰も貴女の命を奪うおうだなんて考えている訳でもないし、野戦病院は相変わらずよ」
イザベラは衛星白書の項を捲り、二言、三言唱えると、周りに控えていた屈強な装甲兵達は淡い光となって送還された。
(アハ?)
カァラは手をついてよっかかっていた(奪おうとしていた)装甲兵が消えてしまったので一瞬がくっとなった
>「ほら…ご覧の通り。私だって貴女と戦いたい訳じゃないわ」
更に、衛生白書もすぅっと消えた。そして右袖を捲くってみせる。イザベラの細い腕には赤十字を表した刻印が彫られていた。
「ええ、あなたも色々大変なようですし、大人しくしていましょう」
(また的を外してしまったようですね…ところであの本を腕に封印しましたが、あの魔法は知っています…少しアレンジされているようですが
イザベラさんは随分用心深いのでしょうか、それともあの本はただの魔術省略の為のものではないのでしょうか…)
カァラは先ほどのイザベラの不安げな表情をもう一度思い浮かべた
(もしかしてあのとき少し下を向いていたのは本を気にしてたのではないでしょうか…だとすると…)
カァラはイザベラについて病院へと向かった
(…単なる魔術省略以上のもの、という事でしょうか)
カァラは腕に刻印する魔法の解き方を思い出し始めた
>191
(重装騎士隊&軽装騎士隊&竜騎士隊)
スケルトンを徒手空拳とトンファーで次々と打ち崩していくウェシュレイ。彼が舞う度に、骨片となったスケルトンが辺りに降り注ぐ。
彼に限らず、軽装騎士達がスケルトンの戦列の脇を擦り抜ける度に、スケルトンは粉々に粉砕され、後から続くグラズリー率いる重装騎士達によって
骨粉にまで踏み砕かれている。軽重騎士の見事な連携でスケルトンの数は減っていく…この調子でいけば、スケルトンを短時間で殲滅出来るだろう。
しかし、その時であった。
「グラズリー!今ので何体目だ!?」
いつの間にか軽装騎士に混じって戦闘を展開しているグラズリーに話しかけながら、ウェシュレイは前方のスケルトンの集団まで自慢の駿足を活かし、刹那の時間で間合いを詰める。
目の前に突然現れた黒豹の獣人にスケルトンが対処できるはずがなく、ウェシュレイのトンファーの薙ぎ払いでスケルトン達が骨片と化す。
「知らん!こいつらをぶっちめるのに忙しくて数なんて数えてられんわ!」
左手の大型重装甲シールドでスケルトンを払い除け、右手の重斧を打ち降ろす。樋熊型獣人の驚異的な腕力と重斧の重量が相まって、地面ごとスケルトンは断ち斬られ、粉々になってしまった。
「俺は今ので87体目だ!」
新に横合いから飛び掛ってきたスケルトンの側頭部に回し蹴りを放ち、頭骨を粉々に粉砕したところで残った体に正拳を叩き込む。拳がスケルトンの胸骨を真正面から捉え、ばらばらに粉砕した。
「じゃ、ワイは88体や!」
真正面から一斉に襲い掛かってきたスケルトンの一団に、水平に構えた斧の一撃を見舞う。水平に振るわれた斧はスケルトンを尽く、上下に分断し、後から伴ってきた風圧はそれらを吹き飛ばした。
「鯖を読むんじゃねぇ!」
更に新たな獲物を求め、跳躍し、上から一体のスケルトン目掛けてトンファーを振り下ろす。このままいけばそのスケルトンは他の者と同様に、粉々に打ち砕かれていただろう。
>被術者にとっての"最愛の人"に見えてしまう魔法
「!?」
だが、振り下ろされたトンファーはスケルトンの脇を掠め、地面を吹き飛ばしたに過ぎなかった。
ウェシュレイはそのスケルトンの目の前に着地をすると、大きく後方に飛び退いた。そして、徐に兜の装甲ヴァイザーを持ち上げた。
「…ヴァネッサ?」
持ち上げられた装甲ヴァイザーの下から現れたウェシュレイの黒く大きい瞳は、驚愕に見開かれ、彼の猫髭はさわさわとせわしなく動いている。
「…さっちゃん?」
ウェシュレイと同じくして、グラズリーにも異変が起こっていた。彼も装甲ヴァイザーを持ち上げ、そのスケルトンを見た。
「なんでヴァネッサが此処に…」
「なんでさっちゃんが此処に…」
思わず愛しい者の名がはもってしまうが、あまりの衝撃に二人は立ち尽くしてしまった。普通に考えて、戦場という危険な場所に最愛の者がいるわけはないのだが、それさえをも忘れさせるほどの
衝撃を受けていたのである。が…
>192
>するとスケルトンの居る場所が明るく見えた、これで炎スケルトン兵士の完成である
「「燃えた!?」」
最愛の者が自分達の目の前に現れたかと思ったら、急に燃え出し、スケルトンの姿に戻ってしまった。周囲でもそれと同様のことが起こっており、驚きの声が其処彼処で上がっていた。
「…偽者やったんか」
「…だな」
二人は顔を見合わせると、何とも馬鹿馬鹿しい気持ちになってきた。自分達に最愛の者を見せたのはいいが、燃えてしまっては意味が無いではないか?
おまけに、団の全員が様々な(毒ガス、生物兵器、耐熱性など…)状況下にある程度耐えられるような付与魔術が施された鎧に身を包んでおり、僅かに露出している部分(尻尾)
ぐらいにしか火傷を負う心配がない。敵の魔術師は何を遣りたかったのだろうか?
「取り敢えず…」
「なんか腹が立ったな…ワイら、馬鹿にされたんとちゃうか?」
「…だな」
ウェシュレイはグラズリーの言葉に無言で頷くと、トンファーを構え直し、その燃え盛るスケルトンを打ち砕いた。
なんだか白けた空気が場に漂っていたが、はっと我に帰った者達も燃え盛るスケルトンを打ち砕くのに取り掛かり始めた。
(イザベラ)
>290
>カァラはイザベラについて病院へと向かった
大人しく後をついて来ているカァラに対して、大して警戒もせずに呑気に歩いていた。
しかし、ぴたっと立ち止まると、黒い軍服の懐に手を入れ、御札を数枚取り出した。札には聖なる文字が刻み込まれていた。
「少しばかり時間が掛かるけど…外に出てきた序に、これを終らせておかないとね」
二言、三言呪文を詠唱し、御札が淡い燐光を発し始めたところで、それを宙に放り投げた。すると、宙に放り投げだされた御札を
中心に白い方陣が幾つも顕現した。その方陣は召喚獣の召喚を行うものではなく、また別の効力をもったものであった。
「すっかり野戦病院の周りが地獄絵図になっているからね…これはその掃除よ」
白い方陣が、一瞬だけ、収束し、弾けると、雪のように白い燐光となって辺りに穏やかに降り注いだ。
その燐光は周囲に漂っていた彷徨える霊魂達を優しく包み込み、そのまま彼らを冥界へと穏やかに送り出した。
「…人の魂は拘束されているわ。彼らはまた輪廻転生をし、新にこの世に様々な形をもって生まれてくる…私の行為はある意味彼らに対して
拷問にも思えるようなものよ。また苦しみに溢れたこの世に転生させるだなんて、悪魔の所業かもしれない…」
周囲がぬくもりに満ち溢れた燐光によって包まれてはいるが、イザベラの顔は浮かないものであった。
「これも同じ…私が本当に若かった頃、私はまだ魔道の本質が見えてはいなかった……この道に4世紀以上携わって、ようやくその本質というものが
ぼんやりとだけ見えてきたわ…その本質の全てが分かる頃には、私も本当に御婆ちゃんになっているかもしれないわね……」
右袖を捲くり、華奢な腕に刻み込まれた赤十字の刻印を細い指先でなぞる…それはイザベラが背負った十字架。過去に犯した償いきれない罪の表れなのかもしれない。
「さて、もう野戦病院は其処よ…貴女は一応私のお客様だから、私が責任を以ってもてなすわ」
イザベラはカァラに先立って、野戦病院の敷地内へと入っていった。そして正面玄関の階段を上がり、正面玄関から病院内へと入っていった。
結局、治療室につれてこられてしまった。
治療室には、沢山の看護婦さんと、それを上回る数の怪我人がいた。
(うわぁ……何人かこっちを見てるよ…。)
比較的怪我が軽くて、ある程度体の自由が効く怪我人の一部が、
自分の方を見ながらヒソヒソ話をしている。
(気にしない…気にしない…!)
とにかく、さっさと治療を終えて、この部屋から脱出しなければ。
紅羽は、一人の怪我人の元へ行き、怪我の治療を始める。
その怪我人も、こっちをチラチラ見ているが、絶対に気にしない。
目を閉じて、両手を前にかざし、呪文の詠唱を始める。
…しかし、いつまで経っても回復の呪文が発動しない。
「あ…アレ?おかしいな…どうして呪文が……うっ!?」
突然、酷い眩暈が紅羽を襲った。
(…あぁ……そういえば…アレから、全然休んでなかったっけ…)
紅羽は、野戦病院についてから数え切れないほどの怪我人の治療をして、
その後看護婦達にめちゃくちゃにされて、さらにその次はヴェルターと鈴木中尉と戦闘をし、
さらにその後に、また看護婦達にメチャクチャにされて、全く休憩を取っていなかったのだ。
肉体的にも精神的にも限界が来ていた。
「うぁっ…もう、限……界……かな……。」
それだけ言うと、紅羽はその場にバタリと倒れて、静かな寝息を立て始めた。
>252
>「…今度はお年頃の眠り姫でも贈ってあげるわ。忘れてなかったらね」
「期待してる」
ルイは答え、拳銃をホルスターに収めた。
二人を乗せたトラックは他数台の護衛と共に車列を離れ、
道路沿いの木立に隠された地下トンネル入り口へ進入した。
「少し休んだ方が良い、目的地に着くのは夜明け頃だ。
訓練は明日から始まる。僕が教官」
護送車の目的地は、北東に約100km先の軍事施設だった。
ルート27からその施設までを、巨大な地下トンネルが繋ぐ。
「図面やら何やら見せて、その後言うのもなんだけどね。
最初から歩行戦車―『バレエ』に触れる訳じゃない。
予定じゃ二ヶ月は、特殊部隊の入隊教練に参加。
平行して機体操作のペーパーテストもあるから、かなりハードスケジュール」
>238
あれから一体どうなった。確実にあの怪物は殺した。
すると自分は植物の怪物と刺し違えて死んだのか?
いや、そうじゃない。まだ生きているようだ。誰かの声が聞こえる。
ゆっくりと目を開いて真っ先に見えたのはコンクリートの天井。
頭を上げて周囲を見回す。見た限りではどうやら病室らしい。
つまり死なずに治療を行われてまた生きながらえたという事か。
腕には包帯が巻かれており、横には焦げた軍服が畳んで置かれており、
着剣したままの愛用の小銃と略帽、軍刀などの装備もその上に重ねてある。
さすがにあの雑嚢は吹き飛んでしまったらしいが。
「あー……そこの看護婦さん。ちょっといいか?」
ちょうど隣の患者から離れようとしてる看護婦に話しかける。
「仕立て屋を呼んでくれ。私の軍服を一着作って欲しい。雑嚢もだ。
軍服はこれを真似て作ってくれ。雑嚢は…ちょうどこういうものだ」
赤十字のついた野戦用と思われる布製の医療鞄を指差す。
その看護婦はこちらに微笑みかけながら「分かりました」と言った。
畳んであった軍服を広げて階級証を外し、襟の裏を探る。
確かここに自決用の青酸カリの紙包みを挟んであったはずだ。
「軍服が出来たらここに届けてくれ。代金はその時に払う」
さて、それまでには手榴弾で出来た全身の火傷も治さなければ。
早く前線に復帰したいものだ。
>294
車は粛々と走り続ける。先ほどの発砲からはお互い口数が少なくなった。
というより、ガリーナが一方的に会話を許さない雰囲気を作ったと言うべきか。
小間使い程度に見ていた少年が底の知れない人物だと分かった今、彼女ははっきりと警戒の眼差しを送っている。
沈黙が場を支配してもルイの余裕ある態度は崩れない。それがますます不快だった。
ため息をついて荷台の外を見る。長い長いトンネルの中にいた。
>「少し休んだ方が良い、目的地に着くのは夜明け頃だ」
久しぶりにルイが口を開いたが、構わずガリーナはオレンジ色の照明を眺めている。
「何? 別に貴方に気を遣ってもらいたくは―――」
>「訓練は明日から始まる。僕が教官」
ぎぎぎと音を立て、首がルイへ向き直る。
「…くんれん?」
その言葉を聞くや彼女は盛大にゴネだした。
「ちょっと待ってよ!なに、訓練ってことはその兵器とやらの操縦の?しかもあんたが教官? 冗談じゃないわよ…!
私は練習とか講習とか指導とか、とにかくそういうのは一切受け付けないタチなの! 全くもって不必要!」
>「図面やら何やら見せて、その後言うのもなんだけどね。
>最初から歩行戦車―『バレエ』に触れる訳じゃない。
>予定じゃ二ヶ月は、特殊部隊の入隊教練に参加」
「無視かよ! ちょっとマジ!?2ヶ月もあんたの下で特訓三昧? おまけに入隊訓練って…まさか規律ある団体生活ってやつ?
無理!それはホント無理だから!そういう環境だと死ぬから生物兵器って!死ぬらしいから!」
練習嫌いで協調性が無くて、おまけにガリーナは時間にルーズであった。
皆と同じ時間に起きて点呼を取り、真面目に訓練に取り組むなど考えただけでも背筋が凍る。
「どうして、どうして?……それは分かるわよ、漫画の主人公じゃないんだし軍の兵器なんだし、
ある程度制式のカリキュラムをこなせって注文は分かるけど…でもなんで私が…!」
頭では理解している。なぜ私かと問われれば、勿論それは囚われの身である「家族」のためにである。
ガリーナ一人で国境をまたぐことは限りなく不可能に近いし、帝國との激戦地である北方回廊を抜けるとなれば
軍の組織的なバックアップは不可欠だ。だからこれは避けようのない、絶対に必要な代償。
(……ああもう。わがまま言えた身分じゃないってコトぐらい分かってるのに)
2ヶ月で『バレエ』を乗りこなして戦場まで出張り、3人を助け出す。
訓練に参加することは間違いなくパンボリックと再開するための最短距離だった。
「…テレビは見せてよね」
憂いを払って心を鎮め、彼女はようやく腹を括れた。ルイもそれを見て頷いたように見える。
>「平行して機体操作のペーパーテストもあるから」
「あんたさっきから楽しんでない!? ねえ!!」
(シャーリー)
>269
飛空挺が屋上にいささか乱暴に着陸するのを確認すると、待機していた看護婦達が飛空挺から負傷者を運び出すのに取り掛かった。
次から次へと飛空挺の中から負傷者が運び出され、担架や車輪付き搬送用ベットに載せられて、屋上の大型エレベーターで階下の治療室まで降ろされる。
一階の治療室ではこの人数には対応しきれないので、既にもう一つの治療室が用意されており、この負傷者達は其処に運び込まれて手当てを受ける。
飛空挺の誘導を行っていたシャーリーも負傷者の搬送に加わり、応急手当が必要な者はその場で処置し、搬送用ベットに載せて運んでいく。
大体の負傷者の運び出しを終わり、飛空挺内に負傷者が残っていないかを確かめるために、
シャーリーは懐中電灯を片手に薄暗い飛空挺内を探索していた。その飛空挺は喫水が低く、超大型飛竜船と比べれば大した大きさでもない。
負傷者の収容スペースを見回ると、操舵室らしき場所へは直ぐにたどり着いてしまった。
「…誰かいますか?」
返事は無い。しかし、自慢の犬耳を澄ましてみると、誰かの苦しげで弱弱しい呼吸音が聞こえた。
シャーリーは慎重に懐中電灯の光で薄暗い操舵室を探ると、操作盤らしきものの上に倒れ伏している人影を発見することが出来た。
「!?…大丈夫ですか!?」
シャーリーは慌てて倒れ伏している人影の傍に駆けつけた。懐中電灯を当てて分かったのだが、其処に伏していたのは若々しい一人の女性であった。
同性から見ても美しい女性の横顔に、一瞬息を呑んだシャーリーであったが、直ぐに女性を抱き起こして床に仰向けに寝させ、女性の服の胸元を緩め、
幾分呼吸がしやすいようにしてやる。意識が無いのか、女性は無反応であった。しかし、シャーリーはそれに構わず、二言、三言呪文を詠唱した。
直ぐにシャーリーの手は燐光に包まれ、それを女性の額の上に乗せる。そして目を閉じ、精神を集中させる…
「…大幅な魔力の消費。しかも…魂の鼓動が規定値を少しだけ下回っている。このままでは……」
シャーリーが行ったのは、法術を応用した触診であった。
法術によって体中を流れる魔力の流れを読み取り、魔力の流れに何らかの異常があれば、症状や具合の悪いところが早期に発見できるのである。
この女性の場合は、命に係わるほどの魔力の消費であった。直ぐにでも手当てをしなけば助からないだろう。
急いでシャーリーはこの操舵室を後にし、まだ飛空挺の外にいた同僚たちを呼んで、この女性を飛空挺の外に運び出し、階下の治療室へと運んでいった。
(メリィ)
>293
治療室で鬼のように負傷者の手当てを行っていたメリィであったが、紅羽に異変に気が付き、慌てて彼の元に駆け寄った。
「紅羽先生!」
ぴくりとも動かずに床に倒れ伏した紅羽に青ざめるメリィであったが、穏やかな彼の寝息が聞こえると、安堵の息をついた。
「…無理をなさらなければいいのに。全く、困った先生ね」
メリィは白い包帯に覆われた腕を首から吊っている負傷兵に、紅羽を仮眠室にまで運ぶよう頼んだ。
その負傷兵はメリィの頼みを快く引き受けると、紅羽を片手一本で軽々と担ぎ上げ、そのまま治療室を後にした。
メリィはその負傷兵の背中を見送ると、また自分は他の負傷者の治療に取り掛かった。
>292
(え〜っと、なんだっけぇ…あれは確か…)
>ぴたっと立ち止まると、黒い軍服の懐に手を入れ、御札を数枚取り出した。札には聖なる文字が刻み込まれていた。
「少しばかり時間が掛かるけど…外に出てきた序に、これを終らせておかないとね」
「え?ええ、ええ」
カァラはふとイザベラが死霊祓いのお札を持っている事に気付いた
> 「すっかり野戦病院の周りが地獄絵図になっているからね…これはその掃除よ」
方陣を描く為の札が発動して、辺りに白い燐光が散らばるのを見ると、カァラは言った
「地獄絵図…そういわれれば…そうです。私も、戦場に居て感覚が麻痺してしまったのでしょうか…」
辺りに漂っていた死霊の量は確かに多かった。恐らく先ほどの魔術師が呼び寄せたのであろう
> 「…人の魂は拘束されているわ。彼らはまた輪廻転生をし、新にこの世に様々な形をもって生まれてくる…私の行為はある意味彼らに対して
拷問にも思えるようなものよ。また苦しみに溢れたこの世に転生させるだなんて、悪魔の所業かもしれない…」
周囲がぬくもりに満ち溢れた燐光によって包まれてはいるが、イザベラの顔は浮かないものであった
「でも、あなたはそうやってもう一度生を繰り替えさせようとしています。負傷兵を治療してもう一度戦場に向かわせるかのように。なぜですか?」
カァラはとても落ち着いた顔で言った
(ん…死霊の事を生きている私達が気にかけて何になるというのでしょう…)
> 右袖を捲くり、華奢な腕に刻み込まれた赤十字の刻印を細い指先でなぞる…
「魔道の本質…それは私も気になるものです、いや、魔法というものに魅せられた全ての者の命題でしょうか
どうしてこの世界には魔法があるのでしょうね…しかし人間と違ってあなた達はもっと本質に近い位置に居ます…」
カァラはエルフに対して一種のコンプレックスのようなものをもっていた
(なぜ、人間よりもエルフの方が…)
「まあ、その前にこの私が魔道の本質は全て解き明かしてしまうので安心して下さい…」
と、少し力の無い声で言うと、イザベラが腕の赤い十字架をなぞっているのを見ていた
(やはり何かあるようです…)
> 「さて、もう野戦病院は其処よ…貴女は一応私のお客様だから、私が責任を以ってもてなすわ」
「それはそれは、お手を煩わせて申し訳ありません」
カァラはあくまで儀礼的に言った
(ここでは彼女のそばに居た方が安全でしょう…それに…)
「ーよかったら聞かせて下さい、その、ぼんやりと見えてきた魔道の本質と、その腕の赤い十字架について…」
(あの体に物を封印する魔法…珍しいものですが…の解き方を思い出せば、何か面白い物が手に入る、かも…)
カァラはイザベラに付いて病院に入る前に、2.3の簡単な自己防護の為の呪文を小声で唱えておいた
(イザベラ)
>298
>「でも、あなたはそうやってもう一度生を繰り替えさせようとしています。負傷兵を治療してもう一度戦場に向かわせるかのように。なぜですか?」
「結果は分かっているのに、やっぱり目の前で人が苦しんでいるのは放っておけないのよ…嫌な性分だわ」
カァラを案内しながら、イザベラは普通に答えた。その声からして、それには嘘偽りは無いのだろう。
放っておけないから助ける。たとえ結果的にどうであれ、目の前で苦しんでいる人がいれば、イザベラは躊躇う事無くその者を助けるだろう。
>「まあ、その前にこの私が魔道の本質は全て解き明かしてしまうので安心して下さい…」
「あらあら…頼もしいお言葉ね?では、私が皺を気にする年齢になるまでにはその本質とやらを解き明かして欲しいものね?」
カァラの言葉を可愛いものだと思い、くすくす笑うイザベラ。そうこうしている内に、イザベラの私室兼執務室となっている婦長室に着いた。
ドアを開け、カァラに中に入るように促すと、イザベラは部屋の奥にあった別のドアを開けて、其処に消えた。
>「ーよかったら聞かせて下さい、その、ぼんやりと見えてきた魔道の本質と、その腕の赤い十字架について…」
暫くしてから、イザベラは御盆にティーポッドとカップを二つ、菓子を載せて戻ってきた。
「ん〜…駄目。貴女も分かっているとは思うけど、魔術師が独自に作り出した術式や発見した法則は大切なものよ?それを何の苦労もせずに
手に入れようだなんて、虫が良すぎると思うけど?」
応接用のテーブルにお盆を置き、カップにお茶を注ぎ始めた。
「それ以前に、魔術師は知識の交換はするけど、一方的な知識の略奪もとい泥棒は恥ずべき行為よ?貴女も新しい術式や法則をしりたければ、正々堂々交渉してみることね?」
お茶を注ぎ終わると、イザベラはソファーに座ってカップを手に取り、口元に運んだ。
「……う……ん……ここは…?」
目を覚ますと、自分はベッドの上に寝かされていた。
首だけ動かして周りを見てみると、看護婦達が自分と同じ様にベッドの上で眠っていた。
どうやら、仮眠室に運び込まれたらしい。誰が運んでくれたのかは分からないが、運んでくれた人に感謝。
「……あ、そうだ……。」
上半身を起こし、自分の今の格好を確認する。やはり、まだあの看護服のコスプレのままだった。
紅羽は、ベッドの上で座ったまま看護服を脱ぎ、
青色の、膝ぐらいまでの長さの下着と、黒色の肌着だけの格好になる。
あとで、看護婦がいない内に、もう一度待合室に行って自分の白衣や服を回収しなければ。
「さてと……もう一眠りしよっかな…。」
看護服は畳んで横に置き、再びベッドに潜り込んだ。
さっきよりは大分疲れは取れたが、それでも少しまだ体がだるい。
が、その時、紅羽のお腹が大きな音を立てて鳴った。
「……お腹空いた…。」
紅羽は、お腹が空くと絶対に眠れない体質なのだ。
とりあえず、仮眠室から出て(下着と肌着のまま)、食料探しに行く事にした。
仮眠室から出ると、すぐ近くに一人の看護婦がいた。この人に聞いてみるか。
「あ…あのぉ……僕、お腹…空いたんですけど…。どこか、食べる場所ってないですか…?」
一応、遠慮がちに聞いてみる。
>297
「ここ、は・・・・?」
処置を受ける、とは言え目に見える負傷が有るわけでもなく、
召喚された颶風に、この世界の術式が充分な効力を持つわけでもなく。
法術による癒しも、その身に蓄える事の出来る魔力の量が桁外れな颶風に対しては、
穴の開いた水がめに水を注ぐような物でしかなく。
それでも、瘴気渦巻く屋外から、より安定した環境へ移された事により、
消耗よりも自然な回復量の方が大きくなる。
何とか、意識を保つに必要なだけは回復したらしい。
ゆっくりと体を起こし、貧血にも似た眩暈に軽く頭を振る。
手を翳してなおも治療を続けようとする看護士の手を、煩わしげに払いのけた。
「私よりも、重傷の方々の治療を優先してください。少し休めば、何とかなりますから」
この言葉にはウソは無い。
負の魔力・・・・瘴気に晒されるよりは、幾分マナの濃度が低く、精霊も少ない屋内の方が回復は早い。
もっとも回復を助けるのは、より質の近い魔力や生気を取り込む事ではあるが・・・・。
(流石に、怪我人やその治療に当たってる方々からは無理ですよねぇ)
とんとん、と軽く指で頬を叩きながら一人ごちる。
その指に当たる素肌の感触に、顔をしかめてため息をついた。
「困りましたね、この姿では色々と不都合が・・・・」
と呟きかけて、はた、とある事に気がつく。
「と、この世界にはあの御仁はいらっしゃいませんでしたね、そー言えば」
颶風の、いつもの半獣人の姿は、その『ある御仁』・・・・、息子の父親避けである。
理由はそれだけでは無いが、態々半獣人の姿を保つコストには引き合わない些細な物ばかりだ。
まぁ、居たら居たで、今の状態では手っ取り早い『食事』になってもらうだけなのだが。
「自然回復、待つしかありませんかねぇ・・・・」
大きくため息をついて、この姿でも残っている翼をゆっくり伸ばした。
強張っていた筋が、ぎしぎしと軋む。
立ち上がろうとベッドに手を突いて・・・・、バランスを崩して床に転げ落ちた。
流石に、動けるほどには回復していなかったようだ。
「それにしても、普段と違う姿だと勝手が違いますね」
手足の長さも、筋肉の着き方も普段とは異なる。
「やはり、素の姿は脆弱でいけませんねぇ」
・・・・それでも、周囲の、この世界の獣人女性とは対して違わない姿なのだが。
ふさふさとした毛の生えた耳に、すんなりと伸びた獅子の尾。
光の当たり具合で微妙に異なる光彩を帯びる、純白の翼。
額に刻まれた独特の紋章のような痣を、ベッドサイドに置かれた、
同じ紋章の刻まれた金属環で覆い隠す。
「見られましたかね。・・・・まぁ、構いはしませんけど」
八本牙と爪の紋章。故郷の主神との契約の印。
何とかベッドに収まりなおして、所在無げに宙に目を彷徨わせた。
「・・・・ご飯には、まだまだ時間がありそうですよね・・・・」
殆ど、『メシはまだかの?』状態である。
夜明け前という時間と、治療すべき負傷者の数を思い返して、毛布に潜り込み直す。
「では、お休みなさい」
・・・・どうやら、寝なおす事にしたようだ。
行動:看護士を追い払ってから、寝直す。
(名無しの看護婦)
>300
紅羽に話しかけられた看護婦は、仮眠室から出てきた紅羽が下着姿なのには驚いたが、子供の下着姿などは見慣れている。
その看護婦…ゴールデンレトリバーの獣人であるウィッテは五つの子を持つ母親であり、本国に夫と子供を残し、この野戦病院にきていた。
獣人ながらもそこはかとなく漂う大人の女の落ち着いた雰囲気と、イザベラに負けない程の妖艶な肢体は、彼女から母性を感じさせる。
「あらあら…先生、そのような格好では風邪を引きますよ?」
ウィッテはそんな紅羽を微笑ましいものだと思い、その背を押して仮眠室のベットに戻るよう促す。
「お食事でしたら、私が後ほど作って持ってきて差し上げます。先生はその間ベットでお休みになられて下さい」
紅羽が仮眠室に戻るのを見届けると、ウィッテは踵を返して食堂に向かった。今の時間帯ならば、食堂では当番の看護婦たちが
患者の治療に精を出している看護婦達の為の差し入れを作っているだろう。
少しぐらいなら調理場を借りれると思い、ウィッテは食堂へ向かった。
数十分後。ウィッテはお盆の上に湯気の立ち上る皿を数枚載せて、仮眠室に来ていた。
お盆を慎重に運びながら、紅羽のベットの傍に来て、それをベットサイドに置く。彼女が作った料理の内容は、ハンバーグにコンソメスープといった
大抵の子供が喜びそうなものであった。実際、本国の子供達はハンバーグが大好きであった。ウィッテから見れば、紅羽など自分の子供達と大して
変らず、子供達と離れた彼女にとってみれば、紅羽は自分の子供のように可愛い存在であった。
「先生…お料理をお持ちいたしました。お口に合えばいいのですが…」
カァラは久しぶりに見る病院の様子が少しおかしい事に気付いた
かすかな火薬の匂い…攻撃的な魔術の気…
(もしかして戦闘でもあったのでしょうか?)
>「あらあら…頼もしいお言葉ね?では、私が皺を気にする年齢になるまでにはその本質とやらを解き明かして欲しいものね?」
「ええ、御期待下さい。」
(こう言いたいんでしょう、「人間ごとき、しかも共和国の一個人には無理だ、」と…)
カァラはイザベラに付いて婦長室に入り、中を見回すと、椅子に座った
(危険なものはないようですね……そういえば多重時空系における魔力の不完全な流動が魔封核に与える代替的影響の範囲は…)
カァラはイザベラが戻ってきた事に気付いたが、ふと思い付いた新しい考察をメモに取りながら答える
>「ん〜…駄目。貴女も分かっているとは思うけど、魔術師が独自に作り出した術式や発見した法則は大切なものよ?それを何の苦労もせずに
手に入れようだなんて、虫が良すぎると思うけど?」
(…クォートの闇還元による排他的構造に左右される可能性があります…)
>「それ以前に、魔術師は知識の交換はするけど、一方的な知識の略奪もとい泥棒は恥ずべき行為よ?貴女も新しい術式や法則をしりたければ、正々堂々交渉してみることね?」
「いえいえ、個々の術式等は表面的なものです。まあそれも大変興味深いものではありますけど…」
そう言うとカァラは同じ形をした両手に一つずつ、菓子を目の前に持ち上げて、それを凝視している
「見て下さい、この二つ。良く見るとわずかに欠けている所や色が微かに違い、微妙に形が違います…しかし」
「同じ型から焼かれた物である事は分かります、本質とはその型の事では無いでしょうか?」
「いえ、雑多な術式こそがそもそも魔法であり、膨大な量の綴りこそが魔術であり、それ以上でもそれ以下でも無い、という説もありますが…」
「私はその説は嫌いではないんですけどね。」
カァラはこれまで、魔法の為に自分がしてきた苦労の数々を思い返していた。
秘密主義の帝国の研究所で、どれだけ知識を吸収するために努力しようが、術の形式を奪い取ろうが、
結局生まれついて魔法と共にあるエルフにはかなわなかった。
「私はね、イザベラさん、魔法が好きで好きでしょうがないんですよ。まるで飢えている獣のように魔法を欲してる…飢えている獣の目の前に食料があれば、それが他の生命であるからといって躊躇うものではありません
ところで略奪と言いましたか?…光が闇を奪い、水が火を奪う、魔道の本質とは略奪かもしれません…いや、これは案外に面白い発想です」
カァラは手に取っていた菓子を置いて、その事を考えてメモを取りながら語った。
「あなたの言う事ももっともです。私はそういうのが嫌いでしてね、以前は良く本を出して自分の発見したものを少しでも多くに広めようとしたものです。」
「さすがに私も戦時中に敵軍の者から新開発の術を教えてもらえると思っているわけではありませんが…しかしこの魔法という神秘についての思想を語らう事も出来ないのでしょうか…」
研究者らしく、こういう話になるとカァラは熱くなってしまうのだった
>302
>「あらあら…先生、そのような格好では風邪を引きますよ?」
>ウィッテはそんな紅羽を微笑ましいものだと思い、その背を押して仮眠室のベットに戻るよう促す。
>「お食事でしたら、私が後ほど作って持ってきて差し上げます。先生はその間ベットでお休みになられて下さい」
「あ…ハイ、分かりました。」
紅羽は、素直にウィッテの言う事を聞いて、ベッドで休んで待っていることにした。
「何を持ってきてくれるんだろう……楽しみだな。」
一方その頃、帝都病院では…
「あらぁ〜ん……貴方、なかなかイイオ・ト・コじゃな〜い?」
紅羽の助手であるローズは、診察中に逆ナンパをしていた。
「私、今紅羽先生がいなくて退屈してるのヨ……。よかったら、今度デートしない?」
ローズに逆ナンパされている患者は、どうすれば良いのか分からずに困っている。
「はぁ……紅羽先生、今頃どうしてるのかしら…。まさか、野戦病院の女狐どもに良からぬ事をされてるんじゃ…。
きぃぃぃ!紅羽先生の体は私の物なのよ!!」
今度は一人で勝手な妄想を始めて暴走をしている。
「ふぅ……いけないいけない、こんな事じゃ……じゃ、診察の続きを…あら?どこに行ったのかしら?」
ローズのめちゃくちゃな診察についていけず、患者は帰ってしまっていた。
「……そういえば、ローズさん、ちゃんと患者さんの診察してるかな…。」
帝都病院の事を思い出して、紅羽は少し心配なった。
と、その時、ウィッテが食事を持って自分の元へやってきた。
「あっ、来た…!待ってました……あぁ、やっとご飯が食べれる…。」
待ちに待った食事がやってきて、紅羽は嬉しそうにする。
>お盆を慎重に運びながら、紅羽のベットの傍に来て、それをベットサイドに置く。彼女が作った料理の内容は、ハンバーグにコンソメスープといった
>大抵の子供が喜びそうなものであった。
>「先生…お料理をお持ちいたしました。お口に合えばいいのですが…」
「うわ……おいしそう……。それじゃ、いただきます…っ。」
ハンバーグを、フォークとナイフを使って一口大の大きさに切り、口に運ぶ。
熱々で濃厚な肉汁が口の中にいっぱいに広がる。
「んっ…!おいしい…!凄くおいしいです…!」
今度は、コンソメスープを飲む。
「こっちも凄くおいしい……体が暖まります…。」
紅羽は、夢中になってハンバーグとコンソメスープを食べる。
そして、皿にはあっという間に何もなくなってしまった。
「ん……ごちそうさまでした……本当においしかったです。」
紅羽は、ウィッテに向かって満面の笑みを浮かべた。
(>296に追加をお願いします)
「…あ、一つ言い忘れてた。2ヶ月も拘束されるなら食事のことを考えなくちゃいけないんだけど」
どういうわけかガリーナは普通の食事からは一切栄養を取れない身であったために、
命を永らえる代わりの手段として2ヶ月に1度竜を食べ、その骸に残された「竜の魂」を取り込んだ。
その栄養源、竜の生命力そのものと言える「魂」にしたところでいつでも吸収できるわけではなく、
自ら命を閉じた身体―――自殺を選んだ竜の内に眠る魂だけがその対象になった。
故にガリーナの糧となり得たのは、通常は絶対に自害などしない竜種の、その自殺体だけなのである。
「スーパーでポンと手に入る食材じゃない事は分かるけど、他で替えが効くモノでも無いしね…
最低一頭は生きてて健康な竜が欲しいわ。どうにか出来そう?」
出来ないと言われたら基地を抜け出してでも何処からか調達してこなければならない。正に死活問題だった。
>225
「ぐあ!!」「ぎゃああ!!」
ほぼ全方向からと言える攻撃によって次々に兵が倒れていく。
残った兵ももはや突撃どころではない。防戦一方である。
やがて、その兵たちも倒れていく。
役場に全員が立てこもっていれば、もう少し時間が稼げたかもしれないという自責の念が募る。
だが、今は目の前の事態をどうにかしなければ。
「三十秒は待ってもらえるんじゃな?ならば!」
階段を駆け上がり、二階に着いたところで階段を破壊技で破壊しようとする。
降りれなくなるかもしれないが、時間稼ぎ程度にはなるだろう。
>123
>迎撃するつもりなのか、ジェイクは銃をダラリと下げたままライフルに大量のエネルギーを込めていく
「ほう…俺のコレに対して、真正面から受け止めるつもりか?ハハハ、益々その度胸を気に入ったぜ?」
ジェイクのその様子に顎を大きく開いてインゼクトは笑った。
「だが後悔するなよ?これから俺が放つのは<気流>そのものだ…知っているか?高高度を流れるジェット気流は時速300kmにもなるんだぜ?
だが…俺が撃ち出す気流は超音速を越える。超音速を超えた気流は強力な衝撃波を伴い、それを広範囲に渡って撒き散らし、効果範囲上にあるありとあらゆる
ものを吹き飛ばす…こいつは普段の戦闘では仲間を巻き込みかねないし、タメに時間が掛かる。だが、今回ばかりは真正面から受けようだなんて考える奴がいたから、
遠慮なくぶっ放せる訳だ……」
インゼクトは両腕に凄まじい気流の渦を纏っており、あまりの凄まじさのために彼の腕の外骨格に幾つか亀裂が走った。
腕の外骨格に亀裂が走ると、亀裂から赤い鮮血が少し噴出したが、インゼクトはそれに構う事無く更に気流の渦を高めていく。
「うぉぉぉぉぉぉぉっぉぉぉぉぉぉぉおぉぉぉ!!!!!!!」
更に高まる気流の渦が、彼の片方の複眼に亀裂を走らせ、腕の外骨格の一部を剥ぎ取った。だが、それでもインゼクトは高め続ける。
既に彼の足元の地面は気流の渦によって抉り取られ、体を覆っているミスリル製の強固な鎧にも亀裂が幾つも走る。
「…逝くぜ」
インゼクトが静かにそう言い放つと、彼の周囲が暴風だったのが嘘のように、ぴたりと止んでしまった。
微風さえも二人の間には吹いておらず、夜の闇と何処かの草陰で鳴いている鈴虫の澄んだ声が、二人の心に静かに響いていた。
「絶対破風!シュツゥゥゥゥゥウゥゥゥゥゥルウゥゥゥゥゥゥゥゥゥムゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ……」
あれほど穏やかだったインゼクトの周囲が、直ぐにまたあの暴風域と化すが、今度は彼の右手を中心にして気流が渦まいていた。
「ヴィントォォォォォォォォォォオッォオォォォォォォォォォォ!!!!!!!!」
ジェイクとは距離があり、決して届きもしないのに、インゼクトはその場で咆哮と共にジェイクに拳を突き出した。
一瞬だけインゼクトの拳が突き出された空間が歪んだが、その歪みは直ぐに強力な気流となってジェイク目掛けて突き進んだ。
気流は地面は深く抉り、土砂を巻き上げ、周りの建物の壁を一瞬で巻き込み崩した。
巻き込み吹き飛ばされた様々な物体を内包しながら、その自然界には絶対に存在しない強力な気流は、強力な衝撃波を伴ってジェイクを捉えようとした。
>307
「……は、ははは……」
洒落にならん。いや、別に洒落ではなく大真面目なのはわかってはいるが。
気流をぶつける?
大魔法クラス、いや封印指定モンじゃないのかその個人携帯術法は?
「はいはい、やるよ、やりますよ……」
ッゴン!!
一瞬、ジェイクの周りの空間が「反転」した。色がひっくり返り、生から死が溢れる。
辺りの「エネルギー」を一瞬で全て吸い尽くした負荷である。銃が青白く燃え上がり軋みを上げる。
「三番、二番、解除……一番、解除。第三段位戦闘術式発動承認」
身の丈程もある銃をゆっくりと片手で構える。それは別に余裕などではない。
銃にエネルギーを流す上で「直列」では最も適した構え。つまり、最もエネルギーを込めることに特化した構えである。
「………塵は塵に、灰は灰に」
一気に銃が弾ける。銃口からは淡い光弾が放たれる。
それは端から見ればあまりに頼りない魔弾だっただろう。
……だが、それは。一気に巨大な光の盾と化し気流そのものを「消滅」させていった。
「外式防護用魔弾・白式っ!!」
……と言ったわりには、抑えきれるかどうか微妙。
流石に耐えきれないのか、ジェイクの体の節々から血が噴き出し始めた。
>308
>……だが、それは。一気に巨大な光の盾と化し気流そのものを「消滅」させていった
「俺のシュツルム・ヴィントを真っ向から受けるってか!?…いいぜ!そのまま押しつぶしてやらぁぁぁぁぁぁっぁあっぁぁぁぁ!!!!!」
気流を放ち続けている右腕に魔力を込め、更なる力でジェイクを捻り潰そうとするが…
「!?」
突如として右腕に激痛が走った。そして、右腕を覆っていたアーマード・クローと鎧が砕け散り、その下の腕が外骨格ごと砕けた。
「ぐぁぁぁっぁっぁっぁぁぁぁぁぁぁぁぁっぁぁぁ!!!!!!!」
どうやら強力な気流に、放った右腕が耐え切れなかったようだ。クローと鎧、外骨格が砕け散り、その下の筋肉が露出しており、血が止め処なく
流れた。これ以上放ち続ければ腕はもぎ取られるだろうが、昆虫人は数ヶ月程で失った手足を再生できる生命力を持っているので、腕を失うのは
一向に構わない。だが、その間は傭兵を続けることが出来ないだろう。
どちらにしろ、腕には重傷を負ってしまった。流石にこれ以上放ち続けることは出来ないだろう。
「ちっ…運のいい野郎だ」
そう吐き捨てると、気流が急に収まった。
「だが覚えておけ…今度は確実に仕留めてやる」
重傷を負った右腕を庇いながら、インゼクトは装備ポーチから煙幕弾を取り出し、地面に叩きつけた。
「……やぁ、よく来てくれた。まぁ、楽にしてくれたまえ。話は大司教殿から聞いている」
主任参謀の執務室にはこれまでに例がないほどの警備体制が敷かれていた。
「カールハインツ・ミュンヒ司祭とエメリルヒ・ネリーベル嬢」
黒翼の重装騎士団に勝るとも劣らぬ戦闘能力を持っているとされる参謀本部直属部隊の
最精鋭が集うというその厳戒態勢は、主任参謀の執務室に招かれた二人の聖職者のためのものであった。
技術の粋を凝らして製作された剣と全身鎧に包まれた騎士達が、二人の聖職者が不審な動きを見せた瞬間に
首を刎ねるべく身構えている。
「何でも、君達は非常に武芸に秀でており、そのせいか暴力事件を起こすことがたびたびあると聞く」
主任参謀は最精鋭に守られているという安心感から、狂戦士二人を前にしても冷徹な態度を崩さない。
「いや、君達を罰するために呼び出したわけではない。君達を罰するのは教団の仕事だからな。私が今日、君達を
呼び出したのは他でもない。君達には従軍司祭として回廊に赴いて欲しいのだ。何しろ、前線では倫理観も
信仰心も荒んでしまうからな。我々誇り高き帝國軍にはそういったモラルのない将兵は必要ないのだ」
もっともらしいことを語っているが、主任参謀はそんなことを考えてはいない。彼個人ではなく参謀本部それ自体が、
上官の命令に服従する以外のことを兵士達に求めていないのだ。だからこそ、参謀本部は兵士達に信仰を奨励していない。
参謀本部が二人の聖職者に求めているのは、純粋にこの二人の戦闘能力なのだった。参謀本部は聖職者すらも
戦力としか考えていないということである。つまりは、帝國にとって宗教などはその程度の存在なのだった。
「無論、これは私や軍部の一存ではない。大司教殿からのたっての願いでもある。そう、信仰心の欠落した
戦場に迷える子羊達を導く神の従僕として、君達以上の適任はいないと、そう私は聞かされた」
これは半分は本当で半分は嘘だった。大司教が厄介者を抱えていると困っている所に、二人の力に目をつけた
主任参謀が二人を借り受けることができるように工作したというのが事実だった。
つまり、大司教が彼ら二人に期待していることなど何一つとしてないのだ。
実際、主任参謀もこの二人の布教が前線の不信心者達に何らの感銘を与えないことすらも予期していた。
「また、異教徒達が忠勇なる神の従僕達を幾度となく襲うだろうが、その際には聖戦の戦闘に立って異教徒を殲滅して欲しい」
これこそが参謀本部の望みだった。要するに暴走させれば役に立つだろうと考えているのだ。
「では、早速前線に向かってくれたまえ。飛竜の方は手配してあるから、準備が出来次第出発してくれ」
主任参謀は二人に退出を促した。
>309
「……っ!!」
突然気流が止む。
「あら、と……とと…」
気流を受けていた勢いのまま「白式」に弾かれ、後方によろける。
「……敵さんは、撤退、かな?」
腕を押さえて煙幕の中に消えるインゼクトを確認すると、糸が切れたようにその場に仰向けに倒れ込んだ。
「……ふ、はは、ははははははは!!」
笑いが止まらない。死ぬと思った。今、本気を出しても死を覚悟した。
元から死んで、これ以上死なないというのに死ぬ思った。
「いや、いやいや。面白いんじゃないの、本当。まぁさか白式を使わされるとはなぁ」
その白式でもヤバかった。インゼクトが腕を庇わなかったら直撃してた。
……でも、やっぱ駄目か。銃が魔弾に耐えきれずにイカれちまった。
身体も限界。身体機能を維持するには「生命力」が足りない。というかそもそも体中が故障だらけだ。
「とりあえず……寝るか」
もうじき夜も明けるだろう。それまで眠って体力を回復させよう。
目が覚めれば傷は塞がってる。
そのままジェイクは大の字になったまま眠りについた。
>296 >305
血で汚れた図面を取り上げ、表面を軽くハンカチで拭う。
ケージの中は血の臭いで咽返るほどだが、ルイは眉一つ動かさない。
>「スーパーでポンと手に入る食材じゃない事は分かるけど、他で替えが効くモノでも無いしね…
>最低一頭は生きてて健康な竜が欲しいわ。どうにか出来そう?」
「オールド・スクラッチは南方に竜の養殖場を持ってる。
養殖物は見てくれが悪い、でも一応竜だから我慢して。
『自殺』はご隠居連中の研究に期待……ここだけの話、パンボリック氏の対竜兵器を
パックするのが襲撃の目的の一つだったんだ」
兵器研究において、露骨にスタンド・アローンという立場を固持したパンボリックは、
共和国学界のほぼ全域を牛耳るオールド・スクラッチにとって獅子身中の虫も同然だった。
彼の不在は、独立した対竜兵器のシェアを乗っ取るまたとない機会―オールド・ハリーはそう睨んだ。
「食事が隊員と別ならテレビを見る時間も出来るし、返って好都合かも知れない。
他に暇も無いだろうし……」
ルイは図面を畳んでマニュアルのページに挟むと、
「何より、訓練中に吐けないってのが一番良い事だ。
入隊訓練の教官は、隊員が吐いてるのを見ると不機嫌になる。
『演習場を汚すな』ってね。でも多分、君は大目に見られる―女の子だから」
>306
ウィスカーは階段を駆け上がる老兵の背中に、散弾銃の狙いを定めた。
捕虜の引き渡しが終わり、各々の隊員は退避準備に取り掛かっている。
「敵が逃げる!」
散弾は階段の壁に無数の孔を穿つが、狙いが逸れて敵兵には当たらなかった。
ポンプを引き、薬室に弾を送り込んで再度狙いを付けるウィスカーへ、
「深追いするな、ズラかるぞ!」
グリフが声を掛け、階段側に駆け寄る。
>階段を駆け上がり、二階に着いたところで階段を破壊技で破壊しようとする。
階段上の気配を感じ、グリフは咄嗟に仲間の頭を押さえた。
「ヤバい、伏せろ!」
三人と、フロア内に残った他の隊員が一斉に床へ伏せる。
>310
半ば強制的に退出させられた二人は、誰もいない国防総称の廊下に立ち尽くしていた。
「困りましたねぇ…」
黒い神父服に身を包んだ、長身の男が心底困ったといった顔をしながら呟いた。神父服を着ているところからして
その長身の男は神父なのだろうが、神父にしては鍛え抜かれた体躯と彫りの深い精悍な顔立ち、武の道を極める者
独特の落ち着いた雰囲気が彼からはそこはかとなく漂っており、青みがかった黒髪の頭をぽりぽり掻いている。
「ええ、困りましたねぇ…」
その男の言葉に頷くように、その隣にいた真紅の髪をした修道女も言った。透き通るような白磁の肌には腰までもある
真紅の髪が良く似合い、聖なる職につく乙女とあってか、落ち着いた雰囲気を醸し出していた。
程よく肉の付いた肢体は、柔和な雰囲気と相まって、彼女からは聖母か何かを連想させるものがあった。
「大司教様が前々から私達の…その、『もう一つの人格』が引き起こすそういったよろしくない事件で、非常に頭を
痛めているということは聞いてはおりましたが……まさかこういった形で罰を受けることとなるとは…」
何時までも廊下に立っていても仕方が無いので、二人は廊下を出口へと向かって歩いていた。
「ですが、聖職者としては荒んだ魂の持ち主達を救うのもの、また一つの勤めかと思いますが。カール神父様?」
前を歩く長身の神父の引き締まった背に向かって、彼の名を呼ぶ。
「ええ、そうですね。シスター・ネリーベル…我々は死徒、ではなくて神に仕える使徒。神の御言を以ってして、哀れな
盲目の子羊達を救済しなければなりません…その救済の道は険しく、辛いものですから」
後を歩く修道女のネリーベルの言葉に頷きながら、国防総省の広大なエントランスホールを通り過ぎ、正面玄関口の階段を下りようとした時であった。
「お、あ、あ、あ、あ、あ、あ、あ、あ、あ!!!!!!」
カール神父は最初の一段を下りようと足を一歩踏み出したのだが、石畳の僅かな出っ張りにつまずき、そのまま階段を転げ落ちてしまった。
「神父様!」
ネリーベルは慌てて転げ落ちていったカール神父の元の駆けつけようと、急いで階段を下ったが…
「きゃあああああああ!?」
彼女も石畳の出っ張りに躓き、階段を転げ落ちるのではなく、そのまま飛び越して階段の一番下で伸びていたカール神父の上にダイブしてしまった。
何事かと思い、国防総省を出入している職員達が、のびている彼らのその様子を見ようと周囲に少しだけ集ってきた。
二人は完全に伸びており、ぴくりとも動かない。それを心配した集った職員の内の一人が声を掛けようとしたのだが…
「クククククククク……ハハッハハハハハッハハハッハハ!!!!!」
ネリーベルの下敷きになったまま、カール神父は突然、狂ったように笑い出した。神父の突然のその奇行に周りの職員達は驚き、思わず後ずさった。
「思えばいい機会ではないか!?堂々と異教徒共を狩るには丁度いい…」
上に載ったネリーベルを抱き起こし、立ち上がると、気絶しているネリーベルの頬を軽く叩いた。
「起きろ…ウェルヒムネ。大好きな異教徒狩りが出来るぞ?それも大司教様公認でな?」
カール神父頬を叩かれたので徐々に瞼が開き、ネリーベルは目覚めたが、その瞳には先程の穏やかな色とは違った赤が宿っていた。
「そのようね…クルーウェル神父様?早速、異教徒狩りの準備をしなくてはなりませんね?」
ネリーベルは起き上がると、服に付いた土埃を払い落とし、颯爽とカール神父…ではなく、狂信者『クルーウェル神父』に向き直った。
「それでは私の『十六夜桜』を刀鍛冶に取りに行かねばならないな…その後」
「装備の全てを整え、飛竜船に乗り込み、前線に向かって出立すると…嗚呼、早く戦場に行きたいわ。そして思う存分異教徒共を」
恍惚とした表情を浮かべながら、シスター・ネリーベル…ではなく、『シスター・ウェルヒムネ』はクルーウェル神父の手を取った。
「狩って狩って狩りつくし、奴らの屍を戦場に山として積み、鴉共の餌にしてやろうぞ!」
クルーウェル神父はシスター・ウェルヒムネの手を引き、その場を後にした。
>312
>「何より、訓練中に吐けないってのが一番良い事だ。
>入隊訓練の教官は、隊員が吐いてるのを見ると不機嫌になる。
>『演習場を汚すな』ってね。でも多分、君は大目に見られる―女の子だから」
「特別扱いはありがたいわね。是非VIP待遇でお願い」
先ほどからやたらと脅かしてくるルイの皮肉混じりの言葉に、半分皮肉、半分本音の答えを返した。
果たして2ヶ月も窮屈な生活に耐えられるのか…
訓練の辛さもさることながら、期間中のストレスで自分が暴れださないとも限らなかった。
しかし訓練の事以外にも、ルイの話には聞き捨てならない事柄が幾つかある。
一つ目は彼らオールド・スクラッチが竜の養殖に成功しているということ。
竜ほど世界の秩序から力を汲み出し、それにすがって生きている生物もいない。
どちらかといえば竜は環境が破壊されれば自然消滅してしまう妖精の類に近い存在だ。
それが地力の貧弱な共和国の大地で、しかも人間の手によって管理され生かされているとは…
恐らく共和国トップでさえ持ち得ない力を所有していると見て間違いない。
そして二つ目は、彼らが竜を自殺させる手段を考えあぐねていたことだ。
>『自殺』はご隠居連中の研究に期待……ここだけの話、パンボリック氏の対竜兵器を
>パックするのが襲撃の目的の一つだったんだ」
ルイが話したのを聞いて、ガリーナは何故そんな事で悩んでいるのだろうと思った。
どうして? 私がいるじゃない、と。
「 、ふうん、牧場は作れても竜を自決させる技術までは確立していないのね。
でもそれに関しては大丈夫。『スタンプ』がきっと仕留めてくれるわ。
『チャイム』ほどドラゴンスレイに特化した力じゃないけれど問題無いと思う」
それで少し用心して、自分の能力の話は出さないまま、『スタンプ』による解決案だけを述べておいた。
少し考えてみれば、自分が今こうして無事に生かされていることが不思議に思えてくる。
パンボリックの開発した4種の兵器―――チャイム、スタンプ、ペア、ストーリーは
いずれもガリーナ・アウリチカの持つ能力を抽出・単純化して製造されたものであるが…
もしやオールド・スクラッチはこの事実を知らないのだろうか。
知っているのならば、対竜技術を欲する彼らは私を陸戦兵器のパイロットなどにせず
そのまま実験なり解剖なりの対象にしてしまってもおかしくは無い筈だ。
パンボリックがオールド・スクラッチに握られている情報はほとんどゼロに等しいのかもしれない。
薄氷一枚の均衡の中で、パンボリックはたった一人国や研究所と渡り合ってきた。
時に数日間に及ぶ質疑応答や拉致まがいの招集を受けつつ、彼は彼の修羅場をくぐり抜けてきたのだ。
オールド・ハリーらが屋敷に強行突入という現実離れした力技に出てきた理由も、
単にもうそれしか情報を得る手段が残されていなかったからだとしてもおかしくは無い。
(趣味に没頭したり本家から嫌味を言われたり…何考えてるか分からないあのボーっとした顔で
敵を、悪魔を騙しきってたかもしれないわけだ。ジャイ達が愛想を尽かさないのもちょっと納得)
2ヶ月間ルイの下で訓練を続けつつ、彼らがどの程度の情報を持っているのか探れるようならば探りたい。
ガリーナ・アウリチカの目的が一つ増えた。
>315
>「 、ふうん、牧場は作れても竜を自決させる技術までは確立していないのね。
>でもそれに関しては大丈夫。『スタンプ』がきっと仕留めてくれるわ。
>『チャイム』ほどドラゴンスレイに特化した力じゃないけれど問題無いと思う」
「食事事情は問題無さそうだね。ところで」
体をガリーナに寄せると、腰に下げたリボルバーとは別の自動拳銃を懐から取り出し、
弾倉を抜いた上で、それを彼女の膝に置いた。
「聞き忘れてたけど、銃の扱いは大丈夫?
こいつは45口径のオートマチック。少し重いけど、扱い易い」
そう言うとまた別の拳銃を、どこからとも無く取り出す。
「こっちは38口径のリボルバー。ジャムが怖ければ、これにしなよ。
僕は.45のが好きだけどね……38口径は、僕にはいまいち重さが半端なんだ」
38口径を、今度はガリーナの手に握らせて、
「好きな方のヤツをプレゼントしとくよ。
弾は入ってないけど、暇な時はなるべく握っておいてグリップの感触を覚えると良い」
>316
「そっちを貰うわ。ちょうど自分で持ってたのも45口径のセミオートだし」
輪胴式の拳銃をルイに返し、改めてハンドガンを両手で握った。さすがにガリーナの腕力ならば重いという事は無い。
もっともパンボリックの護衛を担当するジャイなどに比べると、彼女が銃に触れる機会は少ないのだが。
「そっちに着いたらウンザリするほど射撃訓練もやらされるんでしょうけど、帝國には銃の効かない敵も多いじゃない?
牛みたいにのんびりした魔法の進歩に比べれば随分早足で改良されてるのに。なかなかどうして追い付けないものね」
共和国軍の武装は、帝國に比べて圧倒的に銃器の占める割合が大きい。
大掛かりな魔法を捨てた共和国が求めた新しい力の象徴とも言えよう。
前線の兵がスナイドル銃で頑張っていた時代は銃の地位も低く、魔法を使えない者が担ぐ武器という意味合いが強かったが
現在では飛躍的に威力や有効射程が増し、利便性・汎用性で一部魔法を凌ぐ所まで迫っている。
それでも鉄と火薬が戦場から魔法を駆逐するまでには至らない。魔力は偉大な力として君臨し続けているのだ。
「世界に魔法なんて無いのなら、きっと話も違ったと思うわ。あんまり非現実的な話をしてもしょうがないけどね」
>317
>「世界に魔法なんて無いのなら、きっと話も違ったと思うわ。あんまり非現実的な話をしてもしょうがないけどね」
「反逆の天使たちは」
38口径を受け取ると、彼は喋り出した。
「神の恐るべき雷霆に対抗すべく、地獄の炎を掘り出して筒に詰める事を考えた。大砲の起源だ。
地中深くに埋もれていた数種の原要素と金属、岩石の鉱脈。彼らは地上の至る場所にそれらを見出す。
反逆者の一隊は硫黄と硝石を火薬に、鉄は砲身や弾丸へと精錬し、また別の一隊は火縄を用意した。
かくして誕生した原初の大砲を以て、彼らは天使の軍勢と対峙する。
悪魔の兵器はその驚異的な破壊力で天使を圧倒するが、最後には全能の神が彼らを駆逐する」
どこか遠い目をして喋り続けるルイは、話の終いにケージの天井へ拳銃をかざして、
「コイツはその、悪魔の大砲のずっと遠い子孫さ。遥かな太古から、神の威光と戦い続けてる」
(名無しの看護婦)
>295
仕立て屋はいないが、それに限りなく近い技量をもった人物ならこの野戦病院には数多く存在する。
その内の一人に任せれば、あの共和国軍のものとも違う軍服の一着ぐらいは直ぐに作ってくれるだろう。
だが、あの患者の火傷は思って以上に酷く、法術による長期に渡る治療を続けなければならない。
それに、一応は共和国の兵士だ。後で病室に戻ったら、もう一人の兵士共々装備を没収しておかなければならない。
カイザーの手術が終了し、そのまま彼は地下病棟の集中治療室へと移された。
容態は安定しているものの、ついさっきまで九割以上の確率で死ぬ体だった。状況が予断を許さないことに変りはない。
ネクロマンサーの話によれば、何やら危険な男だというらしいが、内臓は酷く疲弊しきっており、骨や筋肉だってついさっき修復が完了したところだ。
脳にだって疲労が蓄積しており、常人ならば数週間は目覚めないだろう。そんな容態の患者に拘束具を使用出来る訳が無い、というか、使用する
必要が無い。そういうこともあって、カイザーには特にこれと言って特別な処置は施してはいない。
カイザーが万が一に目覚め、起きて病室を出ようと思えば出れるかもしれないが、生憎と病室には回診に来る看護婦以外が立ち入れないように、鍵が掛けられている。
装備品も没収し、あの共和国兵士と同様に、他の場所に厳重に保管されている。容態が回復次第、彼はとあの共和国兵士二人は本国の捕虜収容所に送られるだろう。
>303
「魔道について語らい合うのも悪くは無いわ…でも、たまには魔道から離れてみるのもいいわよ?離れてみて新に発見出来る
ものも沢山あると思うわ。四六時中噛り付いていると、逆に視野が狭くなるものよ?」
イザベラは口元のカップをことりとテーブルの上に置き、大きく溜息をついた。
「私のようになっては駄目よ…私のようになれば当たり前の幸せに安寧出来なくなるわ。私のように、魔道に取り憑かれ、その魂まで
供物に捧げてまでもこの…」
右袖を捲くり、赤十字の刻印を指でなぞると、テーブルの上に純白の表紙で覆われた大辞典サイズの魔道書が顕現した。
「衛生白書の原本、『死霊療法』と契約をするだなんて、狂気の沙汰よ…今の私の手元にその『死霊療法』は存在しないわ。
何重にも封印を施し、とある秘密の場所にあの禁忌の集大成は秘匿してある…あれは人がこの世に生み出した狂気の産物。東方大陸の
半数を不毛の大地に変えたのも、あの『死霊療法』に記されている内の一つの呪法とも言われているわ…でも、私には一つだけ分からないことがあるわ」
衛生白書を手に取り、ぱらぱらと何気なく項を捲るイザベラ。
「これの原本である『死霊療法』…本当に人の手によって製作されたものなのかしら?あの一目見たら忘れなれない禍々しい綴りが、本当に人の手で著せるの?
私は違うと思うわ…あの魔道書を綴ったのは恐らく人では無い『何か』よ。人でもなければエルフでもない。その『何か』が『死霊療法』を綴り、この世界に落としたのよ」
ぱたんと衛生白書を閉じ、テーブルの上に置く。
「…私が『死霊療法』と出会ったのはほんの偶然に過ぎない。いいえ、その偶然も誰かの手によるものなのかもしれない…衛生白書に記されている召喚獣の術式の
一部は、『死霊療法』に記されているものを私が独自に改良したものよ。元のままでは強力すぎて私の手に負えるものではなかったわ…それが何百項に渡って記されているのよ?
狂気の沙汰ではないわ…狂っている。狂っているわ、そんな魔道書が存在していること事態が在り得ない。この世界にはあってはならない要素よ」
そう言い終わると、イザベラは力無くソファーにもたれ掛り、指を鳴らした。指を鳴らすと、衛生白書はすぅっと掻き消え、元の刻印に戻った。
「私は怖いの。それがこの世に存在すること事態に恐怖し、戦慄を覚えているわ…貴女は喜びそうなことかもしれないけど、圧倒的過ぎる存在がたとえ自分の手元にあるとするならば、
それは恐怖すべきことよ…出来ることならば私は『死霊療法』との契約を断ち切りたい。でも、それは無理な話……私はそれに恐怖している反面、心の何処かではその存在に狂喜しているの。
手放したくても手放せない…嫌ね。魔道なんかに手を染めず、学校の先生にでもなっていれば良かったわ…」
後で結っている髪の髪留めを外すと、墨を流したかのように艶やかな黒髪がふわりと広がった。イザベラは解いた髪の毛を指先に絡めて玩び、気だるげな表情を浮かべていた。
(ウィッテ)
>304
紅羽の無邪気な笑顔が、本国に残してきた幼い子供達のそれと被って見えた。ウィッテはそれに一瞬、胸が痛くなった。
幾等人の命を救うという崇高な任を帯びている仕事とはいえ、自分には幼い子供が五人もいる。皆まだ十にも満たない子供だ。
夫は帝國軍の教導部隊に所属しており、本国で犬型獣人の新兵を鍛えている。夫も新兵の訓練で忙しく、家にあまり帰ることがないので、子供達の
世話は自分の年老いた母親に任せている。子供達は母に懐いてはいるが、心の何処かでは両親である夫や自分に甘えたいのだろう。
甘えたい盛りだというのに、それに応えられない自分には時々堪らない程の嫌悪感を抱くこともある。夫も同様に、仕事が忙しいことで子供達を
構ってやれないことに苛立ちを募らせていた。自分も夫も、自身を歯痒く思っており、堪った自己嫌悪は夫婦喧嘩へと発展し、戦乙女に来るときには
夫婦仲は最悪。半ば家を飛び出すという形になってしまった。此処に来てからは手紙などで一回も夫とは連絡は取り合ってはいない。子供達の様子は一向に分からなかった。
出来ることなら、今すぐ本国に帰って夫と仲直りしたい。このような喧嘩ならば学生時代に何度もやったし、仲直りしては愛を深め合っていった。またあの頃と同じように、夫と仲直りし、
愛し合ってみたかった。そして子供達は優しく抱き締めてやりたい。ろくに構ってもやれない自分を許してはくれないかもしれない。だがそれでも子供達に会いたい。
会って抱き締めてやりたい。優しく、優しく、今までの空白を埋めるかのように……
気が付けば、自分は紅羽を優しく抱き締めていた。紅羽の無邪気な笑顔が子供達のそれに被って見えていた時には、既に彼の子供のように小さな体に手を回していた。
「あ…」
視線を落としてみれば、自分の胸に紅羽の顔が埋もれてる。獣人の女(牝)らしく、子に乳を与えるという機能に特化した自分の胸は大きく、紅羽の小さな頭は埋もれて見えなかった。
慌てて抱き締めていた腕を放したが、どうにも衝動的な行動をしてしまった後というのは気恥ずかしいものである。人間からみれば分からないかもしれないが、今の自分は顔が真っ赤だ。
「す、すみません…」
謝ってみるが、謝れば余計に先程の気恥ずかしさが込み上げてくる。自分の尻尾はしゅんと垂れている。
「先生がその…つい可愛かったものですから。本国に残してきた子供達と重なって見えてしまいました…すみません」
>322
>気が付けば、自分は紅羽を優しく抱き締めていた。紅羽の無邪気な笑顔が子供達のそれに被って見えていた時には、
>既に彼の子供のように小さな体に手を回していた。
「んむっ!?んんん――――――!!!」
ウィッテに抱きしめられ、息が出来なくなった紅羽は、足をバタつかせる。
ウィッテの胸に埋まっていて分からないが、紅羽の顔は真っ赤になっている。
>慌てて抱き締めていた腕を放したが、どうにも衝動的な行動をしてしまった後というのは気恥ずかしいものである。
>人間からみれば分からないかもしれないが、今の自分は顔が真っ赤だ。
>「す、すみません…」
「ぷはぁっ!」
ウィッテの腕から開放されて、大きく息を吐く。そして、一度深呼吸をする。
「ど…どうしたんですか?いきなり…。」
>「先生がその…つい可愛かったものですから。本国に残してきた子供達と重なって見えてしまいました…すみません」
「あっ……。……あの、僕なんかで良かったら……お子さんの代わりに…なりますよ。
……代わりになれるかどうか…自信は無いですけどね、アハハ……。」
紅羽は、照れくさそうに頬を掻きながら、そうウィッテに言った。
ウィッテの、子供に会えなくて寂しいという気持ちは自分も何となくなら分かる。
責めて、自分が代わりになれれば……そう紅羽は思った。
324 :
名無しになりきれ:05/03/07 04:29:38
>218
(ハインケリス)
>ルシカの闘気を纏ったドラゴン像は本物の竜にも似た咆哮を上げながらハインケリスへと向かって行く
「この気…竜の者か」
装甲ヴァイザーの限られた視界一杯に、ルシカがぶん投げたドラゴン像が迫ってくる。だがハインケリスは眉一つ動かさず、あくまで冷静に対処をした。
構えていた長槍に魔力を込め、竜騎士が竜の御霊に助力を請うための呪文を詠唱する。直ぐにこの周辺を漂っていた太古の神竜の御霊がそれに応えた。
「来たれ、誇り高き神の徒にして友である神の竜…我が名はハインケリス。汝らの御霊と共にあることを望む者なり…」
ハインケリスの体を包み込むように、真紅の神竜のオーラが出現し、それが彼の強靭な脚力に収束されていく。
「竜は高貴なる神の徒だ!貴様のような小娘如きの矮小な体に流れていい血ではないのだ!」
そして眼前に迫った像に対して、急降下したまま縦に一回転し、踵落としを竜の像の顔面に決める。重力による落下エネルギーと回転による遠心力で、凄まじい程の破壊力
を伴った踵は易々と像の顔面にめり込み、踵御年で軌道を逸らされた像は地上に落ちた。
ハインケリスはそのままルシカ目掛けて長槍を繰出そうとしたが、思い直してルシカの頭を足場にし、再び空中へと跳び上がった。
(竜騎士隊)
「その程度の障壁で我等の一撃を防ぎきれると思うな!」
カモシカ型獣人の竜騎士がそのまま障壁目掛けて長槍を繰出す。長槍にはハインケリスと比べれば見劣りする神竜の魔力が込められていたが、それでも神竜の魔力の一撃には
変りはない。障壁と繰出された長槍の矛がぎりぎりとせめぎ合う。
他の竜騎士達も障壁を突破しようと、障壁にそのまま急降下による長槍の一撃を繰出し、せめぎ合っていた。
>318
ルイは人間が築き上げてきた火薬や銃の技術―――人の文明を反逆と呼んだ。
言われて見れば神話の中で人間に火を授けた巨人も、天から反逆者のそしりを受けていたか。
>「コイツはその、悪魔の大砲のずっと遠い子孫さ。遥かな太古から、神の威光と戦い続けてる」
「悪魔…悪魔ねえ。個人的には私、この世に悪魔だなんていやしないと思ってるんだけどね。
どんなに悪い奴でも災いだけをもたらして生きることは不可能だもの。絶対にどこかでボロが出る。
だから世界に許せない奴なんて一人もいないわ。竜だけはどうにかしてあげなきゃ気が済まないけど、あれも愛。
こんな風に生まれてきた自分が好きだし研究所のジイサンたちは素敵にイカしてるし、ルイも好き。
敵だ味方だって目をギラギラさせてるのもそれはそれで格好良いけど…世界はもっといい加減に出来てると思うわよ」
ガリーナは別段誰を恨んでいるわけでもないが、誰に対してでも躊躇なく暴力を振るった。
また何を憎んでいるわけでもなかったが、あらゆるモノを戯れに人に変え、周囲の人間を怯えさせた。
彼女のソレは人間の感情に起因する行動では無かったのかもしれない。人に理解できる域では無かったのかもしれない。
その灰色の瞳からどんな世界を見ているのか、誰にも知る術は無かった。
「―――ふう。あなたの言う通り少し眠ることにするわ。到着したら起こして頂戴」
先程軍服が届き、火傷をした手足もどうにか動かせるほどになった。
まだところどころ痛むがこの程度の痛みならばどうにか歩ける。
ここは赤十字だろうと敵国の指揮下にある病院だ。
入院している共和国の負傷兵が捕虜収容所に送られる事は明白である。
だが、誇り高き皇軍軍人としてそれだけはあってはならない。
その為にも同室の歩ける共和国兵に頼んで院内の見取り図を手に入れた。
さらに彼は警備兵の巡回メモも休憩中の兵士から盗んだそうだ。
そろそろ他の病室の明かりが消え始めた頃だろうか。
後は逃げるだけだが、しばらく待って朝方の警備兵の交代を狙うべきだろう。
部屋に看護婦がいないことを確認し、素早く軍服へと着替えて雑嚢と小銃を背負う。
そして軍刀と南部式を腰に下げて階級証と青酸カリを襟に戻して略帽を被った。
自身の準備は終了したが、あのドイツ兵は誘うべきか。
彼の状態は酷すぎる。このまま入院させておくのが彼の為かもしれない。
だが、一応話すだけ話しておいたほうがいいだろう。
他の患者を起こさぬように警戒しながらドイツ兵に近付く。
「おい、まだ起きているか?私は今日ここを脱出する。貴官はどうするか?」
>327
>「おい、まだ起きているか?私は今日ここを脱出する。貴官はどうするか?」
「…あんたは頑丈だな?ヤパーニシュ・ゾルダートはみなサムライだとは聞いていたが…いやはや、ゲルマン戦士の俺もお手上げだよ」
ベッドに横になったまま、首を僅かに動かして鈴木中尉を見る。ヴェルターは苦痛に顔を歪めており、一語一句話すのも辛そうだ。
「しかも俺の装備は全部取り上げられちまっている…何にも残ってないぜ?逃げてもあんたの足手まといだ…俺は俺で何とかやるよ」
最後の方は掠れてしまった。ヴェルターはそう言い終わると、中尉に背を向けるようにして寝返りを打ち、瞳を静かに閉じた。
「死霊療法…」
カァラはちょっと熱くなり過ぎたのか、それとも先ほどからの疲れが出たのか、椅子にゆったりと深く腰掛けて、イザベラの話を静かに聞いていた(おや、ミカエルから闇の信号が来ている様です…)
「その名前、一度だけ聞いたことがあります…。」
カァラはメモをしまうと衛生白書を手にとってその表紙をまじまじと眺める
カァラはその伝説の書の複製…複製でさえ、これは共和国の国立研究所が血眼になって探しているほどのものである…が今自分の目の前にある事が半ば信じられなかった
「その複製…てっきり単なる呪文省略用の書かと思っていました…いや、複製といってもこの本からも強力なものを感じます、」
衛生白書が消えると、先ほどの菓子を口に運びながら話し出した
「昔、私がまだ共和国の研究所に居た頃の話ですが、同僚―ラプラスという名の男でしたが―がいました。モグモグ」
カァラは菓子を飲み込むと、一呼吸置いて再び話し始めた
「彼はその、古い術式の研究をしていました。
で、ある日を境に何か徹夜で作業しているようになって、顔はやつれ、目は乾き、その内研究所にも暫く来なくなりました―もぐもぐ」
カァラは菓子を飲み込むと、再び話し始めた
「で、久しぶりに研究所に顔を見せると、デスクの書類を引っ掻き集め鞄に詰めて、すぐに出ていきました。その時こういう言葉を残しました『少し出かける、死霊療法…に鎮静剤を処方してくる』
それ以来彼は研究所に姿を見せず、全くの行方知れずです」
菓子を食べるのを止めると、フードの縁からイザべラの目をじっと見て言った
「私はそれが何の事だか今ようやく分かりました
東方大陸に大いなる打撃を与えし一冊の書、魔道の本質は…」
(ラプラス…記憶の奥に終いこんでいたのに)
途中で言いかけてやめた
「私にもそんな偶然が迷いこんで来るのを楽しみにしていましょう…言っておきますけど、先生っていうのも大変なものです」
カァラはイザベラの腕の十字を見て、身体に物質を封印する魔法の解き方を思い出した
(相当な準備が無いと解くのは無理そうです。今は諦めましょう…)
カァラはふとここにカイザーという召還者が居るかもしれないという事、それから病院の中の火薬の匂いの事などを思い出し、メモ帳を取り出してちょっとした呪文を書いた
日が登り、長距離転位の魔法が使えるようになれば、イザベラの目から逃れるつもりだ
(ここの中ではイザベラさんも強力な魔術は使えないでしょうし、少しは軍部の方にお土産を持って帰らないと、元帥の目の熊が増えてしまいそうですし…)
≪聞いてるか?聖闘気というのは感情の源である“闘気”と心の力である“聖なる魔力”の二つが組み合わさる事で始めて使用できる代物だ。
この高等な技を扱う事が出来ればお前の聖騎士としての力も数段・・・いや、数倍にアップすると言っても過言じゃない。
だが、便利な反面、その為に習得するのはかなり手間取るだろう・・・まあ、高級クラスの聖騎士になれば誰でも使っているがな。≫
「・・・で、俺にその聖闘気を扱えと?」
≪おお、物分りがいいじゃないか。≫
カイザーは当然とばかりに呆れたような表情をして腕を組んだ。
「それぐらい分かりますよ。何年 貴方の弟子をやっていると思ってるんですか?」
≪よし、それじゃあ修行を始めるぞ。≫
「はーい、それじゃあ俺はどうすればいいんです?・・・いつぞやように熊やら猪やらが修行相手なんて嫌ですよ。」
≪(・・・カイザーの潜在能力は計り知れない。俺が鍛えてやれば、俺達・・・三聖を越えれるかもしれない)≫
ブレンテルはカイザーの話を聞いていない。何か物思いに耽ったまま遠くの空を見つめている。
「聞いてるんですか師匠?まだ痴呆が始まるのは早いですよ」
ブレンテルはクルリとカイザーの方へ振り向くと、口元だけに笑みを浮かべて話しかける。目が笑っていないから怖い
≪・・・安心しろ、今日は俺が直々に稽古をつけてやる。ありがたく思うんだな≫
「・・・マジっすか・・・」
ガックリと項垂れるカイザー、どうやら今日の修行は長く辛くなりそうだ・・・
「ギ・・・ギブギブ、ギブアップですって師匠!・・・・・・・・・・・っ!?」
けたたましい寝言と共にカイザーは目を覚ました。その目の先に映るモノは夢の中の景色とは違い、無機質の壁に囲まれた室内であった。
「懐かしい夢を見ていたようだな・・・なんで俺がベットの上にいるんだ?確か、あの男と交戦した後はヴェルターを追う為に病院に入って・・・
・・・その後の記憶が曖昧だな・・・とりあえずここは野戦病院のようだな。という事は気絶をした後に治療をしてもらったんだな。」
カイザーは辺りの様子を確認する為にベットから立ちあがろうとするが、右足に力が入らずに寝返りをうつだけの形になってしまった。
(無理もないな・・・さっきの戦いで右足の傷が酷かったからな。まだ回復が完璧ではないのだろう。)
カイザーは自分の右足の様子を確認する為に自分の布団を捲り上げた。
案の定ギブスでガチガチに固められている。良く見ると身体のあちこちに包帯が巻かれていた。
(俺って大変な戦いをしてきたからな・・・これぐらいの傷で済んで幸いだったかも・・・・・・あれ、俺の剣と鎧がないぞ・・・?)
現在カイザーは薄手の布で作られた服を上下に着ている。
その風貌はどう見ても普通の青年で、とてもではないが聖騎士とは想像がつかない。
カイザーは武具を探すが見つからない。気絶している間に何処かへ持ってかれたようだ。
(まあ、鎧は鉄製の安物だからいいが・・・あの剣を勝手に使われたら大変だ。
あれは普通の剣じゃないから・・・ったく、誰かが勝手に使って怪我人が出ても俺は知らないぞ・・・)
カイザーはまるで他人事のように装備の事を考えている。剣自体の心配はしていないようだ
(それはさて置き、これからどうするか・・・いくら病院と言えども、ここは帝國軍の基地だ。
あまりボヤボヤしてると危険かもな・・・とは言え、あまり迂闊な行動に出るとすぐに駆け付けて来るだろう。)
今後の作戦を練るが、浮かんでくるモノはどれも得策とは言えないようなモノばかりである。
(・・・とりあえず、この病院内に俺の力を感じる事の出来る奴が少なからず存在している事は確かだ。
俺の行動を知られない為にも、この病院内にいる間は力を抑えておくか・・・)
カイザーは心を集中する。するとカイザーの気配と聖なる力が波を引くように感じられなくなる。
(・・・俺は思ったように動けないから、明日はゆっくりと入院気分を味わうとしますか。・・・実際はこんな事してる場合じゃないだろうけどな。)
何もすることが無い為、カイザーは目を閉じながら今までの事を思い出していた
(今日は色々あったな。まさか冒険中に召喚されるとは思ってなかったからな・・・それにしてもあの男の巨大魔方陣には驚かされたな。
世界が違うと人の戦法も変わってくるんだな・・・・・・まずこの世界に慣れる事が先決だ。そうしなければ俺の技も最大限に生きてこない)
つい先日まで、帝都病院の一室に、アイシアという女魔法使いが、産後の体力回復のために入院していた。
何でも、その召喚獣(決して獣などではなかったが、便宜上こう呼んでおく)は、妊娠した状態で召喚されたのだそうで、
しかも呼び出された直後に陣痛が起こって病院に運ばれ、そのまま元気な女の子を出産したのだそうだ。
戦力にするために召喚したのに、それが暫くはまともな戦力にならないうえに、乳児などというオマケが付いてきたので、
召喚を命じた軍の上層部はたいそうご立腹だったそうで、召喚師一同は小一時間こってり絞られたという。
まあ、具体的に誰を召喚したいとか決めていたわけでは無かったので、召喚師達を責めたところで仕方が無いのだが。
あの波乱に満ちた日の数日後、例のこってり絞られた召喚師達のうちの一人が、親切にもアイシアの見舞いに来た。
意外と若い男で、人の良さそうな顔をしており、アイシアは好感をもったようだった。
「どうだ、もうすぐ退院できそうか?」
「ああ、大丈夫だよ。もう、すぐにでも退院できそう。此処にいながら戦場に貢献できないこともないけどね」
聞く話によると(本人が言っていただけなので、どこまで本当かは定かではないが)、彼女は何百年も生きた大魔法使いなのだそうだ。
戦場には既に何体かの戦闘用の使い魔を送ったのだそうで、それが戦場で活躍しているとなれば、なるほど、病の床に伏しながらも戦場に貢献しているとも言えなくもなかった。
もちろん、病の床と言うほど深刻なものでもなく、単に産後で体力が落ちているだけだが、それでも戦場に行くには早かっただろう。何より、彼女の子供の面倒は誰が見るのだ。
「そうかそうか。いやー、ちんちくりんのくせに、よく頑張ったもんだ」
「ちんちくりんって言うな!」
ちんちくりんという指摘はあながち間違いではないかも知れないが、それを彼女に面と向かって言って、酷い目にあわなかった者はいないとされている。
案の定、しっかりと根に持ったようで、アイシアは早速相手に呪いをかける準備をしている。
余談だが、彼が見舞いに来るよりも前に、この召喚師の上司にあたる軍の上層部の人間が、召喚獣と召喚師との契約に関する注意事項などを言いに来たこともあった。
そのため、アイシアも、相手を殺してはいけないことを十分にわかっているので、いつものようにやりすぎたりはしない。
「悪い悪い。ところで、もう子供の名前は決めたのか?」
「もちろん!生まれる前から決めてたんだから。この子はアンリ。誰が何て言おうと、ね」
生まれる前から付ける名前を決めていたという彼女は、よほど子供が生まれるのが楽しみだったのだろう。
この様子だと、元の世界では、さぞ幸せな生活を送っていたに違いないと、この召喚師は想像したものだったが、現実は案外そうでもなかったりする。
さて、彼女に子供を産ませた張本人までもがこの世界に召喚されたわけではなく、当然ながら、この子を引き取って育ててくれるような知り合いがこの世界にいる筈もない。
まして、戦場で命懸けの戦いをしながら子供の面倒を見るなどという非常識がまかり通るわけがない。
そこで、退院した後、子供の面倒を見てくれる親切な人を探すまでは、戦場での活動は使い魔に任せることを決めていた。
儀式からちょうど一週間後に、アイシアは無事退院した。
今は、帝都の某所にある図書館にて、元の世界で書いていた本の続きを書きながら、軍からの命令を待っているという。
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やはり彼は来れないようだ。まあ、無理に連れて行くこともあるまい。
それに無理に連れて行こうとして看護婦に見つかれば困る。
もしそうなれば、不本意ながら銃を使う事になるだろう。
「……それでは少々時間稼ぎを頼んでも構わないか?
あまり早く追って来られたらまずいのでな。
私の布団に枕でも詰めて、居ないことを悟らせないでくれ」
ドイツ兵と例の負傷兵に敬礼しながら言い、そのまま病室を出た。
警備兵を警戒し、見つからないように廊下を走る。
見取り図によれば近くに使われていない倉庫があったはずだ。
そこに隠れて警備兵がいなくなる夜明けを待とう。
「……ん」
暗闇の茂みの中、ジェイクはゆっくりと目を覚ました。朝にはまだ早い時間帯である。
「……傷は、まだ塞がってないか」
身体のあちこちがまだ裂けたままだ。出血は止まらない。
…常人ならすでにショック死しているような傷だ。
「さて、と」
バイクを放置していた場所へ戻る。先の戦闘でバイクは見事に潰れていたがトランクは幸い無事だった。
火器と弾薬、そして小道具が乱雑に入ったトランクから45口径の大型自動拳銃を二丁と狙撃用半自動ライフルを取り出す。
……壊れていないか作動を確かめて拳銃を両脇のホルスターに、ライフルを肩に担ぐ。
慣れた手際で弾薬をサイドパックに移し、小道具が入った小型のバックパックを背負う。
……近くに、帝国側の拠点があるはず。
とりあえず現時点の目標はそこ。
余計な荷物を持たず、余計な戦闘をせず、余計なことは考えず。
自分のジョブをこなそう。
永く愛用している黒染めの長銃剣を手に、ジェイクは廃村を後にした。
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l: lソ::, vv`、l / ハレiル、
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ヒ つつ (ノ ヽ)
容量完走