【一心不乱の】オリキャラウォーズ【大戦争を!!!】2

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1名無しになりきれ
文字通りの内容です。オリキャラの皆さん、奮って参加してください。

基本的なルールを…
1、参加はオリキャラのみ。既に何処かのスレに参加している方でも、新にこのスレに参加する方でも構いません。無論スレ主の方も歓迎いたします
2、馴れ合い(チャット状態)は出来るだけ避けましょう。いざとなったら避難所で
3、荒らしは基本的にスルーでお願いします。また、荒らしに反応する方も当方としては荒らしと見なします
2名無しになりきれ:05/02/11 13:55:51
はさみじゃがー新スレ乙
3名無しになりきれ:05/02/11 13:56:23
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   ━=iilll■と ) .|┬┴┬┴┬┴┬┴┬┴┬┴┬┴┬┴┬┴┬┴┬┴┬┴┬
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    └|| ´∀`)  |┴┬┴ | .____」 ┬┴┬┴┬ / ̄ ̄\ ┬┴┬┴┬┴
    ( `つ■lllii=━ .┴┬ └|| ・∀・)┬┴┬┴┬┴ | .____」┴┬┴┬┴┬
    /   / 〉  / ̄ ̄\ ( `つ■lllii=━ .┬┴┬└|| ・Д・) ┬┴┬┴┬┴
    \__)\)  | .____」 / /〉 〉  / ̄ ̄\ ̄ ̄( `つ■lllii=━ ̄ ̄ ̄ ̄
           └||  ゚∀゚) (_)(_)  | .____」  __|  _.⌒)  シュタタ
           ( `つ■lllii=━    └|| `Д´)  (_, ノ (_/
           / /)  )         ( `つ■lllii=━   __∧______
          〈__)\_)        ,.-' ,、  l、     /
                       (_r'"(__r┘    |  おっしゃ!突っ込むぞ!
4名無しになりきれ:05/02/11 14:04:05
もうオリキャラ板じゃないのにな…。
5名無しになりきれ:05/02/11 14:04:22
あっはっはっは!
死ね死ね死ねだ共和国人ども!
盾も持たずに戦争かい?
御旗も立てずに戦争かい??
馬買う金も無くしたかい!
死ね死ね死ね!
死ね死ね死ね!
死んだ共和国人だけが以下略だ!

モラル(ロマサガ3)+10
モラル(タイトー人生劇場)−20
6名無しになりきれ:05/02/11 14:06:27
シェアワールドを創りませんか?
http://etc3.2ch.net/test/read.cgi/charaneta2/1106392779/
フッ、くだらんな。
戦争など外交手段としては下策もいいところだ。
81 ◆RQ9WT0p.32 :05/02/11 14:09:03
【世界観】
世界 世界 世界
  \ | /
世界―ここ―世界
   / |\
世界 世界 世界

様々な『異世界』に囲まれた狭間に、この世界は存在している。この世界では『召喚術』が発達しており、『召喚術』によって『異世界』から『召喚獣』
を『召喚』することが出来る。『召喚』された『召喚獣』は『契約』によって縛られており、『帝國』と『共和国』による二国間の『戦争』に駆り出される。
91 ◆RQ9WT0p.32 :05/02/11 14:09:39
『帝國』
西方大陸は森林や肥沃な平原などが多く、荒地や砂漠などはほとんどない。
そのため、農業生産が高く、食料などに関してはまず問題がない。
ただし、領土のほとんどが農業用地である上に地下資源に乏しいため、
共和国ほどに地下資源の活用技術は発達していないし、運用能力もない。
ゆえに、地下資源の加工技術や工業技術などは共和国ほど発達していない。
そのため、仮に共和国軍の兵器を目撃、或いは奪取したとしても、
専門の研究者でもなければ用途や威力を知ることは困難だろう。
また、最新鋭の兵器などは研究機関に持ち込んでも分析は難しいはずだ。

なお、自然が多いため特殊な薬草の入手が容易であり、薬学分野においても発達している。
麻薬はもちろん、肉体強化の秘薬、肉体や精神を癒す薬など、およそ考え付く限りの薬物の精製が行われている。
更に、竜や猛獣なども多く棲息するため、そういった生物を魔術や薬物で支配しての軍事利用も盛んである。
例を挙げるならば、竜騎士部隊や獣戦団などがある。

地下資源が少ないため、帝國軍は剣のような物資の消耗が少ない武器を使用し、
物資を消耗しなくても広範囲・遠距離を攻撃できる魔術戦闘を好む。
森林地帯に住むエルフの賢者などを魔法技術の研究者として招聘することが
多々あるため、魔術の発達度合は共和国を遥かに凌いでいる。
魔術で肉体を強化した兵士や各種ゴーレムなど、とにかくありとあらゆる分野において
魔術が使用されているのだ。また、魔力制御式の機械の研究なども行われている。
ただし、その発展の代償として魔術分野における重要な役職のほとんどがエルフによって占められている。
また、資源的な面から共和国軍の装備や物資を狙うことも多い。
ミサイルや車などの資源面から運用が不可能な兵器は全て解体して資源にし、
刀剣類や装甲板などは帝國の高い魔法技術で改めて魔力を付与して将兵に支給するのだ。
101 ◆RQ9WT0p.32 :05/02/11 14:10:11
『共和国』
東方大陸は森林などが少なく砂漠や荒地が多い。
また土地もあまり豊かではないため、農業生産などは少々心もとない。
これらは古の昔に行われた大規模な魔術実験が失敗したせいであると言われている。
この実験が尾を引いているためか、共和国では魔術はさほど重要視されていない。
せいぜいが道具や素材への魔力の付与技術、諜報用の透視技術程度であり、
銃や砲などがあり、装甲技術が発達していることも理由に含まれるが、
攻撃や防御系統の戦闘用魔術は帝國ほどに発達していない。
そのため、帝國軍が何らかの魔術を用いた場合、研究機関に勤務しているような
者を除いてはその場でその魔術の効果や用途などを推測するのは不可能に近い。
また、魔術の種類やレベルによっては、研究機関に持ち込んでもわからないこともあるはずだ。
なお、魔力付与技術に関しては、金属の精錬の際に魔力抵抗力を付与するなどの
使い方が一般的であり、共和国の軍人の装備には大なり小なりそういった効果がある。

また、この土地の貧しさこそが、共和国に西方大陸への進出を行わせているらしい。
しかし、その代わりと言うべきか様々な金属の鉱脈が多数存在しており、
中には西方大陸ではほとんど産出されない希少金属の大鉱脈なども存在する。
また、石油や天然ガスなども大量に産出される。つまり、地下資源が豊富なのだ。
それらの地下資源の採掘や加工は、主にドワーフ族の協力によってなされる。
そのため、工業に関係する部門ではドワーフ族の発言力が強い。

地下資源が豊富であるため、それらを加工・活用する技術は帝國を遥かに超える。
それらを活用することこそが、共和国の繁栄の近道なのだからだ。
そのため科学技術や工業技術の発達が目覚しく、サイボーグ技術やロボット技術、
特殊金属の加工技術などが非常に高い水準にある。また、人工衛星の打ち上げなどが行われてもいるらしい。
そのため、車や飛行機などの機械的な乗り物はもちろんのことながら、
肉体や頭脳を強化した兵士やロボットで編成された特殊部隊、更にはミサイルなどの
大量殺戮兵器なども存在する。また、高い硬度を誇る合金の研究開発なども行われているので、
純粋な武器防具道具などの素材の水準は地下資源において後れを取っている帝國よりも遥かに高い。
そのため、帝國軍は共和国軍の装備の奪取を試み、独自に加工して使用することが多い。
しかし、共和国軍も負けておらず、わざと装備を奪取させて改良させ、改めて奪い返すような作戦を行うこともある。
111 ◆RQ9WT0p.32 :05/02/11 14:12:31
共通設定
・どちらの大陸にもある一定水準の魔法技術と科学技術が存在する
・どちらの大陸にも、特別な種族を除けば、数の差はあれども
ほとんど同じような生物が生息している
・属国はほとんど併合されてしまっているに等しいため、
 本国の意思で自由に動かせることがほとんどである
・言語は共通語が一つとそれぞれの国の言語がある
・どちらの大陸にも様々な人種が存在する
12名無しになりきれ:05/02/11 14:26:04
行動のルール

・行動の説明、描写を具体的に
・代名詞ではなく固有名詞を極力使う
・トリップ推奨
・誰かに関わるタイプのレスをする際はレスアンカーを使う
・一般兵士のようなNPC、ゾンビその他のような雑魚には多少の決定リールを使ってもよい
13名無しになりきれ:05/02/11 15:47:00
避難所くらい貼れよ馬鹿1が

キャラのテンプレ投下や質問その他はこっちでな

オリキャラウォーズ避難所 Part2
http://etc3.2ch.net/test/read.cgi/charaneta2/1107784785/l50
141 ◆RQ9WT0p.32 :05/02/11 15:53:24
『企業』
西方、東方大陸に数多くの支店を構える大企業。ありとあらゆる商品を扱う。
この世界に存在する商店…それこそ下町の駄菓子屋から大都市の大型デパートまで、この企業が経営しているのである。
無論、両国に武器などの戦争必需品を売りつけているのもこの企業。剣から大砲、戦車から大戦艦まで、ありとあらゆる
武器を扱う。ちなみに、この企業にとっては戦争は大切な市場であるので、両国の上層部には企業の息の掛かった
ものが数多くいる。それがこの戦争をいつまでも続く原因になっているとも言える。
『企業』の本社は浮遊大陸である『南方大陸』に存在し、 特殊な隠蔽装置でその居場所を秘匿している。
各支社との連絡には何かしら特殊な方法があるようで、未だにその存在は地上の人々には知られていない。
この戦争を裏から操っているのは企業とも言える。

『傭兵商工会』
文字通りの機関。金さえ貰えば何でもする。金を払い続ける限りは味方であり、絶対に裏切らない。
傭兵は鉄の掟で縛られているので絶対に寝返ったりはしない。
もし、掟を破ればギルドから刺客が送られ、絶対抹殺される。例外はない。
その影響力は強大であり、両国は莫大な資金こぞってこの傭兵ギルドに投じ、数多くの有能な人材を獲得している。
基本的に自由な立場。両国にも属さないので、帝國、共和国と所属を変えたい時には傭兵と言う職業は便利。
しかし、基本的に命を買ってもらっているので、投入される戦況はどれも地獄ばかりである。
ちなみに両国間を自由に行き来できるのは傭兵だけ。その為、傭兵というよりも冒険者に近い。
傭兵の移動手段は徒歩やその他の交通機関を利用している。海路や空路は軍によって厳重封鎖されているから、唯一陸続きとなっている
両大陸の<北方回廊>を経由して大陸間を行き来する。北方回廊で唯一このニ大陸が繋がっているため、ここは常に激戦地となっている。
その為、それを越えるのも命がけ。ちなみに、傭兵ギルドには二国間を行き来するための偽造不可能な通行証明書があり、これは両国間でも認められているものである。
傭兵ギルドだけに関しては、両国間で様々な取り決めがなされている。傭兵を通してだけ、この二国は国交を持っているとも言える。

大陸間の移動手段は陸路。<北方回廊>を通らなければならないが、この戦争が始まって以来、両国とも北方回廊を抜けた先にある
敵国の領土に到達したことがない。到達したといっても、数の少ないゲリラ戦闘部隊ぐらいである。
自国内の移動手段は、大体帝國も共和国も似たものである。現代の車や航空機、電車やバスに馬車、または様々な幻想世界の獣に頼った交通機関である。
たとえば飛竜のエアバスとか、水竜が曳航する船であったり、地竜の馬車であったりetc…兎に角、自国内であるならば様々な交通手段がある。
幻想世界の獣に頼るものが多いか、機械に頼っているものが多いかは国によって違う。

>13
すみませんでした…
15名無しになりきれ:05/02/11 15:53:53
>>1の潜在意識では、避難所を馬鹿にしているからです。
161 ◆RQ9WT0p.32 :05/02/11 15:57:29
【参加者に関するルール編】
・このスレのキャラクターが各陣営に分かれて行動するのが中心。
・越境者は、各陣営の特別な地位や役職にある者によって
 異世界からそれぞれの陣営に召喚される。
・召喚された者は基本的にそれぞれの陣営の指令によって行動する。
・召喚されること(越境)を希望する者は避難所もしくはここで申請し、
 召喚を行うキャラによって召喚されるという形で参加する。
・各陣営のトップなどの重要なキャラクターに関しては
 >1もしくは設定関係者が決定する。
・勝利した側は元の世界に送還される。負けた側は戻れない。

【戦闘ルール編】
1、キャラ対キャラ編

決定リール宣言は却下。 攻撃をどのように受けるかは防御側に決定権がある。
(正)
<攻撃>
AはBに向かって剣を振り下ろした。
<防御>
BはAの攻撃を盾で防いだ BはAの攻撃を防ぎきれず、致命傷を負った
(誤)
<攻撃>
AはBの首を刎ねた AはBの腕を切り落とし、そのまま首へと斬撃を放った

前者はそもそも問答無用であり、後者は「腕を切り落とす」という効果を決定している点がよくない。

(訂正例)これならば決定リール扱いにはならないかもしれない。
AはBの首を刎ねようとした AはBの腕を切り落としてから首を狙うつもりだった

また、絶対に回避不能な攻撃や、効果範囲などから回避が不可能と思われるような
攻撃をしてはいけない。するならば、相手に妨害のチャンスを与えるべきかと。
例)
・その戦場全域を崩壊させるような攻撃(隕石、竜巻、地震、ミサイル攻撃など)
・睨んだだけでダメージ、声を聴いただけでダメージ(邪眼、呪歌など?)

これに類する攻撃を使用する際には、相手に妨害の機会を与えねばならない(両者間に合意がある場合を除く)

2、作戦行動としての戦闘ルール
実際の戦闘(キャラとキャラ)に関しては1のルールを適用。ただし、軍としての勝敗はこちらを適用する。
これに関してはそれぞれの陣営の作戦目的を達成すれば、どのような形であれ勝利とする。
たとえば要人警護及び暗殺ならば、たとえキャラが死亡しても警護対象が無事に脱出したり、
暗殺対象が死亡したりしているのなら、それは作戦目的を達成したことになり、勝利扱いとなる。
171 ◆RQ9WT0p.32 :05/02/11 16:12:37
『召喚術師に関するルール』

召喚術師は被召喚者に対して絶対的な支配力を持つ。
しかし、口頭及び文書などで命じていない事柄に関しては、召喚術師の支配力は及ばない。
また、召喚術師の命令はあくまでも命令を受ける側の主観と認識によって成り立つため、
キャラクターの性格次第で自由な行動が可能。
基本的にキャラクターの行動を妨げるための存在ではない。

召喚術師に関する参考資料
「召喚術師に直接危害を加えることの禁止。
また、口頭または文書などで指示した事柄に対して逆らえないだけで、
明言・明文化されていないことに関しては制約が及ばない」

「契約している召喚術師が死亡すると契約者も死亡。
ただし、それは召喚術師を契約者が殺害した場合に限る」
181 ◆RQ9WT0p.32 :05/02/11 16:15:16
『部隊用テンプレ』
ちなみに部隊を率いているキャラは別のテンプレに記入。

部隊名:(省略可)
部隊人数(規模):
編成(兵種):
得意な戦術:
得意な戦場:
苦手な戦場:
得意な作戦:
苦手な作戦:
部隊の特徴:

作例↓

部隊名:名無し部隊
部隊人数(規模):10人
編成(兵種):歩兵5及び弓兵4魔術師1
得意な戦術:魔術師と弓兵の援護の下歩兵が突撃。基本的にオールマイティ。
得意な戦場:特になし。
苦手な戦場:山岳地帯や砂漠、寒冷地など
得意な作戦:オールマイティ
苦手な作戦:特殊技能が必要な作戦(諜報、暗殺など)
部隊の特徴:名無しばかりが集まった部隊。個々人の戦闘能力は並だが、団結力が強い
191 ◆RQ9WT0p.32 :05/02/11 16:17:19
国用テンプレ

国名:
首都:
予算:
人口:
治安:
食料:
資源:
戦力:
技術:
領土:
特色:
201 ◆RQ9WT0p.32 :05/02/11 16:18:04
所属スレ(該当する人だけ):
形式番号: 
頭頂高: 
全高: 
本体重量: 
全備重量: 
ジェネレーター出力: 
スラスター推力: 
名前: 
異名・肩書: 
年齢: 
身長: 
体重: 
スリーサイズ: 
種族: 
兵種:
所属:
性別: 
性格: 
誕生日: 月日
血液型 :
年代: 
利き手: 
魔法: 
特技: 
得意な技: 
長所: 
短所: 
戦法: 
装備品右手: 
装備品左手: 
装備品鎧: 
装備品兜: 
装備品アクセサリー: 
所持品: 
瞳の色: 
血液型: 
髪の毛の色、長さ: 
容姿の特徴・風貌: 
その他特徴: 
出典・作品名: 
趣味: 
恋人の有無: 
好きな異性のタイプ: 
自分の恋愛観: 
好きなもの: 
嫌いなもの: 
好きな食べ物: 
最近気になること: 
一番苦手なもの: 
人生のモットー: 
一番の決めゼリフ: 
将来の夢(目標): 
この住人として一言: 
仲間達へ一言: 
名無し達へ一言: 
中の人より一言: 
簡単なキャラ解説: 

各自自由に削って使って下さい。
211 ◆RQ9WT0p.32 :05/02/11 16:21:48
現在の参加戦力

(※は召喚されてきたキャラクター)

【帝國】
『キャラ』
※ネクロマンサー
※颶風
 ミジクモ
 軛野溝広
 ゼアハルト
 インゼクト
※アイシア
 ジャカダム
『軍』
 不死騎士団 (1〜∞)
 帝國軍獣人騎士団『アスタル』 (700人)
 帝國軍歩兵団『フェリペ』 (900人)
 帝都近衛騎士団『黒翼の重装騎士団』 (200人)
 飛蝗強襲団 (50人)
 帝國野戦病院『戦乙女』 (300人)


【共和国】
『キャラ』
※ヴェルター
※鈴木中尉
※カイザー
 戦車のメンバー
 ルシカ
 ヴォルギリアス
 カァラ
 ガリーナ 
 スタンプ
『軍』
 小隊「ワーム」&「ホットドッグ」 (それぞれ48人)
 狂竜傭兵団 (300人)
 第八十一戦闘機小隊 (5人)
 赤き疾風 (8人)
221 ◆RQ9WT0p.32 :05/02/11 16:29:49
ちなみに新規に参加をしようと思う方は、テンプレを>13のところに投下してください。
前スレ749
「静かじゃ…潜んでおるな。充分警戒するんじゃぞ!」
音を立てず、かつ素早く村を探索する。すると、
>号令と共に敵兵へと大量の銃弾や手榴弾が飛び始める。
銃弾によるダメージはほとんど無いものの、鎧がへこむ。音がうるさい。
銃弾が飛んでくる方向に、数人の兵士が向かう。
突如爆発が起こり、兵士が無残に吹き飛ばされる。
「やれやれ…少数での立てこもり程、厄介なものはないのぅ…
しかし指揮官はどこにおるんじゃろう。…む、」
村の中では割と大きな役場を見やる。あそこになら、居そうだ。
そう考え、周りを十人程度の重装歩兵たちに囲ませつつ役場に向かう。
他の歩兵達は村中を探索している。


「ふう、もういいでしょうかね。…ん?」
シャルルが残存していた敵の部隊をあらかた片付けていると、
剣士風の男が倒れているのを見つける。ツィーヴだった。
やれやれ、というような顔をしながらツィーヴを担ぐ。
「よいしょっと…今なら誰にも気付かれないでしょうね。野戦病院へ急ぎましょう。」
野戦病院へ急ぐ。
24ミジクモ ◆rMEfPDyTEI :05/02/12 03:12:07
>前スレ757
>次の瞬間 ユニコーンの角が一人の魔術師の身体を貫いていた、カイザーの技の反動でここまで飛ばされたのだ。
「!!」
魔道士達は多少前に出させたとはいえ、遠距離攻撃をする者をそれほど前に出すこともなく、
更に本陣に近い場所に敵騎士が飛んできたことにミジクモも少なからず動揺する。
だが、あくまで冷静さは崩さない。

>すると、さっき飛んでいった光の弾丸が次々と敵の魔術師に降りかかる
「自分の身も守れぬような魔道士ばかり、前線にいるわけがなかろう…」
ミジクモはある程度、帝國の魔道士に信頼を置いていた。
本部にも引けを取らぬ実力者であれば本陣の守護ではなく今現在も戦いの最中であろうが、
例えそうでなくとも帝國軍の魔術師、並以上の実力は持っているはずである。
体の回りに防護壁を作る者、飛んでくる光の玉に炎を当て相殺させようとする者、
それぞれ思い思いの自己保身をしようとするが、
敵の弾丸もさるもので魔道士隊のうちおよそ半数が守りきれずその場に倒れる。
「さすが、だな…」
何故か、その顔には笑みがこぼれている。

突き刺された魔道士や弾丸を食らった魔道士を治療のため本陣奥に運ばせると、多少部隊を後ろに下げ、そして。
「突撃!」
先ほどの伏兵長槍軍のうち取り囲む際に人数の合理性を重視し出撃しなかった者達、
さらには本陣からも剣を持っていきり立つ者達、
それぞれが雄叫びをあげながら突進してゆく。
だが、それも人数はさほど多くはない。足止め程度になるだけで、打ち破られるのは目に見えている。
「我を護るは紅蓮なる壁、彼奴を仆すも灼熱なる壁…」
ミジクモは静かに呪文の詠唱を始めた。
25カイザー ◆4a9UrY4.4s :05/02/12 22:41:13
>24
>「突撃!」
 先ほどの伏兵長槍軍のうち取り囲む際に人数の合理性を重視し出撃しなかった者達、
 さらには本陣からも剣を持っていきり立つ者達、
 それぞれが雄叫びをあげながら突進してゆく。
 だが、それも人数はさほど多くはない。足止め程度になるだけで、打ち破られるのは目に見えている。

「まだ諦めないのか・・・?敵も勝つ為に必死なんだな・・・」
誰が見ても明らかに勝ち目が無いと分かりつつ向かってくる敵兵を見据えて、カイザーは物悲しそうな表情で呟く。
「・・・だが、こちらも引く訳にはいかない!行くぞ、ユニコーン!!」
「はい!しっかり掴まって下さいね」
再び表情を引き締め、騎乗しているユニコーンと共に向かってくる敵兵達に突っ込む。
ユニコーンが前足で目の前の敵を蹴り飛ばし、カイザーが左右後方から向かってくる敵を斬って倒す。
次々と敵兵を倒してゆく中、ユニコーンはある事に気が付いた

>「我を護るは紅蓮なる壁、彼奴を仆すも灼熱なる壁…」
 ミジクモは静かに呪文の詠唱を始めた。

「・・・カイザーさん!左前方で魔力が集中してます!」
ユニコーンがカイザーにそれを言った時、すでにカイザーは魔力が集中している方向に顔を向けていた。
「ああ、分かっている!・・・魔法を唱えているあの男の所へ突撃だ、行くぞ!!」
その指示を受けたユニコーンは大地を蹴って走り出した。その速さはまさに神速
ミジクモがそれに気が付かなければ、気付いても体が反応できなければ、先程の魔術師と同じように角で体を貫かれてしまうであろう
26ミジクモ ◆rMEfPDyTEI :05/02/13 03:05:47
>25
>その指示を受けたユニコーンは大地を蹴って走り出した。その速さはまさに神速
>ミジクモがそれに気が付かなければ、気付いても体が反応出来なければ、先程の魔術師と同じように角で体を貫かれてしまうであろう
ユニコーンは瞬く間に近づき、その角がミジクモを貫く、誰もがそう思った刹那、
角は空を切り、ミジクモは先程まで居た場所より右に移動していた。
ふと見ると、ミジクモは呪文の詠唱に集中している。自分のいる場所が移動したことも気付いていないように。
そして、背の低い黒装束の男…ジャカに持ち上げられていた。
「これぞ『神行のジャカ』の本領発揮だいっ!兄貴を連れてでも、避けるぐらいなら出来る!」
まだ声変わりの来ていない、幼い声で叫ぶ。黒装束をしているのにも関わらず、笑顔であるのが見て取れるよう。
ジャカは丁寧にミジクモを大地に立たすと、鞘から刀を取り出す。
「兄貴が呪文を唱え終わるまで、指一本触れさせない!あーいや唱え終わってもだ!」

「…いざ燃やさんとその猛き腕を用て、再び我の前に姿を見せらる…」
そして、ミジクモは長い呪文の詠唱を終えようとしていた。
「今こそ来たれや炎の壁よ、今こそ見せれやその焦熱を!
 サンキューだジャカ!ウォール・オブ・フレイム!」
そびえ立った炎の壁がカイザー達へ、緩やかながらもじわじわと押し迫る。
>前スレ774の続き

階段を降り、地下病棟の廊下に出る。地下病棟は地上の病棟に比べ、一層清潔感を強く感じるような白い内装が施されていた。
長い廊下は白い蛍光灯で照らされ、天井も床も壁も抗菌作用のある術式が施された魔力付与型のものである。ほぼ無菌状態に保たれているのである。
地下病棟には重傷、重病者ばかりが収容されているので、それらの患者に配慮しての細かい気配りである。常に地下病棟は清掃されており、清潔感が際立っていた。
だが…
「嫌ね…ここ。静かな『死』の匂いがするわ」
イザベラは好きではなかった。地下病棟の過ぎるといっても過言ではない清潔感が、一部の患者に静かな『死』を突きつけているからだ。
『死』とは無縁とも思えるようなこの穢れなき地下病棟では、逆にその白い世界が迫りくる『死』を連想させる。

ここ地下病棟は主に外科手術以外の治療を必要とされている患者の病棟である。つまり、法術の治療を必要としている患者の為の病棟なのである。
法術は生物を癒したり、魔を退ける力を持った聖なる魔道の術である。ちなみに帝國は共和国とは違い、一般的な医療技術よりも法術の方が優れているのである。
最近では一般的な医療技術も進み、共和国レベルにまで達したが、それでも医療の場には必ずと言ってもいい程医者兼法術師がいるのである。
手術や薬品を必要としない法術による治療…それは確かに静かな生死の遣り取りの術である。

法術による傷や病気の治癒具合は、一般的な治療と同じく、精神の状態によって左右されるものである。無論、陰鬱な環境下での精神活動では病状が悪化しかねない。
法術によって、それらの精神状態も改善出来るが、やはり自身の力で良い方向へと立ち直るのが一番である。
「婦長〜…」
突然右の廊下の曲がり角から、イザベラを呼ぶ声が聞こえた。イザベラは心底困った顔をし、やれやれと言いながら廊下の角を曲がった。
「やっぱり長田さんね…何へばってんの?」
廊下を曲がると、其処には狐の亜人の少女である長田が、部下の回復法術師達と共にへばっていた。皆廊下脇に置かれた長椅子でだれている。
「回診…終了しました」
ぷるぷると震える手でイザベラに書類を渡す。イザベラが腰を折ってそれを受け取る。
「…任務ご苦労様。何か変った点はあったかしら?」
ぱらぱらと書類の項を捲りながら長田に尋ねる。
「いいえ…特にありませんでしたが、B207の患者さんの封印術式が以前に増して強力なものを使用しなければなりませんでした。隔離病棟に移した方が宜しいかと…」
それを聞いて直ぐにその問題の患者の項が手で止まる。イザベラはそれを見て眉を顰めた。
「…共和国軍の生物兵器の感染者ね。他に何か?」
「あとは特にありません…B102から109の患者さんの症状は以前に増して良くなっています。近々地上病棟に移せるかと」
「分かったわ。現時刻…2036を以ってして長田良子野戦法術師兵曹長率いる第7野戦法術師小隊の任務を解除します。お疲れ様」
任務解除の通達をし、イザベラは先程の問題の患者のところに足を向ける。
「や、やっと終った…」
命令解除の言葉を聞いて、長椅子にだれていた全員が安堵の息を吐くが…
「それと、地上病棟では思った以上に人員が足りないので、新たな命令を通達します。長田さん、貴女の小隊はこれから直ぐに地上に上がって負傷者の手当てをなさい」
イザベラは立ち止まり、向き直ると新たな命令を発した。その顔には聖母のような微笑が浮かんでいたが、その命令を受けた長田以下の法術師達にとっては
悪魔のような微笑であった。
「え?…本気、ですか?」
思わず法術師の一人が聞き返してしまったが、はっとして直ぐに口をつぐんだ。
「ええ。本気も本気。一応ここは病院ではあるけれど、軍隊の一部でもあるのよ?命令は絶対だから」
それだけ言うと、イザベラは白衣を翻して地下病棟の奥へと消えていった。
「長田班長…」
小隊の法術師の一人が長田を見やる。
「何も言わないで…何も言わないで」
長田は頭の狐耳を押さえ、いやいやと頭を振っていた。
満身創痍の第七野戦法術師小隊、新たな命令を受領。仕方が無いので突かれ切った体に鞭を打って、小隊の面々は地上への階段を上り始めた。
28鈴木中尉 ◆DDGCBdpW/w :05/02/13 15:56:05
>23
まずい。うまくいけばこの攻撃で敵部隊を殲滅できたはずだったが、
敵の損害は明らかに予想以下だ。さらに敵部隊はこの役場の方に向かってくる。
全滅を防ぐため、兵力を分散させて配置したのが仇となった。
ここに残っている部隊は衛生兵と負傷者だ。武装は拳銃のみと貧弱。

どうやらあの西洋甲冑は銃弾で貫通できないようだ。だが、手榴弾はどうだろう?
歩兵部隊を吹き飛ばし、敵に十分な損害を与えている。
「貴官らは敵が来ても戦うな。逃げられなければ降伏してもかまわん」
その場にいた衛生兵と負傷者に言い、車両から機関銃を取り外して二回へ運ぶ。
敵と友軍の戦力差は歴然、こうなれば一人だけでも玉砕覚悟で戦ってやる。
「奴等に銃撃は効かん!小銃で威嚇しつつ、手榴弾を用いて攻撃せよ!」
村内全域に聞こえるように役場二階の窓からそう叫ぶ。
どうせこの場所はもうばれているんだ。問題ない。
敵部隊がこちらを向いたことを確認し、機関銃で窓から銃撃を加える。
地上に上がった小隊は直ぐに負傷者達が担ぎこまれる治療室へと急いだ。案の定、何時にも増して其処は戦場であった。
「本当に…此処は戦場ね」
ポツリと素直な感想が漏れるが、直ぐにだれていた頭の狐耳をしゃんと立てる。
「ええい、こんなところでぼーっとしている時間は無いわ!第七野戦法術師小隊、早速任務を遂行するのよ!」
小隊の全員を振り返り、任務に取り掛かるように促す。先程の疲れは何処に行ったのやら、小隊の法術師全員の顔は引き締まっていた。
全員の今の想いは一つ。帝國、共和国の区別なく、傷ついた命を助けたい。その為ならば疲れなど気にしている暇など無い。
法術師達は無言で小隊長の長田に頷くと、それぞれ負傷者の手当てに取り掛かった。
「うん…私も頑張らなくちゃ」
小隊の法術師達の頼もしい士気を目の当たりにし、長田も彼女達の後に続いた。

>23
後から後から運び込まれてくる負傷者達。軽傷の者もいれば重傷の者もいる。
悲鳴、怒号、断末魔…ありとあらゆる苦痛に満ちた声が治療室内を満たしている。
ある者は死に逝く自分の人生を嘆き哀しむ。ある者は世界を呪いながら生命の灯火を徐々に散らし、ある者は肉親の名を呼びながら逝く…
今の治療室内には人間のありとあらゆる負の感情の充満していた。
だが治療に取り掛かる法術師達はそれを意に介せず、必死に言霊を紡ぎだして治療に当たっている。
その中で、長田は今運ばれてきたばかりの兵士の治療に当たっていた。
年の頃は22ぐらいだろうか?茶色の髪と精悍な顔立ちが印象的な軽装歩兵であった。
其の身に纏った帝國製の軽装歩兵鎧は、一般兵のものよりもずっと上等なものである。鎧には帝國軍歩兵団『フェリペ』を現す認識票が打ち込まれていた。
既に鎧や上半身を覆う服は脱がされており、長田は深い切創となっている患部に手を添え、法術の言霊を紡ぎだしていた。
「…微風よ、汝をめぐり吹き、火と燃える汝の顔に優しい冷気を吐く微風よ……」
言霊が長田の口から紡ぎだされる度に、患部に添えられた手に淡い光が集っていく。燐光が集るにつれて、傷が徐々に塞がっていく。
「主よ、主よ、神よ…心温かに慈悲あれよ。御身の御名の壮麗こそは、崇敬と賛美の的であれ……」
次第に強くなる燐光。燐光が強くなるにつれて、長だの額に珠の様な汗が浮かび、顔には疲労の色は濃くなっていく。
「雷鳴はかく叫ぶ…イェホーヴァー…イェホーヴァー…イェホーヴァー……雷光に砕かれ打たれ、森は火煙を上げる…」
最後の言霊を吐き終え、患部から手を離すと、すっかり傷は元どおりとなっていた。
「術式終了…後は失った血の輸血と体力の回復だけね」
法術による戦傷の治療を終え、額の汗を袖で拭う。長田は傍にいた看護兵の後の処理を任せた。
「…元気になってくれるといいのだけれど」
長田は最後にその軽装歩兵の鎧に打ち込まれた認識票をちらりと見た。

認識票には『帝國軍歩兵団フェリペ軽装歩兵隊隊長・ツィーブ』と刻み込まれていた。
30カイザー ◆4a9UrY4.4s :05/02/13 21:03:36
>26
>「今こそ来たれや炎の壁よ、今こそ見せれやその焦熱を!
 サンキューだジャカ!ウォール・オブ・フレイム!」
 そびえ立った炎の壁がカイザー達へ、緩やかながらもじわじわと押し迫る。

ミジクモが放った魔法、それは素人が見ても分かるような凄まじい威力の炎の壁であった。
この魔法をすぐに攻略するのは無理と判断したカイザーはユニコーンに指示を出す
「おい、このまま突っ込んでも死ぬだけだ・・・・・・撤退するぞ!」
ユニコーンは背を向いて走り出した。幸い魔法のスピードは遅いため、攻撃から逃げ切る事は容易いだろう。
前スレ>752
不意の一撃は、ジャックの腹部を打った。
瞬間、視界が暗転し、胃の内容物が食堂を一気にせり上がって来る。
混濁した意識の中、彼は横向きに転がると激しく嘔吐した。
もはや彼に立ち上がる気力は無い。
基地から緊急招集だ、と知らせに来たのは店主のバロウだった。
「戦闘機が三機ばかし帰ってきた。
それからずっと警報が鳴りっ放しだ、騒がしいったらありゃしねぇよ」
こんな日は稼ぎにならないし、次来る客にしたって三分の二くらいに減っちまうんだ、
そう言って、ボクサー系のイヌ科獣人が渋い顔をする。
グリフは部屋の明かりを点け、慌てて荷物を掻き回した。
そうしてようやく財布を見つけ出した所で、ベッドのシェリイが言う。
「お代は要らない」
少し考えて、財布を仕舞う。
彼女はちらと店主を見遣ったが、バロウは既に部屋を立ち去ろうとしていた。

急いで服を着ると、部屋にシェリイを一人残して出口へと向かった。
他の客たちも皆、基地の人間だ。
慌てて支度を済ませた数人が、グリフと同じ様に駆け足でロビーを目指す。
普段使われている目に痛いピンクとオレンジの照明も、今夜はバロウがスイッチを切ったらしくて
蛍光灯の埃っぽく色気の無い白色光でもって、薄汚れた通路に幾つもの濃い影が落ちる。
店主はグリフを追い越して、擦り切れたロビーのソファに腰を下ろした。
「お宅の隊は、隊長以外ウチの上得意なんだよ」
「ブラッドは?」
「ホットドッグも。今日は来てないが」
半分破れた左耳のイヤリングを弄りながらバロウは、店のガラス戸を押し開けて
基地へ走り行く他隊の連中とおざなりな挨拶を交わす。
ヘリのパイロットだと言う男が通り過ぎ様に、
「あんた『ワーム』だろ、多分俺と一緒に仕事する……急いだ方が良い」
「大丈夫だ、すぐ行く。作戦の時はよろしく……」
グリフは、自分の隊の出動だと、ふと思い出した。
日に焼けて色褪せたモスグリーンのバックパックを片方の肩に掛け直し、ガラス戸を押し開けた。
>27>29
「ふむふむ……よくよく見てみると、こちらには外科手術で何とかなってしまいそうな患者ばかりですな」
ネクロマンサーは、先ほどから怪我人の手当てに奔走していた。その働きぶりは、借り受けたばかりの新品の白衣が
血みどろになってしまうほどだった。とにかく、真面目に治療を行っていたのだった。
「なるほどなるほど。本命の患者は地下に運び込まれるわけですな。ふむふむ」
ただし、このように楽しげな様子でぶつぶつと呟いているため、看護婦や患者からはあまりいい印象を持たれていない。
「さてさて……やはり最前線で戦うというのは辛そうですね。やはり後方で安穏と指揮を執るだけにしておきますか」
毎度毎度の独り言の内容が明らかに他者の神経を逆なでしていることに気づいているのかいないのか、ネクロマンサーは呟き続ける。
「お? これはよさそうな薬ですな。このメスと一緒にガメてしまいましょう」
そして、堂々と病院の備品を懐に入れてしまっている。治療をしているのか泥棒に来たのかまるでわからない男だった。

> 今の治療室内には人間のありとあらゆる負の感情の充満していた
「…………しかし、楽しいものですな。病院というのは。ここには苦痛、怨嗟、慟哭、絶望……あらゆる負の感情と
強い”死”が満ちている……実によい場所です。可能ならば、もっと死と負の感情を吐き出して貰いたいものです」
必死に、真剣に、ただ怪我人を救いたいと願う一途なスタッフ達とは対照的に、ネクロマンサーは実に楽しげだった。
治療室どころか病院上に満ちた死と負の感情を満足げに咀嚼しながら、ネクロマンサーは笑っていた。
ネクロマンサーが一回息を吸うごとに、周囲に満ちていた死の気配と負の感情が薄れていく。
そう、ネクロマンサーは死と負の感情を喰っているのだった。充満する死と負の感情が薄れていくにつれて、
ネクロマンサーが持つ邪悪な魔力も高まっていく。
「………はっはっは。もっと死と絶望が欲しいところですな」
運び込まれ続けている患者達の死と負の感情を咀嚼しながら、ネクロマンサーは治療を続けている。
(>32続き)
出掛けに背後で、バロウが怒鳴った。
「分かってるだろうが、二階級特進なんぞして彼女を泣かせるな。
陸軍兵士(グラント)ってのは地道に出世するもんだ」

店を出て、俄かに慌しくなった通りを少し走る。
ごみごみした界隈を抜け出すとやがて、町と荒れ野の狭間に行き当たった。
普段と違う道を来た為、グリフは基地の方向を確認しようと立ち止まった。
不意に、荒れ野の側から鋭い光が差し込む。一台のジープが現れ、ライトで煌々とグリフを照らした。
ジープの運転手は、長い鼻ずらを彼に向けると
「グリフ! 迎えに来てやったぜ」
歩兵小隊「ホットドッグ」隊長ブラッドがジープに乗るよう、目でグリフを催促した。
グリフが助手席に乗り込むと、ジープが動き出す。

「シェリイに会いに来たんだろう、昨日の内に済ませとくべきだったな。
ウチの隊の連中は昨日来させた」
ブラッドのジープは廃車寸前の代物で、ひどく揺れる。
車体が上下するたびに、足元や座席から埃が巻き上がる。
「会うか会わないか、迷ってたのさ」
ハンドルを握るグレイハウンド系イヌ獣人はそれを聞くと、鼻をフンと鳴らしてそっぽを向いた。
「煮え切らない奴だな。この基地に一年、付き合いも一年なんだろ?
こんな仕事なんだから、いい加減に覚悟を決めちまえよ」
「前にも三回ばかし、出動前に会った。三度とも彼女がひどく泣いたんだよ」
「今夜も泣いてた?」
基地のゲートが近付いて、ブラッドが思い切りハンドルを切った拍子に片側のタイヤ二輪が浮いた。
グリフはドアに手をついたが、ドアの立て付けがイカレていて、危うく体を放り出されそうになる。
「今夜は泣かなかったな」
基地のゲート前では装甲車が十台ばかり整列していて、
その周囲に「ホットドッグ」連中が座り込み、隊長を待ちかねていた。
「『ワーム』はヘリだ。俺たちがバックアップしてやるから精々頑張れよ」
>34
「出撃か…」
倉庫外の騒がしさが一段と増したようだ。ヴェルターは倉庫にあった弾薬類をたっぷりと拝借し、愛車のBMW75のサイドカーに
しこたま積んでいた。ヴェルターのBMWのサイドカーは、通常のものより大型であり、普段ならスペースに余分があるはずなのだが、
今はそうはいかないようだ。パンツァーシュレックの発射機と弾薬一セット、パンツァーファウスト五発、MG42のドラムマガジンと
シュマイザーの弾倉をしこたま積み込み、愛銃のモーゼルのコッキングレバーを引き、中に7.96mm弾を送り込む。
準備は整った。ヴェルターは弾帯やその他の装備を体に身に付け、倉庫の棚に置いてあったフリッツヘルメットを引っつかみ、頭に被ると
ゴーグルを下げ、口元をカーキ色のスカーフで覆った。
「とりあえず、死なないことが目標だな…」
モーゼルを肩に掛け、ワルサーを腰のホルスターに収め、扉から倉庫の外にである。そして倉庫の外に止めてあったBMW75に跨る。
「さて、今日も戦場に行こうか?俺とお前は一心同体。マイヤー中隊長に負けないように頑張ろうぜ?」
愛車は何も答えない。だがエンジンの始動音が代わりに軽快に鳴り響く。
「俺は戦場を駆け抜ける韋駄天。其の名も『韋駄天ヴェルター』だ…」

ヴェルターはバイクでヘリポートに向かう。ヘリで戦場まで輸送してもらうつもりだ。
>28
>「奴等に銃撃は効かん!小銃で威嚇しつつ、手榴弾を用いて攻撃せよ!」
>村内全域に聞こえるように役場二階の窓からそう叫ぶ。
「おう!あそこにおったぞ!各人敵を倒しつつあの方面にむかうのじゃ!!」
叫んだ直後に側面からの爆撃。守っていた兵士ごと横に吹き飛ばされる。
二回目が来たら、確実にヤバイ事態になる。そう考え、転がりながら起き上がる。
幸いにも二つ目は飛んでこなかった。が、立ち上がった直後に足に痛みを感じる。
見てみると吹き飛ばされた鎧の破片が隙間から突き刺さっている。
なんてことだ、ここまで来ておいて退却なんて情けなさ過ぎる。
痛みをこらえて再び隊形を整え、役場内へ向けて突撃する。

>29
「…ええ、ええ。では、後はお願いしますよ。」
ひとしきり看護兵にツィーブの怪我の具合を聞いた後、野戦病院を後にするシャルル。
ツィーブは怪我こそ大事には至らなかったが、出血が激しく、しばらくかかるということだ。
とりあえずは安心なようなのでホッと一息つく。
「うーん、これからどうしましょうか。」
遠くの方ではまだ戦いが続いているが、付近の敵兵力は微々たる物になっている。
一旦本陣にかえって報告をするか、それとも隊に戻って戦闘に加わるか。
立ち止まって思い悩む。
>35
バイクに跨って現れたヴェルターを見て、一人の下士官が声を掛けた。
「助っ人さんよ、歩兵隊連中と一緒に、そいつを乗せるつもりじゃないだろうな」
下士官はヴェルターへ近付き、彼の装備を眺め回す。
そして、一台の大型輸送ヘリを指差した。
「アレが何とか余ってる、乗りたきゃ操縦士を回してやるよ」

発進するヘリは五台。
内二機が攻撃ヘリ、他は輸送ヘリ三機―ヴェルターを運ぶとすれば四機。
ヘリは次々と飛び立っていく。
同時に「ホットドッグ」を乗せたジープ八台と装甲車が二台。
「やー、あれが例の助っ人宇宙人の一人か?
俺が見たのは、もっと怪しい格好の野郎だったがな」
離陸したヘリの中で、ローガンが地上を見下ろして言う。
「グリフの奴は、アレにも会ったらしいぜ」
そう答えるハリスは、妙に顔色が悪い。
彼を挟んで座る隊員が「吐くなよ」と念を押した。
38ミジクモ ◆rMEfPDyTEI :05/02/14 23:16:22
>30
>ユニコーンは背を向いて走り出した。幸い魔法のスピードは遅いため、攻撃から逃げ切る事は容易いだろう。
「何ぃ…?」
まさかここまで早く撤退されるとは思っていなかった。
この壁を突破されたたことを想定し、壁の後ろ側に長槍隊を配置、
それに命じ、無傷ではなかろうなので手負いのところを仕留めるつもりだったのに、やや阿然とする。
「ま、賢明な判断だな…まさか一人でここにいる全員を倒せるとも思うまい…」
ただの猪突猛進馬鹿ではなく、ちゃんとした判断力も持っているようだ。
結果としては、半ば一方的にこちらの戦力を削がれた形となった。
「こりゃ切腹ものかな…はっ」
ミジクモの顔には自嘲の笑みが浮かんでいた。

「兄貴…追いかけようか?」
突然のジャカの発言に、再び現実に引き戻される。
それにしても、もう遙か遠くに逃げてしまっているのに、追いかけ、追いつくつもりでいるらしい。
(頼もしいのかバカなのか…)
「いや…やめとけ。それよりも…」
顔を前に上げる。
「負傷者をさっさと集めろ!医務隊は応急処置!重傷者は野戦病院に運べ!」
さっきの突然の来襲、更に突然の撤退で呆気にとられている兵に命令をする。

「…ぐっ」
「兄貴!?」
その場に倒れかかるミジクモを、ジャカが支える。
そもそもミジクモは多少虚弱体質である。それでいて戦力になるように強力な魔法を覚え続け、
先ほどの戦闘機との戦いに、今のカイザーとの戦い。無理をし過ぎていた。
「しばし…休む」
そのまま意識は薄れていく。
39鈴木中尉 ◆DDGCBdpW/w :05/02/15 20:50:06
>36
潜んでいる友軍の攻撃により敵歩兵部隊も十分な打撃を受けたようだ。
指揮官らしき男を囲んでいた歩兵が爆音と共に吹き飛ぶ。
「割れた甲冑を狙え!敵も中身は生身だ!勝機は我らにあり!!」
そう指示を出すと共に倒れている敵歩兵へ銃弾が飛ぶ。
さらに甲冑の割れた部分を狙っての狙撃により確実に殺害していく。
だが、指揮官らしき男はまだ負傷していないらしく、残存部隊を率いて走ってくる。
これはまずい。この役場の一階にいるのは負傷者と衛生兵だけだ。
一応彼らにも拳銃は持たせてあるものの、おそらく勝てはしないだろう。
しばらくして下から銃声が響く。敵が入ってきたのだろう。
間もなくその音もやんだ。全滅、もしくは全員降伏か。どちらでもいい。
「やれやれ、もう一度祖国日本の土を踏みたかったが・・・・・・」
ここで奴等を殺す事が出来れば本国へ生還、失敗したならば戦死だ。
階段からの扉に機関銃を向け、雑嚢の手榴弾を確認する。
40攻撃ヘリ ◆..OhPeBexU :05/02/15 21:46:08
>39
攻撃ヘリ二機が先行し、廃村の上空へ到着する。
「スズキ中尉、聞こえますか?
輸送ヘリを三機用意してきた、負傷者の輸送を優先的に行いたい。
集合地点と、攻撃目標の指示を」
操縦士が、鈴木中尉へ無線を入れた。
>37
「了解…」
誘導係に促され、ヴェルターは大型ヘリの後部ハッチから機体内にバイクで乗り入れた。
「へぇ…オートジャイロもここまで進歩したのか。これがあれば、少しはボルシェビキ共に痛い目を
見せて遣れるのに…」
輸送ヘリの内部に乗り込んだヴェルターは、共和国の進んだ科学力を目の当たりにし、自分の世界の
戦況に思いを馳せた。
「今頃カーンは陥落しているな…そうなれば本国は…」
だが今、元の世界のことについてあれこれ考えても仕方が無い。今の自分に課せられたことをこなし、生き残ることだけだ。

ヴェルターは輸送ヘリに乗り込み、発進を待った。

「(共和国は)最後までハンドルを切り続けたが、衝突は必然だ」
大統領補佐官は駆け付けた記者団に対し、こう述べた。
10月3日、共和国議会は帝國との開戦を決定。
明くる4日未明には大使館を通じて宣戦布告がなされる。
帝國と共和国との、長い戦いの始まりであった。

●共・帝開戦までの4カ月
6月17日、帝國・共和国間で外相級会合が開かれた。
議題は共和国側が再三要求を繰り返す食料援助問題について。
深刻な国土の砂漠化問題に加え財政不振で身動きのとり辛い共和国代表と、
ここ数年安定した内政を続ける帝國側とでは微妙なパワーバランスの差があり
この日の会合でも帝國の一挙一動に強気な態度が見受けられた。
帝國は一旦は「出来うる限り迅速な支援を約束する」としたものの、
会議終盤に八大臣の一人が「(食料支援の)無期延期も有り得る」と示唆。
帝國領土内の産業化援助・経済援助などの過度な見返り要求を論じた後、
話題は共和国国境警備隊の人員削減にまで及んだ。
会合の結果を受けてナショナル・ポスト紙(共和国)は
「帝國皇帝は共和国を自分の臣民と思い込んでいる」と評し、
今後の弱腰な態度は帝國の要求を一層エスカレートさせると批判した。
なおも共和国政府が慎重な対応を続ける中、
突如として帝國から「企業」を仲介して共和国向けの声名がTVに流される。(注1)
八大臣の出したこの声明が更に共和国民の感情を逆撫でし、
遂には「制裁もやむなし」の世論が国内を席巻した。

●開戦からの動き
こうして2001年10月(仮)、共和国軍の帝國領への攻撃を皮切りに戦争が始まった。(注2)
帝國は開戦後も強気な態度を崩さなかったが、初戦で大敗を喫してしまう。
その後も、「企業」の協力もあって急激に機械化された共和国軍に押し切られる形でじわじわと後退。
回廊の境界線を西へ西へと追いやられ、戦略的優位を保たれたまま現在に至る。
しかし共和国軍の補給線がほぼ限界まで延びていることなどから、
専門家の間でも共和国の圧倒的優位を唱える者は少ない。未だ予断を許さない状況が続いている。


(注1)「企業」に近しいとされる某八大臣の挑発的な発言や謎のTV声名文など、
    開戦前の帝國の動きには不透明な部分が多い。
    帝國側がマスメディアの影響力を正しく認識しないまま声明発表に踏み切った可能性もあるとして、
    共和国議会の若手議員らは「企業」に詳しい説明を求めている。

(注2)今月初頭、皇帝が「召喚の儀」封印解除の勅命を下したとの情報があるが定かではない。
    また共和国でも召喚者待望論が噴出しているが、
    召喚に関する政府からの公式発表は行われないのが通例。
43名無しになりきれ:05/02/16 17:19:06
 RATATATATATA!    どっからでもかかってこいや!
       ,----、  
      i,,___i   ____    ,从,,
      ,(||[ヲ○ニ三Iiiiiiiil==i━
 (⌒) ⌒_ヽ_つ'ノ ミ     |  Y''Y
44名無しになりきれ:05/02/16 21:33:42
あぎゃががばばぎひゃががぐぐぐぎごげほば!!!!!!!!
45カイザー ◆4a9UrY4.4s :05/02/17 00:41:07
ミジクモと交戦していた場所から数キロ離れた人の気配の無い場所でカイザーとユニコーンは立っていた。
「ユニコーン、お前は幻獣界へ戻って傷を癒せ」
「・・・ええ、カイザーさんはこれからどうするのですか?」
カイザーは少し考えた後、こうユニコーンに告げた
「敵部隊の総数を減らす事は出来た、この戦場で俺ができる事はこれぐらいだろう
 後は共和国軍の兵士の個々の力で勝敗が決まる。・・・俺はここで死ぬ訳にはいかない、ここらへんで待機させてもらうぜ
 安心しろ、怖気づいた訳じゃないぜ。俺の心に勇気がある限り、聖なる光は世界を照らす・・・からな」
「・・・ええ、それなら僕も安心して帰れます。それじゃあ、また」
ユニコーンは足を進める、すると目の前の空間が歪み、その中に吸い込まれるようにユニコーンの身体が消えた。

ユニコーンを見送った後のカイザーは背後の木にもたれかかって考え事をしていた
(敵が近づかない限りこれ以上の戦いは避けた方がいいな・・・強敵が多すぎて俺も無理しすぎたな。)
そんな事を考えて腰をポンポンと叩いている。どうやら休憩ゾーンに突入したようだ
46名無しになりきれ:05/02/17 02:40:02
最前線から一間離れた後方にはエンチャンターの一団が陣を構え、刻々と変化する戦場風を見定めている。
「原因はあれだ、異界の屍術士よ。あやつが場の風を乱して……我らの術をバテさせた」
帝國軍指揮下、獣人部隊や軽・重歩兵が戦闘を始めてから数時間が経とうとしている頃、
前線の、特に一兵卒に与えられた装備の魔術付与が薄れ始めていた。
「右翼、川に沿って弱い黒の風。緑の葉、緑の風は硝煙を嫌って更に中央を避けます」
「ミジクモ殿の炎壁は冴え渡ってござった。しかるに地勢中枢は天幕より不動、甘魔の使いは現れず…」
「それでどうするのだ。鎧の加護をやり直す暇は無いぞ。ガーツ派のクレリックどもは返り血にも触れられぬし―――」
「敵の陣地方向から無色の強風。飛空する増援です。緑の葉、土の葉ともに……」
「ああ、うるさい。少し黙れ」
どっかりと座り込んで、外套姿の眼鏡魔女が杖を手放した。
「いちいち風の顔色を窺っていて魔力使いが勤まるか。赤子ではないのだ、好きにさせい」
「御意」
「おばば、供物が要る教団もあるぞ、使い魔を持たぬ生法師もあるぞ。早く色付けを済まさぬと進退窮まる」
戦場の兵士を護る精霊・まじない・魔術は出処も契約もバラバラだ。
どの霊に肩入れしてどのデーモンを貶すかで、こもごもの部隊への恩恵に差が顕れた。
如何に割り振れば最大限の利益をもたらすか。―――よし、『小さきハレー』の骨を奉ろう。
ハレーは根こそぎ金の気、木の気、水の気を吸い上げる。
吸い上げて力息吹(ちからいぶき)をひり出し、兵の腕力に換える。実に掃討戦向きだ。雑だが手間もかからない。
「決めたぞ。火を焚き大地へ知らせよ」
「御旗は」
「われが振る」
魔女は立ち上がり、杖と旗とを取り、酒を振り浴びて宣言した。
「ハレーーーーーーーーーーーーーーーーだ! ハレーを奉る! 式ィを練れーー!!」
「! マスター、正面に火の葉、狙撃と流れ矢の相です! 御身を狙っているやも……」
「何い?」
ぱん。
直後、二百メートル先から凶弾が放たれた。共和国のライフル銃であろう。狙撃か、流れ弾か。
魔女は倒れ、杖と旗とを落とし、地が酒を浴びた。
戦場の属性を調律する儀式は中断された。が、既にハレーは呼び出しに応じている。
「おばば…! おい侍女、おばばは何と仰られた! ハレー鬼の何を所望か!」
「―――聞いて、おりませぬ」
「っ、たわけ!!」
にわかに後衛の魔術師たちは狼狽し、ようよう鬼を鎮める。
「……コノコノバカドモガガ…ノウノクサレタコノサラシタムクロノバカドモガガ……」
還れず、ハレーは果てた。
「…………」
付与の切れた鎧は教会と己の守護に借金をし、繕った。
「…………」

時にあわただしく、時に躓きを繰り返して、帝國の戦は進む。
47颶風 ◆/oj0AhRKAw :05/02/17 16:16:29
>ミジクモVSカイザー

「参りましたね、ここまで肉薄されるとは、正直思いもしませんでした」
 本陣近くまで単騎駆けしてきた騎士と、本陣を護るミジクモを初めとする魔道士たちの攻防を、
多少離れた森の中から眺める。
 ある目論見があって本陣を離れたのが、仇となったかも知れない。
「まぁ、私は私の仕事をしてしまいましょうかね」
 颶風は、手を突いていた大木を見上げる。
幹の太さも、すんなりと天を指した樹形も申し分ない。

「では、これを切り倒していただけますか?」
 護衛兼作業員として借りて来た騎士たちに声をかける。
不満げな声を漏らす者達には、軽く魔弓の弦を弾いてみせる。
 この近隣に、軍病院があると聞いている。
死なない程度に、後の戦力に響かない程度に痛めつけても構わないだろう。
 弦を弾くたびに、弓の纏う燐光がその明るさを増した。
既に魔力の充填は済んでいる。
ある程度の時間さえおけば、大気中の魔力を取り込む事が出来る用に調整は済ませた。
・・・・連射するには、射手の持つ魔力や生命力を『喰わせる』必要があるだろうが。

「これ、材料にするんですから。とっととしてくれないと、いつまで経っても帰れませんよ?」
 口々に上がる抗議の声を無視して続ける。
「切り倒したら、丸木舟の形になるように削ってくださいね」

 颶風の学んできた<ゴーレム魔法>は多岐にわたる。
先の戦闘で見せた、<魔力を付与した武具の作成>など、ほんの児戯に過ぎない。
本領は、様々な魔道機械を作る事だ。
 人が乗り込んで動かす<操騎兵>、魔力と精霊力を用いて動く<ゴーレムシップ>、
さらに、ゴーレムシップに浮遊能力を付与した<フロートシップ>などなど・・・・。
 どれも、操縦する者の魔力と精神力・生命力を糧とする。
それ故に、操縦者を選ぶし、その数少ない操縦者にも命の危険があるが。

「まぁ、私が無理しない程度に動かせばそれで良いでしょう」
 一人で作れるのは、精々艀程度か。
それ以上の大きさの物を作るには、一人分の魔力だけでは足りない。
「時間も無いですし、一気に行きますよ!」
 隠しから取り出した緑の宝石を丸木舟に押し当て、それを通して魔力を送り込む。
じわじわと広がる白く濁った緑は、丸木舟を芯として、優美なラインの船の形を取る。
完全に生木の部分が覆い隠された後も、体積の増加は止まらない。
 大きく息をついて颶風が手を離した時には、数十人が楽に乗れそうな喫水の低い船が出来上がっていた。
艀、と呼ぶにはいささか大きいかも知れない。それに、普通の艀には風を切るための翼などは無い。
 まったく武装などは無いが、それはそれで仕方が無い。
前線と後方の行き来に使う程度、戦闘に参加するわけでも無いのだから。
 流石に、颶風の嘴の辺りが青白い。その身に蓄えた魔力を、あらかた注ぎ込んだのだから。
人の姿をしているのであれば、今にも貧血でも起こして倒れそうな風情に見えるだろう。

「本陣の方、楽観視できるような事態ではなさそうですね」
 身振りで、乗船を促す。
借り出した数人が全て乗船した事を確認し、操舵と魔力供給口を兼ねたパネルに手を突いた。
・・・・もし他の者が操舵するのであれば、もう少し判り易い形に作り替える必要がある。
「総員、耐ショック!」
 返事を待たずに、船をふわりと宙に浮かべる。
いきなり最高速で進み始めたせいで、騎士たちが転がるのも気にかけない。
「行きますよーっ!」
 ・・・・颶風の故郷でもあまり知る者は居ないが、彼女はれっきとした<スピード狂>である。
「少し、疲れました、かね?」
 大きく息をついて、操船パネルの前に座り込む。
今の所、気を張って操船する必要は無い。本陣へは、それほど間をおかずに到着するだろう。

行動:戦場から負傷兵を撤退させる為の、輸送船の作成
>31
(ヴァラシャンクス)
ヴァラシャンクスはパイロットの気絶を確認すると、部下を二人ほど呼び寄せた。
「この捕虜を叩き起こして、何処か人目につかない場所で尋問しろ。この戦闘の作戦概要を知っているかもしれん」
命令に部下の二人は頷き、光学迷彩術式を解いて姿を現すと、ジャックの装備・武装を没収し、手足を拘束して
二人がかりで、ジャックを近くの奥深い茂みの中に引きずっていった。
「あとは…加勢にでも加わってやるか」
部下の二人が茂みの中に消えたのを見届けると、ヴァラシャンクスは先程から戦闘騒音が聞こえる方角…廃村に三個小隊を急行させた。
何処の部隊が戦闘しているのかは分からないが、大方フェリペの部隊なのであろう。恐らく銃火器に手こずっているに違いない。
姿の見えない遊撃騎士を三個小隊(大体30人ほど)を派遣してやれば、一気に戦闘は楽になるに違いない。
その命令を受けた部下の爬虫類型獣人の遊撃騎士達は、物音一つ立てず、気配を全く殺しての隠密行軍を開始し始めた。
姿は見えないのに、空気は動き、<何か>が<いる>ということは分かるのだが、廃村へ続く道の途中にいた共和国軍兵は何も知らぬまま屠られていく。
廃村に急行する遊撃騎士達が通った後は、歪な肉の華がいくつも咲いていた。どの華も獣人の強靭な腕力によって引き裂かれたかのようである。
遊撃騎士の多くは装甲斬撃手甲(アーマークロー)を装備しており、手甲により防御と攻撃を両立させている。
主に徒手空拳による近接白兵戦闘を行い、格闘戦においては遊撃騎士がアスタルの中では最強である。装甲化され、鋭利な刃物を装着した
手足による打撃は強力であり、共和国軍の歩兵用のボディアーマーぐらい簡単に貫くことが出来る。
しかも遊撃騎士は爬虫類の獣人である為、尻尾も蛇腹状の装甲板で覆っている。装甲化された尻尾の一撃は強力である。先程の
ヴァラシャンクスの尻尾の一撃は、かなり力を制限していたので、気絶で済んだのだが、本気を出せばジャックは文字通り肉塊となっていたであろう。

廃村に到着した遊撃騎士の小隊は、家の屋根伝いに役場へと肉薄した。屋根の起伏から役場の様子を伺い、伝令を一人重装歩兵隊へ派遣した。
「…こちらはアスタル遊撃騎士隊の者だ。今は姿は見えないが、貴公の後にいる…」
伝令がコルネムの背後にそっと忍び寄り、耳元で囁いた。
「三個小隊ほど、加勢に参った…何か要望があれば聞こう。此方は直ぐにでも行動を開始する事が出来る」

姿の見えない遊撃騎士の伝令がコルネムに加勢に来た事を知らせる。
「やぁゼアハルト団長。急に呼び出してしまってすまないな。そちらにも都合があるだろうに。
とりあえず、椅子に座って楽にしてくれたまえ。いくつか連絡事項があるのでな」
主任参謀は執務室に呼び出したゼアハルトに椅子を勧めた。どうやら、長い話になるようだった。
「悪い知らせと良い知らせのどちらから聞くかね?ああ、やはり良い知らせからにしよう。持ち上げてから
叩き落とした方がダメージは大きいからな」
椅子に座って自分のことを訝しげに見ているゼアハルトに対して、主任参謀は勝手に話を進めていく。
「まずは喜びたまえ。野戦訓練が無駄にならなくて済むぞ。つまり、君達は前線に赴くことになったのだよ。
理由を聞けば喜ぶどころではなくなるだろうから、今の内にせいぜい喜んでおくことだ」
主任参謀はそう言い、意地の悪い笑みを満面に浮かべた。余程嬉しいことがあったのだろう。
「喜んだかね?何?いいから先を話せ?わかったわかった。いいから落ち着いてくれ」
そこまで言って、主任参謀は表情を改めた。冷徹な軍人の表情を浮かべた主任参謀は、致命的な言葉を口にした。
「では、単刀直入に言おう。皇帝陛下は君とミシェシエル様の関係にお気づきだ。金欲しさに密告した者がいるようでな」
嘘だった。全ては主任参謀の……帝都近衛騎士団『黒翼の重装騎士団』を疎んでいた帝國軍参謀本部の差し金だった。
黒翼の重装騎士団を破滅させ、近衛騎士団の特権を手に入れるために団長の醜聞を利用したのだった。
「大変だぞ、ゼアハルト団長。皇帝陛下はお怒りだ。ご自身が散々にお楽しみになった後で、ミシェシエル様を<離宮>に
放り込んでやるとの仰せだ」
<離宮>とは歴代の皇帝が性奴隷を養うために用いられた建物の異名で、そこに放り込まれた女達は皇帝自身や
文武の高官達の性欲を発散するためだけにその存在を許される。その場所に、側室の一人を放り込もうと言うのだから
皇帝の怒りの激しさがうかがい知れる。ちなみに、ありとあらゆる性的嗜好を満たせるように、古今東西のあらゆる性戯を
行うことができるように、その設備や道具は充実している。そのため、一年以上正気を保った女はいないと言われていた。
「まぁ、<離宮>の利用が許されている私としてはあの美しい肉体を蹂躙する機会が得られて嬉しいだけだがな」
主任参謀は自分がミシェシエルを抱く日がそう遠くないことが余程嬉しいのか、実に楽しそうに笑っている。
「それにしても……不思議なものではないかね。近衛騎士団が成立したのは妃の浮気のためで、近衛騎士団が
壊滅するのもまた、側室の浮気によるものとは、何とも因縁めいたものを感じるではないかね。まぁ、対外的には
結成と壊滅の理由は伏せられているからな。今回の件も、単なる増援部隊としての体裁を整えているから国民や
一般の将兵は何も知らない。だから、君達の武名は些かも損なわれていない。今はまだ、な」
自分の言葉が余程気の利いた言葉に思えたのか、主任参謀の笑みが深くなる。
「それで、当然、ミシェシエル様だけが処罰されるわけではない。君にも相応の処分がある。
まず、黒翼の重装騎士団に与えられた近衛の任務は解かれる。つまり、君達は様々な特権を剥奪され、
通常の騎士団と同じ扱いを受けることになる。そして、丁度前線には戦力が足りないからな。君達には即刻、
北方回廊へと向かって貰う。これは参謀本部からの命令だ。拒否は許されない」
一転、主任参謀の表情が厳粛なものに変わった。それはまさに軍参謀の表情だった。
(続)
「ゼアハルト団長。ミシェシエル様の護送は今夜行われる。詳細な護送ルートはこの書類にあるから、
興味があれば目を通すのもよいだろう」
そう言って、机の引き出しから出した一枚の紙をゼアハルトに差し出した。これさえあればミシェシエルの奪還など
赤子でも可能になってしまいそうなくらいに細かい情報が書き込まれている。
「男として恋人を救って叛逆者となるか、騎士として命に従って恋人を死地に追いやるか。なかなか難しいな、ゼアハルト団長」
主任参謀は再び笑みを深くした。最早、ゼアハルトがどうなろうとどうでもよかった。後任の近衛部隊は参謀本部の
息がかかった部隊から選ばれることになることが決定している以上、この件は参謀本部にとってはもう終了していた。
だから、ここでこうして主任参謀が情けをかけてしまっても、誰も困りはしないのだ。
「そういうわけだ。飛竜の使用許可を出しておくので、できる限り迅速に行動したまえ」
主任参謀は偉そうに手を振った。退出しろという意味だ。
「そうだ、言い忘れていたがね。忠誠と愛。どちらを選んでも、君はきっと後悔するだろう。だから、せいぜい悩みたまえ」
ゼアハルトの背中に向かって、主任参謀は一際大きな嘲笑を放った。権力闘争に勝利した者のみが浮かべる陰湿な笑みだった。
51名無しになりきれ:05/02/17 21:02:40
さあ皆さんに見てもらいなさい
52名無しになりきれ:05/02/17 21:10:40
オナニーをか?
>39
役場にたどり着き中になだれ込む。
パンパン!乾いた銃声が響く。しかし、弾は鎧に弾かれ傷跡を残すのみ。
「全員投降せよ。…殺しはせぬ。おぬしら、武器を回収じゃ。」
どっかりと椅子に腰をおろし、指示を出す。傷が痛むので配給物資の回復薬を塗っておく。
幾分かマシにはなったが、深いようでまだ少し痛む。
その間にも隊員達は敵の武器を回収し、敵兵を部屋の隅に固めていく。
あとは上の階の鈴木中尉だけとなった。しかし油断は出来ない。
先ほど食らった手榴弾がまだあるかもしれない。
ふと回収した武器を見ると似たような形状の物がある。これを使うか。
コルネムはそれについているピンを抜き、階段の上に向かって投げる。
しばらくして煙がもうもうと立ち上る。どうやらあれは催涙弾の類のようだ。
だが、爆発すると思っているので上に行こうとはしない。

>40
ふと、妙な音に気が付く。
隊員の一人に外を覗かせると、どうやらまた共和国の機械らしい。
空を何かが飛んでいるとのことだ。
これでは外に出ることは出来ない。椅子に座ってどうするか考える。

>48
>「…こちらはアスタル遊撃騎士隊の者だ。今は姿は見えないが、貴公の後にいる…」
急に声がしたので驚き立ち上がる。が、味方だと言うことで落ち着く。
>「三個小隊ほど、加勢に参った…何か要望があれば聞こう。此方は直ぐにでも行動を開始する事が出来る」
「むう、かたじけないの。加勢といっても役場は制圧済みじゃし…
あのヘリ、と言ったかの。あれは落とせんじゃろうし…」
姿が見えないのでまったく見当違いの方向を向いて話す。
「…二階にも敵は居るが、扉が閉まっておるじゃろうしな。開けたらその瞬間に攻撃を食らうじゃろう。
まあ、あんたらの好きにしてくれ。と伝えてくれぬか。」
>前スレ755
「そうか…あんたにとってそのガリーナとか言う竜は娘同然なんだな……」
空になったパンボリックのカップに酒を注いでやる。空となったカップに並々と琥珀色の液体が注がれ、あふれ出しそうになる。
「だがな、一つだけ覚えておけよ…どんなに大切な者でもいつかは自分の手を離れ、一人で歩いて行く…それは俺もアンタも同じだ」
そうとだけ言うと、シュッレトルティーは懐に手を入れ、ぼろぼろに擦り切れた一枚の写真を取り出し、パンボリックに手渡した。
「そこに写っているのは俺の嫁さんだ…名前はシェリシェイエス。薄紫紺の外骨格は俺達の中じゃ、美人の証だ」
擦り切れた写真には、一人の飛蝗型昆虫人の女性が写っていた。人間であるパンボリックにバッタの昆虫人の美人がどのようなものかは
理解出来るとは思えないが、その薄紫紺の外骨格は色鮮やかで、確かに美しいと言えるものであった。
「ちなみに俺の外骨格が赤いのは、俺の先祖が酔っ払いだったからって言うらしいが…酒造りが酒に飲まれてちゃ世話ないぜ」
何本目になるかは分からないタバコに火をつけ、大きく煙を吸い込んだ。
「ま、俺の外骨格の色の話はどうだっていい。その写真は今年の始めに撮ったものだから、御腹の子供は充分大きくなっているはずさ…」
タバコを揉み消し、新たにタバコを取り出そうと懐に手を入れるが、どうやら今のが最後のものだったらしい。
シュッレトルティーは諦めたように懐から手を出すと、頭の触覚を指先で玩び始めた。
「俺ももうそろそろ父親になる…子供の名前はまだ考えてもいないが、その子供だっていつかは俺とシェリィの元から去っていく。
どんなに大事に育てようが、子供は待ってはくれないだろうさ…団長はいつもそう言っている。団長のところは子沢山だからな。
多けれ多い分、別れの寂しさは大きい。でも其の分、いい思い出は出来るはずだ…駄目だ。俺も酒が回ってて何が言いたいんだかさっぱりだ」
良く見ればシュッレトルティーの赤い外骨格は、いつもより赤みが増しているようにも見える。彼も酒に酔っているのだろうか?
「つまりだ。アンタがそんだけ大事にしすぎると、別れの時が辛くなるんじゃないのか?それに竜ってのは高貴な生き物だ。人に慣れていても
心の何処かでは譲れないところがあるもんだ…ま、それはアンタの問題だから俺が口を挟んでも仕方が無いことだが」
空になりかけている酒瓶を気にしながら自分のカップに酒を注ぐ。酒を注ぐ手は少し震えていた。
(畜生…何なんだ!?この精霊はさっきから俺に何を伝えたいんだ!?)
先程ガリーナの名前を言い当てたのは、今自分に付きまとっている精霊の所為である。シュッレトルティーは団の中でも人一倍感性が鋭く、風の
精霊に留まらず、様々な精霊の声をハッキリと聞く事が出来る。今の悪戯好きの精霊もその一つである。だが今ではその精霊も断片的にしか語りかけてこない。
(エレメント?拒絶?存在の全てを否定された存在?だから一体それは何なんだよ!?…ぐっ…竜を喰う竜?訳が分からん…)
精霊の声は今では耳障りな雑音に近い。段々と意味不明な言葉の羅列となっていき、徐々に頭痛を伴っていく。
(いい加減にしてくれ…俺は人の心の中なんて覗きたくは無いんだ!……ヒトを生み出すヒトの竜?だから何だ其れは!?)
遂に手の震えは大きくなり、注いでいた酒瓶を取り落としてしまった。テーブルに琥珀色の液体がぶちまけられる。
(止めろ…止めてくれ…これ以上俺に語りかけないでくれ。俺はヒトの心の中なんて………)

頭の頭痛は酷くなり、そのままシュッレトルティーはテーブルに突っ伏した。意識が混濁とし、シュッレトルティーの複眼は心なしか濁った色であった。
>54
パンボリックは手渡された写真をまじまじと眺めた。
このグレープミストの装い(外殻)をした婦人、シュッレトルティー曰くの「美人」らしいが
昆虫人種である彼らの美の基準は良く分からない。
分からないくせに世辞を言うのも、何だか間違っている気がした。それはともかく。
(ふむ…ガリーナも何時か一人立ちを望む日が来る、か。初対面でなかなか痛い所を突く)
もしもガリーナが自分の許を離れたがったら? もしもガリーナが自分を嫌ったら?
私は彼女を自由にするだろうか。   考えるまでもない問いではあった。
「副団長はもうすぐ父親になられますか。それは結構なこと―――」
と、ごとりとグラスが倒れ、中の酒が零れる音がした。
写真から視線を上げると、息も絶え絶えなシュッレトルティーの姿がある。
「いかがなされたシュッレトルティー…! そこの戦士よ、失礼だが副団長は持病などお持ちなのか!?」
ジャイやオゼロには、一体彼に何が起きたのか理解できない。
周囲にいた昆虫人にも容態に心当たりのある者はいないように見えた。
そうこうしている内に、シュッレトルティーの容態は悪化していく。

>シュッレトルティーは団の中でも人一倍感性が鋭く、
>風の精霊に留まらず、様々な精霊の声をハッキリと聞く事が出来る。

―――何か聞いている。
パンボリックは咄嗟に感付いた。シュッレトルティーの細かな複眼の動き、何か喋ろうとする顎…
確かに分かる。彼は聞こえない何かを聞いている。何だ? 一体何を聞いている?
シュッレトルティーの言葉を思い出す。曰く、ガリーナという名は精霊が彼に「教えた」と。教えた? 何を?………!
「私の思考か! ジャイ!」
「了解!!」
今まで見せたことも無い素早い動きでパンボリックの背後に回り込むと、空の酒ビンで頭を思い切り殴った。
後頭部を強打されたパンボリックは物も言わず倒れこむ。これで精霊が胸の内を囁きかけることは無い筈だ。
もっとも、天幕内に騒然とした雰囲気を漂よわせてしまったが……
ジャイは気絶したパンボリックの肩をいたわるように抱き、微妙な空気の中で微動だにしない。
「申し訳ない。俺、酒が過ぎたみたいです。どうもふざけ半分に雇い主を殴っちまって、ははは」
酒ビンは粉々に砕け、それを握るジャイの掌にも血が滲んでいる。冗談めかすつもりならもっと上手に出来ないのか。
そんなことを思いながら、オゼロは未だ苦しみから脱しきれない様子のシュッレトルティーへ近付いた。
ジャイと対照的に柔らかな笑みさえ浮かべて。
「御加減はいかがですか、副団長さん。具合は回復しました?まさか貴方ともあろう方が呑み過ぎも無いでしょうけど…
 ……仮定の話ですが。もしパンボリックの脳内を覗いたというならくれぐれも内密に願います。
 邪悪な気配がしたなーとか、忘れちゃったらダメな情報じゃなかったかなーとか、感想を持たれるのは結構です。
 それはどうか、御身の心奥深くにお納めください。ガリーナは決して貴方の敵ではありませんし、」
放っておきゃあ勝手に死にます と。ジャイにも聞こえない声で付け加えて踵を返す。
室内に、濃いアルコールの匂いが立ち込めた。
56名無しになりきれ:05/02/18 03:55:33
各スレの落ちぶれが集まるゴミタメスレはここですか?
57企業本社専務 ◆mgQiUV7U2Q :05/02/18 20:30:33
「あー……君がジェイク・アークヒル君だね?話は総務部長から聞いている。
私は当社の専務だ。社長がご多忙なため、私が話をさせて貰う。
必要なデータは全て総務部の方から上がっているから、自己紹介は必要ない。
早速、ビジネスの話に入るとしよう」
執務室にジェイクを呼びつけた専務は、必要最低限のことだけを述べていく。
「……というように、君と我々との契約は任務単位でのものとなる。だから、我々が
用意する任務を一つこなすごとに元の世界に戻るかどうかを決定する権利を与える。
ちなみに、契約そのものが嫌だというのであれば、今すぐ契約を破棄して送還しても構わない」
企業が持つ技術は、魔術、科学共に二大国を凌駕している。召喚と送還に関する自由度は、
非常に高いのだった。
「契約を破棄しないというのであれば、早速で悪いが仕事を頼みたい。我々のスタンスについては
既に総務部の方で説明があったと思うが、確認のためにもう一度説明しよう」
専務が卓上のスイッチを押すと、専務の背後のガラス壁一面に世界地図が浮かび上がった。
世界地図は東西二色に塗り分けられていた。
「我々はこの二大国の対立を利用して利益を得ている。つまり、我々にとってはこの戦争の終結は
多大なる損害なのだよ。しかし、この勢力図を見て欲しい。北方回廊……繋がっている部分の境界線が
動いているだろう?このままでは帝國が共和国内に侵攻することになってしまうかもしれない」
再び卓上のスイッチを操作をすると世界地図が消え、二つの棒グラフが浮かび上がった。
右の方が長く、左の方は右の半分程度しかない。
「右が現在の総売り上げで、左が戦争終結、もしくはどちらかの国が圧倒的優位に立った場合の総売り上げだ。
見ればわかるだろうが、戦局が変動すると我々の利益は最悪の場合、半分近くにまで落ちてしまう」
専務は卓上のスイッチを操作して、グラフを消した。
「そこで本題だ。君には共和国側のバックアップを頼みたい。いや、これは婉曲的過ぎるな。君に頼みたいのは、
帝國軍の前線部隊に所属する有力な軍人の殺害だ。一人でも消せば、帝國軍の動きも鈍るだろう。それで充分だ。
ああ、無論、支援はする。必要ならば装備も用意するし、我が社が誇る暗殺部隊も一個小隊までならば
動かしても構わない。では、早速仕事に取り掛かってくれたまえ」
専務はジェイクに退出を促した。
「ああ、カァラ君。よく来てくれた。実は少々困ったことになっていてね」
元帥は困ったような表情を浮かべていた。
「前線の方で動きがあったようなのだが、どうにもこちら側が劣勢なのだ。
何でも、死者を操る魔術師がアンデッドを動員して戦局を混乱させたのを
皮切りに、敵傭兵部隊による奇襲、更には隠密行動部隊の展開など、
共和国軍はとにかく厄介な攻撃を続けてきている。レールガン砲台を
突破できるとは思わないが、それでもこれ以上の被害を出すことは避けたい」
机上の資料に目を通しながら、元帥は苦悩していた。このままでは責任問題になりかねないのだ。
「そこで、だ。目には目を。剣には剣を。銃には銃を。そして……魔術には魔術をというわけでな。
君には赤き疾風を率いて前線に向かって貰いたい。帝國軍など魔術戦力さえ沈黙させて
しまえば、こちらの圧倒的火力で容易に制圧可能だ」
自信満々に、元帥はカァラに断言した。そして、正式な辞令を差し出して笑う。
「さあ、早速、前線に向かってくれ。既に兵員輸送機の準備は整っている。この辞令を見せれば
大抵の部隊が便宜を図ってくれるはずだから、前線でもそれほど不自由はしないはずだよ」
「………孤高の火炎竜……実在したのか……」
北方回廊に程近い大森林。北方回廊に向かうための近道であるそこを、
北方回廊への増援部隊として行軍中の一個連隊は、伝説上の生物に遭遇した。
突然に現れたその威容に、連隊長以下全部隊員が驚愕に立ちすくんだ。
「手足のない竜……ヴォルギリアス………」
連隊長は呆然と呟いた。竜族の中では特に巨大な部類ではなかったが、
単なる歩兵部隊である自分達にとってはただ竜であるというだけで脅威だった。
「総員、竜を刺激せぬように退……いや、待て!その場で小休止!」
その竜を目にした途端に恐慌に駆られた連隊長は、一旦は撤退を考えたが、
すぐに考えを改めた。いい考えが浮かんだのだ。
「ヴォルギリアス!我々は共和国軍の者だ!」
聞こえるかどうかわからないので、とにかく大きな声で語りかける。
「我々は貴方と敵対する意思はない!それどころか、我々は貴方の森を
守ろうとしているのだ!そう、あの憎き帝國軍が昔のようにこの森を再び蹂躙しようと
進軍を続けているのを、我々は迎え撃とうとしているのだ!どうだろうか!
我々共和国軍に力添えを願えないだろうか!?」
連隊長はヴォルギリアスを独断で味方に引き入れようと画策しているのだった。
何らかの責任問題に発展するかもしれないが、それでもあの元帥ならば功績として
認めてくれるはずなので、連隊長は大胆な行動に出たのだった。
「もし、その意思があるならば、今すぐにでも北方回廊へと向かってくれ!」
>57
召喚早々、難儀な話だ。
退室したジェイクは煙草を取り出した。
気付いてみれば見知らぬ世界、見知らぬ場所。
いきなりのハプニングには慣れてるがコイツはとびっきりだ。
………だがまぁ、仕事で呼び出されたのなら話は簡単に片付く。
どうやらこの連中は俺のことを知っている。
そして、俺を呼び寄せ、仕事を依頼した。
「…………はぁ。契約しちまったからなぁ」
なかなか、楽しめそうじゃないか。
「まぁ、やるけどな。とりあえず………」
そう、とりあえずまずは弾と「足」だ。
仲間はいらない、独りの方が身軽だ。
「さて、どうするかな?」
どうやって共和国に行けばいいんだか。
61カァラ ◆mRmMX8Kgoo :05/02/18 22:00:36
「はぁ…」
カァラはなぜ軍人でも無い自分が前線にまで出かけねばならないのか不満であった。
最も、共和国で魔術においては赤き疾風以外の戦力は皆無と言って良かったし、
その部隊を動かせるのはカァラと防衛大臣のみであり、元帥は政治上の理由から防衛大臣に頼む訳にはいかないし、あの部隊をまともに指揮出来るのはカァラ位しか居ないであろう事は分かっていたが

ちょっとした情報筋からアンデッドや獣人部隊、少し苦戦しているらしいような事等は聞き知っていたが、ここにきて少しどころでは無い事が解った。散らかった卓上の資料。戦略図に書き込まれた無数の線。元帥の目のくま。困っている様子は演技では無い。
『レールガン砲台を突破出来るとは思わないが』という言葉もどこか自信なさげである
カァラは微笑した
(こういう場合は恩を売っておくのが一番のようですね)
「えぇ、分かりました。力になりましょう、保証はしませんが」
辞令を受け取ると、元帥の目を見て
「早速ですか、流石に仕事が速いですね」(随分お急ぎのようで)
と言うと、別れを言い部屋から出ようとしたが、一度振り返り、
「戦いが終わったら(私が)半年間は休暇を貰えるように取り計らってくれますね?」
と少し笑いながら言うと答える暇を与えさせずに部屋から出て行った
>59
「・・・面白い話だな。戦をやるのもまた一興か・・・」
ヴォルギリアスは、変化のない毎日に満足できず、今もこうして空を散歩している所だった。
そんな折、共和国の人間、それも軍人からお呼びがかかったのだ。無論、乗らない訳が無い。
いや、あの出来事が記憶にある限り、この思いは打ち消せないはずだ。
(しかし、あんな徴兵したての新兵を集めた間に合わせ部隊までも戦いに出すとは・・・それほど苦戦しているのか)
眼下の歩兵連隊を見ながら、ヴォルギリアスは考えた。

渡り鳥や木々の話を聞いて、戦争が起きているのは知っていたが、帝國軍がこの森に進攻してくるまでは関与しない
つもりでいた。だが、あの軍人の話を聞く限り、悠長に構えている暇は無い様子。
しかし、この話を持ち掛けた軍人が嘘を吐いているとも限らない。
(なら、確かめに行ってみればいいではないか。自分の力をここで燻ぶらせるのも勿体無いだろう。
俺は人間とは違って、荷支度など必要ない。今すぐ行ってやる。)
ヴォルギリアスは、空中で「戦場で会おう」というサインを描き、北方回廊に向けて飛行していった。
63鈴木中尉 ◆DDGCBdpW/w :05/02/18 23:07:20
>40
突然腰に下げている小型無線機が鳴る。
この無線でも受信できるところから見て近距離からの通信らしい。
急いで窓から外を見ると、妙な形の航空機が確認できた。
「こちら鈴木。貴官はもしや友軍の航空隊か?負傷兵と衛生兵部隊が敵に捕らえられた!
よって歩兵部隊の増援を早急に願う!集合地点は役場前!目標は敵歩兵!以上!」
そう言って無線を切る。これで歩兵部隊が来れば戦死は免れられるだろう。
>53
カラン、と言う音と共に何かが転がってきた。手榴弾か?
すぐに伏せるが爆発はしない。何故だ?
調べようと近付くと白煙が噴射された。まさか・・・・催涙弾か!
すぐに息苦しくなる。目も開けない。
「ゲホッ!畜生、小癪な手を使いやがって!どこにいる!」
叫びながら機銃を乱射する。この状態で敵に近付かれてはならない。
ガスの効果が切れるまで射撃を続けなければ。
>63
「オーライ、と言いたい所だが暗くて敵を判別し難い。
警告はするが味方を撃つかも分からん」
一機が高度を落とし、ホバリングする。
「色々と余裕が無い、後ろの三機にゃ適当にやって貰え」
二門のロケット・ポッドからそれぞれ一発ずつ、AM-SBが発射された。
砲弾は空中で炸裂し、地上一帯が薄い霧に包まれる。
日光の下なら黄金色に輝いて見えただろうそれは、魔力を拡散させる特殊な粒子だ。
続けて機体の角度調整を行うと、機銃掃射を開始した。

もう一機の攻撃ヘリが、輸送ヘリを先導する。
輸送ヘリ三機は、役場から数百メートル離れた広場の上空で停止した。
「『ワーム』降下!」
各機の「ワーム」兵員がロープを投げ下ろし、降下準備に入った。
>41
ヴェルターを乗せた輸送ヘリが基地を出発し、廃村へ到着する。
「ワーム」降下の地点と相対して役場を挟む位置にヘリを運び、
「ここで降ろすぜ、しっかり稼いで来な」
操縦士は先行した三機と連絡を取り合いつつ、機体を着陸させた。

「ワーム」隊員が次々とロープ降下する。
事前の予定では第一・第二分隊を中心に、役場前の制圧へ向かう事になっていた。
「チーム・アルファ、チーム・ブラボー!
ローガン、隊員を確認しろ!」
隊長エディが叫ぶ。各隊員は周囲の安全を確認すると、エディの元へ集まった。
66前線基地本部 ◆..OhPeBexU :05/02/19 00:48:55
辺りに人の気配が無いと見て取って、ワレスタインは執務室のテーブルに置かれた黒電話に手を掛ける。
ダイヤルを震える指で回し、ちらちらと衝立の隙間を窺いながら受話器を取る。
「私だ、ワレスタインだ。今回の話はどうなっているんだ?
確かに受け取る物は受け取ったし、私もそれなりに働き掛けたつもりだ。
だがね、例の対竜兵器を自爆させた上、搭乗員までおっ捕まるなんて割に合わんじゃないか?
このまま戦線を、帝国の連中にくれてやる程余裕は無いぞ。
まさか、あのデヴィルどもとまで商売しているんじゃないだろうな?
企業秘密? シャレにもならん……」
「失礼」
衝立の向こうから不意に、デズモンド・ハーケニング空軍大佐が顔を出す。
老将は擦れた声で、
「ああ、また掛け直す。急用だ」
そう言って彼が受話器を置こうとした一瞬、大佐がテーブルの脇に回った。
「電話を切らないで頂きたい」
「どうした、こりゃ私用電話だよ。
ちゃんと仕事とは区別しているし、大目に見て貰えんかな。妻の容態が……」
デズモンドが突然、手を懐に遣る。
彼の手は白檀の銃把を握り締め、軍服の下から抜き出された。
「勿論心得ておりますとも、司令官殿」
67ジャカ ◆rMEfPDyTEI :05/02/19 00:52:04
倒れたミジクモを支え、ジャカは足早に奥の天幕に向かう。
本当は病院に連れていかなければならないのかもしれないが、
この兄の性格からして、まだ戦いは終わっていないのに戦場から離れるのは嫌がることだろう。
そう思い、ミジクモを奥の仮眠室に寝かせたジャカは、これからどうするか考えを巡らせていた。
「怪我人けっこーいるんだなぁ…」
先ほどのカイザーの奇襲。外に出てみると、担架が縦横無尽に駆け回っていた。
軽い怪我の者から、重傷、重体の者まで。奇跡的にも死者は居なかったようだが、生死の境をさ迷っている者はいる。
特に危ないのが、ユニコーンの角に体を貫かれた魔術師。刺され所が悪かったらしく、血が止まらないらしい。
簡単な法術では効果がなく、このままでは失血死してしまうかもしれない。病院までもつかどうか。

(こうなりゃ…)
こんな時のジャカの判断は早い。その魔術師を背中に背負うと、病院に向かって走り出そうとする。
人を殺すのは好きだが、人が殺されていくのを見るのは何故だか忍びない。
できるなら味方には誰も死んで欲しくない。ジャカはいつもそう思っている。
怪我人輸送用の馬車よりも自分の足が早いことが分かっているので、助かる確率が1%でも高い方を取る。

>47
「うわぁ!?」
走ろうとしたジャカを遮るように、目の前に巨大な船が現れる。
当然ジャカはそれが颶風の運転する船だとは微塵にも思わない。それ以上に可能性のある候補があるのだから。
「敵襲か!」
ここでジャカには選択を迫られた。船を食い止めるか、スルーして病院への道を急ぐか。
船を食い止めては、その間に魔術師は死んでしまうかもしれない。
逆に船を見過ごせば、カイザーの襲来で浮き足立っている本陣は壊滅的打撃を受けるかもしれない。
…それも、この船が敵である場合、に限定されるのだが、ジャカには味方である可能性など頭にない。

「…えぇい!来いやぁ!」
少し考えてジャカが導き出した結論は、この船を短時間で叩き潰し、それから慌てて病院に行くこと。
道の脇に魔術師を寝かせると、刀を抜いて船に突撃を始め…

「あれ?」
切りかかろうとした一瞬、船に乗っている人物がちらりと見えた。見覚えがある。帝國側だ。
「な、なんだよ…」
安堵の表情を浮かべると、魔術師を再び抱え、船に先回りして本陣に戻る。
あの大型船を、怪我人の輸送に使えるよう要請するためだ。
>50
部屋の外に出たゼアハルトはその場に立ち尽くしていた。頭の中には先程の参謀の言った事が何度も反響していた。
>ミシェシエル様を<離宮>に 放り込んでやるとの仰せだ
>ミシェシエル様を<離宮>に 放り込んでやるとの仰せだ
>ミシェシエル様を<離宮>に 放り込んでやるとの仰せだ
>ミシェシエル様を<離宮>に 放り込んでやるとの仰せだ
「うあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!」
咆哮と共に壁を殴りつける。装甲化されたゼアハルトの拳撃はいとも簡単に壁を砕き、腕の半ば程まで壁の中にめり込んだ。
<離宮>…ゼアハルトもそれについては知っていた。皇帝や一部の文武の高官達だけに利用が許されている、性欲を一方的に
発散する肉欲に塗れた場所であるということを。そこにいる女性はそれらの性欲を満たす為だけにその存在を許され、ありとあらゆる
性戯を行なう事が出来ると。更に動物やモンスターとの獣姦ショーやらされるとも聞く…狂気の沙汰である。狂っているとしか言いようが無い。
そこに最愛の女性を放り込むと言うのである。しかも皇帝が存分にミシェシエルを嬲った後にと聞く。
今のゼアハルトにしてみれば、ミシェシエルを自分以外の男の手に触れさせたくは無かった。たとえそれが主君である皇帝であろうと…
ゼアハルトも『離宮』のことは嫌と言うほど知っている。一部の特権階級にある人間達の為に、ありとらゆる性的嗜好
を満たす為だけの存在を囲っている場所だと。ゼアハルトや近衛騎士に言わせれば、狂気の沙汰である。
か弱き女性を鎖に繋ぎ、陰鬱な牢獄に押し込め、己の醜い欲望の為だけに辱め続ける…誇り高い騎士にとってみれば唾棄すべきことである。
しかも最愛の女性をそのような場所に繋ぐと言うではないか?本当にそのようなことになれば、彼女が発狂する以前に自分が狂ってしまう。

「だがどうすればいい…」
ゼアハルトは兵舎の自室に戻り、鎧を脱いで黒い軍服姿になって自分のデスクの椅子に腰掛けていた。いつもなら胸に近衛騎士を現す記章が
ついているが、近衛騎士でなくなった今の自分には必要なかった。記章は取り外してデスクの上に置いてあった。
今のゼアハルトは失意のどん底にいた。力なく椅子の背もたれに寄りかかり、その端整な顔には心労の色が浮かんでいた。
この書類に記されている情報が真ならば、近衛騎士団専用の飛竜にのっていけば十分と経たずにミシェシエルを奪還できるだろう。
だがその後はどうする?ミシェシエルを皇帝の嬲り者にされる前に奪還できたとしても、その後はどうする?
…奪還したとしても、この帝國の領内を当て所なく彷徨うしかない。そうなれば直ぐに捕まるだろう。それに自分は近衛騎士団を預かる身。
騎士団は近衛の任務を解かれたと言うが、それでも帝國の騎士団の一つである事に変わりは無い。その団長が国家反逆罪に近いことを行なえば、
団員にどのような処罰が下されるか分かったものではない。それに自分は皇帝に恩があり、騎士である前に一人の武人である。
そのような振る舞いが武人のすることなのか?だが最愛の女性を失うのは避けたい。
だが最愛の者を選べば、弟のような部下達がどうなるか分かったものではないし、何より自分の誇りが失われてしまう。
「どうすればいい…私は愛を取るべきなのか?それとも騎士であり続けるべきなのか?……」
そのような自問自答が暫く続いたが、そんなことをしている間にも刻一刻と約束の時刻に近づいていく。
その時であった。誰かが自室の扉をノックする音に気付いたのは。ゼアハルトは直ぐに書類をデスクの引き出しにしまった。
「誰だ?」
何時もと変らぬ感情の起伏など微塵も感じさせない声で言ったが、果たして隠しきれただろうか?
直ぐに扉は開き、一人の近衛騎士が入ってきた。
「失礼します」
部屋に入ってきたのは、近衛騎士団の副団長を務める“シュタイナ・ツァストゥラトゥ”であった。シュタイナは左目は黒い眼帯で塞いでおり、
右頬に十字の傷跡があるが、容姿は整っていた。短く切り揃えられた金髪と猛禽類を連想させる鋭い瞳が特徴的な青年である。
「何か…考え事ですか?」
シュタイナはゼアハルトの顔を一目見て、そう直感した。そしてちらりとデスク上の近衛騎士記章を見た。
「何故そう思う?」
「いえ…団長がそんな顔をするのは大抵は考え事をしている時ですから」
「そうか…やはりお前に隠し事は無意味なようだな」
ゼアハルトは引き出しから先程の書類を取り出し、シュタイナに今自分が置かれている立場の状況を説明した。
(続き)
「私を怨むか?シュタイナ…」
全てを話し終わり、ゼアハルトはシュタイナをじっと見据えた。
「いえ…貴方らしいといえばらしいですね」
シュタイナは、何でもない、とでも言いたげな顔であった。
「シュタイナ…お前は何とも思わないのか?」
ゼアハルトはシュタイナの全然意に介していない態度が信じられなかった。ゼアハルトを始めとした近衛騎士達は幼少の頃から
皇帝や要人の身辺警護をする為だけに、過酷な訓練を施され、魔術によって体を強化されてきたのである。
言ってみればその人生の大半を皇帝や要人の為に費やしてきた者達なのである。彼らの幼少期にはあまり楽しい思い出など存在しない。
しかも皆近衛騎士であることを誇りに思っており、近衛の任務を解かれたということを知れば……
「そりゃ確かに近衛騎士でなくなったことには衝撃ですよ。というか、今の話で私は色々と生きる目標を失ってしまいましたよ」
爽やかな笑顔を浮かべながらシュタイナは言った。
「ってのは冗談ですよ。団長、私には既に騎士道以外に生きる目標を見つけていますから…」
そう言いながらシュタイナはポケットから一枚の写真を取り出した。
「…実は付き合って半年なんです。やっぱり騎士って、女性の為に生きるべきなんじゃないのでしょうか?」
照れ笑いを浮かべながらシュタイナはゼアハルトに写真を手渡した。手渡された写真には一人の看護婦が写っていた。
年の頃は17、18ぐらいだろうか?21歳のシュタイナよりも三、四歳年下の少女のようである。看護婦姿の少女ははにかみながら、
太陽のように明るい笑顔を浮かべていた。
「シュタイナ…」
「いい子でしょう?彼女は看護学生だったのですが、『戦乙女』創設と共に前線に行ってしまいました…今頃は傷ついた将兵の
手当てに忙しいでしょう。しかし、手紙には毎日が充実した日々だと書いてありました…」
照れくさそうにぽつりぽつりとその少女との出会いを語りだすシュタイナ。その顔は終始嬉しそうであった。

「…人が人を好きになるのは道理です。私はそれをとやかく言える立場にある訳ではありませんし、言うつもりもありません」
「シュタイナ…」
「きっと皆私と同じだと思いますよ?というか、あのミシェル御姉さんと団長がそんな仲だったと知ったら…半殺しですね。
あの我らが聖母、ミシェル御姉さんとそんないい仲になっている団長は近衛騎士団の全員を敵に回しましたね…ま、これはおいといて。
…皆身寄りの無い子供でしたからね。母性に餓えていました。私もミシェル御姉さんに何度寝かしつけてもらった事だか…」
シュタイナはしみじみと幼少期に想いを馳せていた。
「ではシュタイナ。私はどうするべきだ?…私は彼女を助けたい。だが助け出したその後はどうする?私には頼る者がいない…」
力なく溜息を吐くゼアハルト。だがシュタイナは
「そんなことは簡単ですよ。団長、何も彼女を連れて逃げる事はありませんよ…貴方にこれ以上の地獄に落ちる覚悟があるのならば…」
シュタイナはゼアハルトの耳元で囁き、
「私に考えがあります」
そしてにやりと微笑んだ。
(続き)
ゼアハルトはシュタイナに言われた通り、近衛騎士団専用の飛竜の厩舎へと急いでいた。
先程まで軍服姿であったが、いつもの黒い重装鎧を身に纏っており、黒いマントをたなびかせながら厩舎へと向かっていた。
背には黒い重大剣を装備し、腰には二挺の大型の拳銃を下げていた。拳銃と言っても銃弾ではなく、自身の魔力を収束して撃ち出す
帝國特有のものであり、近衛騎士団専用に作られたとあって、その威力はかなりのものである。魔力を充分に込めれば
破壊力は増し、ゼアハルトが使用するものはかなりの性能を持っていた。恐らく一発で多数の人間を即死させることが出来るだろう。
重大剣や大型魔装拳銃の他にも、刀よりやや小さいものを二振り後腰に装備し、特殊な呪術が込められた護符を数枚携行していた。
常人には重くて身動きが出来ないような重装甲の鎧を纏った上で、この重装備である。
それで音も無く迅速に移動する事が来出るのだから、近衛騎士という者達がいかに人間離れした身体能力を持っているかが窺える。

厩舎の中の飛竜達は既に羽を折り畳んで休んでおり、飛竜達の静かな寝息しか聞こえない。ゼアハルトは飛竜達の個別に分かれた部屋
の間を縫うようにして音も無く進み、一頭の飛竜が休む部屋の前で立ち止まった。
「…久し振りだな。クリューゲル」
そっと格子の隙間から手を伸ばし、その飛竜の漆黒の外骨格に手を触れた。
ゼアハルトが手を触れると、その漆黒の飛竜は長い首を持ち上げてゼアハルトを見た。その瞳はゼアハルトと同じ紅玉であり、馬のように
優しく、穏やかであった。飛竜は長い首を伸ばしてゼアハルトに擦り寄ってきた。
「いい子だ…クリューゲル。今日は久し振りに飛ぶぞ」
ゼアハルトは飛竜の頭を優しく撫で、部屋の鍵を開けた。鉄製の頑丈な扉が音も無く開き、ゼアハルトは飛竜に外に出るように促した。
飛竜はのそのそと部屋の外に出、大人しくその場に伏せた。ゼアハルトはそれを確認すると、クリューゲルに竜具(馬具のようなもの)を手際よく
着ける。ものの数分で竜具を装着し終わり、いつでも飛び立てる準備が整った。ゼアハルトはクリューゲルの手綱を引いて飛竜の厩舎の外に出た。
「…朧月夜か。視界は少しばかり不良。されど飛行に支障は無いな…」
外に出たゼアハルトは夜空を仰ぎ見た。今日は満月のはずであるが、少しばかり厚い雲に満月は隠れてしまい、黄色い輪郭を残して雲の中にぼやけて
浮かんでいた。
「…クリューゲル、行くぞ」
ゼアハルトは颯爽とクリューゲルに跨り、拍車をかけた。脇腹に拍車をかけられたクリューゲルは澄んだ声で短く鳴くと、黒い翼を大きく羽ばたかせて離陸した。
徐々に地面から離れていく…直ぐに高度は上がり、速度が増していく。このままいけば、あの書類に記されたあったタイミングで助け出せそうである。

側室達は城壁の外周部分の『後宮』に囲われている。皇帝と王妃が居を構えている『本丸』からは結構距離があり、皇帝が一夜を共にしたいと望むのならば
その夜のお供をする側室は数名の兵によって『本丸』まで護送される。何分、皇帝の気分次第で呼ばれる為、その護送の時間は決まってはいない。
「見えた…あれか!」
広大な城の外周を飛ぶ事数分間。『後宮』と『本丸』を繋ぐ空中回廊に、周りを兵士に護られたミシェシエルの姿があった。
「…クリューゲル」
クリューゲルは首だけで主を振り仰ぎ、無言で頷いた。クリューゲルは一回大きく羽ばたくと、回廊に向かって急降下し始めた。直ぐに空中回廊が眼下に迫ってくる。
先頭を歩いていた兵士がクリューゲルの羽ばたく音に気が付き、空を仰ぎ見た時には、既にゼアハルトがクリューゲルの背から跳び下りていたところであった。
背中の黒いマントを翻し、音も無く集団の先頭の降り立つ。朧月夜を背景に闇夜から現れたゼアハルト…
ゼアハルトは回廊に降り立つと、ゆっくりと立ち上がって先頭の兵士を見据えた。
「あ、貴方は…」
先頭の兵士が何か言おうとしたが、そこから先の言葉が意味を持つよりも早く、ゼアハルトは瞬時にして間合いを詰め、その兵士の鳩尾に拳をめり込ませていた。
兵士の鳩尾周辺を覆っていた鎧は粉々に砕け、兵士は力無くその場に崩れ落ちた。
ゼアハルトはその兵士が崩れ落ちるよりも早く、ミシェシエルの右脇を固めていた兵士の目の前に残像を伴って現れ、上段蹴りを叩き込んだ。
強靭な脚力から繰出される蹴りは兵士の兜の側頭部を捉え、そのまま兵士は吹き飛ばされ、回廊の石造りの手摺に叩き付けられた。
一瞬、身を翻して左脇の兵士の兜の顎に裏拳を叩き込む。装甲化された手の甲の一撃は兵士の兜の顎を歪ませ、内部に強烈な衝撃を与えた。
そのまま兵士は呻き声さえ漏らさずその場に崩れ落ちた。後に残ったのはミシェシエルの後を付き添うような形で護衛していた兵士二人。
ゼアハルトはその兵士二人に向き直ると、腰のホルダーから二枚の護符を取り出し、その二人に投げつけた。
護符は一直線に飛ぶと、それぞれの鎧の胸部装甲板にピタッと張り付いた。ゼアハルトはそれを確かめるまでも無く、片手で印を結んでいた。
「すまんが少々眠っていてくれ!」
張り付いた護符が淡い光を発し始めたかと思うと、護符から高圧電流が流れ始めた。
護符に張り付かれた兵士二人は、強力な電撃に体中が痺れ、紫電を飛び散らせながらその場で電撃によって狂わされたステップを踏ませられた。
電撃を放電し終わり、胸に貼り付けられた護符が灰となると、鎧の隙間から煙を立ち上らせながら、二人の兵士は糸の切れた人形のようにその場にガシャンと崩れ落ちた。

五名の兵士を完全に沈黙させるのに一秒掛かったかどうか。見事な手際であった。今回廊に立っているのは、ゼアハルトとミシェシエルの二人だけであった。
戦闘に関してずぶの素人であるミシェシエルに、今のゼアハルトの動きは全く見えなかったであろう。
それ以前に護衛をしていた兵士にも、ゼアハルトの超人的な動きは捉えることは出来なかったと思うが…人外の動きをする近衛騎士を捉るには、ただの人間には無理な話である。
ゼアハルトは兵士を片付け終ったの認めると、ミシェシエルに向き直った。
ミシェシエルは未だに何が起こったのか理解出来ないでいた。その瞳は半ば放心しているようで、目に前にゼアハルトがいるというのに全く反応が無い。
「ミシェシエル様?」
ゼアハルトは少しばかり心配になり、長身を折ってミシェシエルの顔を覗き込んだ。
「あ…」
ミシェシエルはそれでようやく我に返ったようで、目の前にあるゼアハルトの装甲ヴァイザーに覆われた顔を見て少し驚いた。
「お気づきになられましたか…」
ミシェシエルのその反応を見て、ゼアハルトは安心したように折った長身を元に戻した。

「ゼアハルト…何故貴方が此処に?」
未だに信じられないといった面持ちでミシェシエルはゼアハルトに問いかけるが、
「理由は…これです」
その問いかけは彼の優しい抱擁を以ってして答えられた。ゼアハルトに抱き締められた瞬間、ミシェシエルは全てを悟った。
「貴方は…全てを捨てたのね……私なんかの為に」
「いいえ…貴女の為だからこそ、私は全てを捨てる覚悟で此処に来ました……それ以前に貴女に恋をした時点で私は全てを捨てていたのかもしれません」
抱き合う二人の背後に、先程まで上空を旋回していたクリューゲルが降り立った。
「さぁ…行きましょう。長居は無用です」
ゼアハルトは体を離し、ミシェシエルにクリューゲルに乗るよう促す。ミシェシエルはそれにコクリと頷き、クリューゲルの背に乗った。
「後悔は…しないの?」
自分の後に乗ったゼアハルトの顔を仰ぎ見ながら、ミシェシエルは問うた。
「いいえ…後悔などこれっぽっちもしておりません。むしろあのままミシェシエル様を…」
「私のことはミシェルと呼んで」
ミシェシエルの指摘に言いかけた言葉をゼアハルトは飲み込み、言い直した。
「…ミシェル様があのまま陛下に抱かれ、『離宮』に繋がれた方が余程後悔しますよ」
ゼアハルトはミシェシエルの体の前で手綱を握り、クリューゲルの脇腹に拍車をかけた。
クリューゲルは羽ばたき始め、徐々に高度を上げていく。直ぐに回廊は眼下に遠ざかり、広大な帝國城の上を飛び去っていく。
(続き)
クリューゲルは広大な帝國城上空を過ぎ去り、帝都の郊外へと向かって飛び続けていた。
その途中、ゼアハルトは近衛騎士団の処分についてミシェシエルに一通り話した。
「そう…皆、私の所為で近衛騎士の位を追われてしまったのね」
「そうですが…団員はまだこのことを知りません。私から明日、前線に出撃するとだけ通達します」
「でも…貴方達の主な任務は市街地戦闘でしょう?野戦は領分外のはず…」
不得意分野の戦闘を遣らされるという事は、それだけ危険度が上がるという事である。
「……そうでなければ罰にはなりません。しかし我らは近衛騎士。技を鍛えに鍛え上げた人外の集団。
並みの共和国兵に我らは御しきれないでしょう……それに、皆最初から死ぬつもりはありません。この戦争を
終らし、生きてこの国の土を踏んでみせます」
そうだ。どのような血みどろの戦場でも自分や部下達は生き残らせ、この国に戻ってみせる。その時には…

郊外に向かって跳び続ける途中、空の様相は悪化し、ついには雨が降り出した。ゼアハルトは背中のマントでミシェシエルをすっぽりと覆ってやった。
「ところで…この飛竜は何処に向かって飛び続けているの?」
頭からマントですっぽりと覆われたミシェシエルは、ゼアハルトの装甲板に覆われた胸に背を預けながら問うた。
「それは…もう少しで分かる事ですが、その前に、私は貴女に聞いておかねばならぬことが一つあります」
「何かしら?」
「…貴女は血みどろの戦場に行く覚悟が出来ていますか?」
唐突なゼアハルトの質問に、一瞬躊躇ったが、
「ええ…勿論。貴方と結ばれるならば、私は何処へでも行くわ」
直ぐにはっきりと答えた。その答えに迷いは無く、彼女の真実を物語っていた。
「私はそれを聞いて安心しました。では、あれが何か分かりますね?」
高度を徐々に下げ、郊外の森林の上を低空で飛び続けると、雨の向こうに僅かながらの光が確認できた。
「あれは…」
光と思っていたのは、大型飛竜船の着陸する為の滑走路脇の灯火装置であった。
そう、ここは帝都の郊外にある飛竜船の空港であった。ここでは昼夜問わず、巨大な飛竜の輸送船が前線を往復し、人員と物資を空輸し続けているのである。

クリューゲルを空港から少し離れたところの森の中に着陸させ、ゼアハルトは暫くの間其処で待っていた。
暫くして森の奥から別の飛竜がのそのそと歩いてきた。その背にはゼアハルトとは違った装いの重装鎧を身に纏った近衛騎士が乗っていた。
「お久し振りです。ミシェル御姉さん…覚えていますか?あの甘えん坊で泣き虫のシュタイナ・ツァストゥラトゥです」
シュタイナは兜の装甲ヴァイザーを上げ、にっこりと爽やかに微笑むと、飛竜の背から颯爽と跳び下りた。
「シュタイナ…貴方までどうして此処に?」
「それは…御姉さん、貴女の為ですよ」
シュタイナは手に手提げ袋を持っており、良く見れば彼の飛竜の背にも何か荷物が積んであった。
「シュタイナ、これから何をするつもりなの?」
「それはですね、御姉さん。貴女には前線に行って貰います。その方が貴女の為になりますから…」
いよいよミシェシエルには訳が分からなかった。自分が最前線に行くことで、それが己の保身に繋がる?
「まぁ…そう難しく考えないで下さい。時間に少しばかり余裕があるので、私の方から説明させて頂きますか」
そう言って手に持っていた手提げ袋から服を一着取り出した。
「これを見れば大体のことが察しがつくと思いますが…」
その服をミシェシエルに手渡す。ミシェシエルは取り敢えず手渡された服を広げてみた。
「コレって…」
服を広げてみてミシェシエルは絶句した。それは一点の穢れも無い、純白の白衣。つまり…
「はい。白衣の天使の戦闘服です」
帝國軍の従軍看護婦が着用する野戦看護服であった。
73カァラ ◆mRmMX8Kgoo :05/02/19 10:52:28
(本来だったらこういう時は代理の人間を前線に向かわせて自分は隠れているというのがまあ普通でしょうけど・・・)
カァラは兵員輸送機の離発着所で歩きながら少し悩んでいた
(魔術研究の一環としては行ってみたいという気もします・・・)
戦争といえば帝国軍の普段はお目にかかれない秘術や召喚者の異界の魔法を調べられるチャンスである
(状況は劣勢・・・)
実践の経験が浅い「赤き疾風」をいきなり危険な戦場に持って行きたくは無いが、逆にいい経験になるかもしれない
(まあ、いきなり最前線で敵に包囲されるような事で無ければ大丈夫でしょう・・・)
「call...spell...No.50426...」
カァラは赤き疾風を呼ぶ為に作りたての呪文構成を『呼び出し』た
呪文の省略化、この『呼び出し』こそカァラの中期の研究の全てであり、最も時間を割いた研究でもあった。
(出来たての通信魔法、上手く行くでしょうか?)
「みなさん生きてますか〜、赤き疾風全員集合〜、場所は兵員輸送機発着所です〜」
ーあ、ああ、今行き…カァ、今ちょっと飯喰っ…え?はい、生きてますよ…ちょっと用事が……眠いんで嫌です…ん…はい…今余裕が…行きますよ…たぶん…只今……あのさ…へい…輸送機発着所?…カァラさ…いや、…まっ…ザーーー……
(まだ混線とノイズ大きいなぁ…でも聞こえてはいるみたいだから大丈夫でしょう…)
カァラはメンバーが揃うまで構想中の時空魔法の一つについて考える事にした
74颶風 ◆/oj0AhRKAw :05/02/19 11:40:44
>67 ジャカ

 怪我人を背負っているらしき人影を追い越し、船を本陣のテント前に着地させる。
「怪我人をこちらへ! 野戦病院まで運びます!」
 言いつつ、船から飛び降りる。
着地の際に多少よろめきつつも、負傷者の下へ駆け寄った。
比較的重傷そうに見える者を、担ぎ上げる。
 船上に待機する騎士たちに負傷者を渡すと、踵を返して負傷者を運びに戻った。

「ミジクモ参謀は、いかがなさいました?」
 途中行き会った、ミジクモと多少似た匂いのする青年に話しかける。
これだけの被害があったのだ。
天幕の外に姿が見えないのは、おかしい。
数時間後、ジェイクは前線に近い廃村にいた。
何のことはない。戦災に巻き込まれて滅びたよくある小さな村だ。
「……凄い光景だな」
半壊した教会の塔からライフルのスコープを使って戦場の様子をのぞく。
「共和国側のバックアップといわれたが………別に、共和国の兵隊と顔を合わせる必要はないわな」
戦場まで距離にして約12キロ、魔弾の射程距離内だ。
…命中するかどうかは別物で。
塔から飛び降りる。企業から拝借した大型のバイクの横に備え付けたトランクから巨大な対戦車ライフルとその弾薬を取り出す。
再び塔に飛び上がり、戦場に向けて狙撃の姿勢を取る。
「まずはテストショットといくか」
ボルトを引いて弾を装填、魔弾の力を銃に込める。
徐々に赤い光が銃の中から洩れ出し、空気を震わせる音が辺りに響く。
───標的は、戦場の兵士。
誰かはしらない。別に知る必要もない。
引き金を引く。眩い閃光と炸裂音と共に、光弾は戦場へと、真っ直ぐに向かっていった。
76ジャカ ◆rMEfPDyTEI :05/02/20 01:02:45
どうやらあの船は最初から怪我人の輸送に作ったものらしい。
まさに渡りに船と、ジャカは他の兵士に混じって怪我人の運搬に精を出していた。
持ち前の足の速さを駆使し、同じ時間で一般兵士の数倍もの人数を運ぶ。だが。
「はーっ、はーっ」
張り切りすぎて、へばった。

>74
>「ミジクモ参謀は、いかがなさいました?」
「うへ?」
道端で汗を拭いつつ体を休めていたところで突然話かけられたせいで、どうもおかしな返答をする。
見上げた場所に居たのは、獣人。ジャカは目の前に居る人物が召喚されてきた者であることを知っている。
「あ、兄…参謀ですか?それなら…」
息切れしつつ奥の天幕を指さす。
「高位魔法の使い過ぎで倒れてます。戦闘機落とす時に出した炎の槍とか、さっきの炎壁とか。
 あの人無理し過ぎるんですよねぇ。ましてそれを顔に出さないし。ま、少し寝りゃ元気になると思いますが」
一度、無理がたたって三日三晩生死の境を彷徨う兄を見ているジャカは、
心の中ではいつ容態が悪化するか心配しているのだが、それを顔に出そうとはしない。

「それより…」
ピタリと息切れを止め、颶風に向き直る。
「この船、野戦病院に向かうんでしょ?俺も乗せてもらいたいんすけど」
さっきの状態から見て、前線には救護班はいるが技術はそれほど高くないことは伺えた。
病院は後方だから移動が必要、緊急時を考えある程度の人数でも医療の精鋭が本陣に居た方がいいのではないか、
とジャカは考え、病院に交渉する気でいるのだ。ミジクモは知らない。ジャカの独断である。
…とはいえ、本陣はやはり病院より遙かに危険である。渋られたらさっさと諦める気だが。
「乗っていいっすかね?えっと、あの、はい」
颶風の名を呼ぼうとして口ごもる。ジャカは文字でしか見ていなかったため、「颶風」が読めなかったのだ。
どこか間が抜けている。
>55
(シュッレトルティー)
「…末恐ろしいな。あんたら人間ってのは……」
まだ霞が掛かったかのような頭を手で押さえながら、シュッレトルティーは体を起こした。

>ガリーナは決して貴方の敵ではありませんし
「…お前さんの言葉は信じるよ。それと精霊を追っ払えなかった俺が悪いんだ。二人を手当てしてやれ」
シュッレトルティーの言葉に控えていた傭兵二人は頷き、傭兵の一人は気を失ったパンボリックを抱きかかえて天幕の奥に引っ込み、
もう一人はジャイの掌を治療してやった。傭兵はジャイの手をとると、何かの呪文を唱え始めた。
「そいつは精霊の言葉だ。精霊の力を借りてアンタの傷口を治しているのさ…その程度の傷ならば直ぐに治る」
シュッレトルティーが行ったとおり、ジャイの傷口は直ぐに淡い燐光に包まれ、忽ちに出血は止まり、傷口は塞がった。

「まぁ、にわかに信じがたい話ではあるが、それを聞いて別に俺はどうこうしようとは思わないよ…ただ」
また机の下に屈み込んで、別の酒瓶を取り出した。今度の中身は琥珀色ではなく、薄紫色の色鮮やかなものであった。ラベルには達筆な文字で『愛妻』と書かれていた。
「うちの新製品だ…一口飲めば、故郷の奥さんとの甘い思い出を直ぐに脳裏に焼き起こす酒だ…」
新に取り出した人数分のグラスにその酒を注ぎ込み、グラスを手に取りすっと持ち上げる。
「全ての精霊に拒絶された哀れな竜…ガリーナ・アウリチカに俺は乾杯してやりたい。精霊の加護が無くとも、パンボリックの旦那の加護があらんことを…乾杯」
シュッレトルティーはグラスを口に運び、酒を一気に煽った。甘口な酒は甘美な日々を思い起こさせ、物寂しい気持ちにさせた。
インゼクトは仕事を一段落させ、帝國軍兵士や共和国軍兵士の屍が累々と横たわる草原の片隅の石の上に腰を下ろし、
腰に下げていた装備ポーチの中からタバコを取り出して一服していた。
「…ちっ、風の流れが変ろうとしている……嫌な予感がするな」
ぷっとタバコを吐き捨て、踵で乱暴に踏みつけて揉み消す。
既に奇襲の効果は薄れ、共和国軍は立て直り、戦場の各地では熾烈な戦闘が繰り広げられていた。
少しばかり帝國軍が優勢を保ているらしいが、風の精霊の声によれば、共和国軍の増援が到着しているとのこと。
奇襲を専門とする飛蝗強襲団に傭兵達は、奇襲においてはその機動力を活かし、戦場を自在に跋扈する事が出来るが
奇襲の効果が薄れた今では各個撃破されかねない。先程の精霊を通しての各団員との連絡では、戦死者こそでてはい
ないものの、重傷を負った者が多数いるらしい…死者が出ない内に引くべきだろう。
「もうそろそろだな…総員傾注。仕事は終わりだ。全速力で陣地まで下がれ」
風の精霊に伝言を頼み、戦場に散った団員達に撤退を告げてもらう。
これで数分もしない内に陣地には、一仕事終えた傭兵達が戻ってくることだろう。
「さて…俺も陣地に下がりたいところだが……そういうわけにも行かないな」
精霊の話によれば、共和国軍の増援が近くの廃村にヘリで降下し、北方回廊近隣の森林からは飛竜が向かっているとのこと。
更に遥か遠方に狙撃手が現れたという。その狙撃手はただの狙撃手ではなく、特殊な方法で狙撃を行うらしい。
「厄介だな…俺だけでちょいと廃村に増援に行きたかったが、狙撃手が狙っているとなれば…狙い撃ちもいいところだな」
暫し腕組みをして考えるが、直ぐに顔を上げて石の上から腰を上げた。
「仕方が無い…」
背中の虫羽をばっと広げ、一、二回軽く羽ばたかせると、地面に足跡が刻み込まれるほどの力で蹴り、空を跳んだ。

精霊の声を頼りにインゼクトはその狙撃手が潜むという廃村を目指して戦場を飛んだ。
一応その狙撃手が狙っている廃村と狙撃手が潜むという廃村の直線状を避け、迂回する形で戦場を疾駆し、その廃村の側面へと回った。   

狙撃手が潜む村       ←虫
   |
   |
   狙
   撃
   線
   上
   |
   |
狙撃手が狙っている村
「………痛ぇ」
やっぱ、魔装保護した銃じゃなきゃ魔弾には耐えれないか。
ジェイクは手元にある四散した対戦車ライフルの砲身を投げ捨てる。
先程の射撃が限界だったのか、銃が魔弾の衝撃に耐えきれずに壊れたのだ。
その際、破片で腕を怪我した。まぁ、ほっとけば数十分で治るだろう。死にづらい体は、こういうのが便利でありがたい。
血がボタボタと垂れているが気にしないことにした。
面倒くさそうなため息と共に空薬莢が転がる地面へと座り込む。
「………253発中、届いたのは6発………やっぱ超遠距離射撃は無理だな」
バイクのトランクから愛用のライフルを取り出す。
旧式の弾倉給弾方式の半自動対戦車ライフル。端から見れば正に鉄の塊。
いい加減買い換えたいが銃剣まで付けてしまった上、コイツが一番扱いやすい。
「…………さて、と。そろそろ本格的に移動するか」
5キロ………なら、狙って操れる範囲だ。
戦場を見渡せる高台を探そう。
狙撃するんだ、流石に爆音を出す大型バイクには乗っていけない。徒歩で行こう。
ライフルを背負い、廃村を出る身支度を始めた。
>79
北方回廊から幾等か離れた地点にある廃村にインゼクトは到着していた。主戦場から12kmも離れた地点にあるこの村に
到着するなり、インゼクトは物陰から物陰へ、遮蔽物から遮蔽物へと身を隠しながら村の中を探索していた。
以前、インゼクトは市街地に於ける狙撃戦を経験したことがあり、その時の恐怖には心底戦慄した。
熟練した狙撃兵ならば、精霊にさえ気配を悟られずに狙撃を行うことが出来る為、幾等精霊を味方に付けている昆虫人とて狙撃の前には為す術はなかった。
姿の見えない相手に一方的に命を握られる感覚には吐き気を覚える。あの頃はまだ見習いで未熟であった為、うっかり狙撃手の
射界に入ってしまった。その時自分は足を撃ち抜かれ、その場から身動きが取れなくなり、自分を助ける為に物陰から飛び出してきた
仲間達を、敵の狙撃手が正確に撃ち倒していったのを覚えている。三人程撃ち殺されたところで当時の団長が危険をかえりみず、自分を
助けてくれたが、団長は胸に銃弾を受け、その戦闘が終結した後に息を引き取った。
その後も何度か狙撃戦を経験し、その教訓から普段の訓練に市街地での狙撃戦を想定したものを積極的に取り入れ、インゼクトは部下達に
徹底して狙撃から生き残る術を教えた。
狙撃から生き残るには、まず第一に敵狙撃手の射界に入らないことである。そうすれば狙撃をされる心配は無い。
その為にもインゼクトは物陰から物陰へ、遮蔽物から遮蔽物へと素早く移動し、狙撃手が潜んでいると思われる建物の前に体を晒さないことにした。

暫くそうして村を探索していると、高い尖塔を備えた教会が建物の隙間から見えた。
「あの尖塔からなら、数kmはカヴァーできるな…」
インゼクトはより一層周囲を警戒し、尖塔に近づいていった。
尖塔が見える建物の角で止まり、装備ポーチの中から手鏡を取り出して、手鏡だけを建物の角からだし、教会の前の広場の様子を窺う。
「……アイツか。狙撃手ってのは」
手鏡には、巨大なライフルを教会の前の広場に止めてあった大型バイクのトランクから取り出す一人の男が映っていた。
インゼクトは手鏡をしまい、今度はポーチから特殊閃光音響弾(スタン・グレネード)を取り出した。それは見た目は共和国軍が使用するスタン・グレネードだが、
良く見れば表面には様々な魔道文字が刻み込まれていた。帝國軍の一部の部隊が使用する特殊な代物である。
これは炸裂と同時に、相手をその場から動けなくする拘束系の魔術を発動させるものであり、閃光と音響と拘束呪文の三拍子で相手の動きを封じるのである。
しかし拘束呪文の発動があまり成功することは無く、炸裂しても閃光と音響のみしか効果が発揮されない場合がある。
「ま、無いよりはマシな代物ってことだな…取り敢えず、速攻で片付けるぞ」
安全ピンを抜き、起爆ピンが弾け飛ぶのを確認すると、インゼクトは建物の角から一瞬だけ身を乗り出し、教会の前の広場へと投げた。
そして素早く体を建物の角に戻し、スタン・グレネードの起爆を待った。

インゼクトが投擲した拘束術式付与型スタン・グレネードは、綺麗な放物線を描いてジェイクの目の前に落ちると、ころころと彼の足元に転がった。
>80
「………?」
嫌な感じの音がした。
何か、金属製のものから何かを外すような音。
何の音だったか。何回も聞いたはずの音だが。
思いだそうとしていると、足元からも音。何気なく、下を見る。
すると、何か丸型の物体が転がっていた。
なんのことはない、ただの手榴………っ!!?
「ッ!!」
振り返ると同時に手榴弾を蹴り飛ばす。
刹那、手榴弾は眩い閃光と凄まじい轟音を放つ。
「スタン・グレネード……!?」
素早く教会の脇へ隠れる。
視界には異常なし。だが聴力が戻らない。耳鳴りが酷い。おまけに何故か体が縛られたようにダルい。
「初っ端からヤバいな、こりゃ」
あの手榴弾………どうやら魔術的なものだったらしい。
ジェイクはライフルの銃剣をチェックし、ボルトを引く。
探せ。聴力に頼るな。すぐ近くにいるはずだ。
息を長く、静かに吐きだし、目をつぶった。
>81
>振り返ると同時に手榴弾を蹴り飛ばす。 刹那、手榴弾は眩い閃光と凄まじい轟音を放つ
「ほう…直撃を避けたか。思ったより、やるな…」
スタン・グレネードの起爆を確認し、インゼクトは先程と同じようにして手鏡だけを建物の角から出して様子を窺っていた。
「だが今回ばかりは狩られる側に回ってもらおうか……」
不敵な笑みを顔に浮かべると、インゼクトは詠唱を開始した。程なくしてインゼクトの右手に風の精霊が宿り始めた。
「さ〜て…炙り出してやろうか」
インゼクトは軽く跳躍すると、相手に見つからないように建物の屋根の上に降り立った。其処からは教会の脇に隠れているジェイクの姿が丸見えだった。
「丸見えだぜ…『風の斬撃』を避けられるか?」
右指をジェイクに向かってぴっと鋭く振り下ろした。すると、丁度ジェイクの頭の上辺りの壁に、刀で切り裂かれたかのような跡が刻みこまれた。
「試射はまずまず…見えない斬撃を避けてみろ!」
インゼクトはその場から跳躍すると、上空からジェイク目掛けて風の精霊を宿した右手を勢い良く振り下ろした。

インゼクトの右手からは強力な不可視の斬撃、『風の斬撃』が放たれ、ジェイクを切り刻もうとする。
>82
「………」
おかしい。人の気配がまるでしない。
何か、いる。数は1。それはわかっている。
だがその場所と個体が何故かわからない。
探せ、探せ、探せ………。
いるはずだ。手榴弾使ったってことはその他にまだ装備があるはず………こっちの様子を伺っているはずだ。
一人で俺を処理しようとしたあたり、それなりの経験者、兵種は……。

………いや、ちょっと待て。
人の気配はしない。だが、近くには感じる。
………何も、兵が「人間」とは限らない。

と、寄りかかっていた背中に微かな振動。
まるで、何かが削れたような、そんな振動。
ともすれば、「ソレ」しかない。
「魔弾………」
刹那の速さでライフルを上空に掲げる。
上空に、敵影。空気が歪んでいる。何かが、来る。
回避は不能。なら………「まとめて撃ち落とす」ッ!!
「弐式ッ!!」
魔弾は詠唱を必要としない、またはそれが極端に短い特殊な術法である。
つまり、ジェイクが叫ぶと同時に銃口からは激しい連続音と共に魔力さえも弾く光弾が連発される。

ジェイクは、上方の敵影とその攻撃を魔弾の連射で相殺にかかった。
>83
>ジェイクは、上方の敵影とその攻撃を魔弾の連射で相殺にかかった。
『風の斬撃』は光弾の幾つかを斬り裂いたが、それの御蔭で軌道を逸らされ、ジェイクではなくその後の教会を薙ぎ払った。
斬撃が命中した教会の壁にぴっと線が一筋走ったかと思うと、そのまま壁は線を境に綺麗にずり落ち、轟音と粉塵を巻き上げながら教会は倒壊した。
更に斬撃は教会を完全に切断した後、教会を貫通してその向こうの建物の幾つかを薙ぎ倒した。教会が崩れ落ちたのと同様にして轟音と粉塵が連続して巻き起こる。

「ち!」
魔弾が発射されるのと同時に、インゼクトは腕のアーマード・クローで咄嗟に防御した。魔弾の幾つかがクローの装甲板に命中し、その衝撃でインゼクトは空中で弾かれたが、
背中の虫羽で姿勢制御を行い、華麗に着地した。
「やるじゃねえか…人間。妙な銃技を使うな?」
すっと立ち上がり、ジェイクに向き直る。
「だが撃つばかりじゃ俺は倒せない…疾走れ!!疾走れ!!今でも思い出すあの喧騒と打撃へと向かって疾走れ!!!」
呪文を詠唱し、羽と脚に風の精霊を宿らせる。直ぐに背中の羽と脚は燐光を発し始め、精霊の力で強化された。
「俺を捕捉したければ…人間止めな?」
一瞬、インゼクトの体が沈み、残像さえも残さずその場から掻き消えた…が、ジェイクの目先10cmぐらいのところにインゼクトの顔が残像を伴って現れた。
インゼクトの複眼一杯にジェイクの顔がドアップで映る。心なしかインゼクトの顔は笑っているように思えた。
「リヴァー・ヴゥロォー!!!!!」
ほぼ密着した状態でジェイクの肝臓(リヴァー)目掛けて装甲化された拳の一撃を放つ。命中すれば悶絶必死だろう。
>84
風の牙をやり過ごし、崩れた教会や後方の様子をちら見する。
「………すげー」
轟音と砂塵が広がる光景を前に素直な気持ちが口から出た。
アレだけの破壊力、刃の鋭さ、スピード。どれをとっても並みのレベルを凌駕している。しかも、『直撃弾』を逸らすのが精一杯だった。
「………人間業じゃない、というか人間じゃねぇんだもんな」
身体のあちこちから鮮血が流れ出ている。まぁ、戦闘には支障はないのだがまた服を裁縫しないといけない。
視線を前に戻し、「そいつ」を見る………昆虫。いや、向こうでも見たことがある「虫人」か?まぁ、おそらく発音や呼び方は違うんだろうが。
「妙な銃技ね………ま、否定はしないさ。『コイツ』を編み出したのは元々ひねくれ者だからな」
と、言ってる内にインゼクトが、消えた。さっきの風の刃といい、羽根が光ったあたり敵さんは『風』を味方につけているらしい。
「人間止めな、て…………俺、半分人間止めて……」
瞬間、言い終わらない内に眼前にインゼクトの顔が写る。
一瞬の間、インゼクトの複眼に映った自分の顔を確認できる程度の間。その直後、身体に凄まじい衝撃。
「ゴハッ!?」
後方に吹っ飛ぶ。地べたに倒れ込む………が、すぐに跳ね上がり、銃をインゼクトに向ける。
「………ゲホッ、ガッ………くそ、最悪だな、コレ…」
しかし、それでも苦しいのには変わらないらしい。口からは血が垂れている。
「最後まで言わせろ。俺はもう人間を半分止めてんだ」
ニヤリと笑みを浮かべてみせると、一回の跳躍でインゼクトとの距離を詰める。そして、
「汝、黒鉄の杖をもて」
インゼクトの真横で銃口が鈍い光を放つ。
「さすらば汝、眼前の不浄を打ち砕かんっ!!」

お返しとばかりに、インゼクトの真横で火炎弾の連射を浴びせかけた。
>33
「少尉…あのオジサン、何者なんですか?」
メリィの隣で銃創を負った患者に手際よく手当てをしていた看護婦が、たった今、砲弾の破片によって
腹部をズタズタに引き裂かれていた兵士を、法術による治療をし終ったメリィに話しかけた。
「…私にも分かりませんが、あの人はいい腕をしているとだけは言えますね。ただ…」
>堂々と病院の備品を懐に入れてしまっている
「…手癖の悪い人だと思います」
法術による治療を終えたメリィは、法術の疲労からくる額の汗を看護服の袖で拭い、立ち上がって次の患者の治療に取り掛かった。
「では、貴方があの方に注意をしてくださいませんか?私は次の患者さんの手当てをしなくてはならないので…」
傷口を治療しようと、メリィは患者の傷口を覆っていた包帯を取り去ったが、包帯が取り去られた瞬間、血が勢い良く傷口から噴出し、
メリィの白い顔を真っ赤に染めた。しかしメリィはその血を拭い去ろうとも思わず、法術の呪文を次々と紡ぎだしていた。
その様子は傍から見ればこの上なく不気味であり、何処と無くメリィのあどけない瞳にはぎらぎらとした眼光が宿っているようにさえ思えた。
メリィの傍にいた看護婦…犬耳と尻尾の生えた犬系亜人のシャーリー・アドミットは思わず身震いした。
シャーリーは青みがかった毛皮の耳と尻尾、肩ぐらいで切り揃えた髪と人懐っこそうな子犬のような黒い瞳が特徴的な犬系の亜人であった。
この一見21歳には見えない少尉は、普段と患者の治療中では人が丸っきり変るのである。それこそ鬼気で迫る顔で治療に臨むのである。
「それって…命令ですか?」
「貴女は二等兵。私は少尉。当たり前の事です…」
テキパキと手当てを済ませるメリィは、それ以上は言わず、患者の治療に専念しだした。
この外見が幼い少尉はこういうところがあのイザベラ婦長に似ているのである。患者のことが絡むと他の事は終始こういった状況が続くのである。
シャーリーは耳と尻尾を力無く垂れ、しぶしぶと立ち上がると、ネクロマンサーにこっそりと忍び寄った。
「あの〜…色々と備品を勝手に持ち出されると困るんですけどぉ…一応帝國臣民の皆様の血税で購入しているものですから、欲しいのならば
イザベラ婦長に断って貰えませんか?勝手に備品がなくなると、備品管理の子が怒られますから…」
自分より遥かに高いネクロマンサーの背に向かって、聞こえるかどうかも分からない小声で語りかける。シャーリーは終始なけなしの勇気を
振り絞っており、尻尾を脚の間に挟んでいた。
>86
> シャーリーは耳と尻尾を力無く垂れ、しぶしぶと立ち上がると、ネクロマンサーにこっそりと忍び寄った。
「ふむふむ……この薬は私の世界では見かけない物ですね。これも一つ……む?」
背後に忍び寄る影に全く気づいたネクロマンサーは、誰が来たのかを確かめるために振り向いた。
一体どのような治療をしていたのか、返り血によって白衣の白い部分がなくなっていた。
左手には患者から摘出したらしい何だかよくわからない肉片を持っている。
無論、病院とはいえ戦場には違いないので、万が一に備えて右手にはエナジードレインの力を宿している。
考えすぎだと自分でも思っているが、考えが浅いよりはマシだと思っている。

> 自分より遥かに高いネクロマンサーの背に向かって、聞こえるかどうかも分からない小声で語りかける。シャーリーは終始なけなしの勇気を
> 振り絞っており、尻尾を脚の間に挟んでいた。
「ん? これはこれは可愛らしい小犬が……ああ、冗談ですよ。それで、何ですかな? ほうほう、備品を返せ、と?
やれやれ、しっかり見つかっていましたか。まぁ、そうだろうとは思いましたよ」
苦笑したネクロマンサーはエナジードレインの力を消し、がさがさと懐を探って盗んだ備品を取り出していく。
数十本のメス、鉗子。各種薬瓶。カルテ。注射器数十本etc。
とにかく洒落にならない量の備品が懐から取り出され、手近な机の上に積み上げられていく。
「というわけで、私がちょろまかしたものはこれで全部ですよ。ところで……」
わざわざ屈み込んで顔を近づけて黒い瞳を覗き込み、ネクロマンサーは薄く笑った。
「正体不明のオジサンはそんなに恐ろしいですかな?」
地獄耳のネクロマンサーにはメリィとシャーリーの会話がはっきりと聞こえていたのだ。
88紅羽 ◆KUU/KZ07xo :05/02/20 22:26:46
「うわ……これは酷い……。」
野戦病棟は怪我人で溢れ返っていた。
ほとんどの怪我人が重傷を負っている。
その怪我人の治療の為に看護婦が慌しく走り回っている。
「よっぽど、人手不足なんだな…。僕がここに連れてこられたのもよく分かる…。」


―3日前―
「はい?野戦病院で手伝い…ですか?」
ここは帝都にある大きな病院。
その中で紅羽は働いていた。
「そうなんです、さっき帝国の兵士さんがやってきてね、これを紅羽先生にって…。」
「文書…ですか?見せてください。」
茶封筒の中に入った文書を見る。
「………なるほど、野戦病院は相当人手不足みたいですね…。
 だから、各帝都病院から医師と看護婦を何名か野戦病院へ派遣しろと…。
 ……って、あなた勝手に封筒開けて読みましたね!?僕宛に来た文書なのに……。」
「だって〜、つい気になっちゃったんですもの…ごめんなさい、紅羽先生っ。」
そういって、看護婦は紅羽にウインクする。
「うっ……はぁ……もう、いいです…。じゃあ、僕は今から早速野戦病院へ行く準備をします。
 僕が担当している患者さんは、僕が帰ってくるまであなたに全て任せますけど…良いですか?」
「もちろん〜!紅羽先生、後の事は私に任せて、頑張ってきてくださいね。」
今度は紅羽の頬にキスをする。
「ひぃぃ!や、やめてくださいよ……!」


「忙しいのは嫌なんだけど…そんな事は言ってられないね…。はぁ…。」
紅羽は大きな溜め息をつく。
「とりあえず、ここの一番偉い人と話をしておかないと……はぁ…。」

…紅羽が溜め息をついていると、目の前を怪しい魔術師が通った。
「…!?」
(え、今のって……。)
怪しい、怪しすぎる。
(…追跡した方が良いかな…?)
紅羽は、その怪しい魔術師の後を追ってみる事にした…。
>87
>わざわざ屈み込んで顔を近づけて黒い瞳を覗き込み、ネクロマンサーは薄く笑った。
>「正体不明のオジサンはそんなに恐ろしいですかな?」
>地獄耳のネクロマンサーにはメリィとシャーリーの会話がはっきりと聞こえていたのだ。

(あう…全部聞かれていたの……)
目の前に迫ったネクロマンサーの蒼白い顔が不気味な事この上なくて、思わずぼろぼろと涙が頬の上を伝い落ちた。
きょろきょろと救援を呼ぼうと周囲を見渡したが、皆忙しく患者の治療に歩き回っていた。
無論シャーリーの事など皆眼中に無かった。というよりも構っている暇さえなかった。
だが…

>83
何やらネクロマンサーの後を尾行しているような素振りをみせている、小柄な人間の医者がいる。背は自分やメリィと大差は無く、
後から見れば他の看護婦と間違わられてしまうかもしれないだろう。というか、歳が幾つかどうかは知らないが、外見が結構幼い。
しかし、今のシャーリーにしてみれば外見などどうだって良かった。頼れそうな人物がいればいいのである。
「た、助けてくださ〜い!!!!」
ネクロマンサーの目の前から弾かれたようにシャーリーは走り出し、紅羽の背後に回って紅羽の背を押して彼を前面に押し出した。
シャーリーは小柄な紅羽の後に隠れようと、頭の耳を折り畳み、尻尾を脚の間に挟んで紅羽の影からはみ出さないように務めた。
>88
「……………さて、何かご用ですかな?」
もともとが犯罪者であるせいで追跡だとか尾行だとかに関して異様に勘の鋭いネクロマンサーは、すぐに紅羽に
気づいたが、振り返るようなことはしない。なぜならば、丁度シャーリーの目を覗き込んでいるところだったからだ。
「生憎と私は今、忙しいものでしてな。用件は手短に願いますよ? それにしても、貴方。綺麗な服ですな。
屋外での活動での汚れはあれども、患者との接触による衣服の汚れが見られません」
真後ろにいる紅羽の姿をどのようにしてか見ているらしいネクロマンサーは、顔をシャーリーに向けたままにやりと笑った。
「貴方。この病院に元からいた方ではありませんね?」
その瞬間、紅羽の背後の空間が歪み、巨大な竜の顎だけが出現した。部分的にドラゴンゾンビを召喚したのだ。
大きさが違うことから、ネクロマンサーが戦闘機部隊と戦わせたドラゴンゾンビとは別の個体だろうと思われる。
「それで、どなたですか? まずは名乗りなさい。名乗れないなら、死体になった貴方に問うまでです」
別の空間からデュラハンの剣が突き出され、紅羽の喉元に突きつけられた。やはり、部分的な召喚だった。
「不審な動きをしたら彼らが貴方を殺します。私は彼らの目を通して見ていますから、貴方の行動は筒抜けですよ」
ネクロマンサーは部下の目を通して背後の紅羽の見ているのだった。
91紅羽 ◆KUU/KZ07xo :05/02/20 23:00:33
>90
>「……………さて、何かご用ですかな?」
「…!?」
(気付かれてる…!一応、気配は消していたつもりなのに…。)
「ぼ、僕は……!?」

>その瞬間、紅羽の背後の空間が歪み、巨大な竜の顎だけが出現した。
>別の空間からデュラハンの剣が突き出され、紅羽の喉元に突きつけられた。
(…武器が無い以上…下手な事は絶対にしちゃダメだ…。)
「…僕は、今日帝都病院からここを手伝う為に派遣された……。別に、怪しいものじゃない……。」
何とか冷静を保って、ネクロマンサーに話しかける。

>89
>ネクロマンサーの目の前から弾かれたようにシャーリーは走り出し、紅羽の背後に回って紅羽の背を押して彼を前面に押し出した。
「え…?あ、いや……ちょ、ちょっと待って…!」
結局、何の抵抗もできないまま、ネクロマンサーの前に突き出されてしまった。

(………。)
見れば見るほどネクロマンサーは怪しい。
何か、どす黒い変なオーラさえ、ネクロマンサーから感じる。

(こ、怖ー……。)
92カイザー ◆4a9UrY4.4s :05/02/20 23:04:06
「・・・ヒマだな」
カイザーは思わずつぶやいてしまった。
ユニコーンが幻獣界に帰った後は戦場から少し離れた安全な場所で待機していたのだが、一人でいるのは退屈なのであろう。
もともとカイザーはずっと椅子に座っているよりも外で身体を動かす方が好きな体質なのだ。
「よし、決めた。・・・ここらへんをもう少し探索してみるか。
 敵と出くわしても、この格好だから『俺は帝國の兵士だ』って言えばいいだろう。ま、どうにかなるさ」

という訳で歩き出したカイザーだがふと気付いたことがあった。
(そういえば、一つの場所に沢山の小さな力が集まっているぞ。この位置は帝國の方だな。
 村でもあるのか?・・・いや、戦闘が始まる前までにはそんなに大勢の力はあの地点に集まってはいなかった。
 急激に人が集まりすぎているな・・・なにかあるのか?とりあえず行って確かめてみるか)
そう考え、そちらの方向へと足をむける。


数十分後、カイザーは目的の場所へと到着し それを遠くから見つめていた。
(あれは・・・野戦病院か。どおりで戦闘が始まってから人や負傷者が集まるわけだ。)
一人で納得したカイザーだったが、目的を見つけた後の事を考えていなかった。
(・・・うーん、さすがに怪我人に攻撃するのは気分が乗らないな・・・ま、とりあえず中に入ってみるか。
 運が良ければ少しぐらいなら回復剤とかを貰えるかもしれないしな。)

そして、何食わぬ顔でカイザーは野戦病院の中へ入ってゆくのだった。
>89>91
「ふむ、ふむ……なるほどなるほど。別に貴方を取って食ったりはしませんよ。まぁ、落ち着きなさい」
ゆっくりと振り返ったネクロマンサーは紅羽の後ろに隠れて怯えているシャーリーに猫なで声で話しかけた。
「大丈夫ですよ。何もしませんから。まぁ、尻を撫でたりくらいはするかもしれませんが、危害は加えません」
そこで今度は視線を紅羽に移し、続けた。
「なるほど。確認する手段はありませんが、まぁ、信じてあげましょう。戻りなさい」
やはり目を覗き込んだネクロマンサーは、紅羽の言葉に嘘がないことを確信して召喚した者達を送還した。
「いやはや、これは失礼しました、と言いたいところではありますが、貴方も私のことをこそこそ監視していましたから、
無礼はお互い様ですな。まぁ、これからはよろしくお願いしま……」
そう言って、ネクロマンサーは楽しげに笑った。しかし、唐突にその笑みが消え去った。笑みが消えたネクロマンサーの
顔に浮かんでいたのは、寒気がするような冷たい波動だった。

>92
「この不快な波動は……やはり貴方ですか、カイザーさん」
あまりにも印象的なカイザーの聖闘気を忘れるはずもない。カイザーの侵入を敏感に感じ取ったネクロマンサーは、
紅羽とシャーリーとの会話を中断すると少し考え込む素振りを見せ、それから意を決したように手近な机に幻影のルーンを刻み込んだ。
「皆さん! 敵が侵入しましたよ。この男です、この騎士です。彼は共和国軍に所属しています」
幻影のルーンが刻まれた机からは、カイザーの縮小版立体映像が浮かび上がった。ネクロマンサーは大きな声で
周囲の注目を集めてから、カイザーについての説明を始めた。
「まず、敵は一人で行動しています。聖闘気とやらを操るので……」
カイザーとの交戦で知りえた全ての情報を周囲にいる全ての者達に語り聞かせる。これで、説明をきちんと
聞いていた者はカイザーについてネクロマンサーと同程度の情報を手に入れたことになる。
(……この病院が貴方の墓場ですよ、カイザーさん。はっはっはっは!)
ネクロマンサーは心の中で会心の笑みを浮かべていた。
>92
>何食わぬ顔でカイザーは野戦病院の中へ入ってゆくのだった
長田の法術師小隊は一旦治療を中断し、治療室から離れたところにある待合室で休憩をとっていた。
皆思い思いにだれており、ダウン寸前であった。だが暫くの休憩を取り終われば、またの戦場のような治療室に皆繰出し、
直ぐに頭から血を被ったような状態で戦傷に苦しむ患者の治療に明け暮れるのである。
長田はふらふらと椅子から立ち上がり、休憩室内に備え付けられている魔道式冷蔵庫の扉を開けた。
「あ……私の大福…無くなっている……」
そして冷蔵庫の中を一目見て肩をがっくりと落とした。休憩時間に食べようと思っていた自分の大福が無くなっているのであった。
誰が食べたかは分からない。というか、この場合は長田がうっかり名前を書き忘れていたから悪いのであった。
ここでは自分のものに名前に書いておくのが常識。書いてなければ、誰かに掠め取られてしまう。休憩室の冷蔵庫は彼女達の第二の戦場。
「ううう……大福…私の大福………」
仕方が無いので長田は涙に霞む視界の中、ドリンクホルダーに収めてあった自分の栄養ドリンクを取り出し、冷蔵庫の扉をぱたんと閉めた。
そして夢遊病者のようにふらふらと立ち上がり、栄養ドリンク片手に休憩室内を出た。今の彼女にとっては負けた戦場には一分一秒も居たくは無かったのである。
休憩室を後にした長田は疲れ切った足でふらふらとロビーへと向かった。せめて喧騒の届かない静かな屋外で栄養ドリンクを飲むつもりなのであろう。
しかし…
「あう…」
誰かにぶつかり、その場に尻餅をついた…というよりも、半ば勝手に長田が吹き飛んだ。今の長田は生ける屍も同然。戦に負けたことが彼女の心を半ば崩壊させたのであった。
しかし手にした栄養ドリンクは放さなかった。そして何故かは分からないが涙が頬を伝った。もうどうにでもなれ…
「……栄養ドリンク…飲みますか?」
ぶつかった者に、寝転がったまま手にしていた栄養ドリンクを何故か差し出してしまった。今の長田にとっては全てがどうだって良かった…
恐らくぶつかられた者は今自分が何をしているかは理解できないだろう。其れほどまでに長田の行動は突拍子も無かった。

長田は気付いてはいないだろうが、自分がぶつかった相手はあのカイザーであり、しかも倒れたまま手の栄養ドリンクを差し出していた。
(>93の最後が途切れていたので補足です)
「おおっと、そうそう。皆さん、カイザーさんを見かけても、決して攻撃してはいけませんよ。
帝國軍の騎士と勘違いしているように見せかけて、院内の奥深くに誘い込むのです」
ネクロマンサーは楽しげに説明を続けていた。幻影を操作して遊びながらも、目は真剣そのものだった。
「よろしいですか? 奥深くにまで誘い込んで、一気に叩くのです」
ネクロマンサーはカイザーに邪魔をされた恨みをここで一気に晴らすつもりだった。
96紅羽 ◆KUU/KZ07xo :05/02/20 23:50:24
>93
>やはり目を覗き込んだネクロマンサーは、紅羽の言葉に嘘がないことを確信して召喚した者達を送還した。
「……はぁ…助かった…。」
安堵の息を漏らし、剣を突きつけられた喉をさする。

「……確かに、覗き見をしてた僕も悪かった…ですけど、何も、ここまですることは…。」
楽しそうに笑っているネクロマンサーを見て、紅羽は口を尖らせる。
しかし、突然ネクロマンサーの顔から笑みが消え去った。
「……どうしたんですか?」
この怪しい人がこんな深刻な顔をするということは、
何かとんでもない事が起こったに違いない、紅羽はそう思った。

>「皆さん! 敵が侵入しましたよ。この男です、この騎士です。彼は共和国軍に所属しています」
「えっ……侵入者…ですか…?」
紅羽は、テーブルに置かれていたケースの中に大量にあったメスを十数本取り出し、
白衣の裏、袖の中、裾の中など次々と隠していった。

>ネクロマンサーは楽しげに説明を続けていた。幻影を操作して遊びながらも、目は真剣そのものだった。
「なるほど……。確かに、その方が相手を倒しやすい…。」
ネクロマンサーの作戦に、素直に感心する。
(この人……本当になんなんだろう…。敵には回したくないタイプだなぁ…。)
>77
ジャイの治療が終わり、オゼロがテーブルに戻り、パンボリックはベッドに寝かされた。
天幕内にひとまずの平穏が訪れる。

>「全ての精霊に拒絶された哀れな竜…ガリーナ・アウリチカに俺は乾杯してやりたい。精霊の加護が無くとも、パンボリックの旦那の加護があらんことを…乾杯」

「ああ、乾杯…」
ジャイが杯を受け取った。パンボリックから情報が漏れていたと知って乾杯などする気分ではないが、断るのも気が引ける。
そんなことで波風を立てたり、これ以上の騒動を呼ぶのは避けたかった。
…これで良い。とりあえず昆虫人はガリーナを狙わないと言ったし、3人の命も全員無事残った。
あとはどうにかして共和国に帰り、屋敷で元通りガリーナと暮らせばそれでいい。
決して世間には出さず、俺とオゼロが彼女の死を見届けるその日まで―――その時だった。
「ピーーーーーピーーーーーピーーーーー!」
どこからともなくけたたましいビープ音が鳴り出した。パンボリックの受信専用携帯電話の着信音である。
てっきり通信機器の類は、シュッレトルティーらに没収された時点でまとめて電源が切られたものと思っていたが……
完全に予想の範疇外。パンボリックの電話番号を知っているのはガリーナだけである。
割れた酒ビンその他を片付けていた昆虫人が一早く音の正体に気付く。何事か話した後、電話を取る―――が、ちょうど切れた。
「…何だったのかな、ガリーナ。切羽詰まった用件かも」
「さあな。捕虜なんかになってる俺たちよりは余裕あるだろうよ? メシだって最高級のものが用意してある。と、喰えないんだっけか」
戦地から遠く離れたジャイ達には、本国の出来事など知りようも無いことではあった。
98カイザー ◆4a9UrY4.4s :05/02/21 00:51:41
ネクロマンサーによって自分の情報が敵に知られているとは夢にも思っていないカイザーは病院内を探索していた。
自分が斬った数多くの名前も知らない敵もここへ運ばれてくるのだろう。・・・そう考えるとカイザーは少し胸がチクッとした。
運ばれてくる怪我人の数を見ると共和国軍も帝國に劣っていないということが分かる、まだ戦いは終わらないのであろう。
(さてと・・・これからどこへ行くべきかな。まあ、とりあえずは色々と廻ってみるか)
そんなことを考えながら地面を見ながら歩いている。思ったよりもかなり設備が整っている病院のようだ。

>94
>誰かにぶつかり、その場に尻餅をついた…というよりも、半ば勝手に長田が吹き飛んだ。今の長田は生ける屍も同然。戦に負けたことが彼女の心を半ば崩壊させたのであった。

カイザーは誰かとぶつかってしまった、考え事をしていて前を見ていなかったのだ。
悪いと思い、すぐさま身体を正面に向けて、ぶつかって尻もちをついている相手に謝る
「あ、すまない、前を向いて歩いていなかった。怪我は無いか?」

>しかし手にした栄養ドリンクは放さなかった。そして何故かは分からないが涙が頬を伝った。もうどうにでもなれ…

(・・・泣いちゃってるぞ!?そこまで強くぶつかったのか?・・・いや、まさか俺はゆっくりと・・・でも現にあの子は泣いている訳で・・・だが・・・)
ぶつかった相手が涙を流した事で 気が動転してしまったカイザーは考えすぎて頭が軽く混乱してしまっていた

>「……栄養ドリンク…飲みますか?」
>ぶつかった者に、寝転がったまま手にしていた栄養ドリンクを何故か差し出してしまった。今の長田にとっては全てがどうだって良かった…

(?・・・今度は栄養ドリンクを俺にプレゼントか?・・・えーっと、とりあえず)
カイザーは長田が差し出している手へ両手を伸ばし、栄養ドリンクと一緒に長田の手を掴み 長田を上に持ち上げて立ち上がらせる。
「このドリンクはいらないよ、これはもともと君の物だろ。えっと・・・それで、なんで泣いてるんだ?
 そんなに強くぶつかったとは思っていないのだが、もしかして強くぶつかり過ぎてしまったのか?あの・・・大丈夫なのか?」

理由は分からないが異性を泣かせた事が引っ掛かっているのだろう。カイザーはそれに気を取られ、その事ばかり心配しているのだった。
>93>95>96
(イザベラ)
「ちょっと…貴方達はここの女の子達に戦争を遣らせるつもり?戦争は患者の治療だけでもう充分よ……」
治療室の扉の傍に、イザベラはいつの間にか立っていた。どうやら地下病棟の回診を終えたようで、その顔には少しばかり
疲労の色が浮かんでおり、後ろで結っていた流麗な黒髪は乱れていた。
「それと神聖な病院内での戦闘行為は私が一切禁止致します。血を流していいのはメスを振るう時だけよ…」
乱れた黒髪を整えながら、イザベラは深い溜息をついていた。
「しかし…私も帝國軍人の端くれ。そのカイザーとかいう子はこの私が相手をします。ネクロマンサーさん、紅羽先生、引き続き患者の
治療をお願いします…私はこれからそのカイザーとかいう子を躾けてきますので…」
イザベラは白衣を翻して治療室を後にした。その手にはいつの間にか、何処からか取り出した数枚の護符が握られていた。
護符には法術師が詠唱する、聖なる言葉が刻み込まれており、それは拘束系の言葉であった。
「まさかこんな所にノコノコやってくる子がいるなんてねぇ……全く、一体何を考えているのやら…」

イザベラは数枚の護符を携えて、カイザーの聖なる気を感じる方向へと足を向けた。

一方、カイザーとぶつかった長田はと言うと…
>98
(長田)
「…私は大丈夫です。どうもお騒がせしました…少しばっかり気が動転するような出来事があったものですから」
長田はカイザーに引き起こされると、にっこりとカイザーに向かって微笑んだ。
「少しばかり私達の戦争に負けてしまったものですから…でも、もう大丈夫。こんなことは日常茶飯事ですから…」
なんでもない、とでも言う風に長田は袖で涙を拭い、栄養ドリンクの封を開けた。
「これを飲み終われば又私達の戦争が始まる…私達には力が無く、剣を振るい、魔力を使役して戦闘をすることは出来ません。
しかし法力や医術を駆使しての、戦傷に苦しむ将兵を救うことは出来ます…ここでは帝國も共和国も関係ありません。皆が助けを必要としていますから…」
そうとだけ言うと、一気に栄養ドリンクを煽った…が、栄養ドリンクを飲み終わった長田の様子が少しおかしい。よく見ると、長田が飲んだのは
栄養ドリンクではなく、カップ酒だった。どうやら酒とドリンクを間違えたようだ。直ぐに長田の頬は紅潮しだし、目はとろんとし始めた。
「ふふふふ…何だかいい気分になってしまいました……」
不敵に笑い始める長田。既に酔いが回っているようで、その吐息は少々酒臭かった。
「あら〜?…御兄さん、貴方よく見ればいい男じゃないの……」
酔った長田はずいっとカイザーに顔を近づけ、カイザーの瞳を覗き込んだ。カイザーの黒い瞳には長田の酒によった姿が映っていた。そして…
「何だか私、急に体が火照ってきました…」
そう言うと、長田は看護服の胸の辺りをはだけだした。ぷつッ、ぷつッと胸のボタンを外すと、直ぐに桜色に紅潮している長田の胸元が外気に晒された。
「実は今日の私の下着の色は…じゃーん。白衣の天使のパーソナルカラーの白でぇーす…」
完全に看護服の前をはだけた長田。同年代と比べて、長田の胸は幾分豊かであり、充分に異性を惹き付ける魅力はあった。その豊かな乳房を覆う
ブラジャーの色は彼女が言うように、白衣の天使のパーソナルカラーである白であった。
「ちなみに下も白でぇーす…どう?結構くらっときた?」
さり気無く下のスカートもずり上げ、飾り気の無いシンプルなデザインの白いショーツと、純白のガーターストッキングに覆われた健康的な白い太股を
カイザーの目の前で晒す。今の長田に羞恥は全く無く、ほろ酔い良い気分の長田に怖いものなど無かった。
「ところで…御兄さんは怪我人じゃないわね?ということは元気が有り余っているはずよねぇ…だったら……」
ぐいっとカイザーの腕を掴み、横合いにあった病室の扉をがらがらと勢い良く開け放った。その病室は空室のようで、患者のいない空虚なベッドに
清潔なシーツと布団が整然と畳んで置かれていた。
長田はカイザーの腕を引っ張って彼を部屋の中に引き入れ、そして後手で扉を閉め、鍵を掛けた。
「御兄さん……これから<ナニ>が起こるか分かってる?」
ぱたん、と扉が静かに閉まる音が二人だけの室内に響いた。薄暗がりにぼんやりと見える長田の頬は、先程とは違って酒によるものではなく、また
違ったもので上気していた。よく見れば長田の狐耳も目と同じようにとろんと垂れ下がっており、尻尾も同様であった。何かしら今の長田からは酒の匂いとは
違った<何か>の匂いが僅かながら香っていた。それは牡を惹き付ける甘い牝の匂いであった。
「密室に若い盛りの男女が一緒になる…そして二人によって繰り広げられるのは…」
肩を小刻みに震わせて長田は笑いを堪えていた。その顔には秘かに淫靡な微笑が浮かんでいた。
「さて…帝國野戦病院『戦乙女』所属、長田良子による<夜の看護活動>を開始しますか…御兄さん、逃げたら殺すわよ?」
一応言っておくが、長田に<そういった>ことに関しての知識は、医療に携わる者とあってか、知識の面では専門家であったが、実戦はまだ未経験であった。
帝都の看護学校にいた頃、長田は異性とは無縁であった。それがそのまま戦場に来てしまい、同世代とはかなりの差をつけられてしまった…その
溜まるに溜まった劣等感が、今こうして酒を起爆剤として爆発したのである。今の彼女はハングリー。餓えた狼なのであった。

長田は半脱ぎにしてあった看護服を脱ぎ去り、下着姿となった。
病室の窓から差し込む月明かりが暗闇に長田を蒼白く浮かび上がらせ、狐色の髪と毛皮、上気した白い肌は月明かりに良く映えた。
長田はゆっくりとカイザーに歩み寄ると、彼の首に腕を回した。そしてこう囁いた。
「…優しく……してくださいね?」
少しばかり酒の匂いの混じった長田の時は甘く、震える声であった。
>96 >99 >100
> 「なるほど……。確かに、その方が相手を倒しやすい…。」
「ははは、そうでしょうそうでしょう。貴方もなかなかにわかっていらっしゃいますな」
賛同者が現れたことに、ネクロマンサーは率直な喜びを表した。
「それでは、早速迎撃の準備に移ると致しましょうか。はっはっは。迎え撃つ戦闘は得意です。
さて、まずは罠でも仕掛けに行くとしましょうか……」
と半ば紅羽を引っ張るようにして治療室を出て行こうとしたが、突然呼び止められる。

> 「ちょっと…貴方達はここの女の子達に戦争を遣らせるつもり?戦争は患者の治療だけでもう充分よ……」
「いや、しかしですな、イザベラさん。前線にいる以上、敵が来たら戦わねばならんでしょう。よろしいですか。
ここは戦場なのです。戦場にいるということは、命を狙われる義務を負わされ、死なないために殺す権利を得る
ということなのですよ? であるというのに、なにゆえに彼女らの作戦参加を拒否なさるので? 戦って死ぬ覚悟も
戦って敵を殺す覚悟もないのならば、戦場になど出てくるべきではありません。悪いことは申しませんから、
純粋に救うことしかできない方は本国に送り返した方がよろしいですよ?」
ネクロマンサーにとって性別も兵種も関係なかった。この男にとっては、戦場にいる全ての者は等しく戦闘員なのだった。
戦いたくないのならば戦場にいなければいい。それができないのならば戦えというのがネクロマンサーの常識なのである。
だからこそ、戦いを拒絶するイザベラの態度を理解できても同意することなどできなかった。

> 「それと神聖な病院内での戦闘行為は私が一切禁止致します。血を流していいのはメスを振るう時だけよ…」
> 「しかし…私も帝國軍人の端くれ。そのカイザーとかいう子はこの私が相手をします。ネクロマンサーさん、紅羽先生、引き続き患者の
> 治療をお願いします…私はこれからそのカイザーとかいう子を躾けてきますので…」
「お待ちなさい! 私の話はまだ終わっていません……やれやれ……困ったものです」
話の途中で去ってしまったイザベラの背中を見ながら、ネクロマンサーは苦笑した。
「しかし、禁止されたのは院内での”戦闘”だけでしたな。というわけで、私はカイザーさんの様子でも見ているとしましょう」
ネクロマンサーは短い詠唱を行い、院内を漂う霊魂の目を通してカイザーの様子を監視し始めた。
「ははは、見つけましたよ、カイザーさん。なるほどなるほど、看護婦さんとぶつかったわけですな」
病院内の浮遊霊は多いので、すぐにカイザーを発見することができた。どうやら、看護婦の誰かと接触をしたようだ。
ネクロマンサーは興味深げに監視を開始した。

> 長田はゆっくりとカイザーに歩み寄ると、彼の首に腕を回した。そしてこう囁いた。
「………ふむふむ、なかなか急展開ですな。じっくり覗かせていただきましょうか」
もっともらしく真剣な表情を浮かべて精密な手捌きが要求される外科手術をこなしているネクロマンサーは、
手術と同時並行で覗きを行っていた。まったくもって趣味の悪い男だった。
102紅羽 ◆KUU/KZ07xo :05/02/21 20:22:47
>101
>「それでは、早速迎撃の準備に移ると致しましょうか。はっはっは。迎え撃つ戦闘は得意です。
>さて、まずは罠でも仕掛けに行くとしましょうか……」
>と半ば紅羽を引っ張るようにして治療室を出て行こうとしたが
「あ…ちょ、ちょっと引っ張らないで下さい…。」
しかし、ここで大人しくいう事を聞いておかないと、またさっきの様な目に合うかもしれない。
仕方ないので、紅羽は大人しくネクロマンサーに引っ張られる事にした。
「……あれ?あの人はもしかして…。」
いつの間にか、治療室の扉の傍に一人の女性が立っていた。

>99
>「しかし…私も帝國軍人の端くれ。そのカイザーとかいう子はこの私が相手をします。ネクロマンサーさん、紅羽先生、引き続き患者の
>治療をお願いします…私はこれからそのカイザーとかいう子を躾けてきますので…」
「……分かりました。僕は患者の治療に専念します。
…というわけで、僕は早速患者の治療に行くのでこれで……。」
紅羽は、ネクロマンサーから逃げるように去っていった。

「はぁー怖かった危なかった死ぬかと思った…。」
大きな溜め息をつき、廊下の壁にもたれかかる。
「……さてと…そろそろ、患者の治療をしないと…。僕は遊びに来たわけじゃないんだから…。」
自分の目の前に、病室に入りきらずに廊下で待たされている怪我人がいた。
他の患者に比べ、比較的怪我は軽い方だが、それでも両腕両足を骨折している。
「大丈夫ですか…?今、治してあげますね…。」
優しく話しかけ、両手で患者の体に触る。
(………。)
目を閉じ、精神を集中させる。
すると、紅羽の両手から青白い淡い光が溢れ、患者の全身を包む。
患者の体から傷がどんどん消えていき、十数秒後には患者は完治していた。
「はい、これでもう大丈夫ですよ。」
紅羽は患者に優しく微笑みかけ、すぐに立ち上がる。
「では、僕は次の患者さんの所へ行くので…。」
まだ他にも怪我人は数え切れないほどいる。
一人でも多くの人を救うために紅羽は次の患者の元へと急ぐ。
103「NAVY」 ◆..OhPeBexU :05/02/21 20:43:17
その日、パンボリック邸へ続く林道は午後八時頃から悉く封鎖されていた。
閑静な高級住宅地へ次々と軍用トラックが進入し、周辺の家屋には避難勧告が為された。
作業は慎重に慎重を重ねて行われた。
交通封鎖の開始時刻ちょうど、地元警察が敷いた検問所に引っ掛かった数人は
「NAVY」の文字が印された軽装甲車を目にした。

一帯の喧騒を他所に、パンボリック私邸周辺は至極静かだった。
時折ヘリが上空を通過していくのを別にすれば、普段と何ら変わらない静けさ。
しかし、邸宅を取り囲む様にして森林に展開する一団が在った。
迷彩服と突撃銃、暗視ゴーグル装備の部隊が息を潜める、その数三十人程。
バックアップとして道路沿いに機動戦車四台、
邸宅背後の林には、光学迷彩の施された軽装四足歩行戦車が二台配備されている。
そして数台の軽装甲車とトラック、護衛の多脚戦車が作戦拠点として、
部隊から少し離れた、ある邸宅の私用駐車場に停車していた。

一台の軽装甲車から、海軍服の老人が機動戦車とヘリからの映像をモニターし指揮を執る。
車内には他に、同じく海軍服の少年三人と迷彩服の兵士四人が搭乗している。
「オールド・ハリー、作戦時間です」
少年の一人が腕時計を確認し、老人の肩越しに顔を出す。
モニターを前にした老人はそれを聞き、マイクへ向かって
「時間だ、中尉。この作戦が無事に終われば、君の昇進は約束される」
104「NAVY」 ◆..OhPeBexU :05/02/21 21:29:05
(>103続き)
頑強な正面玄関のロックをレーザーカッターで焼き切り、二十人の海兵隊員が突入を開始した。
同時に裏口から十人が邸内へ侵入し、外へ向かう窓やドアに電磁ネットを設置する。
二階以上の窓には無人偵察機が閃光機雷を取り付け、正門は別の一個小隊が確保に当たった。
「アレを始末したいと思っている輩は、腐る程いる。
それなのに、君たちが処分したがらないのは何故かね?」
海軍服の老人、ハリーが少年の一人に問う。
「さあ、多分あなたと同じ理由からでしょうね。
僕個人としては、用が済んだらすぐ処理してしまう事をお薦めしますよ」
「確かに、アレが君たちの<姉>では都合が悪いだろう」
105カイザー ◆4a9UrY4.4s :05/02/22 00:33:22
>100
>「少しばかり私達の戦争に負けてしまったものですから…でも、もう大丈夫。こんなことは日常茶飯事ですから…」
>なんでもない、とでも言う風に長田は袖で涙を拭い、栄養ドリンクの封を開けた。

(・・・ふぅ、どうやら俺が泣かせたわけじゃなさそうだな。)
ホッと一息ついたのも束の間、話し相手の長田の様子がおかしい。急に態度が馴れ馴れしくなってきているのだ。
カイザーがどうしたのかと問い掛けようとした時だった・・・

>「何だか私、急に体が火照ってきました…」
>そう言うと、長田は看護服の胸の辺りをはだけだした。ぷつッ、ぷつッと胸のボタンを外すと、直ぐに桜色に紅潮している長田の胸元が外気に晒された。
>「実は今日の私の下着の色は…じゃーん。白衣の天使のパーソナルカラーの白でぇーす…」

「・・・・・・・・・・・・!!!!!!!!!!!!!!!!!」
長田が下着を見せつけた瞬間、カイザーの頭の中が一気にこんがらがり、激しく混乱してしまった。
そして、長田に手を引っ張られ、状況に流されたまま無人の部屋の中へと連れこまれてしまう。

>「御兄さん……これから<ナニ>が起こるか分かってる?」
>「密室に若い盛りの男女が一緒になる…そして二人によって繰り広げられるのは…」
>「さて…帝國野戦病院『戦乙女』所属、長田良子による<夜の看護活動>を開始しますか…御兄さん、逃げたら殺すわよ?」

「・・・」
何も喋る事が出来なかった。カイザーは顔を真っ赤にして長田を見つめる事しか出来なかったのである。
ちなみに、カイザーも異性との経験など一度たりとて無い。というか女の子と付き合った事すらないのであった。

>長田はゆっくりとカイザーに歩み寄ると、彼の首に腕を回した。そしてこう囁いた。
>「…優しく……してくださいね?」
>少しばかり酒の匂いの混じった長田の時は甘く、震える声であった。

「・・・・・・うん・・・」
長田の震える声に、カイザーは精一杯の返事を返す。もう胸の高鳴りが自分でも止められないのだ
そして、長田の瞳を見つめて腰に手を回して優しく抱きしめる。
(・・・女の子の身体って、細くて柔らかいんだ・・・可愛いな・・・)
そのままの勢いでベットに押し倒そうとするが・・・

カイザーは急にふっと冷静になり、部屋の天井を見上げる
(・・・いや、事が上手くいきすぎてるだろ・・・!俺よ、思い出してみろ自分の女運の悪さを!
 そうだった・・・俺はこれまでに何回失恋してきたと思ってるんだ!?昔好きになったあいつは、許嫁がいたとか言い出しやがって・・・
 ・・・あとアイツもそうだ、俺の事を好きと言ったくせに一日で軽々しく他の男に乗り換えやがって・・・
 他にも多々そんな事はあった。思い出したくもないような事ばかりだ!結局は俺が悲しい思いをしてるんじゃないか・・・くそっ、くそっ!
 よく考えてみろ、ここは帝國だぞ!俺を罠にはめるつもりなのかもしれない!そもそも、こんなギャルゲーみたいな展開ある訳ねーだろが!)
カイザーは再び自分の腕の中にいる長田を見つめる。
(・・・でも、この子の眼は透き通っていて、とても俺を敵として見ているとは思えない・・・)
苦悩するカイザー。・・・そして意を決して決断した
「・・・もしも、君が本当に俺を望んでいたのなら、・・・すまない」
カイザーは両手で長田を弱めに押して、長田をベットの上に倒した

カイザーはそのまま後ろへ走り、部屋のドアの取っ手に手を掛けてドアを開けようとするが・・・
「開かない!?・・・くそっ、どうなってんだこれ?」
まだ胸の高鳴りが止まずに焦っているカイザーはドアに鍵が掛っている事にすら気付いていなかった
>105
(長田)
>カイザーはそのまま後ろへ走り、部屋のドアの取っ手に手を掛けてドアを開けようとするが・・・
>「開かない!?・・・くそっ、どうなってんだこれ?」
「……御兄さん。さっき、私は逃げたら<殺す>と言ったわよね?…」
ゆらり、とベッドからゆっくりと起き上がる長田。心なしかその背後には<何か>のオーラが漂っていた。
「私、長田良子18歳のモットーは…有言実行」
ふっと長田は掻き消えると、次に現れた時にはカイザーの背後の現れていた。そして素早く後からカイザーの首に華奢な腕を絡め、首に鋭いメスを突きつけた。
「御兄さん……女の子の決死の好意を無駄にすると…寿命が縮まるわよ?」
少し強くメスを押し付けると、カイザーの首の薄皮一枚を切り裂き、血が一本の細い紅い筋となって流れた。
「御兄さんが生き残るには…一つしかないわ。それは私と一つになること…嫌ならこのまま貴方の動脈を切り裂いてあげる」
長田はふっとカイザーの耳に甘い吐息を吹きかけると、彼の耳を甘噛みし、舌先で玩び始めた。
「さぁ…どうするの?妖狐の一族である長田家の者からそう簡単に逃げられるとは思わないでね?」
酒の御蔭で何時もの長田は完全にぶっ飛んでいた。今の長田は、帝國極東部に古くから伝わっている妖狐の一族の者の本領を存分に発揮しており、この上なく大胆であった。

(イザベラ)
「…こっちの方からあの子の気を感じるわね」
カイザーの気が段々と強くなる方向へと歩を進めるイザベラ。そして一番気が強いとある空の病室の前で立ち止まった。
「ここね…あら?鍵が掛かっているわね?仕方が無い…」
ドアを開けようと取っ手に手をかけたが、鍵が掛かっていたようで、イザベラは鍵を解除する為に何やら二言三言呪文を唱えた。
カチリ、と鍵の開く音が軽快に響くと、イザベラは臆する事無く扉を開けた。
「あ……」
イザベラは部屋の中で繰り広げられていた光景に絶句した。扉を開けると、イザベラの直ぐ目の前にカイザーが立っており、両者は鉢合わせの形となったが、
カイザーの首には華奢な白い腕が彼の背後から回されており、その手は鋭いメスを握っており、カイザーの咽喉に突き立てていた。
しかもよく見ると、彼の背後で見慣れた狐耳と尻尾が見え隠れしている。イザベラはカイザーの後をそっと覗き込んだ。
「お、長田さん!?」
なんと其処には下着姿の長田がいた。長田はいつもとは違った雰囲気を漂わせており、その背後には九尾の狐らしき影が見え隠れしていた。
カイザーの背後に回って彼の咽喉に鋭いメスを突きつけている長田…事情をまったく飲み込めないイザベラは、取り敢えず
「えーと…貴方がカイザー君ね?取り敢えず、ここは帝國野戦病院『戦乙女』。それは分かっているかしら?敵である貴方が何でこのような場所に用があるの?
その返答如何によっては、私が貴方を躾けなくてはならないんだけど…いいかな?」
忠告してみた。
>103-104
今や屋敷は完全に包囲されていた。表玄関から裏口、窓に至るまで逃げ場は無い。
ガリーナ・アウリチカは2階の自室でTVを見ている。
何百チャンネルと用意されたケーブルTV、お気に入りのドラマ、好きな歌手のライブ映像、戦果を称える公共放送……。
40以上並んだ大小の画面から、音と光が垂れ流されていた。
彼女はTVが好きだ。人間の為す全ての行為・結末が大好きだ。曰く、人間は遊ばせても歌わせても暴れさせても、
「加減ってものを知らないから堪らないわ。それに臆病でお調子者で、何より私を生んでくれた大事な人たち」

>頑強な正面玄関のロックをレーザーカッターで焼き切り、二十人の海兵隊員が突入を開始した。
>同時に裏口から十人が邸内へ侵入し、外へ向かう窓やドアに電磁ネットを設置する。

画面が邸内の監視カメラの映像に切り替わる。銃を携えた数十人の突入部隊が玄関をこじ開け、広間を踏み荒らした。
間もなく1階の扉という扉を開け始める。危険と思ったのか、檻の中の「スタンプ」に乱暴を働く。
パンボリックの書斎に闖入し、寝室に侵入し、キッチンに、ドレッサールームに、私の心に土足で上がり込んでくる。
「あはは、酷い光景。それに心に湧く悲しみと憎悪、得体の知れないワクワクした気持ち……堪らない、最高だわ人間ども!」
ガリーナが勢い良くドアを開け放つ。廊下を走っていた隊員と鉢合わせた。
彼はガリーナに発砲しようとし、刹那、一瞬躊躇した。彼女の殺害が目的ではないのか。
が、狙われている当の本人には関係の無い事だった。動きの止まった兵士を異常な腕力で殴りつける。
相手が気絶したのを確認すると、一旦自室に戻って手ごろな武器、が見つからなかったのでバスタブを掴み、廊下へ舞い戻った。
……突然の出来事だが、今の挙動と先程の映像とで敵が物盗りや暗殺の類ではないことが分かった。
彼らからは確かな殺意を感じるが、命そのものは狙ってこない。良いように解釈するなら「本気の喧嘩に付き合ってくれる集団」。
そういうことならば、そんな愉快な事態ならば、1度始めたこの戦闘を皿まで味わい尽くしたい。
「ようこそ最高の客人!! しばらく付き合ってもらうわ!」
ブレスを吐いては面白みが無い。ガリーナは広間に向かって叫んだ後、自ら1階へと駆け出した。
それにしてもこいつらは誰だろう。私に用がある連中だろうか、パンボリックに知らせようか。
右手に装備した浴槽を薙ぎながら果敢にも電話をかける。3度コールした辺りで銃撃に遭い、携帯電話が吹っ飛んだ。
予想以上に数が多い―――いや、練度の高い部隊。屋敷の外に待機しているであろう増援を予想し、彼女は困ったように笑った。
その後ガリーナは窓から逃げようとして閃光機雷をモロに受け、庭に落下し、
駆けつけた応援部隊に囲まれた上ボコボコに殴られて組み伏せられた。
ガリーナはブレスや「捺印」を使わず、その代わり相手も銃撃こそすれ射殺は避けたようである。
「はあ…はぁ…分かった、分かったわよ。降参降参。研究所だか軍だか知らないけど、話を聞いてあげる」
一帯には案の上ブレス攻撃を考慮した警戒網が敷かれており、装甲車や歩行戦車までが道路封鎖に当たっていた。
「…大袈裟なのよ、全く。か弱い女の子相手にさ」
しかし死者が出た。
「OK、『スタンプ』も無事?人間の数は減ってない?増えてない?……」

人造竜ガリーナ・アウリチカ、「NAVY」に捕獲される。
>105-106
> そして、長田の瞳を見つめて腰に手を回して優しく抱きしめる。
> (・・・女の子の身体って、細くて柔らかいんだ・・・可愛いな・・・)
> そのままの勢いでベットに押し倒そうとするが・・・
「ほほう、若さゆえの暴走ですなぁ、いいですなぁ。こういう人ほど激しいものですが、はてさて、どうなることやら」
にやにやと笑いながら患者の腹を弄り回しているネクロマンサーの様子に周囲が明らかに引いているが、
そんなことを気にするような男ではない。カイザーと長田の様子を覗きながら、楽しげに笑っている。

> カイザーはそのまま後ろへ走り、部屋のドアの取っ手に手を掛けてドアを開けようとするが・・・
> 「開かない!?・・・くそっ、どうなってんだこれ?」
> まだ胸の高鳴りが止まずに焦っているカイザーはドアに鍵が掛っている事にすら気付いていなかった
「何だ、逃げてしまうのですか……全く面白くありませんね」
カイザーの情けなさに歯軋りすらしているネクロマンサーだった。

> 「さぁ…どうするの?妖狐の一族である長田家の者からそう簡単に逃げられるとは思わないでね?」
「ふむふむ、明らかに生娘でしたが、それにも関わらずあの態度とは、ね。これはなかなかに期待できそうですね」
まるで面白くないので監視をやめようかとすら思ったが、長田の行動によってもうしばらく監視を続けることを決めた。
もしかしたら面白いものが見られるかもしれないからだ。期待しながらネクロマンサーは監視という名の覗きを続行した。

> 忠告してみた。
「おおっと! これはまた何とも惜しい所で邪魔者が現れてしまいましたな!」
ネクロマンサーは舌打ちした。こんなことならば無理矢理にでもイザベラを引き止めておくのだった。
「それにしても、展開次第ではカイザーさんは無傷で退去することになるかもしれませんね……」
そうなってしまっては意味がない。折角飛び込んできた獲物をみすみす逃がすことなど考えられなかった。
「予定は変更しましょう。つまり、遊びを兼ねた休憩は終わりということです。出でよ、我が医療スタッフよ!」
ネクロマンサーの呼び声に応えて現れたのは、白衣を纏ったスケルトンや腐敗しないタイプの医者ゾンビだった。
生前は優秀な医師だった者を改めてアンデッドとして使役しているのだ。戦闘能力は低いが、医師としての能力は
非常に高いので、この場を任せても何の問題もないはずだった。
「さて……これでここは充分ですね。私は私の準備に取り掛かると致しましょう」
院内での戦闘を禁止されているのならば、カイザーが院外に出た所を叩けばいい。それが結論だった。
「まずは足を踏み入れたら瘴気が噴き出す魔方陣や、踏んだ瞬間に死の魔法が発動する魔方陣を設置するとしますか」
ネクロマンサーは楽しげに作戦を練りながら、誰にも見咎められることなく院外へと姿を消した。
109颶風 ◆/oj0AhRKAw :05/02/22 17:15:01
>76 ジャカ
>「高位魔法の使い過ぎで倒れてます。戦闘機落とす時に出した炎の槍とか、さっきの炎壁とか。
> あの人無理し過ぎるんですよねぇ。ましてそれを顔に出さないし。ま、少し寝りゃ元気になると思いますが」

 青年の言葉のみを取れば、さほど心配する必要も無さそうだ。
しかし、颶風の鼻にはそこはかとない不安の匂いが届く。
 楽観視していて良い事態であるとも思えないが・・・・。
(まぁ、弟だそうですし、任せておけば良いでしょう)
 基本的に、颶風の種族は血縁の者以外には冷淡だ。
助けを求められない限り、一歩引いた所から観察する以外はしない。

>「この船、野戦病院に向かうんでしょ?俺も乗せてもらいたいんすけど」

「構いませんよ。むしろこちらからお願いしようかと」
 颶風は、こちらの地理には詳しくない。
誰か、野戦病院の場所を知っている者に、ナビを頼む必要がある。

>颶風の名を呼ぼうとして口ごもる。

「『ぐふう』ですよ。・・・・風の嵐、と言う意味だそうですが」
 おそらく、発音が判らないのだろう。
人から、名についてあれこれ尋ねられるのにはもう慣れた。
近頃では、聞かれる前にある程度説明する事にしている。

 病院へ担ぎ込むべき負傷者が残っていない事を確認して、細心の注意を払って船を動かす。
一気に最高速まで持っていって、作りたての船を試してみたい所ではある。
しかし、怪我人を満載した今は、それは止めて置いた方が無難だろう。
「方角、指示して頂けますか?」
 操舵用のパネルに手を突いて、ミジクモの弟に話しかけた。

>108ネクロマンサー
 陸路を行くより、空路を使う方が当然早い。
さほどの時間を掛ける事無く、野戦病院の付近まで移動する。
 船を降ろそうとして・・・・、軽い眩暈と脱力感に襲われた。
「魔力の使い過ぎですかね? ・・・・だけでは無さそうですが」
 病院の周囲・・・・特に入口前辺りから強い負の魔力を感じる。
それは、生命力を基とする颶風の物とは、真逆で。

「誰がやっているのかは、大体見当つきますけどね・・・・。はた迷惑な」
 颶風は、カイザーの存在を知らない。
故に、ネクロマンサーの行為は不可解な、不愉快な物としか受け取れない。

「とりあえず、かからないで済むように注意するしかなさそうですね」
 病院の建物の前、入口ドアのすれすれまで船を寄せた。
外に声が届くようになるまで、船を包む風の精霊の密度を下げ、声を張り上げる。
ぴしりと空気を打つ様な、鋭い声で。
「本陣の負傷者を運んできました! 何方か、スタッフの方はいらっしゃいませんか?!」

行動:野戦病院前で、ネクロマンサーの魔方陣に注意しながら人手を呼ぶ。
「はははは。いい具合ですね」
ネクロマンサーは巨大魔方陣の構築を急いでいた。ゾンビやスケルトンを大量に動員して、
病院の周囲にルーンを刻んだ石や岩を配列させて多数の魔方陣を描いているのだった。
それらの魔方陣個々の機能としては冥府の瘴気の召喚や踏み入れた者に死をもたらす呪詛などが
あったが、本当の目的はそれだけではない。その無数の魔方陣を遥かな上空から眺めればわかることだが、
それぞれの魔方陣は一つの巨大な魔方陣の一部に過ぎないのだった。そう、幾つもの魔方陣を組み合わせた
超巨大高位魔方陣こそが、ネクロマンサーが構築しているものだった。構築に時間と手間がかかる上に広い面積が
必要なこの魔方陣だったが、幸い、今は手間をかけるだけの時間と場所の両方が揃っていた。
「西側にもう少し魔方陣を増やしなさい。そう、そこです」
黙々と作業を続けるアンデッド達に指示を下しながら、ネクロマンサーは少しずつ魔方陣が効力を発揮し始めていることを確信した。
この巨大魔方陣の効果は実に単純なもので、ひたすらに負の力を集積して蓄えることだけがその機能だった。
本来ならば冥府からの瘴気だけを蓄えるものなのだが、今は近くに戦場と病院があるため、そちらからの死と絶望も
集積可能だった。時間さえあれば、凄まじい瘴気を蓄えることができるだろう。
現に、戦場方面と病院から、常人の目にもはっきりと見えるほどに高濃度の瘴気が立ち上っては魔方陣に流れ込んでいる。
「おお、早速力が集まってきていますね。はっはっは。これならば忌々しい聖騎士を倒せるでしょう!」
夜明け前の暗さ以外の闇に満ち始めた周囲を眺めて、ネクロマンサーは高笑いを続けていた。
この魔方陣が完成しさえすれば、聖なる力など圧倒的な負の力で簡単に掻き消すことができるはずだった。

>109
> 野戦病院前で、ネクロマンサーの魔方陣に注意しながら人手を呼ぶ。
「ふむぅ、味方のようですが、今魔方陣の構築を中断するわけにはいきません。気の毒ですが、耐えて貰いましょう」
どうやら味方が病院に来ているようだが、ここまで築き上げた魔方陣を機能停止させるわけにはいかない。
どこの誰かはわからなかったが、ネクロマンサーは構わずに瘴気の集積を続けていた。
「まぁ、お早めに院内に入ってくれれば大事には至らないでしょう。あくまでも、この魔方陣はカイザーさん個人への
仕掛けなのですからね」
イザベラとの約束もあるから院内に被害を出すような仕掛けにはしていない。また、あくまでもカイザー用にアレンジして
あるため、カイザー以外の者には深刻な被害は与えないようになっている。少なくとも、長い間魔方陣内に留まらなければ
死にはしないはずだった。
>63
催涙弾が爆発するのを待つ。しかし、なかなか爆発は起こらない。
不審に思いながら待っているとやがて完全に煙もおさまる。
やはり共和国の武器はよく分からない。
「隊長、私が直接行きますよ?そのほうが確実でしょうから。」
若い兵士が話し掛けてきた。
「む、頼むぞ。じゃが一人は不安じゃから、二人で行けい。」
特に断る理由もないのでそう言っておく。

二人の兵は盾を構えながら階段を昇る。
ばれないように音を立てず慎重に昇っていた。が、
カラン。
手すりに盾をぶつけてしまった。ばれてしまえば慎重にする意味はないので、
一気に階段を駆け上がり、鈴木中尉の姿を見るや否やバトルアックスで斬りかかる。

>64
バラバラと音が聞こえる。先ほどの空飛ぶ鉄隗が近付いたらしい。
急に入り口付近が蜂の巣になり、外の見張り兵が一人倒れる。
どうやら敵の部隊が来るようだ。装備を整えさせ、全員戦闘態勢に入る。
まだ役場から出ることはしない。
112ジャカ ◆rMEfPDyTEI :05/02/22 19:16:11
>109
>「方角、指示して頂けますか?」
「えっとっすね、あ、あと南方向にに15゜ぐらい…」
入ったことはないが、野戦病院には何度も往復している。方角も、わからないことはない。

>さほど時間を掛ける事無く、野戦病院の付近まで移動する。
「あ、見えましたね。じゃあ俺はこれで」
宙に浮いている船から飛び降り、地面に着地する。
このままだと、今船に乗っている怪我人の運搬に回されるのだろう。
それでもよいのだが、とりあえず先に自分の行動を済ませておきたかった。
かなり高くから飛び降りたため足が痺れるも、二、三度屈伸して病院に向かい走る。

>110
「…って、あれ?」
病院内に入ろうとして思わず立ち止まる。病院の周りに何か得体の知れぬ空気が渦巻いている。
魔法の技術やセンスが全くないジャカでさえ気づくほどなのだから、相当量であることが想像できる。
そしてジャカには魔法への抵抗力も低い。着ている黒装束に多少魔法抵抗はかけてあるが、
その魔力はせいぜい一回の魔法に対して。黒装束が使いものにならなくなっては困りものだ。

「仕方ないなぁ、疲れるんだけどなぁ…」
ぼやきながら、スピードスケートのスタートにも似た体勢をとる。
「ターボモード!」
一声そう叫び、一瞬ジャカが履いていた靴が光ったと思うと、もうジャカはその場にはいなかった。
瘴気がジャカを包むより速く魔法陣を突っ切り、病院の中に入ることが出来た。
「やっぱし…痛いなぁ」
目にも止まらぬ速さで走ることが出来ても、足への負担は半端ではない。
長くともせいぜい100m、といったところだろう。それ以上走ると足が壊れてしまう。

「足も痛いし、ゆっくり院長室でも探すか。それにしても空気きれいだなぁ…」
周りを見回しながら浮かれ気分で院内を歩き回る。
しかし、ジャカは気付いていなかった。自分の容姿が、黒装束という「不審者」の典型であることを。
そして、目まぐるしく行き交う看護婦のジャカへの視線が、不審者のそれへと変わりつつあることも、
やはりジャカは気付いていなかった。
113紅羽 ◆KUU/KZ07xo :05/02/22 20:13:30
「はい、おしまい。怪我は完治しましたよ。」
これで何人目だろう…?途中まではちゃんと数えていたが…。
「うっ……。」
軽い眩暈が起こり、廊下の隅に座り込む。
何度も上級の回復魔法を連発したせいで、
紅羽は体力的にも精神的にもかなりキていた。
「……そういえば…。」
さっきの、侵入者の事をふと思い出した。
「あの怪しい魔術師が何とかしていると思うけど…もし、病院内で騒ぎが起こったら…。」
そう思うと、少し不安が残る。
紅羽は、さっき袖の中に隠しておいたメスを取り出す。
「まぁ、大して役に立たないとは思うけど…一応ね。」
左手で持っていたメスに右手の人差し指と中指を添える。
すると、メスが紫色の光を放ち出した。
そのメスの刃の部分を壁に少し強めに突き立てる。
メスを中心に半径20cmほどの紫色の魔方陣が現れ、一瞬強く光を放った後、すぐに消えた。
「ちょっとした保険って事で……。」
メスを壁から抜いて、また袖の中に隠し直し、すぐに立ち上がる。
「少し…休ませてもらおう…。」
紅羽は、重い足を引きずり待合室へ向かった。
114カイザー ◆4a9UrY4.4s :05/02/22 22:00:00
>106
>「御兄さん……女の子の決死の好意を無駄にすると…寿命が縮まるわよ?」
>少し強くメスを押し付けると、カイザーの首の薄皮一枚を切り裂き、血が一本の細い紅い筋となって流れた

(・・・い、痛っ!)
予想外に素早い長田の動きに成す術がない。意外な所でカイザーは命の危険に晒されてしまう。

>「御兄さんが生き残るには…一つしかないわ。それは私と一つになること…嫌ならこのまま貴方の動脈を切り裂いてあげる」
>長田はふっとカイザーの耳に甘い吐息を吹きかけると、彼の耳を甘噛みし、舌先で玩び始めた。

(しょ、正直に言って、かなり気持ちいい・・・)
一度は逃げようとしていたカイザーの心が動き始めていた、心の隅ではもう罠でもいいと思っている。

>「さぁ…どうするの?妖狐の一族である長田家の者からそう簡単に逃げられるとは思わないでね?」

首筋に突き付けられたメスが光を反射させ、薄暗い部屋の中でギラめく。長田の誘いを断れば本気で殺されてしまうかもしれない。
(うん、こ・・・これは逃げ道無しだな。よし、覚悟を決めてこの子を受け入れるか・・・)
「その、あ、あのさ・・・俺は君を・・・・・・ん?」
カイザーが覚悟を決めた時だった、カチリと鍵の開く音と共に目の前のドアが開いた

>「えーと…貴方がカイザー君ね?取り敢えず、ここは帝國野戦病院『戦乙女』。それは分かっているかしら?敵である貴方が何でこのような場所に用があるの?
>その返答如何によっては、私が貴方を躾けなくてはならないんだけど…いいかな?」

(・・・いいかなって言われても・・・・・・よくないよな・・・)
「俺はここら付近を歩いていたら、たまたまこの病院を見つけたから立ち寄っただけでそれ以外に他意は無い。
 この俺の存在が邪魔なのだったら、いつでもここから立ち去るぜ。共和国軍にもこの病院の位置は教えない」
もちろんカイザーはここが帝國の領土だとは知っていた。
だが、この病院に立ち寄ったのは単に興味を持っただけであり、本当に何もする気は無かったのである。
まさか、このような事態になるとは予想していなかったのだった。
「俺から話を聞くのは構わないんだが・・・まずは俺の首に軽くメスを突き刺しているこの子をどうにかしてほしいんだけど・・・」
カイザーは自分に首に絡み付いている長田を後ろ手で指差す。
(・・・ん?そういえば、なんでこの人は俺の名前を知っているんだ?
 俺が共和国の兵士だと気付いたのはともかく、なんで俺の個人情報がそこまで流れているんだ・・・?)
「一つ疑問に思った事があるのだが、なんで俺の名前を知っているんだ?
 俺が共和国側のの兵士として雇用されてからはまだ数日も過ぎていないと思うのだが」
115鈴木中尉 ◆DDGCBdpW/w :05/02/22 23:47:03
>64
「了解、歩兵部隊を急がせてくれ!」
しばらくすると外から機銃音が響いてきた。
>111
ガスが薄まるにつれて、やっと前が見え始めてきた。
だが目と喉の痛みはまだ無くならず、悪化したとも思える。
視力が大幅に低下しているこの状況で音は重要だ。
耳を澄ますと階段のほうから金属音が聞こえた。
「そっちか!」
駆け上がってきた敵兵の姿を見つけ、斧を避けながら機銃を乱射する。
普通の銃弾が効かないのは分かっている。ただの脅しだ。
かけている雑嚢から手榴弾をいくつか取り出す。
「それ以上近付くな!ここで全ての手榴弾を起爆するぞ!」
聞いた話や見た様子ではどうやらこの世界では国より命が大切らしい。
手榴弾を見せ付けながら壁に立てかけてある愛用の小銃を肩に掛ける。
>109
(シャーリー)
慌しいの中、手を休めていた看護婦の幾人かが院外の異変に気付いていた。見れば野戦病院周囲を囲むようにして
構築されている防御陣地の上で、何やら魔法陣が構築されていた。其処からは強烈な瘴気が立ち上っており、夜の闇とは
又違った漆黒であった。闇に溶け切れない異様な漆黒の瘴気は、見る者を不快にさせていた。
シャーリーは先程の騒動からそそくさと逃げており、今は三階の窓辺に腰掛けてほっと一息をついていた。しかしその顔は何処か不快そうであった。
其処からは良く院外の異常が見渡せ、シャーリーは眉を顰めていた。恐らくあのオジサン、もとい、ネクロマンサーの術か何かなのであろう。
しかし其処へ上空から何やら飛行船らしき船影が降りてくるのが窺えた。

>「本陣の負傷者を運んできました! 何方か、スタッフの方はいらっしゃいませんか?!」
どうやら負傷者を運んできてくれたようだ。しかし、今の急患受け入れ口では恐らく、あの船にいると思われる大勢の患者を受け入れることは出来ないだろう。
シャーリーは窓を開け、身を乗り出した。
「負傷者の搬送ご苦労様ーーー!!!!今の急患受け入れ口は大変混雑しているので、屋上に上がってくださいーい!そこならば
充分なスペースもありますからーーーー!!!!」
シャーリーは精一杯の声を張り上げると、直ぐに窓を閉めて瘴気が院内に入らないようにした。
そして直ぐに階下に駆け下り治療室に飛び込むと、メリィにこのことを伝えた。
メリィは相変わらず血塗れで熱心に患者の治療を行っていたが、シャーリーからそのことを伝えられると直ぐに手の空いている者を召集させ、屋上での
急患の受け入れ準備をさせる。野戦病院の屋上は、大型飛竜による航空輸送便の発着場も兼ねている為、あの飛行船ぐらいなら訳は無いはずだ。

シャーリーは夜間の航空便の発着を誘導する為の灯火装置を手に携えると、病院の屋上へと急いだ。
屋上に着くと、シャーリーは手に持った灯火装置を準備して、 颶風の操縦する飛行船の到着を待った。
更にシャーリーに続いて他の看護婦達も患者の受け入れ準備を完了したようで、彼女達も屋上で待機していた。
今回は流石に患者の数が多そうなので、大人数の受け入れが可能な大型エレベーターも稼動しており、エレベーターも屋上に到着していた。

>112
(メリィ)
治療室内も、数時間前に比べれば大分収まってきた。重傷者の治療は大体片付き、今まで治療に当たっていた班は交代し始めていた。
流石のメリィも疲労の色が濃く、ゆったりとした一本の三つ編みも少しばかり乱れており、袖で血塗れの顔を拭っていた。
治療室を後にして、自分も休憩室で少し一息入れようとした時であった。何やら様子がおかしいのである。
通路を擦れ違う看護婦達は何やら声を潜めており、僅かながら侵入者がどうのこうのと話しているのが聞き取れた。
(やれやれ…今はイザベラ婦長も立て込んでいるって言うのに…私がやらなきゃいけないのね)
メリィは休憩室へと向けていた足を向きなおし、騒ぎの大きい方へと歩き出した。
すぐにその原因は分かった。何やら全身黒装束の少年(自分も対して外見的にはその少年とは差異はないのだが…)が周囲の看護婦たちの
注目を集めているのである。治療室内でのネクロマンサーによる、侵入者がこの病院内にいるという知らせの御蔭で、看護婦たちの間には少なからず
動揺とも不安とも似つかない微妙な空気が漂っていた。メリィとしてはこれ以上の騒ぎは御免であった。このようなことが続いては、治療どころではなくなってしまう。
メリィはジャカダムの姿を認めると、周りの同僚の静止を振り切ってずんずんと近づいていった。そのあどけない瞳には怒りの炎を宿して…

「ちょっと…貴方は何者なんですか!!!!そんな怪しい格好をしくさってまぁ…貴方も侵入者の方の一人ですか!!!」
半ばヒステリックな叫びを上げながら、メリィはジャカダムの目の前に立ちはだかった…が、身長はジャカダムと大差は無く、傍から見ればどんぐりの背比べ
状態であった。しかしその瞳に宿る眼光は、年上であるということを充分に感じさせるものがあった。しかも身に纏った白衣は一点の隙間もなく血塗れであった。
>113
(名無しの看護婦達)
>紅羽は、重い足を引きずり待合室へ向かった。
休憩室内では、長田の法術師小隊や先程まで治療室で患者と死闘を繰り広げらていた看護婦や法術師の面々が思い思いにだれていた。
流石に患者の前ではないので、皆看護服の胸元を緩めていたり、ロングスカートもたくし上げて惜し気もなく、その下に隠れていた
健康的な太股を外気に晒していた。今の彼女達は全く無防備極まりなく、その乱れ様は何処か艶めいてさえいた。
「あら…貴女、香水でも使った?」
とあるハーフエルフの看護婦が、隣で寛いでいた同僚のコリー犬型獣人の看護婦に尋ねた。そこはかとなく、そのコリー犬型獣人の看護婦からは甘い匂いが漂っていた。
「違うわ…獣人の女が獣人の男を惹き付ける時の匂いって奴よ…」
その獣人の看護婦の目は涙で潤んでおり、吐く息も少し荒く、艶やかでさえあった。
「まだ発情期には程遠いわよ?」
「ええ…でも、疲れたら体が火照ってきて……彼とも御無沙汰だし…それでちょっとそういう気分になってきちゃったの」
微笑んで見せるが、その笑みは何処か無理強いをしている感があった。ハーフエルフの看護婦はそれを見て、意地悪い笑みを浮かべて見せた。
「ふーん…じゃ、今はとっても感じやすいのかしら?」
そういってハーフエルフの看護婦は、コリー犬型獣人の看護婦の豊かな胸を軽く揉んでみた。
「あん…」
びくんと体が反応してしまい、思わず甘い声を上げてしまった。思わぬ反応に、ハーフエルフの看護婦はしてやったり、といった笑みを浮かべた。
「あら〜…子犬みたいに甘い声で鳴くのね?結構グッと来たわよ?」
更に追い討ちを掛けるハーフエルフの看護婦。今度は先程のお触りではなく、はっきりと何度も揉んでやった。
「あ…や、だ、駄目……」
涙目で懇願するが、体の反応はこの上なく正直であった。先程よりも与えられる強い圧力に体は大げさに反応してしまい、腰が浮いてしまう。
その看護婦は助けを求めようと周囲を見渡したが、周囲は自分の事を好奇心の目で見ていた。周囲の看護婦達は人間やエルフ、亜人などのほぼ
人間系の者達であり、獣人である自分が<こういった>ことにどのような反応を示すかに興味津々なのである。皆意地の悪い笑みを一様に浮かべている。
「見て御覧なさい…みんな貴女がどんな風に乱れるのかに期待しているのよ?少しは観客の要求に応えなさいよ?」
周りを味方につけたハーフエルフの看護婦は、そっとコリー犬型獣人の看護婦に擦り寄り、その耳にふっと息を吹きかけた。
既に手は胸に留まらず、なだらかな下腹や可愛らしい尻尾の根元、その先っぽや張りのあるヒップを撫で回していた。
「〜〜〜〜〜〜っ!!!!」
声を噛み殺して必死に耐えるが、御無沙汰であった分、耐えれば耐えるほど体がその感触を貪ってしまう。
その時であった。休憩室の扉が開き、紅羽が室内の入ってきたのは。
ハーフエルフとコリー犬型獣人の看護婦による艶事が繰り広げられる寸前であり、思わず二人は室内に入ってきた紅羽を凝視した。
周囲の看護婦達も突然の闖入者にはっと振り返り、無数の視線が紅羽に向けられた。
>114
(イザベラ)
>「俺から話を聞くのは構わないんだが・・・まずは俺の首に軽くメスを突き刺しているこの子をどうにかしてほしいんだけど・・・」
「あ〜…それもそうね」
イザベラは半ば呆れ顔ですっと手を長田の眼前に翳すと、二言三言呪文を詠唱した。すると、長田はがくっとうな垂れ、そのまま糸の切れた人形の
ようにぐらっと体が傾いた。イザベラは床に倒れる寸前の長田を抱きとめると、安堵の息をついた。
「この子は酒癖が悪くてねぇ…酔うと妖狐の力が表に出てしまうのよ」
我が子を腕に抱く母親のように穏やかな笑みを浮かべながら、長田の頭を撫でてやる。
「この力の所為で随分とこの子は嫌われてきたのよ?結構虐められていたんだから…」
イザベラは長田を腕に抱いたまますっくと立ち上がり、カイザーに向き直った。

>「俺はここら付近を歩いていたら、たまたまこの病院を見つけたから立ち寄っただけでそれ以外に他意は無い。
>この俺の存在が邪魔なのだったら、いつでもここから立ち去るぜ。共和国軍にもこの病院の位置は教えない」
「そう…貴方の言葉は信じるけど、貴方は共和国軍、私は帝國軍。何でわざわざ敵の真っ只中に堂々と入ってくる訳?」
その顔はカイザーの奇行を心底信じられないといったものであった。
「普通の神経の持ち主ならわざわざこんなくんだりまでこようとは思わないし、何よりもその根拠のない自信は何処から湧いて出て来る訳?
他意はないって言うけど全然説得力ないし、邪魔なら立ち去ればいいというものではないわ。貴方がここに来ていいのは戦傷兵としてだけよ?
此処には帝國軍兵士以外にも、大勢の共和国軍兵士も運ばれてくるのよ?貴方みたいなたわけ者が来ると、それらの共和国軍の患者さんにも
色々と迷惑が掛かるの。分かっているのかしら?」
早口で一気に捲くし立てるイザベラ。まだ言い足りない様子で、その口はまだ動いている。

>「一つ疑問に思った事があるのだが、なんで俺の名前を知っているんだ?
>俺が共和国側のの兵士として雇用されてからはまだ数日も過ぎていないと思うのだが」
「だから何だって言うの?話をすり替えようとしないの!それに一応言っておきますが、院内での抜剣抜刀発砲は禁止されており、
及び魔術の発動は治療用の法術のみ許可、となっています。その一つでも破れば私が貴方の…」
すっと何処からともなくメスを一本取り出し、カイザーに見せ付ける。
「体の隅々まで調べて差し上げます。そして色々と臨死体験をさせてあげる…貴重よ?死の世界を垣間見ると言うのは…」
イザベラは不敵な笑みを浮かべており、メスを片手に構えた姿は医療の場に携わる者とは思えないような殺気を醸し出していた。
119紅羽 ◆KUU/KZ07xo :05/02/23 03:31:31
>117
「失礼しまぁす……。」
紅羽はゆっくり待合室の扉を開け、中の様子を伺う。
しかしそこは……

>休憩室内では、長田の法術師小隊や先程まで治療室で患者と死闘を繰り広げらていた看護婦や法術師の面々が思い思いにだれていた。
>流石に患者の前ではないので、皆看護服の胸元を緩めていたり、ロングスカートもたくし上げて惜し気もなく、その下に隠れていた
>健康的な太股を外気に晒していた。今の彼女達は全く無防備極まりなく、その乱れ様は何処か艶めいてさえいた。
>ハーフエルフとコリー犬型獣人の看護婦による艶事が繰り広げられる寸前であり、思わず二人は室内に入ってきた紅羽を凝視した。
>周囲の看護婦達も突然の闖入者にはっと振り返り、無数の視線が紅羽に向けられた。
「いっ……!」
女の人しかいないことも、皆が多少だらけていることもある程度は了承していたつもりだった。
しかし、そこは紅羽の想像を遥かに超えて混沌(?)と化していた。
何とも大胆な格好をし、さらには女の人同士で何やら怪しげな事を…。
「あ……あわわわわわ……。」
紅羽の頬はどんどんと高潮していく。
そして、その場で固まる事約十秒。
「……失礼しました…。」
その場から逃げ出そうと、待合室の扉を閉めようとする。
120赤き疾風 ◆mRmMX8Kgoo :05/02/23 19:35:07
モズは長いゆったりとした椅子に座り、壁にもたれかかっていた

静かな飛行船の中、窓の外は闇だ
この船は前線に向かっているのだというのにみんなはのほほんとしている。不安を隠しているのか・・・
ーモズさん、どうしたの?いやに真剣な顔して。
ーいや、家に残してきた犬のバルザが心配になってさ…
彼女はメレイジア、薄い水色の長髪に青い服、いかにも水の魔導師といった感じだ。赤き疾風では唯一の女性である。
・・・一応カァラも居るが
この船は快適だ。元帥の用意した兵員輸送機は狭くてあまり快適そうではないからと、カァラが役員に頼んで(脅して)特別に用意させた何とかという高官の専用艇らしい。
ーいい船だよね、最高速度こそいまいちだけど、堅そうだし、機動性は高いし・・・
一番後輩の俺がこの魔法使い部隊に入ってから、戦場に行くのは初めてである。だから本当は不安で仕方が無いのだ。
ここに入る前は、自慢するような事こそしなかったが、結構自分の魔法には自信があった(なんせ共和国の田舎の魔法使いなどたかが知れてる)。でも彼らの中では術は自分が一番劣っているようだ。前線で足手纏いにならなければいいが…
ふとドアが開いて男が一人入ってきて、こちらの方を向いて言った
ーカァラはどこだ?
ー部屋に居なかったの?
メレイジアがそう聞くと、男は首を振った
カァラ?そういえばさっき見たな…
ーああ、さっき甲板の方に向かって行くのを見たよ、何しているのかは知らないけど・・・
ーそうか、
男はそう言うとさっと別のドアに向かい出ていった。
男の名前はクロムという。カァラもいまいち良く分からないが、この男はもっと正体不明であった。
赤き疾風の構成員はみなそれぞれ自分の魔法の専門分野があったが、この男は魔術の訓練の時も、簡単な四元素魔法しか使わなかった。しかし自分が同じ魔法を使ってもクロムのように上手くは行かない、彼の魔法には無駄というものが全く無いかのようである
…はあ。
メレイジアはクロムの去った方を見ている
自分は再び窓の外を見る。相変わらず闇しかないようだ
>85
>ニヤリと笑みを浮かべてみせると、一回の跳躍でインゼクトとの距離を詰める。そして、
>「汝、黒鉄の杖をもて」
>インゼクトの真横で銃口が鈍い光を放つ。
「糞!半分人間のくせしてやるじゃねぇか!?」
咄嗟に体を捻ってジェイクに向き直る。

>「さすらば汝、眼前の不浄を打ち砕かんっ!!」
>お返しとばかりに、インゼクトの真横で火炎弾の連射を浴びせかけた
高速で火球が幾つも撃ち出されるが、インゼクトは迫りくる火球の幾つかを徒手で撃ち落し、風の障壁で防御した。
「!?……羽が少し焦げちまった…」
しかし、全てを防ぎきれず、火球の一撃が右羽の一部を消し炭に変えた。インゼクトは舌打ちをし、心底気に入らないといった顔をした。
「おい、半人間…手前の名前は何て言うんだ?」
インゼクトは身構えたままジェイクに名前を尋ねた。
「ちなみに俺の名前はインゼクト。飛蝗型昆虫人のヒューパー・インゼクト。俺はこれから手前をぶっ殺すが、強い相手となれば
名前ぐらい知っておきてぇ…」
油断無く身構えてはいるが、その顔は何処と無く嬉しそうであった。
「なんせ…俺が最大級の技を使うんだからな?言っておくが、こいつの直撃を食らって今まで生きていた奴はいない…」
その自身に満ち溢れた言葉を裏付けるかのように、インゼクトに高密度の魔力が収束し始めていた。

徐々に昂ぶるインゼクトの魔力は、地面を揺るがせ、大気を焦がしていた。流石のジェイクもこれには気圧されるだろう。
>97
>「ピーーーーーピーーーーーピーーーーー!」
>どこからともなくけたたましいビープ音が鳴り出した。パンボリックの受信専用携帯電話の着信音である。
(まだ何かあるみたいだが…)
シュッレトルティーは少し眉を顰めただけで、追求はしなかった。
「まぁ…夜が明けるまではこの戦闘も終結はしないだろう。今の内に休んでおいた方がいい」
シュッレトルティーは後片付けをしていた部下に、ジャイとオゼロを天幕の奥のベッドに案内するよう言った。
「おい、お客さん方よ。こっちに来て寝るべ。これ以上起きていても健康と美容に悪いだけだぜ?」
部下の一人がジャイとオゼロを軽々と肩に担ぎ上げると、そのまま有無を言わさず天幕の奥へと連行した。
仕切りで隔たれただけの、天幕の奥には簡素なベッドが幾つか置かれており、既に布団が敷かれていた。
「ほれ、さっさと寝ろ。明日はちょいと早いからな?」
そして肩に担いだ二人をぽいっとベッドの上に放り投げた。
「さっさと寝ろよ〜…」
そのままその傭兵は振り返りもせず、踵を返してまたシュッレトルティーのいるところに戻っていった。

シュッレトルティーは一人、机の上で頭を抱えていた。あの精霊の囁きが頭から離れないのだ。
「…狂った竜か……」
ぼそり、と呟いてみた。恐らく、精霊達はそのガリーナとかいう竜を異変と認識しているのだろう。時に精霊は、自然界の異変を先程のように
感性の鋭い者に積極的に告げ、その異変を解決させたりしようとする。精霊だけでは解決出来ない異変というものはそう起こるものではなく、
故郷の祖父に聞いた話では、祖父ぐらいの時に精霊が大量に消失したことぐらいであった。その事件は当時の巫女の助力で解決したそうだが、
今回ばかりは自然界の出来事ではない。人によって引き起こされた人災である。それを解決するのはやはり同じ人なのだろうか?
だが現に、先程の精霊の警告が示す通り、この出来事は何かしら自然の何かが関わっている。
それを精霊と心を密に通わせる事が出来る、昆虫人のシュッレトルティーに語り掛けてきたのであろう。
「だが俺にどうしろと?巫女の婆さんはもう死んじまったし、娘も病弱だし、その孫だってまだ五つだ。俺は神官なんかじゃねぇっての…」
半ば不貞腐れたかのように酒を煽り、溜息をついた。
「しかし…困っている奴は見捨てて置けないのが俺の性分なんだよなぁ…」
シュッレトルティーは聞いていた。今、共和国でパンボリックが置かれている状況を。パンボリックを始めとした人間は、ガリーナに好きなことを遣らせ
幸せの絶頂の中で安らかに逝かせてやるつもりなのだと。だが、共和国がガリーナの力に目をつけない筈が無い。否応も無く、戦場に駆り出されるだろう。
それは何としても避けたい。その周囲の人間の思いやりや、ガリーナの不幸な境遇を少しでも救いたい。
「嫁さんには悪いが…次の休暇は故郷に帰れそうも無いな」
シュッレトルティーはあることを心に決意した。その瞳に迷いは無く、その決心を物語っているかのようであった。
>121
「おいおい、おいおい……」
至近距離での魔弾の連射をかわした?
「はぁ……これだから、嫌なんだよな……俺はアークヒル。ジェイク・アークヒルだ」
半分死人で半分生物兵器と付け加えながらライフルの弾倉を交換する。ゴトリ、と重い音を立てて広辞苑サイズの鉄の箱は入れ替えられた。
「………穏やかじゃないな、本当」
インゼクトを中心に空気が変わった。大気が悲鳴を上げて大地が軋んでいる。どんな技を使うというのか。
あまり想像したくはないが相当危険なモノとみて間違いはないらしい。
身体に直で伝わってくる気のデカさは半端ではない。
煙草を取り出し、そして吸う。紫煙が喉を灼く、肺を毒素で満たす。
「…ま、本気の相手に本気出さなかったら失礼だな」
瞬間、ライフルが凄まじい速度で辺りの「生命力」を吸い込み始めた。ジェイクの周りの草木は枯れ、地面にはヒビが入っていく。
「………無差別で命食い尽くすからあまり使いたくねぇんだけどな、黒式は」

迎撃するつもりなのか、ジェイクは銃をダラリと下げたままライフルに大量のエネルギーを込めていく。
124ジャカ ◆rMEfPDyTEI :05/02/23 23:56:07
>116
「…うーん、何だか視線を感じるなぁ」
流石のジャカも、擦れ違う人物擦れ違う人物に白い目で見られれば気づかない筈はない。
「この刀のせいかな?やっぱ病院内に刃物はマナー違反なのかな…」
腰に差している刀を撫でながら呟く。刀だけでなく、容姿全てが怪しい事など頭に全く浮かばない。

>「ちょっと…貴方は何者なんですか!!!!そんな怪しい格好をしくさってまぁ…貴方も侵入者の方の一人ですか!!!」
「え?」
ポカーンとした表情で顔を上げる。ジャカはその身長の為、人と話すときは見上げる体勢になる。
そのため、話しかけられるとつい顔を上に向ける癖が付いてしまっている。
「あれ?かなり近い場所から声が聞こえたのに…」
見上げた場所には誰も居なかった。空耳かと訝しみながら視線を下にずらす。
「…居た」
目の前には血まみれの看護婦。明らかに怒っている、そんな空気が漂っている。
「何者って言われても…」
思わず言葉に窮する。帝國軍に直属している訳ではないため、自分を表す言葉が上手く思いつかないのだ。
「えっと、北方回廊戦線の指揮をとってる者の部下兼弟で、ジャカダムです。ジャカって呼んでね」
怒り心頭の人物を前にしてもヘラヘラしたような態度で答える。
実はこれでもジャカにしてはかなり真面目な返答なのだが、そのように受け取る者は居ないだろう。
「えっとですね、ちょっと兄貴の命でここまで来たんですけど」
もちろんデタラメで、ここまで来たのも目的も全て独断である。
だが、こんな子供、しかも陪臣が何か言っても話を聞いてくれるとは思えない。
命と言っておけばよいだろう。兄も反対する理由はないのだから。

「ま、とりあえず、院長さんか婦長さんに会いたいんすけど、どこにいますかね?おばさ…ゴホン、お姉さん」
年上だということは見て取れるので敬語を使ってはいるものの、敬意を払ってはいない。
誰にも敬意を払おうとしない、そこは兄とよく似ている。

「…そういや、さっき侵入者が居るって言ってましたか?もしや…」
ジャカの頭には本陣に突っ込んできた騎士の姿が思い浮かんでいた。
逃げた方向からして、この病院に着いている可能性がある。
(ま、こんな人数だ、逃げられやしないだろ)
「いや、何でもないっす。はい」
再び、話を戻そうとする。
125カイザー ◆4a9UrY4.4s :05/02/24 00:05:58
118
>「この子は酒癖が悪くてねぇ…酔うと妖狐の力が表に出てしまうのよ」

(なるほど、あの時にお酒を栄養ドリンクと勘違いして飲んでしまったのか。
 その結果、俺をあの部屋に連れこんで二人っきりで・・・・・・まあ、いい物を見させてもらったから良かったけど
 だが・・・おれが欲望に負けて 酔ったあの子を抱いてしまっていたら、一時の感情に流されてしまったあの子は一生後悔しただろうな・・・)
もしもあの瞬間、イサベラがこの部屋のドアを開けなかったら どうなっていたのかはカイザーにも分からない。

>「この力の所為で随分とこの子は嫌われてきたのよ?結構虐められていたんだから…」

(力・・・か、俺も聖闘気という自分でも把握できない得体の知れない力を生まれつき持っていて、
 その力が暴走した時に もしも師匠が聖闘気をコントロールする術を教えてくれなかったら俺もこの力のせいで迫害されただろう・・・)
自分の幼い頃を思い出して、少しだけ長田の気持ちが分かった気分になるカイザー。

>早口で一気に捲くし立てるイザベラ。まだ言い足りない様子で、その口はまだ動いている。

「は、はい・・・」
(うう・・・ただ単に好奇心で病院に入っただけなのに・・・)
なんだかだんだんと自分が悪い事をしていたような気分になるカイザー、見るからに落ち込んでいる。

>「体の隅々まで調べて差し上げます。そして色々と臨死体験をさせてあげる…貴重よ?死の世界を垣間見ると言うのは…」
>イザベラは不敵な笑みを浮かべており、メスを片手に構えた姿は医療の場に携わる者とは思えないような殺気を醸し出していた。

「い、いえ、私はそのような体験は遠慮しておきます・・・」
カイザーは何故か敬語になって返事を返す、顔には大量の冷や汗が流れている。
(・・・医者って怖いな・・・)
「ま、まあ、それはともかく、俺は怪我人や病人の居る病院で戦闘行為などするつもりはない。無論 敵が先に襲ってきたのなら話は別だが。
 俺は聖騎士だ、悲しんでいる弱き者を助けるのが義務・・・いや、それこそが俺の使命なんだからな。
 ま、俺を信じる信じないは貴方の勝手だ。一つ加えると、俺はこの病院内で会った人物を誰一人として敵と思ってはいない。」
カイザーそれを言い終わるとイサベラに背を向けて部屋を出ていこうとする。
「・・・あ、そうだ。一つ伝えて欲しい事があるんだ。」
クルっとイサベラの方へ振り向く。
「そこで気絶してる女の子・・・確か長田って名前だったな。
 その子に『次に会う機会があったら今度はシラフで会話をしような』・・・って伝言を頼んだぜ」

そしてカイザーは逃げるように部屋の外へと行ってしまった
>119
(名無しの看護婦達)
突然の紅羽の乱入に、じゃれついていた看護婦達はその手を休めていたが…

>「……失礼しました…。」
>その場から逃げ出そうと、待合室の扉を閉めようとする。

扉の直ぐ近くにいた看護婦二人が、逃げようとしていた紅羽を両脇からがしっと押さえつけていた。
「紅羽先生…困りますねぇ。女だけの花園に」
右横の看護婦が妖しい微笑を浮かべて言い、
「男子である、先生が入ってくるなんてねぇ…」
左横の看護婦は意地悪そうな微笑みを浮かべていた。
「先生…貴方がここで無事に生き残る方法は一つ」
別の看護婦がずいっと紅羽の前に歩みである。何故かその手には、『戦乙女』の看護婦達が着用している野戦看護服を携えていた。
「この場は女の子として振舞って貰いましょうか?だって此処は男子禁制ですし…先生って結構可愛い顔しているし…というか」
その看護婦がパチン、と指を鳴らすと、後の控えていた看護婦達が紅羽に踊りかかった。そして藁藁と紅羽に群がる看護婦達は、紅羽の服を脱がしに、否、剥ぐのに取り掛かった。
数秒後、紅羽に群がっていた看護婦達が彼の傍から離れると、其処には看護服姿の紅羽の姿があった。しかもご丁寧に白いガーターストキッングまで着けさせられていた。
「さて…先生はこれから此処で休憩を取る場合は、その姿で来て貰いましょうか?その姿ならば女の子ですし、男子禁制という言葉は当てはまりませんしねぇ…」
そしてさり気無く紅羽の御尻にタッチをする、逆セクハラな看護婦であった。

>124
(メリィ)
>「ま、とりあえず、院長さんか婦長さんに会いたいんすけど、どこにいますかね?おばさ…ゴホン、お姉さん」
ぴくっとメリィの耳が敏感に反応した。
>おばさ…ゴホン、お姉さん
>おばさ…ゴホン
>おばさ…
>おばさ(ん)

ぶちっ、と何かが切れる音がメリィの脳内で静かに響いた。今まで子供扱いされたことはあるが、年上、ましてやおばさん扱いなどされたことなど無かった。
というか、それ以前に自分のこの起伏に乏しい体とあどけない顔を見て、何処をどうやったらおばさ(ん)などという言葉が出てくるのだろうか?
一度脳みそを隅から隅まで検査してやろうか?それも麻酔無しで…延々と、何時間に渡って地獄の精密検査をしてやろうか?…そう秘かに考えるメリィであった。
…しかし流石は21歳。ジャカの言葉に怒るメリィとは思えなかったが…
「“おばさ”の次の言葉は何!?何が言いたいの!?男の子だったら一度言いかかけた言葉は最後まで言いなさい!!!さぁほら早く!!!!“おばさ”の次に
くる言葉は何なの!?」
ジャカの襟首を掴んでがくがくと前後に揺らしていた。この外見で年下に見られることはあっても、年上、しかもおばさ(ん)などに見られたことは一度も無かった。
それがメリィの逆鱗に触れたのだ。しかも今はようやく一仕事を終えたばかり。疲労が溜まって、あまりいい気分とは言えない時にこのような言葉を言われれば…
「ちょっとこっちに来なさい!私が直々に貴方の脳を調べてあげる!絶対何処かに異常があるはずよ!!!!」
既に周りが見えていないメリィはジャカの腕を掴むと、脳外科病棟の方角へと歩き出していた。
>125
(イザベラ)
>「い、いえ、私はそのような体験は遠慮しておきます・・・」
「あらあら…若いのに謙遜しちゃって。若い時にそういう経験をするのはいいものよ?」
敢えてカイザーに臨死体験をさせたいらしい。イザベラは食い下がった。

>「・・・あ、そうだ。一つ伝えて欲しい事があるんだ。」
>クルっとイサベラの方へ振り向く。
>「そこで気絶してる女の子・・・確か長田って名前だったな。
>その子に『次に会う機会があったら今度はシラフで会話をしような』・・・って伝言を頼んだぜ」
「そうねぇ…長田さんと話をしたければ、腕の一本や二本、足の一本や二本を失う覚悟でこの病院に運ばれてくるつもりじゃなきゃ駄目よ?
貴方が大手を振ってこの病院に来るには、戦傷兵でなければいけないわ…でも、一応伝えておいてあげる」
そう言ってイザベラはカイザーの背中を押し出してやった。

>俺は聖騎士だ、悲しんでいる弱き者を助けるのが義務
「…じゃぁ、一つ聞いてもいいかしら?貴方が剣を振るえば、確かに共和国の誰かが悲しまずに済むかもしれない。けれど、その剣で
倒れる帝國の誰かはどうなるの?それで悲しんでいる弱き者を助けていると言えるのかしら?…もう少しモノを考えてから言うべきよ」
その言葉を聞いてイザベラの雰囲気が変った。先程の穏やかな瞳とは違い、今のイザベラの瞳は氷の刃を思わせるような冷たい色をしていた。
「大勢の人を助けたいのならば、もう少し流れを見なさい。そして敵を滅する事が全てではないと言う事を知りなさい…剣を振るう以外にも
人を助ける術は存在するわ。貴方もそれを探して御覧なさい。そして世界の裏を知ってみなさい…そうすれば少しは貴方も考えが変るわ」
カイザーの背にそれだけ言うと、イザベラは長田を抱き抱えたままその場を後にした。
128紅羽 ◆KUU/KZ07xo :05/02/24 01:39:18
>126
>扉の直ぐ近くにいた看護婦二人が、逃げようとしていた紅羽を両脇からがしっと押さえつけていた。
「ひゃぁ!?」
脱出失敗。紅羽はあっけなく看護婦たちに捕まってしまった。
「ご…ごめんなさいごめんなさい!!ここで見た事は絶対誰にも言わないから、許して下さ……え…?」
紅羽が必死に(何故か)謝っていると、今、周りにいる看護婦達が着ている看護服が目の前に出される。
紅羽は、看護婦達が今何を考えてるのかがすぐに分かった。
―僕に着せる気だ……・。
「い、いやぁぁ!?そ、それだけは絶対にだめですううう!!うわ!だ、だめ!ソコは…ちょっ…うわああああ!?」
結局紅羽は、何の抵抗もできないまま看護服を着せられてしまった。
男である自分が、女の人が着る看護服を…。
「あぅぅ…こんな格好誰にも見せられません……。」
紅羽の顔は、今にも火が上がりそうなほど真っ赤になっていた。
少しでも見られる面積が小さくなる様に、その場に座り込んでうずくまってしまう。

>そしてさり気無く紅羽の御尻にタッチをする、逆セクハラな看護婦であった。
「ひぁぁ!?ぎゃ…逆セクハラで訴えますよっ!!」
とうとう耐えられるずに怒る紅羽だが、半泣きでしかも看護服姿なので怖くとも何ともないのだった。
むしろ、可愛かったり…?
>65
機体がゆっくりと接地すると、後部ハッチがゆっくりと開いた。
徐々に開かれるハッチの隙間から、<戦場の匂い>が輸送キャビン内に流れ込んできた。
ポーランドで、オランダで、フランスで、ギリシャで、イタリアで、アフリカで、ロシアで、そしてドイツと
ありとあらゆる戦場で嗅いできた<戦場の匂い>…それは何かが焼かれているような匂いだと何時もヴェルターは感じていた。
焼かれている何かは、きっと人とかナマモノが焼かれる匂いなんだろう。幾多の戦場でヴァルターは人間の
ヴァーヴェQと言うものを見てきた。それは酷い匂いで、胸がもたれる匂いであった。
それが今、この世界でも行われている。人という生き物は生きる世界が違えど、やることは同じのようだ。
そんな当たり前の結論に辿り着いた時には、後部ハッチが完全に開かれていた。ヴェルターはブレーキを解き、クラッチを思いっきり踏んだ。
直ぐに愛車のBMW75は咆哮を上げた。股下に心地よい振動を感じたヴェルターはスロットルを最大限に開放し、ハッチから弾丸の如くの
勢いで飛び出した。
降下地点であった役場広場から、直ぐにヴェルターは移動を開始し始めた。役場広場を突っ切ったヴェルターは、前輪を廃村の外へと向けた。
廃屋となった軒並みがビデオの早送りのコマの如くの勢いで後方へと過ぎ去り、程なくしてヴェルターは廃村の外へと出た。
「悪いが俺は別行動をとらせて貰う…俺は元は狙撃兵。単独で威力を発揮するんだよ」
廃村を振り返る事無くヴェルターは、未だに小競り合いの続く戦場へと消えていった…

ヴェルターは小競り合いの続く地域を避け、とある地点へと向かっていた。それはヘリで運ばれてくる途中、夕日に霞む地平線の向こうに見えた要塞のような建物…
目の良いヴェルターにはその建物の屋上に翻っていた赤十字の旗がしっかりと見えていた。そう、それは紛れも無く、野戦病院を表す旗印であった。
野戦病院というのだから、そこにいるのは負傷兵やそれを治療する看護婦や医者だろう。ヴェルターはそれを重々承知していたが、彼の戦争の経験が彼をその野戦病院へと向かわせる。
「…悪いがこいつは戦争だ。弱ったところを徹底的に叩くのが戦争の基本だ……」
意味深な台詞を呟くと、ヴェルターは更にバイクの速度を上げて、野戦病院へと向かった。
(続き)
ヴェルターは野戦病院から離れたところにある、小高い丘に来ていた。其処からは丁度野戦病院とそれを囲む防御陣地が見渡せるような場所であった。
見渡しの良い場所は絶好の狙撃地点。遮蔽物となる、腰ほどまで高さがある茂みもある。
しかしヴェルターはバイクを茂みの中に止めるや否や、バイクから降りてサイドカーに積んであったパンツァーシュレック(バスーカ砲)の準備をし始めた。
「ここからなら充分に射程距離内か…悪いが、こいつは戦争だ。戦争は敵をより多く殺さなければならない…それがたとえ」
パンツァーシュレックを肩に担ぎ、照準鏡を覗き込む。夜間と言えど、照準の目安となる物体には事欠かなかった。野戦病院の窓から溢れる光が丁度良い的となっている。
「負傷兵や、看護婦でもな…」
そう言って引き金に力を込めた。刹那、着火装置が対戦車弾頭のロケットモーターに火を入れ、対戦車弾頭は白い尾を引いて野戦病院へと向かった。
闇夜に浮かび上がるロケットモーターのオレンジ色の推進炎……このまま何事も無ければ数秒後に、対戦車弾頭は野戦病院の一角に命中するだろう。
ヴェルターは撃ち終わると、直ぐにも再装填の準備し始めた。サイドカーに積んであった木箱からパンツァーシュレック専用の砲弾を取り出し、未だに発射歩炎で
燻る後部排気口から、砲弾を押し込む。更にパンツァーファウスト(簡易ロケット砲)も脇に抱え、徒歩で別の場所へと移動した。
131ジャカ ◆rMEfPDyTEI :05/02/24 20:23:22
>126
>「“おばさ”の次の言葉は何!?何が言いたいの!?男の子だったら一度言いかかけた言葉は最後まで言いなさい!!!さぁほら早く!!!!“おばさ”の次に
>くる言葉は何なの!?」
「えー。でもさ、そこまで怒るってことはその次に来る言葉なんか言わなくても分かってるでしょ?」
がくがく揺らされても、ジャカはあくまで平然としている。
「例えば後にくるのがプライ、つまり僕はオーバーサプライって言いたかったんですよ、って言っても信じないでしょ?」
余談だが、オーバーサプライとは供給過剰のことである。このタイミングで出る言葉ではない。
「ま、“おばさ”で止めて、“ん”まで言わずに“お姉さん”と訂正したあたりに僕の優しさが出ているよね?」
更に神経を逆撫でするジャカの発言は続く。
「だってさ、お姉さん二十歳ぐらいかな?僕と六、七歳も離れてんですもん。
 しかも一番最初に僕に言った言葉、『しくさってまぁ』だっけ?そんなの今の若い人使わないでしょ」
実はこれは弁明なのである。しかしジャカは墓穴を掘っていることに気づいていない。

>「ちょっとこっちに来なさい!私が直々に貴方の脳を調べてあげる!絶対どこかに異常があるはずよ!!!!」
「異常は無くはないかもしれないけど、患者の要望も聞かずに、ってのは医師としてダメなんじゃないすか?
 ほら、あれだよあれ。インフォームド・コンセント。それがしっかりしててほしいですね」
実はジャカは未だに怒られている理由を理解していない。とんちんかんな発言ばかりが口を付いて出る。

病棟へ向かって引きずられている中、ジャカがもう一度口を開く。
「とりあえず…ここは危ない、っすね」
一言そう呟くと、腰に差した刀の柄に手をかける。
そう、ジャカは勘付いていた。この身に、いやこの病院に危険が迫りつつあることを。
しかしその危険がどんなものなのかはわからない。勘付いただけでも立派だろう。
「病院を戦場に、ってのは避けたいのになぁ…」
そう言いながらも臨戦態勢をとる。ジャカの臨戦態勢、それは即ち気配を消すこと。
しかし、ジャカは病院に迫っている危険よりもまず、自分に迫っている危険を心配する必要があった。
気付けば、ジャカが居たのは脳外科病棟の前。本当に連れてこられてしまった。
「まさか…ねぇ?」
顔がひきつっている。
>128
(名無しの看護婦達)
>とうとう耐えられるずに怒る紅羽だが、半泣きでしかも看護服姿なので怖くとも何ともないのだった。
>むしろ、可愛かったり…?

看護婦姿となった紅羽を囲む看護婦達…彼女達のその瞳は、小動物か何か可愛い生き物を見つめるそれと同じであった。
「可愛い…」
一人の看護婦が、嘆息と共に素直な感想を呟く。それに続いて周囲の看護婦達も頷く。
「こうなったら…紅羽先生にはこれで突き通して貰った方がいいんじゃない?」
「賛成」
「異議なし」
一人の提案に、直ぐに賛成の声が幾つも上がる。紅羽の意見は完全に彼女達の意識外である。
「ということで、先生はこれを付けてくださいね?」
一人の看護婦がネームプレートを取り出し、紅羽の胸につけた。ネームプレートには『くー』と可愛らしい文字で書かれていた。

>130
(イザベラ)
今では穏やかな寝息を立てている長田を腕に抱き抱えたまま、イザベラは長田の小隊に割り当てられている部屋へと向かっていた。
部屋の前に着き、イザベラはそっと扉を体で押し開け、窓際にある長田のベッドまで腕の中の長田を運んでやった。そして長田のベッドに長田を
横たえると、ベッドの直ぐ横に備え付けられている、長田の私物が入っているロッカーを開け、パジャマを取り出して長田に着せてやった。
長田にパジャマを着せ終え、布団を掛けて長田を寝かしつける…長田のその寝顔は安らかそのものであった。
イザベラは長田の額に掛かっていた長田の狐色の柔らかな髪の毛をかきあげ、彼女の額に手を優しく添えてやった。
「…明日は二日酔いが酷いわね。全く、勤務時間中にお酒を飲む看護婦が何処にいるのかしら?」
しかし終始イザベラは優しい微笑を浮かべており、我が子でも扱うかのように長田の髪の毛を指で梳いてやる。
「困った子…本当に、困ってしまうぐらいに可愛い子よ。貴女は…」
そう言ってイザベラはベッドに身を乗り出し、長田の額に優しく口付けてやった。それは少しでもいい夢が見れるようにと、御呪いの意味を兼ねていたものであった。
唇を離し、長田の安らかな寝顔に魅入るイザベラ…その表情は先程と変らぬ、母親のように優しい微笑を浮かべてはいたが、何かしら別の色を含んでいた。
イザベラは梳いていた手を止め、長田の輪郭に沿って手を滑らした。長田の白い頬をイザベラの細い指が撫で上げ、ぽってりとした魅力的な唇に沿って指が這う。
そして少しだけ唇を割ってみれば、可愛らしい並びのいい白い歯が見て取れる。傍から見れば、一方的にイザベラが無防備な長田にちょっかいを出しているようにしか
見えないが、イザベラのその顔には妖しく、艶めいた微笑さえ浮かんでいた。それからして、イザベラが長田に対して何かしらの特別な感情を抱いている事は一目瞭然であった。
やがて長田の顔を愛撫していた手は止まり、イザベラは身を乗り出してすっと顔を近づけた…徐々に狭まる二人の距離。鼻先に長田の寝息を感じ、仄かに鼻腔を擽る
長田の甘い匂いに、思考が徐々に蕩ける。やがて二人の距離は零になったが、イザベラはこつんと長田の額に自分の額を軽くぶつけただけであった。
「…まだキスはしないわ。そういう時期じゃないもの……」
そう言って結っていた黒髪を解いた。はさり、と結われていた腰までもある流麗な黒髪は柔らかく広がった。イザベラは顔を離し、すっと立ち上がった。
「いい夢を見るのよ…明日も今日みたいに忙しい一日になるかもしれないから……」
そして白衣と流麗な黒髪を翻して部屋を後にした。その時であった。
「!?」
長田の眠る部屋を後にしたその直後であった。轟音が院内に響き渡ったのは。どうやら共和国軍の攻撃を受けたみたいだ。床が僅かに揺れ、天井からぱらぱらと埃が落ちた。
…攻撃の内容がどのようかものかは分からないが、その程度の攻撃でこの野戦病院の外壁には傷一つ付けられないはずだ。しかし、一応被害がどの程度かを確認しておかねばならない。
殆どの看護婦達は運ばれてきた負傷者の治療に出払っており、人手が大幅に不足している。今は自分が直接被害の程度を見に行かねば…
轟音の方角からして、攻撃を受けたのは西病棟だろう。あの病棟には比較的軽度の負傷を負った患者が多数収容されている。万が一、火災が発生していても、自力で逃げられるかも
しれないが、念には念を入れねばならない。イザベラは攻撃を受けた西病棟へと急いだ。
>131
(メリィ)
>「まさか…ねぇ?」
>顔がひきつっている。
「そのまさかですよ?」
壮絶な微笑で答えるメリィ。そのあどけない瞳には不気味な眼光さえも宿っていた。
「私は脳外科過程も修了していますから、大抵のことなら出来ますよ……さぁ!こっちに来なさい!」
ぐいぐいとジャカを引っ張り、脳外科病棟の一室へとジャカを引っ張りいれようとする。その時であった。
「キャァァァ!?」
突然の轟音に思わず悲鳴をあげてしまい、その場に蹲ってしまった。
「何!?何がどうなっているの!?」
恐る恐る顔を上げ、不安そうに周囲を見回す。メリィと同じように、其処此処で看護婦達の間からも悲鳴が上がっていた。
「ふむふむ、魔方陣も八割方完成ですな。このペースならば夜が明けきる頃には完成ですね」
ネクロマンサーは最精鋭であるデュラハンとフレッシュゴーレムを従えて魔方陣内部を巡回中だった。
スケルトンやゾンビ達がルーン文字を刻んだ岩や木片などを設置して魔方陣を構築している様子を眺めて、
ネクロマンサーは満足げに頷いた。
「さて、もうしばらくカイザーさんには院内にいて欲しいものですね。そうすれば、パーフェクトな魔方陣で
彼を鏖殺することができます。ははは、あの若者の身体はよいゾンビになりそうですな。
いや、首を落としてデュラハンにするのもよいかもしれませんね。フレッシュゴーレムの材料としてもよさそうです」
これほどまでに大規模な仕掛けを作っているのだ。完成さえすればカイザーに勝てるはずだという思いが、
ネクロマンサーの余裕の源だった。瘴気を召喚し続ける魔方陣や現世に渦巻く負の力を集めている魔方陣、
足を踏み入れただけで命を奪う致死性の魔方陣、精神異常を引き起こす魔方陣、身体を腐らせる魔方陣、
アンデッド召喚用魔方陣その他……そして生じた力を蓄積する巨大魔方陣の状態を確認しながら、
ネクロマンサーは実に楽しげな薄笑いを浮かべていた。

>129-130 >132
「さて……まだまだ時間がありそうですから、戦術でも考えておくとしましょう」
作業の進行状況に満足したネクロマンサーは手近な岩に腰掛けると、今後の方策を練り始めた。

> 闇夜に浮かび上がるロケットモーターのオレンジ色の推進炎……このまま何事も無ければ数秒後に、対戦車弾頭は野戦病院の一角に命中するだろう。
> 長田の眠る部屋を後にしたその直後であった。轟音が院内に響き渡ったのは。どうやら共和国軍の攻撃を受けたみたいだ。床が僅かに揺れ、天井からぱらぱらと埃が落ちた。
「そうですな、やはり精神面に訴えるような……おや?」
ネクロマンサーは闇の中を駆け抜けていく謎の光を見た。鬼火の類でもなければ、何らかの魔法でもない。
もしそれらならば見切る自信があるから、超常的な力が働いているということは絶対にない。
「ふむ……共和国軍の攻撃ですかな? 攻撃の規模から考えて恐らく一人から数人でしょうが。まぁ、わざわざ
私が手を下すまでもありませんな。私以外の戦闘要員もこちらに来ていることですし、私はカイザーさんとの戦いに
専念すると致しましょうか。まずは、私の魔力を高めておくとしましょう」
ヴェルターが放った対戦車弾頭が病院の外壁に着弾した轟音を聞きながら、ネクロマンサーは静かに瞑想に入った。
二兎を追って二兎を得ることができるという過剰なまでの自信を持つネクロマンサーだが、自信過剰であると同時に
二兎を得ることの困難さも知っている。カイザーを絶対に叩き潰してしまいたい彼にとっては、今は楽な道を選ぶべき時だった。
(………殺した後で扱き使ってあげますよ……はっはっは!)

ネクロマンサーは雑念だらけの瞑想によってひたすらに魔力の強化を行い、アンデッドを使役して魔方陣の構築を続行している。
>133
>どうやら共和国軍の攻撃を受けたみたいだ。床が僅かに揺れ、天井からぱらぱらと埃が落ちた
着弾音で弾頭が命中したことを悟り、ヴェルターは戦果を確認するまでも無く、別の場所へと移動していた。
バイクを止めた所から小高い丘から数百m程下った茂みの中に今は身を伏せていた。暗闇ながら、目の良いヴェルターには
病院の窓から漏れる明かりで照らし出されている、陣地の概要がはっきりと見て取れた。
見ればあの病院の周りを、何か黒い煙みたいなものが渦巻いている。別にそれに直に触れていると言う訳ではないが、
視覚だけで其れは人を不快にさせる魔力があった。
「一体何だって言うんだ?…あそこは本当の病院なのか?」
病院の周囲を囲む瘴気に、ヴェルターは眉を顰めた。そして見た。その瘴気の中に蠢く多数の人影を…そして絶句。
「おいおい…敵にはブゥードゥー秘術の使い手でもいるのか?」
それは紛れも無く、半ば腐りかけた死体が動いていたのである。暗闇の中を蠢くそれは、余計に不気味に見えた。
だが、そのゾンビの中で頭から黒いローブをすっぽりと被った、絵本に出てくる魔術師みたいな男がいた。
「…あれが親玉って訳か。ゾンビなんていう胸糞悪いものを扱っているんだから、悪い魔法使いってところだな」
そう言ってパンツァーシュレックを肩に担ぎ、ネクロマンサーに直接、照準を合わせた。
「粉々に吹き飛んでくれよ…」
引き金を引いて、パンツァーシュレックを撃ちだす。そして直ぐに撃ち終わったパンツァーシュレックを手放すと、脇に置いていたパンツァーファウストを
新に構えた。狙うは、ゾンビ共が懸命に配置している、何やら幾何学的模様が刻み込まれた石。
「そいつをぶっ飛ばせば、色々と大変なんだろう?」
引き金ではなく、パンツァーファウストの発射筒上部に付いている発射ボタンを軽く押し込んだ。直ぐにパンツァーファウスト特有の、モンロー効果を狙った
楕円型の弾頭がオレンジ色の発射炎を引いて、ルーン文字の刻み込まれた石へと向かっていった。
ヴェルターは手持ちの重火器類を撃ちつくすと、肩に担いであった狙撃仕様のモーゼルを構え、素早くその場から移動した。
今度は病院内部を狙撃できるような場所へと移動した。
>135
> 「粉々に吹き飛んでくれよ…」
最初にそれに気づいたのは、ネクロマンサーの背後に控えていたフレッシュゴーレムだった。
百人の英雄の肉体から最も優れた部分ばかりを摘出して組み合わせることによって身体能力や知覚能力を高め、
三人の賢者の頭部を接続することで情報処理能力を高めた異形の怪物は、全身に移植された無数の目、耳、鼻によって
生物の限界を超越した知覚能力と認識能力を有している。そんな怪物にとって、迫ってくる砲弾を察知しネクロマンサーを
庇うことなど朝飯前だった。射線上に割り込んだフレッシュゴーレムによって、砲弾が受け止められる。
「何!?」
直後、爆発が起こった。背後に庇われることによって完璧に爆風を回避したネクロマンサーが見たものは、
砲弾の直撃によって身体を焼かれた挙句に胸部が大きく抉れてしまったフレッシュゴーレムの姿だった。
一応は装甲板などを肉に接着しているとはいえ所詮は生物ベースの怪物なので、まともに砲弾を受けては
かなりのダメージになる。最高傑作の一つであるこの怪物がこの程度で破壊されることこそないが、
それでもかなりの被害を受けたことは事実だった。
「くっ……お前は一旦、冥府に戻りなさい」
瘴気さえあれば無制限に回復する通常のアンデッドとは違い、フレッシュゴーレムは半ば生きているため瘴気による回復はしない。
このままカイザーとの戦闘に参加させるのは無謀としか言い様がない。ネクロマンサーが開いた門を通って、
フレッシュゴーレムは冥府へと帰還していった。再び召喚できるようになるには少し時間がかかるだろう。

> 楕円型の弾頭がオレンジ色の発射炎を引いて、ルーン文字の刻み込まれた石へと向かっていった
しかし、フレッシュゴーレムの戦線離脱だけではすまなかった。何と忌々しい敵兵は芸術の域にまで達した高度な
魔方陣を破壊しようとしているのだった。ルーンを刻んであるとは言っても岩に過ぎないので、砲弾の威力の前には
一溜まりもない。既に重要なルーンの岩が幾つか破壊されてしまっていた。
予備のルーンを用意してあるので即座に復旧可能であり既に復旧作業は開始されているが、それでも作業能率の
低下は甚だしかった。魔方陣の一部が壊れたために瘴気も少し逃げてしまっている。
「折角見逃して差し上げたというのに……あの虫けらは余程命が惜しくないようですな」
呆れたような表情を浮かべたネクロマンサーは、静かに精神を集中し始めた。ヴェルターの居場所を探っているのだ。
(この負の力に満ちた瘴気の中では、貴方のような生者の存在は酷く目立ちます……ふむ、そこですか)
巨大魔方陣内部に入り込んでしまったヴェルターの位置を特定することなど、簡単なことだった。
「さぁ、反撃開始ですよ。無粋な火薬と鉛玉で亡霊が倒せますかな?」
ネクロマンサーが指を鳴らすと、ドラム缶程度の大きさの砲弾の姿を取った悪霊の集合体が三つほど生まれ、
次の瞬間には超音速で発射された。周囲の瘴気をも取り込んだその砲弾一つには、ヴェルターが発射した
砲弾が単なる機銃としか思えないほどの破壊力が秘められている。それが三発もヴェルターに向かっているのだった。
「恨みは百倍返しが基本ですからな。魔術師に手を出したことを冥府で後悔なさるがよろしい」
ネクロマンサーは再び瞑想に入った。
137カイザー ◆4a9UrY4.4s :05/02/25 00:22:43
>127
>「大勢の人を助けたいのならば、もう少し流れを見なさい。そして敵を滅する事が全てではないと言う事を知りなさい…剣を振るう以外にも
>人を助ける術は存在するわ。貴方もそれを探して御覧なさい。そして世界の裏を知ってみなさい…そうすれば少しは貴方も考えが変るわ」
>カイザーの背にそれだけ言うと、イザベラは長田を抱き抱えたままその場を後にした。

カイザーは病院内の廊下に設置してあった椅子に座っていた。先ほどイサベラの言葉の意味を考えなら
(人を救う術・・・か。俺とて殺し合うのが正義などと思った事は無い。・・・そうしなければこちらが死ぬだけなのだから・・・
 確かにこの病院ならば怪我や病気で苦しんでいる人を救う事はできるかもしれない。
 ・・・でも、人は戦いを好む生き物だ、元凶を止めなければ戦いは終わる事は無い。
 何が正しくて何が偽りなのか、そんな事は誰にも分からない。・・・でも、俺は自分が正しいと思ったから戦っているんだよな・・・)

ドオォォォォン!!

急に病院内に轟音がなり響き、衝撃でカイザーは身体のバランスを崩して床に倒れそうになる。
「・・・くっ!なんだ!?まさか、敵の攻撃か!・・・あ、いや共和国は味方か。
 って、そんな事はどうでもいい。・・・こんな病院を攻撃してどうするんだよ!」
カイザーは走り出した。カイザーがいる場所から病院の出入口はそう遠くない、すぐに外へ抜け出した。

>135
そこでカイザーが見た、自分と共に異世界から召喚された者が病院を爆撃していたのだった。
(あいつ、確か名前はヴェルターだったな・・・傷ついている者が集まっている場所を狙うとは・・・)
カイザーは鞘から剣を抜き、そして光の闘気である聖闘気を身体に纏う。カイザーはヴェルターを止める気なのだ。

・・・カイザーは自分に迫り来る災厄に未だ気付いていない
138紅羽 ◆KUU/KZ07xo :05/02/25 00:28:40
>132
>看護婦姿となった紅羽を囲む看護婦達…彼女達のその瞳は、小動物か何か可愛い生き物を見つめるそれと同じであった。
>「可愛い…」
>一人の看護婦が、嘆息と共に素直な感想を呟く。それに続いて周囲の看護婦達も頷く。
「くっ……人の話を聞いてない……。」
自分には女装趣味なんて無いのに……。
心の中で嘆きながら、大きな溜め息をつく。

>「ということで、先生はこれを付けてくださいね?」
>一人の看護婦がネームプレートを取り出し、紅羽の胸につけた。ネームプレートには『くー』と可愛らしい文字で書かれていた。
「ぎゃああ!?な、何ですかこれは!?」
胸に、名前がひらがなで書かれた(しかも「くー」って伸ばして)ネームプレートを付けられてしまった。
これでは、まるで幼稚園だった。
「あ…あの!これはいくら何でも……。」
紅羽が看護婦達に抗議しようとしたその時……。

>129-130
病院内に突然の轟音が響き渡った。
「敵襲!?どこから!?」
さっきまでとは打って変わって、突然真剣な顔になる。
(と言っても、周りから見れば難しい算数の問題を解いている小学生にしか見えない。)
「皆さんは危険なのでここにいてください!」
紅羽は、待合室を飛び出し、ある部屋を目指して駆け出した。
看護服姿のままだが、そんな事をどうこう言っている暇はない。
(ここには怪我人や看護婦さんがいるんだ……!相手の好きなようにはさせない…!)
>136
>周囲の瘴気をも取り込んだその砲弾一つには、ヴェルターが発射した
>砲弾が単なる機銃としか思えないほどの破壊力が秘められている。それが三発もヴェルターに向かっているのだった。
(何かが来る!!!)
そう直感したヴェルターは既に行動に移っていた。
後腰のベルトに挟んであった、ドイツ軍特有の柄付き手榴弾を三本引き抜き、起爆ピンを素早く抜いて、迫り来る圧力向かって投擲していた。
瞬間、三本の柄付き手榴弾は三発の死霊砲弾にそれぞれぶつかり、爆発四散していた。手榴弾の爆発によって、三発の死霊砲弾は軌道を逸らされ、
ヴェルターの周囲の地面に着弾した。ヴェルターは既に地面に伏せてはいたが、数mしか離れていない所に着弾した死霊砲弾の衝撃には、全身をバラバラに
されるかと思った。
「ふぅ…露助の重榴弾が至近距離に落ちたかと思ったぜ……」
死霊砲弾によって吹き飛ばされた地面がばらばらとヴェルターの上に降り注ぎ、それを払う事無くヴェルターは立ち上がり、瘴気の中を駆け抜けた。
途中、ゾンビが向かってきたが、ヴェルターは咄嗟にモーゼルの銃床でゾンビの顔を殴り潰し、ゾンビが倒れたところを、腰に差してあった銃剣でトドメを刺した。
素早き銃剣を引き抜き、ゾンビ共が未だに構築している石に向かって
「こいつでぶっ飛びな?」
後腰に差してあった残りの手榴弾八本を、一気に投擲し、直ぐに病院の玄関へと向かって駆けて行った。

>137
>カイザーは鞘から剣を抜き、そして光の闘気である聖闘気を身体に纏う。カイザーはヴェルターを止める気なのだ
「アンタか…丁度いい。俺はこれから此処に突入して、制圧する。敵は武器を所持しているとは思えないが、一人でも加勢がいてくれると助かる…」
ヴェルターは明らかに病院の中から出てきたカイザーを不問にし、そのまま擦れ違い、病院内に突入しようとする。
ヴェルターに言わせれば、戦場においてはあらゆる人間が脅威となる。一般市民に扮したレジスタンスがいい例だ。看護婦だって、武器を手に取れば場合によっては
自分達の脅威となる。だから、そういうことをされる前に始末するのだ。負傷兵だって、傷が癒えれば又前線に立つだろう。だから今この場で殲滅するのだ。
ヴェルターの今の武装は小銃のモーゼルに拳銃のワルサー、それと銃剣が二本。丸腰の相手となれば、充分な装備だろう。
140ジャカ ◆rMEfPDyTEI :05/02/25 01:08:38
>133
>突然の轟音に思わず悲鳴をあげてしまい、その場に蹲ってしまった。
>「何!?何がどうなっているの!?」
>恐る恐る顔を上げ、不安そうに周囲を見回す。メリィと同じように、其処此処で看護婦達の間からも悲鳴が上がっていた。
「なるほど、外からの攻撃か…」
突然の大轟音にうずくまるメリィや慌てふためく看護婦達と対象的に、ジャカはあくまで冷静だった。
「この病院は頑丈そうだからいいけど…災いの元は断っておかないとなぁ」
軽くストレッチをすると、刀を鞘から出して持つ。
「ごめんなさいね、病院内で抜刀したりして。敵を見つけてからじゃ遅いんで」
そう言うと、ジャカは階段に向かって走り出した。
「脳の検査はまた今度で!」
振り向き様、メリィに向かってそう叫ぶと、スピードを上げ姿を消した。

>137>139
ジャカが猛スピードで出口から出ると、そこで見たものは、二人の男の姿。
そのうち一人は腕が立ちそうな騎士。格好からして帝國軍のようにも見えるが、
ジャカはその男が共和国軍であることを知っている。今日戦ったばかりなのだから。
だが、その歩を進める場所は病院の外であった。
そしてもう一人の男、殺気が感じ取れるその男は、ジャカが出てきた出入口とは違う出入口から入ろうとしている。
(あいつが、危険か)
中に何人の非戦闘員がいることか。そう易々と院内に入れるわけにはいかない。

(…消えて貰うか)
標的を見定めたジャカは、カイザーを完全に無視。ヴェルターを狙う。
ジャカはかなりのスピードで、音もなく気配もなく、ヴェルターの背後に立つ。
暗殺術を極めたジャカには容易な芸当である。まして黒装束、闇に隠れて気付かれにくい。
(さよなら、名も知らぬ兵士さん)
少し飛び上がり、真後ろから刀を前に回し、首を掻き切ろうとする。
141鈴木中尉 ◆DDGCBdpW/w :05/02/25 01:17:37
「動くなよ。動けばこの役場ごと吹っ飛ぶぞ」
たかが手榴弾でそこまで威力が出るとは思えないが、奴等は近代兵器について、
ほとんど何も知らないようだから脅しとしては十分なはずだ。
「後は増援の歩兵隊に相手をしてもらうんだな」
そういって手榴弾を一つ投げ、階段を駆け下りて正面ではなく裏口から外へ出る。
追っ手が来ている事を確認し、急いで止めてあった車両のエンジンをかける。

敵は徒歩行軍であると確認している。車両には追いつけないだろう。
「こちら鈴木。友軍歩兵応答せよ。我、村内役場を脱出せり。
よって貴官らは速やかに役場制圧にかかれ。以上」
さて、これからどこに向かうべきか。
目標定めに双眼鏡を覗くと遠くに赤十字が見えた。おそらく病院だ。
ちょうどいい。先ほどの催涙弾がまだ効いているのか目に痛みが走る。
この目の痛みをとる為に目薬でも貰いにいこう。
142紅羽 ◆KUU/KZ07xo :05/02/25 01:21:04
紅羽は病院内の一室で着替えていた。
さっき看護婦に無理矢理着させられた看護服を一気に脱ぎ捨て、肌着と下着だけになる。
「怪我人や看護婦さんを狙うなんて……とんだ腐れ外道みたいだね…。」
そう呟きながら、服を着る。しかし、着ているのは白衣ではない。
黒いズボンに黒いシャツ、さらには黒いコート。全身黒ずくめである。
コートに付属してる複数のベルトを次々と止めていき、最後にグローブをはめる。
「後は…。」
部屋の隅に置かれていたアタッシュケースに手をかける。
紅羽が帝都病院から、持ってきたものである。ダイヤルを回しあっという間に鍵を外す。
その中には、2丁のカスタムハンドガンとかなりの数のナイフが入っていた。
カスタムハンドガンを腰にかけ、ナイフを服やコートの中に隠していく。
今度はアタッシュケースの近くにおいてあった大きめのバッグを持ち出す。
バッグの中を開けると、タオルや自分の替えの白衣が入っている。
しかし、紅羽はそれを次々と取り出しては床に投げすてる。
そして、バッグの一番底に入っていたカスタムショットガンと仮面を取り出す。
仮面を顔につけ、ショットガンを左手に持つ。
「よし……!」
戦いの準備が完了し、すぐに部屋を出て、窓から外の様子を伺う。

>139
>後腰に差してあった残りの手榴弾八本を、一気に投擲し、直ぐに病院の玄関へと向かって駆けて行った。
「あれは……全く、とんでもない事を…。」
紅羽は、窓を開け、カスタムショットガンを床に置き、両腰のカスタムハンドガンを手に取ると、すぐにで手榴弾を狙い撃ちする。
ハンドガンの弾は次々と手榴弾に命中し、手榴弾は別方向に弾き飛ばされていく。
手榴弾に命中したのを確認すると、紅羽は窓から飛び降り、床に着地する。
「痛……3階から飛び降りるのは…いくら僕でも無理があったかな…。」
そうぼやきながら、病院を狙った犯人の元へ走る。
少し走ると、2人の男が視界に入った。
(病院を攻撃したのは……あっちだね。)
「そこまでだ!」
ある程度の距離前近づき、紅羽はヴェルダーにカスタムショットガンの銃口を向ける。
143カイザー ◆4a9UrY4.4s :05/02/25 01:39:21
>139
>「アンタか…丁度いい。俺はこれから此処に突入して、制圧する。敵は武器を所持しているとは思えないが、一人でも加勢がいてくれると助かる…」
>ヴェルターは明らかに病院の中から出てきたカイザーを不問にし、そのまま擦れ違い、病院内に突入しようとする。

カイザーは後ろを振り向き、ヴェルターに声を掛ける。
「待て、今のうちに帝國の負傷兵を叩けば確かに敵の数は減る。それは紛れも無い事実だ。」
病院に向かって爆撃をするほどの男だ。傷ついた兵であろうが関係無しに攻撃をするのは目に見えている。
「・・・だが、お前はこの病院をよく分かっちゃいないようだな。
 この病院には帝國の負傷兵だけではなく、共和国の負傷兵も一緒に収容されているんだ。
 今は戦争中だ。だから敵を倒す方法をとやかく言う筋合いは俺には無い、だが、味方を巻きこんで攻撃するのならば・・・俺はお前を止める」
本当に共和国軍の兵士が収容されているのかはカイザーにも分からない。だがヴェルターの行為が進めば彼を止めなければならない。
何故なら、この病院で会った人を死なせたくないという、戦いを好む人から見ればくだらない『情』というものがカイザーを動かしているからだ。

>140
(・・・ん?他の出入口から誰かが出てきたぞ)
カイザーはヴェルターのから少し目線をずらす。そこにはこちらを見つめているジャカが立っていた
(あいつ見たことあるぞ・・・確か帝國の部隊の奴だったな、あいつもヴェルターを止めに来たのか)
カイザーがそう思っていた瞬間だった、ジャカの姿が消えた。気付いた時にはすでにジャカはヴェルターの背後に立っていたのだった。

>少し飛び上がり、真後ろから刀を前に回し、首を掻き切ろうとする。

カイザーはジャカの動きを止めようと腕をピクリと動かすが、それ以上は動かさない。
(・・・くっ、ここでヴェルターを止めなければ被害者が増えるだけだ。・・・すまない、お前に味方する事はできない)

>142
>「そこまでだ!」

(・・・今度はなんだ!?)
カイザーが声のした方を振り向くと、ヴェルターに向けて銃を構えている紅羽の姿を見つけた
(あいつ黒ずくめで仮面だな・・あれって逆に目立つぞ・・・
 ってか、俺の位置はかなりヴェルターに近いな・・・少し狙いがブレたら俺に当たるよな・・・)
カイザーはじりじりと後ろへ下がってゆく。ヴェルターから距離をとるつもりらしい。
>140
>ジャカはかなりのスピードで、音もなく気配もなく、ヴェルターの背後に立つ。
>暗殺術を極めたジャカには容易な芸当である。まして黒装束、闇に隠れて気付かれにくい。
<何か>が自分の背後に立った。それは空気の流れさえも起こさず、驚くべき程の隠密性で自分の背後に立ったのである。
では何故ヴェルターはそれに気付く事が出来たのだろうか?答は簡単。僅かな殺気を感じ取ったのからである。
幾等音も気配もなく忍び寄ろうとも、殺気を完全に消す事は出来ない。ヴェルターはその殺気を感じ取れることに幾度と無く、命拾いをしたことがある。
咄嗟にヴェルターは腰の銃剣を引き抜き、ジャカの刀と自分の首の間に滑り込ませる。直ぐに刃物のせめぎ合う音が病院の玄関に響いた。
「畜生が!」
体勢が不利なので、ヴェルターは刀を払うと、その場から右横合いに向かって飛び退き、床を少し転がった所で直ぐに立ち上がる。

>142
>「そこまでだ!」
>ある程度の距離前近づき、紅羽はヴェルダーにカスタムショットガンの銃口を向ける。
立ち上がった所にショットガンを突きつけられる。形勢は圧倒的に不利だ。だがヴェルターはこの程度では全く動じない男だ。
これ以上の危険に晒された事など幾度と無くある。しかし、ヴェルターは自分に攻撃を仕掛けた二人ともが、自分の胸ほどまで身長が無い、子供ということには
少なからず動揺した。
「おいおい…この世界の子供は随分と物騒なんだな?」
ヴェルターは銃剣をモーゼルの銃身に装着し、二人に向き直った。
「悪いが俺はお前らに構っているつもりは無いんでな…頑張ってくれよ?」
素早く懐に手を入れると、その手には共和国軍の倉庫から拝借した円筒形の手榴弾が数発握られていた。ヴェルターは起爆ピンを引き抜き、その手榴弾を
二人ではなく、負傷兵や看護婦でごった返す廊下に向かって投擲した。
「ほら、俺に構っていると、大事な看護婦やら患者やらが木っ端微塵に吹き飛ぶぞ?さっさと外に放り投げた方がいいぜ?」
捨て台詞を吐いてヴェルターは、手榴弾を投擲した方角とは別の方へと駆け出していた。

>143
>「・・・だが、お前はこの病院をよく分かっちゃいないようだな。
>この病院には帝國の負傷兵だけではなく、共和国の負傷兵も一緒に収容されているんだ。
>今は戦争中だ。だから敵を倒す方法をとやかく言う筋合いは俺には無い、だが、味方を巻きこんで攻撃するのならば・・・俺はお前を止める」
ヴェルターはカイザーの言葉を心の中で嘲笑った。
「じゃ、なるべく敵の負傷兵と看護婦だけを殺すように心掛けてやるよ!!!!」
走り去りながらカイザーにその言葉を浴びせかける。そうこうしている内に、ヴェルターの姿は病院の角に消えた。
145紅羽 ◆KUU/KZ07xo :05/02/25 02:04:50
>140
ふと見ると、ヴェルターに刀を向ける少年がいた。身長は自分とほぼ変わらないか。
「僕以外にもあの腐れ外道を止めに来た人がいたのか。感心感心。」

>143
>カイザーはじりじりと後ろへ下がってゆく。ヴェルターから距離をとるつもりらしい。
(何だあの人……この人の仲間…みたいだけど。まぁ、今はどうでもいいか…。)
紅羽はカイザーに目もくれず、ヴェルターを睨み続けている。
ただし、仮面をつけているので周りの人間には紅羽がどんな表情をしているか分からないが…。

>144
>「おいおい…この世界の子供は随分と物騒なんだな?」
「まぁ……こんな世の中ですから。」
挑発とも取れるヴェルターの発言を紅羽はさらりと聞き流す。

>素早く懐に手を入れると、その手には共和国軍の倉庫から拝借した円筒形の手榴弾が数発握られていた。ヴェルターは起爆ピンを引き抜き、その手榴弾を
>二人ではなく、負傷兵や看護婦でごった返す廊下に向かって投擲した。
>「ほら、俺に構っていると、大事な看護婦やら患者やらが木っ端微塵に吹き飛ぶぞ?さっさと外に放り投げた方がいいぜ?」
廊下に手榴弾を投げ込まれるのを見るが、紅羽は全く動じない。
「あなたは……本当に好きなんですね…そういう事をするのが。」
紅羽は、左手でカスタムショットガンを構えたまま、右手を前にかざす。
目を閉じ、小声で呪文の詠唱を始まる。
「……食い尽くせ、ダークプラント!」
そう紅羽が叫ぶと、廊下の床から紫色をした怪植物が現れた。
その怪植物は、ヴェルターが投げた手榴弾をその巨大な口で全て食い尽くしてしまった。
手榴弾を食い尽くすと、怪植物はそのままズブズブと床に沈んでいった。
「……さてと。」
目線をヴェルターに戻す。しかし…。

>「じゃ、なるべく敵の負傷兵と看護婦だけを殺すように心掛けてやるよ!!!!」
>走り去りながらカイザーにその言葉を浴びせかける。そうこうしている内に、ヴェルターの姿は病院の角に消えた。
「あれ……逃げたか。追わないと。」
紅羽はすぐにヴェルターを追いかけ始めた。
146ジャカ ◆rMEfPDyTEI :05/02/25 02:06:40
>144
>咄嗟にヴェルターは腰の銃剣を引き抜き、ジャカの刀と自分の首の間に滑り込ませる。直ぐに刃物のせめぎ合う音が病院の玄関に響いた。
>体勢が不利なので、ヴェルターは刀を払うと、その場から右横合いに向かって飛び退き、床を少し転がった所で直ぐに立ち上がる。
(うひぃ、やるねぇ)
どうやって気付いたのかは興味があるが、とりあえずはそんなことを考えている暇はない。
ジャカは地面に着地すると、少ない握力のため払いのけられる際に飛んでいった刀を拾いにいった。
何故そんなことを悠長に出来たのか、それはジャカにも見えていたからだ。
仮面をした誰か(>142)がショットガンを構えているところを。

>二人ではなく、負傷兵や看護婦でごった返す廊下に向かって投擲した。
>捨て台詞を吐いてヴェルターは、手榴弾を投擲した方角とは別の方へと駆け出していた。
(…鬼か!兄貴を思い出すなぁ)
あまりにも卑劣といえる行動に舌を巻く。だが、考えることもなくすぐにヴェルターを追いかけ始める。
走りながらも、さっきの仮面の男に声をかけた。
「おおいそこの変人仮面!あんたの方が病院に近いだろ?手榴弾よろしく!」
看護婦や負傷兵を助けたいのはジャカだってそうだ。だが、同じことをしても意味はない。
「ついでにさ!こいつを頼んだ!」
指さしたのはカイザー。さっきの行動からして戦う気は無いのかもしれないが、
敵国奥深くまでやってきておいて軽傷で帰すわけにはいかない。
「ぐっどらっく!」
それだけ告げると、ジャカはスピードをあげる。ターボモードを使わずともかなりのスピードだ、やがて追いつくだろう。
147ジャカ ◆rMEfPDyTEI :05/02/25 02:19:32
(>146の訂正です)
>144
>咄嗟にヴェルターは腰の銃剣を引き抜き、ジャカの刀と自分の首の間に滑り込ませる。直ぐに刃物のせめぎ合う音が病院の玄関に響いた。
>体勢が不利なので、ヴェルターは刀を払うと、その場から右横合いに向かって飛び退き、床を少し転がった所で直ぐに立ち上がる。
(うひぃ、やるねぇ)
どうやって気付いたのかは興味があるが、とりあえずはそんなことを考えている暇はない。
ジャカは地面に着地すると、少ない握力のため払いのけられる際に飛んでいった刀を拾いにいった。
何故そんなことを悠長に出来たのか、それはジャカにも見えていたからだ。
仮面をした誰かがショットガンを構えているところを。

>二人ではなく、負傷兵や看護婦でごった返す廊下に向かって投擲した。
>捨て台詞を吐いてヴェルターは、手榴弾を投擲した方角とは別の方へと駆け出していた。
(…鬼か!兄貴を思い出すなぁ)
あまりにも卑劣といえる行動に舌を巻く。だが、すぐにヴェルターを追いかける。

>145
手榴弾を心配することもなく、追いかけ始めることが出来たのは、
さっきの仮面の男がよくわからないものを呼び出して手榴弾を処理するのが見えたからだ。
「おおいそこの変人仮面!あんたやるねぇ!」
いいところを持ってかれたような気がしなくもなくもないが、
災いを未然に防ぐこと出来た。素直に賞賛の声をあげる。

ジャカはヴェルター追うスピードを上げる。ターボモードを使わずともかなりのスピードだ、やがて追いつくだろう。
>147
>ジャカはヴェルター追うスピードを上げる。ターボモードを使わずともかなりのスピードだ、やがて追いつくだろう。
ヴェルターは廊下の角を曲がったものの、直ぐ後を誰かが追ってきているのが分かった。
(このままじゃ追いつかれるな…仕方が無い)
ヴェルターは一旦立ち止まり、そろり、と横合いにあった病室の扉を開けた。中には看護婦が一人おり、負傷兵の包帯を交換しているところであった。
(しめた…)
直ぐにヴェルターは扉を開け放ち、看護婦へと間合いを詰めた。看護婦は咄嗟の出来事で、彼女が顔を上げた時にはヴェルターが手に持つ鋭い銃剣の
切っ先が突きつけられていた。ヴェルターは看護婦の細い首筋に銃剣を突き立てると、そのまま看護婦を盾にする形で彼女の後へ回り、無理矢理立たせた。
「死にたくなければ言う通りにしろ…」
看護婦の耳元でそう囁くと、恐怖に顔が蒼白となった看護婦は無言で頷いた。ヴェルターは看護婦を盾に取りながら、病室の外へと出た。
銃剣をにぎる手を看護婦の首に回して、手首を返して銃剣の切っ先を突きつけ、空いた手で腰のワルサーを抜いた。
そして、追跡者が何時来てもいいように、廊下の曲がり角に狙いを定める。
149紅羽 ◆KUU/KZ07xo :05/02/25 02:36:36
>147
>「おおいそこの変人仮面!あんたやるねぇ!」
「変人仮面……か。まぁ、変態仮面よりマシだよね……。」
仕方ない、と言わんばかりに小さな溜め息を吐き、ジャカに手を振る。

>ジャカはヴェルター追うスピードを上げる。ターボモードを使わずともかなりのスピードだ、やがて追いつくだろう。
「あの子が追いかけるなら…僕が追いかけてもしょうがないな…。
それに、あの子の方が足速いみたいだし。……反対側から回り込むか。」
紅羽は2階に駆け上がった。
別の階段から1階にまた下りて、ヴェルターを待ち伏せするつもりだ。
その間に、すれ違った看護婦全員に怪しまれたのは言うまでも無い。
150ジャカ ◆rMEfPDyTEI :05/02/25 02:50:22
>148
>銃剣をにぎる手を看護婦の首に回して、手首を返して銃剣の切っ先を突きつけ、空いた手で腰のワルサーを抜いた。
>そして、追跡者が何時来てもいいように、廊下の曲がり角に狙いを定める。
(さぁ、追いつくぞ!)
もう距離の差は僅か。追いつく気で角を曲がると…。
そこには、首筋に刃物を突きつけられている看護婦と、こちらに銃を向けているヴェルター。
人質という更に度を超した非人道的な行動にジャカは言葉を失う。
こちらが圧倒的に不利。看護婦の命を考えても。
(どうすればいい、どうすれば…)
ターボモードを使えば銃弾はよけられるかもしれない。だが、看護婦の命は危険。
見逃してしまっては多大なる被害が。だが打開策が見つからない。半ば諦めかけている。

(…でも、俺は…)
「もう考えるのはこりごりだ!ターボモード!」
いちいち深く考えるのはやめだ。俺は俺の感性で戦ってやる。
看護婦の命もどうでもいい。悪役にだって喜んでなってやる。
要は勝てばいいんだ。例えこれから後ろ指刺される生活を送ることになっても。
(俺には…兄貴がいるから)
ターボモードにより更にスピードを高め、ヴェルターに向かって体当たりをしようとする。
151紅羽 ◆KUU/KZ07xo :05/02/25 03:30:09
>148 >150
紅羽は2階の廊下を猛ダッシュで駆け抜け、1階への階段を一気に駆け下りた。
1階の廊下へ出ると、少し離れた場所にヴェルターと……何故か看護婦がこちらに背を向けて立っていた。
よく見ると、さらにその向こうにヴェルターと対峙するジャカの姿が。
(なるほど、そういう事か……まぁ、動けなくて仕方ないよね…。)

紅羽は、音を立てないように静かにヴェルターに近づき、10m程距離をとったところで止まった。
これ以上近づくと、いくら音を立てなくても気配で気付かれかねない。
接近したところで、カスタムショットガンを背中のホルダーにかけ、
左腰のカスタムハンドガンを抜き取り、ヴェルターに銃口を向ける。
(これで終わりだ…。)
引き金を引こうとしたその瞬間。

>「もう考えるのはこりごりだ!ターボモード!」
ジャカの意外な行動に紅羽は少し驚く。
(人質はどうでもいいって事かな……まぁ、僕も同意見だけどね。)
紅羽は発砲するのをやめ、暫く様子を見ることにした。しかし、構えは解かない。
(ヤツを撃つのは、こっちを向いてからでいいかな……。)
152鈴木中尉 ◆DDGCBdpW/w :05/02/25 07:28:57
赤十字旗の翻る病院までは来たものの周囲が妙に騒がしい。
院内でも慌ただしく医者や看護婦が走り回っており、とりあえず目薬は貰えそうに無い。
原因を探るために逃げてくる職員達とは逆の方向へと走る。
そこには看護婦に銃剣を突きつけている男が居た。さらにその男と戦闘中と思しき人影。

あの銃剣の男、もしやドイツ兵か?
そういえばここに来たときに陸軍元帥に面会したが、その時にも居た気がする。
ここは帝國指揮下の病院らしいが、赤十字病院ならば双方共に治療を行っているはずだ。
そもそも民間人に被害を与えるのは軍人としてもどうなのだろうか。
まあ、あの兵士は友軍であるから、やはり支援攻撃は行うべきなのだろう。
走りながらドイツ兵の横の二人へと小銃で銃撃を加える。
153カァラ ◆mRmMX8Kgoo :05/02/25 10:15:27
飛行船の甲板の上、夜風が心地よい。
(もうそろそろ北方回廊に入る頃でしょうか)
カァラが戦場に行く最大の目的は魔術の研究の為である
(だって戦争となれば帝国の魔術師の秘術やら異界の魔法やらがわんさと見れるに違い無いですし)
そう考えるだけでカァラはわくわくしてきた。
突然耳飾りが揺れる。
(何…?)
カァラは目を閉じて精神を集中させる
(闇の精霊…。闇の精霊がすぐ側に来てる…)
カァラは精霊に魔法を教えてもらう方法を知っている、これは闇系統の魔術資料の充実をはかるチャンスであった
「闇の精霊よ…空気を引き裂き、埋もれた身体を我に預け、沈黙の声を響かせよ…瞑の時を、地の声を、嵐の息を、…」
呪文を唱えると闇の精霊がカァラの中に吸われてゆく
多少危険な呪文ではあるが、こうすれば精霊の言葉を確実に自分のものにできる
「!!うっ…とても強力な闇の力……@;/。;これは…ちょっとまずいか…も………;。lっp、l。;、p;。p@、;pml。;@m」
「。:p。、;…この地の上の全ての闇よ、我の呼び掛けに答えよ。今こそここに集いて我の力となり、憎悪を呼び起こし、混沌をもたらせよ」
闇の精霊に身体を乗っ取られたカァラの周囲に濃厚な闇が集ってきていた。
(………さて、私と闇の精霊、どちらが…勝つでしょうか…call...spell...No.30241...40210...)
カァラの意志は消えたわけでは無く、着々と精霊から魔法を読みとっていった
154赤き疾風 ◆mRmMX8Kgoo :05/02/25 11:57:04
甲板に出るとカァラが夜の空を眺めている
「空気が怪しいな…」
クロムはカァラの方に近づいてゆく
こちらには気付かない様だ
「なあ…」
「…………闇よ…今こそ…錘となりて…」
「カァラ?」
「…船を地の底へ…」
すると轟音が生り、船のエンジン音が弱まって言った
(闇が集っている、これは……)
「カァラ!」

船に轟音が鳴り響くと、モズは驚いて立ち上がった
「ん…なんだ?」
メレイジアは少し間をおいてから「上へ!」と言うと、甲板の方へ走ってゆく
何が起こったのか分からないが、モズもとりあいずメレイジアについて甲板へと走った。

向こうでクロムとカァラが話している…?
突然カァラの周囲に濃い紫の帯が現れ、帯はクロムをこちら側へ弾き飛ばした
「どうなってるんだ?」
「なんかやばいみたいね。」
メレイジアは身構えながら言った
クロムは腰をさすりながら起き上がるとああ、と言った
「奴は船を落とす気らしい」
「なぜ?」
「知るか! またどうせ何かにとり憑かれたか何かだろ。」
メレイジアは何かぶつぶつ呪文を唱えている
「…突き通せ、ウォーター・ブレット!」
そう言うとメレイジアの目の前に小さな水玉が浮き上がり、そこから青い線がカァラに向けて放たれた。
しかし簡単に闇の帯に弾かれてしまう
「やっぱり駄目ですね…」
「カァラごとやるわけにもいかんしな…」
もしかして相当まずい事態なのか…
クロムは何かぶつぶつ言っている。呪文だろうか
「……俺だけでは無理か…力を貸せ、"シンクロ"だ。」
「みんなを呼んでこようか?」「いや、そんな暇は無い」
シンクロとは二人以上の人間の気の方向を統一させて魔力を強める魔法である
「あ、ああ。...call...spell..."s"」
これは赤き疾風独特の詠唱で恐らくカァラがもたらした物だ。呪文に記号を割り当てて呼び出す…。
すると地面に光の線が三人を結ぶ魔法陣を描かれた。魔力と共にクロムやメレイジアの感情が多少流れ込んで来る。
クロムが呪文を唱えて魔力を集中させている
エンジンの音がさらに弱ってる、いそがねば…というような思考がモズの方に流れて来る
カァラの周囲の闇はさらに濃くなっている
するとクロムは呪文とは思えないような事を言った
「全ての海が等しく受け入れるように 全ての光は今集り
 鳩の歓喜が聞こえ 新しい朝が来るように
 絶えまない血の輪環は 日の中に消える」
すると甲板の上を無数の光の線が垂直に地面から伸びて、その光はどんどん強くなっていった
「くおおおぉぉぉ」
カァラは苦しんでる様子だ。あまり自分の親しい先生が苦しむのを見るのは気持ちのよいものでは無いが…
「このままならいけるっ!!」クロムが言うと、次の瞬間、カァラの周囲の闇が消え、それと共にカァラも消えた。えっ?
「あ…」
「逃げられたみたいね…」
エンジンは元に戻ったようだ。モズは魔法を解くと、緊張が弛んで、へなへなと座り込んだ
「はぁ、、、」
他の仲間も甲板に駆け付けてきた「おい、何が!?」
「カァラが消えた…」
「闇の力もすっかり消えてる。近くにはいないみたい…」
「なんだか、いきなり指揮官が行方不明のようですね…」
「なんだかね…」
>139 >142
> 素早き銃剣を引き抜き、ゾンビ共が未だに構築している石に向かって
> 「こいつでぶっ飛びな?」
> 後腰に差してあった残りの手榴弾八本を、一気に投擲し、直ぐに病院の玄関へと向かって駆けて行った

> ハンドガンの弾は次々と手榴弾に命中し、手榴弾は別方向に弾き飛ばされていく。

「ふむ……あの虫けらは生き延びたようですね……やれやれ困ったものです。悪戯が過ぎますな」
ヴェルターが砲弾を回避し、更には魔方陣の構築と守備を行っているゾンビ達を破壊してしまったことを
知ったネクロマンサーは、浮かべている苦笑穏やかな口調とは裏腹に激しい怒りを覚えていた。ここまで構築したものを
破壊されてしまっては敵わない。生体波動から察するに紅羽であると思われる怪しい人物が手榴弾を弾き飛ばして
くれたおかげで魔方陣に深刻な被害が出なかったということだけが、ネクロマンサーに苦笑を浮かべる余裕を与えていた。
「修復を急ぎなさい。ここまで来てしまっては、魔方陣の巨大化よりも修復を優先するしかありません」
遂にネクロマンサーは巨大魔方陣の完成を諦め、現状維持に努めることを決意した。今の状態ならば、まだ実用に耐える。

>137 >143
> カイザーは走り出した。カイザーがいる場所から病院の出入口はそう遠くない、すぐに外へ抜け出した。
> カイザーはじりじりと後ろへ下がってゆく。ヴェルターから距離をとるつもりらしい。
「おやぁ? カイザーさんではありませんかぁ? しかし、これは困りましたね。皆さんが散々に邪魔をしてくださった
おかげで、魔方陣が大分壊れかけてしまいました。正直、今の状態では苦しいかもしれません」
出入り口付近では何やら戦闘状態に陥っているようだった。紅羽らしき人物と謎の少年(ジャカ)、ヴェルター、
そしてカイザー。この四人が激しい戦闘を行っているようだったが、次第に戦闘の場が院内に移動し始め、更には
カイザーだけは静かにその場を離れようとしている。図らずとも遠距離から背後を取る形になっているネクロマンサーは、
悩む様子を見せながらもその実、しっかりと呪文を詠唱していた。
「これだけの瘴気があれば、まぁ、何とかなるでしょうしな。小手調べといきますか」
詠唱が終了した瞬間、不意にカイザーの360度全方位の空間が歪み、人間を丸齧りできそうな竜の顎が無数に出現し、
一斉にカイザーへと瘴気や火炎、冷気、王水、毒などのブレスを吐きかける。足元から出現した者達は、カイザーの
脚に噛み付いて動きを封じようとしている。ネクロマンサーの技術と冥府そのものに近い瘴気量が噛み合わさって
初めて可能となる「ドラゴンゾンビの部分的大量召喚」だった。これだけの大技を不意打ちで放っておいて小手調べも
ないものだったが、生憎とネクロマンサーはカイザーを高く評価している。この程度では斃せない、と。
「それを突破しても、貴方と私との間には魔方陣が大量にあります。そして、その致命の罠を回避したとしても、
この場には冥府にものに極めて近い瘴気が満ちております。貴方の聖闘気など、出した途端に周囲の闇が中和を始めるでしょう。
しかし、貴方は聖闘気に守られなければ、貴方専用に誂えたこの必勝の魔方陣を突破することができません。
はっはっは。抵抗しなければ確実に死に、抵抗すれば絶望的なまでに消耗する。そして、貴方が私の元に辿り着いたとしたら
………この私が知る限りでは最も剣技に長けた男を素材としたデュラハンがお相手をします」
先ほどヴェルターに放った時とは違ってしっかりと砲弾を練り上げながら、ネクロマンサーは笑っていた。
>150
>ターボモードにより更にスピードを高め、ヴェルターに向かって体当たりをしようとする
(こいつ…看護婦ごと俺を突き殺すつもりか!?)
ジャカの思わぬ行動に、ヴェルターは動揺した。だが、この程度で冷静な判断が下せなくなるようなヴェルターではない。
拘束している看護婦をそのまま突き飛ばし、ジャカとぶつかったところをワルサーでまとめて撃ち殺せばいい。
そうだ。腕に僅かの力を込めるだけでいい。女一人ぐらい、片手で充分突き飛ばせるではないか?
じゃあ、突き飛ばせ!ヴェルター!このままみすみす死ぬのか!?見ず知らずの女一人の命とお前の命、どちらが大切だ!?
お前は幾多の死線を潜り抜け、戦友の屍を踏み越え、鋼の化物を狩り、炸薬を以って街を破壊し、鋼鉄の騎馬に跨り、補給線のその先まで
疾走したではないか!?勲章を何度授与された!?第一級、二級騎士十字章を始めとした数々の鉄十字に貴様は何度を誇りを感じ、<生>
を感じた!?あの極寒のロシアの大地でお前は何を見た!?…思い出せ!ヴェルター!敵は野戦病院を襲撃し、負傷兵を凍えるロシアの大地へと
投げ捨て凍え死にさせ、医者は嬲り殺され、看護婦達は輪姦され、兵士共の慰み者にされていた!!!
…自分達が到着したときにはもう、野戦病院ではありとあらゆる略奪が行われた後であり、累々と屍が横たわっていただけであった。
中隊長のマイヤーを始めとした隊員達は己の無力さを噛み締め、ただただ茫然とするしかなかった。そして誓ったはずだ。自分は必ず生き残り、ソ連
に復讐するのだと。その誓いを果たさずして、この見知らぬ世界で果てるというのか!?…そう、たとえ婦女子を人質に取り、そしてその命を奪ったとしても!
自分は生き残らなければならない!元の世界ではマイヤーや戦友たちが、地面に伏して敵の砲爆撃から歯を食いしばって耐え、少ない物資で雲霞の如く
群がる連合軍の将兵共を相手にしなければならない。奴らは大量の物資を戦線に投入し、充分な砲爆撃を加えた後に、ローラーで潰すが如くの勢いで
我々を虫けらの様に葬り去っていく…それに自分も戦友と共に耐えねばならないというのに、こんなところでみすみす犬死にするつもりか!?
ヴェルター!遣ってしまえ!そして生き残れ!心に消えぬ後悔を抱えても、貴様は生き残らねばならない!
「…できっかよ」
そう…たとえどんな誓いを心に掲げようと、弱い者をやはり殺せるわけが無い。ましてや非戦闘員。そしてか弱い女性。女性に手を挙げてしまっては、中隊長の
マイヤーに申し訳ない。先程の病院への攻撃は一時期の気の迷いであった。この世界の住人は元の世界の住人とが違い、人間ではないのかと、心の何処かではそう疑っていた。
だが、人質にした看護婦からは人の温もりがする。しかも女性特有の柔らかさと、男の体温とは又違った優しい温かみに、嘘偽りなど無い…こんな所をマイヤーに見られれば、
鉄拳制裁は免れないだろう。そして戦友たちからは白い目で見られてしまうだろう。
「悪かった…怖い思いをさせて」
看護婦の耳元で優しく謝罪の言葉を呟き、彼女を解放し、自分の射線上に入らないように床に伏せさせた。
そしてワルサーの照準を向かってくるジャカに合わせ、弾丸が尽きるまで連射した。
157ジャカ ◆rMEfPDyTEI :05/02/25 19:21:30
>156
>看護婦の耳元で優しく謝罪の言葉を呟き、彼女を解放し、自分の射線上に入らないように床に伏せさせた。
「…」
(やっぱり、そうだよな)
看護婦を解放したヴェルターの行動を見ながら、ジャカには後悔にも似た、でも少し違う感情が湧いていた。
分かってるんだ、勝つためとはいえ、こんな行動は人間ですらなかったことなんて。
いくら非情に生きたくても、心の奥で何かが邪魔をするもの。ましてジャカは元々は優しい少年である。
(兄貴も、やっぱりこんな風に葛藤したりするのかな…)
でも、これで気持ちがすっきりとした。何も考えず、無我夢中で突撃することができる。
看護婦を解放してくれた、目の前の兵士に心より感謝しながら。

>そしてワルサーの照準を向かってくるジャカに合わせ、弾丸が尽きるまで連射した。
「これぐらい!」
スピードを落とさずに平行に横に移動し弾丸をやり過ごす。こんな離れ業が出来るのもターボモードならではのもの。
完全に避けきった、この戦いを見ていた者なら誰もがそう思っただろう。だが。
『ガキィィィィン』
「ぐあぁぁぁ!」
何かが割れるような金属音と、ほぼ同時に聞こえるジャカの悲鳴。
「や…っぱ、ダメだったか…」
ターボモードが足にかける負担は計り知れない。一度使ったら二時間は休養が必要だろう。
だが今回はどうだ。病院内に入るために一度使ってしまっている。インターバルはせいぜい10分。
そんなローテーションで、まだ発展途上のジャカの足が耐えられる訳がないのだ。
突然失速するジャカ。だが走るのを辞めようとはしない。足の痛みは、今にも倒れそうなほどだというのに。
しかし、ターボモードどころか、いつものダッシュよりも遅いスピードで、銃弾が避けられるはずがなかった。
(あ、飛んできた…)
ジャカの目には全てがスローモーションに見えた。ヴェルターの放った最後の一発が自分の腹部を貫通するまで。
「は…あはは、逃げなかったことは、兄貴褒めてくれるかな…」
一、二歩よろめき、そのまま床に突っ伏す。

だが、意識を失っていないジャカは這いつくばって移動した。向かう先は、人質となったあの看護婦。
「ご…ごめんなさいね…俺は貴女を殺す気だった…だけどこうして謝罪しちゃう…やっぱり俺は兄貴にはなれない…や…」
そう看護婦に告げると、そのままジャカの意識は遠のいていった。
158紅羽 ◆KUU/KZ07xo :05/02/25 19:36:37
>152 >156
>走りながらドイツ兵の横の二人へと小銃で銃撃を加える。
「……ん、あれ?向こうからまた誰か…。」
敵側の増援らしき人物がいきなりこっちに発砲してきた。
「危ない……。」
距離がかなり離れていたので、余裕で銃弾を回避する。

>「悪かった…怖い思いをさせて」
>看護婦の耳元で優しく謝罪の言葉を呟き、彼女を解放し、自分の射線上に入らないように床に伏せさせた。
>そしてワルサーの照準を向かってくるジャカに合わせ、弾丸が尽きるまで連射した。
「あれっ、意外。あの人にも、人としての良心が少しはあったみたいだね…。」
ヴェルターが人質を解放するとは全く予想していなかった紅羽は素直に驚く。
「……さてと、これで……。」
人質が解放された以上、こっちが動きを止める理由は何も無い。
紅羽は、ヴェルターの背中を狙い、カスタムハンドガンを8発ほど連射する。
だが、紅羽が発砲した直後……。

>157
>ジャカの目には全てがスローモーションに見えた。ヴェルターの放った最後の一発が自分の腹部を貫通するまで。
>そう看護婦に告げると、そのままジャカの意識は遠のいていった。
「……避けられなかったのか…。どうやらあのダッシュの機能、相当負担が……。」
……まぁ、生きてたら治療してあげようかな。
そんな事を考えながら、ヴェルターがハンドガンの弾を回避した時の事を考え、
紅羽はもう片方のカスタムハンドハンを抜き取り、構える。
>158
>紅羽は、ヴェルターの背中を狙い、カスタムハンドガンを8発ほど連射する。
背中に衝撃を感じた時には、ヴェルターは前のめりにぶっ倒れていた。
殺られた…周りの人間はそう思っただろう。背中には無数の弾痕が穿たれており、未だに硝煙を立ち上らせてはいたが、出血はしていなかった。
「…肋骨が数本逝かれたな」
呻き声にも似た呟きを発しながら、ヴェルターはゆっくりと立ち上がった。そして軍用コートの前をはだけて見せた。
ヴェルターの上半身は共和国軍製のボディ・アーマーに覆われており、それは拳銃弾ぐらいなら楽に貫通を防ぐことが出来る代物だった。
「何かと思って試しに装着してみたんだが…こいつが思わぬところで役に立ったな」
実はヴェルターは共和国軍の倉庫でこのボディ・アーマーを見つけ、好奇心半ばで身に着けていたのである。外見に似合わず、
共和国軍製のボディ・アーマーは軽量であり、装着しているという感覚が全く無かった。ヴェルターはこの特殊繊維製のチョッキに
感謝をし、素早く振り返って肩のモーゼルを構えた。照準鏡の向こうには、先程のジャカと大差は無い、小柄な人影が写っていた。
しかも手には拳銃を構えている。恐らく、あの人物が自分を撃ったのだろう。
ヴェルターは最初、スコープの十字架の中心にその人物の眉間を捉えたが、直ぐに思い直し、照準を右太股に変えた。そして引き金を引いた。
攻撃ヘリから数発の照明弾が、役場前広場へ撃ち込まれた。
先行する第一分隊が入り口の脇へ回り、うち数人の小銃が火を噴いた。
「まだ外に居る! バックアップしろ!」
エディが檄を飛ばすと後方の第三分隊は広場に進み、機銃射撃を開始する。
何人かは一階の窓を銃床で割って、室内に向けて引き金を絞る。
「グリフ、ウィスカー、やれ!」
二人の隊員は腰に吊るした閃光弾のピンを抜き、入り口近くの窓からそれを放り込んだ。
161鈴木中尉 ◆DDGCBdpW/w :05/02/25 20:08:14
奥に居た方の敵がドイツ兵に体当たりを仕掛けようとした、その瞬間だった。
ドイツ兵は人質にしていた看護婦を放して拳銃での銃撃を始めた。
こちらも援護射撃を加えようと小銃に弾を装填して構える。
が、その男は放たれた銃弾を受けたらしい。ふらふらとその場に倒れこんだ。
>158
先ほど撃った2発の小銃弾はどうやら避けられたようだ。
だが、見たところ倒れた方もそいつも両方子供だ。それほどの抵抗はしないだろう。

しかし予想はことごとく裏切られた。
そいつは腰に下げていた大型拳銃をドイツ兵に向けて発砲した。
「そこの小僧!!動くな!」
急いで小銃に弾を込め、発砲した奴へと銃撃を加える。
先ほどよりも距離を詰めた。簡単には避けられないはずだ。
162紅羽 ◆KUU/KZ07xo :05/02/25 20:22:40
>159
>ヴェルターの上半身は共和国軍製のボディ・アーマーに覆われており、それは拳銃弾ぐらいなら楽に貫通を防ぐことが出来る代物だった。
>「何かと思って試しに装着してみたんだが…こいつが思わぬところで役に立ったな」
「命中……でも、生きてるな……。サイボーグ……?いや、何か特殊な装備を…。」
(上半身を狙うのは効果的じゃないみたいだな……頭か、下半身か…。)
あれだけハンドガンの弾を浴びて、ヴェルターはまだ立っている。
何か、特殊な装備をしているに違いない。

>ヴェルターは最初、スコープの十字架の中心にその人物の眉間を捉えたが、直ぐに思い直し、照準を右太股に変えた。そして引き金を引いた。
「足を狙うか…!でも、当たりはしない…!」
紅羽は銃口の向きから、狙いをすぐに予測する。
左方向へサイドステップして、銃弾を擦れ擦れでかわす。
「そっちがその気なら、僕だって……ね。」
紅羽は両腕に持ったカスタムハンドガンを同時に連射させる。
ハンドガンの弾は、マシンガン並のスピードで弾を吐き出し、ヴェルターに襲い掛かる。
右腕は頭、左腕は下半身…股間付近を狙っている。

>161
>「そこの小僧!!動くな!」
「うはぁ……1対2か……ちょっとキツいかも……。」
だが、紅羽は決して逃げたり降伏したりするつもりは無かった。
「でも、それをやってのけるのが僕だからね。」

>急いで小銃に弾を込め、発砲した奴へと銃撃を加える。
>先ほどよりも距離を詰めた。簡単には避けられないはずだ。
「確かに避けるのは難しい……。でも、防ぐのは簡単なんだよね……これが。」
紅羽は、両手に持っていたカスタムハンドガンを空中に投げる。
カスタムハンドガンが宙を浮いている間に、空いた両手を前にかざす。
「D・シールド!!」
紅羽の目の前に、紫色の半透明の壁が現れる。
その壁は、男の放った銃弾を鈍い音を立てて弾いた。
銃弾を弾いた後、魔法の壁は粉々に砕け散ってしまった。
それと同時にさっき空中に放り投げたカスタムハンドガンを両手でキャッチし、カスタムハンドガンを構え直す。
「ふぅ……。ちょっと、ハラハラ……。」
紅羽は、仮面の向こうで楽しそうに笑っていた。
163「NAVY」 ◆..OhPeBexU :05/02/25 20:22:55
>107
海兵隊の護送トラックにガリーナを乗せると、部隊は一斉に「スタンプ」の
運び出し作業に取り掛かった。
オールド・ハリーと三人の少年も、軽装甲車を前庭に着けて直接指揮を執る。
「実験体には全てC-26麻酔を……いや、檻の中の分だけだ」
老人は部隊長にそう言ってから、ガリーナを乗せたトラックへ訪れた。
「大人しくしているか」
疲れ切った表情で、傍に居た隊員が答えた。
「今の所は」
ふむと頷き、ハリーは彼女の入った檻を覗き込む。
ふと、ハリーの杖が鉄格子を打ち、
「起きているかね。君と話がしたい」
>163
体に生傷、檻の中。希少動物園の飼育ケージに戻ったようで懐かしい。
「ああもう…閉じ込めなくたって話は聞くっつってんでしょ…!?」
せめて椅子にくらい座らせてくれるだろうと思っていたガリーナは、
あまりと言えばあんまりな処遇に腹を立てさんざん檻を殴りつけていた。
それも無駄だと知った今は、疲れ果てた体を大の字にして横になっている。
「檻にしたってやたら頑丈な素材だし。ドワーフの工業技術は共和国の誇りってやつ?」
と、隊員ではない誰かが檻に近付いてきたようだ。鉄格子を叩く硬い音が響く。

>「起きているかね。君と話がしたい」

はて、聞いた声のような違うような。
高齢者らしい声の主にガリーナは返答した。
「―――どうぞ。私も誰かとお喋りしたかったところよ」
165カァラ ◆mRmMX8Kgoo :05/02/25 21:30:05
(………01082、闇よ、今こそ裂けよ)
「ふう、」
カァラは激闘(決して外からは見えない)の末、闇の精霊から肉体を取り戻すと、記憶した呪文をほとんどもらさずメモに書き留めた
全て書き終えるとほっと息をついて、辺りを見た
「あれ?ここは…」
見渡す限りの辺りには死体が無数に転がっていた
(動物の腐った匂い…)
死体の一つに近寄ってみると、共和国軍の兵士である事が分かった。
(…どうやら前線に来てしまったみたいですね)
ふと、身体の中に違和感を感じる。先ほどの闇の精霊がまだ残っているようだ
(しつこい奴…ん?)死体の様子が少しおかしい。闇の力…憎悪の気が多い、それに僅かな魔力が感じられる
(これは…)それは死んだ後にその屍を操られたものの特徴といってよかった。他の死体もほとんど全て同じ様子だ
(これだけの闇の魔力の残留…しかも随分大量のゾンビを操っていたみたいですね…帝国の高位の糞エルフジジイが出向いて来たのでしょうか)
「どうやら、ゾンビ巨人とやらは見逃してしまったようです…」
わざわざ高位のエルフが前線にいきなりやって来るのは信じ難いが、その可能性が最も高そうであった
(だとしてもなぜゾンビを操るのを止めたのでしょう…何か大きな作戦のために戦力を他の場所に回しているのでしょうか…)
今の所は共和国側が劣勢なのだから、このまま勢いで攻め込んでしまえばいいものなのに、あるいは案外持ちかえしているのかしら…
(まあ、せっかく残ったものがあるのなら利用しない手は無いですね)
カァラは地面に魔法陣を描き、複雑な呪文を唱えた
(まずは憎悪、恐怖等、死体に残っている闇の力を集めましょう…)
するとそこら中の死体、約五百体ほどから何やら黒いものがカァラぼ描いた魔法陣に向かって飛んできて、魔法陣の上に塊を作った
(百体くらいはいけそうですね…)
カァラはさらに呪文を唱える。こんどは周囲の死体約百体に向かって黒い塊が飛んでゆく
すると死体から黒い炎が上がり、肉が燃えて消え、骨だけが残った
(さて、動力を得たとしても頭が無くては…)
「call...spell...No.59202..."set"...loading...code.00018」
共和国の二足歩行の機械兵のプログラムコードをカァラが魔法で使える形に書き直し、さらにアレンジを加えたものを、骨だけになった死体に組み込んだ
(…スケルトン部隊の出来上がり♪)
骨達がカタカタと音を立てて起き上がる
「さあ、いざ汝らを操っていた悪しき術者の元へ向かえ!」
(操っていた以上、痕跡はあるはず。骨の道案内…)
スケルトン部隊について行くカァラは、それらが野戦病院に向かっている等とは予想もしなかった
>162
>右腕は頭、左腕は下半身…股間付近を狙っている。
避けられたのを確認すると、先程、看護婦を人質にとった部屋の開けっ放しになっていたドアに横っ飛びをして転がり込んだ。
部屋の中に転がり込むと、ヴェルターはその転がる勢いで部屋の中に置いてあった医療器材の台車をひっくり返してしまった。
「ぐ……危ない。もう少しで一度も使っていない一物を持っていかれるところだった…」
頭部を狙った弾丸は、ヴェルターの被っていたフリッツ・ヘルメットに掠り傷を残しただけであったが、股間を狙った弾丸は、見事のヴェルターの
左太股を撃ち抜いていた。左太股からは止め処なく血が溢れ出ているようだが、幸い、動脈を撃ち抜かれてはいないようだ。
ヴェルターは先程ひっくり返した台車の上に載っていた包帯が床に転がっているのを見つけると、それを掴んでベッドの陰にまで這って行った。
ベッドの陰に隠れたヴェルターは、銃剣を引き抜くと、口元を覆っていたスカーフを下げ、その銃剣の鞘を口に咥え込み、手にした銃剣の鋭い切っ先を銃創にあてがい…
「んぐふぅっっっっ!!!!」
一気に傷口を掘り返し、太股の中で止まっていた弾丸を抉り出した。あまりの激痛に鞘を咥えた口の隙間から、思わず声が漏れてしまった。
弾丸を摘出した傷口を圧迫し、包帯を巻いて止血する。しかし、傷口に巻かれた純白の包帯は徐々に朱に染まり始め、直ぐにヴェルターの血で
真っ赤に染まった。ヴェルターは負傷した左足を引きずりながら、ベッド脇の手摺に掴まって立ち上がった。
「畜生…あの距離で俺の狙撃を避けるか」
先程の反応速度は半端ではない。本当に人間か?…そう疑いたくもなるだろう。ヴェルターの世界に、あのような身体能力の持ち主は存在した例が無い。
だがここは別世界。あのような者がいても可笑しくは無いのだろう…ヴェルターはそう割り切ると、先程撃った弾丸の空薬莢を排莢する為に、モーゼルの
コッキング・レヴァーを引いた。レヴァーを引くと、空となった薬莢は勢い良く薬室内から飛び出し、硝煙を未だ立ち上らせながら床に落ちた。
「…分が悪い。一気に制圧をしないと勝ち目が無い」
そう言って懐に手を入れ、一発の手榴弾を取り出す。その手榴弾を手にしたまま、びっこを引きながらヴェルターはドアの入り口にまで歩いていった。
ヴェルターはドアの横の壁に半ば身を預ける形で立つと、手榴弾の安全ピンを口で引き抜き、起爆レヴァーが弾け飛ばないように手で押さえながら、開け放たれたまま
のドアから少しだけ首を覗かせ、廊下の様子を窺った。
167赤き疾風 ◆mRmMX8Kgoo :05/02/25 22:00:49
「こんな所で足止めなんてね…」
モズは飛行船の外壁にもたれて座り、荒野を眺めていた
エンジンは正常に戻ったように思えたが、やはり先ほどの影響でずいぶんやられていたらしく、不時着せざるをえなかった
「まあ墜落を免れただけましだわな」
と言って、モズの隣に座ったのは茶色のフード付きのローブを着た土の魔術師であるガルであった。彼は赤き疾風ではおそらく最も高齢である。
カァラがいきなり船を落とそうとしたとか、クロムの妙な呪文だとか、カァラを倒した(?)あのわけのわからない魔法とか、考える事はたくさんあった
「これからの事でも考えてるのかね?」
「あ、ああ、そう、エンジンの修復とかしばらくかかりそうだってね」
「ああ、少し待たねばならん…もしくは歩いて行くかね?」
そう言ってガルはにやっと笑う
「はあ、、、それにしても疲れたな・・・まだ戦場に行っても無いのにさ」
「ふはは、まあカァラの相手をしてればよくあることじゃ」
「・・・」
歩くとしても日が昇ってからだろう、せめて今は休ませて欲しい
モズは外壁にもたれたまま眠ってしまった
「おや、こんな所で寝たら風をひくぞい」
ガルは毛布を持ってくるために船内に戻っていった
>165
「ん? おやおや、これはこれは……盗人がいますね」
カイザーが魔方陣を突破して接近してきた時に備えて悪霊達を圧縮して砲弾を作っていたネクロマンサーは、
自分の元作品達が他者の支配下に置かれてしまったことを察知した。必要がなくなったから廃棄した……というよりも
一時的に休眠状態にしておいたら、支配権を奪われてしまったようだった。
「ふむふむ、なかなかに手際がよいものですが……何とも術の構築が未熟ではありますが。察するに、幅広い系統を
扱う魔術師といったところでしょうか。そういった魔術師の知識はどうしても広く浅い知識しか持ち得ません」
ネクロマンサーは呆れたような調子で肩を竦めた。心の底から呆れているといった調子である。
「それにしても、他者の成果を盗もうとは一体どのような愚か者でしょう? 顔を見てみるとしましょうか」
既に支配権がカァラに移っているとはいえ、もともとはネクロマンサーが支配していた屍だ。一度でも支配した死体ならば、
それはほぼ永続的にネクロマンサーの影響下にあると言ってもよい。改めて支配し直すには少々手間がかかるだろうが、
その感覚を共有する程度ならば実に容易いことだった。
ネクロマンサーは短い詠唱を終えると、謎の術者が支配しているスケルトンの視覚を通してその姿を見た。
「ふむふむ……これはまた曖昧ですな。男なのか女なのか。女性である可能性が高そうですが、まずは実際に
会話をしてみないといけませんな。さて、屍よ。汝等が真なる主は誰ぞや?」
視覚を共有しているスケルトンを通して、そのスケルトンの周囲にいる者達から順に支配を開始した。

(スケルトン)
「はははは、お嬢さん、でよろしいのですかな? なかなかに面白い術をお使いになるものですね」
スケルトンの内の一体が歩みを止め、カァラの方を向くと突然喋り出した。周囲のスケルトン達もネクロマンサーに
支配権を奪われたスケルトンが発する波動に影響されて、その歩みが大きく鈍り出した。このままでは
全てのスケルトンの支配権を奪われるのも時間の問題だろう。
「よろしければ、私と少しお話でも致しませんかな?」
169紅羽 ◆KUU/KZ07xo :05/02/25 22:20:54
>166
>避けられたのを確認すると、先程、看護婦を人質にとった部屋の開けっ放しになっていたドアに横っ飛びをして転がり込んだ。
>部屋の中に転がり込むと、ヴェルターはその転がる勢いで部屋の中に置いてあった医療器材の台車をひっくり返してしまった。
「なんだか、随分と大きい音立ててるみたいだけど……まぁ、あの勢いで突っ込めばね……。」
逃げ込んだところに一気に追い討ちをかけたい所だが、もう一人敵がいるので、それは出来ない。

>「んぐふぅっっっっ!!!!」
>一気に傷口を掘り返し、太股の中で止まっていた弾丸を抉り出した。あまりの激痛に鞘を咥えた口の隙間から、思わず声が漏れてしまった。
「…!?」
ヴェルターが隠れた部屋から謎の呻き声が聞こえる。
「……何やってるのかなぁ…。あんまり想像したくないや…。」
何か、とんでもない事を中でやっているに違いない。
それを思うと、あまり変な事を考えたくなかった。

>ヴェルターはドアの横の壁に半ば身を預ける形で立つと、手榴弾の安全ピンを口で引き抜き、起爆レヴァーが弾け飛ばないように手で押さえながら、開け放たれたまま
>のドアから少しだけ首を覗かせ、廊下の様子を窺った。
「あ……傷の方は大丈夫だった?致命傷にはなってなかった?」
紅羽は、ドアに隠れてこちらの様子を窺っているヴェルターに挑発をかける。
「それにしても……なかなかしぶといんだね……。ちょっとビックリ。」
右手でショットガンを持ち、ヴェルターに向けて2発発砲する。
狙いは、ヴェルターではなく、ドア。紅羽は、ドアごとヴェルターを吹っ飛ばすつもりだ。
>165
(軽装騎士隊)
既に団長であるウルフェルムから出撃命令を受けていた軽装騎士隊は、劣勢となっていた共和国軍陣地に強襲を掛ける為、戦場を疾駆していたが、
途中で骨の兵団を発見していた。軽装騎士隊の隊長である黒豹の獣人であるウェシュレイは眉を顰めた。
「おかしいな…共和国軍は劣勢じゃかなったのか?」
高速で疾駆したまま、ウェシュレイは隣を疾駆していた副隊長のチーター型獣人のデレスヴァに一応尋ねてみた。
「そのような情報を団長殿からは聞いていますが…あれは噂に聞く、共和国軍の魔術師の仕業では?」
デレスヴァはただ冷静に自分の考えを述べ、ウェシュレイの反応を待った。
「そうみたいだな…あの一団の中心に、魔術師らしき反応を感じる…」
ウェシュレイは兜の装甲ヴァイザーを上げると、軽装騎士隊全隊に停止するよう命令を発した。直ぐに軽装騎士達は疾駆する速度を落とし、立ち止まると防御の陣形をとった。
「して、隊長。あの骨の兵団は、方角からしてどうやら野戦病院へと向かっていると思われますが…」
「決まっている。現時点の命令を全て破棄。あの骨の兵団に強襲を掛ける」
やはりそう言うと思っていた。デレスヴァは内心この上官に安心した。
「それはそうとデレスヴァ。お前の五つ年上の恋人さんは確か…戦乙女にいるんだよな?」
「う、そ、それは…」
「この戦闘でわざと負傷して、その年上の御姉さんに慰めてもらおうとなんて考えるんじゃないぞ…というか、俺は本国に恋人を残してきているんだ。お前や他の団員とは違って、
ひとっ走りすれば会えるなんていう訳にはいかないんだ……死ぬなよ」
一通り言うと、ウェシュレイは装甲ヴァイザーを降ろしており、既に駆け出していた。デレスヴァは慌てて待機していた団員達に命令を発し、ウェシュレイの後に続いた。

「白衣の天使達は我等軽装騎士隊、いや、帝國獣人騎士団『アスタル』の獣人の騎士達が守る!覚悟!」
一番乗りのウェシュレイは先頭のスケルトンに飛び掛ると、両手に装備していたトンファーでそのスケルトンを粉々に打ち砕いた。
ウェシュレイに続いて軽装騎士達が次々とスケルトンの兵団に襲い掛かる。

(重装騎士隊)
軽装騎士隊の後を進軍していた重装騎士隊は、軽装騎士隊がスケルトンの兵団と戦闘に突入するのを見ていた。
「ウェシュレイの奴…ウルの命令を無視してからに……後でどやされてもワイは知らんで」
重装騎士隊隊長を務める樋熊の獣人、グラズリーは親友の独断専行を見守っていた。
「しかし隊長。ワイらもどないするんでっか?軽装騎士の連中の速度がないと、ワイらの力は充分に発揮出来へんで」
グラズリーの横を歩いていた同じ樋熊の獣人、副隊長であるオロホロスキーが口を開いた。
「そうやなぁ…ワイは一度も戦乙女に遊びに行った事がないんやが…べっぴんさんが多いと聞いているで。そこんところはどうや?オロ?」
グラズリーのその問いに、オロホロスキーは兜の装甲ヴァイザーを上げ、にやっと笑って見せた。
「ぎょうさんおるで。ワイも一度白熊型獣人の京子ちゃんに世話になったことがあるでぇ〜…ええよ。白熊は。毛並みがごっつ柔らかいねん。
あの抱き心地は忘れられんで…」
その言葉を最後まで聞き終わらない内に、グラズリーは駆け出していた。そして

「看護婦さんとお近づきになるんや〜〜〜〜〜!!!!」
その咆哮と共に、左手に装備した重装甲の大型シールドでスケルトンの一団を薙ぎ払い、右手の重斧でスケルトン数十体を粉々に打ち砕いた。
看護婦とお近づきになりたいグラズリーに続いて、重装甲の鎧と重装甲大型シールド、重武装の重装騎士達はスケルトンに襲い掛かった。
171鈴木中尉 ◆DDGCBdpW/w :05/02/25 22:29:36
>162
何が起きた?ガラスのようなもので小銃弾ははじかれてしまった。
あいつは魔法使いか何かなのか?そういえば死体を起き上がらせていた奴もいた。
この世界では何が起きても不思議ではないという事だろうか。
「小銃を防いだくらいでいい気になるな!」
距離を確認しつつ腰の軍刀を抜く。同時に南部式拳銃も確認する。
先ほどのガラスのようなあの盾は銃弾を防いだが、直後に崩壊した。
それならば拳銃で盾を破壊し、その直後に斬りつければいい。
>169
「ほう、余所見をする暇があるとは……恐れ入った!」
一気に距離を詰め、拳銃を発砲しながら斬りつける。
172「NAVY」 ◆..OhPeBexU :05/02/25 22:38:20
>164
「ガリーナ・アウリチカ……我々は共和国海軍だ。
今回は君を処分しに来た訳では無い、安心したまえ」
オールド・ハリーは気の無い笑みを浮かべる。
「君にはある新規格の陸戦兵器に、サンプルとして試乗して貰う。
我々にとって君の協力は不可欠だ。しかしそれ以上に君が負担となれば、その時は躊躇はせん。
確かに君は貴重な試験体だが、書類上は失敗作の身の上だ……
不服従はお互いのためにならん、覚えておいて欲しい」
そこまで喋ると、老人はトラックに背を向けて
「出せ。いよいよハエどもが嗅ぎ回る時分だ、遅らせるな」
老人がトラックから離れると、入れ替わりに軍服の少年がガリーナの檻へとやって来る。
背中の中程まで伸びた艶やかな黒髪を靡かせ、腰にはサーベルと拳銃、小脇に抱えた分厚いマニュアル。
檻の前で立ち止まると近くの隊員を捉まえて、
「ケージを開けてくれないか」
海兵隊員は一瞬躊躇したが、すぐに周りの仲間を集め、檻に掛かった鍵を開けた。
少年は檻の中へ入り込み、隊員に鍵を再度掛ける様うながす。
「さっきの爺さん……オールド・ハリーに代わって、詳しくご説明差し上げようと思いまして。
ルイ、と呼んで下さい。色々と疑問もあるだろうから、僕に聞いて欲しい。
勿論、僕が答えられる範囲には限りがあるけど」
血色の良いハート型の顔付きをした彼は、先の老人より遥かに柔和な笑顔を見せた。
大きくつぶらな瞳と分厚く小さな赤い唇はまるで少女のそれだが生憎と、生物学上の性別では男性。
トラックが走り出すと、ルイはその場に腰を下ろした。
「君にしてみればとんだ災難だけれども、彼の言う通り君は融通の利く立場じゃないんだ」
(遊撃騎士隊)
ジャックを茂みの中に連れ込んだ遊撃騎士の二人は、ジャックの頬を何度か叩いていた。
「ホレ。起きろ、人間…」
遊撃騎士はジャックが目覚めるまでペチペチと彼の頬を叩いた。
174紅羽 ◆KUU/KZ07xo :05/02/25 22:51:31
>171
「おっとと、こっちを忘れてた……。」
視線を鈴木中尉に戻して、改めてカスタムハンドガンとショットガンを構える。

>「ほう、余所見をする暇があるとは……恐れ入った!」
>一気に距離を詰め、拳銃を発砲しながら斬りつける。
「うん、中々良い線いってるよ……でも…!」
先ほどと同様に、魔法の壁を作り、拳銃の銃弾を弾く。魔法の壁は砕け散る。
再度魔法の壁を作っている時間はない。
それに、さっきの魔法の壁は近接攻撃を弾く事は出来ない。
遠距離攻撃だけに効果のある魔法の壁なのだ。
仕方なしに、紅羽は刀を右腕で受け止める。『ガキィィン!』と鈍い音がする。
コートは刀で切り裂かれるが、紅羽の腕には傷一つ付いていない。何故なら…。
「これ…だよ。」
コートの裂け目から、ナイフがあらわになった。隠しナイフの一つだ。
「あーあ……コートが裂けちゃった…オーダーメイドの特注品なのに…。あぅ…。それに、腕がちょっとしびれた…。」
愚痴をこぼしながらも、紅羽はしっかりと反撃を開始する。
右腕で防いだ刀をそのまま思いっきり振り払い、相手の、刀を持っていた方の腕をスキだらけにする。
その間に、左腕でカスタムハンドガンを持った状態で鈴木中尉に左ストレートを放つ。
「ストレートが命中して、このまま零距離で撃ったらどうなるかなぁ…?」
>173
ジャックの意識は唐突に引き戻された。
かっと目を見開くと爬虫類人の顔が間近に在り、ジャックは再び吐き気を催した。
「ちっ、くしょ、お」
目前の遊撃騎士と自分の膝に嘔吐物を粗方ぶちまけてしまうと、
彼は体をくの字に曲げてその場に蹲った。
「喋って欲しけりゃ水を寄越しな」
口中に溜まった唾液と胃液を地面へ吐き捨て、獣人騎士を見上げる。
>115>141
「避けやがったか・・・」
いつでも斧を振れる態勢のまま、振り返って見ると手榴弾を取り出している。
本気か、こいつは。
そうやって戸惑っていると手榴弾を投げつけてきた。
思わず手で受け取ってしまう。
「うわわわわわ!」
窓に向かって投げ、外に放り出してなんとか爆発を逃れる。
しかし、とっくに鈴木中尉は逃げてしまった後だった。

>160
「…来おったな。まだ引きつけるぞい。」
だんだんと銃声が近付き、窓から銃弾も飛び込んでくる。
数人が、ちょうど鎧の隙間を撃たれたのか、膝をついたり、足を押さえたりする。
「ふん、こうすれば撃たれんじゃろうかなぁ。」
捕虜に手を挙げさせて、窓の近くへゆっくりと歩かせる。
その間に隊列を組んで正面玄関から出撃する準備を整える。
しばらく発砲が続いた後、敵が窓から何かを投げ込んできた。今だ。
「行けええぇぇぇ!!!」
コルネムと数人の兵士を除いた兵士達が村に散らばっていく。
残ったコルネムらは、爆発を想定して盾で体を覆い隠す。
>169
>右手でショットガンを持ち、ヴェルターに向けて2発発砲する。
>狙いは、ヴェルターではなく、ドア。紅羽は、ドアごとヴェルターを吹っ飛ばすつもりだ。
紅羽がショットガンを構えると同時に、ヴェルターは壁際から飛びのいていた。そして遅れて先程までヴェルターが張り付いていた壁は
吹き飛び、大小幾つもの孔を穿たれていた。ヴェルターは飛び退いたはいいが、バランスを崩してそのまま倒れた。
「あぐぅっ!!!!」
その衝撃で傷口が酷く痛んだ。ヴェルターは歯を食いしばりながら立ち上がり、手榴弾を握りなおした。
「畜生…このままじゃ殺される……仕方が無い」
ヴェルターは酷く痛む傷口をなるべく気にしないようにして、びっこを堪えて先程の壁際に身をくっ付け…
「ヤパーニシュ・ゾルダート!(日本軍兵!)煙幕を張る!その隙に体勢を立て直すぞ!」
手だけを廊下に出して煙幕手榴弾を投擲した。煙幕手榴弾は滑らかな弧を描いて、紅羽の背後に落ちた。
そして直ぐにぼわっと白い煙幕が張られ、辺りは白一色の世界となった。
「ついでに悪いが…手を貸してくれ」
ヴェルターは鈴木中尉が助けてくれることを祈った。今の自分では、絶対にここから逃げきれないだろう。
>172
ガリーナの前に現れた老人はオールド・ハリーと名乗った。
オールド・ハリー―――デヴィルの役割を演じる者というやつか。
なるほど、軍の人間だというなら研究所とも浅からぬ縁がある。
自分のことを失敗作呼ばわりするのも彼らの共通項だ。
もっとも失敗作とでも廃棄物とでも勝手に呼んでくれて構わない。
何と蔑まれようと、ガリーナは今の自分に満足しているのだから。

伝えるべき用件だけを手短に言い終わると、老人は姿を消した。
今は彼と入れ替わりにやってきたルイという少年と二人きりだ。
「陸戦兵器の試乗ねえ。適材適所というのかしら?
 マトモじゃない代物のモニターなんて余りの生物兵器にでも押し付けたいところだし、
 いかにも私好みの仕事よね。うん、受けるわよその話。実際楽しそうだし。断る理由も無いしね」
世間話でもするかのような気楽さでルイに話し掛ける。が、その心中は剣のように尖っていた。
「ルイ君だっけ? もう、こういうお誘いだったら普通にアポ取って話してくれたら良かったのにー、あはははは。
 ……ああそうか。いつもだったら、この手のタワゴトを持ちかける人間はカレが潰しちゃうからか。
 今日はパンボリックがいないものね? それでようやく来てくれたんだあ。お姉さん嬉しいなああ」
パンボリックは好戦的なガリーナをいつも抑えてくれる。
人生が楽しすぎて、どうしても命を大事に出来ない私を守ってくれて。そしてもっと楽しいコトを教えてくれる。
彼がいなければ私はずっと前に死んでいた。私の命は、カレの物。
「…あの人は無事よね? 仮にも彼はホロクロム家の人間。
 勢いでケンカ売れる相手じゃないことは分かってると思うけど……
 返答次第じゃデヴィル気取りのあのオッチャンに本物の地獄へ行ってもらうわ」
179小隊「ワーム ◆..OhPeBexU :05/02/25 23:57:03
>176
広場の中心に居た第三分隊軽機関銃手のランドが、銃口を役場の出入り口に向ける。
「来たぜ来たぜ、チャンバラ野郎どもがよぉ」
「ランド、この馬鹿! 一体何の映画の真似だ!?」
隣で銃弾ベルトを持つ隊員が彼の耳元で怒鳴ったが、
ランドは仲間を無視してすっくと立ち上がり、機関銃を抱えて撃ち放した。
機関銃は一秒ばかり銃弾を水平に撃ち出して、後の五秒で役場二階の壁を削る。

正面玄関の脇を固めていた第一分隊が、一斉に小銃を撃ち始める。
近距離は相手に有利な間合いと知るエディが、横に並ぶ隊員を後退させた。
玄関側の彼らから十メートル後方、小さな路地の暗がりで、第一分隊狙撃手のリーワードが
ライフルの照準を敵兵の頭部に定める。彼はディフェクション・エルフ―亡命エルフ族の子孫だった。
ヘルメットを嫌う彼の小さな頭に、その長く尖った耳は不釣合いな程大きい。
「天に召します我等が父よ、願わくば迷える魂を救い給え―アーメン」
引き金を引くと銃を下ろし、そそくさと十字を切って、また銃を構える。

グリフは盾にされた捕虜を見て、一旦窓から身を引く。
刹那、投げ込まれた閃光弾が強烈な音と光を放ち、次の瞬間グリフは室内へと飛び入った。
突撃銃を抱えるウィスカー、マイクの二人も彼に続いた。
180ルシカ ◆dYP1EeQJTg :05/02/26 00:01:17
「うーーー、退屈退屈退屈なのだー!!」
インゼクトと別れてしばらくして前線へ向かったルシカだったが、前に出るまでに何故かゾンビ達はルシカ達への攻撃を中止していた
これで彼女はかなりがっかりした ネクロマンサー自身にも思いもよらない精神攻撃となったようだ
その後は周りに居た特に名の知れた部隊でもない帝國兵と戦っていたが、その程度ではルシカは我慢できなかった
すぐにでも敵陣に突っ込みたかったが部隊を建て直す手間もある
「帝國軍め……ルシカが退屈で寝てしまわない内に総攻撃なりなんなりしてくるがいい!」
とりあえず現状のまま待機し、敵の主力が勝負を決めに来るのを待ち構えて一気に戦局を変えようと狙っていたが……
「待ーちーくーたーびーれーたーのーだーーー!!!!!」
早々に痺れを切らしているというわけだった

>165
>骨達がカタカタと音を立てて起き上がる

突然共和国軍の付近にスケルトンの集団が現れた ルシカは大喜びで叫ぶ
「ふ………ふはははははは!!!やっと出たな悪のアンデッド軍団め!!
このルシカが貴様らを叩いて砕いて粉微塵のパラパラに吹き飛ばしてくれるのだ!!!
準備はいいか、いいな?よし行くぞ、全軍突撃ッ!!」
>スケルトン部隊について行くカァラは、それらが野戦病院に向かっている等とは予想もしなかった
…が、スケルトンはあさっての方向へ向かって行ってしまった
「あっ………… はぁ!? なんだ?なんなのだ!?なぜ帝國の方へ向かってるのだ!?
あれでまさか味方だとでも言いたいのかいや今更冗談じゃないのだふざけるな指揮官出て来いなのだ!!!」
息継ぎなしでまくし立てるが、その声は虚しく響くばかりだった…
(遊撃騎士隊)
>175
>目前の遊撃騎士と自分の膝に嘔吐物を粗方ぶちまけてしまうと、
>彼は体をくの字に曲げてその場に蹲った。
「おああああああ!?」
ジャックの視線に合わせていた遊撃騎士の顔に、ジャックの嘔吐物が直撃する。
「汚ねぇぇぇぇぇぇぇぇぇっぇぇ!!!!!!」
そのまま周囲を転がり、顔に付いた嘔吐物をあたり構わず擦り付けて落とそうとする。

>「喋って欲しけりゃ水を寄越しな」
口中に溜まった唾液と胃液を地面へ吐き捨て、獣人騎士を見上げる。
「仕方が無い…ホラ」
のた打ち回っている遊撃騎士に代わって、もう一人の遊撃騎士が腰に下げていた水筒をジャックに飲ませてやった。
182ルシカ ◆dYP1EeQJTg :05/02/26 00:03:47
>170
もう突撃するか不貞寝するかどうしてくれようかと思っていたルシカだったが、
共和国の陣地に軽装騎士隊が向かって来るのを見て自分も部隊を動かそうとした
「機動力に優れた、それも獣人の部隊か……面白い!!
体勢を崩した共和国軍に一気に強襲をかけようというのだろうがそうはさせぬぞ!!!
とは言えあのスピードでは友軍と接触する前に止める事は出来ぬだろうな……まあよい
お前達、やっと戦う相手が見付かったのだ!!これより全軍突げ……」
>ウェシュレイに続いて軽装騎士達が次々とスケルトンの兵団に襲いかかる。
その敵軍はさっきのスケルトン達の方へ攻撃を仕掛けに行ってしまった……
「な……またか!? それもあの敵だか味方だかわからん奴らに取られるなど不愉快この上ないのだ!!
………いや、待てよ」
まだもう一つ、軽装騎士隊を追うようにこちらへ向かって来る部隊があった
彼女は妙に優れた視力でまだ距離のあるその部隊の編成を見取る
「ほう……これはまた随分と重装備な部隊なのだ あちらが我らの相手をするという訳だな?
ふふ、ふふふふふ!これなら相手にとって不足はないのだ!!!」
散々(勝手に)焦らされていたルシカは今度こそ面白そうな相手と戦える期待に胸を躍らせた
「待ちくたびれたろうお前達……今こそ我らが力を示す時!!」
いや一番待ちくたびれていたのはルシカ
「そうだ、今こそ!いや今度こそ!! 全!!軍!!突!!撃!!! ……あ、待て、中止なのだ!」
>看護婦とお近づきになりたいグラズリーに続いて、重装甲の鎧と重装甲大型シールド、重武装の重装騎士達はスケルトンに襲い掛かった。
やっと戦えると思った重装騎士隊までスケルトンの方へ…
「ま、まさか………またしてもっ…………」
震える声で呟くルシカ 八つ当たりを恐れた団員が遠巻きに見守る中で怒りのオーラを漂わせている
「もういいのだ………もはやこちらから行くまでなのだッ!!!全軍、あの獣人の騎士団に突撃!!!
骨の方は敵か味方か確認の後しかるべき対応をする!……ので誰か確かめてほしいのだ」
ルシカと狂竜傭兵団はアスタルに向けて前進を始めた
183カイザー ◆4a9UrY4.4s :05/02/26 00:19:17
>155
>詠唱が終了した瞬間、不意にカイザーの360度全方位の空間が歪み、人間を丸齧りできそうな竜の顎が無数に出現し、
>一斉にカイザーへと瘴気や火炎、冷気、王水、毒などのブレスを吐きかける。足元から出現した者達は、カイザーの
>脚に噛み付いて動きを封じようとしている。

(やはり・・・俺を攻撃してきたか!)
カイザーはこうなる事を幾分か予想していた。
病院の外へと出た時に感じていた異質な力、それは紛れも無く以前戦ったネクロマンサーの気質だったのだから。
だが、カイザーはネクロマンサーを攻撃しようとはしなかった。帝國の人間だからヴェルターを止める為に病院内に入ると思っていたのだ。
(俺が甘かった・・・あの男に慈悲の感情は無いようだな)

カイザーの逃げ場を無くすかのような様々な種類のブレス攻撃が四方八方から襲いかかってくる。
それを見たカイザーはとっさに剣から光の刃を飛ばしてブレスを切り裂き、一つの逃げ道を作り出して そこへ向かって走ろうとするが・・・
「・・・ぐあああっ!!」
突如、竜の顎が足元から飛び出して来た。かろうじて左足は避けたが、右足を噛みつかれて動きを封じられてしまう。
(くっ!早くこの噛みついている奴をどうにかしな・・・!)
「ウ・・・・・・ウアアアアアアアアッ!!」
一瞬足元に注意が移行しただけであった。
だが その一瞬の不注意によって防御無しでの敵のブレス攻撃の直撃を許してしまった。
カイザーの身体は炎と毒に身体を包まれて姿を確認できない、このままでは間違い無く命を失ってしまうだろう。

「ふざけるなああああああああああああっ!!!!!」
怒声を発すると、カイザーから激しい突風が発せられて砂煙が舞い上がり、カイザーを包んでいたブレスと竜の顎が吹き飛ばされた。
舞っていた砂煙が収まり、次にカイザーの姿を確認した時には、身体から優しく光り輝く聖闘気を放っていた。
そして、ネクロマンサーのいる方向へ足を進み出した。

・・・だが、急にカイザーは脱力感と共に少しの間 目眩を感じた
(・・・・・・これは・・・!)
カイザーは自分の身体から放たれている聖闘気が先ほどよりも小さく弱くなっている事に気付いた。
(あの男の罠か!・・・今は、全体量の80%程度残っているが、このままでは・・・)

「・・・だが、この程度は予想範囲内だ!貴様には覚悟してもらう!!」
カイザーは走り出した、早急に決着を着けなければならない事を悟ったのである。
>182
(竜騎士隊)
「あの二人は相変わらずだな…特にグラズリー。奴は煩悩の塊だ」
ふん、とハインケリスは面白く無いとでも言いたげな表情で呟いた。
「しかし、婦女子を助ける言う点においては評価に値する…それと」
竜騎士隊は重装騎士隊より、僅かに遅れて上空から強襲を掛ける予定であったが、既に新に現れた共和国の傭兵共が彼の視界に入っていた。
「誉れ高き竜騎士達へ…第五小隊から第九小隊は副隊長の指揮下の元、あのスケルトンの兵団に上空から攻撃を仕掛けろ。
残りの小隊は私に続き、あの傭兵団に攻撃を仕掛ける。それでは…竜の御霊と共にあらんことを!」
ハインケリスの指示の元、竜騎士隊副隊長の指揮下に入った竜騎士隊第五小隊から第九小隊はスケルトンの兵団に、驚異的な跳躍力で上空から
長槍で襲い掛かり、第一小隊から第四小隊はハインケリスに続いた。

ハインケリスは地面を驚異的脚力で蹴り、闇夜へと舞い上がった。そして夜の闇にも良く利く目で、遥か下の地面を行軍している傭兵達の指揮官を見定める。
「あれか…」
何やら喚き散らしている半竜人の少女が一人、ハインケリスには見て取れた。恐らくその少女がこの傭兵団の指揮官なんだろう。その周りに集っている部下達が
それとなく彼女を宥めている。
「竜の騎士である私が少女を相手にするのは気が引けるが…あれは私でなければ相手が務まらないな」
やれやれと肩を竦めると、装甲ヴァイザーを下ろし、槍を構え直し、そのままルシカ目掛けて急降下した。
ハインケリスに続くようにして、部下の竜騎士達も獲物を見定め、獲物目掛けて急降下した。

上空から竜騎士達が傭兵達に長槍で襲い掛かり、ルシカには竜騎士隊隊長のアカカンガルー型獣人のハインケリスが襲い掛かった。
>183
> そして、ネクロマンサーのいる方向へ足を進み出した。
「ほぉら、やはり貴方はそうして生き残った。これだから正義かぶれの愚者は嬲り甲斐があります」
カイザーが予想通りに攻撃に耐え抜いたことに、ネクロマンサーは楽しげな笑みを浮かべた。
「この間合を維持すれば私の勝ちです。ですから、近寄らせてはあげませんよ」

> カイザーは自分の身体から放たれている聖闘気が先ほどよりも小さく弱くなっている事に気付いた。
「そう、それこそが第一の罠です。私の元に来られますかな?」
カイザーの身体から放たれる聖闘気。それを、魔方陣内部に満ちる瘴気が蝕んでいく。喩えるならプラスとマイナスの
足し算のようなもので、この両者はエネルギーを相殺し合うのだった。
「戦場、病院、そして冥府……これらから抽出した瘴気の総量は、貴方の聖闘気の総量よりも多いのではないですかな?」
魔方陣内部の闇が薄くなっていき、それと引き換えにカイザーの周囲の闇が少しずつ深くなっていく。瘴気が聖闘気に
引き寄せられているのだった。

> カイザーは走り出した、早急に決着を着けなければならない事を悟ったのである。
「ほう、予想の範囲内? ほうほう、なるほどなるほど。では、これも予想の範囲内で?」
走り出した最初の一歩目でカイザーの足元が光った。そう、幾つかの魔方陣は基点となるルーンの小石を地中に
埋め込むことによって構築されていた。いわば、魔方陣は地中深くに埋め込まれた地雷のようなものだった。
魔方陣が激しい光を放つとそこから死神の鎌のような物が飛び出し、カイザーの身体を引き裂かんとして迫っていく。
この鎌は物質ではなく霊魂を斬るものなので、物理的な防御は一切不可能。完全に回避するか、魔法的な力で受け止めるしかない。
「一応申し上げておきますと、私は全ての魔方陣の配置を記憶していますから、気をつけないと罠に誘導されてしまいますよ?」
かなりの距離があるというのに、先ほどからネクロマンサーの声はカイザーのすぐ傍から聞こえていた。
いや、すぐ傍からではなかった。声はカイザーとネクロマンサーとの距離を半径とし、ネクロマンサーを中心とした円内に
響いているのだった。それと同時に、ネクロマンサーの気配もまた、その円内に満遍なく濃密に満ちていた。
「気配を消すのは無理ですが、それならばこうして気配を極限まで増大させてしまえばよろしい。そうすれば、気配として私を捉えた場合、
この円内の全ての場所に私が存在することになりますからな。単純に気配で私の居場所を探ろうとしても駄目です」
その言葉を裏付けるかのように、ネクロマンサーの声は周囲のあらゆる方向から聞こえてくる。
「そして、貴方の聖闘気はこの邪悪な瘴気の中では実にわかりやすい目印です。どうです? 相手の居場所がわからないのに
自分の居場所は知られているという状況は、楽しいでしょう?」
ネクロマンサーの嘲笑が木霊した。ちなみに、本人は居場所が知られていないだろうということに安住するようなことはせず、
常に動き回って実際の位置も常にカイザーを撹乱するように移動していた。
186鈴木中尉 ◆DDGCBdpW/w :05/02/26 00:56:02
>174
軍刀は奴の腕で受け止められた。見えたのは小さい金属片、おそらくナイフだ。
「仕込み刀か!小癪なぁ!」
奴は軍刀を振り払おうとする。だが所詮は子供、力がそこまである訳でもない。
振り払われる前に横へと軍刀を投げ捨てる。
さらに殴りかかってきた拳を受け止め、そいつの頭に南部式を突きつけた。
>177
「分かった、貴官は撤退用意を急いでくれ!」
敵に銃を突きつけながらドイツ兵に言う。さて、こいつはどうしたものか。
とりあえず奴の首根っこを掴み、広がり始めた煙幕の中に投げ込んだ。
そして軍刀を鞘に収め、南部式を拳銃嚢に戻して小銃を抱える。
「手を貸せだと?よし、私の肩につかまれ」
倒れているドイツ兵に肩を貸し、外へ向かって歩き始める。
どうやら今は目薬を貰うどころではないようだ。
187紅羽 ◆KUU/KZ07xo :05/02/26 01:18:25
>177
>その衝撃で傷口が酷く痛んだ。ヴェルターは歯を食いしばりながら立ち上がり、手榴弾を握りなおした。
>「畜生…このままじゃ殺される……仕方が無い」
「さぁ…止めだよ……。」
もう一度カスタムショットガンの引き金を引こうとしたその時。

>手だけを廊下に出して煙幕手榴弾を投擲した。煙幕手榴弾は滑らかな弧を描いて、紅羽の背後に落ちた。
>そして直ぐにぼわっと白い煙幕が張られ、辺りは白一色の世界となった。
「!…これは……煙幕……か。」
視界を遮られてしまった。これではさすがに銃の引き金を引く事は出来ない。
相手がどこにいるのか分からないのに、メチャクチャに銃を撃って自分の居場所を教えるわけには行かない。

>186
>振り払われる前に横へと軍刀を投げ捨てる。
>さらに殴りかかってきた拳を受け止め、そいつの頭に南部式を突きつけた。
「うあっと!?」
このままでは、頭を銃で思いっきり殴られてしまう。
紅羽は、咄嗟に顔を上げて、仮面で銃での殴打を防ぐ。
「!……っと…やるなぁ……。」

>とりあえず奴の首根っこを掴み、広がり始めた煙幕の中に投げ込んだ。
「うわわわ!?」
煙幕の中に投げ飛ばされるが、何とか着地に成功する。
「ひっどいなぁ……。」

>そして軍刀を鞘に収め、南部式を拳銃嚢に戻して小銃を抱える。
>「手を貸せだと?よし、私の肩につかまれ」
>倒れているドイツ兵に肩を貸し、外へ向かって歩き始める。
「僕が煙幕に巻かれてる間に、体勢を立て直す気…みたいだね。
……でも、君達が体勢を立て直す間に、僕はさらに有利な状況を作る事が出来る…。」
紅羽は、呪文の詠唱を開始する。
ヴェルターと鈴木中尉は逃げてる最中なので、呪文の詠唱を邪魔される心配はない。
「……君達も、さっきの手榴弾と同じ運命を辿ると良いよ…。ダークプラント!!」
紅羽は>145で呼び出した、紫色の怪植物を再び呼び出した。
怪植物は、もともと目がないので煙幕の中でも全く問題なく動く事が出来る。
「さぁ、あそこにいる2人組を食べるんだ!」
怪植物は奇声をあげると、巨大な口を開きながら、何十本もの触手やツタを振り回しながらヴェルターと鈴木中尉に襲い掛かる。
紅羽は、煙幕の効果がなくなるまで、その場で待機している。
煙幕が消え次第、怪植物の援護射撃をするつもりだ。
188カイザー ◆4a9UrY4.4s :05/02/26 02:13:48
>185
>魔方陣が激しい光を放つとそこから死神の鎌のような物が飛び出し、カイザーの身体を引き裂かんとして迫っていく。
>この鎌は物質ではなく霊魂を斬るものなので、物理的な防御は一切不可能。完全に回避するか、魔法的な力で受け止めるしかない。

鎌が迫ってくる事を確認したカイザーは上に跳んで鎌を避けようとする。
「・・・ぐっ!!」
しかし足に力を入れた途端にカイザーの身体がよろける。先ほどの攻撃による足の傷は思っていた以上に深かった。
避けることが不可能と知ったカイザーはとっさに次の手を使う。
「ブレンテル流、守護の技!シャインシールド!!」
カイザーは自分の正面に光の盾を作り出した。この盾ならば聖なる力が弱められようとも一回ぐらいの攻撃ならば防ぐ事が出来る。
鎌と盾がぶつかり合っている隙に他の場所へ歩き出した。・・・その時、ネクロマンサーの声が響いた。

>「気配を消すのは無理ですが、それならばこうして気配を極限まで増大させてしまえばよろしい。そうすれば、気配として私を捉えた場合、
>この円内の全ての場所に私が存在することになりますからな。単純に気配で私の居場所を探ろうとしても駄目です」

(力が感じる場所を全てを探し回っているだけでは俺の聖なる力が無駄に奪われるだけだ・・・だがどうする?奴がどこにいるか分からない。)
この状況では自分に打つ手は考えられない、
(ユニコーンを呼ぶか?・・・いや、あの傷では夜明け前に回復が終わっているとは思えない。)
時が過ぎるにつれて身体がじわじわと重くなってゆく事にカイザーは心の隅で絶望を思い始めていた。

>「そして、貴方の聖闘気はこの邪悪な瘴気の中では実にわかりやすい目印です。どうです? 相手の居場所がわからないのに
>自分の居場所は知られているという状況は、楽しいでしょう?」

「楽しいわけないだろうが・・・お前は馬鹿か?」
押されている事を悟られないようにハッタリをかますカイザー。しかし声にいつものハリを感じない、明らかに弱気になっている。
(俺の闘気が目印、そしてあの男の場所は分からない・・・もう打つ手無しなのか・・・?)
カイザーは自分の周りの瘴気によって徐々に力を奪われてゆく。そして同時に気力までもを失ってゆく。
(この円内から見つけ出す事なんて、できるわけがないだろ・・・それに、少しでも動けば罠が発動してしまうんだぞ・・・
 ・・・・・・まてよ!!・・・別に奴を探す必要など無いじゃないか!!これに気付かないとは、危ないところだった)
カイザーの目に輝きが甦ってきた。そして剣を鞘に収めてカイザーは右腕を上空に向ける。
「いくぜ・・・ブレンテル流、弾丸の技。聖闘気圧縮弾!!」
カイザーの右拳から直径10cmほどの光の弾丸が次々に撃ち出されてゆく。
だが、その弾丸は邪悪な瘴気とぶつかりあって次々に弾丸の総数が減ってゆき、光の弾丸は全滅してしまった。

「俺が今やった事に何の意味があるか分かるか?・・・それを見せてやるよ!!」
カイザーは両手を天へ向けて力を込める、すると両手から放たれた光のスパークが混ざり合って一つになる
「ブレンテル流、流星の技・・・・・・」
カイザーがその言葉を言うと、光のスパークは上空へとゆっくり浮かんでゆきながら徐々に球へ変化してゆく。
だが、今度の光は力が弱まらない。やがてそれが上空50メートルほどにあがった時には、直径約5メートルの巨大な球体へ変貌していた。

「俺の上空の瘴気はさっき放った光の弾丸で相殺させてもらった
 次は俺の番だぜ・・・覚悟してもらう!!光の雨よ、闇の全てを流し去れ!・・・行けえッ!ホーリー・レイ!!!」
上空に浮かび上がっていた球体が弾け跳び、それが無数の線となってネクロマンサーの力が感じる場所全てに降りかかる。
もしも何らかの防御方や魔方陣でこの技を凌いだとしても、一瞬だけであるが辺りは聖なる力で埋め尽くされる。
その時の闘気の流れでネクロマンサーの居場所は自然に分かってしまう。
この技の安全地帯は一つ、カイザーの立っている地点の半径1メートルだけなのだ。
(残りの聖闘気は35%・・・これで決めれるか?)
>188
> 「楽しいわけないだろうが・・・お前は馬鹿か?」
「おやおや? それは残念ですな。まぁ、それもそうでしょうな。今の貴方の震える声に、状況を楽しむ余裕など感じられません」
対照的に、ネクロマンサーは余裕綽々といった風であり、実に楽しげに声を響かせている。
ネクロマンサーにはわかっているのだった。カイザーの心が徐々に挫けつつある上に、聖闘気が少しずつ消えていっていることが。

> カイザーの右拳から直径10cmほどの光の弾丸が次々に撃ち出されてゆく。
> だが、その弾丸は邪悪な瘴気とぶつかりあって次々に弾丸の総数が減ってゆき、光の弾丸は全滅してしまった。
> 「俺が今やった事に何の意味があるか分かるか?・・・それを見せてやるよ!!」
「ふむ? 急に聖闘気が膨れ上がり……そして上空に射出ですか。ふむふむ、なるほどなるほど。制空権が
欲しいのですか。はっはっは。何ともわかりやすいお人ですなぁ」
しかし、余裕ありげな態度とは裏腹にネクロマンサーにはその実、カイザーの狙いがいまひとつ読めていなかった。
そう、上空の瘴気を取り払いたがっているのだということはわかったのだが、そこから何をするつもりなのかまではわからなかったのだ。
大方の予想としては上空に退避するか、上方からの攻撃であるかが考えられるが、その具体的な方法までは推測にしようがない。

> だが、今度の光は力が弱まらない。やがてそれが上空50メートルほどにあがった時には、直径約5メートルの巨大な球体へ変貌していた。
「む?……ああ、なるほどなるほど……上から降らせるのですか。考えましたね」
カイザーが上空に聖闘気の球を作り出してから、ようやくネクロマンサーはカイザーの意図に気づいた。そして、
余裕を持ってか際どくかは評が分かれるところだろうが、対応策を取る。

> 上空に浮かび上がっていた球体が弾け跳び、それが無数の線となってネクロマンサーの力が感じる場所全てに降りかかる。
降り注ぐ光線は当然のことながら聖闘気だ。そして、ネクロマンサーの周囲というよりは魔方陣内には当然のことながら瘴気が存在する。
無数の光線と瘴気が真っ向から衝突して相殺し合い、少しずつ互いのエネルギーを消滅させていく。しかし、二人が
戦っている区域の瘴気はその大部分がカイザーの方に引かれていっていたため、ネクロマンサーを守る瘴気はそれほど
多くはなかった。そのため、無数の光線はそのほとんどのエネルギーを失いながらもその場の瘴気の殲滅に成功した。
残ったエネルギーがネクロマンサーと彼を守護するデュラハンやゾンビに向かって降り注いだ。
「斬りなさい! デュラハン! そして我が壁となれ、死霊砲弾よ!」
しかし、ネクロマンサーも上空での押し合いを黙って見ていたわけではなかった。球体が弾けたかどうかの刹那に、
ネクロマンサーは二つの命令を下していた。一つはデュラハンがへの命令で、デュラハンは即座にそれに応えてカイザーへと走り出した。
もう一つの命令はネクロマンサーが先ほどまで練り上げていた砲弾への命令であり、命令と同時に砲弾が変形して
ネクロマンサーを包み込んで光線を遮る幕となる。エネルギー量が残り少なくなっていた光線と激しくぶつかり合った
砲弾は、瘴気と聖闘気との衝突時に生じる強力な反応を周囲に示しながら、ネクロマンサーに向かって降り注いだ分の光線と共に消滅した。
「ふむふむ、やりますなぁ、カイザーさん。この辺りに満ちていた瘴気が綺麗さっぱり消えてしまいましたよ。ルーンの石も幾つか壊れてしまいましたし、ね」
カイザーの攻撃は凄まじい戦果を挙げていた。両者の対峙する場を満たしていた瘴気を完全に浄化した上に、幾つかのルーンの石まで破壊してしまっていた。
「しかし、しかしですよ。私は無傷ですし、魔方陣も致命的な痛手を受けたわけではありません。何しろ、巨大魔方陣ですからね。罠が幾つかは解されても、
本来の効果である瘴気の集積効果は消滅しませんのでね」
その言葉を裏付けるかのように、早速、少しずつではあるが再び瘴気が場に集まり始めた。魔方陣の損傷のせいで速度は落ちているが、それでも
このまま放置していてはカイザーが一方的に消耗しただけに終わってしまうだろう。
(続き・デュラハン)
瘴気の力によって通常よりも強化されているデュラハンの動きは速く、上空での押し合いの決着が着く前に
大分カイザーの近くにまで踏み込んでいた。技を放った直後で隙ができているであろうカイザーを狙った
ネクロマンサーお得意の不意打ち戦術のそれは開始だった。
しかし、あと少しで大剣の間合に入るというところで瘴気が敗れ、光線が大地に降り注いでしまう。
デュラハンの耐久能力とその身に宿す瘴気の力で何とか耐え抜きはしたものの、カイザーを目の前にして
大きく速度が落ちてしまう。だが、それでもその突進は止まらず、大剣をカイザー目掛けて振り下ろす。
少々の損耗など気にならぬくらいに、その太刀筋は鋭かった。まさに達人というべき剣の冴えである。
ネクロマンサーが知る限り最も剣技に長けていたというのは伊達ではない。
おまけに、再び集まり始めた瘴気によって少しずつだがデュラハンの損傷は回復していた。
微々たる回復量だが、それでも長期戦になれば圧倒的に有利である。
191カァラ ◆mRmMX8Kgoo :05/02/26 19:53:32
>168 >170 >182
>「はははは、お嬢さん、
(喋った!)
残留魔力を抽出してさらに骨だけにしたのにまだ支配権を握っているなんて…感動ものである
カァラは少し笑って喋り出したスケルトンの両肩を押さえて言った
「さすがは帝国ですね」
(どうやら命令系統の魔術を構築したのは肉体では無かったようです、帝国が普通屍に魔法をかけて操るときは肉体に命令系統を構築します、帝国の魔法も日々進歩しているという事でしょうか。)
>でよろしいですかな?なかなかに面白い術をお使いになるものですね
すでにカァラにはスケルトンの声など耳に入っていない、そのスケルトンにかけれている魔術構成を調べ始めた
(ええと、なかなか珍しいですね、感覚を術者が共有しています。支配権を完全に奪い取るのは無理そう、でも…)
>「よろしければ、私とお話でもしませんかな」
(距離が違います。これだけの遠距離のものを操る為には特別な通信機構を構築しなければなりません。通信機構さえ壊してしまえば支配権等いくら持っていても無意味というものです
先ほどまではその部分が眠っていたために気付く事が出来ませんでしたが、今は丸わかりです、ついでに通信先の居場所も特定できますね
また魔術師には同じ魔法であってもそれぞれクセというものがありますが、私の知っている帝国の重鎮のエルフ達のものとはかけ離れています、ほら、こんな風に通信機構を構築するとは。この術者は何者でしょうか。)
カァラがスケルトンにかけられた魔術を調べ上げてしまうと、向こうから騎士団らしき集団が近づいて来るのを見つけた
>「看護婦さんとお近づきになるんや〜〜〜〜〜!!!!」
その咆哮と共に、左手に装備した重装甲の大型シールドでスケルトンの一団を薙ぎ払い、右手の重斧でスケルトン数十体を粉々に打ち砕いた。
「…どうやらお話しする時間がが無くなっちゃったみたいです…」
(私とした事が、油断しすぎたみたいですね、敵の多さから見ると、今いる場所はけっこう最前線に近いのかも…)
スケルトンの向こうにいるであろう術者に気取られないよう小さな声で呪文を呼び出した
「call...spell......"LOVE_LETTER"」
これは去年の冬に寝ず食わず一週間かけて構成した魔法であった
(五感全てを惑わす幻覚魔法、骨の向こうの魔術師よ、感覚ー少なくとも視覚と聴覚は共有しているようですがーそれが仇となったようですね、いでよ あなたの"最愛の人")
この魔法は、周囲の被術者に対して、目の前の物や人が、それが何であろうと被術者にとっての"最愛の人"に見えてしまう魔法である。
その者の記憶を利用しているので、例えば"最愛の人"が死んだ父親であっても五感を伴ったリアルな幻覚を見る事であろう。
周囲の獣人部隊ばかりでなく感覚を共有しているネクロマンサーにも効果があるはずである、一流の魔法使いであれば気付くのは遅くはないだろうが、一般の者であれば少なくとも半日、長ければ一生、罹っているだろう
192カァラ ◆mRmMX8Kgoo :05/02/26 19:54:13
(続き)
>ルシカと狂竜傭兵団アスタルに向けて前進を始めた
(また敵でしょうか?いや、気を察するに味方みたいです)
>竜騎士隊副隊長の指揮下に入った竜騎士隊第五小隊から第九小隊はスケルトンの兵団に、驚異的な跳躍力で上空から 長槍で襲い掛かり、
ふと、上から殺気を感じたので見上げると、獣の兵が槍を持って今にも襲い掛かろうとていた
(うわぁ…)
「call...spell...No.20232(例のスケルトン達の通信機構を破壊)
..."reset"(先ほど魔術師に乱された箇所を補正)
..."comand"...525(スケルトンをばらばらにする)...323(上空の敵の着陸後、元に戻れ)...004(その後敵をみなごろしにしなさい)...850:257627686(味方の情報)」
スケルトンに死んだふりをさせて一瞬でも敵を油断させる作戦である
(これでプログラムが正常に動いていれば味方を襲う事は無いでしょう)
(本来ならここで逃げるべきでしょう、しかし…)
カァラの長距離瞬間移動魔法は朝にならなければ使えない
(せっかく向こうの居場所は掴めた事ですしね…)
「...No.30252...No.30290...」
カァラの周囲に少し闇が集って来る
それは気配を消す魔法、さらに戦場に立ち篭める憎悪や恐怖等の闇の気に同化する魔法であった。これで一流の魔術師であっても肉眼以外でカァラを見つける事はほぼ不可能である
「...No00382、風よ、我を吹き飛ばせ」
突然強風がカァラを襲い、カァラは吹き飛ばされる、
(このままエルフジジイの所へ…いや、違いますね…あそこまでクセが違うとなると…)
「召喚されし者でしょうか…」
カァラは一旦風を止めて地面に降りると振り返ってアスタルとスケルトンの方に向かい、もう一つだけ呪文を唱えた
「...No.40141、骨よ、燃えよ」
するとスケルトンの居る場所が明るく見えた、これで炎スケルトン兵士の完成である、ただスケルトンが炎に包まれるだけのものだが、毛に包まれている獣人兵達には効果があるでしょう
(スケルトンの寿命は短くなるけど、夜明けくらいまではもつでしょう…)
カァラは再び病院の方へ向かった。
>191-192
> すでにカァラにはスケルトンの声など耳に入っていない、そのスケルトンにかけれている魔術構成を調べ始めた
「あの、そこの貴方、私の話を聞いていますか? あ、ちょっと、解析はルール違反ですよ!」
スケルトンが騒いでいるが、どうやらそれもカァラには聞こえていないらしい。早速魔法の解析を始めている。
(参りましたね、これは……急ごしらえのゾンビなど放置しておくべきでしたか。やれやれ、私も貧乏性ですね)
スケルトンの向こう側にいるネクロマンサーは苦笑していた。きちんと製作したアンデッドに用いている高度な呪法ならば
誰にも解析されない自信があった。しかし、大量生産の粗悪なゾンビとなると駄目だった。用いている術が単純なのだ。
優秀な魔術師ならば簡単に解析が出来てしまうほどに。
(しかし、どうしたものでしょうか。カイザーさんさえいなければ、このまま粗悪品を通じて逆解析でもしてやるのですが)
ネクロマンサーは溜息をついた。カイザーが目の前にいる以上、カァラに対して本格的な攻撃をするだけの余裕はない。
もし眼前にカイザーさえいなかったら、スケルトンの解析作業を行っているカァラに呪詛でも行って解析その他を防ぐのだが。
(仕方ありませんね。あちらは放棄すると致しましょう。居場所が割れるとまずいので、繋がりも断ちますか)
ネクロマンサーはスケルトンのことをあっさり諦め、そのまま繋がりを放棄しようとした。

> 「call...spell......"LOVE_LETTER"」
「おや、何か不自然な魔力の流れが……何かの術をかけられてしまいましたか」
しかし、回路を遮断する直前、スケルトンから不思議な力が流れ込んできた。全く見た事も聞いたこともない呪文だが、
魔力を封じるだとか呪詛だとかの系統ではないようだということはわかる。考えられるのは探知系か幻覚系と言ったところだろう。
「何だか面白そうな術ではありますが……あ?」
ネクロマンサーは術にかかってしまっていた。何と、丁度眼前にいたカイザーの姿が赤髪の少女に変わったのだ。
声や動作も本人と全く同じであるなど非常に完成度の高い、恐らくネクロマンサーの記憶すら利用しているだろう幻術だった。
「む……何の冗談ですか、これは……」
しかし、被害はそれだけでは済まなかった。アンデッド達はネクロマンサーと精神的に同調しているため、全てのアンデッドの
視覚に赤髪の少女の姿が映っていたのだった。つまり、ネクロマンサーが支配しているアンデッドの数だけ少女の姿が存在するのだった。
「ぐ………」
脳が焼け付くような激痛を感じたネクロマンサーは、その場に蹲った。ネクロマンサーにとっては通常の数千倍以上の
幻術をかけられたも同然であり、それが脳髄と精神に与える負担は想像を絶するものがあった。
「ぬぅぅ……よくも、よくも……ああ、痛い、痛い痛い……!」
これまでに経験したことのない激痛にネクロマンサーは頭を掻き毟った。爪が割れ、皮膚が破れて血が流れ出すが、
それすらも問題にならないほどの激痛を体感しているのだった。いや、闇雲に掻き毟っているのではなかった。
爪で肉を抉ることによって頭部にルーン文字で「幻影は幻影であり実在しない」という文章を刻み込んでいるのだった。
一分ほどで文章が刻み込まれ、カァラによる幻術の一切が効果を失った。しかし、カイザーとの戦いの最中に一分も浪費
してしまったというのは非常に痛い。かなりの痛手だった。
「く……はぁはぁ……あの……お嬢さんには……お礼を……しなくては……なりませんね……」
よろよろと立ち上がったネクロマンサーの顔に浮かんだ歪んだ笑みは、正気と狂気を同時に宿していた。

> カァラは再び病院の方へ向かった
「………おやぁ……飛んで火に入る夏の虫ですな……」
どうやら先ほどカイザーに対してやってみせたのと似たような系統の方法で気配を隠しているようで気配がまるで
感じられなかったが、病院の周囲に放置しておいた無数の死体や虚空を漂う霊魂の視覚を通してならば
はっきりとその姿を見ることができた。どうやら病院に向かっているらしかった。
このままではカイザーとカァラの二人と戦うことになりかねなかったが、ネクロマンサーは楽しげな笑みを浮かべている。
194「NAVY」 ◆..OhPeBexU :05/02/26 22:32:22
>178
>「…あの人は無事よね? 仮にも彼はホロクロム家の人間。
>勢いでケンカ売れる相手じゃないことは分かってると思うけど……
>返答次第じゃデヴィル気取りのあのオッチャンに本物の地獄へ行ってもらうわ」

「彼は、ホロクロム氏は……
さっき<北方回廊>から連絡があった。彼は、帝国の歩兵隊に捕縛された」
ルイは一度言葉を切ると、鉄格子の隙間から手を伸ばし、荷台に掛けられたグリーンのビニール・カバーを
捲って外の様子を窺った。
「丁度居合わせた別の兵士から無線連絡があったんだけど、ホロクロム氏と二人の部下は
昆虫人部隊に連行されていったらしい。
心配だろうけど、ひとまずは安心して良いと思う……彼は敵にとっても重要人物だから、
簡単には手を出さない筈だよ。
只、言いたくは無いけどホロクロム氏は軍の上層部や研究機関に少なからず敵を抱えてる。
もし彼が帝国本土に送還されてしまえば、救出は困難だろうね」
二人を載せたトラックは林道から、都市部へと続く国道に出る。
交通規制はここでも行われており、軍用ジープの車列以外には犬の子一匹も通らない。
「僕らが幾ら気を揉んだって始まらない。予定通り、君には君の仕事をして貰う。
ところで聞いておきたいんだけど、何か武術や護身術を習ってる?
体験入隊とかの経験は? それと、機械には強い方? 重機に多少心得があれば、易い仕事になるかも」
>181
水を飲まされたお陰で幾分具合が良くなったジャックは、
「案外律儀じゃねぇか、流石帝国騎士だな。
で、俺に何を聞く? 何を聞きたい? 敗走した連中の居場所か?
基地に残った兵員の総数? 戦闘機と戦車の台数?
それとも俺のトシか、スリーサイズか? 今日の晩飯?
あんまり肉付きが良くねぇからな、食って旨いもんじゃないぜ」
どうにか上体を起こし、近くの木に背をもたれた。
(遊撃騎士)
>195
>「案外律儀じゃねぇか、流石帝国騎士だな。
>で、俺に何を聞く? 何を聞きたい? 敗走した連中の居場所か?
>基地に残った兵員の総数? 戦闘機と戦車の台数?
>それとも俺のトシか、スリーサイズか? 今日の晩飯?
>あんまり肉付きが良くねぇからな、食って旨いもんじゃないぜ」
「…貴殿が有する情報の全てだ。まぁ、嘘をついても構わんが、我々には簡単に自白をさせる
ことができる術があるのでな。一応言っておくが、我々の尋問術を侮らない方がいい。人間の貴殿ならば
ショック死することも在り得る。願わくば、協力的であること祈るよ…」
水筒を腰に戻し、ジャックに向き直る。相変わらず同僚はジャックの嘔吐物を払うので手一杯で、未だにのた打ち回っている。
「それと、貴殿は誤解をしている…我々の外見は、確かに人間である貴殿から見れば怪物かもしれんが、人間と食している
ものは大差は無い。ましてや人間などを喰おうなどとは思わん」
ふん、と鼻を鳴らし、舌をチロチロと出した。
>194
「そう、あの人が帝國の野蛮人どもの捕虜にね。あれだけ危険な目に遭ってれば当然か」
ルイの言った通り、パンボリックには共和国内に大小の敵がいる。
対竜兵器のテストランから工廠の建設まで全てを自らの手で行っているのは、
機密保持のためではなく外部圧力への牽制という意味合いが強い。
その痩せ我慢、ハッタリもここに来て限界を迎えつつある。今回の襲撃が良い例だ。
(どのみちこういう日が来ることは予想してたでしょうね、パンボリックもパパも。
いざとなれば国外脱出もありかしら? 戦闘メカで逃避行かー。
帝國にテレビってあるのかなあ、ネットは繋がるのかなあ……)
あてのない将来を想像しているうちに林を抜けてしまった。

>「ところで聞いておきたいんだけど、何か武術や護身術を習ってる?
>体験入隊とかの経験は? それと、機械には強い方? 重機に多少心得があれば、易い仕事になるかも」

「へ? ああごめんなさい、ちゃんと聞いてたわよ。
機械には強い方。ジャイに教えてもらって建設機械から戦車まで運転できるしね。
ただ残念だけど武術の心得・その他は全くなし。TVで格闘ショーを見るくらいよ」
普段のガリーナ・アウリチカに一騎当千と呼べるような戦闘能力は備わっていない。
人並み外れた腕力や視力があっても、きちんと規律を整えた部隊には敵わないのが実状だ。
「軍の訓練や武術は私には高尚過ぎるわ。頭も心も、ちっともついていかない。
本当に倒したい相手が来た時はブレスを吐くの。引き金を引いたみたいに体の調子まで良くなるから…」
彼女も本当に理解できているのか分からないが、ガリーナのブレスにはその効果以外に重大な意味がある。
あのブレスは人と竜の境目であり。彼女の理と無理の境界なのだ。
「貴方としては不安も不満も残るスペックでしょうけど、一応よろしくね」
ガリーナは陽気に笑いかけた。
198カイザー ◆4a9UrY4.4s :05/02/27 00:24:13
>189
>「しかし、しかしですよ。私は無傷ですし、魔方陣も致命的な痛手を受けたわけではありません。何しろ、巨大魔方陣ですからね。罠が幾つかは解されても、
>本来の効果である瘴気の集積効果は消滅しませんのでね」

(さてと奴の居場所は確認できた・・・後は仕上げだな)
カイザーはネクロマンサーの言葉を全く聞いていない、何か策があるようだ。

>190
>デュラハンの耐久能力とその身に宿す瘴気の力で何とか耐え抜きはしたものの、カイザーを目の前にして
>大きく速度が落ちてしまう。だが、それでもその突進は止まらず、大剣をカイザー目掛けて振り下ろす。

カイザーはデュラハンの動きを確認し、攻撃を受け止める為に剣を抜刀する。
だがお互いの剣と剣がぶつかりあった瞬間、カイザーの身体が後方へ吹き飛ばされる。思ったよりもデュラハンの力が強いのだ。
(くっ!強い!!・・・完成を急がねばならないか!)
カイザーは傷ついた足を引き摺りながらデュラハンの周りを一周走る。相手の行動を様子見しているのだろうか。

>193
>「ぬぅぅ……よくも、よくも……ああ、痛い、痛い痛い……!」
(今度はなんだ!?奴が急に苦しみ始めたぞ。)
理由は分からないがネクロマンサーは確実に動揺している。
(・・・デュラハンの動きが鈍った!!・・・チャンスは今だ!)
それを確認したカイザーはデュラハンの横をかすめるように直線的な動きを5回繰りかえす。
術者が苦しんでいる影響なのか動きが鈍っているデュラハンの攻撃をかわすのは簡単な事であった。

>このままではカイザーとカァラの二人と戦うことになりかねなかったが、ネクロマンサーは楽しげな笑みを浮かべている。
「貴様がなんで嬉しそうなのかは知らないが・・・」
再び瘴気が辺りを包み、再び聖なる力を奪われているでカイザーであったが、その表情は自信に満ちている。
「・・・俺の行動を確認しないでいたのは命取りだったな!!」
カイザーは地面に片膝を着け、地面に右掌を乗せる。
「光の円を駆け抜けて、闇を振り払え・・・聖なる五寶よ!!」
その言葉の直後、カイザーの周りの瘴気が吹き飛んで光が円状に溢れ出してきた。
その光は直径およそ5メートルぐらいのモノであったが、その地点のみ完全にネクロマンサーの瘴気を防ぎこんでいた。
「善の力の象徴である五寶聖の魔方陣・・・ようやく作り出せたぜ・・・」
先ほどデュラハンの周りを走っていたのは単なる様子見ではない、この魔方陣を作る為に動き回っていたのである。
「お前の可愛い手下も、光の魔方陣に捕われて動きが鈍っているぜ・・・早く逃がしてやった方が良いと思うけどな?」
カイザーは光の五寶聖の中心部を指差した。そこには光の魔方陣によって瘴気が奪われたデュラハンがかろうじて立っている。
動きが鈍っているデュラハンをカイザーはネクロマンサーの方へ押し飛ばす。
199カイザー ◆4a9UrY4.4s :05/02/27 00:25:17
(続き)

「ま、これで終わりにさせてもらうから関係の無い事だがな!・・・前に戦った時は逃げられたが、今度こそ喰らってもらうぜ!!」
                       
                         ≪前に見るは我の正しき姿。後に見るは彼の正しき姿≫
                                ≪上を見ればそれを証明できる≫
                                 ≪ならば我も天へと飛ぼう≫
                              ≪天翔ける不死鳥の姿を見たならば≫
                               ≪そなたの旅もここが終結の地≫
                                 ≪それを否と証明したくば≫
                                 ≪再び天へと飛ぶが良い≫

カイザーの足元の魔方陣がゴゴゴゴゴゴ・・・という地響きと共に、激しく光ったり急に暗くなったりと不安定な動きを見せる。
「これで最後の技だ!!・・・ブレンテル流、勇気の技!!シャイン・フェニックスバード!!」
それを言い終わるとカイザーは後方へ跳び、光の魔方陣の外へと抜け出す。
そして、魔方陣から光り輝く不死鳥が翼を羽ばたかせて飛び出してくる。
その全長は魔方陣と同じ約5メートル、獲物の命を絶つ為に瘴気を吹き飛ばしながら一直線に突き進む。

その時、すでにカイザーはネクロマンサーの魔方陣の外へと移動していた。
残り全ての聖闘気を注ぎ込んだあの技を防がれたらもう打つ手が無いのである。
(ヴェルターはどうなったんだ?・・・・・・くっ、目眩が・・・)
カイザーはヴェルターを追う為に病院内へ再び入りこんだ・・・だが、そこで倒れ込んで気絶してしまう。
もうネクロマンサーの罠によって力が底を着いてしまったのだ、負傷している右足の傷も酷い。出血多量で死んでもおかしくないだろう。
>198-199
> それを確認したカイザーはデュラハンの横をかすめるように直線的な動きを5回繰りかえす。
デュラハンもまた、ネクロマンサーが見ているのと同じ少女の姿を見ていた。そう、カイザーが少女に見えていたのだ。
そのため、小柄な少女を攻撃するつもりで剣を振るってしまっている。少女とカイザーでは攻撃を当てるのに必要な角度や間合がまるで
違ってしまうのだから、このような状態で放つ攻撃が当たるはずがない。
そういうわけでネクロマンサーが幻覚を消去するまで、デュラハンはまともな攻撃ができていなかった。

> 「・・・俺の行動を確認しないでいたのは命取りだったな!!」
「……ふぅ……おや?」
再びカイザーの方に注意を戻したネクロマンサーは、カイザーが奇妙な行動を取っていることに気づき、そして思い出した。
「またあれですか!?」
以前の戦いで自分を撤退に追い込んだあの恐ろしい攻撃が発動されかかっていることに気づき、舌打ちする。
非常にまずい状況だった。この場に再び満ち始めている瘴気を全て防御に回したとしても、完璧には防ぎきれないだろう。
一瞬で消滅させられてしまうほどの攻撃が、消し炭にされてしまうほどの攻撃に軽減されるだけである。
先ほどの空からの攻撃でゾンビやスケルトンは全滅してしまっているから、楯となるアンデッドもいない。
改めて新しいアンデッドを召喚するだけの時間もない。絶体絶命だった。

> 動きが鈍っているデュラハンをカイザーはネクロマンサーの方へ押し飛ばす。
「まずいですね、これは非常にまずいですね……おや? ああ、これは助かりましたよ」
カイザーがわざわざこちらに押し飛ばしたデュラハンを見て、ネクロマンサーは血塗れの顔に笑みを浮かべた。
「わざわざありがとうございます。それから、デュラハン。こちらへ」
カイザーの魔方陣から解放された途端に周囲の瘴気を吸い込んで回復を始めたデュラハンを呼び寄せる。

> その全長は魔方陣と同じ約5メートル、獲物の命を絶つ為に瘴気を吹き飛ばしながら一直線に突き進む。
「さて……来ましたか……これは賭けですな」
瘴気と相殺しあいながらもほとんど原型の崩れない不死鳥の姿を見ながら、ネクロマンサーは深呼吸をした。
精神統一というよりも、心の準備である。「可愛い手下、と貴方は言いました。そう、手下は役に立つから楽しいのです。
ですから、役に立って貰います。デュラハン。行きなさい。最期まで防ぐのです」
ネクロマンサーは回復中のデュラハンの肩を叩きながら命じた。その直後、デュラハンが不死鳥に向かって走り出した。
ネクロマンサーはデュラハンを不死鳥に対する楯として使い捨てるつもりなのだった。そして、それだけで防ぎきれるなどとは
思ってもいないので、ネクロマンサーは自分の周囲にある瘴気を左手に集中し始めた。
デュラハンが斬りかかり、瘴気を込めた一撃で不死鳥の翼を片方だけ切り落とした。返す刀でもう一方も切り落とそうと
するが、刀身が融解してしまったために刀身の存在しない剣が空を切った。だが、最期まで防げと命じられている
デュラハンには武器の有無など関係なかった。真正面から不死鳥を受け止めようと立ちはだかり、少しの時間の接触の後で
塵となって消滅した。しかし、デュラハンの消滅と引き換えに片翼となった不死鳥は大幅にパワーダウンしている。

「代わりのデュラハンなど、幾らでもいるのですよ……ですが、それでも手痛い損失には違いない。これで私までが
死んでしまったら、それはもう何とも馬鹿馬鹿しい犠牲です。よって、死ぬわけにはいきません」
カイザーにではなく自分に言い聞かせるような口調で、ネクロマンサーは迫り来る不死鳥に向かって瘴気を宿した左手を
突き出した。真っ直ぐに向かってくる不死鳥の口から長い腕ごと拳を突き込み、内部で瘴気を解放する。
凄まじい灼熱感と激痛がネクロマンサーの腕に走ったが、それによって腕を引くようなこともせずに更に瘴気を解放し続ける。
時間にしておよそ10秒という、短いが当事者にとっては非常に長い戦いの後、不死鳥が瘴気に負けて霧散する。
「ぐ……うぅ……無事で済むはずがないとは思いましたが……腕ごと持って行かれるとは、ね……」
しかし、代償は大きかった。ネクロマンサーの左腕が肩の辺りから大地に落ちて砕け散った。カイザーの不死鳥は
ネクロマンサーの腕を消し炭にしてしまったのだった。他にも、特に左肩の辺りの損傷も大きい。専門の術者に癒して貰わねばどうしようもないだろう。
得るためには失わねばならないというのがネクロマンサーの哲学だとはいえ、これはあまりにも大きすぎる損害だった。
201名無しになりきれ:05/02/27 01:33:45
> カイザーはヴェルターを追う為に病院内へ再び入りこんだ・・・だが、そこで倒れ込んで気絶してしまう。
「どうやら、カイザーさんも限界だったようで……病院内にでも逃げ込んだのでしょうか」
カイザーが消耗しきっていることや足の怪我のことに既に気づいてはいたが、追いかける気にはなれなかった。
病院内部での戦闘を避けるために院外に出たのに院内での戦闘を行うというのは、本末転倒だからだ。それに、
そのようなことをしてしまってはこれほどまでに大掛かりな仕掛けを作ったことまでもが無駄になる。
だからこそ、追いかけて院内に入るわけにはいかなかった。また、病院での治療が必要だというのに治療を求めるべき
相手を怒らせるようなことをするわけにもいかないのだった。
「……確か、あのお嬢さんもこちらに向かっているのでしたか……ふむ……病院を守って戦えば、多少は好感度が上がるかもしれませんね」
ネクロマンサーは杖に縋って身体を支えながら、新たなアンデッドの召喚を開始した。印を組むことはできないが、
前もって構築しておいた召喚魔方陣の力を借りて、巨大な黒竜のドラゴンゾンビと腐敗していない強化型ゾンビの騎士団とそれを統率する
倒された者とは別のデュラハンの召喚を行った。
>186
「悪いな…」
激痛に青ざめた顔で中尉に礼を言うが、痛みに掠れた声だった為、中尉にその言葉が聞き取れたかどうかは定かではない。
動かす度に脳髄の奥底に響く痛みを発する太股を庇いながら、ヴェルターは中尉の肩を借りて、煙幕で白一色となった
病院の廊下を中尉と共に歩いた。銃弾を受けたヴェルターの太股からは血が滴り落ちており、既に彼の武装SS親衛隊員
が着用する軍用ロング・コートにまでどす黒い染みとなって浮かび上がっていた。
「ぐぅ……!!!」
痛みを必死に堪えながら、中尉と共に病院の出口を目指す。

>187
>怪植物は奇声をあげると、巨大な口を開きながら、何十本もの触手やツタを振り回しながらヴェルターと鈴木中尉に襲い掛かる
(何だと!?)
突如として、廊下や周りの壁からすぅっと幽霊のように、奇怪な植物が現れ、触手やツタを振り回しながら襲い掛かってきた。
目の前に迫った危機に今の二人はなす術が無い。中尉は自分に肩を貸していて手が空いていないし、自分は満足にあることすら間々なら無い。
だが、此処で諦めるヴェルターではない。
「ヤパーニシュ!アンタのシュベーアト(刀)を借りるぞ!」
咄嗟にヴェルターは中尉の腰に下がっていた軍刀を引き抜き、中尉に肩を貸してもらっている状態で、襲い掛かってきた怪植物の一体を袈裟斬りにした。
203カァラ ◆mRmMX8Kgoo :05/02/27 14:54:06
先ほど解析したスケルトンにかかっていた魔術の内容をメモに書きながら、カァラは歩いて魔術師のいるはずの方向へ歩いていった
目標の場所に近づくほど、邪悪な気が強くなってくる
(ひええ、何か強力な魔法が仕掛けてあるみたいです…)
カァラは精神を集中して、気の流れから魔法陣の陣系を思い描いた
(う…なんて悪趣味な悪趣味な陣系…瘴気発生や邪悪な召喚術がほとんど…)
だいぶ目的地に近づいて来た時、体の中にまだ残っていた闇の精霊が少し騒ぎだした
(何でしょうか?)
カァラは闇の精霊を通して辺りの死霊の様子を感じ取る
(何か不自然ですね…)
>病院の周囲に放置しておいた無数の死体や虚空を漂う霊魂の視覚を通してならば はっきりとその姿を見ることができた。
さらに集中して見ると、それらの精霊から先ほどスケルトンの中から感じたものと同じものを感じ取った
(ほう…これは、随分な量のレーダーですね…おそらくあの術者はこれらの霊魂とも感覚を共有している可能性は高いでしょう…)
しかしカァラは気取られないようにそのままのペースで歩き続ける
(闇の精霊、闇の精霊、私が監視されうる周囲の死霊を食い尽くしなさい)
カァラは既に先ほどの闇の精霊を操る事が出来た。
闇の精霊が周囲の霊魂を喰らい尽くすと、再び死霊が近づいて来るまでのほんの一瞬だけだが、カァラは死角に入った
「call...spell...No.48032」
呼び出したのは空気から自分のダミーを造り出す呪文である。
空気だからほぼ実体は無く、触る事も出来ないが、見た目だけはしっかりしている
「幻獣召喚 "ぺガススの羽"」
さらに高速移動のための魔法を素早く詠唱すると、近くの薮の中へ、かなりの速度で姿を暗ました
ダミーは何ごとも無かったかのように病院へと向かう
薮の中でカァラは同じ呪文をもう一度用いてもう一体ダミーを造り出した
(念には念を入れて、ね。)
カァラはそのダミーを中継にして、病院へと向かうダミーを操った。多段構成である。
さらに先ほどスケルトンから解析した視覚を共有する魔術とカァラの魔術を組み合わせてダミーを通して魔法を使う事も可能である
こうしておけば、もしダミーがばれた場合でも、操っている本体はもう片方のダミーだと思わせる事が出来るし、それがばれた場合でもカァラはダミーから離れて気配を消して薮の中にいる為、
本物のカァラを見つける事は相当に難しいだろう。さらに中継を入れる事によって魔法の通信の確実性も上がる
(それに…こちらはこちらでやる事がありますし…)
カァラは再び闇の精霊を呼び出すと目標の魔法陣より1回り大きい魔法陣ーー野戦病院を囲むほどの大きさーーを描いて来るように命令した
その魔法陣は"内部にある魔法陣や、内部で放たれた魔術の魔力、魔法の効果を増幅させる"という効果を持ったものである
カァラは闇の精霊にさらにもう一つ命令をした。それは「魔法陣から放出されている魔力、魔法の効果を全力で抑えよ」というものであった
204カァラ ◆mRmMX8Kgoo :05/02/27 15:51:28
ダミーカァラは目的地へと向かっていた
(あの十字の旗は、見覚えがあるなぁ、あの野戦病院ですか…)
カァラは以前、魔法研究の為に以前、共和国の部隊につい行った事がある。その時の攻撃目標がこの病院であった。
先ほどの仕掛けた魔法陣への仕掛けは、すなわち時限爆弾である。つまり魔法陣が、敵の放った魔力を増強し、闇の精霊がそれを抑える、
すると魔法陣の中にいる魔術師が放っている魔法のエネルギーがどんどん蓄積されていき、闇の精霊のキャパシティや持続力が耐えられなくなった時、エネルギーが一気に解放される、すなわち爆発する。
敵の力を利用して爆発を起こす仕掛けである
(恐らく、始めの内はエネルギーの変化も少ないため、相手も気付かないかもしれません、
しかし少しずつエネルギーが溜まり、手後れになる頃には敵も気付くでしょう。タイムリミットがあるとなれば、向こうも本気を出さざるを得ない)
カァラはの目的は、目標の術者に全力を出させる事であった
(でもそうすると、野戦病院ごと爆発する事になってしまいますね。全く、戦場は地獄です)
ダミーの視覚から、遠くに目標の魔術師の姿を認めた
周囲にドラゴンやゾンビ達もいるようだ
「う〜ん、準備万端みたいですね…」
>203-204
> さらに集中して見ると、それらの精霊から先ほどスケルトンの中から感じたものと同じものを感じ取った
「……ふむ……様子がおかしいですね……気づかれましたかな?」
立っているのも辛そうな様子で監視を続けるネクロマンサー。出血と疲労と激痛によって、既に顔色が土気色にまでなっている。

> 闇の精霊が周囲の霊魂を喰らい尽くすと、再び死霊が近づいて来るまでのほんの一瞬だけだが、カァラは死角に入った
「……やはり、気づかれましたか。しかし……?」
どうにもおかしいことだった。見えなくなったのは一瞬だけで、直後にはまたカァラの姿が映っている。これは不可解だった。
目を眩ませるのならば、その隙に逃げるなり姿を隠すなりをするものだというのに、カァラは先ほどと全く変わりない姿で歩いている。
「……あの空白の一瞬で、何かをしましたね?」
カァラは先ほど苛烈極まる幻影攻撃を仕掛けてきたことから、幻術の類を多用する術者である可能性が高い。
「となれば……あれも幻影でしょうか……?」
確認のために、他の死霊を使って周囲を警戒してみた。すると、藪の中にもう一人のカァラ(ダミー)を発見した。
「なるほど、なるほど……そういう作戦ですか……」
どうやらカァラはネクロマンサーがアンデッドを使役するようにダミーを使うつもりらしかった。これはなかなかに
厄介だった。相手が本体ならばともかくダミーが相手の場合、今のネクロマンサーでは本体にまで届くような攻撃ができない。
無駄に消耗させられてしまうだけだった。とてもではないが勝ち目はない。

> カァラは再び闇の精霊を呼び出すと目標の魔法陣より1回り大きい魔法陣ーー野戦病院を囲むほどの大きさーーを描いて来るように命令した
「……む? 何やら不自然な干渉が……何? 精霊が魔方陣を……?」
ネクロマンサーは無秩序に飛びまわらせている死霊からの報告で、闇の精霊が巨大な魔方陣を描いていることを察知した。
まだ向こうの魔方陣が完成していないのでよくわからないが、どうやらこちらの魔方陣に影響を与える効果を持っているらしい。
「……戦場を限定してしまった私の負けですな、これは」
もともと、魔方陣とは複雑さと大きさが勝負である。カイザーとの戦いのみを追及したこの魔方陣がカァラの魔方陣に打ち勝てる道理がない。
「また解析されても厄介ですからな……総員、魔方陣を完全破壊した後、各自で冥府に撤退せよ」
負けが確定した勝負を続けても利益にはならない。むしろ、損害が増すばかりだ。ネクロマンサーはその辺りの計算が早い男だった。
そう命令したネクロマンサーが病院内へと撤退した後、アンデッド達が命令に応じて魔方陣を破壊し始めた。ルーンの石を砂になるまで
打ち砕き、描いた図形を全て掻き乱し、生じた瘴気や魔力の類を完全吸収し、冥府へと去っていく。後には散々にほじくり返された地面だけが残された。

「……あれだけの魔方陣を描いて……結局は……誰も倒せずに、撤退とは、ね……おや……?」
病院内に逃げ込んだネクロマンサーは、倒れているカイザーを発見した。出血の具合からして、今にも死にそうだった。
「………ふむ……」
ネクロマンサーは少しの間考え込んだ。このまま殺してしまえばいいのではないか、と。しかし、病院内で殺人などしたら
あの婦長に治療を拒否されるかもしれない。そう考えると、行動に踏み切ることができなかった。
「ええい、忌々しい……!」
ネクロマンサーが取った行動は、カイザーの襟首を掴んでそのまま治療室にまで引き摺っていくことだった。
放置しておいたら侵入してきた共和国の人間に救出されてしまうかもしれないからだった。
そう、ネクロマンサーはカイザーを捕らえていつでも殺せる状況下に置くことに決定したのだった。
206紅羽 ◆KUU/KZ07xo :05/02/27 16:51:14
>202
>「ヤパーニシュ!アンタのシュベーアト(刀)を借りるぞ!」
>咄嗟にヴェルターは中尉の腰に下がっていた軍刀を引き抜き、中尉に肩を貸してもらっている状態で、襲い掛かってきた怪植物の一体を袈裟斬りにした。
怪植物はヴェルターの斬撃で触手とツタを十数本斬り落とされてしまった。
だが、怪植物はさっきよりさらに大きな奇声をあげただけで、2人への攻撃の手を休めない。
怪植物は痛みなど感じないので、自分が消滅するまで襲い掛かるつもりだ。
「シュベーアトってなんだろ……?武器の名前…?もしかして、あいつ(怪植物)と戦うつもりかな…?」
紅羽は、ヴェルターが言う「ヤパニーシュ」「シュベーアト」の意味が分からなかった。
おそらく、どこか別の国の言葉なのだろう。
しかし、意味が分からなくても、ヴェルターが鈴木中尉の何か武器を借りて、怪植物に攻撃をしている事は予想できた。
そして、銃声がしない事から、刀で攻撃している事が予想できた。
「でも、あついはしぶといからなぁ……刀で斬られたぐらいじゃやられないだろうな…。」
それでも、触手とツタを全部斬り落とされてしまっては、攻撃できない。
そこで、怪植物は新たな攻撃を始めた。
巨大な口から、赤、黒、紫などの色が斑になった、気持ちの悪い液体をヴェルターと鈴木中尉に向けて吐き出した。
「それは、ヘドロなんかと比べ物にならないほどの猛毒だからね…。触っただけで皮膚が溶けちゃうよ。
そのまま、そこから筋肉に侵食して、どんどん体全体を蝕んでいくから…。一度触れたら10分以内に解毒しないと死んじゃうよ!」
触手にツタに、毒液攻撃。怪植物は、全ての攻撃を同時に繰り出しながら、二人に襲い掛かる。

「ここまでやれば、さすがに……ね。
でも、あの二人、ゴキブリ並…いや、それ以上のの生命力がありそうだし、一応…。」
紅羽は、呪文の詠唱を始めた。
>206
中尉の刀で咄嗟に応戦したヴェルターであったが、太股の痛みに加えて、慣れない刀での戦闘には苦戦を強いられていた。
何とか歯を食いしばって太股の痛みを堪え、怪植物の触手とツタを斬り捨てる。

>だが、怪植物はさっきよりさらに大きな奇声をあげただけで、2人への攻撃の手を休めない
しかし敵の方は痛みなど微塵も感じていないようで、怯むどころか更に熾烈な攻撃を加える。ツタの数本がヴェルターを打ちつけた。
「がはっ!?」
背中にツタの一撃を受け、地に伏しそうになるが、何とか堪えてその一撃を加えたツタを斬り捨てる。だが…

>巨大な口から、赤、黒、紫などの色が斑になった、気持ちの悪い液体をヴェルターと鈴木中尉に向けて吐き出した
植物がもごもごと口を動かしている。なんだろう、と一瞬ヴェルターは首を捻ったが、直ぐに
(ヤバイ)
そう判断したヴェルターは肩を貸してくれていた中尉を突き飛ばした。そして少し遅れて植物の口から毒液が放たれた。
このままでいれば真っ向から植物の毒液を浴びる形となってしまうが、既にヴェルターは着ていたロングコートを脱ぎ去っており、それで
放たれた毒液を払った。しかし…

>触手にツタに、毒液攻撃。怪植物は、全ての攻撃を同時に繰り出しながら、二人に襲い掛かる
中尉はヴェルターに突き飛ばされて毒液を回避することに成功し、ヴェルターも着ていたロングコートで毒液を払う事に成功していたが、その後に繰出された
ツタや触手攻撃は防げなかった。ヴェルターに突き飛ばされた中尉は植物の攻撃範囲から逃れていた為、植物のその攻撃は無論、ヴェルターだけに向けられていた。
「……っ!?」
ツタの一撃が腹部を強烈に打ち据え、一瞬だけ呼吸が止まる。ヴェルターは思わず腹部を両手で押さえ、その場に蹲ってしまった。しかし敵の攻撃は止まない。
「あっ!…ぶっ!…げほっ!…」
ニ撃、三撃、四撃と一撃目に続いて植物のツタがヴェルターを嬲る。呼吸が止まり、思わず腹部を手で押さえて蹲っていたヴェルターはいい的であった。
ツタが撓る度にヴェルターは打ち据えられる人形のように、何度も地面を跳ねた。植物の一撃は強力であり、ただの人間であるヴェルターの骨には幾つものひびが入っていた。
そして最後に一撃。その一撃はヴェルターの背中に一直線に打ち下ろされ、ヴェルターはこれまで以上に大きく跳ね、地面に力無く叩き付けられた。
地面に叩き付けられた直後、ヴェルターからは鈍い音が響き、そのまま彼はぴくりとも動かなかった。
後から遅れて、地面に伏したヴェルターからはさぁっと血が流れ出て、彼の周りに赤い池を作る形となった。
208カァラ ◆mRmMX8Kgoo :05/02/27 17:28:22
>>205
(て、撤退?)
カァラは魔術師が消え去って、病院の周りを包んでいた瘴気やらゾンビ達が撤退したのを見ると、肩を落としてしまった
(ううん、気付かれたのでしょうか? どの道、ここで撤退するとは、中々の切れ者のようです…せっかく異界の大魔術が見れると思ったのに……残念です…はぁ)
カァラは残念で仕方が無かった。カァラはダミーを消すと少し考えた
(せっかく用意してた魔術も無駄になってしまいました…仕方ありませんね…
確かあの病院には確か共和国の兵士も収容されていると聞きます…どうせですから何人かの共和国の負傷兵も朝になったら本国に一緒に連れ帰ってしまった方がよいでしょう、本国の病院の方が大きいですし、設備も整ってますから…)
もしかすると何か向こうの作戦かもしれないが、カァラはあまりに落ち込んでいたのでそのような事も考えなかったし、ましてや病院内で戦闘が行われているという事など全く考えもしなかった
また、闇の精霊はそろそろ魔法陣を作り終わったころだが、カァラは闇の精霊の事もすっかり忘れていた。
カァラは三たび野戦病院へと歩いて向かった、とぼとぼと。
(名無しの看護婦)
治療室の喧騒からは離れたところにあるとある病室。ここには治療の終えた患者が数人ほど安静に寝かされており、カーテンで仕切られたベッドからは
先程まで呻いていた患者の穏やかな寝息が聞こえた。そのカーテンで仕切られたベッドの間では、看護婦が一人で患者の包帯を交換していた。
先程から病室の外は騒がしく、その看護婦は少し不安であった。病室には自分と患者しかいなく、もし、共和国軍が攻めてきているとしたら、自分は元より
患者の命も危険に晒されるだろう…自分が包帯を交換していた患者は、今は穏やかな寝息を立てており、先程まで激痛にのた打ち回っていた面影は少しも残っていなかった。
その患者は帝國軍所属のとある軽装歩兵であり、腹部に銃弾を受けたが直ぐに摘出されて、法術により傷を綺麗に直されていた。まだあどけなさが残る顔で、恐らく
自分と幾等も歳が違わないのだろう。まだあどけなさの残るその兵士の寝顔は、少しばかり母性本能を擽るものが合った。
看護婦はその兵士がいい夢を見れるようにと、兵士の頭を撫でてやった。しかしその時であった。

>148
>直ぐにヴェルターは扉を開け放ち、看護婦へと間合いを詰めた
扉が急に開く音がして、はっと顔を上げたが遅かった。見れば屈強な共和国軍兵士が自分へと間合いを詰めていた。
その兵士は頭にヘルメットを被り、顔をスカーフで覆っており、軍用ロングコートを着て肩に小銃を掛けていた。
その兵士は自分の背後に回ると、首に腕を回し、首筋に銃剣を突きつけていた。
ひやりとした銃剣の鋭い切っ先が自分の首に軽く突き立てられた瞬間、悲鳴を上げそうになったが、恐怖に竦んで声という声は出なかった。
「あ…ああ……」
出たのは恐怖によって掠れた声。それが自分の今の心境を充分に代弁していた。
その兵士は恐怖に竦んでいる自分に構う事無く、そのまま無理やり立たせ、耳元で静かに囁いた。
>「死にたくなければ言う通りにしろ…」
兵士の静かな声に反して、その内面には殺気を感じ取れた。恐らく、この兵士は自分が言う通りにしなかったら、躊躇うことなく自分の命を奪うだろう。
自分はその兵士の言葉に、無言で頷くしかなかった。兵士は自分のことを盾にする形で歩き、病室の外へと出た。
外へ出た兵士は、腰の拳銃を抜くと、廊下の曲がり角に狙いを定めた。
自分はこの兵士の盾にされているので、この兵士を追跡していた味方の帝國軍兵士が攻撃を加えても、攻撃は自分に当たるだろう。
どちらにせよ、今の自分は命を握られている…その静かな圧迫感が自分の呼吸と鼓動を早め、徐々に体が冷たくなるような錯覚に陥ってしまった。

>150
やがて廊下の曲がり角から誰かが走る足音が聞こえてきた。そして角から現れたのは、全身を黒装束で覆っている小柄な少年であった。
その少年は帝國軍兵士には見えないが、その手にしている刀と服装を見る限りでは、ただの少年にも見えなかった。
>ターボモードにより更にスピードを高め、ヴェルターに向かって体当たりをしようとする
少年の体が一瞬だけ沈むのが見えると、少年は驚くほどの速さで此方に間合いを詰めてきた。そして刀を体の前に構えている。
どうやら、自分ごと、自分を人質に取っているこの共和国軍兵士を串刺しにするつもりだ。段々と迫ってくるその少年が、自分には黒衣を纏った死神に見えた。

>156
このまま黒装束の少年に突き殺されるのかと、半ば諦めかけていたときであった。自分を盾にしていた兵士は、
>「悪かった…怖い思いをさせて」
そう耳元で穏やかに囁くと、
>看護婦の耳元で優しく謝罪の言葉を呟き、彼女を解放し、自分の射線上に入らないように床に伏せさせた
自分を床に伏せさせ、迫りくる少年に向かって手にしていた拳銃を撃ち始めた。そして…
210鈴木中尉 ◆DDGCBdpW/w :05/02/27 19:18:38
>202
横のドイツ兵が何か呻く。彼の足元は煙幕内でも分かる程赤く染まっている。
「頑張れ!あと少しで出口だ。絶対に死ぬんじゃない!」
今にも倒れそうなドイツ兵に言う。急がねばそろそろ血が足りなくなる。
「せめて止血だけでも出来ればな……」
しかし病院に来て殺されかけるとは皮肉なものだ。
もう一度、ドイツ兵に頑張れと言おうとした瞬間に異変は起きた。
>187
床が割れるわけでもなく、そこから何かが生えてきた。
「何だこれは……?」
なんと言い表せばいいだろうか。雑草の化け物に頭をつけた様に見える。
しかし何故ここに生えてきた?考えられるのはあの小僧だ。どうやって?
考えているうちに軍刀を取られる。そうだ、まずはあの怪物を討ち払わねば。
怪物に照準を合わせ、南部式で2発ほど援護射撃を加えた。
だが、そう上手くはいかないものだ。ドイツ兵がツタにやられた。周囲に丸く血が広がる。
「き、貴様ぁぁ!!調子に乗りやがって!絶対にそこから動くな!!!」
持っていた九九式小銃に着剣し水平に構え、怪物の横から煙幕に突っ込む。
目標はあの小僧だ。銃剣が刺さらなければ手榴弾で吹き飛ばしてやる。
(続き)
>157
>一、二歩よろめき、そのまま床に突っ伏す
黒装束の少年は兵士の拳銃の連射を腹部に受け、そのまま廊下に突っ伏した。
銃弾に倒れた少年の腹部は血で徐々に染まり始めているようで、黒装束ながらもその様子は見て取れた。
>「ご…ごめんなさいね…俺は貴女を殺す気だった…だけどこうして謝罪しちゃう…やっぱり俺は兄貴にはなれない…や…」
>そう看護婦に告げると、そのままジャカの意識は遠のいていった。
少年はそう言うと、ぴくりとも動かなくなった。少年の声は掠れていたが、しっかりとその内容を聞き取る事は出来ていた。
しかし今の自分に少年の言ったことの内容などどうでも良かった。自分は直ぐ立ち上がって、その少年の横に屈みこんで少年の首筋に手を添え、脈を計った。
とくん…とくん…、と弱い反応を少年の脈は示していた。自分はその少年を抱き抱えると、自分が連れ出された病室とは違う病室に飛び込んだ。
飛び込んだ病室には、同僚の法術師がいたが、その法術師は病室の隅で蹲る様にして耳を抑えていた。どうやら先程から繰り広げられている戦闘騒音に怯えていたようだ。
自分は抱き抱えた少年を空いていたベッドに横たえると、その法術師に近づいて、肩を掴んで無理やり立たせた。
「今すぐ治療が必要なの!手伝って!」
それだけ言うと、自分はその病室にあった、様々な医療器具が載せられていた台車を少年を寝かせたベッドの脇まで引っ張ってきて、応急手当の準備をし始めた。
自分が今いるこの病室は、ただの病室である為、手術用の器具など充分にはない。精々メスや止血かん子がある程度だし、包帯と消毒薬やその他に鎮静剤などがあるぐらいだ。
しかし、今のこの状況下でこの少年に撃ち込まれた銃弾を摘出し、生憎、輸血パックは無いので、傷口を法術によって直ぐに塞がなければならない。
先程の法術師はようやくはっと我に返ると、自分と共に少年の手当ての準備に取り掛かった。

>158-159 >161-162 >166 >169 >171 >174 >177 >186-187 >202 
自分と法術師は、廊下での戦闘を気にせず、少年の治療に当たっていた。幸い、銃弾は少年の内臓を傷つけてはおらず、内臓の隙間に埋まっていた。
照明が充分とは言えないが、暗い手元に目を凝らし、その銃弾をピンセットで摘出すると、切開した箇所の縫合に当たった。
縫合を終えて術式の全てを終了すると、自分の手伝いをしていた法術師が直ぐに少年の傷口に手を添え、法術によって傷口を塞ぎ始めた。
時間にして数分ほどで少年の治療を終えることが出来た。出血も大して酷そうではなく、敗血症の恐れも無い。しかしそれよりも、見るべきものは少年の体の強さであった。
至近距離で銃弾を腹部に受けたにも係わらず、少年の内臓は銃弾の衝撃に見事に耐えていた。それも相まって、治療は成功したといえよう。
少年をベッドに寝かしつけ、自分はそろりと廊下の様子を窺ってみた。

>206-207
廊下を覗いてみると、廊下は白い煙幕で閉ざされていた。しかし、時折発生する煙幕の切れ目から、先程の兵士の様子が見て取れた。
兵士は奇怪な植物を相手にしているようで、しかも兵士は太股に手傷を負っていた。傍から見ても、その兵士の分が悪い。
兵士は植物のツタに何度か打ち据えられると、床で何度かバウンドし、そのまま鈍い音を発して、血の池を作ってピクリとも動かなくなった…死んだ。自分はそう思った。
だが、頭ではそう分かってるのに、気が付けば、自分は未だに戦闘が続く廊下に飛び出していた。そして、真っ先にその兵士へ向かって駆けていた。

兵士の脇に屈みこんで、脈を計ろうとするが、兵士は死んだようにぴくりとも動かない。一瞬、躊躇ったが、さっと兵士が被っていたヘルメットを脱がし、首筋に手を添えた。
……脈はある。しかし、少年以上に重傷だ。微かに聞こえる兵士の呼吸音はひゅー、ひゅー、と苦しそうに掠れたものであった。
早く手当てをしなければ、兵士の命は危ないだろう。自分はうつ伏せになって廊下に伏していた兵士を仰向けにし、兵士に脇の下に手を差し入れ、先程少年を治療した病室まで引き摺っていた。
ずるずると兵士を引き摺っていく…力の無い女性の身である自分はこの兵士を引き摺ってくのが精一杯であり、兵士から滴る血が、引き摺っていくに従って、兵士の足で血糊の帯を描く。
(イザベラ)
攻撃を受けた西病棟は大した被害もなかったようで、窓ガラスが数枚割れただけに留まっていた。
イザベラは一応、西病棟の見回りを全て終えた後、騒ぎが大きくなっていた中央病棟に戻っていた。
中央病棟に戻ると直ぐに、治療室から幾等か離れた所にある廊下から、乾いた銃声が何発も響き、共和国軍兵が院内に侵入している事が分かった。
「なんて人達なのかしら…ここは傷ついた者とそれの治療に当たる者しかいないのに…」
院内で戦闘を展開している者達に対して怒りが積もるが、それ以前に先程から院外の外で繰り広げられている戦闘も、イザベラにとっては
忌々しいものであった。院外の外から感じられる二つの魔力から察するに、一つはカイザー、そしてもう一つはネクロマンサーであった。
「……分かったわ。私が矢面に立ちましょう。そして誰も死なせはしないわ…見ていなさい」
忌々しそうに呟くと、イザベラの姿は空間に掻き消えた…

>205
(メリィ)
脳外科病棟で竦んでいたメリィであったが、幾分気分が落ちついた所で立ち上がると、また治療室へと戻ってきていた。
治療室から幾等も離れていないところで乾いた銃声が何発も響き、周囲の同僚達は不安そうであったが、メリィはそれに構わず未だ運び込まれてくる
患者の治療を行っていた。治療室に戻ってくる途中、ロッカールームに入って新しい看護服に着替え、髪や顔に付いた血糊を落としていたが、それも無駄な徒労に終った。
メリィは先程と同じように真っ赤に染まりながらも治療に励んでおり、周囲のざわめきなど気にする事なく患者の治療に専念していた。

>ネクロマンサーが取った行動は、カイザーの襟首を掴んでそのまま治療室にまで引き摺っていくことだった
新たに運び込まれていた患者かと思い、メリィは今の患者の治療を終えると、顔を上げて治療室のドアを見た。
しかし、治療室のドアの脇に立っていたのは患者ではなく、息も絶え絶えなネクロマンサーであった。良く見れば、彼の左肩の辺りが真っ赤に染まっていた。
「!?…大丈夫ですか!?」
メリィは慌ててネクロマンサーに駆け寄った。そして近づいて見て分かったのだが、ネクロマンサーは肩に傷を負ったのではなく、肩から先を失っていたのだ。
人体の一部を欠損した患者など周囲に大勢いたが、その傷口を見るのは嫌なものであった。メリィはネクロマンサーをベッドに寝かせようと彼を促そうとしたが、
彼の右手が何やら人の襟首を掴んでいるのに気が付いた。どうやらネクロマンサーは人の襟首を掴んでここまで引き摺っていたようだ。見れば治療室の外の
廊下には、その人物からの出血で描かれた、掠れた血痕が廊下の角から治療室まで帯状となって続いていた。
「…その方も治療が必要ですね」
ネクロマンサー以上に重傷なカイザーを一目見るなり、メリィは周囲の同僚を呼んで、同僚と共に気絶したカイザーをベッドに寝かせた。
そしてネクロマンサーもついでに別のベッドに寝かせた。
「いいですか?今から法術による手当をします…あの方は法術では間に合いそうではないので、これから手術室に直行して貰いますが…」
ちらり、とネクロマンサーの顔色を窺うが、その顔色は蒼白を通り越して土気色であった。急いでメリィはネクロマンサーの傷口に手を添え、言霊を紡ぎだしていく。
213紅羽 ◆KUU/KZ07xo :05/02/27 19:47:59
>207
>そして最後に一撃。その一撃はヴェルターの背中に一直線に打ち下ろされ、ヴェルターはこれまで以上に大きく跳ね、地面に力無く叩き付けられた。
>地面に叩き付けられた直後、ヴェルターからは鈍い音が響き、そのまま彼はぴくりとも動かなかった。
>後から遅れて、地面に伏したヴェルターからはさぁっと血が流れ出て、彼の周りに赤い池を作る形となった。
相変わらず、煙幕に視界を遮られて、何が起こっているのかよくは分からないが、
ヴェルターの苦痛に喘ぐ声と、何か鈍い音がしたのを聞いて、何が起きたのかは大体理解できた。
「一人オチたみたいだね……。あと一人…!」
残るは、あと鈴木中尉ただ一人。1対1になれば、こちらの勝利はほぼ確実。紅羽はそう思った。

>210
呪文の詠唱が終わった。
「シャドウニードル!」
そう紅羽が叫ぶと、空中に黒色の太さ7〜8cm程の針が10本現れる。
それらは、鈴木中尉に向かって、まっすぐ飛んでいった。その直後……。

>「き、貴様ぁぁ!!調子に乗りやがって!絶対にそこから動くな!!!」
鈴木中尉の、怒りの罵声に紅羽は少し驚く。
「うわぁ、すっごく怒ってる……。とりあえず、移動しよう…。」
『絶対にそこから動くな!』と言われて、その通りにするわけにはいかない。
紅羽はとりあえず、煙幕から脱出する為に、後方に走る。
「もぉ……この煙幕いつになったら消えるのかな…。」

怪植物は、ヴェルターを瀕死に追いやったのを確認すると、ターゲットを鈴木中尉に切り替えた。
銃剣を構えて紅羽に向かって突っ込んでいく鈴木中尉の後ろを、
怪植物は残り少ないツタと触手を振り回し、さらに汚い毒液を鈴木中尉に向かって吐きかけながら追いかける。
>212
> 「!?…大丈夫ですか!?」
「いや、何……放置プレイはご遠慮願いたいところですが、まだしばらくは持ちますよ。腕がもがれたくらいで人は死にません」
顔も土気色だし動作に力も感じられないが、それでもまだネクロマンサーは明瞭な意識を保っていた。
「ああ、その人は共和国の回し者ですから……聖属性の力を抑制するような拘束具でも使っておいた方がいいですよ」
メリィの肩を借りてベッドに寝かせて貰いながら、しっかりとした口調で受け答えをしている。ついでに尻でも撫でてみようか
とも思ったが、流石にこの状況でそれをやると見捨てられるかもしれないのでやめておいた。
「ああ、そうそう……カイザーさんと言うのですが、あの人に伝えてください。ネクロマンサーは命の恩人だから何か礼をしろと、ね」
尻を撫でるのはまた今度ということにして、ネクロマンサーは軽口を叩くことにした。実際、肉体はともかく精神には余裕があるのだった。
「それから……謎の術者が病院を囲んで……私以上に巨大な魔方陣を描きながら……こちらに向かってきています……
放置しておくと……少々厄介なことになるかも……知れませんよ?」

> ちらり、とネクロマンサーの顔色を窺うが、その顔色は蒼白を通り越して土気色であった。急いでメリィはネクロマンサーの傷口に手を添え、言霊を紡ぎだしていく。
「ふむ、ふむ……なるほど。そういう理論ですか……私の世界とは大分違うもので……」
ベッドに仰向けになったまま、ネクロマンサーは深く息を吐いた。ネクロマンサーはメリィの技倆に感嘆しながら、
その法術を分析していた。どの道癒しの系統など使えないが、理論を学ぶだけでもよい暇潰しになるのだ。
「ああ、少し痛みが和らいできましたよ。いい腕をしていらっしゃるものですな。ところで、重要な質問があるのですが……」
もともと、苦痛に対する耐性が高い男なので、法術の力で痛みが緩和された途端、ネクロマンサーは雄弁になった。
唐突に真剣な表情を作ってメリィに問いかける。
「……この病院に、酒と肴はありますか? いやいや、これは非常に重要な質問なのです。人間にとって……いや、
この場合は男限定かもしれませんが……とにかく人が生きる上で絶対に必要なものは異性と食事と学問と酒です。
これらがないと人は荒みます。ですから、酒というのは非常に重要な要素なのですよ。そういうわけで、酒があったら
後で分けてくれませんか?」
真面目ともふざけているとも取れる表情でメリィに向かって雄弁を振るい続けているが、実質的には暇潰しに近かった。
>196
「俺は第八十一戦闘機小隊のジャック・ビアデン大尉だ。
共和国空軍のファイター乗りなら、誰でも俺を知ってる」
自由の利かない体を揺すって、ジャックは息巻いた。
「空軍パイロットのゲロは最悪な匂いがするだろ?
お宅らのお国のお陰で、ここ最近ずっと軍隊の臭い飯ばっかり食わされてたからな。
基地を落としたけりゃディナー・パーティの招待状でもバラ撒きなよ。
皆いっぺんに寝返っちまうぜ、人肉が入ってなけりゃぁな」
喋りながら、ちらちらと戦場の側に目を遣る。
味方が来る気配は無いが、戦闘の銃声と怒号はそう遠くない。
「大尉殿がご好意で、素晴らしい攻略法を伝授して差し上げましたよ。
その他にわざわざ喋る様なこたぁ、なーんにも知らないぜ。
さあ、この場でバラすなり、収容所に連行するなり好きにしな」
216[ ◆..OhPeBexU :05/02/27 21:21:05
>197
217「NAVY」 ◆..OhPeBexU :05/02/27 21:42:13
>197
>「機械には強い方。ジャイに教えてもらって建設機械から戦車まで運転できるしね。
>ただ残念だけど武術の心得・その他は全くなし。TVで格闘ショーを見るくらいよ」

ルイは抱えていたマニュアルをガリーナに差し出し、
「大型の機械に慣れていれば、楽に操作出来る。
格闘術は……基礎体力は申し分無いし、簡単な動作を習得して貰うだけで済みそう。
アニメなんかは見る? ロボット物の……」
表紙の印字を指差して、
「最新式の二足歩行戦車だよ。
非公式のプロジェクトで試験機の段階、制式名も付けてないとはひどい話だけど。
このマニュアル以外には、書類上存在しない兵器だ。中々どうして素敵でしょう?
僕は一回試乗してるんだけど、実物も結構イカレてる。
でも、君ならきっと使いこなせるよ。乗りながらでも、ブレスが吐けるんだ」
片膝を立てて身を乗り出し、ガリーナの間近で火を噴くジェスチャーをしてみせる。
218ルシカ ◆dYP1EeQJTg :05/02/27 21:51:22
>184
重装騎士隊のさらに後から次の部隊が現れた ただどんな部隊かまではわからなかったが…
「おおっ!今度はどうやらこちらの相手をしてくれそうなのだ!!さあ早く来い!」
その部隊は半分ほどを味方の援護に回すと、こちらへ向かう気配を見せた
全力を尽して戦ってくれる相手を求めていたルシカは少しがっかりしたそぶりを見せる
「だが……部隊を分けて我らを相手しようとは随分となめられたものよな
ふん、部隊同士の連係を考えれば正しい判断と言えるのかもしれんが、
相手を侮り最小限の犠牲で事を成そうとする者に勝利は与えられぬぞ!!」
それは彼女自身がインゼクトとの戦いで学んだ教訓だったがこの場合当てはまるかどうかは定かではない
とその時、相手の部隊…竜騎士隊が一斉に跳躍し上空へと上がって行った
「なんと!はは、凄まじき跳躍力よ! 獣人ならではと言った所、向かった甲斐があるのだ!!
しかし奴らも強襲部隊とはな……お前達、昆虫達相手に得た教訓を存分に生かすがいい!!」
敵軍の思わぬ動きに一瞬虚を突かれた傭兵達だが、ルシカの檄に応えて雄叫びを上げる
彼女ほどではないが彼らの多くも自分達の力を振るえる場所を求めているのだった
上空から迫り来る敵に備え、各部隊ごとに魔法で障壁を張ったり迎撃の準備をする
ちなみに大声を上げていたルシカはそれでハインケリスに見付かってしまったようだ……
「さて問題は指揮官の方なのだ ……この気配、ただ者ではあるまい
ならばルシカの相手をして貰うのだ!!」
上空から勢いを増し迫るハインケリス 一対一なら地上から迎え討つのは得策ではないだろう
ルシカは敵陣で振り回そうと用意していた2メートル程のドラゴン像をひっ掴むと、背中から翼を出しはばたいた
当たると泣くほど痛そうな金属製の像だったが、彼女はそれを抱えたまま空へと舞い上がって行く
空中で大きく振りかぶるとドラゴン像に闘気を籠め、急降下してくるハインケリスめがけてぶん投げた
「滅殺!対空昇竜グッバイドラゴンっっ!!!」
ルシカの闘気を纏ったドラゴン像は本物の竜にも似た咆哮を上げながらハインケリスへと向かって行く
>217
―――ルイの目がキラキラ光っているように見えるのは気のせいだろうか。
2足歩行でロボット物アニメで非公式の試作機の陸戦兵器……
(うーん、男の子の発想だわ)

>「君ならきっと使いこなせるよ。乗りながらでも、ブレスが吐けるんだ」
>片膝を立てて身を乗り出し、ガリーナの間近で火を噴くジェスチャーをしてみせる。

ぐっと近付いたルイの顔が、ちょっと楽しそうだった。
デリカシーは欠けているがまるで邪気が無い。
まるでガリーナの事をただのオモシロ生物か何かだと捉えているような、
目の前の自分をお話の中の架空のキャラクターとして見ているような。
そういう扱われ方が、ガリーナは嫌いではない。
「…ふ、ますます気に入ったわ。生物兵器イン2足歩行ロボット。
剣と鎧の帝國軍に竜の最新スタイルを見せてあげようじゃないの」
ルイのジェスチャーに力強い言葉で返した。と、大事なことを思い出す。
「一応聞くけどカッコ良いでしょうね、それ。……いや、
別にパンボリック特製『チャイム』がアレだったとかそんな話じゃないわよ?」
―――パンボリックのアレもまた、一つの「男の子の発想」である。
>211
ヴェルターは薄っすらと意識があった。だが、体の感覚は酷く曖昧で、モノを考えようにも思考が纏まらない。
誰かが自分を引き摺っているということだけは分かったが、顔を上げてその誰かの顔を見ようにも、首が上がらない。
仕方が無いのでヴェルターはそのままその誰かに自分の体を預けた。が…

>210
中尉の唸りとも似た叫びに、少しだけ閉じかかった目を開ける。見れば、煙幕の合間から中尉が銃剣突撃を行っていた。
>213
しかし、中尉の背後から先程、自分をこの状態にまで追い込んだ怪植物が、中尉にツタと毒液で襲い掛かるのが見えた。
(畜生…)
心の中で毒づくヴェルター。今の自分は指一本動かせない。ただ中尉が殺されるのを見ているしかなかった。
『ヴェルター…我が主よ。貴方は何時から其処まで腑抜けになったのだ?あの極寒のロシアの大地で見せた、勇ましい姿は何処へ行った?』
突如として、誰かが語りかけてきた。それは耳元で囁かれているようにも取れるし、精神に直接語りかけているようにも感じ取れた。
「…誰だ?」
その声に、掠れた声で応えるヴェルタ−。だが、次に返ってきた声は少しばかり不機嫌であった。
『誰だとは失礼極まりないな…私は何時も主の肩に下がっている。もっとも、今は主の肩ではなく、冷たい床に投げ出されているがな』
その声の言われた通り、床に視線を落とす。其処には、足を撃ちぬかれた時に取り落としたモーゼルKar-98kが落ちていた。
普通のものよりもボルト・アクションがしやすいようにボルトが曲がっており、銃身も整備中隊に頼み込んで最高のものに交換して貰い、先輩の
狙撃兵から譲り受けたライカ社製の狙撃鏡が備え付けられている、ヴェルターと共に幾多の戦場を潜り抜けてきた、彼の『相棒』であった。
「モーゼル…?」
『そうだ…主。あの日本軍兵を助けたいのなら、私を手に取れ。さすれば主はあの日本兵を助ける事が出来る…』
ヴェルターは幻聴でも聞いているのではないかと思った。だが、この世界では、元の世界とは勝手が違う。銃が喋ってもおかしくはないのだろう。
「本当か?」
『私は嘘は言わない…主、時間が無い。早く私を手に取れ!』
別に自称モーゼルの幻聴に促された訳ではない。ただ、何かがヴェルターを突き動かしていた。
ヴェルターは看護婦の腕を振り払い、少し離れたところに落ちていたモーゼルに飛びつき、伏せ撃ちの姿勢をとった。スコープの十字架には、先程の怪植物の後姿が映っていた。
『主。私がこれから最適な狙撃を教える。主はそれに忠実に従い、撃てばいい』
モーゼルの声が静かに脳内に響く…重傷で正常な思考が出来なかったのが嘘のようだ。心の中に、波風一つ立たない泉があるかのようだ。
『主よ。生物には弱<点>が一つある…それは文字通り点であり、それを撃ちぬけさえすれば、一撃で、確実に相手の息の根を止めることが出来る』
今のヴェルターには、自分の鼓動や呼吸さえ聞こえず、モーゼルの声しか聞こえなかった。
『あの怪物も同じだ…主、あの怪物の弱<点>が見えるな?あの白い点だ…』
ヴェルターにしか見えない弱<点>。其処の箇所だけ白く浮かび上がっているかのように見えた。
『其処に一発。そして更に、あの中尉に迫っている新たな危機を救う。では…撃て!』
ヴェルターは静かに、モーゼルの引き金を引いた。モーゼルからマゥザー7.92mm弾が撃ち出され、音速で怪植物の背中にある弱<点>を撃ち抜いた。
ヴェルターは確信した。確実にあの植物の息の根を止めたと…スコーの隅で植物が倒れるのが見えたが、直ぐにヴェルターは煙幕の中に消えた中尉を追った。
しかし、煙幕のせいで中尉の姿は見えない。
『焦るな主…今度は黒い点で示してある。弱<点>の応用だ。今度は其処を撃てば、あの日本軍中尉の危機を救える…撃て!』
モーゼルはヴェルターの心を見透かしたように、静かに囁いた。今度は白一色となっている、スコープ内に黒い点が示された。
点は三つ。五発装填のモーゼルには、三発しか弾丸が残っていなかった。一発でも外せば、中尉は救えない。
だが、今のヴェルターは確信していた。絶対に救える…そう確信し、ヴェルターは引き金を引いた。
銃口から放たれた音速の弾丸は一つ目の黒い点を撃ち抜いた。黒い針が中尉を貫く瞬間、一直線に並んだところ、六本を撃ち落とせた。
素早く排莢し、二発目を薬室に送り込む。装填完了。そして二つ目の黒い点を撃ち抜いた。点を通過した弾丸は、更に二本の黒い針を撃ち落した。
そして排莢。三発目が薬室に送り込まれる。最後の一発だ。だが、絶対に外さない…そして軽い振動。銃口から放たれた最後の一発は、最後の黒い点を通過し、
中尉の脳天を貫こうとしていた針を見事粉々に撃ち砕いた。
『完璧だ』
モーゼルは心の底から感動した声でヴェルターの狙撃をそう評価したが、既にヴェルターは完全に気を失っており、その声は彼の心には届かなかった。
ヴェルターは狙撃の姿勢をとったまま気絶をしていた。しかし、その顔は何かをやり遂げた男の顔であった。
>179
弾の無駄遣いではないか。そう感じるほどに敵の射撃は多い。
一応盾でお互いを防御できるように円形の隊形を取ってはいるが、長くは持たないだろう。
埋めきれなかった隙間から銃弾が飛び込んで数人の兵を薙ぎ倒す。
「糞!何もせずには死ねねえぜ!」
一人の兵士が叫び、広場の中心の敵に向かって走り出す。
「あんにゃろ・・・ええい!行くぞお前ら!!」
それを見たほかの兵士もバラバラに思い思いの方向へ突撃する。
一人、また一人と倒されていく。

轟音と共に投げ込まれた物が強烈な光を発する。
とっさに顔を背けるが、光を目にしてしまい物が見えない。
何者かが窓から入ってくる。
ゆっくりと、確実に階段方向へ後退する。


その頃、シャルルと歩兵隊、軽装歩兵隊、重装歩兵隊の残りの兵の一団は、廃村の方に向かっていた。
廃村の方からは銃声が聞こえる。敵部隊が来たようだ。
「いけませんね…やはりもっと兵を割くべきでしたか。…まあ、過ぎたことは仕方有りませんね。
では、軽装歩兵隊の先行後に歩兵隊、重装歩兵隊の順で進軍、コルネム殿を助けに行きましょう。」
号令と共に軽装歩兵隊が駆け出す。その後に歩兵隊、重装歩兵隊も続く。
223「NAVY ◆..OhPeBexU :05/02/28 00:08:51
>219
>「一応聞くけどカッコ良いでしょうね、それ。……いや、
>別にパンボリック特製『チャイム』がアレだったとかそんな話じゃないわよ?」

マニュアルのページをめくると、畳んで挟み込まれた図面が現れる。
ルイは図面をケージの床に広げ、ガリーナへ押し遣った。

「そこの立面図で大体分かると思うけど、随分スカスカな造りじゃない?
搭乗スペースの胸部や肩、腕部と比べて、胴回りが滅茶苦茶細いんだ。
ヘッドから股関までフレームが通ってるんだけど、スカートと胸部の間はそれが剥き出し」

幅のある上体とスカートに対して腹部は「背骨」のみで、装甲らしい装甲も見当たらない。
その他にも逆間接の脚部、長い腕、動物の骨格や甲虫の外骨格を連想させる装甲のデザイン、
大きなスカート、ドラゴンの頭骨に似せた特徴的な頭部。

「華奢に見える分、運動性と機動性はそれなりだよ。
動力は魔導エンジンとオキシライド電池で、最大稼働時間は約200時間。
間接にアクチュエーターはあるけど、動作の大半は人工筋肉と液体金属で行う。
陸軍制式の軽装甲車を楽に潰せるくらいのパワーはあるよ。
メイン・フレームはチタニウムとミスリルの強化合金、装甲も複合素材と液体金属を使ったチョバム・アーマー。
脚部は可変式で、二足歩行とキャタピラ走行。最高速度は時速80qほど。
走行補助ユニットもあるんだけど、そっちは別の図面なんだ。
武装は25mm機関砲が股間部に一門、胸部に二門。それから30mm魔導砲を改造したブレスの噴射装置。
魔力粒子の集中照射で、最大射程100mってとこだね。どうだい? 感想は?
格好も取り合えず、学芸会の大道具レベルは脱してるんじゃないかな」
224鈴木中尉 ◆DDGCBdpW/w :05/02/28 00:09:44
>213
後ろに何かが近付いているのは分かっている。それが自分を殺そうとしている事も。
だが、限界まで近付いてから手持ちの手榴弾を全て起爆すればあいつを殺せる。
それだけを目的とし、怪物も飛んできている何かもまったく気にしない。
殺すなら殺せ、その分の代償はあの小僧に払わせるがな。

小銃を構えたまままっすぐ走る。煙幕を張る前、この廊下は角ではなかった。
ならば走りきってもぶつかる事は無いはずだ。
目の保護のために略帽を深く被り、そのまま煙幕に突っ込む。
>221
後ろから銃声が聞こえた。振り向くと怪物が倒れ、飛んできていた物も床に落ちている。
撃ったのはあのドイツ兵だ。匍匐姿勢でこちらへ向けて小銃を構えている。
そのまま彼に軽く敬礼をし、また前を向いて走る。あいつを逃がしてなるものか。
「待て!この餓鬼が!!次は絶対に射殺してやる!!」
先程捕らえた時、煙幕に投げ込まずに南部式で頭を撃ち抜けばよかったのだ。
これは自分の判断ミスだ。その所為であのドイツ兵は瀕死の重傷を負った。
その分の責任は取らなければ。
>222
広場中央を固めていた第三分隊が、立ち向かってくる敵兵たちへ
小銃の掃射を続ける。
第一分隊も敵を横や背後から追撃しつつ、役場へ突入する。

グリフは首尾良く数人の捕虜を屋外へ連れ出し、それを第二分隊が引き受けて
着陸していた輸送ヘリへと運び込んだ。
「階段の方にまだ居るぞ、仕留めろ」
「オーライ、副隊長。行くぜマイク」
残った捕虜を、突入したエディたちが保護する。
ウィスカーとマイクの二人は仲間から散弾銃を受け取り、階段へ歩み寄る。
「死にたくなければ、武器を置いて鎧を脱げ。
二度は言わない、あと三十秒待ってやる」
部屋の隅から、隊長が怒鳴った。
226紅羽 ◆KUU/KZ07xo :05/02/28 00:26:11
>220-221
>ヴェルターは静かに、モーゼルの引き金を引いた。モーゼルからマゥザー7.92mm弾が撃ち出され、音速で怪植物の背中にある弱<点>を撃ち抜いた。
>ヴェルターは確信した。確実にあの植物の息の根を止めたと…スコーの隅で植物が倒れるのが見えたが、直ぐにヴェルターは煙幕の中に消えた中尉を追った。
怪植物は、突然の背後からの銃撃で、弱点を打ち抜かれた。
怪植物は動きを止め、その場に、毒液を全方位に撒き散らしながら倒れた。
そして、床にズブズブと沈んでいき、消滅した。
「……あの人、まだ動けたのか…。あぁーぁ……やられちゃった。」

>銃口から放たれた音速の弾丸は一つ目の黒い点を撃ち抜いた。黒い針が中尉を貫く瞬間、一直線に並んだところ、六本を撃ち落とせた。
>素早く排莢し、二発目を薬室に送り込む。装填完了。そして二つ目の黒い点を撃ち抜いた。点を通過した弾丸は、更に二本の黒い針を撃ち落した。
>そして排莢。三発目が薬室に送り込まれる。最後の一発だ。だが、絶対に外さない…そして軽い振動。銃口から放たれた最後の一発は、最後の黒い点を通過し、
>中尉の脳天を貫こうとしていた針を見事粉々に撃ち砕いた。
「えぇー……そんなぁ。せっかくあと一人に止めを刺すところだったのに……。人が折角手加減をしていたのに…。」
折角、もう少しで鈴木中尉に止めをさせたのに、まさかの所でヴェルターに邪魔をされてしまった。
決して、不利な立場になったわけではないが、それでも攻撃を妨害されたのは不愉快だ。
鈴木中尉を始末したら、あの人にも止めを刺してやる。
「さて、まずは……走りながらはあまり得意じゃないけど……。」
紅羽は、走りながら呪文の詠唱を開始する。

>224
>「待て!この餓鬼が!!次は絶対に射殺してやる!!」
煙幕の向こうから、鈴木中尉の叫び声が聞こえる。
「あのねぇ!怒りに任せて攻撃なんて!止めた方が良いよ!」
こんな事行っても無意味だと思うが、一応、鈴木中尉に忠告する。それと同時に。
「まぁ……君みたいな人に言ってもしょうがないとは……思ってるけどね!シャドウニードル!」
再び黒い針が10本現れ、鈴木中尉に向かって飛んでいく。
「次!」
さらに紅羽は呪文の詠唱を続ける。
227ジャカ ◆rMEfPDyTEI :05/02/28 01:41:32
壁一枚隔てた場所とは全く別世界とも言えそうな病室のベッドの上。ジャカは、夢を見ていた。
夢の中で、ジャカは走っていた。姿からして5、6歳。どこへ行くというのだろう。ジャカの手を引くのは、まだ少年だった兄と…姉。
帝國の服装ではない、共和国の服装であるジャカ。その背中は深紅に染まっている。
夕暮れだという訳ではない。ジャカ達が走る後方で、大きな館が音をあげて燃え盛っている。その紅が…反射しているのだ。
ジャカは泣きじゃくっていた。とある人名を叫びながら。呼んでいる名は、父と母の…名。
ジャカの頭上ではなおも銃弾が飛び交っていた。いや、飛び交う、というのは語弊があるかもしれない。飛んでいた。一方的に。
走りながらも逃げる道を模索している兄と、泣き叫ぶジャカをなんとか慰め落ち着かせようとする姉。
そんな状況だったから、一発の流れ弾が音もなく近づいていても、そんなこと思いもしなかった。
そしてそれは見事に姉の胸を貫いた。…ゆっくりと、ジャカに覆い被さるように倒れ込む姉。

「う…うぁ…うぁぁぁぁぁぁ!!」
病室に響きわたる叫び声。…目が、覚めた。

>211
「…こ…ここは…?…痛!」
腹部に激痛を感じ押さえながら、自分の記憶の糸を紡ぎ出していた。
あの兵士に腹を撃ち抜かれ、それから…
「!」
いそいで掛け布団を退かし自分の腹部を覗き見る。やはり、治療された後があった。
「…」
たぶんあの看護婦が助けてくれたのだろう。殺そうとした相手だというのに。後ろめたさにも似た感情。無言でベッドから降りる。
病室内にいた人──背格好からして法術師の類だろう──に一瞥して軽く会釈すると、廊下に通じるドアに向かって歩きだした。
228ジャカ ◆rMEfPDyTEI :05/02/28 01:43:27
>221
腹部を手で押さえながらジャカがドアにたどり着いた時、既にヴェルターは一仕事終え、気を失っていた。
ここでジャカは葛藤をすることとなる。ここで一刀のもとこの兵士を斬り捨てれば、ほぼ間違いなく命を奪うことが出来るだろう。
だが、体中がミシミシとする。自分の全てが、その行動に拒否反応を起こしている。
自分でも理由がわからない。さっきの夢で再確認が出来たはず、共和国を許しはしないと。

(でも…)
ジャカの考えとは裏腹に、ジャカの体は腹部の痛みをこらえつつヴェルターを担ぎ上げ、病室内に連れていこうとしていた。
(…これでいいはずだ)
ジャカはなんとかして自分の行動の正当性を導きだそうとしていた。
そうだ、この兵士は重傷いや重体、しかも気を失っている。こんな時に攻撃など、フェアじゃない。
しかもここは病院という人を生かす場所だ。そんなところで人を殺しちゃいけない。それに女性の前だぞ?
ジャカはその程度のことをただひたすらに頭の中で反芻していた。
だがジャカは暗殺者だ。寝込みを襲ったことも手負いの人物にとどめを刺したこともある。
病院どころか教会でも平気で人を殺めたし、女子供の前でだって平気で首を切り落とした。
だが、今ジャカにそんなことを思い出している余裕などは全くなかった。
帝國兵としてあるまじき自分の行動を正当化したい、ただその一心だったのだ。

ヴェルターを空きベッドの上に寝かせると、看護婦と法術師を交互に正視する。
まるで、これから自分に出来ることはないか、指示を仰ぐように。
(イザベラ)
>208
イザベラは野戦病院の周りを囲む防御陣地の円周外にいた。其処からは野戦病院の外の異変が良く分かり、野戦病院の周囲は、地獄がこの世に
現れたかのようであった。野戦病院の周囲を囲む瘴気に、その中に無数に存在するアンデッドの類の残骸。邪悪な方陣の残骸も見て取れた。
更にその地獄絵図の周囲を、闇の精霊が疾り、何やらよからぬ方陣を形成している…イザベラは眉を顰めた。これ以上、この野戦病院を危険に晒す訳には行かない。
「誰だか知らないけど、これ以上この病院を危険に晒す訳にはいかないわ…端末を顕現化」
静かに言霊を吐くと、イザベラの手には百科事典サイズの白い本が握られていた。その本の背表紙には『衛生白書』と金色の文字で銘打たれていた。
その本から発せられる雰囲気から察するに、ただの衛生白書ではなさそうだ。どうやら強力な魔道書の類なのだろう。
イザベラはその百科事典サイズの本の項をぱらぱらと捲り、とある項で捲る手を止める。
「相手が大人しく引き下がってくれればこの子達を使う必要もないのだけれど…一応準備だけはね」
やれやれと肩を竦めながらイザベラは呪文を詠唱し始めた。イザベラが扱う魔術は、既存の魔術を独自に改良したものであった。
彼女が手にしている魔道書は、予め魔術発動までの過程を短縮する為の端末であり、これがあるから詠唱に時間が掛かる魔術も対して時間をかけずに発動することが出来るのである。
今、イザベラが詠唱しているのはそのショートカットされた魔術の呪文である。イザベラの詠唱と彼女の魔力を受けた魔道書は淡い光を発し始めた。
「星の光を探しています…私の膿をみなお日様は黒く焼くのです。針で脅すのです……」
イザベラがそう詠唱すると、彼女の周囲に幾つもの白い燐光を発する半径2m程の聖なる魔法陣が顕現した。それから発せられる魔力は純白そのもの。
邪悪な存在を許さず、邪悪を滅することのみを掲げた神の代行者。
「お日様はなぜ、私を怒って焼くのでしょうか?よりによって、なぜ私を?なぜ、小麦粉を焼かないで?」
魔法陣らの燐光が徐々に強くなるに従って、其処から発せられる魔力もより強大なものへと変化していく…今では顕現した時とは比べ物にならない。
「向こうの森で導師がカンしています―――待てしばし。汝も又カンガルーするならん」
最後の言霊を吐き終えると、魔法陣らの燐光が限界に達していた。今では燐光というよりも、目を焼かんばかりの閃光を発していた。
そして限界に達した白い魔力はあるモノを形作っていた。それは徐々に形を成し、この世界に実体を持ち始めていた。
やがて閃光が浜辺に打ち寄せる波のように引き始めると、魔法陣の中には純白の装甲板で全身を覆われた天界の『装甲兵』が顕現していた。
『装甲兵』は全身を分厚く堅固な、聖なる魔術文字が刻み込まれた純白の魔道装甲板で覆っており、背には淡く輝く光粒子で形成された六枚の羽が展開されていた。
純白の魔道装甲板の隙間からは『装甲兵』の内部が少しだけ窺えた。内部はがらんどうであり、常に淡いエメラルドに輝く幽体が充填されている。
『装甲兵』の内部は実体を持たない幽体であり、『装甲兵』はいわばゴーレムの一種であった。ただ、通常のゴーレムと違って封入されている魂は聖者のものであり、闇の属性を得意な相手とする。
その『装甲兵』が数にして40体ほど。自分の後に控えるような形で整然と並んでいた。

>カァラは三たび野戦病院へと歩いて向かった、とぼとぼと。
向こうから、人影がとぼとぼと歩いてくる。イザベラは腕を組んで仁王立ちし、その人影が自分の前に来るのを待った。
(メリィ)
>214
重傷のなのに、ネクロマンサーは余裕がある声で色々と話しかけてくる。治療に集中していたメリィにとっては、どんなに
酷い傷を負った患者よりも手強い相手であった。心なしかメリィのこめかみには《怒りマーク》が浮かんでいるように見えた。
しかし、それでもネクロマンサーは重傷を負った患者には違いないので、メリィは心をなるべく平静に保って治療に当たっていた。

>「……この病院に、酒と肴はありますか? いやいや、これは非常に重要な質問なのです。人間にとって……いや、
>この場合は男限定かもしれませんが……とにかく人が生きる上で絶対に必要なものは異性と食事と学問と酒です。
>これらがないと人は荒みます。ですから、酒というのは非常に重要な要素なのですよ。そういうわけで、酒があったら
>後で分けてくれませんか?」

ぶちっ、と何かが切れる音がメリィの脳内で静かに響いた。本日二度目である。
「怪我人なら怪我人らしく、静かにしていて下さい!!!!!!」
メリィは直ぐ傍に置いてあった注射器を取ると、それをネクロマンサーの首筋に突き刺す勢いで注射した。注射器には麻酔が充填されており、
これならば直ぐにネクロマンサーは黙るだろう。メリィは注射し終わると、再びネクロマンサーの治療を開始し始めた。

(名無しの看護婦)
>228
>ヴェルターを空きベッドの上に寝かせると、看護婦と法術師を交互に正視する。
>まるで、これから自分に出来ることはないか、指示を仰ぐように。
「…貴方に出来ることは一つだけよ。ベッドで静かに寝ていなさい」
看護婦は少年の背を押し、ベッドで眠るように促した。
「あの人の手当は私達がするから、貴方は静かに寝ていなさい…」
少年がベッドに潜り込むのを見届けると、看護婦は少年の頬に優しく口付けた。
「いい夢を見なさい…それじゃ、お休みなさい」
そう言い、看護婦は少年のベッドの周りの仕切りカーテンを閉じた。そして、法術師と共に兵士に向き直る。
231紅羽 ◆KUU/KZ07xo :05/02/28 03:05:49
(かなり遅くなりましたけど、>226の続きです…。)
「……はっ!?そういえば!」
紅羽は、何か大切な事を思い出し、窓を開けて外を見た。

「うわっ、マズい………。」
そう呟くと。鈴木中尉に向かって叫んだ。
「ははははは!悪いけど、ここで時間切れだ!僕はここで失礼させてもらうよ!
君達と遊べてまぁまぁ楽しかったよ!さっきの男がもし生きてたら、『また一緒に遊ぼうね』って伝えておいてよ!」
紅羽は、窓から飛び出し、空に向かってジャンプした。
鈴木中尉から見れば、まるで空高くに飛んでいってしまったように見えるだろう。
……が、しかし。
「……あ、そうそう。これ、置き土産ね。」
そう言うと、さっきの怪植物がまた現れた。
シャドウニードルを放った後、紅羽はまたダークプラントの詠唱をしていたのだ。
「それじゃ、今度こそ!じゃあね!」
そういい残し、また空高くジャンプして、鈴木中尉の前から姿を消した。
>223
冷たい檻の床に紙を広げ、二人して図面に見入る。
ガリーナはルイから基本的なスペックその他を聞きつつ、
エンジンのマウント位置や足回りのラインを興味深そうに眺めた。

>「どうだい? 感想は? 格好も取り合えず、学芸会の大道具レベルは脱してるんじゃないかな」

「ハッタリの効かせ具合は結構好みかなあ。横に広めでゴツくて腕は長いってデザインとか。あと…」
男の子の発想だとか何とか達観した事を言っておいて、ガリーナもこのテの話にワクワクする性質だ。
威圧感のある上体、安定性・運動能力を支える下半身。それを無理矢理に橋渡しする腰部…。
資料からは、暴君のようなフォルムとは裏腹に華奢で鋭利で、繊細なイメージをも感じ取れる。
それすらも機体美として取り入れたと言うのならば、その開発陣を気に入ってしまいそうだ。
「…へえ。それになかなか男前」
そしてもう一つ、この機体は特徴的な『顔』を持ち合わせていた。
禍々しくも力強いドラゴンの大顎が紙面から彼女を見据えている。
……竜を見ると複雑な感情が沸き起こる。食欲?屈辱?嘲笑?郷愁?
「私のためにあつらえてくれたんだか…あてつけられたんだか……」
ガリーナは竜の卵から生まれた人間である。誰にも解けない矛盾が、そこには横たわっていた。
彼―――図面の新兵器がガリーナに語りかける。何かニヤニヤと語りかける。

「…この子、まだ名前が無いんだっけ?」
図面から目を離す。確か非公式の企画で制式名すら決められていないとか。
「良かったら名付け親をやらせてもらえないかしら? 気に入ったの、この子」
因縁めいた巡り合わせも。玩具扱いの申し合わせも。それらは全て宴の演し物に過ぎない。
私の人生が学芸会で終わるか、秩序よ、客席で見ているがいい。
「この子にバレエという名前を」
>230
> 心なしかメリィのこめかみには《怒りマーク》が浮かんでいるように見えた。
「おやおや、看護婦さん。美しいお顔にそのようなものを浮かべては、台無しですよ?」
その様子を見たネクロマンサーはますます笑みを深くした。真面目な人間をおちょくるのが三度の飯と同じくらい好きなのだ。
「いやはや、しかし、楽しいものですな。貴方のような人とお話しをするのは」
完璧におちょくっていた。堪忍袋の緒が切れるまで続けるつもりらしい。

> 「怪我人なら怪我人らしく、静かにしていて下さい!!!!!!」
「あ……」
あまりの早業に、ネクロマンサーは全てが終わってから何をされたのかに気づいた。
「何とも、強引な方ですな。突き入れる前によく湿らせて、それから、優しく、先を押し付ける、というの、が、基本、なの、です、よ………」
やれやれ、と言いたげな苦笑を浮かべながら、ネクロマンサーは薄れゆく意識を必死で保って続けた。
無論、注射の際には消毒液が染み込んだガーゼで皮膚を拭いてから慎重に針を刺せ、という意味の言葉だが、
別の意味にも取れるようにぼんやりしてきた脳をフル稼動させて考えているのだった。
「今度……私が、二人、きり、で、レ、ク、チャーで、も、して、差し上げ、ましょ、うか……」
精神力を振り絞ってそこまで言い終えると、ネクロマンサーは満足げな表情を浮かべて眠りについた。
目を閉じてすぐに怪我人とは思えないほどに安らかな寝息を立て始める。
234カァラ ◆mRmMX8Kgoo :05/02/28 18:58:43
>229
(先ほどに比べてほとんど瘴気は消え、邪気ももかなり弱まってまね…あぁあ…)
カァラはだいぶ病院に近づいていた
(?…気の流れが変わった)
カァラは一瞬身構え、2.3の呪文を用意しようとした
カァラは今まで辺りを支配していた闇系統の気ではない聖系統の気が流れ出して来た事に気付いた。明らかに先ほどの者とは違う
前を見てみると、なにやら白衣を纏った者と、何やら妙な装備の兵士が40人ほど
(野戦病院の看護婦さんですね、こんなに突然にこれだけの強い気を放つとなると…)
カァラの知る限りそのような者は一人しか居ない
さらに近づくとそのもの束ねた長い髪、尖った耳、切れ長の目をした顔が見えて来る
(やはりそうですか、イザベラさん…野戦病院の長、敵味方分け隔てないその姿勢から、帝国の幹部からも疎まれている、という噂は本当でしょうか)
「お久しぶりです、イザベラ・ブレンターノ・冬月。共和国防衛省のカァラです 私の事は覚えてますかぁ〜?」
カァラは一度だけ、以前ここを要塞と間違えた共和国軍の部隊に付いて行った時、イザベラに会った事がある。その時カァラは、エルフの魔力というものに改めて感心したものであった
(ほんの少し会っただけです、忘れられてしまったかもしれませんね)
カァラは先ほどの兵士がゴーレムである事に気付いた。
(初めて見るゴーレム…、あそこに魔導文字が)
カァラはゴーレムに近寄りながら、その魔導文字や、ゴーレムから放たれている気の特徴、ゴーレムの構成などをメモに取り始めた
(イザベラ)
>234
>「お久しぶりです、イザベラ・ブレンターノ・冬月。共和国防衛省のカァラです 私の事は覚えてますかぁ〜?」
「ええ、お久し振り…初めてお会いした時は、航空機による絨毯爆撃と重砲による一斉砲撃を手土産に来たわね?」
あの時のことは忘れようにも忘れられない。野戦病院を要塞か何かと間違えた共和国軍が、野戦病院に対して激烈な砲爆撃を加えたのである。
無論、野戦病院はその砲爆撃に充分耐えたが、その恐怖で看護婦や法術師数人が2,3日寝たきりになったことがある。野戦病院としてスタートし始めた
時期であったから、戦場の恐怖、それも飛び切りのを体験した看護婦達の働きぶりは、いいものとは言えなかった。
仕方が無いので自分が野戦病院であるということを知らしめる為に、得意の空間跳躍魔術で共和国軍の作戦本部の中に現れ、その時の共和国軍の指揮官に
直ぐに攻撃を止めるよう掛け合った。その時、その作戦本部にいたのがカァラであった。
カァラの初めての印象は掴み処の無い女性、といったようなものであった。現に、その認識は今でも変らなかった。

>カァラはゴーレムに近寄りながら、その魔導文字や、ゴーレムから放たれている気の特徴、ゴーレムの構成などをメモに取り始めた
カァラはイザベラの脇をすたすたと通り過ぎて、イザベラの後の控えていた装甲兵の、装甲に刻まれた魔術文字や充填されている霊魂、その他にも装甲兵を組成している術式を
調べ始めた…どうやらイザベラは眼中にはないようだ。
「貴女って人は…」
イザベラは溜息をつくと、装甲兵を調べるのに夢中になっているカァラの背に向き直った。
「聞いているかどうかは知らないけど…一応聞いておきます。カァラ、貴女の目的は何?返答如何によっては、貴女が夢中になっているその子達以外にも召喚するわよ?」
手にした『衛生白書』の項を手早く捲り、とある項で手を止める。
「私としては戦闘行動は避けたいわ…だから、貴女の用件を聞かせて頂戴」
236「NAVY」 ◆..OhPeBexU :05/02/28 20:12:22
>232
ルイの指先が、図面を忙しなくなぞった。
上目遣いにガリーナを見て、ふと思い出した様に軍服のポケットを弄り出す。

>「この子にバレエという名前を」

「早く実物が見たくなっただろ? でも、その前に」
今度はしばらく内ポケットに手を突っ込んで、漸く取り出された物は一匹のハツカネズミ。
「君の能力を確かめておきたいんだ。
こいつは実験用のラットなんだけど例のブレスで、その……人間に、変身させられるかな?」
ラットの尾を指二本で抓み、宙吊りにしてガリーナへ差し出した。
237鈴木中尉 ◆DDGCBdpW/w :05/02/28 20:14:49
>226
奴の掛け声と共に細い棒のようなものが自分へ向けて飛んでくる。
「皇軍軍人を馬鹿にするな!この程度の攻撃…」
構えていた小銃で棒を叩き落すが、打ち逃した二本ほどが肩を掠めた。
すぐに血が滲んで軍服の肩を赤く染める。
>231
「小僧!逃げるな!正々堂々と戦え!!」
逃げていく奴に向かって銃撃を加えるが、命中弾はまったく無い様子。
どうやらまた取り逃がしてしまったようだ。
奴の言う置き土産とは例の雑草の怪物だろう。床からまた怪物が生えてくる。
自分ではあのドイツ兵のように仕留めるのは不可能だ。
そもそもの兵種が狙撃要員ではなく歩兵隊の前線指揮官なのだから。
ならば自分はここでも歩兵らしく戦ってやる。
日本に帰れないのは心残りだが、勝てなければどうせ帰れんのだ。
「植物如きが…人間に歯向かうな!この雑草野郎!!!」
叫びながら雑嚢に詰めた手榴弾のピンを抜き、雑嚢ごと根元に投げる。
配給の乾パンや写真は惜しいがこの際文句は言えない。
顔を腕で庇いながら後ろに飛ぶと、その直後に爆風と灼熱が体を襲う。
まるで腕が焼けるような…いや、実際に焼けているのだろう。


しばらくしてから目を開ければ根元から吹き飛んだ怪物の姿が見える。
唯一の戦果の確認が済み、だんだんと意識は薄れていく。
何故かフィリピンの戦友達と故郷にいる両親や友人達が見えた気がした。
(名無しの看護婦)
>237
兵士の治療が一段落したその時であった。未だに戦闘が続いて廊下で凄まじい爆音が響いた。
その衝撃で台車の上に載っていた器具がばらばらと床に落ち、思わず尻餅を付いてしまった。
だが、直ぐに立ち上がり、法術師と共に廊下に出る。廊下は先程の煙幕に混じって、爆発の煙で酷く視界が利かなかった。
おまけに何かが燃えているようで、焦げ臭い黒い煙に咽た。自分と法術師は火災の火元を消化すべく、廊下に備え付けられている
消火器を手に取り、その火元へと急いだ。

其処で見たものは、ばらばらに吹き飛んだ植物のような残骸と、それから少し離れたところに、半ば火達磨になっていた兵士が倒れていた。
急いで自分は周りの火とその兵士に向けて消火器を向けて、消火液を吹きかけた。直ぐに火は収まり、火達磨だった兵士の傍に駆け寄った。
未だに焦げ臭い匂いが辺りに充満していたが、どうやら法術師が窓を開けたようなので、換気のよくなった廊下からは煙が徐々に引いていった。
幾分視界の良くなったところで、兵士が負っている火傷が酷いものであることが分かった。ほとんど腕の表面の衣服が焼け落ち、その下の皮膚は炭化寸前だった。
一応兵士の首筋に手を添え、脈を確認してみる…弱い反応を示してはいたが、兎に角、この兵士は生きていた。
法術師と協力してその兵士を先程の病室まで運び込もうと、自分が兵士の上半身を、法術師が兵士の足を持ち上げて、二人がかりで兵士を運び始めた。
…爆発は思ったよりも酷いものではなく、周りの病室には被害らしい被害は見当たらなかった。火災も魔力が付与された素材で作られた内装を燃やす事は出来なかった。
兵士を先程の病室に運び込み、さっき治療を施し終えた兵士の隣のベッドにその兵士を寝かせ、三度自分と法術師は治療を開始し始めた。
(メリィ)
>233
>目を閉じてすぐに怪我人とは思えないほどに安らかな寝息を立て始める
ようやくネクロマンサーが静かになり、メリィは治療に専念することが出来た。
ネクロマンサーの傷口に添えられたメリィの手には淡い燐光が集り、直ぐにネクロマンサーの傷口が塞がり始めた。
言霊を紡ぎだすこと数分間。ネクロマンサーの傷口は完全に塞がり、後の処置は他の看護婦に任せるだけとなった。
メリィは額の汗を袖で拭うと、カイザーの手術の様子を見るべく、手術室へと向かった。

カイザーの手術は順調に進んでおり、カイザーの手術を担当していた女医の話によれば、後は縫合を済ませ、法術によって傷口を塞ぎ、
内臓の損傷を法力によって徐々に回復させればいいとのこと。
メリィはそれを聞くと、取り敢えずその場をその女医に任せ、再び自分は治療室へと戻った。治療室に戻ると、治療の済んだネクロマンサーは別室に移されていた。
240カァラ ◆mRmMX8Kgoo :05/02/28 21:09:33
カァラはメモを取りながらもちゃんと話を聞いていた
>「聞いているかどうかは知らないけど…一応聞いておきます。カァラ、貴女の目的は何?返答如何によっては、貴女が夢中になっているその子達以外にも召喚するわよ?」 手にした『衛生白書』の項を手早く捲り、とある項で手を止める。
「んん、あんまり脅かさないで下さい。この至近距離であなたの召喚獣に挟まれたら、私は何も出来ません…」
>貴方の用件を聞かせて頂戴」
「たまたま近くに来たので、帰るついでに共和国軍の負傷兵でも引き取っていこうかと思いまして…」
カァラはそう言うと、メモを取り終えてゴーレムの装甲に触れる
(冷たい…)
「このゴーレムの聖なる力…邪を滅する事のみに特化してる…どう思いますか…昔の共和国の独裁者たちは皆、邪なる者を滅する事を目標として力を手に入れようとしました。
力を手に入れるために他人を殺さねばならなかった。手に入れた力を奪われまいとする為にまた他人を殺さねばならなかった。
この子たちはそのような正義の独裁者の悲哀を思い起こさせます。
私は邪悪とは何の事なのか分からなくなってしまいます…」

(ここもいつ再び攻撃されるか分からない…以前のこの要塞攻略の作戦で指揮官が攻撃を取り止めたのは、イザベラの意見を信用したからではありませんでした。ここは実質は、帝国軍がそう命令さえしてしまえばいつでも要塞となるのだから…)
「…いえ、答え無くても結構です…今のは独り言みたいなものですから…ところでその魔導書は面白そうですね。私も昔それに似たようなものを持ち歩いてた時がありました。」
カァラが今までに最も力をいれた研究が呪文の省略についてである。そのためイザベラが持っているものがどういう類いのものなのかすぐに分かった
「先ほど面白い魔術師がここに居ましたね。あなたの魔術と正反対の術を扱う魔術師です。あなたがあの魔術師の術を取り止めさせたのですか?今は病院の中にいるのでしょうか?」
カァラはそう聞くと答えを待たずに病院の方に向かった
241紅羽 ◆KUU/KZ07xo :05/02/28 21:10:40
>237
紅羽は、さっき自分がこの格好に着替えた部屋の前に移動していた。
「ん〜!楽しかったなぁ〜」
軽く伸びをして、大きなあくびをする。その瞬間、

>「植物如きが…人間に歯向かうな!この雑草野郎!!!」
>叫びながら雑嚢に詰めた手榴弾のピンを抜き、雑嚢ごと根元に投げる。
>顔を腕で庇いながら後ろに飛ぶと、その直後に爆風と灼熱が体を襲う。
「うわっ!?……まさか、自爆攻撃?……そんな訳ないか、多分生きてるでしょ…。」
まぁ、紅羽にとっては正直どっちでも良かったのだが…。

紅羽は部屋に入り、銃やナイフを外し、アタッシュケースとバッグにそれぞれ仕舞う。
そして、コートとズボン、シャツを脱ぎ、それらも綺麗にたたんでバッグに仕舞う。
最後に、仮面を外す。
「あぁ……怖かったぁ……。」
紅羽は、半泣きになりながら体を小さく震わせる。
さっきまでの強気で残酷な紅羽はどこに行ったのだろうか…?

「……うぐっ、泣いてる場合じゃない…。」
手早く着替え、さっき、看護婦に着せられた看護服を持って、休憩室に向かう。
『皆さんは危険なのでここにいてください!』とだけ言って、出て行ってしまったので、
もしかしたら心配しているかもしれない。一応、顔を出しておいた方が良いだろう。
>236
白くて小さなネズミをルイから受け取り、手の上で遊び回す。
「ああそっか。アレをやってる時の映像記録ってあんまり無いんだっけ。じゃ、見ててね」
ガリーナはラットを両手で包み込むと、ふうと息を吹き込んだ。これくらいならば気分が高揚することも無い。
「広げる前に言うけど泣かないでね」
そうして手を広げてみせる。ラットの体がみるみる湿り、ねじれ、みしみしと縦に伸び始めた。
前脚が腕になり、尾が尾てい骨へと巻き戻り、いつしか手の中には体長17cmの男性が生まれた。
全裸でぶるぶると震え、表情は呆としており、『彼』はじっとルイの方を見上げている。
「経験則から言わせてもらうと、この変化が痛みをもたらすことは殆ど無いみたい。恨み言は何度も聞かされたけどね。
知性や感情を備えた人間が生まれる確立は材料によってまちまち。既に死んでる場合もあるわ。
一般的に泥土やごく単純な生産物からは鈍くて愚かな人間が、料理や薬品からは知能の高い狂人が生まれる。
動物から人間を作ればそれなりの人手にはなるかな。期待してたけどロボットは性格が悪かった。
日常使っている愛用品から生まれた人間とは親友にだってなれるわよ。何だか気が合うの」
ラットが人間に変わった後も、ガリーナは変わらず手の上で遊び回している。
『彼』はぱくぱくと、何かを言いたそうに口を開いた。
「る、い。るい。るい。るい。るい。るい。るい。るい。るい。るい」
「ルイの名前を知ってるみたい。私があなたを呼ぶのを聞いていたのかも」
「るい。るい。るい。るい……」
「でもこれじゃ鳴き声ね。どちらにせよ、ある程度の質量が無いとマトモな子は生まれないってコト」
無論、これはデメリットにもメリットにもなり得る。
敵の無力化が目的の場合は大きな助けとなるからだ。
(イザベラ)
>240
>「先ほど面白い魔術師がここに居ましたね。あなたの魔術と正反対の術を扱う魔術師です。あなたがあの魔術師の術を取り止めさせたのですか?今は病院の中にいるのでしょうか?」
>カァラはそう聞くと答えを待たずに病院の方に向かった
「…ちょっと待って」
イザベラが指を鳴らすと、装甲兵達がカァラの行く手を遮った。
「負傷兵を引き取りに来た、というのは信じるわ…でも、貴女は共和国、私は帝國。敵対関係にあるものが堂々と真正面から乗り込むのは、感心出来ることではないわ」
別に負傷者を引き取りに来たのは構わない。だが、負傷兵や捕虜の引渡しは定期的に互いの上層部が様々な交渉を経て、行われるものである。
それを直接カァラが何の抵抗もなしに行っては、色々と拙い事が起きる。帝國としては共和国に取られた捕虜を取り返したいのに、その交渉材料である共和国の捕虜が
何の見返りもなしに、共和国に戻るという事態は避けたい。
「貴女はあのカイザーとかいう子と同じなのかしら?堂々と真正面から乗り込む人がいるものですか…大体、貴女は魔術師なんでしょう?其処のところをちゃんと考えて欲しいわ」
そう言うと、イザベラはカァラに改めて向き直った。
「今日のところはお引取り願うわ…それと、貴女が気に掛けている魔術師は近々否応無く、戦場で会うこととなるでしょうね。そう急く事は無いわ」
(名無しの看護婦達)
>241
>一応、顔を出しておいた方が良いだろう。
紅羽が休憩室に戻ってくるなり、看護婦達は彼を縛り上げた。
突然の出来事に、紅羽は全く対処できず、看護婦達になされるがままとなった。
「先生…急に消えるだなんて」
一人が言い
「卑怯…」
もう一人が言い
「だから…」
更にもう一人。
「「「色々と覚悟してくださいね?」」」
看護婦達の手には様々な可愛らしい服が握られていた。
ふりふりレースのエプロンに、ゴスロリ、チャイナ服、メイド服、体操服(女子用)、セーラー服にブレザーetc…
数え上げれば切が無いほどのファンシー&プリティーな服が揃っていた。その全てを看護婦達は紅羽に着せようというのだ。
しかも魔装カメラまで用意してあり、準備は万端…彼女達のお楽しみはまだまだこれからであった。
(名無しの看護婦達)
>241に追記
「あ、そうそう…どうせ可愛らしい格好をさせるなら」
一人の看護婦が化粧ポーチから色々な化粧道具を取り出した。
「お化粧もしなくちゃね?折角の美人が引き立たないわ」
看護婦達は紅羽にファンシー&プリティーな服を着せる留まらず、彼に化粧まで施した。
246 ◆tve80dOjxM :05/02/28 21:50:45
>245
訂正
>241に追記 ×

>244に追記 ○

各自脳内補完を宜しくお願いします…
247紅羽 ◆KUU/KZ07xo :05/02/28 22:03:33
>244 >245
「ただいま戻りました…!少し、院内の様子を見てきました。皆さんは大丈夫でした……か…?」
自分は、今まで何をしていたのか説明をしていたはずだった。
しかし……気付けば、自分は何故か縛り上げられていた。
「え……えぇぇぇぇぇ!?」

>「「「色々と覚悟してくださいね?」」」
>看護婦達の手には様々な可愛らしい服が握られていた。
「えっ!?いや!ちょっ……!人の話を!聞い……わぁぁ!?」
看護婦達は、紅羽の話を微塵も聞いていない。
自分に、女物の可愛い服を着せる事しか考えていない…。

>「お化粧もしなくちゃね?折角の美人が引き立たないわ」
>看護婦達は紅羽にファンシー&プリティーな服を着せる留まらず、彼に化粧まで施した。
「え…?ま、まさか……さすがに、そこまでしませんよね……?
そこまで……しな……い……いやだあああああ!!!」
病院内に、紅羽の叫び声が響き渡った。
248ジャカ ◆rMEfPDyTEI :05/02/28 22:31:02
>230
>「いい夢を見なさい…それじゃ、お休みなさい」
>そう言い、看護婦は少年のベッドの周り仕切りのカーテンを閉じた。そして、法術師と共に兵士に向き直る。
「…」
ベッドに入ったはいいが、ジャカは寝付けそうにない。腹部の痛みもさることながら、何か思うところがあるのだろう。
そっと自分の頬の辺りを撫でる。あんなに優しい言葉をかけられたのは幾年ぶりだろうか。
「でも…な」
あの看護婦のことを思うと何より一番最初に浮かぶのは、優しい暖かみ溢れた表情ではない。
廊下で、殺そうとした、あの時。あの時、看護婦は俺のことを何と捉えたのだろう。今となっては知る由もない。
だが、あの時のあの表情。あの、人間ではない何かを見るような表情を思い出すと…。
「やっぱり、俺には合わないかな」
優しくされるのはいまいちしっくり来ない。優しさをかけてくれた相手がそのような人なら、尚更だ。
運良く窓際のベッドだったので、窓から空を見る。夜空、やや白みがかっている様にも見える。やがて明けるのだろうか。
「長い夜だったな…」
溜まっていた疲れと相俟って、やっと眠気が感じられるようになった。今寝たら、起きるのは昼頃だろうか──。

「──ってダメだダメだ」
忘れていた。今日はあの日だった。昼まで寝ていてしまったら、最悪日没までに間に合わないかもしれない。
とりあえずこの病院への用件を早めに伝え終え、本陣に戻らないと。
起きあがるとカーテンを少し開け、隙間から首を出しそっと看護婦と法術師の行動を確認する。
一瞬目にした、おかしな格好をした兵士の治療の真っ最中だった。さっき運んだ兵士の治療はもう済んでいるようだ。
気づかれぬようそろりとベッドから降りる。鎮痛剤と注射器を少量くすねると、音を立てぬようゆっくりとドアを開けた。
無事脱走完了。腹の痛みがあるとはいえ、戦闘の素人に気付かれるほど隠密術は衰えていない。
血で染まった廊下。通る人物通る人物怪訝な顔をしている。その中央で転がっていた愛用の刀を拾い上げ、鞘に差し込んだ。
「とりあえず、ここで一番の権力者の人…院長さんか婦長さんに会わないとな」
医学的精鋭を一団体ほど前線に送って貰えるよう話を通すだけ。特に時間もかからないだろう。
痛む腹を庇いながらもジャカは再び、病院内を忍び足で徘徊する。
道行く看護婦に話を聞いてみたりもしたが、所在の情報は得られそうになかった。
249カァラ ◆mRmMX8Kgoo :05/02/28 22:38:59
>243
>イザベラが指を鳴らすと装甲兵たちがカァラの行く手を遮った
カァラは間抜けな事に正面から装甲兵にぶつかってしまった
「ぶ…」
>「負傷兵を引き取りに来た、というのは信じるわ…でも、貴女は共和国、私は帝國。敵対関係にあるものが堂々と真正面から乗り込むのは、感心出来ることではないわ」
カァラはイザベラの方に向き直って言った
「あなたは軍人ですが、優しい。恐らく私を傷つけてまで止める事は出来ないでしょう…此処では帝国、共和国の違いなどないと言ったのはあなたではありませんか それに、今は戦争中ですから、負傷兵もたくさん出てくるはずです。
一刻を争う急患がたくさん居るはずですし、一人でも多くの患者の命を救いたいのならば、私なんかに構っている暇は無いのでは無いでしょうか?
それに、もしあなたが私を攻撃するというなら私はそれなりに反抗します、ここで戦闘すれば病院にまで被害が届くかもしれませんよ、ほら、ネズミもいざとなれば猫を噛むというでしょう…」
>「貴女はあのカイザーとかいう子と同じなのかしら?堂々と真正面から乗り込む人がいるものですか…大体、貴女は魔術師なんでしょう?其処のところをちゃんと考えて欲しいわ」
「カイザー?どこかで聞いた事が…ともかく、魔術師が治療を受けてはいけないという決まりは無いでしょう?ちょっと今鬱ぎみなんです…」
250「NAVY」 ◆..OhPeBexU :05/02/28 23:43:01
>242
ルイはガリーナの手から、ブレスによって変身したラット人間を摘み上げ、
それを図面の上へゆっくりと降ろした。
口元には微かな笑みを浮かべ、『彼』の観察を始める。
「驚いたね、本当に人間のミニチュアだ。どんな物でも変身させられるのかい?」
床に移されても尚鳴き続ける『彼』の頭をそっと押さえて黙らせると、
「噴射装置は機械語詠唱で魔力の『レール』を敷くから、砲身が化けちまったりはしない。
只、有効射程が延びる代わりにブレス自体は薄まる」
腰にぶら下げていた、ガンブルーの鈍い光沢を放つ無骨な回転式拳銃へ手を掛ける。
「そうなると変身が一部分だけだったり、不完全だったりするかも。
どっちがグロテスクだ? こいつと、それと……」
そう言ってルイはガンベルトからリボルバーを抜き、『彼』の傍に置いた。
小人が、自分より一回りほど大きい拳銃へ這い寄っていく。

「どうして君が、皆にああも危険視されるのか……良く分かる。
君の存在は人類に対する冒涜だ。何故パンボリック氏がそれを容認するのか理解出来かねる。
だけど僕は君を否定しない、否定する権利を持たないから。
詰まらない話をしてしまった様だね。こいつのお礼に、ちょっとした手品を」
置いた拳銃を再び拾い上げ、今度は天井へ向ける。
そして、人差し指で慎重に引き金を絞っていく。絞り切った所で、
「弾は出ない、撃鉄も動かない。見ての通りのシングル・アクション」
シリンダーを振り出して弾丸が一発装填されている事をガリーナに示すと、
銃口が『彼』へ向く様にしてそれを置いた。
ルイは両手を上げ、拳銃から離れると、
「跳弾に気を付けて、端に寄って」
撃鉄が下りたままの拳銃に『彼』が近付き、銃口を覗き込んだ。
瞬間、砲声と共に、鮮紅色の血液が図面を染める。
数多の肉片と化した『彼』は図面の上一杯に広がり、『彼』を吹き飛ばした銃弾は
荷台のビニール・カーテンに風穴を開けた。
「折角化けさせて貰ったのに悪かった。今度、もっと綺麗で静かな奴を頼むよ」
>249
>「カイザー?どこかで聞いた事が…ともかく、魔術師が治療を受けてはいけないという決まりは無いでしょう?ちょっと今鬱ぎみなんです…」
どう見ても欝気味には見えないカァラ。それ以前に、魔術というものは術者の状態によって左右をされるものであり、欝状態で戦場に出てくる
魔術師などいないだろう。あからさまにカァラは嘘をついている。しかし、かといってイザベラにカァラの考えを知る術など無い。
どうしたものかと考えるが、一向に言い考えが浮かばない…
「…率直に聞くわ。貴女の真の目的は何?何故其処までして野戦病院に拘るのかしら?少し怪しいわよ…」
怪訝な顔でカァラに問い質すイザベラ。どうも合点が行かないのである。何故、カァラはこれ程までに野戦病院に拘るのだろうか?
恐らく、研究熱心の彼女のことだから、そういったことについてのいい研究素材でも探そうかと考えているのかもしれないが、魔術師にとって
術式を調べ上げられるのは、手品師のタネを解き明かすのに等しい。どうしても避けたいことであり、強力な魔術の術式ともなれば国家機密である。
現に、イザベラの衛生白書の項の幾つかには、彼女の最高傑作と言っても過言ではない召喚獣の術式や、魔術や法術の術式が数多く記されている。
流石にそれを調べ上げられるようなイザベラではないが、其れを調べ上げられるような事態に発展するのはどうしても避けたい。
とある召喚獣の術式は二度と使わないと、封印したものまでもあるのだから…それがカァラの手に渡れば、どうなるか分かったものではない。
特に、『Michael』と『Lucifer』の二体の召喚獣の組成術式は解読に何十年かかるか分からないが、解読されればこの戦争は収拾がつかなくなるだろう。
『企業』を以ってしても到達することが出来なかった至高の領域…百年程前に作り上げてしまった二体の召喚獣が、一世紀以上も経つと言うのに、未だにイザベラの重圧となっている。
一方は限りなく正義であり、もう一方は限りなく邪悪である二体の召喚獣…製作者であるイザベラでさえ、この二体を制御できない。
研究熱心なカァラにこの二体の術式が知られてしまえば、更なる強化を加えられ、共和国の首脳部は嬉々として戦争に投入するだろう。
ドワーフの科学に加えて、エルフの至高の域にまで達した召喚術を共和国が手に入れれば、帝國の存在など微塵も感じさせないほどの『文明の破壊』が起こるだろう。
そして、強大な力は暴走を始め、いずれ世界を滅ぼす……自分がいけなかったのだ。あの『本』を、項を捲りさえしなければ…

「兎に角、貴女も立場が上の人間なのでしょう?明確な目的も無しでは此処は通せないわ」
>250
>「噴射装置は機械語詠唱で魔力の『レール』を敷くから、砲身が化けちまったりはしない。
>只、有効射程が延びる代わりにブレス自体は薄まる」

ちょうど先ほどから考えていたことを、ルイに説明してもらう形になった。
『最悪のブレス』による自滅の心配は無いようである。ただ、

>「そうなると変身が一部分だけだったり、不完全だったりするかも。
>どっちがグロテスクだ? こいつと、それと……」

「そういう困った事態は幾らでも考えられるわね。やろうと思えば楽しいことに出来るけど…
ま、狙ってやるにしてもパンボリックに嫌われない程度にするから」
人間に変えられたとあれば、例えソレの元が何であれ人間と呼ぶしかない。
ベッドや灯油から変化したモノだとしてもブレスを浴びたが最後、彼らは臓器と脳とを手に入れる。
感情まで持ってしまえば人間以外の物体だと認識することは困難だ。
ルイの言う通り、ガリーナの存在は人類の脅威である。
それは直接に世界を滅ぼしたり種を絶やしたりする恐ろしさではなく、存在しているだけで許し難い脅威。
分かっている。パンボリックが何故私を選んだのかも分かっている。彼は病気なのだ。だから私を許容する。
パンボリックは私ではなく、私が内包するタブーを愛している。だけどそれで構わない。
「君は本当には愛されていない」、一度使用人にそう言われたが。その間違っているというのが良いのだから。
(オゼロも分かってないなあ…)

>「詰まらない話をしてしまった様だね。こいつのお礼に、ちょっとした手品を」

そう言い残してルイのやってみせた行動は、奇妙としか言いようの無い光景だった。

「―――何をやったの」
銃口からは白煙が昇っている。拳銃はひとりでに弾丸を発射し、ひとりでにネズミを殺した。
魔術か、それ以外の力か。ガリーナに今起こった事象を説明することは不可能だった。
(コイツも何かの異端なのかしらね)
改めて、自分と同じケージに物怖じせず入ってきたルイを見定めた。
「…今度はお年頃の眠り姫でも贈ってあげるわ。忘れてなかったらね」
253カァラ ◆mRmMX8Kgoo :05/03/01 12:12:38
>251
> 「…率直に聞くわ。貴女の真の目的は何?何故其処までして野戦病院に拘るのかしら?少し怪しいわよ…」
(おや…)
カァラが鬱ぎみだというのは、あながち嘘では無かった。先ほどの魔術師が撤退した事にひどく落ち込んでいたのだ。
カァラの魔術は基本的に気分に左右されるものでは無かったが、その代わり思考力や判断力がだいぶ鈍っていた。
普段のカァラならばもう少しイザベラに近づく前に呪文を組んでおいたり、何かしら身を守る準備をしたはずである。
共和国の負傷兵を引き取りに来たというのも本当であったし、
さらに理由を加えれば最前線で一人で居るよりも、戦闘が禁止(なにより高位のエルフであるイザベラによって禁止されている)されている病院の中に居た方が安全だと踏んだからであった。
もちろん今の病院は闇の精霊の仕掛けが敷きっぱなしにしてあるわけだからむしろ危険なのだが、カァラはあまりに落ち込んでいたのでその事を忘れていたのだった
>「兎に角、貴女も立場が上の人間なのでしょう?明確な目的も無しでは此処は通せないわ」
「いえいえ、立場が上といっても、私はそもそも軍人ではありませんから、まあここでこうしてあなたの兵士に囲まれているのもとても怖いのですが、
私も2.3.恨まれるような事をしまから本国でもいつどんな輩が策謀をしかけてくるか不安で怖くて仕方がありません。病院に癒しを求めているのかもしれませんね。おっと話がそれてしまいました」
カァラは持ち前の観察眼から、イザベラのどこか不安げな様子を見て取った。
(何か恐れていますね、興味深いです、ここでうまくやれば何か相手の弱みを握れるかもしれません)
カァラはその相手の様子を察し、そう考えると落ち込んでいた調子も、元に戻って来た
「少しでも負傷兵が少ない方があなたの負担も軽くなるでしょう?
もしかして、負傷兵を交渉の材料として取って置く事を、患者の治療の効率よりも優先しているのでしょうか?、いえ、いえ、あなたに限ってそんな事はないはずです」
カァラは相手を動揺させるつもりである。さらに怪しい態度をとってこちらが何かの情報を掴んでいると思わせようとしていた
(さて、患者の事を最優先するはずのこの方がここまで私に構っています、これは病院に私を入れてはならない理由がありますね。先ほどの術者の事もありますし…
病院に先ほどの様な強力な術者が居るということは、もしかして病院はすでに要塞として利用されているのかもしれません。それで今は戦力が配置されていて、何かの作戦に使われている、だとしたら…)
そこまで考えて、カァラは、ふと、先ほどカイザーという名前が上がったのを思い出した
(カイザー…カイザー、そうだ、カイザーは今回の作戦で配備される事になった召喚者の名前ですね、?なぜこの人が知っているのでしょうか)
「先ほどカイザーと言いましたが、あなたはなぜその名前を知っているのでしょうか?。
それにカイザーと私が同じだというような事を言いました。あなたは今回初めて配備される事になった召喚されし者と知り合いなのでしょうか?」
カァラは身の危険を感じていた。もし病院が既に要塞となっているのならば、自分は今此処で殺さねかねない。
カァラはイザベラが私を止めているのは、私がこれ以上病院に近づいて殺されるのを止めようとしている可能性も考えていた
(今となっては遅いですね。目の前に強力なエルフが居ては、魔術を準備するにも下手に動けません…怖くて背中を見せる事も出来ません)
最も、誰が見てもカァラが怖がっているようには見えないだろうが
254吉田茂:05/03/01 13:16:29
>>1君は分かっていないね
戦争というのはリアルタイムでなくてはいけないのだよ
チャット状態禁止とは片腹痛いね
君の性根を叩き直すために私はここで真の戦争をするよ
君は私の行動から私の言わんとしていることを感じ取りたまえ
255LEGEND OF BLUE KNIGHT ◆Fcx8z3JGhI :05/03/01 13:20:11
これぞ戦争
                          __,,:::========:::,,__
                        ...‐''゙ .  ` ´ ´、 ゝ   ''‐...
                      ..‐´      ゙          `‐..
                    /                    \
        .................;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;::´                       ヽ.:;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;.................
   .......;;;;;;;;;;゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙       .'      吉田                       ヽ      ゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙;;;;;;;;;;......
  ;;;;;;゙゙゙゙゙            /                           ゙:                ゙゙゙゙゙;;;;;;
  ゙゙゙゙゙;;;;;;;;............        ;゙                              ゙;       .............;;;;;;;;゙゙゙゙゙
      ゙゙゙゙゙゙゙゙゙;;;;;;;;;;;;;;;;;.......;.............................              ................................;.......;;;;;;;;;;;;;;;;;゙゙゙゙゙゙゙゙゙
                ゙゙゙゙i;゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙;l゙゙゙゙゙
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ノi|lli; i . .;, 、    .,,            ` ; 、  .; ´ ;,il||iγ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                 /゙||lii|li||,;,.il|i;, ; . ., ,li   '      .;    il,.;;.:||i .i| :;il|l||;(゙
                `;;i|l|li||lll|||il;i:ii,..,.i||l´i,,.;,.. .il `,  ,i|;.,l;;:`ii||iil||il||il||l||i|lii゙ゝ
                 ゙゙´`´゙-;il||||il|||li||i||iiii;ilii;lili  i;;;,,|i;,:,i|liil||ill|||ilill|||ii||lli゙/`゙
                    ´゙`゙⌒ゞ;iill|||lli|llii:;゙  lll |||l||ilil||i|llii;|;_゙ι´
256吉田茂:05/03/01 13:21:39
>>255
名前ではなく私のAAを加えたらどうかね?
それでは悔しいという感情が湧かないよ
257LEGEND OF BLUE KNIGHT ◆Fcx8z3JGhI :05/03/01 13:23:24
それもそうだな。御指摘ありがとう
258吉田茂:05/03/01 13:27:32
>>257
礼儀正しいね
ところで君は私に何の恨みがあるのかね?
もし私がこのスレッドを侮辱したと思って嫌っているのなら君もスレッドの住人に嫌われているという自覚を忘れずに持ってくれたまえ
259LEGEND OF BLUE KNIGHT ◆Fcx8z3JGhI :05/03/01 13:30:34
>258
俺はこいつの名を借りてるだけです
しかしあなたは煽りがうまいですね
260吉田茂:05/03/01 13:32:36
>>259
私は煽っているつもりはないのだけれどね
思ったことをそのままストレートに言っているだけだよ
煽りだなんて心外だね
261吉田茂:05/03/01 13:49:11
ごめんなさい
もう帰ってもいいですか。
262名無しになりきれ:05/03/01 13:49:51
ヘタレすぎてワラタ
263名無しになりきれ:05/03/01 13:50:34
どうぞ、お帰り下さい。
264吉田茂:05/03/01 13:51:09
>>261
いいよ

>>262
それはよかったね
私は君の滑稽な姿に笑わせてもらったよ
265吉田茂:05/03/01 13:55:03
>>263
君も私の騙りがつまらなかったのだね

>>261
私の名を語る以上は口調を崩さないで欲しいものだね
266名無しになりきれ:05/03/01 14:40:34
吉田ー?
267吉田茂:05/03/01 14:57:03
>>266
何の用だね?
268名無しになりきれ:05/03/01 15:03:59
実はここのキャラハンの中の人だったりしない?
269颶風 ◆/oj0AhRKAw :05/03/01 15:06:44
>116 戦乙女
>「負傷者の搬送ご苦労様ーーー!!!!
>今の急患受け入れ口は大変混雑しているので、屋上に上がってくださいーい!
>そこならば充分なスペースもありますからーーーー!!!!」

「屋上、ですか・・・・」
 思ったよりも、魔力の消耗が激しい。
蓄えていた分はとうに尽き、ネクロマンサーの魔方陣の余波を食らって、周囲からの補充もままならない。
今は、生命力を魔力に変換して凌いでいるが、それもそれほど長くは持たない。
この後、しばらく休憩を取る必要があるだろう。
 ・・・・これ以上無理をすれば、おそらく今の姿も保てなくなる。
脆弱な、『素』の姿に戻らねば為らないとは、何たる屈辱。
「下手に、こちらに来ない方が良かったですかねぇ?」
 そう呟きながら、ゆっくりと飛空挺を上昇させる。

>130 ヴェルター
 轟音、炸裂。
反射的に、飛空挺の周囲に防御幕を張り巡らせる。
いくら戦闘能力の無いカリークだからと言って、最低限の防御装備が無い訳ではない。
 爆風や建物の破片が、防御幕の外側に当たって滑り落ちる。
魔力を流し込む為のパネルの前で、颶風はがくりと崩れ落ち、膝を突いて堪えた。
「くっ!」
 只飛ぶよりも、防御幕を張りながらの飛行の方が、当然ながら操者にかかる負担は大きい。
肩口を飾る房羽根が、ごそりと抜け落ち、飛空挺の床に散った。

 ふらふらと危なっかしく揺れながら、何とか飛空挺を屋上に降ろす。
最後は堪えきれずに、いささか乱暴な着地になってしまったが。
「もぅ、限・・・・界・・・・」
 緊張の糸が切れ、颶風は飛空挺の床、操縦パネルの前に倒れ伏した。
気を失った彼女の周囲に、抜け落ちた純白と青の羽根と毛が散乱する。
 獣人らしく、それなりに筋肉が附いていた体躯が萎み、華奢な人間の女性の物に変わる。
頑丈な鋭いくちばしもゆっくりと縮んで、やつれてはいるがシミも皺も無い、白い皮膚へと置き換わる。
そこに倒れているのは、一児の母とは思えないほど若々しい女性。

 ・・・・颶風の種族は、人よりも遥かに早く生長し、そして死んでゆく。
しかし、幾つかの条件を満たした場合のみに限り、
肉体能力のピーク時の姿を保ったまま、長い時を過ごす事が出来る体に『作り変えられる』。
もっとも、異界に召喚された今では他の者と、それほど寿命は変わらないであろうが。
 半ば偶然、半ば強制的にその条件を満たしてしまった颶風である。
『普通に年老い、死んでいく』事を、より強く望んでいる事は言うまでも無い。

 閑話休題。
 何とか屋上まで飛空挺を動かした物の、颶風はそこで力尽きている。
このまま長く放置されておけば、本陣から輸送してきた負傷者共々、
死に至る可能性は0ではない。

行動:魔力切れの為、獣化が解ける。現在意識不明。
270吉田茂:05/03/01 15:06:55
>>268
そうだよ
271吉田茂:05/03/01 15:12:34
書き込んだというのに更新されないな
もしかすると同じ書き込みを二度してしまったかもしれない
272吉田茂:05/03/01 15:18:48
オナニー
273吉田茂:05/03/01 15:19:18
今度は書き込めた
ということは

レス
274吉田茂:05/03/01 15:20:18
オ○ニーレスと書き込もうとすると書き込めないようだね
275吉田茂:05/03/01 15:23:06
>>269
君のレスはレスされた当事者ぐらいしか読む気が起きないだろうね
周りのことを考えられるだけの器と空気を読めるだけの知能があるのなら面白い長文レスを返したまえ
○ナニーレスはあまり関心しないね
276吉田茂:05/03/01 15:24:45
やれやれやっとレスできたよ
今まで二回も同じことを打った私の時間を返して欲しいものだね
それにしてもオナ○ーレスという言葉を入れると何故書き込まれないのか不思議でしょうがないよ
277名無しになりきれ:05/03/01 15:26:57
恐らくrockに引っかかってるんだろ。
278吉田茂:05/03/01 15:30:28
オナニ○スレは書き込めるのかと思ったら君の書き込みだったのか

>>277
rockとは何なのかね?
まあ分からなくともオナニー○スという風に一つ伏字にすれば書き込めるようだがね
279277:05/03/01 15:38:11
280吉田茂:05/03/01 15:43:32
>>279
わざわざすまないね
私のレスではなくオナ○ーレスを規制して欲しい心境だよ
281名無しになりきれ:05/03/01 15:50:38
いいから出てけ生徒会長
282名無しになりきれ:05/03/01 15:51:40
やったじゃん吉田、やっと一人釣れたよ
283名無しになりきれ:05/03/01 15:52:25
しょうもな
284名無しになりきれ:05/03/01 15:54:18
釣り厨キテター
(イザベラ)
>253
>「いえいえ、立場が上といっても、私はそもそも軍人ではありませんから、まあここでこうしてあなたの兵士に囲まれているのもとても怖いのですが、
>私も2.3.恨まれるような事をしまから本国でもいつどんな輩が策謀をしかけてくるか不安で怖くて仕方がありません。病院に癒しを求めているのかもしれませんね。おっと話がそれてしまいました」
イザベラは腕組みをし、いらだだしげに指でリズムを刻んでいる。先程からずっとこの調子だ。
カァラはのらりくらりと此方の言動をやり過ごし、掴み処の無い雰囲気を醸し出しながら、あくまでマイペースの物事を運んでいる。

>「少しでも負傷兵が少ない方があなたの負担も軽くなるでしょう?
>もしかして、負傷兵を交渉の材料として取って置く事を、患者の治療の効率よりも優先しているのでしょうか?いえ、いえ、あなたに限ってそんな事はないはずです」
「…私だって出来ることなら彼らを本国に帰してあげたいわ。でも、上層部はそのまま彼らを捕虜にし、本国の捕虜収容所に送ることを私達に命令しているわ…
私だって軍人の端くれ。命令は絶対だし、何よりも、指揮官が命令に背く訳にはいかないわ。それに、彼らを独断で引渡したともなれば、野戦病院の補給にも係わってくる…」
この五年間は百年の月日に思えるほど、険しい日々だった…総督府で野戦病院設立に奔走していた時、色々な妨害を受けていたことがあった。
書類通りの予算が下りなかったり、人材を集めようにも上からの圧力があったり…様々な妨害を受けながらも、イザベラは何とか野戦病院を設立したのであった。
既に彼らの陰湿な嫌がらせは嫌と言うほど身に染みている。ようやく設立出来た野戦病院を、彼らに穢されたくは無い。その為にも、イザベラは迂闊な行動を取る事が出来ないのであった。
自分が下手なことをすれば、彼らからしてみれば格好の餌となってしまう。もし、独断で捕虜を逃がしたともなれば…どのような圧力を掛けられるか分かったものではない。
「貴女が考えているほど単純ではないのよ…こっちは。色々と古い御偉方には煙たがれているんだから…」
そう力無く呟くイザベラ。400歳以上という高齢なエルフながらも、若々しい外見を持つイザベラではあったが、その呟きには永い年月を感じさせる重みがあった。

>「先ほどカイザーと言いましたが、あなたはなぜその名前を知っているのでしょうか?。
>それにカイザーと私が同じだというような事を言いました。あなたは今回初めて配備される事になった召喚されし者と知り合いなのでしょうか?」
「ああ…その子は何を考えたのか、単独で野戦病院に来たのよ?しかも正面玄関から…まったく、仮にも敵地のど真ん中だって言うのに…」
溜息と共に、心底呆れたと言わんばかりの顔をする。滅多なことでは驚かないイザベラではあったが、カイザーの奇行には流石に舌を巻いた。
「今頃は野戦病院を後にしているかもしれないわね…私が追い出しちゃったから」
イザベラはカイザーと出会った時の事を思わず思い出してしまい、くすくすと笑ってしまった。

「それと…あの精霊の良からぬ方陣は私が解呪します。それについてはあしからず」
イザベラは衛生白書を手に二言、三言唱えると、空間に白い魔法陣が一つだけ顕現した。
「仲間とは駅で別れろ…朝、街へ入るときは上着のボタンをきちんと留めろ、ねぐらを探せ、たとえ仲間がノックしようとも、いいか、ドアは開けるな…其れよりまず」
イザベラの言霊に反応し、空中に浮かんでいた方陣から白い燐光が漏れ出し始めた。
「痕跡を消せ!…どこであれ、親に出くわしたら素知らぬ顔でやり過ごし、角を曲がれ、気付かぬ振りをして、親に貰った帽子を目深に被れ
…見せるな、いいか、顔は見せるな…何よりもまず」
方陣の中心に、装甲兵が顕現した時と同じように、淡い光を発しながら何かがこの世に実体を持ち始めていた。
「痕跡を消せ!肉があれば其れを喰らえ!取っておこうと思うな!…いいか!痕跡を消すのだ!」
最後の力強い言霊が実体を持ち始めた何かに命を与えた。白い霞であったそれは、はっきりとした実体を持ち、この世に完全に顕現していた。
装甲兵とは違い、それは完全な人の姿をしたものではなかった。背には八枚の光粒子で形成された羽が備わっており、頭部、腕も四つずつある。
更なる相違点は、全身を覆う装甲板には金色の壮麗な装飾が施されており、体を形作る装甲板も薄く、全体的にほっそりとした印象を受ける。
装甲板で形作られた頭部は、帝國軍兵士が着用するフルフェイス型兜に似ており、がらんどうな頭部内には淡くエメラルドに輝く魂魄が見て取れた。
>285の続き
「智天使(ケルビム)…ラジエル顕現化」
四つの頭部に光り輝く輪が出現し、背の光粒子の羽が一層輝きを増した。それは神々しい『天使』そのものの姿であった…だが、神話に登場する天使とは違い、
その外見は無機質なものであった。全身を魔術文字が刻み込まれた魔道装甲板で装甲化され、がらんどうな内部には賢者の魂が封入されているのである。
それは術者であるイザベラの命令を忠実に聞く僕(ゴーレム)であり、魔術による支援と索敵を担当する兵器であった。
聖書に描かれているほど高尚な存在ではないし、血肉の通わない鉄屑にも等しい存在であった。
「ラジエル。命令よ…大型束縛系方陣の解呪を行いなさい」
命令を受けたラジエルは背中の八枚の光粒子状の羽を展開すると、白い軌跡を残して飛び去っていった。
「あとはあの子が方陣の解呪を行うから心配ないわ…それと、貴女が何もせず、且つ捕虜を勝手に引き取らないというのなら、私の客人として特別に当野戦病院に招待します」
カァラに向き直り、にっこりと微笑むイザベラ。
「別に身構える必要はないわ…誰も貴女の命を奪うおうだなんて考えている訳でもないし、野戦病院は相変わらずよ」
イザベラは衛星白書の項を捲り、二言、三言唱えると、周りに控えていた屈強な装甲兵達は淡い光となって送還された。
「ほら…ご覧の通り。私だって貴女と戦いたい訳じゃないわ」
更に、衛生白書もすぅっと消えた。そして右袖を捲くってみせる。イザベラの細い腕には赤十字を表した刻印が彫られていた。
それは衛生白書の普段の姿であり、使用時以外はこうしてイザベラの腕の刻印に戻るのである。イザベラは袖を元に戻し、野戦病院に向かって歩き始めた。
(名無しの看護婦達)
>247
紅羽にファンシー&プリティーな服と、可愛らしい化粧を施し、散々彼を玩具にした看護婦達は満足していた。
持っていたカメラにも色々なポーズの写真を収めることに成功し、後は後片付け…後片付けが終了すれば、又負傷者の治療に繰出さなければならない。
「先生…何時までもめそめそ泣いていないで、さっさと患者さんの治療に行きましょう?」
看護婦の一人が床にぺたんと座り込み、さめざめと泣いている紅羽の傍にしゃがみ込んだ。
「まぁ…ショックだったとは思いますが、過ぎたことは過ぎたこととして……」
そしてごそごそと何かを取り出し、ぽんと紅羽の目の前の置く。
「新しいことに挑戦しましょう」
紅羽の目の前の差し出されたもの…それは女医の服であった。
「はい、これで患者さんの治療をお願いしますね?」
その言葉を合図に、紅羽はまた看護婦達に押さえつけられ、女医の服を着せると、そのまま彼女達は紅羽を治療室まで引っ張っていった。
288紅羽 ◆KUU/KZ07xo :05/03/01 18:39:11
>287
>紅羽にファンシー&プリティーな服と、可愛らしい化粧を施し、散々彼を玩具にした看護婦達は満足していた。
紅羽はかなりの時間に渡って、女の子の服を着させられて、恥ずかしい格好をさせられてしまった。
しかも、カメラ撮影までされてしまったのだった。
「うっく……酷いですよ……こんなの……。」
紅羽は、恥ずかしさに耐え切れずその場に座り込んでしくしく泣いていた。
確かに、紅羽は他の18歳の男子に比べて、背も低いし、体の線も細くて顔もかなりの童顔だ。
だからと言って、こんな事をされて嬉しいわけがなかった…。

>紅羽の目の前の差し出されたもの…それは女医の服であった。
>「はい、これで患者さんの治療をお願いしますね?」
>その言葉を合図に、紅羽はまた看護婦達に押さえつけられ、女医の服を着せると、そのまま彼女達は紅羽を治療室まで引っ張っていった。
「そ、そんな…!それだけは……恥ずかしくてできな……!わっ!?だ、ダメですって!うわああ!」
結局紅羽は、また何の抵抗も出来ずに女医の服を着せられてしまった。
「い……イヤ……!こんな格好で、患者の治療なんて出来るわけ…!」
しかし、看護婦達は聞く耳を持たない。
(あー……こんな格好を患者さんたちに見られたら……。)
女装趣味の変態と思われるか、女と勘違いされて男にセクハラされるか…。
「……どっちも死んでもイヤだ…。」
289カァラ ◆mRmMX8Kgoo :05/03/02 10:57:03
>285
> イザベラは腕組みをし、いらだだしげに指でリズムを刻んでいる。先程からずっとこの調子だ。
カァラは ゴーレムに片手をついてイザベラの方を見ながら考えていた
(支配権を奪えるとしたらこの一匹、必要な呪文は2、唱える時間は2秒、
支配権を奪い返されるまでの時間は長くて3秒、その間ゴーレムを暴れさせて時間を稼ぐ…次に目を欺く為の呪文、感覚を狂わせる為の呪文、逃げる為の呪文、ここで攻撃系の呪文を仕掛けたら勝てません、…逃げられたら病院に向かいましょう。やはり気になります)
カァラはいつも危険よりも好奇心が勝ってしまう
(用意している魔法は何かあるでしょうか?
呪符…無し 呪文…無し 魔方陣……魔方陣?)
>「…私だって出来ることなら彼らを本国に帰してあげたいわ。でも、上層部はそのまま彼らを捕虜にし、本国の捕虜収容所に送ることを私達に命令しているわ…
私だって軍人の端くれ。命令は絶対だし、何よりも、指揮官が命令に背訳にはいかないわ。それに、彼らを独断で引渡したともなれば、野戦病院の補給にも係わってくる…」
(予想以上に病院への監視の目は厳しいようです。この人なら書類の改竄や、隠れて医療機具や薬や病人を運んだり、は平気でやっていると思ったのですが…)
(随分大事な事を忘れていたみたいですね…解除しておかなければ……闇の精霊、闇の精霊………闇の精霊、闇の精霊………?)
> 「貴女が考えているほど単純ではないのよ…こっちは。色々と古い御偉方には煙たがれているんだから…」
(なかなかゴーレムを奪うために十分なスキがありません…)
「ほう、なかなか自由には動けないものですね」
(これは先ほどとは違った事を考えているようです、不安な感じではありません…的を外してしまったようです…
(…闇の精霊から反応がありません、どうしたというのでしょうか…これはいよいよ危ないです)
>「ああ…その子は何を考えたのか、単独で野戦病院に来たのよ?しかも正面玄関から…まったく、仮にも敵地のど真ん中だって言うのに…」
>「今頃は野戦病院を後にしているかもしれないわね…私が追い出しちゃったから」
(へええ、何とも無謀な… )
> イザベラはカイザーと出会った時の事を思わず思い出してしまい、くすくすと笑ってしまった。
(さて、今度は笑っています、また的を外してしまったようです…となると何が…)
> 「それと…あの精霊の良からぬ方陣は私が解呪します。それについてはあしからず」
「はは…ばれてましたか」
(ゴーレムを奪うのに始めのに混乱させる呪文という手もありますが…)
カァラはここから脱出し病院の様子を確かめた後、逃亡する計算をしていた
>「仲間とは駅で別れろ…朝、街へ入るときは上着のボタンをきちんと留めろ、ねぐらを探せ、たとえ仲間がノックしようとも、いいか、ドアは開けるな…其れよりまず」
イザベラの言霊に反応し、空中に浮かんでいた方陣から白い燐光が漏れ出し始めた。
「痕跡を消せ!…どこであれ、親に出くわしたら素知らぬ顔でやり過ごし、角を曲がれ、気付かぬ振りをして、親に貰った帽子を目深に被れ
…見せるな、いいか、顔は見せるな…何よりもまず」

(やはり呪文省略の一種ですね、あるいは暗号化の可能性もありますが…)
>「智天使(ケルビム)…ラジエル顕現化」
四つの頭部に光り輝く輪が出現し、背の光粒子の羽が一層輝きを増した。それは神々しい『天使』そのものの姿であった…
(おや、この召喚獣は知っています…)
カァラはイザベラが命令をしているちょっとした隙をついて
ケルビムにちょっとした仕掛けをした
それは単純なセンサーと通信魔法で、ケルビムに闇の気が近づくとカァラに反応を送る仕掛けだ
(ふう、流石にこの状況では複雑なものは組めませんからね、彼女には見つからなかったようです、もし闇の精霊が未だに私の命令を聞いているならば、このゴーレムが魔法陣を破れば、闇の精霊が魔法陣を修復しに来るでしょう、
そうすると闇の精霊とケルビムははち合わせてしまいますから…ケルビムが勝ってくれるといいのですが…)
(あの本を彼女の手から落とすのもいい手かも知れません…算段は整いました、始めますか…3…2…1)
290カァラ ◆mRmMX8Kgoo :05/03/02 10:58:53
>「別に身構える必要はないわ…誰も貴女の命を奪うおうだなんて考えている訳でもないし、野戦病院は相変わらずよ」
イザベラは衛星白書の項を捲り、二言、三言唱えると、周りに控えていた屈強な装甲兵達は淡い光となって送還された。

(アハ?)
カァラは手をついてよっかかっていた(奪おうとしていた)装甲兵が消えてしまったので一瞬がくっとなった

>「ほら…ご覧の通り。私だって貴女と戦いたい訳じゃないわ」
更に、衛生白書もすぅっと消えた。そして右袖を捲くってみせる。イザベラの細い腕には赤十字を表した刻印が彫られていた。
「ええ、あなたも色々大変なようですし、大人しくしていましょう」
(また的を外してしまったようですね…ところであの本を腕に封印しましたが、あの魔法は知っています…少しアレンジされているようですが
イザベラさんは随分用心深いのでしょうか、それともあの本はただの魔術省略の為のものではないのでしょうか…)
カァラは先ほどのイザベラの不安げな表情をもう一度思い浮かべた
(もしかしてあのとき少し下を向いていたのは本を気にしてたのではないでしょうか…だとすると…)
カァラはイザベラについて病院へと向かった
(…単なる魔術省略以上のもの、という事でしょうか)
カァラは腕に刻印する魔法の解き方を思い出し始めた
>191
(重装騎士隊&軽装騎士隊&竜騎士隊)
スケルトンを徒手空拳とトンファーで次々と打ち崩していくウェシュレイ。彼が舞う度に、骨片となったスケルトンが辺りに降り注ぐ。
彼に限らず、軽装騎士達がスケルトンの戦列の脇を擦り抜ける度に、スケルトンは粉々に粉砕され、後から続くグラズリー率いる重装騎士達によって
骨粉にまで踏み砕かれている。軽重騎士の見事な連携でスケルトンの数は減っていく…この調子でいけば、スケルトンを短時間で殲滅出来るだろう。
しかし、その時であった。

「グラズリー!今ので何体目だ!?」
いつの間にか軽装騎士に混じって戦闘を展開しているグラズリーに話しかけながら、ウェシュレイは前方のスケルトンの集団まで自慢の駿足を活かし、刹那の時間で間合いを詰める。
目の前に突然現れた黒豹の獣人にスケルトンが対処できるはずがなく、ウェシュレイのトンファーの薙ぎ払いでスケルトン達が骨片と化す。
「知らん!こいつらをぶっちめるのに忙しくて数なんて数えてられんわ!」
左手の大型重装甲シールドでスケルトンを払い除け、右手の重斧を打ち降ろす。樋熊型獣人の驚異的な腕力と重斧の重量が相まって、地面ごとスケルトンは断ち斬られ、粉々になってしまった。
「俺は今ので87体目だ!」
新に横合いから飛び掛ってきたスケルトンの側頭部に回し蹴りを放ち、頭骨を粉々に粉砕したところで残った体に正拳を叩き込む。拳がスケルトンの胸骨を真正面から捉え、ばらばらに粉砕した。
「じゃ、ワイは88体や!」
真正面から一斉に襲い掛かってきたスケルトンの一団に、水平に構えた斧の一撃を見舞う。水平に振るわれた斧はスケルトンを尽く、上下に分断し、後から伴ってきた風圧はそれらを吹き飛ばした。
「鯖を読むんじゃねぇ!」
更に新たな獲物を求め、跳躍し、上から一体のスケルトン目掛けてトンファーを振り下ろす。このままいけばそのスケルトンは他の者と同様に、粉々に打ち砕かれていただろう。

>被術者にとっての"最愛の人"に見えてしまう魔法
「!?」
だが、振り下ろされたトンファーはスケルトンの脇を掠め、地面を吹き飛ばしたに過ぎなかった。
ウェシュレイはそのスケルトンの目の前に着地をすると、大きく後方に飛び退いた。そして、徐に兜の装甲ヴァイザーを持ち上げた。
「…ヴァネッサ?」
持ち上げられた装甲ヴァイザーの下から現れたウェシュレイの黒く大きい瞳は、驚愕に見開かれ、彼の猫髭はさわさわとせわしなく動いている。
「…さっちゃん?」
ウェシュレイと同じくして、グラズリーにも異変が起こっていた。彼も装甲ヴァイザーを持ち上げ、そのスケルトンを見た。
「なんでヴァネッサが此処に…」
「なんでさっちゃんが此処に…」
思わず愛しい者の名がはもってしまうが、あまりの衝撃に二人は立ち尽くしてしまった。普通に考えて、戦場という危険な場所に最愛の者がいるわけはないのだが、それさえをも忘れさせるほどの
衝撃を受けていたのである。が…

>192
>するとスケルトンの居る場所が明るく見えた、これで炎スケルトン兵士の完成である
「「燃えた!?」」
最愛の者が自分達の目の前に現れたかと思ったら、急に燃え出し、スケルトンの姿に戻ってしまった。周囲でもそれと同様のことが起こっており、驚きの声が其処彼処で上がっていた。
「…偽者やったんか」
「…だな」
二人は顔を見合わせると、何とも馬鹿馬鹿しい気持ちになってきた。自分達に最愛の者を見せたのはいいが、燃えてしまっては意味が無いではないか?
おまけに、団の全員が様々な(毒ガス、生物兵器、耐熱性など…)状況下にある程度耐えられるような付与魔術が施された鎧に身を包んでおり、僅かに露出している部分(尻尾)
ぐらいにしか火傷を負う心配がない。敵の魔術師は何を遣りたかったのだろうか?
「取り敢えず…」
「なんか腹が立ったな…ワイら、馬鹿にされたんとちゃうか?」
「…だな」
ウェシュレイはグラズリーの言葉に無言で頷くと、トンファーを構え直し、その燃え盛るスケルトンを打ち砕いた。
なんだか白けた空気が場に漂っていたが、はっと我に帰った者達も燃え盛るスケルトンを打ち砕くのに取り掛かり始めた。
(イザベラ)
>290
>カァラはイザベラについて病院へと向かった
大人しく後をついて来ているカァラに対して、大して警戒もせずに呑気に歩いていた。
しかし、ぴたっと立ち止まると、黒い軍服の懐に手を入れ、御札を数枚取り出した。札には聖なる文字が刻み込まれていた。
「少しばかり時間が掛かるけど…外に出てきた序に、これを終らせておかないとね」
二言、三言呪文を詠唱し、御札が淡い燐光を発し始めたところで、それを宙に放り投げた。すると、宙に放り投げだされた御札を
中心に白い方陣が幾つも顕現した。その方陣は召喚獣の召喚を行うものではなく、また別の効力をもったものであった。
「すっかり野戦病院の周りが地獄絵図になっているからね…これはその掃除よ」
白い方陣が、一瞬だけ、収束し、弾けると、雪のように白い燐光となって辺りに穏やかに降り注いだ。
その燐光は周囲に漂っていた彷徨える霊魂達を優しく包み込み、そのまま彼らを冥界へと穏やかに送り出した。
「…人の魂は拘束されているわ。彼らはまた輪廻転生をし、新にこの世に様々な形をもって生まれてくる…私の行為はある意味彼らに対して
拷問にも思えるようなものよ。また苦しみに溢れたこの世に転生させるだなんて、悪魔の所業かもしれない…」
周囲がぬくもりに満ち溢れた燐光によって包まれてはいるが、イザベラの顔は浮かないものであった。
「これも同じ…私が本当に若かった頃、私はまだ魔道の本質が見えてはいなかった……この道に4世紀以上携わって、ようやくその本質というものが
ぼんやりとだけ見えてきたわ…その本質の全てが分かる頃には、私も本当に御婆ちゃんになっているかもしれないわね……」
右袖を捲くり、華奢な腕に刻み込まれた赤十字の刻印を細い指先でなぞる…それはイザベラが背負った十字架。過去に犯した償いきれない罪の表れなのかもしれない。
「さて、もう野戦病院は其処よ…貴女は一応私のお客様だから、私が責任を以ってもてなすわ」
イザベラはカァラに先立って、野戦病院の敷地内へと入っていった。そして正面玄関の階段を上がり、正面玄関から病院内へと入っていった。
293紅羽 ◆KUU/KZ07xo :05/03/02 23:41:32
結局、治療室につれてこられてしまった。
治療室には、沢山の看護婦さんと、それを上回る数の怪我人がいた。
(うわぁ……何人かこっちを見てるよ…。)
比較的怪我が軽くて、ある程度体の自由が効く怪我人の一部が、
自分の方を見ながらヒソヒソ話をしている。
(気にしない…気にしない…!)
とにかく、さっさと治療を終えて、この部屋から脱出しなければ。
紅羽は、一人の怪我人の元へ行き、怪我の治療を始める。
その怪我人も、こっちをチラチラ見ているが、絶対に気にしない。
目を閉じて、両手を前にかざし、呪文の詠唱を始める。
…しかし、いつまで経っても回復の呪文が発動しない。
「あ…アレ?おかしいな…どうして呪文が……うっ!?」
突然、酷い眩暈が紅羽を襲った。
(…あぁ……そういえば…アレから、全然休んでなかったっけ…)
紅羽は、野戦病院についてから数え切れないほどの怪我人の治療をして、
その後看護婦達にめちゃくちゃにされて、さらにその次はヴェルターと鈴木中尉と戦闘をし、
さらにその後に、また看護婦達にメチャクチャにされて、全く休憩を取っていなかったのだ。
肉体的にも精神的にも限界が来ていた。
「うぁっ…もう、限……界……かな……。」
それだけ言うと、紅羽はその場にバタリと倒れて、静かな寝息を立て始めた。
294「NAVY」 ◆..OhPeBexU :05/03/03 00:23:57
>252
>「…今度はお年頃の眠り姫でも贈ってあげるわ。忘れてなかったらね」

「期待してる」
ルイは答え、拳銃をホルスターに収めた。
二人を乗せたトラックは他数台の護衛と共に車列を離れ、
道路沿いの木立に隠された地下トンネル入り口へ進入した。
「少し休んだ方が良い、目的地に着くのは夜明け頃だ。
訓練は明日から始まる。僕が教官」
護送車の目的地は、北東に約100km先の軍事施設だった。
ルート27からその施設までを、巨大な地下トンネルが繋ぐ。
「図面やら何やら見せて、その後言うのもなんだけどね。
最初から歩行戦車―『バレエ』に触れる訳じゃない。
予定じゃ二ヶ月は、特殊部隊の入隊教練に参加。
平行して機体操作のペーパーテストもあるから、かなりハードスケジュール」
295鈴木中尉 ◆DDGCBdpW/w :05/03/03 00:57:18
>238
あれから一体どうなった。確実にあの怪物は殺した。
すると自分は植物の怪物と刺し違えて死んだのか?


いや、そうじゃない。まだ生きているようだ。誰かの声が聞こえる。
ゆっくりと目を開いて真っ先に見えたのはコンクリートの天井。
頭を上げて周囲を見回す。見た限りではどうやら病室らしい。
つまり死なずに治療を行われてまた生きながらえたという事か。
腕には包帯が巻かれており、横には焦げた軍服が畳んで置かれており、
着剣したままの愛用の小銃と略帽、軍刀などの装備もその上に重ねてある。
さすがにあの雑嚢は吹き飛んでしまったらしいが。
「あー……そこの看護婦さん。ちょっといいか?」
ちょうど隣の患者から離れようとしてる看護婦に話しかける。
「仕立て屋を呼んでくれ。私の軍服を一着作って欲しい。雑嚢もだ。
軍服はこれを真似て作ってくれ。雑嚢は…ちょうどこういうものだ」
赤十字のついた野戦用と思われる布製の医療鞄を指差す。
その看護婦はこちらに微笑みかけながら「分かりました」と言った。
畳んであった軍服を広げて階級証を外し、襟の裏を探る。
確かここに自決用の青酸カリの紙包みを挟んであったはずだ。
「軍服が出来たらここに届けてくれ。代金はその時に払う」
さて、それまでには手榴弾で出来た全身の火傷も治さなければ。
早く前線に復帰したいものだ。
>294
車は粛々と走り続ける。先ほどの発砲からはお互い口数が少なくなった。
というより、ガリーナが一方的に会話を許さない雰囲気を作ったと言うべきか。
小間使い程度に見ていた少年が底の知れない人物だと分かった今、彼女ははっきりと警戒の眼差しを送っている。
沈黙が場を支配してもルイの余裕ある態度は崩れない。それがますます不快だった。
ため息をついて荷台の外を見る。長い長いトンネルの中にいた。

>「少し休んだ方が良い、目的地に着くのは夜明け頃だ」

久しぶりにルイが口を開いたが、構わずガリーナはオレンジ色の照明を眺めている。
「何? 別に貴方に気を遣ってもらいたくは―――」

>「訓練は明日から始まる。僕が教官」

ぎぎぎと音を立て、首がルイへ向き直る。
「…くんれん?」
その言葉を聞くや彼女は盛大にゴネだした。
「ちょっと待ってよ!なに、訓練ってことはその兵器とやらの操縦の?しかもあんたが教官? 冗談じゃないわよ…!
私は練習とか講習とか指導とか、とにかくそういうのは一切受け付けないタチなの! 全くもって不必要!」

>「図面やら何やら見せて、その後言うのもなんだけどね。
>最初から歩行戦車―『バレエ』に触れる訳じゃない。
>予定じゃ二ヶ月は、特殊部隊の入隊教練に参加」

「無視かよ! ちょっとマジ!?2ヶ月もあんたの下で特訓三昧? おまけに入隊訓練って…まさか規律ある団体生活ってやつ?
無理!それはホント無理だから!そういう環境だと死ぬから生物兵器って!死ぬらしいから!」
練習嫌いで協調性が無くて、おまけにガリーナは時間にルーズであった。
皆と同じ時間に起きて点呼を取り、真面目に訓練に取り組むなど考えただけでも背筋が凍る。
「どうして、どうして?……それは分かるわよ、漫画の主人公じゃないんだし軍の兵器なんだし、
ある程度制式のカリキュラムをこなせって注文は分かるけど…でもなんで私が…!」
頭では理解している。なぜ私かと問われれば、勿論それは囚われの身である「家族」のためにである。
ガリーナ一人で国境をまたぐことは限りなく不可能に近いし、帝國との激戦地である北方回廊を抜けるとなれば
軍の組織的なバックアップは不可欠だ。だからこれは避けようのない、絶対に必要な代償。
(……ああもう。わがまま言えた身分じゃないってコトぐらい分かってるのに)
2ヶ月で『バレエ』を乗りこなして戦場まで出張り、3人を助け出す。
訓練に参加することは間違いなくパンボリックと再開するための最短距離だった。
「…テレビは見せてよね」
憂いを払って心を鎮め、彼女はようやく腹を括れた。ルイもそれを見て頷いたように見える。

>「平行して機体操作のペーパーテストもあるから」

「あんたさっきから楽しんでない!? ねえ!!」
(シャーリー)
>269
飛空挺が屋上にいささか乱暴に着陸するのを確認すると、待機していた看護婦達が飛空挺から負傷者を運び出すのに取り掛かった。
次から次へと飛空挺の中から負傷者が運び出され、担架や車輪付き搬送用ベットに載せられて、屋上の大型エレベーターで階下の治療室まで降ろされる。
一階の治療室ではこの人数には対応しきれないので、既にもう一つの治療室が用意されており、この負傷者達は其処に運び込まれて手当てを受ける。
飛空挺の誘導を行っていたシャーリーも負傷者の搬送に加わり、応急手当が必要な者はその場で処置し、搬送用ベットに載せて運んでいく。

大体の負傷者の運び出しを終わり、飛空挺内に負傷者が残っていないかを確かめるために、
シャーリーは懐中電灯を片手に薄暗い飛空挺内を探索していた。その飛空挺は喫水が低く、超大型飛竜船と比べれば大した大きさでもない。
負傷者の収容スペースを見回ると、操舵室らしき場所へは直ぐにたどり着いてしまった。
「…誰かいますか?」
返事は無い。しかし、自慢の犬耳を澄ましてみると、誰かの苦しげで弱弱しい呼吸音が聞こえた。
シャーリーは慎重に懐中電灯の光で薄暗い操舵室を探ると、操作盤らしきものの上に倒れ伏している人影を発見することが出来た。
「!?…大丈夫ですか!?」
シャーリーは慌てて倒れ伏している人影の傍に駆けつけた。懐中電灯を当てて分かったのだが、其処に伏していたのは若々しい一人の女性であった。
同性から見ても美しい女性の横顔に、一瞬息を呑んだシャーリーであったが、直ぐに女性を抱き起こして床に仰向けに寝させ、女性の服の胸元を緩め、
幾分呼吸がしやすいようにしてやる。意識が無いのか、女性は無反応であった。しかし、シャーリーはそれに構わず、二言、三言呪文を詠唱した。
直ぐにシャーリーの手は燐光に包まれ、それを女性の額の上に乗せる。そして目を閉じ、精神を集中させる…
「…大幅な魔力の消費。しかも…魂の鼓動が規定値を少しだけ下回っている。このままでは……」
シャーリーが行ったのは、法術を応用した触診であった。
法術によって体中を流れる魔力の流れを読み取り、魔力の流れに何らかの異常があれば、症状や具合の悪いところが早期に発見できるのである。
この女性の場合は、命に係わるほどの魔力の消費であった。直ぐにでも手当てをしなけば助からないだろう。

急いでシャーリーはこの操舵室を後にし、まだ飛空挺の外にいた同僚たちを呼んで、この女性を飛空挺の外に運び出し、階下の治療室へと運んでいった。

(メリィ)
>293
治療室で鬼のように負傷者の手当てを行っていたメリィであったが、紅羽に異変に気が付き、慌てて彼の元に駆け寄った。
「紅羽先生!」
ぴくりとも動かずに床に倒れ伏した紅羽に青ざめるメリィであったが、穏やかな彼の寝息が聞こえると、安堵の息をついた。
「…無理をなさらなければいいのに。全く、困った先生ね」
メリィは白い包帯に覆われた腕を首から吊っている負傷兵に、紅羽を仮眠室にまで運ぶよう頼んだ。
その負傷兵はメリィの頼みを快く引き受けると、紅羽を片手一本で軽々と担ぎ上げ、そのまま治療室を後にした。
メリィはその負傷兵の背中を見送ると、また自分は他の負傷者の治療に取り掛かった。
298カァラ ◆mRmMX8Kgoo :05/03/03 15:21:32
>292
(え〜っと、なんだっけぇ…あれは確か…)
>ぴたっと立ち止まると、黒い軍服の懐に手を入れ、御札を数枚取り出した。札には聖なる文字が刻み込まれていた。
「少しばかり時間が掛かるけど…外に出てきた序に、これを終らせておかないとね」
「え?ええ、ええ」
カァラはふとイザベラが死霊祓いのお札を持っている事に気付いた
> 「すっかり野戦病院の周りが地獄絵図になっているからね…これはその掃除よ」
方陣を描く為の札が発動して、辺りに白い燐光が散らばるのを見ると、カァラは言った
「地獄絵図…そういわれれば…そうです。私も、戦場に居て感覚が麻痺してしまったのでしょうか…」
辺りに漂っていた死霊の量は確かに多かった。恐らく先ほどの魔術師が呼び寄せたのであろう
> 「…人の魂は拘束されているわ。彼らはまた輪廻転生をし、新にこの世に様々な形をもって生まれてくる…私の行為はある意味彼らに対して
拷問にも思えるようなものよ。また苦しみに溢れたこの世に転生させるだなんて、悪魔の所業かもしれない…」
周囲がぬくもりに満ち溢れた燐光によって包まれてはいるが、イザベラの顔は浮かないものであった

「でも、あなたはそうやってもう一度生を繰り替えさせようとしています。負傷兵を治療してもう一度戦場に向かわせるかのように。なぜですか?」
カァラはとても落ち着いた顔で言った
(ん…死霊の事を生きている私達が気にかけて何になるというのでしょう…)
> 右袖を捲くり、華奢な腕に刻み込まれた赤十字の刻印を細い指先でなぞる…
「魔道の本質…それは私も気になるものです、いや、魔法というものに魅せられた全ての者の命題でしょうか
どうしてこの世界には魔法があるのでしょうね…しかし人間と違ってあなた達はもっと本質に近い位置に居ます…」
カァラはエルフに対して一種のコンプレックスのようなものをもっていた
(なぜ、人間よりもエルフの方が…)
「まあ、その前にこの私が魔道の本質は全て解き明かしてしまうので安心して下さい…」
と、少し力の無い声で言うと、イザベラが腕の赤い十字架をなぞっているのを見ていた
(やはり何かあるようです…)
> 「さて、もう野戦病院は其処よ…貴女は一応私のお客様だから、私が責任を以ってもてなすわ」
「それはそれは、お手を煩わせて申し訳ありません」
カァラはあくまで儀礼的に言った
(ここでは彼女のそばに居た方が安全でしょう…それに…)
「ーよかったら聞かせて下さい、その、ぼんやりと見えてきた魔道の本質と、その腕の赤い十字架について…」
(あの体に物を封印する魔法…珍しいものですが…の解き方を思い出せば、何か面白い物が手に入る、かも…)
カァラはイザベラに付いて病院に入る前に、2.3の簡単な自己防護の為の呪文を小声で唱えておいた
(イザベラ)
>298
>「でも、あなたはそうやってもう一度生を繰り替えさせようとしています。負傷兵を治療してもう一度戦場に向かわせるかのように。なぜですか?」
「結果は分かっているのに、やっぱり目の前で人が苦しんでいるのは放っておけないのよ…嫌な性分だわ」
カァラを案内しながら、イザベラは普通に答えた。その声からして、それには嘘偽りは無いのだろう。
放っておけないから助ける。たとえ結果的にどうであれ、目の前で苦しんでいる人がいれば、イザベラは躊躇う事無くその者を助けるだろう。

>「まあ、その前にこの私が魔道の本質は全て解き明かしてしまうので安心して下さい…」
「あらあら…頼もしいお言葉ね?では、私が皺を気にする年齢になるまでにはその本質とやらを解き明かして欲しいものね?」
カァラの言葉を可愛いものだと思い、くすくす笑うイザベラ。そうこうしている内に、イザベラの私室兼執務室となっている婦長室に着いた。
ドアを開け、カァラに中に入るように促すと、イザベラは部屋の奥にあった別のドアを開けて、其処に消えた。

>「ーよかったら聞かせて下さい、その、ぼんやりと見えてきた魔道の本質と、その腕の赤い十字架について…」
暫くしてから、イザベラは御盆にティーポッドとカップを二つ、菓子を載せて戻ってきた。
「ん〜…駄目。貴女も分かっているとは思うけど、魔術師が独自に作り出した術式や発見した法則は大切なものよ?それを何の苦労もせずに
手に入れようだなんて、虫が良すぎると思うけど?」
応接用のテーブルにお盆を置き、カップにお茶を注ぎ始めた。
「それ以前に、魔術師は知識の交換はするけど、一方的な知識の略奪もとい泥棒は恥ずべき行為よ?貴女も新しい術式や法則をしりたければ、正々堂々交渉してみることね?」
お茶を注ぎ終わると、イザベラはソファーに座ってカップを手に取り、口元に運んだ。
300紅羽 ◆KUU/KZ07xo :05/03/03 18:50:16
「……う……ん……ここは…?」
目を覚ますと、自分はベッドの上に寝かされていた。
首だけ動かして周りを見てみると、看護婦達が自分と同じ様にベッドの上で眠っていた。
どうやら、仮眠室に運び込まれたらしい。誰が運んでくれたのかは分からないが、運んでくれた人に感謝。
「……あ、そうだ……。」
上半身を起こし、自分の今の格好を確認する。やはり、まだあの看護服のコスプレのままだった。
紅羽は、ベッドの上で座ったまま看護服を脱ぎ、
青色の、膝ぐらいまでの長さの下着と、黒色の肌着だけの格好になる。
あとで、看護婦がいない内に、もう一度待合室に行って自分の白衣や服を回収しなければ。
「さてと……もう一眠りしよっかな…。」
看護服は畳んで横に置き、再びベッドに潜り込んだ。
さっきよりは大分疲れは取れたが、それでも少しまだ体がだるい。
が、その時、紅羽のお腹が大きな音を立てて鳴った。
「……お腹空いた…。」
紅羽は、お腹が空くと絶対に眠れない体質なのだ。
とりあえず、仮眠室から出て(下着と肌着のまま)、食料探しに行く事にした。
仮眠室から出ると、すぐ近くに一人の看護婦がいた。この人に聞いてみるか。
「あ…あのぉ……僕、お腹…空いたんですけど…。どこか、食べる場所ってないですか…?」
一応、遠慮がちに聞いてみる。
301颶風 ◆/oj0AhRKAw :05/03/03 19:22:32
>297

「ここ、は・・・・?」
 処置を受ける、とは言え目に見える負傷が有るわけでもなく、
召喚された颶風に、この世界の術式が充分な効力を持つわけでもなく。
法術による癒しも、その身に蓄える事の出来る魔力の量が桁外れな颶風に対しては、
穴の開いた水がめに水を注ぐような物でしかなく。
 それでも、瘴気渦巻く屋外から、より安定した環境へ移された事により、
消耗よりも自然な回復量の方が大きくなる。
何とか、意識を保つに必要なだけは回復したらしい。
 ゆっくりと体を起こし、貧血にも似た眩暈に軽く頭を振る。

 手を翳してなおも治療を続けようとする看護士の手を、煩わしげに払いのけた。
「私よりも、重傷の方々の治療を優先してください。少し休めば、何とかなりますから」
 この言葉にはウソは無い。
負の魔力・・・・瘴気に晒されるよりは、幾分マナの濃度が低く、精霊も少ない屋内の方が回復は早い。
もっとも回復を助けるのは、より質の近い魔力や生気を取り込む事ではあるが・・・・。

(流石に、怪我人やその治療に当たってる方々からは無理ですよねぇ)
 とんとん、と軽く指で頬を叩きながら一人ごちる。
その指に当たる素肌の感触に、顔をしかめてため息をついた。
「困りましたね、この姿では色々と不都合が・・・・」
 と呟きかけて、はた、とある事に気がつく。
「と、この世界にはあの御仁はいらっしゃいませんでしたね、そー言えば」
 颶風の、いつもの半獣人の姿は、その『ある御仁』・・・・、息子の父親避けである。
理由はそれだけでは無いが、態々半獣人の姿を保つコストには引き合わない些細な物ばかりだ。
まぁ、居たら居たで、今の状態では手っ取り早い『食事』になってもらうだけなのだが。

「自然回復、待つしかありませんかねぇ・・・・」
 大きくため息をついて、この姿でも残っている翼をゆっくり伸ばした。
強張っていた筋が、ぎしぎしと軋む。
 立ち上がろうとベッドに手を突いて・・・・、バランスを崩して床に転げ落ちた。
流石に、動けるほどには回復していなかったようだ。

「それにしても、普段と違う姿だと勝手が違いますね」
 手足の長さも、筋肉の着き方も普段とは異なる。
「やはり、素の姿は脆弱でいけませんねぇ」
 ・・・・それでも、周囲の、この世界の獣人女性とは対して違わない姿なのだが。
ふさふさとした毛の生えた耳に、すんなりと伸びた獅子の尾。
光の当たり具合で微妙に異なる光彩を帯びる、純白の翼。
 額に刻まれた独特の紋章のような痣を、ベッドサイドに置かれた、
同じ紋章の刻まれた金属環で覆い隠す。
「見られましたかね。・・・・まぁ、構いはしませんけど」
 八本牙と爪の紋章。故郷の主神との契約の印。

 何とかベッドに収まりなおして、所在無げに宙に目を彷徨わせた。
「・・・・ご飯には、まだまだ時間がありそうですよね・・・・」
 殆ど、『メシはまだかの?』状態である。
夜明け前という時間と、治療すべき負傷者の数を思い返して、毛布に潜り込み直す。
「では、お休みなさい」
 ・・・・どうやら、寝なおす事にしたようだ。

行動:看護士を追い払ってから、寝直す。
(名無しの看護婦)
>300
紅羽に話しかけられた看護婦は、仮眠室から出てきた紅羽が下着姿なのには驚いたが、子供の下着姿などは見慣れている。
その看護婦…ゴールデンレトリバーの獣人であるウィッテは五つの子を持つ母親であり、本国に夫と子供を残し、この野戦病院にきていた。
獣人ながらもそこはかとなく漂う大人の女の落ち着いた雰囲気と、イザベラに負けない程の妖艶な肢体は、彼女から母性を感じさせる。
「あらあら…先生、そのような格好では風邪を引きますよ?」
ウィッテはそんな紅羽を微笑ましいものだと思い、その背を押して仮眠室のベットに戻るよう促す。
「お食事でしたら、私が後ほど作って持ってきて差し上げます。先生はその間ベットでお休みになられて下さい」
紅羽が仮眠室に戻るのを見届けると、ウィッテは踵を返して食堂に向かった。今の時間帯ならば、食堂では当番の看護婦たちが
患者の治療に精を出している看護婦達の為の差し入れを作っているだろう。
少しぐらいなら調理場を借りれると思い、ウィッテは食堂へ向かった。

数十分後。ウィッテはお盆の上に湯気の立ち上る皿を数枚載せて、仮眠室に来ていた。
お盆を慎重に運びながら、紅羽のベットの傍に来て、それをベットサイドに置く。彼女が作った料理の内容は、ハンバーグにコンソメスープといった
大抵の子供が喜びそうなものであった。実際、本国の子供達はハンバーグが大好きであった。ウィッテから見れば、紅羽など自分の子供達と大して
変らず、子供達と離れた彼女にとってみれば、紅羽は自分の子供のように可愛い存在であった。
「先生…お料理をお持ちいたしました。お口に合えばいいのですが…」
303カァラ ◆mRmMX8Kgoo :05/03/03 21:40:50
カァラは久しぶりに見る病院の様子が少しおかしい事に気付いた
かすかな火薬の匂い…攻撃的な魔術の気…
(もしかして戦闘でもあったのでしょうか?)
>「あらあら…頼もしいお言葉ね?では、私が皺を気にする年齢になるまでにはその本質とやらを解き明かして欲しいものね?」
「ええ、御期待下さい。」
(こう言いたいんでしょう、「人間ごとき、しかも共和国の一個人には無理だ、」と…)
カァラはイザベラに付いて婦長室に入り、中を見回すと、椅子に座った
(危険なものはないようですね……そういえば多重時空系における魔力の不完全な流動が魔封核に与える代替的影響の範囲は…)
カァラはイザベラが戻ってきた事に気付いたが、ふと思い付いた新しい考察をメモに取りながら答える
>「ん〜…駄目。貴女も分かっているとは思うけど、魔術師が独自に作り出した術式や発見した法則は大切なものよ?それを何の苦労もせずに
手に入れようだなんて、虫が良すぎると思うけど?」
(…クォートの闇還元による排他的構造に左右される可能性があります…)
>「それ以前に、魔術師は知識の交換はするけど、一方的な知識の略奪もとい泥棒は恥ずべき行為よ?貴女も新しい術式や法則をしりたければ、正々堂々交渉してみることね?」
「いえいえ、個々の術式等は表面的なものです。まあそれも大変興味深いものではありますけど…」
そう言うとカァラは同じ形をした両手に一つずつ、菓子を目の前に持ち上げて、それを凝視している
「見て下さい、この二つ。良く見るとわずかに欠けている所や色が微かに違い、微妙に形が違います…しかし」
「同じ型から焼かれた物である事は分かります、本質とはその型の事では無いでしょうか?」
「いえ、雑多な術式こそがそもそも魔法であり、膨大な量の綴りこそが魔術であり、それ以上でもそれ以下でも無い、という説もありますが…」
「私はその説は嫌いではないんですけどね。」
カァラはこれまで、魔法の為に自分がしてきた苦労の数々を思い返していた。
秘密主義の帝国の研究所で、どれだけ知識を吸収するために努力しようが、術の形式を奪い取ろうが、
結局生まれついて魔法と共にあるエルフにはかなわなかった。
「私はね、イザベラさん、魔法が好きで好きでしょうがないんですよ。まるで飢えている獣のように魔法を欲してる…飢えている獣の目の前に食料があれば、それが他の生命であるからといって躊躇うものではありません
ところで略奪と言いましたか?…光が闇を奪い、水が火を奪う、魔道の本質とは略奪かもしれません…いや、これは案外に面白い発想です」
カァラは手に取っていた菓子を置いて、その事を考えてメモを取りながら語った。
「あなたの言う事ももっともです。私はそういうのが嫌いでしてね、以前は良く本を出して自分の発見したものを少しでも多くに広めようとしたものです。」
「さすがに私も戦時中に敵軍の者から新開発の術を教えてもらえると思っているわけではありませんが…しかしこの魔法という神秘についての思想を語らう事も出来ないのでしょうか…」
研究者らしく、こういう話になるとカァラは熱くなってしまうのだった
304紅羽 ◆KUU/KZ07xo :05/03/03 22:14:20
>302
>「あらあら…先生、そのような格好では風邪を引きますよ?」
>ウィッテはそんな紅羽を微笑ましいものだと思い、その背を押して仮眠室のベットに戻るよう促す。
>「お食事でしたら、私が後ほど作って持ってきて差し上げます。先生はその間ベットでお休みになられて下さい」
「あ…ハイ、分かりました。」
紅羽は、素直にウィッテの言う事を聞いて、ベッドで休んで待っていることにした。
「何を持ってきてくれるんだろう……楽しみだな。」


一方その頃、帝都病院では…
「あらぁ〜ん……貴方、なかなかイイオ・ト・コじゃな〜い?」
紅羽の助手であるローズは、診察中に逆ナンパをしていた。
「私、今紅羽先生がいなくて退屈してるのヨ……。よかったら、今度デートしない?」
ローズに逆ナンパされている患者は、どうすれば良いのか分からずに困っている。
「はぁ……紅羽先生、今頃どうしてるのかしら…。まさか、野戦病院の女狐どもに良からぬ事をされてるんじゃ…。
きぃぃぃ!紅羽先生の体は私の物なのよ!!」
今度は一人で勝手な妄想を始めて暴走をしている。
「ふぅ……いけないいけない、こんな事じゃ……じゃ、診察の続きを…あら?どこに行ったのかしら?」
ローズのめちゃくちゃな診察についていけず、患者は帰ってしまっていた。


「……そういえば、ローズさん、ちゃんと患者さんの診察してるかな…。」
帝都病院の事を思い出して、紅羽は少し心配なった。
と、その時、ウィッテが食事を持って自分の元へやってきた。
「あっ、来た…!待ってました……あぁ、やっとご飯が食べれる…。」
待ちに待った食事がやってきて、紅羽は嬉しそうにする。

>お盆を慎重に運びながら、紅羽のベットの傍に来て、それをベットサイドに置く。彼女が作った料理の内容は、ハンバーグにコンソメスープといった
>大抵の子供が喜びそうなものであった。
>「先生…お料理をお持ちいたしました。お口に合えばいいのですが…」
「うわ……おいしそう……。それじゃ、いただきます…っ。」
ハンバーグを、フォークとナイフを使って一口大の大きさに切り、口に運ぶ。
熱々で濃厚な肉汁が口の中にいっぱいに広がる。
「んっ…!おいしい…!凄くおいしいです…!」
今度は、コンソメスープを飲む。
「こっちも凄くおいしい……体が暖まります…。」
紅羽は、夢中になってハンバーグとコンソメスープを食べる。
そして、皿にはあっという間に何もなくなってしまった。
「ん……ごちそうさまでした……本当においしかったです。」
紅羽は、ウィッテに向かって満面の笑みを浮かべた。
(>296に追加をお願いします)
「…あ、一つ言い忘れてた。2ヶ月も拘束されるなら食事のことを考えなくちゃいけないんだけど」
どういうわけかガリーナは普通の食事からは一切栄養を取れない身であったために、
命を永らえる代わりの手段として2ヶ月に1度竜を食べ、その骸に残された「竜の魂」を取り込んだ。
その栄養源、竜の生命力そのものと言える「魂」にしたところでいつでも吸収できるわけではなく、
自ら命を閉じた身体―――自殺を選んだ竜の内に眠る魂だけがその対象になった。
故にガリーナの糧となり得たのは、通常は絶対に自害などしない竜種の、その自殺体だけなのである。
「スーパーでポンと手に入る食材じゃない事は分かるけど、他で替えが効くモノでも無いしね…
最低一頭は生きてて健康な竜が欲しいわ。どうにか出来そう?」
出来ないと言われたら基地を抜け出してでも何処からか調達してこなければならない。正に死活問題だった。
>225
「ぐあ!!」「ぎゃああ!!」
ほぼ全方向からと言える攻撃によって次々に兵が倒れていく。
残った兵ももはや突撃どころではない。防戦一方である。
やがて、その兵たちも倒れていく。

役場に全員が立てこもっていれば、もう少し時間が稼げたかもしれないという自責の念が募る。
だが、今は目の前の事態をどうにかしなければ。
「三十秒は待ってもらえるんじゃな?ならば!」
階段を駆け上がり、二階に着いたところで階段を破壊技で破壊しようとする。
降りれなくなるかもしれないが、時間稼ぎ程度にはなるだろう。
>123
>迎撃するつもりなのか、ジェイクは銃をダラリと下げたままライフルに大量のエネルギーを込めていく
「ほう…俺のコレに対して、真正面から受け止めるつもりか?ハハハ、益々その度胸を気に入ったぜ?」
ジェイクのその様子に顎を大きく開いてインゼクトは笑った。
「だが後悔するなよ?これから俺が放つのは<気流>そのものだ…知っているか?高高度を流れるジェット気流は時速300kmにもなるんだぜ?
だが…俺が撃ち出す気流は超音速を越える。超音速を超えた気流は強力な衝撃波を伴い、それを広範囲に渡って撒き散らし、効果範囲上にあるありとあらゆる
ものを吹き飛ばす…こいつは普段の戦闘では仲間を巻き込みかねないし、タメに時間が掛かる。だが、今回ばかりは真正面から受けようだなんて考える奴がいたから、
遠慮なくぶっ放せる訳だ……」
インゼクトは両腕に凄まじい気流の渦を纏っており、あまりの凄まじさのために彼の腕の外骨格に幾つか亀裂が走った。
腕の外骨格に亀裂が走ると、亀裂から赤い鮮血が少し噴出したが、インゼクトはそれに構う事無く更に気流の渦を高めていく。
「うぉぉぉぉぉぉぉっぉぉぉぉぉぉぉおぉぉぉ!!!!!!!」
更に高まる気流の渦が、彼の片方の複眼に亀裂を走らせ、腕の外骨格の一部を剥ぎ取った。だが、それでもインゼクトは高め続ける。
既に彼の足元の地面は気流の渦によって抉り取られ、体を覆っているミスリル製の強固な鎧にも亀裂が幾つも走る。
「…逝くぜ」
インゼクトが静かにそう言い放つと、彼の周囲が暴風だったのが嘘のように、ぴたりと止んでしまった。
微風さえも二人の間には吹いておらず、夜の闇と何処かの草陰で鳴いている鈴虫の澄んだ声が、二人の心に静かに響いていた。
「絶対破風!シュツゥゥゥゥゥウゥゥゥゥゥルウゥゥゥゥゥゥゥゥゥムゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ……」
あれほど穏やかだったインゼクトの周囲が、直ぐにまたあの暴風域と化すが、今度は彼の右手を中心にして気流が渦まいていた。
「ヴィントォォォォォォォォォォオッォオォォォォォォォォォォ!!!!!!!!」
ジェイクとは距離があり、決して届きもしないのに、インゼクトはその場で咆哮と共にジェイクに拳を突き出した。
一瞬だけインゼクトの拳が突き出された空間が歪んだが、その歪みは直ぐに強力な気流となってジェイク目掛けて突き進んだ。
気流は地面は深く抉り、土砂を巻き上げ、周りの建物の壁を一瞬で巻き込み崩した。
巻き込み吹き飛ばされた様々な物体を内包しながら、その自然界には絶対に存在しない強力な気流は、強力な衝撃波を伴ってジェイクを捉えようとした。
>307
「……は、ははは……」
洒落にならん。いや、別に洒落ではなく大真面目なのはわかってはいるが。
気流をぶつける?
大魔法クラス、いや封印指定モンじゃないのかその個人携帯術法は?
「はいはい、やるよ、やりますよ……」

ッゴン!!

一瞬、ジェイクの周りの空間が「反転」した。色がひっくり返り、生から死が溢れる。
辺りの「エネルギー」を一瞬で全て吸い尽くした負荷である。銃が青白く燃え上がり軋みを上げる。
「三番、二番、解除……一番、解除。第三段位戦闘術式発動承認」
身の丈程もある銃をゆっくりと片手で構える。それは別に余裕などではない。
銃にエネルギーを流す上で「直列」では最も適した構え。つまり、最もエネルギーを込めることに特化した構えである。
「………塵は塵に、灰は灰に」
一気に銃が弾ける。銃口からは淡い光弾が放たれる。
それは端から見ればあまりに頼りない魔弾だっただろう。
……だが、それは。一気に巨大な光の盾と化し気流そのものを「消滅」させていった。
「外式防護用魔弾・白式っ!!」


……と言ったわりには、抑えきれるかどうか微妙。
流石に耐えきれないのか、ジェイクの体の節々から血が噴き出し始めた。
>308
>……だが、それは。一気に巨大な光の盾と化し気流そのものを「消滅」させていった
「俺のシュツルム・ヴィントを真っ向から受けるってか!?…いいぜ!そのまま押しつぶしてやらぁぁぁぁぁぁっぁあっぁぁぁぁ!!!!!」
気流を放ち続けている右腕に魔力を込め、更なる力でジェイクを捻り潰そうとするが…
「!?」
突如として右腕に激痛が走った。そして、右腕を覆っていたアーマード・クローと鎧が砕け散り、その下の腕が外骨格ごと砕けた。
「ぐぁぁぁっぁっぁっぁぁぁぁぁぁぁぁぁっぁぁぁ!!!!!!!」
どうやら強力な気流に、放った右腕が耐え切れなかったようだ。クローと鎧、外骨格が砕け散り、その下の筋肉が露出しており、血が止め処なく
流れた。これ以上放ち続ければ腕はもぎ取られるだろうが、昆虫人は数ヶ月程で失った手足を再生できる生命力を持っているので、腕を失うのは
一向に構わない。だが、その間は傭兵を続けることが出来ないだろう。
どちらにしろ、腕には重傷を負ってしまった。流石にこれ以上放ち続けることは出来ないだろう。
「ちっ…運のいい野郎だ」
そう吐き捨てると、気流が急に収まった。
「だが覚えておけ…今度は確実に仕留めてやる」
重傷を負った右腕を庇いながら、インゼクトは装備ポーチから煙幕弾を取り出し、地面に叩きつけた。
「……やぁ、よく来てくれた。まぁ、楽にしてくれたまえ。話は大司教殿から聞いている」
主任参謀の執務室にはこれまでに例がないほどの警備体制が敷かれていた。
「カールハインツ・ミュンヒ司祭とエメリルヒ・ネリーベル嬢」
黒翼の重装騎士団に勝るとも劣らぬ戦闘能力を持っているとされる参謀本部直属部隊の
最精鋭が集うというその厳戒態勢は、主任参謀の執務室に招かれた二人の聖職者のためのものであった。
技術の粋を凝らして製作された剣と全身鎧に包まれた騎士達が、二人の聖職者が不審な動きを見せた瞬間に
首を刎ねるべく身構えている。
「何でも、君達は非常に武芸に秀でており、そのせいか暴力事件を起こすことがたびたびあると聞く」
主任参謀は最精鋭に守られているという安心感から、狂戦士二人を前にしても冷徹な態度を崩さない。
「いや、君達を罰するために呼び出したわけではない。君達を罰するのは教団の仕事だからな。私が今日、君達を
呼び出したのは他でもない。君達には従軍司祭として回廊に赴いて欲しいのだ。何しろ、前線では倫理観も
信仰心も荒んでしまうからな。我々誇り高き帝國軍にはそういったモラルのない将兵は必要ないのだ」
もっともらしいことを語っているが、主任参謀はそんなことを考えてはいない。彼個人ではなく参謀本部それ自体が、
上官の命令に服従する以外のことを兵士達に求めていないのだ。だからこそ、参謀本部は兵士達に信仰を奨励していない。
参謀本部が二人の聖職者に求めているのは、純粋にこの二人の戦闘能力なのだった。参謀本部は聖職者すらも
戦力としか考えていないということである。つまりは、帝國にとって宗教などはその程度の存在なのだった。
「無論、これは私や軍部の一存ではない。大司教殿からのたっての願いでもある。そう、信仰心の欠落した
戦場に迷える子羊達を導く神の従僕として、君達以上の適任はいないと、そう私は聞かされた」
これは半分は本当で半分は嘘だった。大司教が厄介者を抱えていると困っている所に、二人の力に目をつけた
主任参謀が二人を借り受けることができるように工作したというのが事実だった。
つまり、大司教が彼ら二人に期待していることなど何一つとしてないのだ。
実際、主任参謀もこの二人の布教が前線の不信心者達に何らの感銘を与えないことすらも予期していた。
「また、異教徒達が忠勇なる神の従僕達を幾度となく襲うだろうが、その際には聖戦の戦闘に立って異教徒を殲滅して欲しい」
これこそが参謀本部の望みだった。要するに暴走させれば役に立つだろうと考えているのだ。
「では、早速前線に向かってくれたまえ。飛竜の方は手配してあるから、準備が出来次第出発してくれ」
主任参謀は二人に退出を促した。
>309
「……っ!!」
突然気流が止む。
「あら、と……とと…」
気流を受けていた勢いのまま「白式」に弾かれ、後方によろける。
「……敵さんは、撤退、かな?」
腕を押さえて煙幕の中に消えるインゼクトを確認すると、糸が切れたようにその場に仰向けに倒れ込んだ。

「……ふ、はは、ははははははは!!」
笑いが止まらない。死ぬと思った。今、本気を出しても死を覚悟した。
元から死んで、これ以上死なないというのに死ぬ思った。
「いや、いやいや。面白いんじゃないの、本当。まぁさか白式を使わされるとはなぁ」
その白式でもヤバかった。インゼクトが腕を庇わなかったら直撃してた。
……でも、やっぱ駄目か。銃が魔弾に耐えきれずにイカれちまった。
身体も限界。身体機能を維持するには「生命力」が足りない。というかそもそも体中が故障だらけだ。
「とりあえず……寝るか」
もうじき夜も明けるだろう。それまで眠って体力を回復させよう。
目が覚めれば傷は塞がってる。

そのままジェイクは大の字になったまま眠りについた。
312「NAVY」 ◆..OhPeBexU :05/03/04 23:31:34
>296 >305
血で汚れた図面を取り上げ、表面を軽くハンカチで拭う。
ケージの中は血の臭いで咽返るほどだが、ルイは眉一つ動かさない。

>「スーパーでポンと手に入る食材じゃない事は分かるけど、他で替えが効くモノでも無いしね…
>最低一頭は生きてて健康な竜が欲しいわ。どうにか出来そう?」

「オールド・スクラッチは南方に竜の養殖場を持ってる。
養殖物は見てくれが悪い、でも一応竜だから我慢して。
『自殺』はご隠居連中の研究に期待……ここだけの話、パンボリック氏の対竜兵器を
パックするのが襲撃の目的の一つだったんだ」
兵器研究において、露骨にスタンド・アローンという立場を固持したパンボリックは、
共和国学界のほぼ全域を牛耳るオールド・スクラッチにとって獅子身中の虫も同然だった。
彼の不在は、独立した対竜兵器のシェアを乗っ取るまたとない機会―オールド・ハリーはそう睨んだ。
「食事が隊員と別ならテレビを見る時間も出来るし、返って好都合かも知れない。
他に暇も無いだろうし……」
ルイは図面を畳んでマニュアルのページに挟むと、
「何より、訓練中に吐けないってのが一番良い事だ。
入隊訓練の教官は、隊員が吐いてるのを見ると不機嫌になる。
『演習場を汚すな』ってね。でも多分、君は大目に見られる―女の子だから」
>306
ウィスカーは階段を駆け上がる老兵の背中に、散弾銃の狙いを定めた。
捕虜の引き渡しが終わり、各々の隊員は退避準備に取り掛かっている。
「敵が逃げる!」
散弾は階段の壁に無数の孔を穿つが、狙いが逸れて敵兵には当たらなかった。
ポンプを引き、薬室に弾を送り込んで再度狙いを付けるウィスカーへ、
「深追いするな、ズラかるぞ!」
グリフが声を掛け、階段側に駆け寄る。

>階段を駆け上がり、二階に着いたところで階段を破壊技で破壊しようとする。
階段上の気配を感じ、グリフは咄嗟に仲間の頭を押さえた。
「ヤバい、伏せろ!」
三人と、フロア内に残った他の隊員が一斉に床へ伏せる。
314二人の狂信者 ◆17tr2wTJAA :05/03/05 00:41:56
>310
半ば強制的に退出させられた二人は、誰もいない国防総称の廊下に立ち尽くしていた。
「困りましたねぇ…」
黒い神父服に身を包んだ、長身の男が心底困ったといった顔をしながら呟いた。神父服を着ているところからして
その長身の男は神父なのだろうが、神父にしては鍛え抜かれた体躯と彫りの深い精悍な顔立ち、武の道を極める者
独特の落ち着いた雰囲気が彼からはそこはかとなく漂っており、青みがかった黒髪の頭をぽりぽり掻いている。
「ええ、困りましたねぇ…」
その男の言葉に頷くように、その隣にいた真紅の髪をした修道女も言った。透き通るような白磁の肌には腰までもある
真紅の髪が良く似合い、聖なる職につく乙女とあってか、落ち着いた雰囲気を醸し出していた。
程よく肉の付いた肢体は、柔和な雰囲気と相まって、彼女からは聖母か何かを連想させるものがあった。

「大司教様が前々から私達の…その、『もう一つの人格』が引き起こすそういったよろしくない事件で、非常に頭を
痛めているということは聞いてはおりましたが……まさかこういった形で罰を受けることとなるとは…」
何時までも廊下に立っていても仕方が無いので、二人は廊下を出口へと向かって歩いていた。
「ですが、聖職者としては荒んだ魂の持ち主達を救うのもの、また一つの勤めかと思いますが。カール神父様?」
前を歩く長身の神父の引き締まった背に向かって、彼の名を呼ぶ。
「ええ、そうですね。シスター・ネリーベル…我々は死徒、ではなくて神に仕える使徒。神の御言を以ってして、哀れな
盲目の子羊達を救済しなければなりません…その救済の道は険しく、辛いものですから」
後を歩く修道女のネリーベルの言葉に頷きながら、国防総省の広大なエントランスホールを通り過ぎ、正面玄関口の階段を下りようとした時であった。
「お、あ、あ、あ、あ、あ、あ、あ、あ、あ!!!!!!」
カール神父は最初の一段を下りようと足を一歩踏み出したのだが、石畳の僅かな出っ張りにつまずき、そのまま階段を転げ落ちてしまった。
「神父様!」
ネリーベルは慌てて転げ落ちていったカール神父の元の駆けつけようと、急いで階段を下ったが…
「きゃあああああああ!?」
彼女も石畳の出っ張りに躓き、階段を転げ落ちるのではなく、そのまま飛び越して階段の一番下で伸びていたカール神父の上にダイブしてしまった。
何事かと思い、国防総省を出入している職員達が、のびている彼らのその様子を見ようと周囲に少しだけ集ってきた。
二人は完全に伸びており、ぴくりとも動かない。それを心配した集った職員の内の一人が声を掛けようとしたのだが…
「クククククククク……ハハッハハハハハッハハハッハハ!!!!!」
ネリーベルの下敷きになったまま、カール神父は突然、狂ったように笑い出した。神父の突然のその奇行に周りの職員達は驚き、思わず後ずさった。
「思えばいい機会ではないか!?堂々と異教徒共を狩るには丁度いい…」
上に載ったネリーベルを抱き起こし、立ち上がると、気絶しているネリーベルの頬を軽く叩いた。
「起きろ…ウェルヒムネ。大好きな異教徒狩りが出来るぞ?それも大司教様公認でな?」
カール神父頬を叩かれたので徐々に瞼が開き、ネリーベルは目覚めたが、その瞳には先程の穏やかな色とは違った赤が宿っていた。
「そのようね…クルーウェル神父様?早速、異教徒狩りの準備をしなくてはなりませんね?」
ネリーベルは起き上がると、服に付いた土埃を払い落とし、颯爽とカール神父…ではなく、狂信者『クルーウェル神父』に向き直った。
「それでは私の『十六夜桜』を刀鍛冶に取りに行かねばならないな…その後」
「装備の全てを整え、飛竜船に乗り込み、前線に向かって出立すると…嗚呼、早く戦場に行きたいわ。そして思う存分異教徒共を」
恍惚とした表情を浮かべながら、シスター・ネリーベル…ではなく、『シスター・ウェルヒムネ』はクルーウェル神父の手を取った。
「狩って狩って狩りつくし、奴らの屍を戦場に山として積み、鴉共の餌にしてやろうぞ!」
クルーウェル神父はシスター・ウェルヒムネの手を引き、その場を後にした。
>312
>「何より、訓練中に吐けないってのが一番良い事だ。
>入隊訓練の教官は、隊員が吐いてるのを見ると不機嫌になる。
>『演習場を汚すな』ってね。でも多分、君は大目に見られる―女の子だから」

「特別扱いはありがたいわね。是非VIP待遇でお願い」
先ほどからやたらと脅かしてくるルイの皮肉混じりの言葉に、半分皮肉、半分本音の答えを返した。
果たして2ヶ月も窮屈な生活に耐えられるのか…
訓練の辛さもさることながら、期間中のストレスで自分が暴れださないとも限らなかった。

しかし訓練の事以外にも、ルイの話には聞き捨てならない事柄が幾つかある。
一つ目は彼らオールド・スクラッチが竜の養殖に成功しているということ。
竜ほど世界の秩序から力を汲み出し、それにすがって生きている生物もいない。
どちらかといえば竜は環境が破壊されれば自然消滅してしまう妖精の類に近い存在だ。
それが地力の貧弱な共和国の大地で、しかも人間の手によって管理され生かされているとは…
恐らく共和国トップでさえ持ち得ない力を所有していると見て間違いない。
そして二つ目は、彼らが竜を自殺させる手段を考えあぐねていたことだ。

>『自殺』はご隠居連中の研究に期待……ここだけの話、パンボリック氏の対竜兵器を
>パックするのが襲撃の目的の一つだったんだ」

ルイが話したのを聞いて、ガリーナは何故そんな事で悩んでいるのだろうと思った。
どうして? 私がいるじゃない、と。
「  、ふうん、牧場は作れても竜を自決させる技術までは確立していないのね。
でもそれに関しては大丈夫。『スタンプ』がきっと仕留めてくれるわ。
『チャイム』ほどドラゴンスレイに特化した力じゃないけれど問題無いと思う」
それで少し用心して、自分の能力の話は出さないまま、『スタンプ』による解決案だけを述べておいた。

少し考えてみれば、自分が今こうして無事に生かされていることが不思議に思えてくる。
パンボリックの開発した4種の兵器―――チャイム、スタンプ、ペア、ストーリーは
いずれもガリーナ・アウリチカの持つ能力を抽出・単純化して製造されたものであるが…
もしやオールド・スクラッチはこの事実を知らないのだろうか。
知っているのならば、対竜技術を欲する彼らは私を陸戦兵器のパイロットなどにせず
そのまま実験なり解剖なりの対象にしてしまってもおかしくは無い筈だ。
パンボリックがオールド・スクラッチに握られている情報はほとんどゼロに等しいのかもしれない。

薄氷一枚の均衡の中で、パンボリックはたった一人国や研究所と渡り合ってきた。
時に数日間に及ぶ質疑応答や拉致まがいの招集を受けつつ、彼は彼の修羅場をくぐり抜けてきたのだ。
オールド・ハリーらが屋敷に強行突入という現実離れした力技に出てきた理由も、
単にもうそれしか情報を得る手段が残されていなかったからだとしてもおかしくは無い。
(趣味に没頭したり本家から嫌味を言われたり…何考えてるか分からないあのボーっとした顔で
敵を、悪魔を騙しきってたかもしれないわけだ。ジャイ達が愛想を尽かさないのもちょっと納得)

2ヶ月間ルイの下で訓練を続けつつ、彼らがどの程度の情報を持っているのか探れるようならば探りたい。
ガリーナ・アウリチカの目的が一つ増えた。
316「NAVY」 ◆..OhPeBexU :05/03/05 23:59:04
>315
>「  、ふうん、牧場は作れても竜を自決させる技術までは確立していないのね。
>でもそれに関しては大丈夫。『スタンプ』がきっと仕留めてくれるわ。
>『チャイム』ほどドラゴンスレイに特化した力じゃないけれど問題無いと思う」

「食事事情は問題無さそうだね。ところで」
体をガリーナに寄せると、腰に下げたリボルバーとは別の自動拳銃を懐から取り出し、
弾倉を抜いた上で、それを彼女の膝に置いた。
「聞き忘れてたけど、銃の扱いは大丈夫?
こいつは45口径のオートマチック。少し重いけど、扱い易い」
そう言うとまた別の拳銃を、どこからとも無く取り出す。
「こっちは38口径のリボルバー。ジャムが怖ければ、これにしなよ。
僕は.45のが好きだけどね……38口径は、僕にはいまいち重さが半端なんだ」
38口径を、今度はガリーナの手に握らせて、
「好きな方のヤツをプレゼントしとくよ。
弾は入ってないけど、暇な時はなるべく握っておいてグリップの感触を覚えると良い」
>316
「そっちを貰うわ。ちょうど自分で持ってたのも45口径のセミオートだし」
輪胴式の拳銃をルイに返し、改めてハンドガンを両手で握った。さすがにガリーナの腕力ならば重いという事は無い。
もっともパンボリックの護衛を担当するジャイなどに比べると、彼女が銃に触れる機会は少ないのだが。
「そっちに着いたらウンザリするほど射撃訓練もやらされるんでしょうけど、帝國には銃の効かない敵も多いじゃない?
牛みたいにのんびりした魔法の進歩に比べれば随分早足で改良されてるのに。なかなかどうして追い付けないものね」
共和国軍の武装は、帝國に比べて圧倒的に銃器の占める割合が大きい。
大掛かりな魔法を捨てた共和国が求めた新しい力の象徴とも言えよう。
前線の兵がスナイドル銃で頑張っていた時代は銃の地位も低く、魔法を使えない者が担ぐ武器という意味合いが強かったが
現在では飛躍的に威力や有効射程が増し、利便性・汎用性で一部魔法を凌ぐ所まで迫っている。
それでも鉄と火薬が戦場から魔法を駆逐するまでには至らない。魔力は偉大な力として君臨し続けているのだ。
「世界に魔法なんて無いのなら、きっと話も違ったと思うわ。あんまり非現実的な話をしてもしょうがないけどね」
318「NAVY」 ◆..OhPeBexU :05/03/07 00:16:54
>317
>「世界に魔法なんて無いのなら、きっと話も違ったと思うわ。あんまり非現実的な話をしてもしょうがないけどね」

「反逆の天使たちは」
38口径を受け取ると、彼は喋り出した。
「神の恐るべき雷霆に対抗すべく、地獄の炎を掘り出して筒に詰める事を考えた。大砲の起源だ。
地中深くに埋もれていた数種の原要素と金属、岩石の鉱脈。彼らは地上の至る場所にそれらを見出す。
反逆者の一隊は硫黄と硝石を火薬に、鉄は砲身や弾丸へと精錬し、また別の一隊は火縄を用意した。
かくして誕生した原初の大砲を以て、彼らは天使の軍勢と対峙する。
悪魔の兵器はその驚異的な破壊力で天使を圧倒するが、最後には全能の神が彼らを駆逐する」
どこか遠い目をして喋り続けるルイは、話の終いにケージの天井へ拳銃をかざして、
「コイツはその、悪魔の大砲のずっと遠い子孫さ。遥かな太古から、神の威光と戦い続けてる」
(名無しの看護婦)
>295
仕立て屋はいないが、それに限りなく近い技量をもった人物ならこの野戦病院には数多く存在する。
その内の一人に任せれば、あの共和国軍のものとも違う軍服の一着ぐらいは直ぐに作ってくれるだろう。
だが、あの患者の火傷は思って以上に酷く、法術による長期に渡る治療を続けなければならない。
それに、一応は共和国の兵士だ。後で病室に戻ったら、もう一人の兵士共々装備を没収しておかなければならない。
カイザーの手術が終了し、そのまま彼は地下病棟の集中治療室へと移された。
容態は安定しているものの、ついさっきまで九割以上の確率で死ぬ体だった。状況が予断を許さないことに変りはない。
ネクロマンサーの話によれば、何やら危険な男だというらしいが、内臓は酷く疲弊しきっており、骨や筋肉だってついさっき修復が完了したところだ。
脳にだって疲労が蓄積しており、常人ならば数週間は目覚めないだろう。そんな容態の患者に拘束具を使用出来る訳が無い、というか、使用する
必要が無い。そういうこともあって、カイザーには特にこれと言って特別な処置は施してはいない。
カイザーが万が一に目覚め、起きて病室を出ようと思えば出れるかもしれないが、生憎と病室には回診に来る看護婦以外が立ち入れないように、鍵が掛けられている。
装備品も没収し、あの共和国兵士と同様に、他の場所に厳重に保管されている。容態が回復次第、彼はとあの共和国兵士二人は本国の捕虜収容所に送られるだろう。
>303
「魔道について語らい合うのも悪くは無いわ…でも、たまには魔道から離れてみるのもいいわよ?離れてみて新に発見出来る
ものも沢山あると思うわ。四六時中噛り付いていると、逆に視野が狭くなるものよ?」
イザベラは口元のカップをことりとテーブルの上に置き、大きく溜息をついた。
「私のようになっては駄目よ…私のようになれば当たり前の幸せに安寧出来なくなるわ。私のように、魔道に取り憑かれ、その魂まで
供物に捧げてまでもこの…」
右袖を捲くり、赤十字の刻印を指でなぞると、テーブルの上に純白の表紙で覆われた大辞典サイズの魔道書が顕現した。
「衛生白書の原本、『死霊療法』と契約をするだなんて、狂気の沙汰よ…今の私の手元にその『死霊療法』は存在しないわ。
何重にも封印を施し、とある秘密の場所にあの禁忌の集大成は秘匿してある…あれは人がこの世に生み出した狂気の産物。東方大陸の
半数を不毛の大地に変えたのも、あの『死霊療法』に記されている内の一つの呪法とも言われているわ…でも、私には一つだけ分からないことがあるわ」
衛生白書を手に取り、ぱらぱらと何気なく項を捲るイザベラ。
「これの原本である『死霊療法』…本当に人の手によって製作されたものなのかしら?あの一目見たら忘れなれない禍々しい綴りが、本当に人の手で著せるの?
私は違うと思うわ…あの魔道書を綴ったのは恐らく人では無い『何か』よ。人でもなければエルフでもない。その『何か』が『死霊療法』を綴り、この世界に落としたのよ」
ぱたんと衛生白書を閉じ、テーブルの上に置く。
「…私が『死霊療法』と出会ったのはほんの偶然に過ぎない。いいえ、その偶然も誰かの手によるものなのかもしれない…衛生白書に記されている召喚獣の術式の
一部は、『死霊療法』に記されているものを私が独自に改良したものよ。元のままでは強力すぎて私の手に負えるものではなかったわ…それが何百項に渡って記されているのよ?
狂気の沙汰ではないわ…狂っている。狂っているわ、そんな魔道書が存在していること事態が在り得ない。この世界にはあってはならない要素よ」
そう言い終わると、イザベラは力無くソファーにもたれ掛り、指を鳴らした。指を鳴らすと、衛生白書はすぅっと掻き消え、元の刻印に戻った。
「私は怖いの。それがこの世に存在すること事態に恐怖し、戦慄を覚えているわ…貴女は喜びそうなことかもしれないけど、圧倒的過ぎる存在がたとえ自分の手元にあるとするならば、
それは恐怖すべきことよ…出来ることならば私は『死霊療法』との契約を断ち切りたい。でも、それは無理な話……私はそれに恐怖している反面、心の何処かではその存在に狂喜しているの。
手放したくても手放せない…嫌ね。魔道なんかに手を染めず、学校の先生にでもなっていれば良かったわ…」
後で結っている髪の髪留めを外すと、墨を流したかのように艶やかな黒髪がふわりと広がった。イザベラは解いた髪の毛を指先に絡めて玩び、気だるげな表情を浮かべていた。
(ウィッテ)
>304
紅羽の無邪気な笑顔が、本国に残してきた幼い子供達のそれと被って見えた。ウィッテはそれに一瞬、胸が痛くなった。
幾等人の命を救うという崇高な任を帯びている仕事とはいえ、自分には幼い子供が五人もいる。皆まだ十にも満たない子供だ。
夫は帝國軍の教導部隊に所属しており、本国で犬型獣人の新兵を鍛えている。夫も新兵の訓練で忙しく、家にあまり帰ることがないので、子供達の
世話は自分の年老いた母親に任せている。子供達は母に懐いてはいるが、心の何処かでは両親である夫や自分に甘えたいのだろう。
甘えたい盛りだというのに、それに応えられない自分には時々堪らない程の嫌悪感を抱くこともある。夫も同様に、仕事が忙しいことで子供達を
構ってやれないことに苛立ちを募らせていた。自分も夫も、自身を歯痒く思っており、堪った自己嫌悪は夫婦喧嘩へと発展し、戦乙女に来るときには
夫婦仲は最悪。半ば家を飛び出すという形になってしまった。此処に来てからは手紙などで一回も夫とは連絡は取り合ってはいない。子供達の様子は一向に分からなかった。
出来ることなら、今すぐ本国に帰って夫と仲直りしたい。このような喧嘩ならば学生時代に何度もやったし、仲直りしては愛を深め合っていった。またあの頃と同じように、夫と仲直りし、
愛し合ってみたかった。そして子供達は優しく抱き締めてやりたい。ろくに構ってもやれない自分を許してはくれないかもしれない。だがそれでも子供達に会いたい。
会って抱き締めてやりたい。優しく、優しく、今までの空白を埋めるかのように……

気が付けば、自分は紅羽を優しく抱き締めていた。紅羽の無邪気な笑顔が子供達のそれに被って見えていた時には、既に彼の子供のように小さな体に手を回していた。
「あ…」
視線を落としてみれば、自分の胸に紅羽の顔が埋もれてる。獣人の女(牝)らしく、子に乳を与えるという機能に特化した自分の胸は大きく、紅羽の小さな頭は埋もれて見えなかった。
慌てて抱き締めていた腕を放したが、どうにも衝動的な行動をしてしまった後というのは気恥ずかしいものである。人間からみれば分からないかもしれないが、今の自分は顔が真っ赤だ。
「す、すみません…」
謝ってみるが、謝れば余計に先程の気恥ずかしさが込み上げてくる。自分の尻尾はしゅんと垂れている。
「先生がその…つい可愛かったものですから。本国に残してきた子供達と重なって見えてしまいました…すみません」
323紅羽 ◆KUU/KZ07xo :05/03/07 03:15:35
>322
>気が付けば、自分は紅羽を優しく抱き締めていた。紅羽の無邪気な笑顔が子供達のそれに被って見えていた時には、
>既に彼の子供のように小さな体に手を回していた。
「んむっ!?んんん――――――!!!」
ウィッテに抱きしめられ、息が出来なくなった紅羽は、足をバタつかせる。
ウィッテの胸に埋まっていて分からないが、紅羽の顔は真っ赤になっている。

>慌てて抱き締めていた腕を放したが、どうにも衝動的な行動をしてしまった後というのは気恥ずかしいものである。
>人間からみれば分からないかもしれないが、今の自分は顔が真っ赤だ。
>「す、すみません…」
「ぷはぁっ!」
ウィッテの腕から開放されて、大きく息を吐く。そして、一度深呼吸をする。
「ど…どうしたんですか?いきなり…。」

>「先生がその…つい可愛かったものですから。本国に残してきた子供達と重なって見えてしまいました…すみません」
「あっ……。……あの、僕なんかで良かったら……お子さんの代わりに…なりますよ。
……代わりになれるかどうか…自信は無いですけどね、アハハ……。」
紅羽は、照れくさそうに頬を掻きながら、そうウィッテに言った。
ウィッテの、子供に会えなくて寂しいという気持ちは自分も何となくなら分かる。
責めて、自分が代わりになれれば……そう紅羽は思った。
324名無しになりきれ:05/03/07 04:29:38
>218
(ハインケリス)
>ルシカの闘気を纏ったドラゴン像は本物の竜にも似た咆哮を上げながらハインケリスへと向かって行く
「この気…竜の者か」
装甲ヴァイザーの限られた視界一杯に、ルシカがぶん投げたドラゴン像が迫ってくる。だがハインケリスは眉一つ動かさず、あくまで冷静に対処をした。
構えていた長槍に魔力を込め、竜騎士が竜の御霊に助力を請うための呪文を詠唱する。直ぐにこの周辺を漂っていた太古の神竜の御霊がそれに応えた。
「来たれ、誇り高き神の徒にして友である神の竜…我が名はハインケリス。汝らの御霊と共にあることを望む者なり…」
ハインケリスの体を包み込むように、真紅の神竜のオーラが出現し、それが彼の強靭な脚力に収束されていく。
「竜は高貴なる神の徒だ!貴様のような小娘如きの矮小な体に流れていい血ではないのだ!」
そして眼前に迫った像に対して、急降下したまま縦に一回転し、踵落としを竜の像の顔面に決める。重力による落下エネルギーと回転による遠心力で、凄まじい程の破壊力
を伴った踵は易々と像の顔面にめり込み、踵御年で軌道を逸らされた像は地上に落ちた。
ハインケリスはそのままルシカ目掛けて長槍を繰出そうとしたが、思い直してルシカの頭を足場にし、再び空中へと跳び上がった。

(竜騎士隊)
「その程度の障壁で我等の一撃を防ぎきれると思うな!」
カモシカ型獣人の竜騎士がそのまま障壁目掛けて長槍を繰出す。長槍にはハインケリスと比べれば見劣りする神竜の魔力が込められていたが、それでも神竜の魔力の一撃には
変りはない。障壁と繰出された長槍の矛がぎりぎりとせめぎ合う。
他の竜騎士達も障壁を突破しようと、障壁にそのまま急降下による長槍の一撃を繰出し、せめぎ合っていた。
>318
ルイは人間が築き上げてきた火薬や銃の技術―――人の文明を反逆と呼んだ。
言われて見れば神話の中で人間に火を授けた巨人も、天から反逆者のそしりを受けていたか。

>「コイツはその、悪魔の大砲のずっと遠い子孫さ。遥かな太古から、神の威光と戦い続けてる」

「悪魔…悪魔ねえ。個人的には私、この世に悪魔だなんていやしないと思ってるんだけどね。
どんなに悪い奴でも災いだけをもたらして生きることは不可能だもの。絶対にどこかでボロが出る。
だから世界に許せない奴なんて一人もいないわ。竜だけはどうにかしてあげなきゃ気が済まないけど、あれも愛。
こんな風に生まれてきた自分が好きだし研究所のジイサンたちは素敵にイカしてるし、ルイも好き。
敵だ味方だって目をギラギラさせてるのもそれはそれで格好良いけど…世界はもっといい加減に出来てると思うわよ」

ガリーナは別段誰を恨んでいるわけでもないが、誰に対してでも躊躇なく暴力を振るった。
また何を憎んでいるわけでもなかったが、あらゆるモノを戯れに人に変え、周囲の人間を怯えさせた。
彼女のソレは人間の感情に起因する行動では無かったのかもしれない。人に理解できる域では無かったのかもしれない。
その灰色の瞳からどんな世界を見ているのか、誰にも知る術は無かった。
「―――ふう。あなたの言う通り少し眠ることにするわ。到着したら起こして頂戴」
327鈴木中尉 ◆DDGCBdpW/w :05/03/08 00:01:09
先程軍服が届き、火傷をした手足もどうにか動かせるほどになった。
まだところどころ痛むがこの程度の痛みならばどうにか歩ける。

ここは赤十字だろうと敵国の指揮下にある病院だ。
入院している共和国の負傷兵が捕虜収容所に送られる事は明白である。
だが、誇り高き皇軍軍人としてそれだけはあってはならない。
その為にも同室の歩ける共和国兵に頼んで院内の見取り図を手に入れた。
さらに彼は警備兵の巡回メモも休憩中の兵士から盗んだそうだ。

そろそろ他の病室の明かりが消え始めた頃だろうか。
後は逃げるだけだが、しばらく待って朝方の警備兵の交代を狙うべきだろう。
部屋に看護婦がいないことを確認し、素早く軍服へと着替えて雑嚢と小銃を背負う。
そして軍刀と南部式を腰に下げて階級証と青酸カリを襟に戻して略帽を被った。

自身の準備は終了したが、あのドイツ兵は誘うべきか。
彼の状態は酷すぎる。このまま入院させておくのが彼の為かもしれない。
だが、一応話すだけ話しておいたほうがいいだろう。
他の患者を起こさぬように警戒しながらドイツ兵に近付く。
「おい、まだ起きているか?私は今日ここを脱出する。貴官はどうするか?」
>327
>「おい、まだ起きているか?私は今日ここを脱出する。貴官はどうするか?」
「…あんたは頑丈だな?ヤパーニシュ・ゾルダートはみなサムライだとは聞いていたが…いやはや、ゲルマン戦士の俺もお手上げだよ」
ベッドに横になったまま、首を僅かに動かして鈴木中尉を見る。ヴェルターは苦痛に顔を歪めており、一語一句話すのも辛そうだ。
「しかも俺の装備は全部取り上げられちまっている…何にも残ってないぜ?逃げてもあんたの足手まといだ…俺は俺で何とかやるよ」
最後の方は掠れてしまった。ヴェルターはそう言い終わると、中尉に背を向けるようにして寝返りを打ち、瞳を静かに閉じた。
329カァラ ◆mRmMX8Kgoo :05/03/08 14:47:19
「死霊療法…」
カァラはちょっと熱くなり過ぎたのか、それとも先ほどからの疲れが出たのか、椅子にゆったりと深く腰掛けて、イザベラの話を静かに聞いていた(おや、ミカエルから闇の信号が来ている様です…)
「その名前、一度だけ聞いたことがあります…。」
カァラはメモをしまうと衛生白書を手にとってその表紙をまじまじと眺める
カァラはその伝説の書の複製…複製でさえ、これは共和国の国立研究所が血眼になって探しているほどのものである…が今自分の目の前にある事が半ば信じられなかった
「その複製…てっきり単なる呪文省略用の書かと思っていました…いや、複製といってもこの本からも強力なものを感じます、」
衛生白書が消えると、先ほどの菓子を口に運びながら話し出した
「昔、私がまだ共和国の研究所に居た頃の話ですが、同僚―ラプラスという名の男でしたが―がいました。モグモグ」
カァラは菓子を飲み込むと、一呼吸置いて再び話し始めた
「彼はその、古い術式の研究をしていました。
で、ある日を境に何か徹夜で作業しているようになって、顔はやつれ、目は乾き、その内研究所にも暫く来なくなりました―もぐもぐ」
カァラは菓子を飲み込むと、再び話し始めた
「で、久しぶりに研究所に顔を見せると、デスクの書類を引っ掻き集め鞄に詰めて、すぐに出ていきました。その時こういう言葉を残しました『少し出かける、死霊療法…に鎮静剤を処方してくる』
それ以来彼は研究所に姿を見せず、全くの行方知れずです」
菓子を食べるのを止めると、フードの縁からイザべラの目をじっと見て言った
「私はそれが何の事だか今ようやく分かりました
東方大陸に大いなる打撃を与えし一冊の書、魔道の本質は…」
(ラプラス…記憶の奥に終いこんでいたのに)
途中で言いかけてやめた
「私にもそんな偶然が迷いこんで来るのを楽しみにしていましょう…言っておきますけど、先生っていうのも大変なものです」
カァラはイザベラの腕の十字を見て、身体に物質を封印する魔法の解き方を思い出した
(相当な準備が無いと解くのは無理そうです。今は諦めましょう…)
カァラはふとここにカイザーという召還者が居るかもしれないという事、それから病院の中の火薬の匂いの事などを思い出し、メモ帳を取り出してちょっとした呪文を書いた
日が登り、長距離転位の魔法が使えるようになれば、イザベラの目から逃れるつもりだ
(ここの中ではイザベラさんも強力な魔術は使えないでしょうし、少しは軍部の方にお土産を持って帰らないと、元帥の目の熊が増えてしまいそうですし…)
330カイザー ◆4a9UrY4.4s :05/03/08 20:40:27
≪聞いてるか?聖闘気というのは感情の源である“闘気”と心の力である“聖なる魔力”の二つが組み合わさる事で始めて使用できる代物だ。
 この高等な技を扱う事が出来ればお前の聖騎士としての力も数段・・・いや、数倍にアップすると言っても過言じゃない。
 だが、便利な反面、その為に習得するのはかなり手間取るだろう・・・まあ、高級クラスの聖騎士になれば誰でも使っているがな。≫
「・・・で、俺にその聖闘気を扱えと?」
≪おお、物分りがいいじゃないか。≫
カイザーは当然とばかりに呆れたような表情をして腕を組んだ。
「それぐらい分かりますよ。何年 貴方の弟子をやっていると思ってるんですか?」
≪よし、それじゃあ修行を始めるぞ。≫
「はーい、それじゃあ俺はどうすればいいんです?・・・いつぞやように熊やら猪やらが修行相手なんて嫌ですよ。」
≪(・・・カイザーの潜在能力は計り知れない。俺が鍛えてやれば、俺達・・・三聖を越えれるかもしれない)≫
ブレンテルはカイザーの話を聞いていない。何か物思いに耽ったまま遠くの空を見つめている。
「聞いてるんですか師匠?まだ痴呆が始まるのは早いですよ」
ブレンテルはクルリとカイザーの方へ振り向くと、口元だけに笑みを浮かべて話しかける。目が笑っていないから怖い
≪・・・安心しろ、今日は俺が直々に稽古をつけてやる。ありがたく思うんだな≫
「・・・マジっすか・・・」
ガックリと項垂れるカイザー、どうやら今日の修行は長く辛くなりそうだ・・・


「ギ・・・ギブギブ、ギブアップですって師匠!・・・・・・・・・・・っ!?」
けたたましい寝言と共にカイザーは目を覚ました。その目の先に映るモノは夢の中の景色とは違い、無機質の壁に囲まれた室内であった。
「懐かしい夢を見ていたようだな・・・なんで俺がベットの上にいるんだ?確か、あの男と交戦した後はヴェルターを追う為に病院に入って・・・
 ・・・その後の記憶が曖昧だな・・・とりあえずここは野戦病院のようだな。という事は気絶をした後に治療をしてもらったんだな。」
カイザーは辺りの様子を確認する為にベットから立ちあがろうとするが、右足に力が入らずに寝返りをうつだけの形になってしまった。
(無理もないな・・・さっきの戦いで右足の傷が酷かったからな。まだ回復が完璧ではないのだろう。)
カイザーは自分の右足の様子を確認する為に自分の布団を捲り上げた。
案の定ギブスでガチガチに固められている。良く見ると身体のあちこちに包帯が巻かれていた。
(俺って大変な戦いをしてきたからな・・・これぐらいの傷で済んで幸いだったかも・・・・・・あれ、俺の剣と鎧がないぞ・・・?)
現在カイザーは薄手の布で作られた服を上下に着ている。
その風貌はどう見ても普通の青年で、とてもではないが聖騎士とは想像がつかない。
カイザーは武具を探すが見つからない。気絶している間に何処かへ持ってかれたようだ。
(まあ、鎧は鉄製の安物だからいいが・・・あの剣を勝手に使われたら大変だ。
 あれは普通の剣じゃないから・・・ったく、誰かが勝手に使って怪我人が出ても俺は知らないぞ・・・)
カイザーはまるで他人事のように装備の事を考えている。剣自体の心配はしていないようだ

(それはさて置き、これからどうするか・・・いくら病院と言えども、ここは帝國軍の基地だ。
 あまりボヤボヤしてると危険かもな・・・とは言え、あまり迂闊な行動に出るとすぐに駆け付けて来るだろう。)
今後の作戦を練るが、浮かんでくるモノはどれも得策とは言えないようなモノばかりである。
(・・・とりあえず、この病院内に俺の力を感じる事の出来る奴が少なからず存在している事は確かだ。
 俺の行動を知られない為にも、この病院内にいる間は力を抑えておくか・・・)
カイザーは心を集中する。するとカイザーの気配と聖なる力が波を引くように感じられなくなる。
(・・・俺は思ったように動けないから、明日はゆっくりと入院気分を味わうとしますか。・・・実際はこんな事してる場合じゃないだろうけどな。)
何もすることが無い為、カイザーは目を閉じながら今までの事を思い出していた
(今日は色々あったな。まさか冒険中に召喚されるとは思ってなかったからな・・・それにしてもあの男の巨大魔方陣には驚かされたな。
世界が違うと人の戦法も変わってくるんだな・・・・・・まずこの世界に慣れる事が先決だ。そうしなければ俺の技も最大限に生きてこない)
331アイシア ◆p3oir6C1II :05/03/09 01:46:40
つい先日まで、帝都病院の一室に、アイシアという女魔法使いが、産後の体力回復のために入院していた。
何でも、その召喚獣(決して獣などではなかったが、便宜上こう呼んでおく)は、妊娠した状態で召喚されたのだそうで、
しかも呼び出された直後に陣痛が起こって病院に運ばれ、そのまま元気な女の子を出産したのだそうだ。
戦力にするために召喚したのに、それが暫くはまともな戦力にならないうえに、乳児などというオマケが付いてきたので、
召喚を命じた軍の上層部はたいそうご立腹だったそうで、召喚師一同は小一時間こってり絞られたという。
まあ、具体的に誰を召喚したいとか決めていたわけでは無かったので、召喚師達を責めたところで仕方が無いのだが。

あの波乱に満ちた日の数日後、例のこってり絞られた召喚師達のうちの一人が、親切にもアイシアの見舞いに来た。
意外と若い男で、人の良さそうな顔をしており、アイシアは好感をもったようだった。
「どうだ、もうすぐ退院できそうか?」
「ああ、大丈夫だよ。もう、すぐにでも退院できそう。此処にいながら戦場に貢献できないこともないけどね」
聞く話によると(本人が言っていただけなので、どこまで本当かは定かではないが)、彼女は何百年も生きた大魔法使いなのだそうだ。
戦場には既に何体かの戦闘用の使い魔を送ったのだそうで、それが戦場で活躍しているとなれば、なるほど、病の床に伏しながらも戦場に貢献しているとも言えなくもなかった。
もちろん、病の床と言うほど深刻なものでもなく、単に産後で体力が落ちているだけだが、それでも戦場に行くには早かっただろう。何より、彼女の子供の面倒は誰が見るのだ。
「そうかそうか。いやー、ちんちくりんのくせに、よく頑張ったもんだ」
「ちんちくりんって言うな!」
ちんちくりんという指摘はあながち間違いではないかも知れないが、それを彼女に面と向かって言って、酷い目にあわなかった者はいないとされている。
案の定、しっかりと根に持ったようで、アイシアは早速相手に呪いをかける準備をしている。
余談だが、彼が見舞いに来るよりも前に、この召喚師の上司にあたる軍の上層部の人間が、召喚獣と召喚師との契約に関する注意事項などを言いに来たこともあった。
そのため、アイシアも、相手を殺してはいけないことを十分にわかっているので、いつものようにやりすぎたりはしない。
「悪い悪い。ところで、もう子供の名前は決めたのか?」
「もちろん!生まれる前から決めてたんだから。この子はアンリ。誰が何て言おうと、ね」
生まれる前から付ける名前を決めていたという彼女は、よほど子供が生まれるのが楽しみだったのだろう。
この様子だと、元の世界では、さぞ幸せな生活を送っていたに違いないと、この召喚師は想像したものだったが、現実は案外そうでもなかったりする。
さて、彼女に子供を産ませた張本人までもがこの世界に召喚されたわけではなく、当然ながら、この子を引き取って育ててくれるような知り合いがこの世界にいる筈もない。
まして、戦場で命懸けの戦いをしながら子供の面倒を見るなどという非常識がまかり通るわけがない。
そこで、退院した後、子供の面倒を見てくれる親切な人を探すまでは、戦場での活動は使い魔に任せることを決めていた。

儀式からちょうど一週間後に、アイシアは無事退院した。
今は、帝都の某所にある図書館にて、元の世界で書いていた本の続きを書きながら、軍からの命令を待っているという。
332鈴木中尉 ◆DDGCBdpW/w :05/03/09 23:19:40
>328
やはり彼は来れないようだ。まあ、無理に連れて行くこともあるまい。
それに無理に連れて行こうとして看護婦に見つかれば困る。
もしそうなれば、不本意ながら銃を使う事になるだろう。

「……それでは少々時間稼ぎを頼んでも構わないか?
あまり早く追って来られたらまずいのでな。
私の布団に枕でも詰めて、居ないことを悟らせないでくれ」
ドイツ兵と例の負傷兵に敬礼しながら言い、そのまま病室を出た。

警備兵を警戒し、見つからないように廊下を走る。
見取り図によれば近くに使われていない倉庫があったはずだ。
そこに隠れて警備兵がいなくなる夜明けを待とう。
「……ん」
暗闇の茂みの中、ジェイクはゆっくりと目を覚ました。朝にはまだ早い時間帯である。
「……傷は、まだ塞がってないか」
身体のあちこちがまだ裂けたままだ。出血は止まらない。
…常人ならすでにショック死しているような傷だ。
「さて、と」
バイクを放置していた場所へ戻る。先の戦闘でバイクは見事に潰れていたがトランクは幸い無事だった。
火器と弾薬、そして小道具が乱雑に入ったトランクから45口径の大型自動拳銃を二丁と狙撃用半自動ライフルを取り出す。
……壊れていないか作動を確かめて拳銃を両脇のホルスターに、ライフルを肩に担ぐ。
慣れた手際で弾薬をサイドパックに移し、小道具が入った小型のバックパックを背負う。
……近くに、帝国側の拠点があるはず。
とりあえず現時点の目標はそこ。
余計な荷物を持たず、余計な戦闘をせず、余計なことは考えず。
自分のジョブをこなそう。

永く愛用している黒染めの長銃剣を手に、ジェイクは廃村を後にした。
334名無しになりきれ
        ((⌒⌒)
         ||

       ∩ ,∧,, ∩       , MM、     
      l: lソ::, vv`、l      / ハレiル、     
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        ヒ つつ       (ノ ヽ)

容量完走