>418
>「そういう訳だから俺が翼を生やしてるってのはここだけの秘密で他言無用だよサーシャ。」
「分かってる。充分に承知してるよ。でもさ、私は思うんだけどね、ここの皆は背中に羽が生えている
ぐらいじゃ驚かないと思うんだけどねー…そりゃ急に翼があるってことを明かせば驚くかもしれないけど、
自分を偽って生活するのって辛くないの?」
アラムレイクの言いたい事は良く分かった。だが、いまいちサーシャリカには理解出来なかった。
このイスタリア学園には様々な人種が集っている。生徒は言うまでもなく、教師陣にも特異な種族がいる。
確かに其の中には、未だに異種族になれない人だっているかもしれないけれど、大抵の生徒や教師は
種族の違いや身体の形など気にも留めていない。
今更、背中に翼があるぐらいでは驚くとは思えないけれど…
「私達みたいな有翼人種ってさ、結構窮屈な所が嫌いだったりする人が多いよね。
私は思うんだけどさ、それってやっぱり普段から広い空に慣れ親しんでいるからだと思うの。
広い空を飛べる翼を持っているのだから、思いっきり飛ばないと損じゃない?
それに空を飛ぶのって気持良いし。私は余り高い所を飛べないけれど、自由に飛べるだけでも充分。
でもね、何時かは音よりもずっとずっとずぅ〜っと速い速度で飛んでみたいの」
>420
その放送が入ると、立ち上がり、スカートに付着した草を翼の生えた手で払った。
>「そういえば、学園に隠された宝なんだけどさ。」
>「そもそも、それって誰が隠したんだろう。…それだけでも分かれば宝に近づけると思わない?」
「う〜ん…やっぱり、初代学園長や理事長とかその辺じゃないの?だってこんな学校作っちゃうぐらいの人達なんだし」
ばっと腕の翼を広げ、ニ、三回軽く羽ばたいてみせる。
「でもさ、やっぱりその謎に一番近いのはネェネ先生じゃないの?色々と謎が多い先生だし。
あと、案外“イスタリア学園の怪奇現象”も関係しているとか……」
一度大きく羽ばたいて、数mほど飛び上がる。
「それじゃ、私はこれで。お近づきに慣れて良かったよ。今度また暇があったら、ここで話でもしようね」
そう最後に言うと、更に大きく羽ばたいて高度を上げ、校舎の向こうへと飛び去った。
>420
図書館は静粛に。
誰でも知ってる守り事だが、このがなり声の放送はそんなものお構いない。
おそらく全館で鳴り響いているであろうその内容に、怪訝げに顔をあげる。
「……何?」
イスタリアは普通の学び舎とは違う。色々な事件が起こるのは今に始まった事ではない。
とはいえ、いきなり全校休校となるような事態はさすがに稀だった。
先ほどの教職員を呼び集めた放送といい、どうやら何か大事が起こっているらしい。
「どうしたもんかな」
自分のような既に学士を持つ生徒は、何かの戦力に数えられる事もあるかもしれない。
何処かに待機していた方がいいかと席を立ちかけたが、
「……まあ、いいか」
もし必要とされれば呼び出しがあるはずだ。
それが無いということは、教職員で充分なのだろう。
そもそもイスタリアの教職員は武術か魔術、その他の特殊な技術のスペシャリストだ。下手な国の軍隊より力を持っているだろう。
一生徒の自分が気を揉むこともない。
考え直し腰を下ろすと、閉じかけた『古典呪文全書』をふたたび開き、傍らにメモと筆も取り出した。
「休校となった以上は仕方ない。今日は存分に呪文構成の研究をやらせてもらうか」
有望そうな単語を片っ端からメモに綴っていき、結果を頭でイメージしつつ組み合わせていく。
そうやって思いつくままに呪文構成を書き溜め始めた。
>429
>「分かってる。充分に承知してるよ。でもさ、私は思うんだけどね、ここの皆は背中に羽が生えている
>ぐらいじゃ驚かないと思うんだけどねー…そりゃ急に翼があるってことを明かせば驚くかもしれないけど、
>自分を偽って生活するのって辛くないの?」
「うん、慣れちゃったから辛くは無いよ。…でも」
軽く息を吸い、空を見上げ、次の言葉を告げる。
「――でも、いつか必ず真実を告げなきゃならない時が来ると思う。だからそれまでは、ね。」
隠し事はいつかバレてしまう物、いつか必ずその日が来る。俺は、その日に向けて常に備えているのかもしれない。
>「私達みたいな有翼人種って〜
「有翼人は空と共にあってこその有翼人だもんね。
うん、サーシャが今より更に速く飛びたいのなら、俺に出来る事があったら教えてね。出来る範囲で協力するよ。
まあ、学園生活は長いんだ。焦らず、そして怠けずに頑張ろう!」
>420
>「ガーランドが吉報をお伝えするぜ! 生徒の諸君喜べ!
>本日は全校休校、休みになった! 補講については後日お知らせするそうだ!」
「お、マジで!?…おっしゃ!ラッキラッキー!!」
軽くガッツポーズを決める。今日は良い日になりそうだぞ!
サーシャは放送を聞き、立ち上がった。
>「でもさ、やっぱりその謎に一番近いのはネェネ先生じゃないの?色々と謎が多い先生だし。
>あと、案外“イスタリア学園の怪奇現象”も関係しているとか……」
「怪奇現象か、…よっと、それも関係ありそうだね。」
俺も立ち上がり、軽く身体を伸ばす。
>一度大きく羽ばたいて、数mほど飛び上がる。
>「それじゃ、私はこれで。お近づきに慣れて良かったよ。今度また暇があったら、ここで話でもしようね」
「ああ、俺こそサーシャ会えて良かったよ。また今度!」
飛び去るサーシャに手を振り、別れを告げた。
サーシャが去った後、俺はその足で自分の部屋に戻り、ベットの上で頭の上で手を組み仰向けになる。
(…それにしても、何で今日に限って休校なんだ?)
休校の理由について考えてみる。
今日の天気は晴れ、風は少々。という事は気象は理由では無い。
校舎が壊れた訳でもなさそうだし、まさか理事長の気まぐれでは無いだろう。
(という事は……分からないが、学園内で何かが起きようとしている。…もしくは、何かが起こっているって事だな。)
「…よし、俺が何が起こってるか突き止めてやろうじゃんか!」
勢い良くベットから飛び上がる。
「行くぜ俺!」
ドアノブに手を回し、ドアを開き、そして部屋から飛び出して行く。
…そして5分後、俺は食堂の前に立っていた。
「……なんでこうなるんだ!?」
まったく、無意識とは怖いものだ。…仕方なく食堂へ入る。
「流石に今は空きまくりだな。腹が減っては戦は出来ぬ、か……じゃ、Bセットお願い!」
窓辺の席に座り、外の景色を眺めながら悠々とBセットを食す。
今回はタイムトライアルはせず、食事を味わいながら喉を通す。
「平和だな〜」
思わず呟く。空は晴天、そして吹き抜ける風が心地よい。まさにピクニック日和である。うん、登山するのもいいかも。
…っと、目的を忘れていた。
(先生に聞くのが早いだろうが…本当の事を告げてくれるとは思えないし、まずは学校中を徘徊してみるかな。)
空飛ぶ鳥を眺め、料理を味わう。
「…何が起きてるかは知らないが…イスタリア学園、この俺を見くびるなよ。」
久々に探究心が燃え上がってきた。この俺が必ず謎を突き止めてやろう!ふははは、待ってろ、謎!!
>383>399
二人が立ち去り、生徒達がまばらになった食堂にぽつねんと取り残される。
彼らの言葉を心の中で反芻し、その意味をゆっくりと一語一句ずつ噛み締める。
ミルティアの小さな手と握手を交わした右のゴーントレットの掌には、未だに彼女の
血の通った温かみが残っているように思えた。
夢、というものを自分は見ないが、これは夢ではない。
紛れも無い現実だ。この学園でも特に異質な自分に、人間の学友が二人も出来た。
不意に嬉しさの余り跳び跳ねたい気持ちに駆られたが、それは止めておこう。
幾等人が少なくなった食堂とはいえ、人はまだ残っている。自分の奇行を目撃される訳にはいかない。
小躍りしたいのを抑えながら、食堂を後にしようとする。
>420>428
身分のしがらみに絡め取られ、己の腕を試す機会さえ与えられなかった不遇の過去。
はるか格下の素人たちと戯れとなんら変わりのない喧嘩。どんなに負傷しようと、彼は勝ちつづけた。
たまに出現する強敵。プロ相手にも無鉄砲に全力で立ち向かう精神はおよそ他人の理解を越えていた。
今回も相手は強敵。それも好戦的で度胸もあるとくれば、格好の喧嘩相手だ。
ヨグが出した要求。彼女はどうやら呑むようだ。なんてことはない負けなければいいのだ。
生意気に舌を出し、中指を立てて愚弄する。挑発のつもりかもしれないが、ヨグは微動だにしない。
>「私が勝ったら」
>「手前のナニを切り取って喰わせてやるよ」
言う最中。ヨグに高速で詰め寄る。土が弾け、右足で攻めてくるか、という一瞬。
ヨグも両腕を引き締めて構える。しかし、今度は基本的受けではなく、攻めの一手。
一触しようかというギリギリの間合い。耳を裂くような嫌いな音声が流れる。
>「ガーランドが吉報をお伝えするぜ! 生徒の諸君喜べ!
>本日は全校休校、休みになった! 補講については後日お知らせするそうだ!」
もともとサボるつもりだった休日へ変更。ヨグにとっては本当にどうでもいい知らせ。
彼女も動きを止めて、放送を聞いていたようだが、急に表情を変える。
(しかし、堅物のゲロヂーが当日に休校させるとは――。一体何があったんだ。)
ヨグの注目はゲロヂー――ことゲーロッヂのほうに向けられた。あの人物はあまり好意を抱いていない。
色々世話になったこともあるので、むしろ嫌いな部類に入るのだがそういう人物だからこそ興味をひいた。
>「殺す」
「――は?」
頭部に衝撃が走る。何がヨグは何が起こったのかわからず、頭から地面へ倒れんこんだ。
完全に虚を突かれ、勝敗は以外なほどあっけなく終わる。
綺麗な上段蹴りを終えた彼女の姿をとらえ、意識は闇へと落ちていった。
>424
ふと、男を治癒していると後ろから物凄い訛った声が聞こえてきた。
振り返ると背の高い女性が立っていた、その肩に見るからに重そうな水の入った桶を背負って。
大きな体躯と麦わら帽から垣間見える、眩しいほどの金髪が特徴的だった。
相手が会釈してきたので、とりあえず頭だけぺこりと下げる。
>「ま、とりあえずその傷ば直すべ」
そう言うと彼女の手は、その金髪に負けずとも劣らないほどの眩しい輝きを放ちだした。
「これは…上級魔法!…あなたは?」
目をぱちくりさせながら彼女の魔法を見守る、みるみるうちに男は回復して行った。
>425
男は立ち上がると血を吐き出し、礼を言ってきた。
「私はたいしたことはしてませんわ、お礼なら…ええっと、こちらの方に言ってくださるかしら」
自分に何も出来なかった、というわけじゃないけど、無力さが嘆かわしいわね…
そう思い、少し唇を噛み締める。…まぁ、2年生と6年生に差があるのはある意味とても当たり前なのだが。
>「俺の名はジア・ロン〜
「ジア、ね、私はミルティアと言いますわ。
…それにしても、一体何があったのかしら?あんな酷い傷を負うなんて…」
彼…ジア・ロンと名乗った男の傷は落下の衝撃でついたものだけではない。
その証拠に、普通落下では火傷や目の傷がつくはずはない。
今日の休校と何か関係があるのかしら…?
そう考えると男はまた質問を投げかけてきた。
>「――で、一応聞いておきたいんだが・・・〜
それこそ文字通りきょとんとした顔になる。
「…ええ、ここはイスタリア学園の女子寮裏の畑ですわ。
あなたは…ここの生徒や教員というわけじゃなさそうですけど、一体何故このイスタリア学園に来たのかしら?
それも、女子寮に」
この人は何を言っているのだろう、という表情をそのままに、答える。
>420
「休みだと…?」
嫌な予感がして、ならなかった。
あんな夢を見た後だからだろうが
彼の光景が、再び目の前で起こるのではないか、と言う不安が私を包んでいた。
姿形は変わった物の記憶は次いでいる、この身体。
何時、同じ事が起こっても、おかしくないだろう
だが、折角貰った暇だ、今は身体を休め、回復する必要がある
部屋に戻り、暗くしているか・・・・
これ以上、無駄な能力の使用は危険だ、此処は素直に部屋へと戻り休息を取るか
部屋へと戻り、明かりを入れない様にカーテンを閉める
横からカーテンをガムテープで止めて、完全に光りを内に入れない様にする
それは他の者から、使い魔を見られない様にする為でもある
天井にびっしりと付いた、この使い魔達を
私が地面に輸血用血液のパックを破り床に血をばらまける
蝙蝠の形をしていた、それらは蝙蝠から狼の様な姿となり、血を啜り始める
我々魔族で言えば、可愛いペットだ
さて・・・・夜まで休息を取るとするか・・・・
>413>419
会議室に入ると流石に中は壮観なものだった。
イスタリア学園教師達の勢ぞろいのしかも緊迫した会議の中に入っていくのだ。流石に気後れの一つや二つする。
イリクと共に末席で会議内容を聞いていたが、その内容は少々、というか尋常なものではなかった。
姉妹校のウスタリア学園に侵入者が入り生徒教師数百人が奇病にかかっている。
そしてその侵入者は大胆不敵のもこのイスタリア学園に来ると予告してきたのだ。
「なんだか想像していた以上にオモシ・・・じゃなくて大変な事ねえ・・・」
隣のイリクの耳元で小さく囁きかける。
>421
そこにアレクサンドロフが理事長に質問を投げかけている。
随分と小難しい話を始めたので笑いが噴出してしまった。
このままでは一生徒が教師を馬鹿にしたように感じられてしまう・・・
ちょっと困ったような顔をしてイリクの方を見た後、立ち上がる。
会釈をしたまま姿勢のまま話し始めた。
「アレクサンドロフ先生、思慮深い先生からすると私のような浅薄な者の意見は聞くに値しないかもしれませんが・・・
発言をお許しください。
理事長は情報の少なさも含めて事の重大さをよく現していると思いますの。
あらゆる手段を使おうが使わまいが、怪しい奴は全て捕らえるという結果さえ出せばいいのではないでしょうか。
膨大な人口のイスタリア学園といえども、先生方なら関係者かそうでないかの区別は付きますでしょう?
勿論殺しさえしなければアレクサンドロフ先生のような治癒魔法のエキスパートも多くいますし、問題ないかと思いますわ。」
言葉遣いは丁寧なのだが、本来出席資格がないにも拘らず勝手に喋り出してしまうあたりが未だこちらの文化の礼儀や
常識が身についていない所以だろう。
笑みを浮かべたままそこまで話すと隣のイリクの袖を小さく引っ張り合図をする。
「物騒なお話ですし、私達生徒の身では足手まといになるばかり。ですのでこれで退席させていただきたいと思います。」
あくまでゆっくりと一定のペースを保ったままの口調で付け加え会議室を出ようとする。
(こんな面白イベントはなかなかないわよねえ。これは早速イリクを神輿にして自警団でも作らなきゃ。
話が判る人や腕の立つ人適当にみつくろって・・・楽しみだわ〜)
穏やかな微笑を浮かべたままだが、心の中ではこんな事を考えていたりもした。
>436
今か今かと踏ん反り返っている理事長からの返答を待っていたのだが、思わぬ人物が代りに答えていた。
答えたのは、何時の間にか会議室に入って来ていた生徒であった。
横にはイリクの姿も見受けられる事からして、どうやらその生徒にしてやられたのだろう。
普通なら、教師が一同に会して行われる会議に正々堂々と真正面から紛れ込もうと企む生徒はいないだろう。
しかし現実にいる。流石にこれには一瞬だけぽかんとしてしまった。
「って、ちょっと待ちなさい…」
ようやく我に返って慌てて席を立つと、会議室を後にしようとする生徒…墨を流したかの様な流麗な長い黒髪、
褐色の肌がエキゾチックな女子生徒、アルナワーズを呼び止め、急いで前に回り込む。
「全く…貴女の様な生徒は初めてですよ。真正面から、しかも堂々と会議室に入ってきて盗み聞きをするのは」
はぁ、と大きく肩で溜息を付き、丸眼鏡を取って眉間を押さえる。
「多分、会議内容を全て聞いていたのでしょう…良いですか?今回は貴女のその堂々の良さに感服し、盗み聞きをした事に
ついては不問とします。ですが、この会議内容を無闇に喋ってはなりませんよ。そうすれば、どうなるかはお分かりですね?」
眼鏡を掛け直し、アルナワーズに向き直る。
「この学園に在籍する多くの生徒達は、幸か不幸か怖いもの知らずが多い。大抵の生徒は今回のこの事件を又と無い、
一大イヴェントと思うことでしょうね…ですが、全ての生徒がそういうわけではありません。今回のことは絶対に他言無用です」
きっぱりとそう言い放つと、ようやくアルワナーズに道を開ける。
「さぁ、今日は全校は休校となります。部屋で自習をしていなさい。
…若し、怪しい人物を見かけても、決して生徒の力のみで何とかしようと試みてはなりませんよ?直ぐに先生方を呼びなさい」
会議室の扉を開け、アルワナーズの背を送り出す。
それにしても拙い事になった。一番生徒に報せたくない話題が、いきなり生徒に漏れてしまった。
これで生徒間に下手な不安が募らなければ良いのだが……。
>419>436
予定の開始時間は僕たちが会議室に入った時点で過ぎてたはずだけど、やっぱり会議は始まっていない。
「…怒鳴り散らすほうに一生懸命なんだよな」
理事長はいつも時間がどうとか言うけど、誰かが止めるまで延々誰か、何かに罵声を浴びせて開始を遅らせる。
いつも、とは言っても僕は今まで理事長がいる会議には2回くらいしか出たことがないけれど、
その2回も今日と同じ調子だったんだからやっぱり『いつも』って言っていいだろう。
今日はアハヤス先生が理事長をなだめて、なんとか会議が始まる。
会議っていうか理事長が一方的にまくし立ててるだけだったけど、内容は凄いものだった。
イスタリアの姉妹校に侵入した何者かが盗みを働いた上で病気をばら撒き、さらにイスタリアにも来ると予告。
侵入者の容貌、規模、その他全部不明。…どうしろって言うんだろう。
隣に座っていたアルナワーズが囁く。
>「なんだか想像していた以上にオモシ・・・じゃなくて大変な事ねえ・・・」
うん、今本音が少しだけ顔を出したね。まるで花壇のバラの新芽のように。というか僕ひょっとして利用されてた?
>421
散々がなり立てて革椅子にふんぞり返った理事長に、質問をしようという人がいた。
すげぇ度胸だ。僕だったら絶対放っておく。声のするほうを見ると、
アレクサンドロフ先生が少し芝居がかったような仕草で熱弁を振るっている。
普通はああいう風に考えるものだよなぁ。あそこまでいかないにしても。
>436
横でアルナワーズが小さく噴き出した。ちょうど話が終わったところだったので、
よほど離れたところにいた人じゃなければ聞こえたと思う。実際、こっちを見ている人は多い。
アルナワーズが少し困ったような顔をしてから立ち上がる。いや、そんな顔されても困ってるのは僕も同じなんだけど。
そのまま軽く一礼して話し始めた。ゆっくりと、しかし割と一方的に。短い話を終えると僕の袖を引っ張った。
>「物騒なお話ですし、私達生徒の身では足手まといになるばかり。ですのでこれで退席させていただきたいと思います。」
そのまま出口に向かう。口元にはかすかな笑い。さっきとほとんど変わっていないその表情に裏を感じるのは、
僕が成長したからなのかただの疑心暗鬼か。
>437
アレクサンドロフ先生があわてて前に回り込んで、アルナワーズに釘をさす。
終わるとドアを開けて、出るように促した。素直に従おう。
後ろで小さな音を立ててドアが閉まると、僕はアルナワーズに話しかけた。
「…アルナワーズ、これからどうするつもり?」
言ってしまってから、『用がある』とでも言ってとっとと離れるべきだったかな、と思ったけどもう遅い。
>425>434
「ん〜、やっぱエイリアン様ではなかっただか」
半死半生だった東洋人の少年は、イモ姉ちゃんの活が入るやいなや、むくっと起き上がって礼を言ってきた。
「いやぁ〜、恩に報いるなんてこそばゆいっぺ。ただぁ、ここでくたばられたら肥料の具合がどっちゃらけになりそうだったから
起き上がってもらっただけだぁ〜」
半ば本気な冗談を飛ばし、イモ姉ちゃんはジア・ロンと名乗った少年とミルティアという下級生のやりとりを見て、少し考えた。
彼の怪我は確かにただごとではない。空から降ってきたというのも不思議な話である。
「んまぁ〜、そっただ質問してやっても坊主はちょっと答えられそうもないだよ――っと」
立ち上がってふらつくジア・ロンを支えて、のほほんとミルティアに言う。
「腕の骨は曲がってくっつくといけねぇからそんまま、右目はちょっくら薬調合して腰すえてかからにゃあ治りそうもねぇから、
止血だけにしておいただよ」
そのままひょいっとジア・ロンのよく締まった体を担ぎ上げる。
「とりあえず坊主は、そこの納屋でゆっくりしてもらうべ。男の先生がこの辺りうろつくだけでも袋叩きにされるっつーのに、
男で部外者じゃ何されるかわかんねっぺ。隠れてもらって、そん間になんとかするだよ」
後ろのミルティアにもわかるように言いながら、納屋の戸を開け、ジア・ロンの体を山積みの干し草の上に放り投げる。
「オラぁちょっくら保健室さ行って包帯やらシップやらくすねて来るだよ。坊主は大人しくしとけ。ミルっ子は
どうするだ? 今日は休みだで、ゆっくりしてってもいいだよ」
大きな体を曲げて、ミルティアに顔を近づけ、彼女にだけ聞こえるウィスパーで話しかける。
「・・・・先生に突き出すかどうかは、とりあえずしっかり怪我の処置さしてから決めるべ。坊主の服もボロボロだで、変えの服も
持って来るだよ。・・・・万一のことさ考えて、変装できる服さ見繕ってくるつもりだけんども、正直、一張羅で通してるオラには
よくわかんねぇんだぁ〜。付き合ってくれると助かるだよ」
ここに居てもいいし、自分と一緒にジア・ロンに必要な薬や服をとってきてもいいし――とにかく、彼のことを秘密にしてくれ
さえすれば、好きに行動していいということだ。
イモ姉ちゃんは、納屋の壁に立て掛けてあったフォークでジア・ロンの上にカムフラージュの干し草を積み重ねながら、ミル
ティアの返事を待った。
なんか抗議の声が聞こえたような気がしたが、気にするような神経のアイーダではなかった。
>433
中途半端な姿勢から繰り出された一撃が、いとも簡単にヨグの頭部を捉えてしまった。
こめかみにもろに入ったらしく、相手は気絶して、その場に崩れ落ちる。
「……」
意外な結末に半ば呆れ帰りながらも、取り合えずの勝ちに気が付くと、
両の拳をグッと握って小さくガッツポーズをしてみせる。
「……ふん、口ほどにも無い。そこで死んでろ馬鹿が」
足下に倒れ伏す少年の頭を靴先で二、三度小突くと、スカートの裾を翻し、枝に掛けておいた鎖鎌を取りに行く。
休校の知らせを聞いてか、早くも校庭へ遊びに出て来た生徒たちの声がする。
勝利の感覚に酔っていたシュラルクも、実習の休止を思い出して少し鬱になる。
そのついでに、取り損ねた朝食の事も考えてしまい思わず腹が鳴る。
咄嗟にワイシャツ越しに腹を押さえて、少し赤面しつつ辺りを見回すが、当然ながら其処にはシュラルクと、のびたままのヨグの二人きり。
ふと我に返って、
「馬鹿に付き合うと、こっちまでおかしくなる」
制帽をずらして頭を掻くと、作業を再開した。
鎖鎌を枝から下ろして、草の上に転がり、朝の支度と同じように束ねて、開けっ広げにしたスカートの裏に留める。
得物を人目に付かずに持ち運ぶためとは言え、日に二度も繰り返すのは面倒だ。新しく、もっと簡単な収納方法を考えねば。
ひとまず校舎に戻り、食堂で腹ごしらえをする。先公と鉢合わせするかも分からないが、授業休止で食堂は大分騒がしくなる筈だ。
鎖の音のカモフラージュにはなる。他の間抜けた生徒連中に混じって食事とは面白くないが、また腹を鳴らすよりはマシだ。
後は部屋に帰って寝直し。赤頭の馬鹿なんぞ、知った事じゃない。
シュラルクは立ち上がり、その場を離れようとする。
しかし、数歩進んだ所で何か思い直したかのような素振りで立ち止まると、途端にヨグの倒れている茂みへ踵を返した。
「あの言葉を忘れさせる訳には、な」
負けたら「奴隷」になる約束の喧嘩で、彼は負けた。負けた上にきっちりアフターケアをしておいてやったら、
彼は激しく恥を掻かされる上、シュラルクに一つ借りが出来る訳だ。
当たり所が悪くて、本当に死なれても困る。面倒臭いが、医務室へ運ぶか教員に引き渡すくらいはしておいてやろう。
「ガレー船を漕がせてやるぜ」
少年の制服の襟を乱暴に掴むと、そのまま彼を引き摺りながら、校舎入り口へ歩いていった。
>431-432
「重い……こいつ」
食堂前まで運んだが、いよいよ腕が草臥れてきた。差し当たって職員控え室に放り込もうと思ったが、彼女一人ではかなりきつい仕事だ。
と、食堂を出入りする数人の生徒たちに目が行くが、皆シュラルクとヨグの服装を見ると避けて通る。
連中に手伝いを請うのも難しいし、無理強いすると教員に見付かった時厄介だ。
不良に物怖じしない奴か極端に臆病な奴を捕まえるのが良さそうだが、その手のタイプはどうも見当たらない。
癪だが食堂内の誰かに声を掛けて、適当に押し付けてしまおう。
食堂を覗くと、疎らではあるが生徒の姿が。下手に人数が居るよりは無視され難いだろう。えらく体格の良いのも居る。
「おい、誰か! 怪我人を運ぶのに手、貸してくれないか」
普段なら相手の首根っこ引っ掴んででも「命令」する所だが、今回は慎重かつ穏便に。
ルーシェさんの椅子は空だった。今朝はまだ仕事中らしい。
さて、詰め所にある救急箱といってもせいぜい絆創膏や消毒薬程度。氷嚢などあるわけない。
当然だろう、少し足を伸ばせば立派な保健室があるのだから。
>426
ビニール袋の話は半分冗談だったのだが、相手はそうは思わなかったようだ。
>「え?っと…これ?」
「えーと…」
>「…まいっか。はい」
軽く汚れを叩いて渡してくる。
出来れば使いたくないなあ、と顔に書いてあるのに、この件に関する突っ込みは無い。
………本当にこれ使ったらどうするつもりなんだろ。
>420
放送に一瞬気がそれたが、すぐに気を取り直す。
確かにビニールは傷も無く裏返せば十分使えそうだが、私だったらこんなの絶対使いたくない。
「………破れてるわね」
言い切り、指先でつまみ上げると即ゴミ箱へ。
「ちょっと座って待ってて。おばちゃんごめんね、ちょっと貰ってくねー」
雫が落ちないよう気をつけながら、窓際におかれた引き出しを探る。
「はい。あと絆創膏も。もうあんまり必要じゃ無さそうだけど」
新しいビニール袋に氷を詰め、ハンカチで包んだ物をフェルナンドの前に置く。
今日は休校かあ。珍しい。何かあったのかな。ああ、そういえば
>「そういえば、教職員に呼び出しかかってたなぁ」
「………そうねえ。何があったのかしらね」
どうやら同じことを考えていたようだ。
>「…まぁいいかな」
「えー?それだけ?フェルナンドは何があったのかなーって気にならないの?」
私はすごく気になるけどなあ、と、額の傷に絆創膏を張りながら答える。
言ってから、ちょっとだけ馴れ馴れしかったなと反省した。
そういえば腕を引っ張って連れてきちゃったっけ。あー、もしかしたら迷惑だったかも。
反射的に踵を返そうとしたが、一人でここに置き去りはあんまりだと思いなおす。
「せっかくだから今日は部屋で休んだら?あ、保健室か部屋までちゃんと辿り着けそう?」
取りあえず彼が部屋を出るまではここに残るつもりだった。
一人で残していったら最後、おばちゃんのマシンガントークの餌食になるに決まってる。
いい人たちなんだけど…どうして中年女性って皆噂話が好きなのかしらねえ。
「んぐんぐ…ぷはー!」
果汁100%オレンジジュースを一気に飲み、一息付く。
氷が大量に入っていたので頭がキンキンするが、それもまた一興。
これからの行動…考える必要は無いかもしれないが、作戦を立てるのも重要だ。
(…とりあえず怪しそうな場所を重点的に周るのが一番だな。)
と、決める。
(でも…この学校、どこも怪しそうなんだよな〜)
だが、結局決まらない。
(ま、学校中をウロウロしてれば謎に突き当たるだろ。)
なので、さっき予想したとおり考えた意味は無かった。
Bセットも終盤に差し掛かり、止めを刺してやろうとフォークを伸ばすと…
>440
>「おい、誰か! 怪我人を運ぶのに手、貸してくれないか」
ピタっとフォークを止める、食堂の入り口から女子の声が聞こえてきた。
(怪我人……休校と何か関係してるのか?)
とにかく行ってみよう、Bセットの残りを口の中に掻き入れ、席から立ち上がり、食堂の入り口へ向かう。
声の主に近づく。服装からして不良…いや、スケバンと言うべきだろうか。
まあ、ここでは便宜上、不良ムスメと(心の中で)呼ぼう。
…ん、ちょっと待てよ、クラスで見たことあるような……まあいいや。細かいことは気にしない。
「手伝いに来てやったぞー」
状況を確かめるために怪我人とやらを調べる。
「目立った外傷は見当たらないな。……って、コイツ、今朝の不良男じゃんか。」
気絶男騒動の1番の被害者とも言える男、えーっと確か…グヨ?とか呼ばれてたような…いや、なんか違うな…
とにかく、今朝の不良男が気絶しているのだ。
あれからそれほど時間は経過していないのだが、またしても不良男の身に何が起きたのだろうか?
「…コイツ、今日は厄日だな。気絶に縁がありすぎる」
短時間の間に、俺が知る限りコイツは2度も不幸に見舞われている、同情するぜ。
とにかく、保健室へ連れて行こう。そろそろ会議も終了した筈だし。
不良ムスメの顔を見る。服装に似合わず可愛らしい顔をしている、が今はそんな事を気にしてる場合ではない。
「それじゃ、俺がコイツの足を持つから、君はコイツの腕を持って保健室に運ぼう。」
俺も男だ、女子に重い下半身を持たせる事はしない。――まさに紳士だ
倒れてる不良男の足を持つ為、不良男の上半身側から下半身側へと廻る。
先程まで上半身側に居た事により顔を近くで見て分かった事だが、不良男の顔面の一部が異様に赤くなっている。
間違いなく何かがクリーンヒットした痕跡だろう。
「…見事なほどコメカミが真っ赤だな……ねえ、コイツの身に何が起きたの?」
不良ムスメに聞く。まさかとは思うが、既に学校内で何かが起きているのだろうか?…ならば、一刻の猶予も残されていない。
謎よ、貴様は俺が解明するのだからな。
「それじゃ、持ち上げるぞ……せぇーの!!」
掛け声と共に不良男の足を持ち上げ、目指す先は保健室。
>437
こっそり会議に紛れ込んで内容を聞くだけのつもりが、うっかり発言してしまい少々後悔していた。
会議内容はわかった事だし、足元が明るいうちにでるつもりだったが流石にそこまで上手くいかないのは世の常らしい。
扉の前まで来た時、目に写っていた扉は突然大きな壁に変わってしまう。
「え・・・わっ?」
突然の変化に驚き小さく悲鳴をあげ、見上げるとそこには巨大な顎と鼻が・・・それがぬっと角度を変え顔を覗かせてくる。
アレクサンドロフが扉の前に回りこんでいたのだ。
巨体というのはそこにいるだけで威圧感を醸し出すもので、その威圧感に押されるようにイリクの側まで後退りした。
呆れるような口調で注意をするアレクサンドロフを見ながらイスタリア学園教師の能力に改めて感嘆していた。
アルナワーズとイリクが座っていたのは入り口近くの末席であり、アレクサンドロフの席からとても近いとは言いがたい。
如何に自分の動作が鈍くとも、心理的な虚をついた状態であの距離から回り込まれるとは思っていなかったのだ。
だが、アレクサンドロフの呆れながらも穏やかな口調のお陰でアルナワーズの心理的な余裕も出てきた。
寄り添うようにイリクの腕に手を絡め、少々引きつったままだが何とか笑みを浮かべ応える。
「あら、先生ったら。私は友人のイリクの付き添いでこの会議に参加していましたのに、盗み聞きだなんて心外ですよ?
それに事の重大さは理解して退席すると言うのに・・・安心してください。むやみに会議内容を喋ったりしませんから。」
アルナワーズは嘘は言っていない。事実を述べているだけだ。ただ、真実や真意を述べていないだけで。
そして一礼すると開かれた扉から出て行った。
>438
「ふ〜〜〜〜」
背中で会議室の扉が閉まる音と共に大きく息を吐く。
流石に緊張して精神的疲労も大きかったのだ。だが、これから始まる面白イベントの事を考えれば然程のものでもない。
>「…アルナワーズ、これからどうするつもり?」
「ん〜〜そうねえ・・・・」
イリクから声をかけられ、考える振りをしながら廊下を歩き始める。
そして角を曲がった時、急に後ろを向いてイリクと向かい合う。
そっとイリクの頬に手を添わし、やんわりと顔を固定すると目線を合わせるため少し膝を折った。
目と目が合い数秒。囁きかけるようにゆっくりと口を開く。
「イリク・・・私がどうするか。ではなく、貴方がどうするか、なのよ。
イスタリア学園は襲撃の脅威に晒されているのに、無防備のままにさせておくのは罪じゃない?
知った者の義務を遂行しなきゃ。アレクサンドロフ先生の言葉をよく思い出してみて?
>この会議内容を無闇に喋ってはなりません
つまり話す相手をちゃんと選ばなければいけない、という事なの。
>一大イヴェントと思うことでしょうね…ですが、全ての生徒がそういうわけではありません
そう、全ての生徒がイベントと思うわけではないから。イベントと思う生徒だけ・・・。」
穏やかな微笑で、イリクの目をじっと見つめたまま続ける。
「>今日は全校は休校となります。●●で自習をしていなさい
授業に縛られる心配はないの。自分達で何をするか考えて行動をするのよ。
>怪しい人物を見かけても、決して生徒の力のみで何とかしようと試みてはなりませんよ?直ぐに先生『方』を呼びなさい
怪しいものを見つけたらどうするのか、理事長が言っていたわよね。
でも、生徒だけの力では駄目なの・・でもアレクサンドロフ先生は先生『方』と教師ではなく『方』とつけたわ。
なぜかしら・・・?」
じっと見つめるアルナワーズが気付かないほどのスピードでしかし確実にイリクとの距離を狭めながらゆったりと問いかける。
曲解もいいところな解説を重ねているのだ。だが、突然目線を合わせられ、それを外されず、一定リズムで刻まれる言葉に例に
よって例の如く催眠効果の言霊を乗せられているこの状況下でイリクの心にどう響いているだろうか?
数瞬の間を置きそっと問いかけの答えをイリクに告げる。
「先生『方』には貴方のような職員も含まれているということなのよ。
わかる?これはアレクサンドロフ先生からの遠回しな依頼なの。
勿論貴方ひとりでやれと言っているわけじゃないわ。協力者を募り共に事態に当たってくれ、という・・・ね。
でも、私はアレクサンドロフ先生に絶対に他言無用といわれているわ。
つまり、あくまで中心は職員であるイリクで、私はサポート以上の事はするな、という事ね。」
そう言うとふっとイリクから目線を外し、ゆっくりと狭まっていたからだの距離も離す。
「大丈夫よ、難しく考えなくても。イスタリア学園は教師だけでなく生徒も皆頼もしい人たちが揃っているもの。
それにね、こういう時には『縁』ってものがあるものよ?
ただこうやってぶらついていれば縁のある人たちからやってくるからのんびり待ちましょ。
私は他言無用といわれているからサポートくらいしかできないけど、難しい事じゃないわ。
『襲撃者が来るかもしれない。共に協力して対応しよう。』これだけ貴方が言えば良いのだから、ね。さ、いきましょ。」
明るい微笑をイリクに送り、あてのない縁を待つ校舎遊行へと誘った。
>419
>「先日、我がイスタリア学園の姉妹校の一つ、ウスタリア学園に侵入者が現れた!」
(ふーん、随分と物騒な話ねー…って、人事じゃないんだっけ。)
一応ゲーロッヂの話を最後まで聞いていたリエンの感想がこれだった。
普通の教師ならばこの話を聞けば生徒を護ろうだのこれからの対策はどうしようだの考えるところである。
だが、リエンは新米教師にも関わらずそんなことは微塵も考えてなかった。
むしろゲーロッヂのいい加減さに呆然、と言うより感心していた。
(あそこまで適当だと逆に天才よね…今に始まった事じゃないけど。
あんなんが理事長やってるんだから世の中面白いわよねー)
と事件とは全く関係ないことを考えていた。
(ま、要は怪しい奴がいたら殺れってことでしょ。さーて、朝ご飯食べに行こうかなー)
朝っぱらからガーランドのどでかい声で起こされたリエンはまだご飯を食べていなかった。
朝ご飯は寝坊してでも食べるのがリエンの信条。考えるより先にてくてく食堂の方へ歩いていった。
>420
>本日は全校休校、休みになった! 補講については後日お知らせするそうだ!」
(えー、今日学校休み…補修とかするならまた考え直さなくちゃいけないなー。)
授業の進め方、配分などに気を使ってるリエンは一度決めたことを変えるのが嫌だった。
教師生活にもようやく慣れ、やっと自分と生徒のペースを合わせられるようになってきたが
こう言った授業時間の変更などにリエンはまだ慣れていない。
(しかも…どーせ勉強熱心な生徒さんが休みだからって私のところに聞きに来るだろうし…
あーあ、あんまり嬉しくないなぁ…ま、いっか。朝ご飯食べてから考えよー)
そう考えがまとまったところでもう人気の少なくなっている食堂へ足を運んだ。
(朝はしっかり食べないとー力が出ないーフンフンフーン♪)
訳の分からない鼻歌を歌いながらにこにこしながら食堂に入る。
とりあえず、パン2枚、コーヒー、スープ、サラダをトレイに取り、適当なところで席に着く。
「いっただっきまーす♪」
心から美味しそうな表情を浮かべ、パンにかじりつく。
(…とりあえず今度生徒にやらせる召喚術の確認、その時に配るプリントの作成…それからー…)
空いた時間を有効に使おうと今日の予定を立てるリエンであった。
ゆっくりと緩慢な動作で廊下を歩き、やっとの思いで保健室に辿り着く。
もともと運動が苦手な草人だ。大会議室から保健室はそう距離が離れてはいないものの、彼にとっては
酷く長い道のりに思えて仕方がない。腕に相当するツタを引き戸に掛け、ガラガラと戸を開け中に入り、どっこいしょと日当たりの良い窓辺のデスクに腰掛ける。
それにしても大変な事になった。ウスタリア学園に甚大な被害を与えた者が、このイスタリア学園を狙っていると言うではないか。
ツタを伸ばしてデスクの上に置いてあった、濃縮された植物用天然栄養剤のボトルを取り、頭に相当するツボミを開いて流し込む。
一息ついたところで学園全体が重大な岐路に立たされているという深刻な問題に頭を抱えたくなるが、自分はやれるだけのことをやろう。
そもそも戦闘能力が皆無に等しい、保健医の草人に出来ることは限られている。ならば、出来うる限りの事をするしかないではないか。
自分に出来ることといえば、怪我や病気を直すことぐらいである。
アレクサンドロフの言葉を借りるならば、学園は戦時下にあるというわけだが、それ位のことしか出来ない自分が歯痒い。
「ダレモ傷付カナケレバ良イガ…」
片言の言葉で呟く。草人は争いを好まない種族だ。
更に言及するならば、殴られても殴った相手の手を気にするほどお人好しな種族でもある。
そのような性格だから、絶滅の危機に瀕するほど狩られてしまうのではなかろうか。だが、それもまた一つの生命の在り方だろう。
窓辺から差し込む、昼に近い穏やかな光を全身に浴びながら、栄養剤のボトルを煽った。
>419>421
事が物凄く重大だということは分かったが、何も戦争状態にあるというのは言いすぎではなかろうか。
しかし、そのアレクサンドロフの発言はこの学園と生徒達を大事に思うが故なのだろう。
(でも、何か行き過ぎている感じねー…ちょっと聖職者って怖いかも)
無精髭と頬の傷が目立つ、人間の神父の横顔からは何も窺い知ることは出来なかった。
>420
(うわっ。進度拙いのにー…どうしようかしら)
会議室を後にしたディーネは職員室に教材を取りに行こうと思ったが、ガーランドの放送に足を止める。
最近、思ったほど担当科目が進まないのだ。このままでは次の試験の範囲を狭めなければならない。
どうしてもそれは避けたい。となると、生徒達に課題をたくさん出して無理にでも進めるしかないだろうか。
(ま、頑張ってもらおうかしらねー。学生の本分は勉強にあるんだから)
強引に自分の中で進度の問題を締め括ると、食堂へと向った。
朝食はまだ摂っていない。今日は少しばかり寝坊してしまったからだ。
流石にこの時間帯、食堂に殆どの生徒達の姿はなかった。皆、朝の授業に備えて教室に向ってしまったのだろう。
「ウニ丼セットを一つ、お願いします」
がらんとしたカウンターで料理を注文すると、間髪入れずに目の前にほんの数秒前に注文したウニ丼セットが置かれた。
流石イスタリア学園食堂のおばちゃん。どういう技を使っているかは知らないが、料理を正確且つ迅速に人外の速度で作る。
出されたウニ丼セットをトレイに載せると、適当な席を探した。
>445
「あら、リエン先生も朝食まだだったの?」
トーストに噛り付いているリエンにそう話し掛け、彼女の隣の席に座る。
「それにしても妙な事になっちゃったわねぇ…」
テーブルの上に置いてあった調味料入れから醤油が入った小瓶を取り、それをウニ丼に掛ける。
「何だか物騒で嫌ね。正体不明の奇病だなんて…安心してウニ丼も食べられないわ」
とか言いつつもウニ丼を箸で美味そうに頬張るディーネ。序に頬張った後はアサリの味噌汁で流し込んだ。
「まぁ、この学園には戦闘のエキスパートが何人もいるみたいだけど、ウスタリアだってウチと負けない位の学校じゃない。
不安よねぇ……私達、一体どうなっちゃうのかしら?」
不安とは程遠い様子でディーネはウニ丼を頬張り続けた。
>434
そうだ、こいつの名前はミルティアだった。
・・・・これからは名前で呼んでやるか。前とは随分と印象も違っているしな。
「ああ・・・・そうか。ここは女子寮の裏庭か・・・・いや、もちろんそれは知ってるんだが・・・・・しかし参ったな、大体なんで
畑なんぞあるんだ?」
それが何か? と、言わんばかりのミルティアからの質問返しに、俺は言いたいことをまとめきれずに
口の中でもごもごさせる。
ええい! 男らしくない! それが自分だと思うと余計腹が立つわ!
・・・・だが、正直に話しても一発で物狂い扱い、簀巻きにされて指導室にぶち込まれるのが目に見えている。
何故かって?
俺が逆の立場だったら、間違いなくそうするからだ!
>439
俺が、どうにもふらつく足と煙を噴出しそうな頭に耐えかねていたところで、麦わら金髪の女が助け舟を出してきた。
「こら、放せ。いくら重傷の身とはいえ、女に担がれるのは我慢がならん」
抵抗としようにも力が入らん。
・・・・ぬう。
しかもどうやら、当面の判断がつくまで俺を納屋に閉じ込めておくつもりらしい。
・・・・この大女、ニコニコと朴訥そうな顔をしているくせに、恐ろしく実際家だな。
ミルティア一人ならいくらでも誤魔化しようはあるんだがな・・・・ここは大人しくしておくか。
納屋の戸が開けられ、俺は干し草の上へ無雑作に放り投げられる。
「うおお・・・・・!!」
すぐにごろごろと左右に転がる。
気の弱い奴ならショック死するぞ!
この女の言ったとおり、俺の両腕の骨はみぞれ状のまま放置されているようだ。痛すぎる。
「貴様! 怪我人は傷が悪化しない程度に慎重に扱わんか!」
そんな俺の文句も馬耳東風、女は持った三叉の農具で干し草をかき集めていった。
すごい勢いで、
「・・・・・お日様臭い」
俺の上へと。
ミルティアと大女が何やら話し合っているが、内容がわかったところでどうしようもない。
歩くことも満足にできんこの状態では、この二人の慈悲にすがるしかないからだ。
・・・・なるようになれ、そうするしかない。
俺の一番嫌いな言葉だな。
現在地:女子寮、裏庭の納屋の中
行動:干し草の下で、黙って横になっている。
状態:両腕粉砕骨折、右目破裂、ほぼ全身に軽い火傷、内臓に僅かな損傷
>419>420
恐らく、イスタリア学園は創設以来未曾有の危機に瀕しているのではなかろうか。
自分が赴任する前にこれほど大きな事件があったかは知らないが、今の学園は
厳戒態勢に入っているといっても過言ではないだろう。同席していた教師達が皆
殺気立ち始めている。特に、アレクサンドロフ先生が。
(争いごとは、勘当された時の喧嘩で充分なんですけどね…)
幾等教師達が学園危機の事実を隠そうとも、ここの生徒達を甘く見ない方が良い。
彼らの中には諜報などのスパイ活動に関して玄人並みの逸材がいたりする。
その手に掛かれば忽ちの内にお祭り騒ぎが好きな生徒に知れ渡り、生徒間でどうにか
しようという機運が芽生え始めるに違いない。こうなると厄介だ。
早急に生徒会に協力を依頼し、生徒だけで下手な行動を起こさない様に呼びかけなくては。
この危機には教師や生徒がばらばらに行動しただけではとてもでは無いが太刀打ちできない。
生徒と教師が一丸となって事の対処に当たらない限り、イスタリアもウスタリアの二の舞だろう。
会議室を後にすると、自室からミノタウロス専用の戦斧を持ち出し、肩に担いで校舎周りを巡回する事にした。
普段ならば用務員が校舎の見回りをするものだが、単純に考えてもし用務員が怪しい人物と遭遇したと
しても、まともに太刀打ち出来るとは思えない。それに、普段から校舎の見回りは自分がやっていることだ。
こうやって巨大な戦斧を肩に担いで歩く姿は全校生徒が知っていることだ。だから別に怪しくも何とも無い。
>434
「おや、ミルティアさん、アイーダさんの農作業のお手伝いですか?」
男子寮を回り終え、次の女史寮の裏庭にある菜園…とは言い難い、結構大きな畑の傍を通り掛かった所で
見知った生徒の一人である、ミルティアの姿を納屋の前で認めた。聞けば、この畑は六年生のアイーダなる女子生徒がたった
一人で開墾し、耕したそうだ。この畑から取れる野菜は学園に必要な分のおよそ半分をまかなっていると言う。
成程、確かに色々な野菜が女子寮の広大な裏庭の一角を埋め尽くしている。
一角といってもかなり広い。多分、自分一人でも一週間以上耕すのに掛かる面積だろう。
それを人間である彼女はたった一人で開墾し、鍬を入れ、豊かな土穣に変えていったのだ。大したものだろう。
そしてそんな彼女を小さな体で手伝っていただろうミルティアにも感心する。良い娘だ。
だが、本当に11歳で小柄なミルティアに農作業の手伝いが出来ているのだろうか。少し心配だ。
どう頑張っても力仕事は出来ないだろう。となると、力を余り使わなくて済む仕事か何かを手伝っているのか。
兎に角心配だ。このような小さくて可愛らしい少女に何かあってはいけない。野良仕事というものは似合わない。
「…何か私にお手伝い出来ることはありませんか?ミルティアさん一人だけではアイーダさんも人手が足りないでしょう。
私でよろしければ、野良作業の一つや二つ、こなしてみせますが?」
ミルティアがアルベリックにとって典型的な『人間の小さな可愛らしい少女』というのも起因していると思うが、
この少女を前にすると父性本能と言うもの妙に疼いて仕方が無い。愛娘を溺愛する父親の心境に似ているのではないか。
アルベリックは戦斧を手短な切り株に立て掛けると、白衣をいそいそと脱ぎ始めていた。
>441
しばしの葛藤の後、断腸の思いで差し出したビニールをノンストップで捨てられたことには多少ショックを覚えたが、
作って貰った氷嚢を後頭部に当てながらしみじみと思う。あぁ、打撲傷はやっぱり冷やすのが一番だな、と。
とはいえ腫脹部分はかなり引いていると言えるので、それほど氷を使う時間は長くなくて済みそうだ。
しかし気を失うほどの衝撃を受けたわけなのだから、今は平気でも、後に取り返しのつかないことになるかもしれない…、
などと考えてしまうのはフェルナンドの悪い癖である。可能性未来で考えるのは必ず最悪な未来を、と。
慎重なのは決して悪いことではないとはいえ、慎重さも度が過ぎると臆病。さらにフェルナンドの運の悪さも絡む。
だからこそ、「悪い癖」である。せめて人並みのポジティブさは持ちたい、らしい。
>「えー?それだけ?フェルナンドは何があったのかなーって気にならないの?」
独り言のつもりだったのなが、耳聡く聞かれていたらしい。この至近距離で聞かれない方がおかしいとも言えるが。
「うーん…まぁ知りたくない訳じゃないけど…知りようもないし…」
知りたくない、と言ってもそれはそれで間違いはないかもしれない。知りたいと思う、そこまでならまだしも、
知ろうと行動する、さらには知ってしまうと、何か厄介なゴタゴタに巻き込まれてしまいそうだからだ。
「危険なものがないのなら…知れるなら知りたいと思うけどね」
だが厄介ごとがなければ、やはり知りたい話だ。知的好奇心は、フェルナンドにも普通の人間程度はある。
それにしても、額に絆創膏って結構恥ずかしいかもしれない。
>「せっかくだから今日は部屋で休んだら?あ、保健室か部屋までちゃんと辿り着けそう?」
「じゃあ部屋に戻るよ…。帰れると思う…たぶん」
当然だが、フェルナンドが保健室に寄るなどという火の中に飛び込む選択肢を選ぶはずがない。
「なんだかんだで結構体調はよくなってるからさ、部屋でゆっくり休もうと思うよ」
少なくとも、この控え室に残るという選択はありえない。フェルナンドならストレスで昏倒してしまう。
>444
アルナワーズは僕の質問にすぐには答えず、小さく唸りながら歩き出した。
一瞬、これ逃げるチャンスじゃね?と思ったけど、こっちから聞いたのに
向こうが答えを出す前にいなくなるのは失礼だと思い直して、とりあえずあとについて行った。
角を曲がったところでアルナワーズが急に振り向く。手を伸ばして僕の顔に触れた。
そっと置かれたその手に何か有無を言わせないものを感じたのは、僕が成長したからなのかただの(ry。
そのまま、僕の目を見ながらアルナワーズは淡々と話す。
初めは詭弁だとしか思えなかったけど、言われているうちにそれが正しいことだと感じることができた。
>『襲撃者が来るかもしれない。共に協力して対応しよう。』これだけ貴方が言えば良いのだから、ね。さ、いきましょ。
最後にそういって、アルナワーズは身を翻した。そのまま歩き出す。僕はその後について歩き出した。
(いやいやいやいや。詭弁じゃん。一分の隙もなく詭弁じゃん。何であれを正しいと思うんだ?僕は一体どうしたんだろう)
歩き出してしばらく。頭が冷えてくるとさっきのやり取りに疑問がわいてくる。
確かに見詰めあうと素直にお喋りできないほど弱気な僕ではあるけれど、さすがにあれはおかしい。
「ねぇ、やっぱりこういうことは先生たちに任せるべきだと思うんだけど…」
前を行くアルナワーズにおずおずとながら声をかけた。
「相手はウスタリアをめちゃくちゃにした連中だよ?僕らじゃ足手まといになるだけだよ」
もちろんここにいる以上、僕だってそれなりに戦えるつもりだし、故郷では野盗を退治したことだって何度もある。
だけど、実際にその『つもり』がどこまで通用するかは当然僕にはわかるはずもない。
>448
何か言いたそうな顔で考え込むジアを見ながら、少し考える。
…そもそも何故この女子寮を知っているのかしら…
この寮に不埒な輩が忍び込む事は稀にある。そういうのは殆どが酷い仕打ちを受けて放り出されるのだが。
その手の輩なのだろうかと少し考えるが、すぐにそれはないと判断する。
そもそもそれにしては様子がおかしいし、畑に落ちてきた意味もわからない。
どこかの窓から放り出されたにしたってここまでひどい傷、それに火傷を負っている意味がわからない。
確かに酷い仕打ちがあれば、多少の傷は当たり前だが、致命傷になるほどの罰を受けさせるはずがない。
>449
そうこう考える間にふと話し掛けられる。
> 「とりあえず坊主は、そこの納屋でゆっくりしてもらうべ。〜
「確かに…そうですわね、このまま放っておいたらそれこそまずいことになりますわね」
ジアを担ぎ上げた女の後ろを歩きながらその意見に同意する。
納屋に入るとジアを干草の上に無造作に投げ出した女は、そのままおもむろにジアに干草を被せていく。
その慣れた手つきに少し目を奪われてしまう。
毎日のように農作業をしているのだろう、ということはこの畑はやはり、この女性のものなのか。
ジアが物凄い勢いで抗議の声を挙げているが、あのまま放っておいて他人に見つかるよりはいいだろう。
>「オラぁちょっくら保健室さ行って包帯やらシップやらくすねて来るだよ。〜
最初のほうは2人に、後半はミルティアの耳元で彼女だけに聞こえるように、女は話し掛けた。
「そうですわね…私はもう少しここに居て彼を見張っておきますわ。
服に関してはまた今度一緒に選ばせてもらいますわね、似合いそうな服を考えておかなくちゃいけませんわね」
そう言って少し笑う。出て行った女の後、残されたジアに話し掛ける。
「私は外を少し見ておきますから、動いちゃダメですわよ。
傷が治るまでは面倒見るから、その間は大人しくここにいてもらいますわね」
そう言うと納屋の戸を開け、外に出る。
>449
外に出て、納屋の戸を閉めるとふと聞きなれた声が聞こえてきた。
>「おや、ミルティアさん、アイーダさんの農作業のお手伝いですか?」
聞きなれた…ありえない場所での声に驚き、声のほうを見るとそこには黒いミノタウロスが居た。
彼は、このイスタリアの教師であり、ミルティアにはやたら懇意に接してくれている恩師である。
…だが、ここは男子禁制の女子寮。
「アルベリック先生、おはようございます。ええと…そ、そうです、アイーダさんの農作業のお手伝いをさせてもらってるんですわ
…それにしても先生、何故こんな女子寮の裏庭までいらしたのかしら?」
取り敢えずジアのことを隠すために口裏を合わせる。
恩師に嘘をつくという行為が少し彼女の胸に刺さったが、今は仕方ない、と自分に言い訳をする。
そして同時に自分の中に沸いた疑問をぶつける。ここは生徒の男子は愚か男教師だってうろうろしていたら叩き出される場所なのに。
>「…何か私にお手伝い出来ることはありませんか?〜
「えーっと…」
農作業の手伝いをすると言ったアルベリックの好意に言葉が詰まる。
白衣を脱ぎ、準備万端なアルベリック。どうすればいいのだろうと考え込む。
「そ、それじゃあ取り敢えず畑に水をやるのを手伝ってもらえますか?」
頭に浮かんだ咄嗟の言い訳。農業には詳しくない彼女でも唯一知っている水やりをすることでこの場を乗り切ろうと考える。
>442
窓際で食事していた生徒が一人席を立ち、ヨグを引き摺るシュラルクの元へやって来る。
見覚えのある顔だ。相手もこちらをどこかで見知っているような、そんな目をする。
名前こそ思い出せないが、死霊術科で見た覚えは無いので恐らく全科共通の一般教養で同じクラスだったのだろう。
彼はのびたままのヨグの怪我を調べて開口一番、
>「目立った外傷は見当たらないな。……って、コイツ、今朝の不良男じゃんか。」
「今朝から何か、やらかしてたのか。本当に有名人だな」
手伝いの生徒がヨグの足を持ったので、シュラルクは反対側に回って、ヨグの腕を掴んだ。
職員控え室か、いざとなったら食堂に放置する心積もりだったのだが、相手の保健室に運ぶと言うのに反対はしなかった。
いい加減疲れてきたが、乗り掛かった舟だからついでで保健室まで世話してやろう。
>「…見事なほどコメカミが真っ赤だな……ねえ、コイツの身に何が起きたの?」
「……ちょっと、な」
あまり具体的な噂になっても困るので、表情と口調に適当に含みを入れつつ答えを濁した。
二人して、掛け声に合わせてヨグの身体を持ち上げると、保健室へ歩き出す。
>446
「三年生だろ?」
気絶から醒めないままの不良少年を運びながら、
「共通クラスで見た事あるな、私は死霊術科だけど。名前、シュラルクってんだ。ついでで覚えといて。
それと、あんたが何処の科か知らないけど、死霊術だけは止めときな。生徒も教師も、変態と冷血動物の二種類しか居やがらない」
シュラルクの歩調が急く。何度か床に滑り転げそうになりながら、ようやく保健室前まで辿り着く。
「実際の所、選択を後悔してる。実習だけが楽しみだけど、今日も授業休止ってね……ロクな事が無い。愚痴っても仕方無いけど」
保健室へ行くのがほんの少しばかり面倒だった理由の一つは、幾らか遠かった事。
もう一つは、入学以来イマイチ馴染めないでいる保険医の居る事。
あの、緑色の奴。人間の手足を模る太いツタと、頭部に相当する巨大なツボミが至極苦手なのだ。
手の平で頬を叩いて気合を入れ、ドアの隙間から中の様子をそっと覗う。
「さて、と。今日はあのグリーン・ジャイアントの当直でないと良いんだが……」
窓から燦々と差し込む陽の光に、床へ映し出される保険医の姿。どうやら大当たりだ。
手伝いに来てくれた男子生徒へ向き直り、苦笑いを浮かべて
「すまん。先、入ってくれないか? あの先生苦手でな」
>453
一瞬、不良ムスメは考え込んだ様な素振りを見せた後に、
>「……ちょっと、な」
と呟いた。
「……?」
当然の如く俺には意味不明だった。
休校との関わりは謎のままだったが、深くは追求する必要も無いだろう。突発的な事件では無いようだし。
気絶している不良男の足を持ち上げ、運ぶ。
保健室と食堂の距離は意外と長いらしく、なかなか辿り着かない。調子に乗って下半身を持ったのはいいが、腕が疲れてきた。
>「三年生だろ?」
「……ん?……あ、俺か!ん、その通り、3年生だよ。」
聞かれて数秒間の間は、彼女が発した言葉が誰に対してなのか分からなかった。
そして、俺に対する質問だと気付くのにはもう1秒ほどの時間を有した。
>共通クラスで見た事あるな、私は死霊術科だけど。名前、シュラルクってんだ。ついでで覚えといて。
>それと、あんたが何処の科か知らないけど、死霊術だけは止めときな。生徒も教師も、変態と冷血動物の二種類しか居やがらない」
「ああ、俺は武術科に入ってるから大丈夫だよ。…うん、もしも科を変更することになっても死霊術科はやめとくよ。」
死霊術科。その言葉自体が不吉な感じがするからずっとスルーしてたので、今までその存在すら忘れかけていた。
「変態と冷血動物の二種類しか居やがらないのかもしれないけど、その科に属してる君はまともそうじゃん。
顔だって可愛いし、服装を変えればかなりモテると思うぜ。」
フォローなどでは無く、彼女と会話した印象を話す。
初印象は『不良ムスメ』だったが、よく考えてみれば怪我人を保健室に運ぶなんて善人にしか出来ないことだろう。
「あ、俺の名前はアラムレイク=イクスート。
呼び方はアラムとか適当に呼んでくれて構わないからね。これからよろしくなシュラルク」
彼女のあだ名を考えようとしたが、シュラ(…修羅?)とかシュラとかシュラぐらいしか思い付かなかったので却下した。
そんな会話をしていると、廊下の先に保健室が見えてきた。
これで、この重い不良男ともやっとおさらばだ。手遅れだったら葬式ぐらいには出席してやるぜ。
そして保健室の前に到着し、不良男を廊下に置く。
と、そんな事を考えていると、シュラルクが保健室を覗き込んでいる。
そして、俺の方へ振り返り、こう話す。
>「すまん。先、入ってくれないか? あの先生苦手でな」
「…ん?まあいいけど。」
会うのが嫌な先生など保健室の担当に居ただろうか?俺には特に断る理由も無いので、その希望に答える。
>446
―――コン、コン、ガラガラガラー
保健室のドアをノックする。そして返事を確認せずにドアを開ける。
「怪我人発生でーす、失礼しまーす」
保健室の中に居たのはブロッサム先生だった。
(なるほど、シュラルクはこの葉っぱさんが苦手なのか。…確かに、一緒に外で遊ぶタイプじゃないな。)
彼?は機敏な動きが出来ないので見ているこちらが焦ってしまう。
まあ、それがこの種族の特徴なので俺達が焦っても如何する事も出来ないのは分かっているのだが、それでもなかなか慣れない。
「ブロッサム先生、気絶してる怪我人が居るので見てもらえますか?…ってか見てください。ベットの上に投げますよ!…うらっ!!」
廊下に放置してた不良男を持ち上げ、ベットの上に放り投げる。そしてボスッ、というクッションの音と共にベットへ伏せる不良男。
…くっ!?…やばい。不良男を投げた時、腕の筋肉が軽く攣った…
悟られないように腕を伸ばして、…よし直った。……ふぅ、危なかった、無茶はするもんじゃないな。
>440
屋敷はひたすら清潔な空間だった。
周辺の住民たちから悪魔が棲むとも、阿鼻叫喚の地獄だとも噂されていた建物は、一点の染みもない白い世界だった。
ただひとつそこに棲む魔術師を除いては――。
魔術師は禁呪という禁呪を調べ尽くし、一点の罪の意識もなく人間を実験体といて用いた。
実験体の一つはまだ年端もいかぬ少年。実験のたびに激痛が襲うが、少年はその時の感情を言葉がわからない。
彼の胸に飛来したものは無で、楽しくも悲しくもない。おぞましくもうれしくもない。
何かあると。自分の用途には何か感情を伴うと思っていたのに、彼の心には何の波紋も立たなかった。
少年は人間ではない。見かけ、造りは間違いなくそれなのだが、生まれながらにしての欠陥を除けば人間なのだが…。
感情も持ち、造りも人間なのにどうして人間ではないのか?なぜなら少年は――――――なのだから。
>454>453
夢。夢を見た。
どこか懐かしい感じでいて、思い出したくない記憶。
まるで映画を見ているかのように第三者の視点で見ていたヨグは突然浮遊感を感じ――。
「――はべしっ!」
ベッドへ投げ出されていた。
目覚めは最悪だが、視界は良好。おでこの辺りが若干じんじんと痛みがあるが、生活するのに支障はない。
ここは保健室のベッドだろう。いつも隠れて寝に来る以外にはあまり立ち寄らない場所だが、ちゃんと覚えている。
ベッドの前に若干青みを含む黒髪の生徒が立っていた。若干だが、ヨグよりも背は高い。
なぜ自分が保健室のベッドで寝ていたのか、という疑問で一杯で難しい顔をして考え込むこと15秒。
頭のてっぺんにある一本だけある毛がピンと立ち、難しい顔から一変して納得した顔をする。
「なるほど。お見舞いですか?」
>450
>「危険なものがないのなら…知れるなら知りたいと思うけどね」
ふうん、と気の無さそうな返事をしながらも、つい片眉があがっってしまう。
絆創膏を貼るため外してあった眼鏡を手に取り、ねえフェルナンド、と切り出す。
「―――何のリスクもない『情報』なんて、この世にあると思う?」
ん?と首を傾げて、少し曲がった眼鏡をかけ直してあげる。
だがまじめな顔もそこまでだった。
「………なーんてね!やだな、冗談よ冗談!」
吹き出しそうになるのを必死で堪える。だって………ねえ?
「第一私たちはこの学園にいるのよ?なのに危険なことってなあに?
あ、もしかして、勝手に調べて先生に怒られること?
やだー案外慎重なのね?あの理事長室に忍び込んだって、命の危険までは無いわよ…多分ね」
ひとしきりころころと笑うと、手元のごみを片付ける。
語尾が少し弱気になってしまったのは、理事長室に関してはいろいろ怪しい噂があるからだった。
「―――そろそろ大丈夫そう?動けるようなら途中まで送るわ」
頃合を見計らってフェルナンドに切り出す。さすがの私もだんだん居心地が悪くなってきたのだ。
へーあれがリリちゃんの彼氏なのー。中々いい男だね隅に置けないねっておばちゃん!
声大きいです。ぜーんぶ筒抜けなんです。勝手にくっつけないで下さい。第一相手に失礼でしょ?
………あーあ。ルーシェさんのお話はまた聞きたいけど、しばらくここには寄り付かないでおこうかな。
だって絶対、根掘り葉掘り聞かれそうなんだもの!
なーんにも話せるような事は無いんだけどなあ。正直にそう絶対信じてもらえなさそう。
「お邪魔しました!」
後ろに声をかけ、戸を開け………思わず絶句する。
>453 >454
あのヨグが!
気絶して!!
しかも二人がかりで運ばれてる!!!
「うそ………」
あまりの事に唖然と見送る。…信じられない。いったい何があったのかしら。
ちらっとしか見えなかったけど、なんか額が赤かったような……どこかにぶつけたりしたのかな?
「そういえば、貴方が怪我したのと同じ場所よね?」
額を指差しそうになったのは寸前で思いとどまる事が出来た。
それにしても今日はなんだか怪我人ばっかり。やだな、何か変な呪いでもかかってるのかしら?
>452
「わかっただぁ〜。したらば、見張りさしっかと頼むだぁ〜よ」
ミルティアの楽しげな返事を聞いて、イモ姉ちゃんは金髪ぴこぴこ保健室のある校舎へと足を向けた。
>446>453>454>455
「花先生ぇ〜、オラだぁ〜。ちょっくら色々わけてもらいに来ただぁ〜よ」
勝手知ったるなんとやら、ノックもせずに口を動かしながらドアを開ける。
花先生ことフラワーソンズとは、入学以来六年間に渡っての親しい付き合いを重ねてきた間柄であった。
大らかな花人の先生と、開拓農家出身の呑気で素朴なイモ姉ちゃん。初対面から、なんとはなしに気が合ったのだ。
さらに医術科の才媛と保険医という関係から訪ねることも多く、気安い仲になるのに大した時間もかからなかった。
イモ姉ちゃんにとっての保健室とは、貴族にとってのサロン、庶民にとってのお茶の間のような所であった。
「おんやぁ、朝っぱらから怪我人だか。休みだからってはしゃぎすぎるんでねぇだよぉ〜」
先客の後輩三人に軽くのほほん声をかけ、そこらの棚を勝手にごそごそし始める。
包帯、シップ、ガーゼに添え木、そして各種医薬品をがさがさと脇に下げたズタ袋に放り込んでいく。
「ま、こんなもんだぁな。最後に火傷の薬もらってくべ」
言って、花先生の全身をジ〜っと、上から下までよ〜く観察し、
「こいつだぁな」
ピっと素早く、慣れた手つきで葉っぱの一枚を千切りとった。
別に問題はない。人間で言えば伸びすぎた爪や髪を切ったようなものなのだ。
イモ姉ちゃんの植物の診たてに間違いはない。複雑な花人の体も、ここ三年ほどで完全に把握できた。
「悪りぃなぁ〜、今度、ベッドに使ういぃ〜い土差し入れっからなぁ〜」
にぃっと笑って手に持った葉っぱをひらひらとやる。
これをすり潰せば、火傷に最高の塗り薬になるのだ。
現在地:保健室
行動:必要な医薬品をかき集め、フラワーソンズの無駄な葉っぱを一枚千切る。
>453>454
廊下でひそひそ声が聞こえたかと思うと、次の瞬間にはドアがノックされてから開けられていた。
>「怪我人発生でーす、失礼しまーす」
「アア…其処ノべっどヲ使ッテクレタマエ」
デスクの傍に掛けてあった白衣をツタの一本で手繰り寄せると、肩に羽織り、ノロノロと椅子から立ち上がった。
>「ブロッサム先生、気絶してる怪我人が居るので見てもらえますか?…ってか見てください。ベットの上に投げますよ!…うらっ!!」
「分カッタカラ、怪我人ヲ乱暴ニ扱ワナイデ欲シイ」
入ってきた生徒は怪我人を乱暴にベッドの上に放り投げていた。保険医としては嘆かわしいことだ。
怪我を負った人物がどのような人柄であれ、傷ついている者を更に痛めつける様な真似だけはして欲しくない。
一歩ずつ緩慢な動作で怪我人が寝かされたベッドに歩み寄り、怪我人を上から覗き込むようにして診察する。
側頭部が若干腫れている。どうやら何かに激しくぶつけたか、何者かに殴打されたのだろう。
ツタでぺたぺたと触り、念のため触診を行う。別にこれといって酷い怪我とは思えないが、万が一を考慮して詳しく調べる。
「……喧嘩、ダナ」
診察が終ると不意に言葉が口を突いて出た。怪我は予想した通り酷いものではない。
湿布を張っていれば一週間程で完治する、怪我の内にも入らないものだ。
>455
>「なるほど。お見舞いですか?」
「イヤ。見舞イデハナク、彼ラハ怪我シタ君ヲ連レテ来テクレタノダヨ」
生徒の顔をぺたぺたと触っていたツタを離し、顔を上げてじっと彼を連れて来た二人の生徒を見る。
「誰ガ遣ッタトカ、私ハ其ノ様ナ事ヲ訊ネル心算ハ無イ…ダガ、無闇ニ乱暴ナ真似ヲ働イテハナラナイ。
万ガ一ニモ当タリ所ガ悪ケレバ、彼ハ側頭部ノ頭蓋骨陥没骨折ヲ引キ起コシテイタカモシレナイ」
足元からはみ出ているツタを冷蔵庫まで伸ばし、扉を開けて中で冷やしてあった湿布を一枚取り出す。
湿布を足のツタから受け取り、手に相当するツタで生徒の顔にぺたりと貼り付ける。
「本来ナラバ一週間程腫レガ続クガ、コノ湿布ナラバ今夜迄ニハ引イテイルダロウ」
器用にツタで傷病者手当ての書類をデスクの上から引っ張り出しながらそう言う。
「サテ、名前ヲ教エテクレ。規則デ、傷病ノ手当テヲ受ケタ者ハ記録セネバナラン」
白衣のポケットに差してあったボールペンをカチカチと言わせ、書類に書き込む用意をする。
>457
そこへ見知った顔のアイーダがノックも無しに入ってきた。
彼女は医薬品が整理整頓された棚を開けると、整列していた医薬品の順番など関係無しに必要なものを
漁り出しては肩に掛けていたズタ袋に放り込んでいく。その一部始終をツボミを彼女の方に向けて見届ける。
そしてこっちに近付いてくるなり、首の辺りからはみ出ていた葉っぱの一枚をもぎ取られてしまった。
>「悪りぃなぁ〜、今度、ベッドに使ういぃ〜い土差し入れっからなぁ〜」
「別ニ気ヲ遣ワナクテモ良イ。ダガ、次カラハ医薬品ハモウ少シ丁寧ニ扱ッテ欲シイ」
自分の葉っぱをひらひらさせていたアイーダに向ってそう言うと、白衣のポケットの中から小さな小瓶を取り出す。
「ドウセナラバこれモ持ッテイケ。怪我ヤ病気ニ一番効ク、草人ノ樹液ダ」
自身の樹液が濃縮還元されたものを封入した小瓶をアイーダに投げ渡す。
草人の花蜜は非常に栄養価が高くて美味であり、体から滲み出る樹液はありとあらゆる病気や怪我に作用する。
>455>458
>「――はべしっ!」
不良男はベットに乗った直後、奇怪な声を出して目を覚ました。
「お、目を覚ましたか。良かったな〜、うん、ショック療法成功!」
辺りを見回した直後、不良男は難しい顔をして固まってしまった。
その間にブロッサム先生は不良男の診察を終了し、一言こう告げた。
>「……喧嘩、ダナ」
不良男の風貌からすれば尤もな理由だ。特に疑うことも無い。
相手は誰だか知らないが、不良にとって喧嘩など日常茶飯事なので、休校とは無関係のようだ。今更詮索する必要も無いだろう。
先程まで難しい顔をしていた不良男の表情が急に明るくなった。そして、
>「なるほど。お見舞いですか?」
「うん、そうそう。怪我で倒れてしまった君に会う為に果物を持って、
リンゴがいいかい?それともバナナ?……って、ちがーーーう!!」
>「イヤ。見舞イデハナク、彼ラハ怪我シタ君ヲ連レテ来テクレタノダヨ」
俺の変わりにブロッサム先生が代弁してくれた。
一呼吸置き、シュラルクを指差す。
「彼女が気絶してるお前を発見して、食堂に助けを呼んだんだ。
それで俺は彼女に協力してお前を運んだんだ。だから、礼を言うなら彼女に言いなさい。」
ブロッサム先生は俺とシュラルクへ話しかける。
>「誰ガ遣ッタトカ、私ハ其ノ様ナ事ヲ訊ネル心算ハ無イ…ダガ、無闇ニ乱暴ナ真似ヲ働イテハナラナイ。
>万ガ一ニモ当タリ所ガ悪ケレバ、彼ハ側頭部ノ頭蓋骨陥没骨折ヲ引キ起コシテイタカモシレナイ」
「…はい」
その言葉にどう反応すればいいのか分からなかったので、無難な返事をする。
>457
>「花先生ぇ〜、オラだぁ〜。ちょっくら色々わけてもらいに来ただぁ〜よ」
突然ドアが開かれ、そこから随分と体格の良い女子生徒…女子だよな?…が保健室へと入ってきた。
>「おんやぁ、朝っぱらから怪我人だか。休みだからってはしゃぎすぎるんでねぇだよぉ〜」
「………俺はあんま関係ないんだけど…」
そっと呟く。しかし彼女には聞こえていないだろう。
方言の訛りが激しい大柄な人。それが彼女への第1印象だった。
大柄な女子生徒は持っていた袋に次々と医薬品をぶち込んでゆく。
>「ま、こんなもんだぁな。最後に火傷の薬もらってくべ」
(…あんなに沢山持って、何をするんだ?……って、待てよ。
怪我人がいなきゃ医薬品なんて使いやしない。ならば、怪我人が発生している…今度こそ休校と何か関係があるのか?)
「ちょっと、そこのお姉さん」
手に持った葉っぱを振っている大柄な女子生徒に話しかける。
「それだけの薬の量だ。そっちでも負傷者がいるみたいだし、俺が協力しようか?」
俺でも多少の役には立つはずだ。それに、怪我人と休校の関係だけでも確かめて置きたい。
それに、保健室は薬の匂いが嫌で あまり長居したくない場所なのだ。
>451
『相手の精神や意思を強制的に操るような術はともかくとして、幻術や催眠術というものは技術的にそれ程難しい術では
ありません。
基本的な技術さえ身につければ後の術的応用技術というものはないのです。
ただ、基本技術を重ねていくだけの術です。
私が手に平に出すドラゴンの映像と貴女の出す映像、違いはありますがそれはイメージと重ね方が違うだけで、技術的
には違いはないのです。
幻術師に必要なのは高度な技術ではなく、使い場所、使い時、相手の心理状態などを的確に把握する鋭い洞察力と柔軟
な発想なのです。』
>「ねぇ、やっぱりこういうことは先生たちに任せるべきだと思うんだけど…」
>「相手はウスタリアをめちゃくちゃにした連中だよ?僕らじゃ足手まといになるだけだよ」
後ろからおずおずとイリクに話しかけられたが、アルナワーズは振り向かない。
幻術教師からいわれた言葉を思い出し、しかめっ面をして舌を出していた。
優れた催眠術はかけたあと相手に間を置かせる事により、反芻させ、より深い催眠状態へと落としていく。
だが、逆にイリクに考える時間を与え、疑念を生じさせてしまったのだ。
自分の催眠術の失敗を渋々ながら認めていた。
無理をせずこれからの行動をポンポン与えて最初の意思決定まで考えがまわらないようにするべきだった。と反省してから
ようやく振り向く。
振り向いた顔にはしかめっ面は既に泣く、苦笑したような表情になっている。
「ん〜〜仕方がないわねえ・・・」
イリクが押しに弱い性格だと踏んだまではよかったが、その弱い性格に積極的な行動を植えつけるという事自体無理があった
のだろう。
まだまだ未熟だったと反省しながら言葉を続ける。
「言っちゃったら面白くないと思ったけど、種明かししてあげる。あの会議であの理事長の話し、おかしいと思わなかった?
ウスタリアに侵入者が『いつの間にか』入って奇病がはやり、今度はこのイスタリアに来る。それだけだったでしょ?
とっても不自然じゃない?」
イリクの反応を見ながら相変わらずのペースで話し続ける。
「教師を集めて授業は中止。厳戒態勢のような事言っているけど・・・ね。
まず、ウスタリアで一切の戦闘がなかったって事。そして相手の情報が何もないのにイスタリアにくるって言う予告だけ。
それに私達がこうやって出てこられているってのも変よね。
本当なら緘口令が敷かれて然るべきじゃない?
挙句の果てに授業中止しただけで生徒には何も知らせず自由にさせている。
外出禁止とか、事態を知らせて警戒に当たらせるとかするくらいしなきゃ、予告された意味ないわよね。
これらから考えると結論は一つ。教職員による大規模な防犯訓練、なのよ。
侵入者は来るでしょうけど、理事長や学園長が雇った人たちで危険はないと思うのね。
アレクサンドロフ先生は生真面目な人だから全て判って言っていたのか、素で言っていたのかは微妙なところだけど、先生達は
ちゃんと判っていると思うわよ。
本当にウスタリアを滅茶苦茶にしてイスタリアに予告進入できる勝算がある連中ならこんなのんびりしていられないし、私は真っ先
に逃げるもの。
だから安心してこのイベントを楽しみましょうよ。」
イリクをたぶらかす事に失敗した以上、これ以上言葉を重ねるのは無意味。
と言う事で、観念してアルナワーズは自分の思っている事を正直に話した。
「それに、あなたは音頭を取るだけで良いのよ。役割分担って奴?ほら、なんだか保健室が騒がしいし、良い出会いがあるわよ。」
話しながら歩いているといつの間にか保健室近くまで来ており、そこに見える人影を指差しながらイリクに明るく笑いかけた。
現在地:保健室付近。
行動:イリクを誑かす事を諦め、真意を話す。
>447
> 「あら、リエン先生も朝食まだだったの?」
「あ、おはよー。なんか寝坊しちゃってねー。」
隣に座ってきたディーネに挨拶をしつつ、彼女の朝食内容に目を奪われた。
「う、ウニ丼…?」
(へぇ…ここウニ丼も置いてるんだ…)
いきなり目の前にウニ丼を置かれてはもはや朝食どころではない。
リエンはトーストを持ったまま彼女がウニ丼を食べる姿に釘付けになった。
> 「何だか物騒で嫌ね。正体不明の奇病だなんて…安心してウニ丼も食べられないわ」
> とか言いつつもウニ丼を箸で美味そうに頬張るディーネ。序に頬張った後はアサリの味噌汁で流し込んだ。
「そ、そうねー。」
(いきなり朝から食べる物じゃないわよねー、確かに美味しいけど…。
うわっ一気に行った、おーおー、朝からイイ食いっぷりねー。
で、最後はみそ汁ですか…うんうん、なかなか分かってるじゃなーい。)
既にリエンの思考は飛んでいた。侵入者の件でも今日の予定でもなく、同じテーブルの上のウニ丼へ。
(…ウニ丼なんて置いて頼む人なんているのかしら…ここにいるか。
まぁここなら何が置いてあってもおかしくないけど…いつも食べたい人がいるってこともなさそうだしー…
でも、ウニ丼って高いし… !! ディーネ先生って何気にお金持ち!?)
> 「まぁ、この学園には戦闘のエキスパートが何人もいるみたいだけど、ウスタリアだってウチと負けない位の学校じゃない。
> 不安よねぇ……私達、一体どうなっちゃうのかしら?」
「へっ!?あ、あぁそうよねー。でも、いきなりその犯人に不意打ち喰らったからウスタリアに被害が及んだ訳でー。
こうして情報が入って、ここの教師達が警戒してればそうそうやられることもないんじゃない?
でも、まぁ用心に越したことはないかもねー、なんか犯行予告なんかしちゃってるし。」
思考をウニ丼から今回の事件に無理矢理戻し、トーストを持った手が止まってることに気づく。
ウニ丼を食べるディーネを横目で見つつ、一枚目のトーストを食べ終え、その後にスープを少し飲む。
「ふぅ…"正体不明の奇病"ってのも気になるけど、盗まれたアイテムの方も気になるわね…
研究中のマジックアイテムってことは…それで世界征服でもするつもりかしらねー。」
リエンは事件の危険性よりも、むしろ犯人の行動の方が気になっていた。
リエンはこれ以上あまり深く考えずに食後のコーヒーを楽しむ。
【現在地】食堂
【行動】朝食を取りつつディーネと事件について話す
>454>455>457>458>459
アラムレイクは保健室の引き戸を開けると、ヨグの身体をベッドへ放り出した。
固くて分厚いマットに背中を打ち付け、短い叫びと共に不良少年は目を覚ます。
「やっとご起床なさったか。あんたも上手いな、アラム」
武術科らしく荒っぽい真似をする彼に続いて、シュラルクもおずおずと部屋に入る。
滅多に立ち寄る事の無かった所為か、乾いたシーツと消毒液の匂いがひどく懐かしい。
部屋にはフラワーソンズと生徒三人だけで、他のベッドは皆空いていた。
普段より若干早起きな今朝に急な眠気を覚え、シュラルクは大欠伸をする。
保健医が、最後に会った時から相も変わらずの片言めいた口調で
>「分カッタカラ、怪我人ヲ乱暴ニ扱ワナイデ欲シイ」
「大した怪我でもないじゃないのさ……」
やはり苦手は変わっておらず、彼のツタの滑らかな動きをちらと見ただけで二の腕がむず痒くなる。
仕方無いので治療の間はヨグのベッドから視線を逸らし、ガラス棚に並ぶ薬品のラベルを読んでいた。
>「なるほど。お見舞いですか?」
「惚けてやがる」
アラムの背中に肘を張り、耳元でささやくように言った。
>「彼女が気絶してるお前を発見して、食堂に助けを呼んだんだ。
> それで俺は彼女に協力してお前を運んだんだ。だから、礼を言うなら彼女に言いなさい。」
唐突にアラムからフォローが入ったので、ひとまず腰に両手を当てて尊大な態度でヨグの前に出ると、
まさか「奴隷」発言を忘れてないだろうなと、眼光で威圧しておく。
彼の頭頂部から真っ直ぐに立ったアホ毛を指で弾いて、
「そういう事だ。私が校舎裏で倒れてたあんたを見付けた。
そして食堂までは私一人、食堂から保健室までは彼――アラムと二人で担いで運んだんだ。分かるなヨグ君、ん、ん?」
>「誰ガ遣ッタトカ、私ハ其ノ様ナ事ヲ訊ネル心算ハ無イ…ダガ、無闇ニ乱暴ナ真似ヲ働イテハナラナイ。
>万ガ一ニモ当タリ所ガ悪ケレバ、彼ハ側頭部ノ頭蓋骨陥没骨折ヲ引キ起コシテイタカモシレナイ」
わざとらしく小指で耳を穿って、
「結局大した事は無かったんだろ? 良かったじゃないか」
もろに疑って掛かるような説教が気に入らず、思わず墓穴を掘ってしまう。来なければ良かったかも知れない。
が、後悔は先には立たないので、開き直って更に付け加える。
「私やアラムが疑われているなら心外だな。確かに、先生の患者の内ほんの数人は私が作ったかも分からんが……」
シュラルクの言葉を遮って、上級生のアイーダ・ホーランが騒々しく保健室へ入ってきた。
彼女とも直接喋った事は無いが、女子寮の裏の畑は彼女のものだ。割と有名人。
ド厚かましくも次々と棚の薬品を取っては自前の袋に詰め込んで、仕舞いには保健医の身体の一部までもぎ取っていく。
見るからに頑強そうな彼女の体格に押され、シュラルクは保健室の隅に追いやられてしまう。文句を言う隙も無い。
この田吾っ作くらい野暮なノリが保健医ブロッサムにあれば似合うのでは、とふと思う。
お堅い喋りよりも、鈍さに相応な田舎者らしさがあれば違和感が多少は薄れるだろうに。全く、奴は面白くない。
決して悪い奴ではないと分かっていても、半ば生理的な嫌悪というのは簡単に拭えるものではない。
「……疲れた。もう、帰って寝る」
保健室の面々をその場に残して、ドアから出ようとした。
>460
前の廊下を歩くは同級生のアルナワーズ。毎朝、行きがけの駄賃にあちこちの部屋をノックして回る騒がしい奴。
もう一人後ろに立っているが、別段知った顔ではない。
声をかける理由も無いのでそのまま通り過ぎようとしたが、保健室からの声でアラムはどうやら田吾作女を手伝うつもりらしいと気付く。
慈善家もといお人好しな彼に礼を言うのを忘れていたので、埋め合わせに別な働き手を供給してやろうと考えた。
アルナワーズは知らないが、小さい方はまず確実にカモだ。頼めば聞くに違いない。
「おい、そこの。保健室で手が要り用だって言うから行ってやりな。授業無くて暇してるだろ?」
二人の行く手を阻んで、殆ど脅しが掛かった声で言う。
暇なだけあって、様々な邪魔な考えが、浮かんでは消えを繰り返していた。
兄の夢で完全に狂った、私の故郷を思い出した。
思い出したくもない、血にまみれた故郷…
日も無いのに生い茂って、人を拒み続けた夜闇の森。
悲劇はその森に、人々が移り住んできた所からだ。
私が、其の村人全員を一晩の内に殺した。
人と魔族は元から仲が悪かった為、争い事になるまで時間はかからなかった。
何故、殺したのか分からない、私が殺したと言う事実だけが残り
結局の所、処刑され、私の身体は滅び……ん?
何故・・・私は此処に来ることになったのだ…?
有るはずの記憶が無い・・・・此はどう言う事だ
「フフフフフ・・・・・気づいて仕舞った様だね、クレス・・・・いや、キース」
頭に声が……誰だ……貴様…
「忘れるとは心外だね、兄の声も忘れたかな?」
なん……だと……
「転生の時を待ちて、全ての生に等しく死を与えん事を」
………貴様の好きには……させん……
「まだ抵抗する気なのかい?無駄だよ、フハハハハハハハハハハハ!!」
「我が下部よ!」
腕に意識を集中させ、我が下部、闇の化身に腕を千切らせ
私は全てを乗っ取られる前に、逃走する事に成功した。
身体の殆どの部分を取られて仕舞った。
まず、下部を使い、身体を修復したが足りる訳が無く、子供の様になってしまった。
此処の保健室と呼ばれる所に、向かうことにした、この身体の回復は見込めないが
何時も輸血用血液を貰うのも、其処の治療機関だ。
多少の事ならば、期待しても良いだろう
兄の行動も心配だが、今は回復する事が最優先だ。
>458
保健室の扉を軽くノックしたつもりなのだが、力の加減が出来ずに、壊してしまう。
へこみこちらに扉が倒れてくる、子供の歩幅で避けられる訳が無く、扉の下敷きになってしまう。
「も、申し訳ない……今はどうも加減が出来なくて……」
扉の下から這い出て、扉を元の場所に戻そうとするが、扉を掴んだら端の辺りを握り潰してしまい、扉を離して私は行動を止めた。
これ以上、私が動けば多数の人物に迷惑がかかることになるだろう……
子供の姿で有る為、殆どの人物は、私と分からなかっただろう
此処に所属しているフラワーソンズと言う者の前に行き
「単刀直入に言おう、輸血用血液が欲しい、此処に有るだけの血液を、どうか譲ってはくれないか…?」
>421
「よし、いな……ちっ、いるのか……。何だ、言ってみろ」
ゲーロッヂは大柄なアレクサンドロフを見上げながら、またアレクサンドロフはゲーロッヂを見下げながら言う。
「……対処法だと? 君は人の話を聞いていたかな?」
血管が浮き出ている。数名の教師は、いっそ切れてぶっ倒れて理事長交代、なんてことにならないかなーと善性の妄想を思い浮かべた。
だが会議の出席者はそんな不真面目な者ばかりでなく、ちゃんと会議の流れを知った上で言動する者もいる。
問題点としては彼女が教職員ではないということか。
>436
ゲーロッヂりじちょーのにんしき
→生意気な小娘一匹しかも話の流れから教員でない。
→職員?
→会議途中で出て行くとはいい根性してるな貴様。
→普通の生徒?
→なんで貴様みたいなのがここにいるいい根性してるな貴様。
→どちらにしてもいい根性してるな貴様怒る。
彼の火山が噴火し火山弾や飛び火山灰が降り注ぐまでのカウントタイマーが背後に出現したのは幻視か否か。
一瞬の猶予の内に出て行ったしまったアルと、嗜めるよう促しにいったアレクサンドロフの今日の運勢は大吉に違いない。
とにかく大災害まであと三秒。二、一、……。
「理事。よろしければ『すらいむようくぁん』などをお召し上がりになりませんか?」
「む。頂こう。ふむ、本当に気が利くな君は」
どこから現れたかアルセット=アハヤス。
普段は目立たないがゲーロッヂの世話をするに関してはは皆の注目の的、スーパースターである。
「ふむ、では羊羹を……っと。ちっ、そうだな、ワシからも答えておこう。
――良いか。ワシが求めているのは『侵入者をノせ』という『結果』であり『過程』ではない。加えて貴様らが『ノ』すことをどのように認識しているかなどワシは知らん。以上会議終わり!」
彼がぶっきらぼうに言い放って会議(の形式すら取っていない何か)は終了した。
>457>458>459>462
この清潔な空間である保険室の主。フラワーソンズがヨグの診察を開始。
人通り見た後、人間でいえば手の役割を持っているツタをしゅるしゅると動かして直に触っての診察。
>「……喧嘩、ダナ」
長年の経験がなせる技か。鋭い洞察力で怪我の原因もピタリと当ててみせた。
図星を突かれたヨグは一瞬からだをビクつかせ、頭をギギギと効果音つきで横を向いてわざとらしく口笛を吹く。
お見舞い発言により、アラムレイクは巷で有名のノリツッコミを見せてくれた。アラムレイクいい人。
>「イヤ。見舞イデハナク、彼ラハ怪我シタ君ヲ連レテ来テクレタノダヨ」
「ふむ。それはすまなかったな。というよりそもそもなぜ俺は気を失っていたのだろう…。」
自分はなぜこんなところに運び出されたのか?まず最初に出るべきはずの疑問が今になって出てくる。
記憶が曖昧な中であまりない頭をフルに回転させるのだが、いまいち思い出せない。
>「彼女が気絶してるお前を発見して、食堂に助けを呼んだんだ。
> それで俺は彼女に協力してお前を運んだんだ。だから、礼を言うなら彼女に言いなさい。」
彼女?とまだ視界に入っていない第三者の存在にベッドから降りながら疑問の色を浮かばせる。
アラムの背後から現れ、ヨグのアホ毛を指で遊ぶ軍曹。もといシュラルク。
今まで思い出せなかった記憶が、彼女の出現により走馬灯のようによみがえってくる。
自分は彼女の不意打ち気味の蹴りによって、気を失ったのだという記憶を――。
すべてを思い出したヨグは途端に警戒態勢をとって身構える。
彼女から感じられる鋭い眼光。まさかこの人目がつきやすいこの場で第二ラウンドか?
>「そういう事だ。私が校舎裏で倒れてたあんたを見付けた。
>そして食堂までは私一人、食堂から保健室までは彼――アラムと二人で担いで運んだんだ。分かるなヨグ君、ん、ん?」
あの表情はロクなことを考えていない。
貸しをひとつつくっておいて、後でどんな利子つきで返済を請求されるかわかったもんじゃない。
そう危惧するヨグは表情を不安でいっぱいですといわんばかりの変え、ギリと歯を食いしばっていた。
喧嘩のことも忘れ。もちろん、自らの「奴隷」発言のこともすっかり忘れている。
保険医のフラワーソンズが忠告を促すが、ヨグには届いてはいない。
たまに畑から野菜を盗みにいくのだが、その畑の主のアイーダが現れようとヨグは気が付かない。
それほどまでに不安なヨグは頭の中で貸しについての最悪の展開を妄想していた。
やがて、シュラルクが一言残し保健室を出る。
――とそれに入れ違うように、部屋中にノック音が響くのだが力に耐え切れずに扉が壊れて倒れる。
>「も、申し訳ない……今はどうも加減が出来なくて……」
その音にようやく我にかえるヨグは、シュラルクの姿がないことに気が付くと安著の表情を浮かべる。
どっかのツッコミ名人から「力の加減って限度ってもんがあるだろう!」とかツッコミを出しそうなボケをいう主。
その主が保険医に歩みより血を求める。それもあるだけ出してくれという無茶な要求。
それほどの怪我人が朝から出てしまったのだろうか?
「うーむ。朝からいろんなことがありすぎて脳が追いつけねぇ。」
コンコンと手の甲で額を叩く。どうやら騒動はまだ続きそうだ。
>459
「成程…怪我人ガイルノカ」
何時もの出来事だったので、アイーダが医薬品や自分の葉っぱを失敬した意味について特に
深くは考えていなかった。怪我人がいるから医薬品と自分の葉っぱを必要としたのか。
「…モシヤ、私ニ見セラレナイヨウナ患者ナノカ?」
保健室を去ろうとしていたアイーダの背に問い掛けを投げつける。
>463
しかし、それは扉が派手に吹っ飛ばされた事で中断されてしまった。
「………」
大抵のことで動じるフラワーソンズではないが、流石に唐突な出来事に暫し硬直し、
自分の腰まで届くかどうかも怪しい、ちょこちょこと自分の前まで歩み寄ってくる小さな子供をじっと見つめた。
>「単刀直入に言おう、輸血用血液が欲しい、此処に有るだけの血液を、どうか譲ってはくれないか…?」
「……きーす、カ」
この学園には闇の眷族の生徒が多数在籍している。
彼らの中には血を主食とする者もいるようだが、その人数はかなり限られてくる。
外見は幼女だが、扉を軽くふっ飛ばす怪力は見間違えようがない。彼女はキースだ。
「朝カラ立テ続ケニ色々ナ事ガ起キルナ……」
やれやれとツボミを左右に振り、花粉混じりの吐息を吐く。
「何故、其ノヨウナ幼子ノ外見ヲ取ッテイルカハ知ランガ…只事デハナイヨウダナ」
流石のフラワーソンズも朝っぱら立て続けに起こる出来事に何かしらの関連性があるように思えて仕方が無い。
もしかしたら、これが学園に迫っている危機と何か関係が?…だとしたら一大事だ。
しかし、最優先するべきは生徒の頼み事だろうか。だが、生憎、輸血用血液は全て廃棄処分してしまった。
使用期限が切れてしまったからだ。新しい輸血用血液は早くても明日の朝に届く。
「生憎ダガ今ハ切ラシテイル…輸血用血液ハ無イガ、是ハ代リニハナランダロウカ?」
すっと白衣の内ポケットからメスを一本取り出し、自身のツタに思い切り突き立てた。
程無くしてメスが刺さったツタからは琥珀色の液体が滴り落ちる。草人の血だ。
「動物性蛋白質ニハ劣ルガ…凌ギニハナランカ?」
【現在地】保健室
【行動】自身の血をキースに差し出す
>458
「お、そういうことなら遠慮なくいただいてくべ」
もらえる物はもらっとけ、旬は逃すな、元からイモ姉ちゃんに遠慮などという概念はない。
花蜜までも必要はないだろうと思われたが、とりあえず懐に入れておく。
>459
「いんやぁ〜、そう言ってくれるのは嬉しいだが、生憎怪我人は女子寮だで、男は立ち入り禁止だぁ〜よ。
どうしてもっつーんなら、タマ抜いてから来るべ」
相手が男なら協力も拒みやすい。
手助けしようかと言ってきた男子生徒を煙に巻いて、イモ姉ちゃんは保健室を後にしようとした。
>463
そしたらドアが廊下側にバタンと倒れた。
そんでもって何か小さいのがちょこちょこ入ってきた。
「おぉ〜、ほれ坊主、丁度いいところでお困りのレディがやって来ただぁ〜よ。存分に男気を発揮するだぁ〜」
さっきの男子生徒にそう言いながら、イモ姉ちゃんは金髪ぴこぴこ外に出た。
>462
廊下では、さっきまで保健室にいた女生徒が何やら話し込んでいたが、先を急ぐイモ姉ちゃんには関係のないことだった。
なるたけ早く、納屋に戻らなくてはならないのだから。
現在地:校舎内、保健室の近く
行動:女子寮裏庭畑の納屋に向かう。
468 :
名無しになりきれ:2005/11/16(水) 13:55:19
出来レースAGE
469 :
名無しになりきれ:2005/11/16(水) 14:08:14
おつかれ
でももういいんだよ
虚しい
471 :
名無しになりきれ:2005/11/16(水) 15:13:52
472 :
名無しになりきれ:2005/11/16(水) 17:58:31
( ゚Д゚)< 俺のクリスマスを予言
◇レス番1桁目. ◇時刻の秒2桁目 ◇時刻の秒1桁目
[1] 幼女に . [1] 「キタ━(゚∀゚)━ !! 」と [1] チンコ引き千切られる。
[2] 初恋の人に. [2] 「必死だなw」と. [2] 泣かれる。
[3] 母親に. [3] 「愛しているの」と [3] 説教される。
[4] 自分のバイクに [4] 「反省しる」と. [4] 言われながらオナニー。
[5] 女友達に. [5] 「逝ってよし」と. [5] 押し倒される。
[6] 次の授業の教授に [0] 「ウホッ」と. [6] 刺される。
[7] 片思いの相手に [7] プレゼントを捨てられる。
[8] 風俗嬢に. [8] キスされる。
[9] GMタソに. [9] からかわれる。
[0] 運命の人に. [0] 通報される。
母親にウホッといわれながらオナニー
>462
>「……疲れた。もう、帰って寝る」
「おう、お疲れさん。良い夢を!」
片手を挙げて部屋を出てゆくシュラルクを見送る。
彼女の様子を見る限り、やたらとヨグに強気と言うか傲慢な態度を取っていたな。何かヨグの弱みでも手に入れたのかな?
>467
>「いんやぁ〜、そう言ってくれるのは嬉しいだが、生憎怪我人は女子寮だで、男は立ち入り禁止だぁ〜よ。
>どうしてもっつーんなら、タマ抜いてから来るべ」
「う、うぇ、それだけは勘弁して。」
女子寮ならば立ち寄るのは極力避けたい。怪我人の様態を自分の命を賭けてまで確かめたくない。
男子生徒にとって禁断の地である女子寮。そこへ侵入した男子は発見されたら最後……ボコボコのズダボロだ。
>463
>保健室の扉を軽くノックしたつもりなのだが、力の加減が出来ずに、壊してしまう。
「……っ!?」
突然のドアの崩壊。とっさにドアの方へと振り向き、体制を整える。
>へこみこちらに扉が倒れてくる、子供の歩幅で避けられる訳が無く、扉の下敷きになってしまう。
>「も、申し訳ない……今はどうも加減が出来なくて……」
(…子供?それも女の子……どういう事だ?)
巨体な大男ならばドアを破壊しても、許されるかどうかは別にしても納得は出来る。
しかし、目の前に居るのは見た目は普通の女の子だ。果たして、あの体格でドアを破壊出来るのだろうか?
>465
>「うーむ。朝からいろんなことがありすぎて脳が追いつけねぇ。」
ヨグの率直な感想だ。
…そういえば、さっきからコイツが呼ばれてたので分かったが、この不良男の名前はヨグだ。ようやく思い出せた。
「…同じく。」
今日はいつもに増して凄い事がおき続けている。そろそろ俺も頭がこんがらがってきた。
少女はブロッサム先生の前へ歩いてゆき、こう言った。
>「単刀直入に言おう、輸血用血液が欲しい、此処に有るだけの血液を、どうか譲ってはくれないか…?」
(血…また怪我人か?……いや、輸血が必要な程の怪我なら生徒では手に負えないはずだ。)
そんな事を考えていると、田舎言葉の姉さんが
>「おぉ〜、ほれ坊主、丁度いいところでお困りのレディがやって来ただぁ〜よ。存分に男気を発揮するだぁ〜」
「…いやいやいや!血って、俺が何の役に立つんだよ!?」
俺が反論している間に、田舎言葉の姉さんは金髪ぴこぴこ去っていってしまった。
>466
>「……きーす、カ」
……キース?どこかで聞いた事あるような。うーんと……あ、共通クラスの同学年に居たな。あの男みたいな…
言われてみれば、少女とキースの雰囲気が似ている。
「……まさか、別人だな。うん」
自分に問いただすように言葉に出す。
>程無くしてメスが刺さったツタからは琥珀色の液体が滴り落ちる。草人の血だ。
>「動物性蛋白質ニハ劣ルガ…凌ギニハナランカ?」
「…ッ!!………」
すぐに治療できるとは言え、なんて無茶な事する先生だ。
…これ以上は部外者の俺が居残るべきじゃないな。退散するか……よし、とりあえず壊れたドアを直そう。
保健室の出入り口から廊下へ出て、倒れているドアを持ち上げる。
キースが掴んだ部分だけ、彼女の手形を写すように綺麗に抉れている。…人間が掴まれなくて良かったな。
「…ぐ、よっと!」
ドアを持ち上げる。結構重いが、耐え切れない程ではないので。そのままドアを元の位置にはめ込む。
「よし、完了。」
手をポンポンと払い、直し終えたドアを見つめる。うん、上出来だ。
方向を変え、そのまま保健室から離れようとする。
475 :
名無しになりきれ:2005/11/16(水) 21:38:06
/⌒ヽ
(;^ω^) 。・゚・⌒) チャーハン作るお!!
/ o━ヽニニフ))
しー-J
/⌒ヽ
(::::: )・゚。 今日も独りで食べるお…
(::::::::.. つニフ
 ̄ ̄と とノ ̄ ̄
/⌒ヽ
(::::: )・゚。 ・・・
(::::::::.. つニフ
 ̄ ̄と とノ ̄ ̄
/⌒ヽ
( ^ω^)。 チャーハンうめえwwww
(::::::::.. つニフ
 ̄ ̄と とノ ̄ ̄
それがVIPクオリティ
476 :
名無しになりきれ:2005/11/16(水) 21:38:36
/⌒ヽ
(;^ω^) 。・゚・⌒) チャーハン作るお!!
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しー-J
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477 :
名無しになりきれ:2005/11/17(木) 23:36:21
>456
>「―――何のリスクもない『情報』なんて、この世にあると思う?」
フェルナンドはかなりの近眼だ。眼鏡をかけていなくては、わずか目の前数センチのものすら目を細めないと覚束ない。
だから、リリアーナの声はなんだか真面目っぽく聞こえなくもないが、輪郭がはっきりしていないのでよく分からない。
まぁ、それがどうした、とかいうのはともかく。問いに対して思うのは、
(ある…と思うけどなぁ)
いやはや目を細め眉毛を歪めてしかめっ面、真剣にも似た表情では、あったのだが。
>「………なーんてね!やだな、冗談よ冗談!」
(??)
正直、さっきの質問で真面目っぽくなる意味が理解出来ていないフェルナンド。何が冗談なのかも、よく分からない。
(そもそも何がなーんてねなのか何がやだななのか…)
柔軟な思考に欠如するフェルナンド、笑顔のリリアーナとは対照的に、ストレスの腹痛により顔が青くなってゆく。
フェルナンドにとっては、少々意味が分からなさすぎた。
>「第一私たちはこの学園にいるのよ?なのに危険なことってなあに?
>あ、もしかして、勝手に調べて先生に怒られること?
>やだー案外慎重なのね?あの理事長室に忍び込んだって、命の危険までは無いわよ…多分ね」
「危険なことなんか…幾らでもあるんじゃ…」
このあたり、二人の「危険」の認識にズレがある。只単にフェルナンドの「危険」が普通とズレているだけなのだが。
つまりフェルナンドの元来の気の弱さから、大抵の人には何でもないことでも、危険、と思ってしまうことがあるわけだ。
(例えば、調べようとした場所に蜂の巣があったりとか…)
あと、元来のネガティブ思考。危険を自ら作る思考。そんなことを考えていたらキリがないと言うのに。
いつかは、「突然空から隕石が落ちてくるかも」とか考え出して腹痛になるかもしれない。
>「―――そろそろ大丈夫そう?動けるようなら途中まで送るわ」
「あぁ…うん」
立ち上がる。立ちくらみ。この程度のことは至極慣れたもの。痛む頭を撫でさすりながらもう一度立ち上がる。
しかし腹痛や頭痛に神経の大部分が集中していて、周りの話し声が耳に入らなかったのは不幸中の幸いだろう。
もし聞こえていたら、それはちょっとフェルナンドにはつらすぎることとなるので。
ドアの前で立ち止まられるとフェルナンドとしては困ってしまう。出られなくなるので。
リリアーナとは頭一つ分身長差があるので、何を見て立ち止まったのかは分かる。さっきの不良が運ばれていった、と。
>「そういえば、貴方が怪我したのと同じ場所よね?」
「偶然でしょ」
『つまらん男だ』とか、『トーク能力が皆無』とか、『話を盛り上げる気はないのかお前は』とか言われそうな台詞だが、
あいにく話を盛り上げようとする人間でない以上仕方がない。これがフェルナンドという生物である。
「心配なようなら、保健室に見に行ってあげたら?別に一人でも部屋には戻れるし」
別に厄介払いをしているわけではない、ということは付け加えておく。正直な考えと正直な言葉だ。
なお、保健室に何人も出入りしているのは見ているので、「一緒に保健室に様子を」という選択肢は一切ない。
ドアを塞ぐリリアーナの横をやや強引に通り、部屋に戻ろうと廊下をふらふらと歩く。
いやぁ、イスタリア学園はとても綺麗で、廊下も磨きあげられていて。
つるっ