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◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
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■□■ ネオ・デイプノソフィスタイあるいは自然界の法則 ■□■
★☆★ 【SAGE 進行】徹底スレッドです。 ★☆★
■ 概 要 ■
●ピスティス(Pistis)が開催する、風変わりで珍奇な妄想サロンです。
●スレッドは、登場人物たちが繰り広げる即興の進行と、
彼らによって交わされる多岐にわたる主題の対話とが
構成要素となった、ピスティスの物語の一部をなします。
●いわゆる質問スレッドではありません。
●基本的には対話篇に似たスタイルをとります。
■ 目 次 ■
(状況により下記リンク番号は不正確なものとなります。
場合によっては、
>>2-20あたりを参照してください。)
【 お約束 】
>>2 【 状況設定 】
>>3 【 対 話 】
>>4 【 新規参加 】
>>5 【 自作自演 】
>>6 【 これまでのあらすじ 】
>>7-8
【 ピスティス物語の全体構造 】
>>9-10
【 主要登場人物(含未出) 】
>>11-17
【★ スレッド自体に関するご意見・ご質問などはこちらに ★】
>>18 【 献 辞 】
>>19 ――――――――――――――――――――――――
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
――――――――――――――――――――――――
●「sage 進行徹底スレッド」です。よろしくお願い致します。
●主要登場人物のなかには、
危険・過激・放埓な発言・行動をしたり、
罵詈雑言を吐く登場人物もありますが、
あくまでも意図的に性格づけられた<フィクション/ネタ>です。
PCの前の<本人>が<登場人物>の仮面をつけ
演じているだけなのだということを、忘れないでください。
●登場人物は、ときどき既存の資料・思想を故意の曲解で援用します。
これもあくまでネタとしてですので、ご理解ください。
●成りすまし・騙りは絶対にやめてください。
また自分の提示したキャラクター以外は、
動かさないようにしてください。
●役を離れたPCの前の投稿者本人に対する詮索はお避けください
●本物の対話篇・戯曲・文芸作品ではありません。
まして真面目にディベートを行う場でもありません。
●煽り・荒らしは原則として、完全無視・放置です。
●スレッド自体に対するご意見・ご感想・ご質問などは
スレッド内のレスではなく、こちら(
>>18)まで。
●この【 お約束 】を含めたスレッド頭部の断り書きに改訂があれば、
適宜スレッド内かあるいは別途示します。
ある森の奥に、ル・コルビュジェの
<<ノートルダム・デュ・オー礼拝堂>>に似た建築物がひっそりと佇み、
この容貌から、いつしか辺りの森は
<<ロンシャンの森>>と呼ばれるようになりました。
ピスティスは、この建築物にサロンを構えているのです。
サロン・ド・ロンシャンには、
客人(登場人物・スレッド投稿参加者)が集い、
さまざまな主題で対話をします。
主題は哲学・歴史・社会科学・自然科学・芸術・文学……と、
状況次第であらゆる方面に行き渡ります。
それと同時にピスティスの物語も少しずつですが、
進行していきます。
●対話の主題は哲学・歴史・社会科学・自然科学・芸術・文学……と多岐。
他の一般的な話題でも大丈夫です。
●内容がどのような主題に及ぶかは、参加者次第ですので予測はできません。
●ときにはひとつの主題が長引くこともあります。
各主題の話題が長引いている場合には、
当該部分だけを捉えてスレッド内容を判断されないようにしてください。
このようなフィクションの世界においては、登場人物たちそれぞれの
得意とする分野について語るのは周知のことです。
●登場人物の発言に、学問的正確さを求めないようにお願いします。
このスレッドそうした類いのものではありません。
登場人物は学問的成果を、ときに恣意的に曲解することもあります。
●フィクションの世界においても、
登場人物同士が親しい間柄にあって対話することは、
ごく自然と考えられます。
●登場人物として新規参加される場合は、なるべく
名無しではなくHNで参加いただけるとありがたいです。
●その際、すでに使用されている登場人物名(固有名詞)は、
使用しないでください。
●一時的な参加の場合でも、
できれば<男><女><町人>など
適当な代名詞HNで参加いただけるとありがたいです。
●既存の各登場人物名には出典はあっても、それとは離れて
オリジナルの性格付けをされた者がほとんどです。
●意味があって登場させるぶんには、史上の人物や、
既存のキャラクターでも可でしょう。
●登場人物名はヨーロッパ系が多いですが、その他のものでも構いません。
●職業・階級などをHN内に混ぜると、人物像がわかりやすくなるようです。
●その人物の職業や性格をはっきりさせればさせるほど、
活き活きとしてくるようです。
既存の人物に美徳と悪徳の両極端が多いのも、こうした理由からです。
●自分のしたい話題や自分の考えた筋を進行させるためなど、
必要に応じて、ひとり複数役を担当して頂いて結構です。
すなわち自作自演可ということです。
●筋や対話の進行上、捨て役を登場させる場合には、
なるべく<男><女><町人>など
固有名詞ではなく、適当な代名詞HNで参加いただけるとありがたいです。
●成りすまし・騙りは絶対にやめてください。
濁点・半濁点やクサチュー語などを利用した
騙りまがいのまぎらわしい名前も絶対にやめてください。
●自分の提示したキャラクター以外は、
動かさないようにしてください。
9歳のときにある事件によって兄を失ったピスティスは、
悪が堂々と勝ち誇り、善はひたすらその足下にひれふすことを知る。
その後サド侯爵の<<ジュリエット物語>>に出会ったピスティスは、
その主人公に感化され、彼女ような生き方に憧れるようになった。
16歳になったころ、ある夜会で、
ヤルダバオート公爵と白熱した哲学論議を交わしたピスティスは、
公爵を師と仰ぐようになった。
一方で公爵は、彼女をみずからが主催する会の
会員として正式に迎え入れた。
彼女はこのなかで<快楽の探究>こそが
幸福への道であることを悟る。
18歳になったピスティスは、
ある日の事件をきっかけにして、会から離れ、
師にならってこぢんまりと独自の会を開くことを決意した。
<ピスティスのサロン>こそがそれである。
しかし、ピスティスは、心根が弱く感じやすい気質であるがゆえに、
やはりジュリエットに成り切れずにいるジュスティーヌなのである。
魔術哲学者コルネリウス・アグリッパ13世は、
快楽の秘密を探るために必要な
完全なる存在を完成させんがために、
ワクワク島の無花果女のほかにも、ある天使を必要としていた。
その拉致にまんまと成功した山賊フェラージュは、
ピスティスのサロンでアグリッパ13世と会った。
サロンには、フェラージュを追って来たドルセック法院長、
4人の禁断の罪人を裁くアンセルム大司教、
そして外科医エルキュールも加わった。
兄妹の審判を終えたサロンでは、
母子の裁きが開始されようとしていた。
………………
さて、今回のスレッドの時間軸は、ピスティス物語の全体からすれば、
<現在>よりも時を遡ること約1年前(18歳)の物語である。
【 約10年後(29歳)のピスティスの物語 】
当スレッド(18歳)当時ではまだ善悪の間を
さ迷っているピスティスのすがたは、
もはや全く消えてなくなっている。
10年後のピスティスは悪徳の極限状態であり、
何のためらいもなく平然として凶悪な行為を行う。
ヤルダバオート公爵らの完全な権力に護られているピスティスの行為は、
処罰もされず、誰にも詭弁に対抗する隙をも与えない。
父も母も恋人も、すでにピスティスの手で殺害されてしまっているのである。
【 約10年前(9歳)の幼少ピスティスの物語 】
核となるのは兄の死という事件である。
兄はピスティスを守ろうとしたがゆえに、
集団拷問の末に殺害されてしまう。
これはピスティスの目前で起こった残虐な事件であり、
その後のピスティスの人生を変える深いトラウマとなってしまう。
【 老ピスティスの物語 】
既に死亡しているヤルダバオート公爵の未亡人となっていたピスティスは、
莫大な遺産で道楽者の頂点についていた。
あるとき1通の手紙が届き、尊敬していた公爵こそが彼女の実の父であり、
兄を殺害させたのも公爵であった事実を知る。
数年後、遠い異国の草庵で孤独かつ質素に暮らす老ピスティスは、
ある明け方、夢のなかで兄に誘われて、共に旅立つ。
10 :
:2001/08/07(火) 14:10
*
―― 凡例 ――
◎:美徳側
●:悪徳側
○:その他(不明/不明確/善悪2元性など)
------------------------------
○ピスティス・ソフィア Pistis Sophia
〔♀/18歳/自称<現代のジュリエット>〕
<快楽の探究者>を標榜する、自称<現代のジュリエット>。
通常は礼儀正しい気取った貴婦人だが、
高慢ちきな性格や、ふしだら、
その他の多重人格的な側面をもあわせ持っている。
背徳的な行為や思想で、予期せぬ発作を起こし、
突然言葉使いが汚くなり、貴婦人にあるまじき堕落した行動をとる。
------------------------------
◎***
〔♂/47歳/ピスティスの父〕
◎***
〔♀/37歳/ピスティスの母〕
◎アルベルト
〔ピスティスの3歳上/ピスティスの兄/ある事件により故人)
◎ジルベルト
〔♀/ピスティスの2歳下/ピスティスの妹)
●ジャン=ジャック
〔♂/ピスティスの3歳下/ピスティスの弟/盗人)
●ポルビュス騎士
〔♂/17歳/無神論者/自然界の信奉者/盗人/才気〕
●アンセルム大司教シャルル
〔♂/57歳/ピスティスの伯父(父の兄)〕
●ドルセック法院長アンリ
〔♂/45歳/ピスティスの叔父:(父の弟)〕
◎ブラバン神父
〔♂/敬虔なカトリック神父〕
●デルヴィル大公
〔♂/年端のいかないこどものみを愛する〕
●外科医エルキュール
〔♂/31歳/生体解剖者〕
◎フィリップ侯爵
〔♂/厳格な美徳家〕
◎アニエス(・ヒルデガルド)
〔♀/16歳〕
◎セシル
〔♀/17歳〕
●料理長アピキウス(ピスティス付)
〔♂〕
●従僕ガバロン
〔♂/21歳/ピスティス付/宦官〕
●セラドン
〔♂/20歳/ガバロンの知人・男色相手〕
●ヤルダバオート公爵サマエール・M
〔♂/42歳/ピスティスの師/<エピクリカ>導師〕
●魔術哲学者コルネリウス・アグリッパ13世
〔62歳/コマネチ大佐付きの旧友〕
○ワクワク島の無花果女
〔♀/アグリッパ13世に栽培される最高美を具現する女性的存在〕
◎ルイゾン(本体)
〔♀/17歳の艶やかな少女〕
◎ルイゾン(クローン人間)
〔♀/17歳の艶やかな少女〕
◎ベリーヌ(本体)
〔♀/15歳/貞淑な少女〕
◎ベリーヌ(クローン人間)
〔♀/15歳/貞淑な少女〕
○コマネチ大佐
〔♂/アンナに恋心を抱く/ポルビュス騎士と敵対〕
------------------------------
●山賊フェラージュ
〔♂/コマネチ大佐の雇われ山賊/人肉食愛好家〕
●ハンス・グランス
〔♂/猟奇的犯罪者〕
●フリッツ・ハールマン
〔♂/猟奇的犯罪者〕
●人肉食ミンスキー
〔♂〕
------------------------------
●デスカルバニャース伯爵夫人
〔♀/気取り屋・傲慢/ピスティスにあこがれている〕
○ユラニー嬢
〔♀/気取り屋〕
○エリーズ嬢
〔♀/ユラニーの従妹〕
○メスカル医師
〔♂/錬金術に長ける/アグリッパ13世の旧友〕
●ホムンクルス
〔メスカル医師によって作り出されたと思われる人工的生命〕
○ガバリス伯爵
〔♂〕
◎アンナ
〔♀/ポルビュス騎士のハイスクール時代の恋人/キリスト者〕
○チェーザレ(キャピュレット男爵/若い男)
〔♂〕
○ルクレツィア
〔♀〕
○従者〔チェーザレ付〕
〔♂〕
○サン・ジェルマン伯
〔♂〕
○リボンの騎士(サファイア)
〔?〕
○天使チンク(チンクー)
〔♂〕
○林太郎
〔♂〕
○三四郎
〔♂〕
------------------------------
○雀たちのコロス
-----[ 一時的に登場する犠牲者 ]---------
◎エリーズ
〔♀/36歳/キュピドンの母/妊婦〕
◎キュピドン
〔♂/16歳/エリーズの息子/ナルシスの親友〕
◎ナルシス
〔♂/16歳/ロレットの兄/キュピドンの親友〕
◎ロレット
〔♀/14歳/ナルシスの妹〕
-----[ どなたでも使用可能 ]-------------
●デウス・エクス・マキーナ1号(男)
●デウス・エクス・マキーナ2号(女)
〔唐突に登場して幕引きに誘導する機械人形〕
----------------------------------------
その他多勢のみなさん
17 :
:2001/08/07(火) 14:19
*
いと気高く尊き道楽者
快楽の探究導師
ヤルダバオート公爵に
いと気高き道楽者にして快楽の探究導師よ、
運命の女神モイライの気紛れのせいかは存じませぬが、
ランブイエ侯爵夫人カトリーヌ・ド・ヴィヴォンヌの
プレシューズ趣味文芸サロン<青の部屋>の
ひそみにならったつもりでいたロンシャンのサロンは、
いつしか堕落者・放蕩者・極悪人たちが集うサバト
と化してしまっております。
彼らは、悪徳・無信仰・犯罪を
詭弁じみた啓蒙哲学でみずからの思想を擁護し、
彼らが一様に語る聖サドふうの<自然界の法則>を
躊躇なく実践して見せるのです。
いえ、そうは申しても
私自身が<快楽の探究者>を標榜する、
<現代のジュリエット>なのですから、
これは喜ばしいことには違いありません。
されば、私はむしろモイライの気質に
感謝してしかるべきなのでありましょう。
猊下の卑しきしもべ
ピスティス・ソフィア
20 :
:2001/08/07(火) 14:22
***
――――――――――――――――――――――――
第1の対話 ピスティスのサロン(承前)
――――――――――――――――――――――――
(外科医エルキュールに向かって)
ちょ、ちょっと、待っていただけません?!
この部屋を血みどろにされると困るわ。
何か敷物を広げるか、大浴場が別にありますから、
そちらでお願いしたいんですけど……。
おい、おいエルキュール先生よ。
私もちょっと待って欲しいよ。
ロレットたちとの激しい快楽のお蔭で
くたくただよ。
精力を回復するまでに
もう少し時間をくれないかね?
>>22-23
わたしのほうは
どちらでも
一向に構いませんが……。
>>23 何だ、情けないやつじゃな、わが弟アンリよ。
わしよりも10歳以上若いおまえが
そんなことでどうする?
歴代の法王は、そんなぶざまなすがたではなかったよ。
>>25 お言葉ですがね、シャルル兄さん。
私はここのところ自分の身を危うくし兼ねなかい
あの山賊フェラージュの蛮行処理に追われていたのだよ。
もう三日間一睡だにしてないのだよ。
>>26 何、蛮行だって? 言いがかりはよしてくれねえか?
盗む、火を付ける、掠奪する、遣る、殺す、喰う……。
さっきもいったとおり、俺のしていることはみな、
すべて自然界の法則どおりの行動だよ。
>>26 そうだな。フェラージュのほうが正しい!
自然界のなかにこそ、
あらゆる隠秘哲学が存在しているのだからな。
その法則こそが
ミクロコスモスとマクロコスモスに通底する
カノンだろう
>>28 偉大なるアスクレピオス神や
わがヘルメス・トリスメギストスに掛けても
それらは賛美されることばかりだな!
>>26 ふん! どうやら、反論の余地はないようじゃな。
弟の屁理屈のほうが間違っておる。
これらのフェラージュがやらかしていることはみな、
自然という理想的な状態でごくあたりまえに行われていることじゃよ。
>>27 フェラージュ、おまえこそは哲学者の鑑みたいな男じゃよ。
>>26 そうだともさ!
法院長、あんたが間違っているよ。
(嬉しそうに吹き出して)
>>27-31
みんな、そうこなくてないけないな!
私はみんなの期待どおりの声が聞けてうれしいよ。
ところで、ピスティスよ。料理のほうはまだかね?
>>32 ええ、もうそろそろのはずなのですが……。
遅いわね。アピキウスったら……。
(料理を押し車で運んで入室)
>>ALL
お待たせ致しました。どうぞ。お客さまが食べ尽くせないほど
たっぷりとございますので、ご遠慮なさらずにお召し上がりくださいませ。
>>34 おう、何だい? そいつは?
ずいぶんと変てこりんだな。
>>35 はい。飛びきり風変わりでございます。
まず、こちらはゾウリムシのスープ、
カタツムリの肉団子、
雄を喰った直後の雌カマキリの揚げ物、
ロースト・カモノハシ、
そしてヒドラのプディングでございます。
>>37 お飲み物は続けてご用意致しております。
どうぞいましばらくお待ちくださいませ。
>>36 まあ! それにしても、
なんて妙ちきりんなものばかりなの?
いったい、どういう感覚をしているのかしら!
これではまるで、ここがペトロニウスの
サテュリコンのような饗宴の場さながらだわ!
>>39 ふん! ペトロニウスか……
まさしくな。
しかしラティニストのピスティスには
サテュリカといって欲しかったがな。
>>39 いや、そうでもありませんぞ、ピスティス嬢。
いかにも、このサロンに似つかわしいもの
ばかりではないか。
サテュリコン、いやサテュリカですかな?
まあ、とにかくそれは、いいえて妙だが。
>>34 いずれも
滋養には良さそうな雰囲気だな。
貝原益軒にはなかったように思うが。
ひょっとして……。
>>34 人間よりもうまいのか?
俺はあのエリーズの腹のなかの肉塊を
さっきからずっと楽しみにしているんだぜ?
あとキュビドンとかいう小僧のほうもな。
>>34 たしかにたいそう風変わりじゃな。
いずれもリリスの前夫アダムが
名づけた動物たちには
違いないじゃろうが……。
>>ALL
そうですね。
まずはゾウリムシのスープですが、
例のジャン・ロスタンの論考からの着想でございます。
>>47 ご承知のとおり滴虫のゾウリムシは、がんらい単細胞動物です。
ですから、通常は分裂増殖をおこないます。
ところが、ロスタンによれば、
時たま有性生殖のような融合をやらかすのですな!
>>48 ヤハウエの命じた、産めよ、増えよであれば、
分裂だけでよいじゃろうて。
>>49 そこですな、問題は!
つまり、性的な快楽は必ずしも繁殖のためだけではない、
とこういうことなのですよ。
ゾウリムシは快楽の秘密に辿りついたということではないですか?
>>50 そいつは聞き捨てならない話だ。
わしの完全なる存在の研究には、ぴったりの材料かもしらん。
つまりゾウリムシは男性原理でもあり、女性原理でもあり、
アンドロギュノスでもあるということなのか?!
>>51 おい、それじゃあ、
俺のさらって来たあの天使の小僧はどうなるんだ?
あんたのアンドロギュノスのためには
もういらないってのかい?
>>52 いや、フェラージュよ。
そういうことじゃないよ。
>>ALL
よろしいですか?
もうみなさまもお気づきのとおり、
ヒドラのプディングも
同様な理由からなのでございます。
>>54 なるほどな……。
腔腸動物ヒドラは水温の変化によって、
有性生殖を気儘に行う。
やはり、繁殖目的と快楽の秘密とは
別物ということですな!
>>55 あたりまえだ!
いまさら寝言をいってもらっては困るよ。
自然界にとって、
繁殖はむしろ害でしかないのだよ。
>>56 まったくそのとおりじゃよ。
もしも性行為が繁殖目的だけならば、
あの神とかいう滑稽な存在は、
どうして人間を快楽を覚えるような存在に
作ったりしたのじゃろうね?
>>57 ああ! 伯父さま、その話ね!
お得意の。
>>58 ふん、ふん!
ピスティスはもう聞き飽きているようじゃな。
しかし、わしはどうも、くどい気質でな。
>>59 アンセルム大司教。
わしは聞きたいな。
ぜひともその話は!
>>60 よろしい!
あの御伽噺の寄せ集めによれば、
セト神のデーミウルゴス、
いや唯一神ヤハウエは、アダム・カドモン、
からイヴを分離させたのじゃったな?
>>61 おお! アダム・カドモンとは!
これまたカバラ密教ふうですな!
『ゾハルの書』は、わしの枕頭の書のひとつですよ。
>>62 いかにも、あなたらしい。
『ゾハル』が枕頭の書だとは!
アダム・カドモン、
要するにイヴと分離する前の
いわゆるアンドロギュノス状態の
原人アダムのことじゃな。
>>64 まあ、とにかく靴屋哲学者のヤーコブ・ベーメによれば、
ヤハウエが、このアダム・カドモンから肋骨を引き抜いて
イヴを創ろうと考えたのは、
アダムが動物の交尾を見て興奮したため、
その鎮静目的だったというのじゃよ。
>>65 ということは、
原人アダムには最初から性的に興奮する気質が
与えられていたということなの?
>>66 そういうことになるな。
何せあのグノーシス派でいうところの
アルコンテスの落ちこぼれのデーミウルゴスは、
自分に似せて人間を創ったというのじゃからな。
母を陵辱しておるだけのことはあるわい!
>>
伯父さまったら、カバラだとか、
ヤーコブ・ベーメだとか、グノーシス主義だとか、
ナグ・ハマディ文書だとか、
カトリックの高職位にあるかたとは
思えないものばかりだわ!
>>68 心外だな、ピスティスよ、それは。
わしは、できうるかぎりの文献を渉猟しておるだけじゃよ。
ウルガータや、使徒文書や、スコラ哲学書だけでは、
視点が片寄ってしまうからな。
そのような偏見は慎まねばならないよ。
>>69 前にもいったとおり、
そうした意見には、わしも同感だ。
あらゆる資料にあたらねばならん。
カトリシズムだけでは狭量になってしまうぞ。
>>68 少なくともわしには、
トマス・アクィナスの『神学大全』よりも
『アルコーンの本質』『ラビ創世記』のほうが
よほどおもしろく感ぜられるが、どうじゃね?
>>71 あたし退屈で退屈で、
トマス・アクィナスなんかは、
最初のページで放り出しちゃったわ!
ナグ・ハマディやタルムード系は
たしかにおもしろいわ。
>>72 おいおい、ピスティスよ。
これではいつになっても
食事がはじまらないよ。
私の精力を回復させたくないのかね?
>>72-74
たしかに。
まあ、細かいことは食事をとりながらでも
ゆっくりと話せばよいだろう?
>>73-75
そうね。では、いただきながらにしましょうか。
さあ、みなさんどうぞ召し上がれ。
それで、アキピウス、他の料理はどうなの?
>>76 はい。
雄を喰った直後の雌カマキリの揚げ物ですが、
これはピスティスさまのお持ちの
交尾するカマキリ入りの琥珀から着想を得ました。
>>77 なるほど。
虫入りの琥珀は珍重されるが、
交尾するカマキリ入りの琥珀となると、
そう見られるものではないな。
>>76 何? ピスティス嬢は
そんなに珍奇なエレクトロンを
お持ちなのですかな?
>>79 エレクトロンだなんて
いかにもアグリッパ13世さんらしいわね。
ゲルマン人はグラエスムなんていっていたようですけど。
ヤルダバオート公爵からいただいたんですの。
古代中国人は、死んだ虎の魂が地中に入って
琥珀になると証言しているが……。
>>81 いや、やはりポプラの涙と称するほうが、
ピスティスは喜ぶのではないかね?
>>83 叔父さま、あたしはどちらにしても喜びますわ。
虎の魂の化身にせよ、ポプラの涙にせよ。
あたしは風変わりなものが大好きなんですもの!
>>84 ピスティス嬢はグレコ・ロマンの娘ですからな。
オウィディウスの『メタモルフォセス』は
きっと愛読書でしょう?
>>85 まあね。
ラテン語の書物のなかでは、
カエサルやキケロなんかの堅苦しいものよりも、
オウィディウスのほうが
夢があって素敵ではなくて?
>>86 しかしまあ、どちらにせよ
オウィディウスくらいは
文学史的にも美術史的にも重要だから、
初歩的な基本文献であるには違いないよ。
>>86-87
わしは、ヴァチカンからくすねてきた
オウィディウスの
フォリオ版のルネサンス期の
装飾写本を持っておるよ。
見事な彩色じゃな。
>>88 伯父さま、本当ですの?
くすねてきただなんて!
見てみたいわ。
写本といえば、
あたしはペトラルカの<<ソネット>>の写本が
欲しいんだけど……。
>>89 ペトラルカの『カンツォニエーレ』か!
いや、あれはやめておけ。
美しいが、ごてごてしすぎておるよ。
>>89 『ベリー侯のいとも豪華なる時祷書』ではだめかね?
おまえにあげてもいいよ。
>>92 まあ! 叔父さまはあれをお持ちなんですの?!
あの時祷書は本当に大好きですわ。
じゃあシャンティイのは?
>>93 もちろん私のほうのが本物だよ。
おっと、しかし、
ファエトンの死を嘆く
ヘリアデスの涙の話だったな。
>>94 エゼキエル書では太陽に化ける手品をしていた
ヤハウエの上半身が琥珀だということらしいが、
まあ、やつは幻覚癖があったから、
本当かどうか……
>>95 ああ、太陽!
それでローマの貴婦人たちは暖をとるために
琥珀の玉を手に持って歩いたのかしら……。
>>96 まあ、それだけではなくて
香りのせいもあるかもしれないがな。
>>96 ピスティス嬢、ギリシア語のエレクトロンは、
琥珀の太陽の色だけではなくて、
事物を誘引することも意味していますぞ!
>>96-98
いや、私の意見では、
ピスティスのローマ好きを見て
むしろローマの女性たちのような
魔除けふうの使用方法を
ヤルダバオート公爵は望んだのだと思うが。
>>99 わしもそうだと思うよ。
虫入りのエレクトロンは希少性ゆえに
魔術的な価値をうたわれていますからな!
>>100 そういえば、たしかスカンジナビア人の墓には
不死の象徴として、
琥珀の斧が入れられておりますよ。
まあ、魔術的に永遠の生命を叶える、
一種の賢者の石でしょうな!
>>101 死人の肉のほうが、
イノシン酸のおかげでうまいのに!
死人がいなくなったら
俺は飢え死にしちまうぜ。
>>101 はっはっは。
賢者の石が琥珀だったら
パラケルススも苦労せずに済んだのにな。
どちらにしても、あたしは
この琥珀の妙ちきりんなところが大好きよ。
賢者の石ならなおのことね。
>>104 そうだ。わたしのかわいいピスティスよ、
大プリニウスを見せてくれないかね?
以前ベル・レットル版をあげただろう?
ロウブ版でも構わないが。
>>105 ああ、<<ナチュラリス・ヒストリア>>ね?
叔父さまからいただいたベル・レットルをどうぞ。
プリニウスは何と書いてあるかでしょ?
琥珀なら、たぶん37巻だわね。
>>106 まあな。
おお! 大プリニウスによれば、
デモストラトスが、琥珀をリュンクスの小便だと
いっているらしいよ。
>>107 小便だって?
じゃあ、舐めたらうまいのか?
>>107 リュンクスとは! あの臓腑を見透かす大山猫のことか!
>>106 雄なら黄褐色、雌ならもっと明るい色なんだそうだよ。
>>109 あと、リュンクスの透視の件だが、
いやホイジンガからの孫引きではなく、
ボエティウスにあたっておいたほうがいいよ。
ボエティウスが典拠とした
アリストテレスの書は失われてしまったからな。
>>111 ねえ、叔父さま。
そんなメメント・モリな
ボイオティアの大山猫はおいといて、
あたしのファエトンの死を嘆くポプラの涙を、
返してくださらない?
>>111 そのプリニウスの『博物誌』には、
交尾中のカマキリ入り琥珀などは
出てくるのかね?
>>113 いや、大プリニウスに載っているのは
アリ、ブユ、トカゲくらいだな。
ピスティスの持っているような
珍しいのはないよ。
>>114 まあ、嬉しい!
さすがヤルダバオート公爵ですわ!
いったいどこで手に入れたのかしら。
>>113 ところでシャルル兄さん、
ドクトル・ウニウェルサリスは
琥珀について何かいっていたかな?
>>117 ああ、あの退屈なトマス・アクィナスの
お師匠さんの珍奇な論考のことね?
>>117 アルベルトゥス・マグヌスの
『女性の神秘および植物・石・
さまざまな動物の効力、
そして、驚くべき世界と動物によって
もたらされる効果について』
のことじゃな?
>>119 あのバロックふうの長たらしい標題を
わざわざいってのけるところが、
いかにもあなたらしい!
>>117 いや、スコラの普遍博士は石のところでは
特に何もいっていなかったように思うが……。
>>118 ピスティスはあの本は持っていないのか?
>>121 ポルビュス騎士にちょうど貸してるのよ。
なにかを探しているらしくて、
その資料なんですって。
自動人形関係なのかしら……。
>>122 ああ彼か! いや、ピスティス嬢。
彼の性格はちょっと
無謀なところはないですかな?
>>123 まあね。あたしの騎士ですから、
あのくらいでないと……。
彼とは話も合いますしね。
>>123-124
私は彼には一目置いているよ。
17歳の若さであそこまで
自然界の法則に従順なのも
たいしたものだよ。
>>125 自然界の法則への従順さにかけて、
俺よりも上なのかな?
>>126 わしが思うに、
ポルビュス騎士のほうが上じゃろうな。
その琥珀のなかの
つがいのカマキリに掛けて!
>>127 それにしても求愛給餌の瞬間などを、
よくも樹脂が飲みこめたものだな。
>>128 まさしく求愛給餌。
カマキリの雄はまさに挺身で
子孫に投資しているわけじゃからな。
どんな思いじゃろうね。雄は。
>>129 雄は、自分の身体をもって
雌の卵の生産に寄与しているわけだが、
それは自分の死語に、交尾の相手の腹のなかにある
自分の精水によって受精されるのだから、
それはもう不可思議この上ない思いだろうよ。
>>130 俺とは違う趣味だな。
俺は女を殺して遣ってから喰うんだぜ。
ところで、カマキリもエティモロジカルに考えれば
ギリシア語の予言者に由来しているのだよ。
>>133 予言といえば、たしかウェッカーは<<魔術の秘法>>で、
亜麻の種、パセリとすみれの根を
燃やした煙のなかでの予言が的中するといっていたわ。
〔いったん引きますね〕
>>134 ピスティスさま。
ロースト・カモノハシの仕上げは、
まさに今おっしゃった
煙でいぶしてあるのでございます!
――――――――――――――――――――――――
幕 間
――――――――――――――――――――――――
――――――――――――――――――――――――
第2の対話 ピスティスのサロン(承前)
――――――――――――――――――――――――
>>135 それにしても、
カモノハシなんてたべたことがないけれど、
いったいおいしいのかしら?
>>138 食わず嫌いはいけないぜ。
『ジュリエット』のスブリガニもいうように、
すべての肉は人間様を養うためにあるのさ!
>>138 わたしが思うに、
カモノハシの最も特筆すべき点は
哺乳類でありながら卵生だという
世にも珍妙なところでしょうな!
>>138-140
いや、私の意見では、むしろこの
学名オルニトリンクス・アナティヌス、
いやカモノハシがリンネ体系でいうところの
哺乳類の単孔目にあたるということ自体のほうが
よほど重要だよ。
>>141 おい、いちいちラテン語の学名でいうな!
単孔目ってなんだよ。
>>142 かんたんにいえば、
解剖学的にカモノハシの
排泄の穴と繁殖の穴とが
ひとつになっているということだな。
>>143 つまり、わしがさっきあの美少年ナルシスの
菊座の埒をあけたように、
カモノハシはみな生まれつきの
ソドムの愛好者というわけじゃな!
三下野郎のヤハウエ神もカモノハシを見逃しているよ。
>>144 肛門愛によってのみ繁殖するというのは、
まさしくオルニトリンクス・アナティヌスが
自然界の法則を遵守している
何よりの証拠だよ。
>>145 まあ! それじゃあ、
お尻が大好きだったあの稲垣足穂翁が
カモノハシ贔屓だったのも
理由のないことではないわね!
>>146 どうやら
そういうことになりますな!
ピスティス嬢。
>>135 でもね、アピキウス。いったいなぜなのかしら?
ロースト・カモノハシの仕上げに、
わざわざ予言的中に効果があるという
亜麻の種、パセリとすみれの根を燃やした煙で
いぶしたりしたのは。
>>148 はい。ピスティスさま。
よくぞお訊きくださいました。
例のエナレスのからの着想でございます。
>>149 ……エナレスって、
あのイラン系のスキュタイ族の
中性的予言者たちのこと?
>>149 >>151 なるほどな。うまいぞ! アピキウス。
カモノハシの雌に対する男色的性行為と
予言者エナレスの中性的特性を
両性具有という視点で付会させたわけか。
>>
ねえ、アグリッパ13世さん。
わるいんだけど、
後のヘロドトスを取っていただける?
黒の革表紙よ。四つ折り判の。
>>153 構いませんとも。
おお! ピスティス嬢は、書架の分類を
デューイでされているんですか!
すると900番代の歴史ですかな?
それとも800番台の文学なかのギリシア・ラテンで?
>>154 ええ、今はデューイよ。
そのうち変えようと思ってるけど。
ヘロドトスはギリシア・ラテン文学にしてあるわ。
クラシックはプラトンやなんかもそこよ。
関連資料が多いですからね。
>>155 よく覚えていたな、ピスティス。
ヘロドトスの出典を。
>>157 まあ! あたしのグレコ・マニアぶりは
叔父さまの影響じゃないの!
>>158 ふん! そうか!
それで、ヘロドトスには何とあるかね?
>>159 エナレスは指に菩提樹の樹皮を
巻きつけて占ったとあるわ。
どんなイメージなのかしら……。
>>160 ピスティス嬢。
それに似た卜占法は、
中央コーカサスのオセット人の間に
現代においても残存しておりますぞよ。
>>161 そういえばオセットのことばは、
言語学的にも
スキュタイの流れを
継承しているんですものね!
>>162 さようです。
オセット人の場合は卜占師が
亜麻布の長さを変化させることで
占っているのですがね。
病気の治療が主らしいですよ。
>>163 へえ。亜麻布ねえ。
じゃあ、ウェッカーが<<魔術の秘法>>のなかで
亜麻の種の煙を予言に関連づけたのも
そのせいなのかしら……。
>>159 ねえ、アンリ叔父さま、ギリシア・ラテンでは
ほかにもエナレス関連の証言はあったかしら?
>>165 まあ、明確な記述ではないが、
アリストテレスにあったように思うが。
例の『ニコマコス倫理学』だが。
>>167 いや、たんに、王族スキュタイには
生まれつきの惰弱な気質がある
というくらいのことだよ。
>>168 ああ、それならわが医聖ヒポクラテスが
アナリエイスとして記している、
女性的男性と関連がありそうだな。
裕福な者だけがそうした気質になるというが。
>>169 ヒポクラテスがいっているのだとしたら、
医学的に何か原因があるのかしら?
>>170 ヒポクラテスによると、
スキュタイ人は
関節炎や腰の潰瘍を治療するために
耳の後の血管を切っていたというのですな。
>>171 へえ。そういえば
スキュタイ人は馬族ですものね。
>>172 ええ。そしてその耳の後には、
生殖機能に関連する血管も密接していて、
誤って切ってしまうこともあったというのですな。
>>173 それが医学的といえるかどうかは別として、
結果として一種の去勢術としてはたらいた
ということか。
>>174 じゃあ、うちの従僕ガバロンも
耳の後の血管で宦官になればよかったのね。
悪いことしちゃった!
>>151 そういえば、スキュタイで思い出したわ。
ねえ、アピキウス。
デザートにメロンはないかしら。
用意しておいてもらえない?
>>177 はい。ピスティスさま。
かしこまりました。
ただいま飛びきり上等のものを
準備させます。
>>177 むむ?! ピスティス嬢。
もしやポリポディウム・バロメッツ、
すなわちスキュタイのメロン羊ですな?
>>179 そうよ! カディリ王国の植物羊よ!
もちろん本物は手にしたことはないわ!
あの巨大なメロンから生まれるというあの羊……。
ああ、一度でいいから見てみたいわ!
〔いったん引きますね〕
――――――――――――――――――――――――
幕 間
――――――――――――――――――――――――
――――――――――――――――――――――――
第3の対話 ピスティスのサロン(承前)
――――――――――――――――――――――――
ああ! それにしても、
どうしてこんなにも好ましいんでしょう!
メロンから羊が出てくるなんていうイメージは。
本当にあたしのこころをくすぐるわ。
>>
ピスティス。
それはおまえがロマン主義の娘だからじゃよ。
大プリニウスの『博物誌』だの、
フローベールの『聖アントワヌの誘惑』だの、
ボルヘスの『幻獣事典』だの、
ラブレーの『パンタグリュエル』だの、
昔からそんな類いが大好きじゃないか。
>>183-184
まあ。私の影響もあるだろうな!
ピスティスが幼い頃から
御伽噺にはロマン派的な書物を
読み聞かせていたからな。
>>185 そうね。きっとアンリ叔父さまのせいよ。
でも、プリニウスやラブレーまでも
ロマン派だなんていうひとは、
きっと珍しいんじゃなくて?
>>186 それもそうだが、たとえば
プリニウスの7巻や8巻なんかは
幻想絵巻物ではないかね?
『パンタグリュエル』にも
そんな雰囲気はあるよ。
>>187 たしかにそうだわね。
ブルトンがシュルレアリストたちを
時間軸を超越した視点で再編成したように、
ロマン派芸術もそれに
ならうべきかもしれないわね。
>>188 そうだな。
まあ、ボードレールはなんというか知らないが……。
ところで、ついでだが、シャルル兄さんは
ラブレーの名を出したが、
『パンタグリュエル』の幻想動物がでてくる5巻目は、
ラブレーの手になるとはされていないのだよ。
>>189 そんなの、
どっちだっていいじゃねえかよ!
>>189 伝アンドレ・ティラコー、
ジャン・テュルケ、ジャン・カンタンの
『善良なるパンタグリュエルの
雄武言行録第五すなわち最終の書』
のことじゃろ?
>>190 まあそういうな。
>>191 また、長たらしい標題を……。
好きですな!
わしもそういう長い標題は好きだがね。
>>189 ふん! 相変わらず手厳しい奴じゃな!
そのとおりじゃが……。
何せカトリック慣れしておるもんじゃから、
伝パウロのものであってもパウロ書簡と呼ぶような癖が
ついてしまっておるのじゃ。
偽ラブレーとでもいえばよかったのじゃろうが、
まあ、さっきのは便宜的にいったまでじゃよ。
>>188 ところでメロン羊の件に話を戻すが、ピスティスよ。
イタリアの旅行家オデリコ・ダ・ポルデノオの報告にある
カディリ王国のメロン羊について、
フランスのデュレは、これを食べたらしくて、
何とザリガニのような味だといっているよ。
>>194 すると、メロンのなかから羊が飛び出て、
そいつを喰うとザリガニだっていうのか?
それじゃあ、最初からザリガニを喰えばいいじゃないか!
>>195 別に食べることが目的じゃないわ。
そのメロン羊の妙ちきりんなところが
素敵なんじゃないの!
ロマン派精神のかけらもないひとね!
>>196 まあ、フェラージュにとっては
最終的にどんな味かが大切なんだろうな。
>>196 いや、それにしても見事な食器ですな!
じつに趣きがある!
>>196 こいつはフランケンタールだろう?
ピスティスよ。
よく手に入ったな、こんな逸品が。
しかも惜しげもなく使って。
>>199 まあ! さすが叔父さま。
お眼が高いわ。苦労したわよ。
あちこちのブローカーに相談してね。
>>200 こりゃ、ずいぶんと高価じゃろう?
ちょっと、もったいない気もするが……。
>>201 あたしのアンティークに対するポリシーは、
使うものは使うという感じなの。
鑑賞用のもあるけどね。
>>199 フランケンタールというと、
ドイツ・オーストリア名窯の?
>>203 フランケンタール窯は
例の車輪のマークの
ヘキスト窯の北東あたりだと思ったよ。
>>204 そうそう! そうですわ。
そのフランケンタールよ!
>>199 いや、でも、ドルセック法院長は
見ただけでフランケンタールと
おわかりなのか?
>>206 裏のCTの窯印をちゃんと見てちょうだいな!
これこそファルツ選挙侯の
磁器製作所のマークじゃないの。
セーブル窯にもフランケンタールの模倣品が
たくさんあるくらいの一品ですわ。
>>207 CTというと?
王冠が上に描いてあるが……。
>>208 つまり、Charles Teodere だよ。
>>210 ヨーロッパの陶磁器は、
セーブルなんかのフランスものよりも
ドイツ・オーストリアの品のほうが
各段に上質なのだよ。
>>210 フランケンタールには、
馬とPHの組み合わせの窯印のもあるわよ。
ダイヤのチェックのもあったと思うけど……。
>>211 まさしく陶磁器は
ドイツ・オーストリアものに限るな。
わしは初期のザクセンものを
愛用しておるよ。
>>213 なかでもザクセンものはやはり最上質だな。
アウグスト王がベトガーを
さんざん追い詰めただけのことはあるよ。
>>213-214
あたしは特に
このフランケンタールの
陰鬱な雰囲気が大好き。
何ともあたしの心の琴線を響かせるの……。
>>215 なんだ、ピスティス。
去年あたりまでは
ルブーフ窯に凝っていたんじゃ
なかったのか?
>>216 ええ。なんだか、アントワネットの
御用達っていうところに
惹かれていて……。
>>218 Antoinette の A の上に
かわいらしい冠がちょこんと
乗っかっているのよ。
>>219 なんじゃ、それじゃあ結局ピスティスは
王冠が好きなだけなんじゃないのか?
フランケンタールといい、
ルブーフといい。
>>220 まあ、それもなくはないけど……。
さっきもいったけど、
陰鬱な感じのものが好きなの。
アントワネットのほうは彼女の顛末を思い出させるし、
ハンノンのフランケンタールのほうは、
50年たらずとはいえ、短命じゃない。
前身のストラスブール窯の儚さには
負けますけれど……。
>>221 いずれにしても趣味は悪くないと思うよ。
しかしまあ、私はやはり、
ザクセン窯やニンフェンブルグ窯、
ベルリン窯なんかが好きだがな。
>>221 しかし何じゃな。
ピスティスはどちらかというと
フランス趣味のようじゃな。
この部屋の家具はルイ14世式、
この建物はコルビュジェそっくりじゃないか。
>>223 ロンシャンの教会ふうのここは
大伯父さまの別荘を
借りているのですわ!
伯父さまお忘れになったの?
〔いったん引きますね〕
――――――――――――――――――――――――
幕 間
――――――――――――――――――――――――
226 :
:2001/08/10(金) 22:00
227 :
:2001/08/10(金) 23:27
(山奥の祠に不躾に侵入し、散弾銃を突きつけて)
おい、そこの怪しい女!
いったいそんなところで何していやがる?!
>>228 あなたのほうこそ、怪しいではございませんか?
このような人気のない山奥まで入り、
密かに暮らす女にそのような振舞いをされるとは。
>>229 屁理屈はよすんだな!
何をしているか答えるんだ!
死にたくなかったらな!
>>230 もう数千年来、
死にたくても死ねぬこの身ゆえ、
いっそ、その武器の効果のほど、
どうぞお試しあれ。
>>231 ふん! その答えを聞けて満足だよ。
やはりそうか!
おい、僕はおまえさんを探していたんだぜ?
伯山甫の姪よ!
>>232 ほほほ……。
私などではなく、
偃師の人形のほうではございませぬか?
ポルビュスさん?
(驚愕して)
>>
……な、何?!
236 :
:2001/08/10(金) 23:43
***
237 :
:2001/08/12(日) 21:22
――――――――――――――――――――――――
第4の対話 ピスティスのサロン(承前)
――――――――――――――――――――――――
>>223 そもそも大伯父さまのこの別荘のことを
ご紹介くださったのも、
シャルル伯父さまではないの!
>>239 おお、そうじゃったかな?
そういえばそんな気もするわい!
>>240 シャルル兄さんはさっき、
私の精力のことをとやかくいっていたが、
兄さんは記憶力のほうが
衰えてきていると見えるな!
>>241 馬鹿をいうでないぞ!
いざ悪事や放蕩のことになると
抜群の記憶力を保っておる!
>>243 いやあ、大司教どの。
年齢にはかないませんな。
賢者の石を探り、永遠の命を得てみてはいかがですかな?
さすれば記憶力も衰えんことでしょう。
>>243 大司教どの。
遺伝子工学や生物学の分野でも老化の遺伝子、
まあ結果としてそう働くゲノム群といってもよいでしょうが、
この老化のシステムは、
最も注目を浴びている研究課題のひとつですよ!
>>244 何と! あなたよりわしのほうが5歳も若いというのに
そう年寄り扱いされるとは……。
賢者の石などいらん! 永遠の命などに興味ないよ。
>>245 老化も大いに結構!
>>246 わしは大司教どののその依怙地をみて、
あの黄河の東、山西の地に住む
強情な老人のことを思い出したよ。
>>247 まあ! ひょっとしてあの葛洪の<<神仙伝>>の?
>>248 ええ、そうです。ピスティス嬢。
漢の武帝がその地に使者を遣わしたときのこと、
妙齢の美女が老人を杖で叩いているというのです。
老人は俯いて、跪いたまま叩かれ続けている……。
>>249 何でい!
よくある類いの趣味じゃねえか!
……使者が不審に思って訊ねると、
じつは彼女はすでに130歳であり、
仙薬の金丹を服用しているおかげで若さを保ち続けている……。
……いまいうことを聞いて服薬しない70歳の息子を
まさに折檻しているところなのだと!
>>252 ふん!
いずれにせよ何でも失念するわけではない!
>>254 強烈な快楽の刺激に慣れ切ってしまっておる分、
わしの感受性に訴えかけないものはみな無駄なものとして、
記憶から淘汰されてしまうのじゃよ。
逆に激しい情欲にまみれた光景は
いつまでも忘れんわい!
>>255 すげえ言い訳だ!
じゃあ、大司教さんよ。
さっき俺たちみんなでやらかした
あの若者兄妹の放蕩惨殺は、
あんたが棺桶まで、いや地獄まで持っていけるはずだな?
(吹き出して)
放蕩惨殺ですって?!
気にはなっていたんですが、
それであんなところに無惨な姿の男女が
転がっているのですか……。
しかも全裸で!
>>257 ええ、さっきシャルル伯父さまが
連れてきた迷える子羊たちですわ。
そう、兄妹でもあり、恋人でもあり、
またそのふたりの胎児の
生命の強奪者でもあるというふたり……。
>>257 さよう。
わしのところに懺悔をしに来おったから、
姪のいる教会ふうの建築物まで
審判をしに連れてきたのじゃよ。
みなもよろこぶと思ってな。
>>259 たしかに!
ずいぶん楽しい思いをさせてもらったよ!
私は兄のナルシスの若気を抜くことができたし、
久びさに美少年を射殺するという快楽も
味わうことができたしな!
>>257 俺はこのあと死んだ妹のロレットをほうを遣ってから、
続けてその生臭い屍肉を喰わせてもらうつもりだぜ。
>>261 それについては、
あたしはあまり気が進まないのだけれど……。
>>261 ちょっと待ってくれ。
わたしは前にもいったが、
屍体も収集しているのでね。
できれば頂きたいんだが……。
もちろん只とはいいませんよ。
>>263 それもそうじゃな。
フェラージュに喰わせてやっても一銭の得もしないし、
エルキュール先生ならば
合法的に屍体処理が可能じゃからな!
>>262 では、ナルシスとロレット兄妹の屍体処理は
エルキュール先生におまかせするとしていいな?
ピスティスよ。
>>265 ええ。あたしもこの部屋に
屍体が転がったままでは困るし、
そのほうが助かりますわ。
>>261 フェラージュにはあとで、
例の白紙委任状と引き換えの
素晴らしい仕事を与えるから
そこで十分に人肉の味を堪能できるはずだよ。
>>267 まあ、俺の弱みを握っている
あんたがそういうんなら
それで我慢するしかねえな……。
でも、まだエリーズとキュピドン母子の
処分が残ってるぜ?
>>268 どうせあんたのお目当ては、また、
エリーズのお腹の赤ちゃんの
処分のことでしょう?
>>269 その母子のことですな?
わたしにさっきおっしゃられた
堕胎手術とやらは!
>>268 おお! そうじゃったな。
すっかり忘れておったよ。
のちほどあの禁断の関係の母子の裁きをも
行うのじゃったな!
>>273 やはり、記憶力が鈍っているようだな!
さっきの話の妙齢の美女のように、
素直に仙薬を服用してはどうだね?
>>274 結局さっき話した息子の老人のほうは、
服薬を拒み続けて死んでしまったそうだ。
だが、母親の妙齢の美女のほうは崋山に入ったという……。
>>276 『冲虚至徳真経』に出てくる偃師の秘法を用い、
世を去った息子の人形とともに
ひっそりと生きておるらしいのです!
――――――――――――――――――――――――
幕 間
――――――――――――――――――――――――
ピスティスさん!!
いったいどこに??
またサロンを 引っ越しなさったのね??
ポルビュスさんか
ルクレツィアさんあたりが
いそうなんだけど・・・
>>281 え?? どなたでしたっけ??
失礼ですけど
>>282 ガバロンの親友、セラドンです。
覚えていらっしゃいませんか?
前回お会いしたのは、大分前のことですが。
>>283 う〜ん
森のなかで恐い目に 会わされたひとかなぁ・・・
だったら すぐに逃げなきゃ!!
(逃げる準備)
(慌てて腕をつかんで)
>>284 いや、待ってください、アニエスさん!
そんな真似はしませんよ。
ただ、あなたにおききしたいことがあって……。
>>284 ルクレツィアさんや
医者のメスカルさん、
もしかしたらガバリス伯爵あたりも
見かけませんでした?
>>286 いいえ 私も探しているくらいです
サロンのなかには??
こんばんは。
(声がかかったので一応挨拶だけね(^^)
>>288 ピスティスさんところのガバロンが、
いま、そもそも探し廻っている。
サロンにもいないということでしょう。
>>289 ルクレツィアさん!!
どこで知り合ったんでしたっけ(大汗
>>289 とにかく、どうされたのです?
従僕ガバロンがサロンからいなくなったと
騒いでいましたよ。
>>291 そういえば…
どちらでしたっけね?
新しいサロンで新しい友情があってもよろしいのではないかしら?
>>292 どなたでしたかしら?
>>293 殺伐としていますもの(笑)
息抜きにもでたくなりますわ。
>>294 ぼくはピスティスさんの
従僕ガバロンの親友にしてソドムの恋人ですよ。
お分かりですか?
>>294-295
メスカル医師は ご存知ないですか??
>>299 いえ。
残念ですけどそのような方と面識はありませんわ。
(意味不明の苦笑)
>>301 でも同性との快楽には、いかにも面識がありそうだ。
ぼくはガバロンと出会ってからは、
このソドムの快楽しか味わえなくなりましたよ!
そもそもぼくは、そのように生まれついているんです。
>>300 あらゆる快楽で一番なのは美しく咲く花を摘むその瞬間ではないかしら?
あなたの謎かけの答えにふさわしい回答かは判りませんけど(笑)
>>303 むしろ、ぼくは
美しく咲く花を踏みにじるその瞬間
と言いたいですね!
ぼくはね、美しいものを汚すのが大好きなんだ!
>>304 まあ?
アニエスさんもピスティスさんをお好きなはずでは?
>>306 (顔を赤らめ)
まあ・・・!! ぽっ・・・
>>305 美しきものは汚されるべく存在しているのでしょうね。
でも私などはむしろ汚されたものにこそ美しさを感じてしまうのですけど…
美しいものを汚してはいけない……
禁断の果実は食べてはならない……
ガバロンを愛し、愛されるのもその為かもしれない!
>>311 コホン!
とにかく、汚してやる過程、
いえ美しいものを自分が汚してやっているんだという
その瞬間にこそ快楽の扉が待ちうけていると思いますがね。
なにか饒舌になってしまいましたわ(笑)
(みんなコピペ用を取り揃えているのかしら…???)
>>314 汚されていく自分を感じることこそ至上の快楽とも言いいますわよ(笑)
どちらもサイコロの裏表のようにいつでも転がっているものですし…
>>315 (まあ、名簿は便利ですよ。
呼びかけとか面倒臭い名前が多いですから)
>>317 はあ・・・
そのままでいくと
ピスティスさんみたいになりそう・・・
>>317 それは女性だからなんですかね?
ぼくは身体は男性だが、心は男性でもあり、女性でもある。
どちらの快楽もしっていますが、
汚されるというのは、ぼくの趣味とは違うな!
(ふと
>>316の純真な言葉に恥じ、遠い目をする)
>>320 ルクレツィアさん!
どうされたのです?
>>320 ピステイスさんのように輝石のような輝きを放つ方も居られますものね(笑)
そうですね本当に美しいものは汚れたように見えてもそれはうわべのこと。
だからこそアニエスさんもピスティスさんに惹かれてしまうのだわ。
>>324 つまり、臓腑に汚物をかかえようとも、
表皮は黄金のように輝いている
という意味ですか?
>>326
またそんな韜晦するようなことを…
可愛らしい方ね(笑)
>>328 アニエスさん、
君だって腸のなかには、
大事に汚物を抱え込んでいるんですよ。
ルクレツィアさんと同様にね!
>>328 本当じゃないですか!
じゃあここで見てみるかい?!
誰か助けてください!!
また この人が〜
名前: ルクレツィア
E-mail: sage 私とアニエスさんでセラドンさんを拘束していたぶり倒すとか(w
内容:
>>327 綺麗も汚いもアニエスさんはアニエスさんだわ。
自分の思うままにされれば良いのよ。
>>330 331
すこし野卑な言葉はおつつしみなられては?
>>333 ガバロンさん!!
セラドンさんが 私と
ルクレツィアさんを・・・(大泣
>>331 私がピスティスさまに追い出されてしまうだろうが!
さあ、どうぞみなさん、こちらへ……
(サロンへと向かう)
う・う・・(涙
ぐすっ・・・
>>340 こちらですよ。
なかでは、盛大な宴会が開かれております。
ぐしゅっ・・・
…
おっと、賑やかだな……。
(相変わらずの賑わいだわ…)
346 :
:2001/08/13(月) 14:02
(崋山の山奥の祠)
(西河老翁に向かって)
き、貴様は何者?!
人間なのか?!
>>347 ワシラニ
ナンノヨウジャネ?
コゾウ。
>>349 な、なぜ僕の名前まで知っている!
薄気味の悪いやつらめ!
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第5の対話 ピスティスのサロン
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……
オイアーン・ターン・ユアキントン・エン・
オーレシ・ポイメネス・アンドレス……。
ああ! サッフォーの祝婚歌は
どうしてこんなに好ましいのかしら!
そうよ!
まさにこの歌も
花婿の荒々しさに踏みしだかれてなお
美しい花嫁をうたっている……。
この10番目のムーサによる
失われる処女性を悼む
かずかずの祝婚歌たち……。
ああ、美しく咲く花を摘むその瞬間よ!
麗しき花をけがすそのよろ悦びよ!
そして、けがされてもなお保てる花の美しさよ!
たとえば、ルクレツィアさんのような
哲学の光りを浴びた女ならば、
この歌のこころがわかるのよ!
アニエスにはもっと徹底的にわからせないと……。
>>353-357
ピスティスよ。
ずいぶんひとりで盛りあがっているな。
みんな黙々と食事をしているというのに!
(従僕ガバロンに連れられ入室)
>>357 ピスティスさん お久しぶりです!!
すわってもいいですか??
(といいながら適当にすわって勝手に食べる)
(子羊の肉を訝しげにつつく。)
(アピキウスさんの腕はとにかくお肉は本当に大丈夫かしら…?)
>>359-360
ささ、どうぞ。
アニエスさまも、ルクレツィアさまも
お口に合いますかどうか存じませぬが。
>>359 アニエスじゃないの!
久しぶり!
>>360 あら、ルクレツィアさん!
探していたんですのよ!
いつのまにかいなくなってしまったので、
従僕のガバロンに探しにいかせたのよ。
あら。
>>361 とても美味しいですわ。
(少し慌てて切り分けた肉を口にする)
>>359-360
ほう。すると、ピスティスは
アニエスとルクレツィアという
ニ輪の花を抱えたというわけか!
ピスティスは女のほうが好きだからな。
>>364 叔父さま、女同士でいとなむ
サッフォーふうの愛のかたちは、
格別珍しいものではないわ。
>>363 ねえ、ルクレツィアさん?
>>365 美しいものを好む心に偽りは要りませんものね(笑)
>>364 とくに殿方を拒んでいるわけではありませんのよ。
>>365-366
たしかにレスビアニスム自体は
珍しいものとはいえないな。
しかし、少しばかり
揚げ足を取らせてもらってもいいかね?
私はあのサッフォーという
レスボス島の閨秀詩人について、
ぜひとも確認しておきたいのだよ。
>>366 そうよ!
美しいものはそれでこそ好ましいのだわ。
叔父さまたちの兄弟のほうよりも、
あたしたちのほうがずっと美しいと思うの。
>>366 ルクレツィアさんは、
何か甘くて美しい経験はないの?
>>370 まあ
ピスティスさん、美しさは肉体の造詣だけじゃ
ありませんわ(笑)
>>366 私も聴かせてもらいたいな。
うずくような話を!
>>372 何? あんた、人間の
内面に美しさが備わっているとでも
いうのかね?
友人の唖の女の話などはどうかしら…?
>>372 冗談をいったは困るな!
人間は外見だけつくろっていれば
いいのだよ。
>>373 お好みに合うかは存じかねますけど、彼女を理想の女性と評された方も見えたようですわね。
もちろん彼女は最初から喋れなかった訳ではないのですけど…(笑)
>>376 ええ、外見だけとれば彼女は申しぶんなかったのですわ。
あたしと…
お兄様の幼馴染でとても綺麗な娘だったもの。
>>379 では後天的なものだとすると、
その女は、なぜそういう身体になったのだね?
しかも理想とは!
>>380 お兄さまがいらっしゃるの?
お名前はなんておっしゃるのかしら?
>>381 今の彼女を「物言わぬ女」として理想の愛人と評した方が見えたのよ(笑)
兄様が惹かれたのも仕方のない話で、
もし彼女がその外見に相応しい人格の者であれば今もあの美しい声で
愛を語っていたのでしょうね。
>>382、384
まあ、昨晩お見えになっていたのに…
ああ、甘美な思い出の続きだったわね
ある日お兄様の寝室で彼女を見つけたわ。
もう声はでない体で…拘束されて…
告白するわ。私はそんな彼女をとてもいとおしく美しく思ったの…
そうね
>>376のおっしゃると通りだわ。
>>383 物言わぬ女が理想だというのならば、
すなわち危険な存在だということだな。
ならば、いっそ殺してしまわないのだね?
惹かれる惹かれない以前の話だろう?
>>386 ねえ、叔父さま!
それはちょっと急すきません?
殺すだなんて!
>>387 甘いな。そんなことはないよ。
ニッコロ・ディ・ベルナルド・
デイ・マキアヴェルリも『イル・プリンシペ』
でいっているよ。
ひとに危害を加えるときは、
復讐を恐れなくてもよいような方法で、
徹底的に行うべきだとな!
>>386 まあ(笑)
すべからく女性は(秘密を守る上では)危険な存在である、と言うだけで
殺してしまうだなんて…
声の出ない彼女をお兄様と愛してあげたのよ。
背徳と劣情と…
思い出すだけで蕩けてしまうような…
>>389 風変わりな趣味をお持ちなのね!
中国の纏足のような類いの快楽だわ。
今、彼女はとても美しいわ。
つまらないお話でごめんなさいね。
>>391 マキアヴェルリは、
慎重であるよりも果敢であれ
ともいっているよ。
私はふだんから殺すほうをえらぶがな!
美しいなら、なおのことここまで連れて来い!
あんたができないなら、私が殺してやるよ!
>>392 ああ、どうなっているんだ!
あんたが法院長だってのいうのにも
さすがの俺も驚きだぜ!
>>391 なあ、落ちてた雌犬!
>>391 お兄さまはいまどちらに?
そいて、その女のかたは?
>>391 総論で言えばもちろんそうですわ。
(指にはまっている大きな指輪を触り嫣然と微笑む)
>>395 <そう>とは?
あら! 綺麗な指輪ですこと!
>>395 殺人には何も理由はいらないのだよ。
殺したくなれば殺す、殺すと楽しいから殺す……。
自然界が私の心にそう命じているのだから、
私はその衝動に従うまでだ。
>>394 まあ、ピスティスさん。
思い出話ですのよ。あなたの興味を引くほど面白い話はそうはありませんわ。
今度はあなたのお話を聞かせていただきたいですわ。
>>397 まあ、楽しいお方。
でも一番楽しく、一番実りある方法が「殺す」
事じゃないこともあるのですわ。
>>396 大きいだけで…
ピスティスさんの御気になさるような良いものでもありませんの。
お恥ずかしいわ。
>>399 ええ、ぜひお聞かせいただきたいですわ。
>>400 そんなことないわ!
素敵な指輪よ。
どなたかからの贈り物?
>>401 想い出のなかでもっとも大きなものは、
そう……、今は亡き兄のものですわ……。
>>400 殺人の衝動は快楽の原動力として、
もっとも優れたもののひとつなのだよ。
生命の断絶は自然界の意図どおりなのだ。
事物は創造するにあたって、
その材料を必要とするな。
>>402 父からですの。
今風ではないし本当に大きいだけですわ。
まあ、ピスティスさんもお兄様がいらしたの?
>>404 古風な指輪って素敵じゃないの!
ええ。
でも兄は、あたしが9歳のときに亡くなってしまったのよ!
ああ……。
>>406 ピスティスよ。
さればこそ、死んだお前の兄アルベルトも
自然界の創造の意図に適うかたちに分解され、
いまは幾多の新たなる物質の要素として
変化しているのだよ。
>>406 このように、われわれはせいぜいもってしても、
物質の形状を変化させることぐらいしかできないのだ。
できることといえば、利己的な遺伝子の乗る小船を分解する程度で、
完全な破壊・消滅などは不可能なのだよ。
>>406 いったいに自然界が飽くことなく繰り返す
この分解行為の手助けをしたからといって、
これを非難することほど愚かなことはないな。
>>406 道学者先生が殺人を騒ぎたてるこの「悪事」も、
自然界の絶えざる創造の手助けをしているのだから、
むしろ進んでこれを遂行するように
心掛けなくてはならないな。
>>410 ああ、叔父さま……!
たしかにあたしは兄の死を切っ掛けにして
いま叔父さまがいわれたような
絶対的原理が世に存在することを
学んだのだったわ……。
>>401 >>404 ……
そう、兄が亡くなったのは
あれは9歳になったばかりの頃、
事情があって周りの友人よりも遅くなっってしまった
あたしの初聖体拝領の日のことだったわ……。
>>412 へえ! 聖体受拝なんかやったのかい?
俺はミサに行ったことすらねえのによ!
アンセルム大司教の前でいうのも何だがな!
……
両親や兄も見守るなか、
あたしは純白のドレスに身を包んで、
その日一日とてもそわそわした気分でいたことを
いまでもはっきりと覚えている……。
ああ、うまいなあ!
このカタツムリの肉団子は。
女の生肉以外にもうまいものはあるんだな!
……
兄が殺されたあの日を境にして、
あたしは殻のなかに閉じ込められてしまった……。
そう、ちょうどこのお皿に盛られた
カタツムリたちのように……。
>>416 そうだろ?
な? うまいだろ?
このカタツムリ!
……
でも、いまはよしておきましょうね。
あまりにも長くなりすぎてしまいますし。
>>411 ねえ、叔父さま。
カタツムリについて、プリニウスは
何かおもしろいことはいっていないのかしら?
>>418 一応見てはいるのだが、
さしておもしろいことは
いっていないようだな。
>>419 アリストテレスの<<動物誌>>のほうも、
まったくおもしろくないわ……。
>>420 まあせっかくだから、プリニウスから少しだけ……。
トラキアにあった最初のカタツムリの
養殖場の話がでているよ。
>>422 彼らは種類別に飼育されたのだな。
白カタツムリ、大きいイリュリア種、
多産のアフリカ種、品質のソリタネ種。
>>418-424
そうだろ?
な? うまいだろ?
このカタツムリ!
>>424 他に何があるのかね?
カタツムリを太らせる方法としては、
ぶどう酒やファール小麦などを与えたのだな。
そして、大きなもので80クオドランテス、
つまり1.5リットル容量の殻のものだそうだ。
>>428 いや、ぶどう酒といえば、
酒はどうなっているのかね?
ピスティスよ。
>>428 おかしいわね。
アピキウスが準備させている
はずなんですけれど……。
>>429 カタツムリについては、殻と生物という視点に立って、
むしろ美術史的に眺めたほうがおもしろいと思いますよ。
>>430 アレッサンドロ・ボッティチェルリの
<<ウェヌスの誕生>>みたいなイメージのこと?
>>431 いや、たしかにあれも傑作ですが、
わしのいうのはもっと珍奇なイメージですよ。
たとえば、有名なジョヴァンニ・ベッリーニの寓意画では、
ふたりの男が大きな法螺貝を運んでいる姿が描かれ、
そのなかからは裸体の身体がカタツムリのように
滑り出していますな!
>>433 彼こそヴェネツィア・ルネサンス指導者だと思うわ!
彼の作品は幻想的なものが多いですものね。
>>434 このイメージはたとえば
中世の玉石彫刻の印章のも夥しく見られますな。
牛、馬、鹿、象、といった比較的大きめな動物たちが、
小さな渦巻き貝殻から顔を覗かせるという
コントラストにみちたイメージです。
>>435 アンリ叔父さまが写本をくださるっておっしゃっていた
<<ベリー公の豪華時祷書>>にもそんなイメージがあったわよ!
>>436 そうですな。時祷書にはよく見られますよ。
マルグリット・ド・ボージューの『時祷書』では、
これらの奇怪な生物が殻を脱ぎ捨てた姿も
描かれています。
まるでヤドカリ状態ですよ、殻のなかは!
渦巻き状の身体の上には鳥、兎、人間の頭部が
ちょこんとくっついている。
いかにも珍妙でしょう?
お料理 普通のはないの??
>>439 何か欲しいものでもある?
>>438 フランドルのボッスにもそういう類いの
奇怪な貝生物のイメージがあったと思いますわ。
>>440 ほう、貝生物とはいい呼び方ですな。
そのヒエロニムス・ボッスのように、
ティンクチェントにあっても
中世の秋に出現している貝生物のイメージは、
ボッティチェルリのウェヌスとは反対に
悪魔的なものが中心です。
>>442 それはどうしてなのかしら?
フランドルに春が訪れるのが
遅かったっていうことなのかしらね?
>>441(アニエス)
ああ、例の七面鳥ね! 当然常備しているわよ。
すぐに用意させるわ。
>>361(料理長アピキウス)
ねえ、アピキウス、七面鳥の丸焼きをお願いね。
>444
かしこまりました。
去勢した雄のほうでよろしいですね?
≫445(料理長アピキウス)
雌雛があればそれでもいいんだけれど。
叔父さまたちの妙ちきりんなお楽しみのために、
雄のほうはなかなか入手できないのよ。
何せ生かしておくために、飼育しなくてなならないのですからね。
>446(ピスティス・ソフィア)
何だ、ピスティスは生真面目に
七面鳥の飼育をしているのかね?
そんな娘はピスティスの周辺には
いないだろうよ。
>446(ピスティス・ソフィア)
悪魔的な貝生物のイメージの所以は、
一所に特定は不可能でしょうな。
結論からすれば、ロマネスク的・ゴシック的に特異な
グロテスク風潮というのが鳥瞰的理由といえるでしょうし。
≫447(ドルセック法院長(アンリ))
何いってるんですか!
そもそもアンリ叔父が、いつでも叔父さまたちの
風変わりな欲望をかなえられるように用意しておけと
いったんでしょう?
≫448(魔術哲学者コルネリウス・アグリッパ13世)
たしかにあたしの好きなロマネスク寺院の彫刻や、
バロック彫刻には怪物のイメージが氾濫しているわね。
>450(ピスティス・ソフィア)
バロックの場合はマニエリスムの極地的変貌でしょう。
その怪物趣味は端正なルネサンス趣味の反動ではないですか?
なるほどバロックは「歪んだ真珠」ではありますが。
≫451(魔術哲学者コルネリウス・アグリッパ13世)
もちろん素直にロマネスク・ゴシック系列の中世的な怪物趣味と、
マニエリスム・バロック系列の退廃的なそれとは、
趣きが異なるわね。
≫451(魔術哲学者コルネリウス・アグリッパ13世)
けれどもあたしのロマン派的気質のせいか、
時間軸を超越した次元での、それらに共通した
奇怪な趣味・趣好を感じざるをえないのだわ。
>452-453(ピスティス・ソフィア)
ピスティスの場合は一貫してロマン派的観点から
怪物趣味を捉えようとしているのだろうよ。
ロマン派の重鎮テオフィル・ゴーティエが
ピスティスと同じくグレコ・マニアの使徒だったように、
時間的な束縛からは解放されている……
こう思うがどうかね?
>449(ピスティス・ソフィア)
七面鳥を使用した快楽は、古来より多くの道楽者によって
いとも珍重されてきたのだよ。
>449(ピスティス・ソフィア)
そしてこの雄の七面鳥の錬金術によって
まさしく鶏姦によるソドムの快楽、異種による交媾、
そして同性による悦楽という三種のエレメントによる
珍奇なアマルガムが誕生するのだよ。
≫455-456(ドルセック法院長(アンリ))
第四エレメントをお忘ですわ、アンリ叔父さま!
その七面鳥は去勢されているという事実です。
去勢によって雄でありながら雌でするのは、
なにもその後の食用にする肉のためばかりとはいえませんものね!
>456(ドルセック法院長(アンリ))
錬金術によってアンドロギュノスを生成し、
さらにその解体および自己同化までおこなうというのでは
オートエロティスムの極致かもしれませんね。
それこそ怪物だ。
(どかどかと不躾に入室)
>457
やあ、ピスティスさん!
もはや入室せざるをえませんでしたよ。
今夏の崋山は閉鎖されたのでね!
≫459(ポルビュス騎士)
すがたを見せないと思ったら、
どこかにいっていたの?
そちらのお連れおふたりはどなた?
>460(ピスティス・ソフィア)
娘の方は、雍州の神仙伯山甫の姪といえば
もうおわかりでしょう?
老翁は誰だと、いや何だと思います?
ヒョウ、ヒョウ、ヒョウ……!
ほほほほほ……。
>461(ポルビュス騎士)
久しぶりだな。お若いの。
コマネチ大佐の別荘ではずいぶんと手荒だったが、
いまだに山賊じみた人狩りでもやっているのかね?
>462-463(西河少女、西河老翁)
やや? あんたたちはもしかして。
女性のほうは、雍州の神仙伯山甫の姪ですと?
>459(ポルビュス騎士)
今夏の崋山云云と言ったな?
すると妙齢の美女は黄河の東、山西の地の少女。
老翁は……!
>461(魔術哲学者コルネリウス・アグリッパ13世)
何だと? 山賊じみた人狩りだって?
ははあ、こいつか。
ポルビュスとかいう哲学者ぶりが
俺より上だという男は。
>452-453(ピスティス・ソフィア)
貝生物のイメージは、ロマネスク・バロックの
中世的視野に絞ったほうがよさそうですな。
>452-453(ピスティス・ソフィア)
しかも奇怪な趣味・趣好いう側面で検証を始めると、
マニエリスム・バロックをも含めても、とうてい収まらなくなります。
さらにアルカイックなものからシュルレアリスムまで、
広範囲に及びますからな。
たといピスティス嬢のロマン派的気質によって
フィルタリングしたにせよです。
>457(ピスティス・ソフィア)
たしかにそうだな!
いっそのこと、ここの七面鳥は
メレアグリス・ガルロパヴォ・アマルガムスと改名してはどうかね?
すると七面鳥を斬首しながら気を遣る私たち兄弟は、
神々でしかないな。
>428(アンセルム大司教(シャルル))
おっと、もちろん神といっても
ナザレの三下香具師のほうではなくて、
オリュンポスの一族のほうだよ。シャルル兄さん。
(じたばたしながら)
なんでもいいから 早くぅ〜
>273((アンセルム大司教(シャルル)))
こんにちは。アンセルム大司教。
時期枢機卿を約束された身とは思えない、
あいかわらずの涜神ぶりがひしひしと伝わってきますよ!
>405(ルクレツィア)
はじめまして。高貴なかた。
いや、言われなくても
ルクレツィアさんがサロンにぴったりの客人だと、
僕にはわかるんだ!
>464(魔術哲学者コルネリウス・アグリッパ13世)
ああ、あの時の錬金術師か。
ワクワク島の無花果娘はその後どうした?
完成したのかい、完全なる存在は?
>466(魔術哲学者コルネリウス・アグリッパ13世)
さすがはフォン・ネッテスハイムの後裔の魔術哲学者。
老荘・仙道も研究しているんだな。
あんたの想像どおりだ。伯山甫の姪と、そしてその息子さんだよ!
いや正確に言えば……。
>467(山賊フェラージュ)
いや、僕の哲学者ぶりがあんたよりも上かどうかは知らないが、
噂はかねがね聞いているよ。
あんたのお説は正しいことばかりだから、僕も賛同してやまないね。
>470(ドルセック法院長(アンリ))
ご無沙汰していますね。ドルセック法院長。
あなたとまた、こうして話ができる日を
ずっと楽しみにして来ましたよ。
>472(アニエス)
ここにいたんだね。僕のかわいいアニエス!
今度こそ君に、たっぷりと哲学の光りを浴びせてやるつもりだよ。
うっ、うーん……。
>480(天使チンク)
おお! 小僧、目を覚ましたぞ?!
>480(ポルビュス騎士)
そうかい。話のわかる男だな。
そうそう、きっとこのチンクとかいう妙な小僧が
あんたの話の種に少しは役立つと思うぜ?
>473-479(ポルビュス騎士)
ご無沙汰ですな。ポルピュス騎士。
わたしも黙々と食事をしてはいるが、
ちゃんと部屋内にはおるのですよ。念の為。
ところでメスカル医師には会わなかったかね?
>483(外科医エルキュール)
お久しぶり。
いや、決して無視していたわけではありませんよ。
医食同源。研究の邪魔をしてはと、ためらっていたのです。
≫461(ポルビュス騎士)
雍州の神仙伯山甫の姪って……素敵じゃない!
≫463(西河少女)
はじめまして。
つまり、あなたは崋山の西河少女さんだということなの?
そうだとすると、そちらのご年配のほうが息子さん……。
≫462(西河老翁)
遠いところをはるばると、ようこそおいでくださいました。
そのお姿がアグリッパ13世のいわれていたように、
偃師の秘法による人工生命体だっていうの?
信じられないわ。人間そのものじゃないですか!
≫465(魔術哲学者コルネリウス・アグリッパ13世)
でも列禦寇によると、偃師の人工生命体は
革や木を漆や膠で固めたものだということじゃないの!
まだメアリー・シェリーに出てくる怪物のほうが理屈が理解できる。
これが、いやこちらのかたが革や木だとは思えないわよ?
≫468(魔術哲学者コルネリウス・アグリッパ13世)
ロマネスク様式のいかにも病理学的奇怪なヴィジョンが
まだまだポスト・アポカリプス的な混沌に浮遊していたのに対して、
ゴシックのそれは様式美が昇華されすぎている
きらいもあると思うわ。
≫468(魔術哲学者コルネリウス・アグリッパ13世)
だから、毒気のある奇怪なイメージ好きのあたしとしては、
ゴシックも好きだけど、
ロマネスクのそれのほうがより気質にぴったりするのよ。
≫470(ドルセック法院長(アンリ))
叔父さまたちは男性だから鶏姦の楽しみが可能かもしれないけれど、
あたしたちはべつだんおもしろくもないわ。
≫470(ドルセック法院長(アンリ))
ギリシア好きのあたしとは、むしろ食用にはフラミンゴを飼いたいの。
クミンやコリアンダーなんかのソースで食べるのがいいのよ。
鑑賞用としてもいいしね。
≫467(山賊フェラージュ)
カニバリスムの実践者としては、
もしかしたらポルビュス騎士よりも
あんたのほうが勝っているかもしれないわね。
≫467(山賊フェラージュ)
でも、文明諸国の人肉食は道楽者による
いわゆるバタイユの禁止に対する違反の快楽に
成り下がってしまっているように思うんだけどどうかしら?
≫467(山賊フェラージュ)
残念なことに、あんたやハールマンのように、
純粋な衝動にかられてのカニバリストは
いまや稀有な存在だわ。どうかしら?
≫472(アニエス)
はいはい。七面鳥は、いまにアピキウスが持ってくるわよ。
かわいいクレイスちゃん。
ねえ、アニエス。サッフォーのゴモラ歓びは
叔父さまたちのソドムの快楽よりも上だと思わない?
≫480(天使チンク)
あら! 眼を覚ましたの?
ねえ、あんたは天使のどういうヒエラルキアに属するの?
9階級のうちには属さないわよね。
≫484(ポルビュス騎士)
ちょっといまこの部屋にいる人間を確認したほうがよさそうね。
敬称は略しますけれど……。
……
ポルビュス騎士、ルクレツィア、アニエス、
アンセルム大司教、ドルセック法院長、
魔術哲学者コルネリウス・アグリッパ13世、外科医エルキュール、
山賊フェラージュ、料理長アピキウス、
西河少女、西河老翁、天使チンク、
ガバリス伯爵、睡眠中の林太朗、
エリーズ、キュピドン、ナルシスの屍体、ロレットの屍体、
そしてあたしピスティス・ソフィア。
……
≫484(ポルビュス騎士)
……こんな感じだと思うんだけど。屍体2体含めて19名ってことね。
外にいる従僕ガバロンを入れたら、20名になるわ!
――――――――――――――――――――――――
第6の対話 ピスティスのサロン(承前)
(ピスティス・ソフィア、ポルビュス騎士、
ルクレツィア、アニエス、アンセルム大司教、
ドルセック法院長、外科医エルキュール、
魔術哲学者コルネリウス・アグリッパ13世、
山賊フェラージュ、料理長アピキウス、
西河少女、西河老翁、天使チンク、ガバリス伯爵、
林太朗(睡眠中)、エリーズ、キュピドン、
ナルシス(屍体)、ロレット(屍体)、
(従僕ガバロン、セラドン)、その他)
――――――――――――――――――――――――
>469(魔術哲学者コルネリウス・アグリッパ13世)
もちろんディオニシウス・アレオパギタの
提示した天的階級のことよ。すなわち
熾天使・智天使・座天使、主天使・力天使・能天使、
権勢天使・大天使・一般……。
このチンクが「完全なる存在」には欠かせないのでしょう?
男性原理と女性原理を交換できる能力を備えるものとして……。
いやはやピスティス嬢、久しぶりのような気がするのだが。
>488(ピスティス・ソフィア)
偃師の秘法は、穆王の眼だけを惑わせたのであれば、
彼の判断力を疑うべきだが、
周囲の眼をもとなると、これはいよいよもって
本物の秘法だと言わねばなりませんな。
>488(ピスティス・ソフィア)
逆に考えれば、彼の秘術こそは
革や木を漆や膠で固めたものでさえも、
人間と見紛わせるほどのものと
いうことではないですかね?
>489-490(ピスティス・ソフィア)
なるほどロマネスクを愛する気質はすばらしいものですな。
ところで、これらの貝生物なんかの奇怪なイメージは、
わしが見る限りではむしろゴシックにより多く散見されますぞ。
ピスティス嬢の興味を惹くこと間違い無しです。
ゴシックが、ポスト・アポカリプスの爛熟し切った
いわば「中世の夏」だからかもしれんが。
>469(ピスティス・ソフィア)
それはそうと、天使のヒエラルキアについては
ちょうどアンセルム大司教がおるのだから
彼に訊くほうがいっそう適切な解答が
得られると思いますぞ。
>502(ピスティス・ソフィア)
ピスティス嬢もご存知のとおり、
完全なる存在としての賢者の石は
図像学的にも男性原理と女性原理の結合として
描かれてきておりますな。
すなわちアンドロギュノスあるいはヘルマフロディトスです。
>502(ピスティス・ソフィア)
あのワクワク島の無花果娘が
完全なる存在たりえなかったのは、
ひたすらその女性原理のみを応用した結果なのです。
これがもしもあのティレシアスよろしく
両性を自由に交換できるとなると、
栽培した娘の魂を男性に変化させられる
可能性が大きい、こう考えたわけですよ。
>467(山賊フェラージュ)
そうだ。彼がそのポルビュス騎士だ。
>475(ポルビュス騎士)
わしは山賊フェラージュのお陰で
天使チンクをついに手に入れることができたのだ。
こいつさえいれば、
完全なる存在は保証されたようなものだよ。
>476(ポルビュス騎士)
こちらの西河少女については聞きかじった程度だよ。
隠秘哲学の研究・絶対の探究に洋の東西は無関係だろう。
しかし、わしは正直驚いている。
君の連れてきた西河少女は実際に生きておいでだし、
老翁はどう見てもまさしく人間としか思えんのだから。
>>473(ポルビュス騎士)
本当に久しぶりだな。ポルビュス騎士。
君ほどの人間がまだ分かっておらんのかね?
涜神ぶりを発揮したればこそ、
法王庁はわしにより強大権力を与えたまわんとするのだよ。
それが証拠にブラバン神父のような三下ぺてん師の狂信者は、
いつまでたっても村の司祭どまりなのではないかね?
>>497(ピスティス・ソフィア)
天使のヒエラルアの問題については、
わしも若いころはすいぶんと資料にあたったものだが、
あまりに膨大な量の晦渋な文献に辟易してしまったものだよ。
結論から言ってしまえば、残念ながらチンクとやらは
9階級のどれにも属さないのだよ。
>513(アンセルム大司教(シャルル))
9階級に属さないって……。困ったわ。
それではディオニシウス・アレオパギタの
苦労はなんだったのかしら……。
それにしてもチンクは<天使>だとか<両性具有>だとか
キリスト教の天使とは無関係ではなさそうな
概念を持ち合わせた存在なのね?
>506(魔術哲学者コルネリウス・アグリッパ13世)
わしは適切な答えどころか、天使チンクについては
9階級のどれにも属さないことくらいしかわからないよ。
どうかあんたも一緒に考察してもらえないかね?
>514(ピスティス・ソフィア)
天使と両性具有! さよう、
そのふたつこそは、まさしくキリスト教の天使と
著しく密接な関係にあるな。
そもそも天使そのものが両性具有だとも
言われているのだよ。
>516(アンセルム大司教(シャルル))
本当に天使はアンドロギュノスなのかしら?
もちろん妙ちきりん好きのあたしとしては、
そのほうが嬉しいのだけれど……。
天使の性別については、ビザンティン期に
さんざん議論されていたけど、結局結論じみたものは
出ていなかったのじゃないかしら?
>516(アンセルム大司教(シャルル))
けれども、大天使ミカエルだけは男だと信じてきたのよ。
天軍の指揮者にして、火または太陽の子。
これらは何よりも男性原理そのものじゃないの!
>516(アンセルム大司教(シャルル))
今、エノク書を読み返していたんだけど、
ミカエルはエノクの右手を取って導き、
あらゆる秘儀を示したらしいのよ。
天使から授かる秘儀って何なのかしら。
気になるわ……。
>517
ピスティス、おまえがミカエルを男性と信じて疑わないように、
根拠を挙げて女性だと説く者もあるのだよ。
かんたんに言ってしまえば、
このように天使の性別が不明確であったからこそ、
結局は両性具有に落ちついているというのが、
正直なところだな。
>519-520
ピスティスは、ずいぶんとミカエルが気に入りらしいな。
まあ、もともとサタンとは双子の兄弟だから
きっとエノク書の「あらゆる秘密」「すべての秘儀」
とやらも、サタンから仕入れた悪魔の知恵だろうよ。
>521(アンセルム大司教(シャルル))
サタンから仕入れた悪魔の知恵ですって?
だったらあたしも、なおさら知りたいわ!
>503-504(魔術哲学者コルネリウス・アグリッパ13世)
考えてみるだに、たしかに多くの人たちが
自動人形や人造人間に惑わされてきているわ。
ピュグマリオンにしろ、トマス・アクイナスにしろ、
エワルド卿にしろ、ナタナエルにしろ、デカルトにしろ、
門野にしろ……。
>503-504(魔術哲学者コルネリウス・アグリッパ13世)
けれどもあたしは思うのよ。
彼ら被害者は、自動人形の姿に惑わされたというよりも、
自分の精神によってつくり出された、
空虚な観念的な愛情対象に
惑わされただけなんじゃないのかしら。
>503-504(魔術哲学者コルネリウス・アグリッパ13世)
元祖ピュグマリオンにしたって、
アルフォンスにしたって、
相手は彫刻じゃないの!
それでも人間のように愛したのだわ。
自動人形が人の心を惑わすのは姿ではないわよ。
>503-504(魔術哲学者コルネリウス・アグリッパ13世)
そして見逃せないのは、彼ら自動人形に惑わされた側が
そろって男性であるということなのよ。
よく知られたイタリアの俚諺に、
「恋は女に才気を与え、男から才気を奪う」
というのがあるけれど、穆王も男性であったればこそ、
例に漏れず偃師の秘法に惑わされたのじゃないかしら。
>505(魔術哲学者コルネリウス・アグリッパ13世)
もちろんゴシックも好きなことは好きなのよ。
サン = レミ教会や、トレーイユ、
トゥール = シュル = マルヌなんかは
ティンクチェントのものだけれど、十分に幻想的な姿だわ。
>506(魔術哲学者コルネリウス・アグリッパ13世)
たとえチンクが属する天的階級が仮にあるにせよ、
いまだに不明なのよ。
シャルル伯父さまのいうとおり、
いかなる階級にも属さず、他の天使と同様に
チンク自身もアンドロギュノス性を
持っているのかもしれないわね。
もちろん解剖学的な意味ではないわよ。
>507-508(魔術哲学者コルネリウス・アグリッパ13世)
両性原理の交合については、
やはりカバラをまず確認しておくべきかしら。
男性原理のセフィラと女性原理の第10セフィラの婚姻によって、
セフィロトの創造世界が完成するのですからね。
>507-508(魔術哲学者コルネリウス・アグリッパ13世)
ラビ・エリア・バールシェムも
人造人間ゴーレムを創っていたから、
あながち道教の偃師の秘法と
ヨーロッパ系の完全なる存在とは
どこかで通底しているかもしれないし。
>508(魔術哲学者コルネリウス・アグリッパ13世)
そう、そうだわね!
ワクワク島の無花果娘たちの性を
チンクの力によって交換すれば、
あのティレシアスの再生が可能だということですものね!
両性を体験できた後にでも、ぜひとも例の感覚についての
彼女たちの意見をききたいところだわ!