怒声一番リュックはコーナーにもたれたユウナに体を浴びせる。ユウナはリュックのたわわな乳房を顔面に喰らい尻餅をついた。
「このやろ、喰らえ!」
リュックは座り込んだユウナの顔面に尻をぐりぐりと押し付けた。
「んん゛ー!」
「へへ、いい匂いがするでしょ。あたしのおしりの恨みは怖いんだよ」
手足をばたつかせながら必死に逃れようとするユウナだが、リュックのプルプルした尻はビクともしない。
もがけばもがく程顔面は尻にめり込み、下品な刺激臭が彼女を襲う。
「ぐ、ぐるじい〜!」
リュックがにまりと笑った。
「はい、おまけ」
ブーッ!
下劣な破裂音が響く。新鮮な空気を何より欲していたユウナが吸わされたのは下品なガスだった。
「げほっ…イヤっ…くさぁーい!」
「やーい、ざまーみろ」
咳込むユウナをお尻ペンペンで挑発するリュック。だが、そのわずか数秒後、この世の物とは思えぬ彼女の悲鳴が轟き渡った。
「あぎゃあ〜〜!」
ぶち切れたユウナのがっちり組まれた両手から、人差し指と中指が前方に伸びている。そしてその四本の指は、パンツの上から的確にリュックのアナルを捉えていた。
「…許さない…散々人をバカにして!パンツにウンチくっつけて死んじゃえ!」
ユウナは立ち上がり、リュックの尻を思い切り蹴飛ばした。
「いぎゃあ〜〜〜!」
絶叫するリュックの体を抱え上げたユウナは、とどめとばかりにアトミックドロップを繰り出す。
「うぎゃあ〜〜〜〜!」
尻を抑え激痛に跳ね回るリュックの背後から、ユウナはその股間に手をくぐらせスクールボーイで丸め込んだ。更に逃げられぬようリュックのパンツをがっちり掴んでいる。
もがくリュックだが、下手に逃げればパンツが脱げてしまう。彼女は尻の激痛もさることながら、羞恥心に負ける事となった。
「ワン、ツー、スリー!」
主人がマットを三回叩いた。勝ち名乗りを受けるユウナと、尻を抑え泣きじゃくるリュック。その姿を見つめるリング下のセリス達の目はどこか悲しげだった。
「…どこに行っちゃったのかしら…試合前のあの清々しい空気は…」
「…近年稀に見るお下劣っぷりね…」
「…人の顔にオナラひっかけるなんて…最低ね…」
「…自分だってやったくせに…」
「…そう言やそんな事もあったわね…」
「…最低…」
主人がニタニタと笑う。
「さぁて、それじゃ金髪おさげちゃんには約束通り罰ゲームと行こうかねぇ」
「…わかったよ…やりゃいいんでしょ!」
涙目で答えるリュック。主人は携帯を取り出した。
「あー、例のもんと冷たいお茶持って来て。もちろんラードたっぷり入れてね」
気持ち悪がる一同。だがその言葉にティファは反応した。
「…お茶にラード?…やっぱりコイツ…!」
主人に歩み寄り、彼女はサングラスを取り上げ一喝した。
「こら!太っちょパルマー!」
「ぎくぅー!太っちょって言うなー!」
「ねえティファ、誰なのこいつ?」
バルバリシアの問いに、ティファはいまいましそうに答えた。
「この前やっつけたスカーレットと同じ悪徳企業に勤めてた奴よ。ほんと下品で卑しい奴よ」
「うひょ、スカーレットまた負けたのかい」
締まりのない顔でにやつくパルマー。と、セリスが静かに口を開いた。
「…そう言えばおかしいわね。何で用意周到にプールにあんな物があったり、ビーチにリングが組んであったりするの?」
バルバリシアも思わず手を叩く。
「言われてみれば。それによくよく考えると、あの壷の割れ方もおかしくない?不自然なくらいきれいに真っ二つになってたし」
パルマーをじろじろと胡散臭そうに睨む一同。パルマーはだらだらと脂汗を垂らし始めた。と、そこへ黒髪を結い上げたセクシーな黒いビキニ姿のサングラスをかけた美女が、茶の乗った盆と紙袋を持ってやって来た。
「お茶をお持ちしました………!」
その美女はユウナとリュックを見て明らかに動揺した。ユウナとリュックも気付く。
「ルールー!?何やってるの!?」
盆と袋を置き、サングラスを外す美女。まごう事なきルールーの美貌が現れる。
「…別に、ただここで働いてるだけよ」
「ウソばっかり!ねえ、一体これはどういう事なの!?」
脂汗を滝のように流したパルマーが、遂に耐え切れず口を割った。
「くく…もはやこれまでだよん。わしらは可愛い女の子の客を騙して水着キャットファイトの映像を撮って売り捌いてたんだよ、うひょひょ」
「…あーあ、言っちゃった」
呆れた口調で言うルールー。対象的に、セリス達の顔はすさまじい怒りで真っ赤になった。
私は超(スーパー)セリスだ!!!!!
(シュインシュインシュインシュインシュインシュインシュインシュイン・・・・・・・)
ルールー来たーーー!!!
「…最低だわ…人を騙してその弱みに付け込むなんて…!」
「…絶対許さない!」
二人に詰め寄る一同。ユウナが叫ぶ。
「…ルールー、何でこんな事したの?何で!?」
ルールーはため息をついた。
「…仕方ないでしょ、結婚してから何かと物入りで大変なんだから。ワッカの収入も不安定だし、小遣い稼ぎのためにこういう阿漕な商売にでも手を出さないとやってけなかったのよ」
「バカ!」
リュックが目に涙を浮かべて叫ぶ。ユウナの目にも涙がいっぱいに貯まっていた。
「…ひどい!もう許せない!」
ユウナは目をごしごし擦ると叫んだ。
「ルールーは私にやらせて!みんな、その豚野郎をお願い!」
「ええ…わかったわ!」
セリス達がパルマーを取り囲む。ユウナはルールーを睨み付けた。
「…私とけんかしようって言うの?面白そうね」
両手を腰に宛がったルールーは、余裕に満ちた態度でユウナを見下す。
「うあーっ!」
感情ムキ出しでルールーに掴み掛かるユウナ。ルールーは正面から彼女の体をがっちり受け止めると、パンツを掴み上手投げで叩き付ける。
「あぅ!」
砂煙が舞い上がる。ルールーは倒れたユウナにその体を浴びせ、ユウナの息が一瞬詰まった隙を突いて縦四方固めに捕え動きを封じた。
「ぐ…!」
「ユウナ、獲物が個人客の時はいつも私が相手してたのよ。そして私は今まで負けた事がない。言ってる意味がわかるわね」
ユウナはもがきながら叫ぶ。
「ルールー、何で!?何でこんな悪どい事するの!?」
ルールーは彼女にのしかかったまま静かに言った。
「…ユウナ、あなたはまだ幼な過ぎる。世の中綺麗事だけじゃやってけないの。私が食いぶちを稼がなきゃ旦那だって困るのよ」
「…だからってこんな事するなんて…ひどいよ!ひど過ぎる!」
ため息をつくルールー。
「聞き分けのない子ね」
もがき続けるユウナだがルールーの豊満な体はビクともしない。のしかかられているだけで体力が消耗する。ましてセリス、リュックと闘った後の彼女にこれはキツい。
ルールーは両足をユウナの足首に絡ませると股を開き、更に完璧に動きを封じる。黒ビキニの美女が青ビキニの美少女に抱きついてのしかかり、二人とも大きく股をおっ広げている。何ともエロティックな光景だが、ユウナには地獄だった。
「きぃゃあああ゛ー!」
すさまじい悲鳴を上げ飛び上がるルールー。ユウナは彼女を押し倒すと、その両足を取る。
「ルールーのバカ!大っ嫌い!オ○ンコしもやけにして死んじゃえ!」
猛烈な電気アンマが始まった。多数の大きな固い氷の粒が、ルールーのパンツの中で暴れ回る。
「い゛ぃぎゃあー!」
もはや表現のしようがない苦痛と屈辱に普段の冷静な面影もなく絶叫し泣きわめくルールー。ようやく地獄の苦しみが終わったかと思うと、更なる地獄が待っていた。
ルールーに馬乗りになるユウナ。彼女はルールーのパンツの中から沢山の氷を取り出すと、今度はルールーの口の中にねじ込んだ。
「もげぇえ゛ー!」
「どうよ、アワビ味のかき氷は!」
ふざけたような言い草だがユウナの顔はあくまで真剣であり、怒りに引き攣っていた。更に彼女はルールーの体を抱え上げ丁度69を縦にしたような体勢を取ると、口の中いっぱいに氷を含まされたルールーの顔に股間を押し付け、首と頭部を太ももで力いっぱい締め上げた。
「む、むぐ、むぐ〜!」
「このサイテー女!さっさと落ちちゃえ!」
口の中に不潔な氷を詰め込まれ、逆さ吊りにされ、酸味の効いた刺激臭を嗅がされ、呼吸器と脳への血管が閉ざされる。これだけの責め苦はルールーを敗北に追い込むには十分過ぎた。
ルールーの全身の力が抜け、彼女は股をおっ広げたままばったりと倒れ込む。ユウナは勝利の余韻に浸る事もなく、泣きながら怒っていた。
縛り上げられたパルマーとルールーを取り囲む一同。バルバリシアが憎らしそうに吐き捨てた。
「ほんと最低の連中ね。もうボコっちゃいましょ」
「…好きにしなさい」
「…ひい〜、暴力はいけないよん」
対象的な態度の二人。一同はじりじりと囲みを詰める。しかしそんな中で、やはりユウナとリュックはどこかまだやりきれない思いを残していた。
と、その時、野太い声が響き渡った。
「よお、ティファ」
「あら、シド。久しぶりね。どうしたの?」
アロハにハーパン姿でモップを担いだシドは、頭をポリポリと掻いていた。
「ちょいと小遣い稼ぎにホテルの清掃員やってんのさ。…なあ、一つ頼みがあるんだが」
「どうしたの?」
シドは煙草を燻らせながら顔をしかめた。
ルールーは薄く笑う。
「…それと、あと一つ」
彼女は、誰かがバーベキューでもしていた時に落としたのか、近くに転がっていた半欠けの玉葱に手を伸ばす。手に取った彼女は、力いっぱいユウナの顔面にそれを擦り付けた。
「いやぁー!痛いー!」
まだ十分に水分が残っていた玉葱から汁が染み出し、ユウナの目を襲う。たちまち涙が溢れ、視界が塞がれた。
「これはルール無用の喧嘩よ。綺麗事ばかり言ってたらこうなるの」
ルールーはユウナの右腕を捩上げると上半身を捻ってユウナの首に腕を回し、横から頸動脈を締め上げた。
「う…ああ…!」
たちまち意識が遠退き、苦悶するユウナ。ルールーは静かに言った。
「もう終わりよ。情けない姿…あなたのこのザマを見たら、ティーダもきっと愛想を尽かすわね。結局そんなんじゃ結ばれてもやって行けなかったでしょうね」
「…!」
首を絞められ鬱血したユウナの顔が、怒りと悔しさで更に赤くなる。ユウナはルールーの腕を取ると思い切り噛み付いた。
「きゃあ!」
激痛に思わず離れるルールー。立ち上がったユウナの目には悔し涙がいっぱいに溜まり、その顔は真っ赤になっていた。
「…ルールー…許さない…大っ嫌い!!」
ユウナはルールーの髪を掴み顔面にビンタを叩き込むと、彼女の頭を股間に挟み、パワーボムの体勢に入った。
「く…!させないわよ!」
しかしルールーもそう簡単にはやられない。リバーススープレックスで返すと体を反転させ、今度は上四方固めでユウナを押さえ付ける。しかも両腕の内側にユウナの両腕を巻き込み、ユウナのパンツをがっちり掴んで脱出できなくしてある。
更にユウナの口と鼻はルールーの股間で塞がれており、ユウナは動けず息もできないまま淫靡に酸っぱい人妻の匂いを嗅がされる事になった。
「ん…んぐぐ…!」
「全く、かっかするんじゃないわよ」
ユウナは何とか動かせる前腕をルールーの尻に伸ばし、抓ったりひっ叩いたりしたが、思うように力も入らず技は外せない。
「無駄よ、その程度のやわな攻撃で私が動じると思ってるの」
もがき苦しむユウナ。しかしその時彼女の目に、中に大量の氷が入った大型の紙コップが落ちているのが映った。
彼女は必死にそれを手に取ると、ルールーのパンツを引っ張り、中にぶちまけた。
「その様子だとお前らもパルマーにはめられたんだな。…なあ、そっちの黒ビキニの姉ちゃんは許してやってくれないか、全てこの太っちょが仕組んだ事だしよ」
ティファは怪訝な顔をした。
「どういう事?」
シドは苦々しそうに吐き捨てた。
「要はこの野郎が働きに来た女に多額の偽の借金を負わせ、それを盾に無理矢理キャットファイト要員に仕立てるのさ。あとはお前らみたいな可愛い女の客が泊まった時にそれをハメて…
てな寸法よ。その姉ちゃんも普通に働きに来ただけなのに、この豚にたぶらかされてこの有様よ」
「…本当?」
「あたぼうよ。この辺じゃ有名だぜ」
一同の憎悪の視線が、パルマーのみに集中した。
「…本物のクズね」
「…女の敵だわ」
脂汗を垂らすパルマー。
「ぼ、暴力反対だよん」
「問答無用ー!」
全方位から5人分のケンカキックを喰らったパルマーは潰れた蝦蟇蛙の如く伸びた。
ユウナとリュックがルールーに歩み寄る。
「…何で言ってくれなかったの?」
ユウナの言葉にルールーは静かに笑った。
「あなたは私にとって妹も同じよ。『お姉さん』がそんな情けない事言える訳ないでしょ」
「…バカ」
闘う前と同じ事を言うリュックだが、その顔は涙を浮かべながらも笑っていた。
その姿に安堵の表情を浮かべる四人。と、その時一羽の伝書鳩が舞い降りてきた。
「あら、バルバリシア宛よ。何かしら。鳩さん、ご苦労様」
鳩を放ち封筒を手渡すセリス。バルバリシアは手紙を取り出した。
ーこの前はわざわざありがとう。すまなかったな、使いっ走りまでさせて。弁当美味かったぞ、お前も意外に家庭的なんだな。また作ってくれー
たちまちバルバリシアの頬が紅色に染まる。満面の笑みを浮かべたセリスとティファのエルボーが炸裂した。
「このー!やったじゃない!」
「何よ、せっかく私達が慰め旅行連れて来てあげたのにムダ足じゃない、ニクいわね!」
「よーし、今夜は祝勝会よ!」
「絶対寝かさないからね!」
柄にもなく真っ赤になって照れるバルバリシア。彼女は皆に散々揉みくちゃにされながら零れんばかりの笑顔になっていた。
ハッピーエンドですな!ルールー、ユウナ、リュックも仲間入りで!またお好きな時に色々書いてくださいまし!m(__)m
セリス達のバカンスから数日後。ティナ達は彼女の家に招かれ、土産の菓子を振る舞われていた。
「…ねえ、何かバルバリシア様最近すごく可愛くなったと思わない?」
月の女神がぽつりと言う。レディガーダーも熱心に頷いた。
「そうよね。何か南国から帰って来てからすごく明るいオーラが出てるよね」
セリスはくすくす笑う。
「そりゃそうよ、恋する女は綺麗になるんだから。バルバリシアちゃんは只今恋する乙女なの」
思わず茶を吹き出しそうになる三人。
「ほんと!?ぷぷ…いけない、笑っちゃいけないけど…」
ティナは必死に口を抑えた。月の女神達も悶絶している。
「うう…もうダメ…あのバルバリシア様が恋だなんて…」
「…ほんと…似合わなすぎ…何て言うか、あの人の場合、随分年下の可愛い男の子に淫行でもして捕まってそうな感じよね」
レディガーダーの言葉に月の女神は遂に茶を噴いた。
「ちょっと、バカ、やめてよ!私を笑い死なせる気!?」
テーブルをバンバン叩き悶え苦しむ月の女神とレディガーダー。と、彼女達の頭に激痛が走った。
ゴゴン!
「痛いっ!」「きゃあ!」
噂をすれば、と言う奴であろうか。彼女達の背後で、バルバリシアは真っ赤な顔で拳を握り締めていた。
「…ちょっと、誰が淫行よ!全く言うに事欠いて…」
「いたた…だってバルバリシア様、今まで散々男を喰っといてその上28にもなって恋愛だなんて…」
ゴン!
また余計な事を言ったレディガーダーの頭にもう一つタンコブが追加された。
「痛ーい!」
「余計なお世話よ、バカ!」
「まあまあ、落ち着いて」
バルバリシアをなだめるセリス。と、彼女はバルバリシアの手に数枚の紙切れが握られているのに気が付いた。
「それ、何?」
バルバリシアはにわかに楽しげな笑みを浮かべた。
「ああ、コレね。…実はカインに貰ったの。『ちょうど修行も一区切りついたし、今度格闘技の試合でも見に行かないか』って」
セリスは笑顔でバルバリシアの肩をひっぱたいた。
「やったじゃない!もしかして彼と初デート?」
バルバリシアは照れ臭そうに笑う。
「ふふ、まあね。でも実はあいつのくれたチケット、5枚ほど余ってて、『良かったらお前の友達も誘ってやれよ』なんて言われたの。全く、デートだってのに不粋な奴よね」
「何言ってるのよ、嬉しくってたまらない癖に」
セリスに肘で小突かれ、ぺろりと舌を出すバルバリシア。と、彼女が手を叩いて言った。
「そうだ、そう言えばこの試合のメインに出てるマッシュって言う選手、確かあんたの友達でしょ?」
「え、マッシュも出るの?すごい、それなら絶対応援してあげなくちゃ」
バルバリシアは得意げな顔になった。
「そのためにチケット持ってきてあげたのよ。どうぞ」
「ありがとう」
「ティナもね」
「ありがとう。私も気合い入れて応援してあげなきゃね」
そこまで言うとバルバリシアの表情が意地悪い笑みに変わった。
「…あと3枚か…1枚はティファで…残りは誰にあげよっかな〜」
物欲しげな顔の月の女神達。バルバリシアは散々彼女達の目の前でチケットを見せびらかすと、にまりと笑って言い放った。
「そうだ、ユウナとリュックにあげよ」
「そんなぁ〜!」
べそをかく月の女神達。バルバリシアは彼女達に舌を出すと部屋を出て行く。セリスとティナはその様子を苦笑しながら見つめていた。
試合当日、セリスとティナはマッシュの控室を訪ねた。
「お、来てくれたのか?」
嬉しそうに笑うマッシュ。セリスとティナは彼の手を握り締めた。
「頑張ってね!」
「ほんとありがとな。いい試合見せてやるから楽しんでってくれよ」
張り切るマッシュ。その横でセコンドのエドガーはにやけていた。
「さっさと終わらせてくれよ。俺は早い所ラウンドガールのお姉さんや観客のお嬢さんをエスコートしてさしあげなきゃいけないからな」
三人は苦笑した。
「全く、これだよ」
「ほんと相変わらずね」
「それじゃ、またね。ほんと頑張ってね」
「おう、ありがとう」
二人は観客席に戻り、やがて試合が始まった。ユウナとリュックも、初めての格闘技観戦にエキサイトしている。
「行けぇー!やっつけろー!」
「どっちも頑張れー!」
やや離れた所ではバルバリシアとカインがいい雰囲気になっている。セリス達は試合もさる事ながらそちらも非常に気になる様子であった。
やがて試合が進み、セミファイナルとなった。リングアナが高らかに告げる。
「それではこれよりセミファイナル、プロレスルール女子2対1ハンディ戦を行います。まず青コーナーより、ジェミニスミー・ポーランサリタ組入場!」
激しいハードロック調のテーマ曲とともに、魅惑的な肉体をセクシーな黄色いレオタードに包んだ二人の女子選手が花道に現れる。
同じロングヘアながらも一人は金髪で一人は黒髪だが、アイドルもかくやの愛くるしいその顔は瓜二つである。
「へえ、姉妹タッグかしら?あの馬鹿二人と戦わしても面白いかもね」
バルバリシアが笑いながら言う。
「誰だ、それ?」
首を傾げるカイン。バルバリシアは楽しそうに答えた。
「実は知り合いに一流の姉妹タッグチームがいるのよ。唯一の欠点は口下手でどうしようもないバカって事かしら」
カインは吹き出した。
「…何だそれは。まあとにかく楽しもう」
「うん」
いつになく可愛らしく答えるバルバリシア。それを見たセリスはつい笑みを零す。と、ティファが興奮気味に口を開く。
「へえ、あの二人が遂にチーム結成したのね」
セリスが問う。
「知ってるの?」
「うん、実は私も何度か闘った事があるの」
「えー、本当?凄いわね」
目を丸くするセリス。ティファが続ける。
「かなりの強敵だったわ。これはいいカードよ」
リングアナが再びマイクを取った。
「続きまして、赤コーナーより、女子世界チャンピオン、ミス・Y入場!」
厳かなクラシック調のテーマ曲が鳴り響き、入場ゲートにスモークが湧く。が、しかし…
「な、何だ?ミス・Yがいないぞ」
放送席がうろたえ、観客もざわめき始める。そうこうしている内に、主催者が汗まみれになって駆け込んで来た。
「…えー、皆様、申し訳ありません。ミス・Yですが、急遽一身上の都合により出場できなくなりました」
主催者が憔悴しきった顔で詫びるが、場内には落胆のため息とブーイングが渦巻いた。金返せと言う罵声すら聞こえる。
「えー、つまんないよー…」
リュックもがっかりした顔でぼやいた。
「ほんとがっかりね…でもどうするのかしら」
ティファが心配そうに言った時である。突然場内に男の力強い叫び声が響いた。
「ちょっと待ったあ!」
声のする方に皆が振り向くと、この後のメインに出るマッシュが仁王立ちしていた。たちまち大歓声が上がる。
「確かにミス・Yは出られなくなった。だがしかーし!俺は知っている。奴に勝るとも劣らぬ強さと美しさを兼ね備えた女を!」
場内がどよめいた。マッシュはマイクを握ったまま吠え続ける。
「みんな、モニターを見てくれ!これがその女だ!」
観衆の視線が大型モニターに釘づけになる。セリス達もどきどきしながら画面を注視した。と、そこに映し出されたのは…
「…へ?私?」
思わずつまんでいたポップコーンをこぼすセリス。ティナ達もあまりの事に目が点になった。しかしマッシュはお構い無しで続ける。
「この女の名はセリス・シェール!こいつの強さは俺が保証する!そしてこの美貌!こいつこそ正しく世界最強の美少女と呼ぶに相応しい!どうですかお客さん!」
大歓声が上がるが、セリスはただ慌てふためいた。
「じょ、じょ、冗談じゃないわよ!何でいきなりそんな事!」
群集を掻き分けマッシュはセリスに近付くと、ペコペコと頭を下げた。
「なあ、頼むよ。お前しかいないんだ。帝国軍で鍛えられ、あんな筋肉ダルマを倒して宅配便に詰め込めるお前じゃなきゃあいつらの相手はできないんだ。このままじゃ客が暴動起こしちまう」
「馬鹿言わないでよ!何で私が…」
セリスは必死に断ろうとしたが、衆人監視の中スーパースターのマッシュに頭を下げられ、割れんばかりのセリスコールに包まれてはもはや不可能だった。
「…わかったわよ!やってやろうじゃない!」
再び大歓声が上がる。マッシュはセリスの手をがっちりと握った。
「ありがとう!恩に着るぜ!」
ティナ達ももはや大興奮であった。
「すごーい!セリス頑張れ!」
呆気に取られるカイン。
「…おい、エラい事になったな」
「うわ、これは見物よ」
バルバリシアの目は輝いていた。セリスは半ばやけくそでリングに駆け上ると、トップロープを飛び越え華麗にリングインする。その姿に会場は大いに湧いた。
大観衆の熱い視線の中、プロ2人を前にしたセリスの鼓動は一気に速まったが、もはや後には引けなかった。彼女は持ち前の負けん気で相手を睨み付ける。
ジェミニスミーとポーランサリタが冷たく笑う。
「いい面構えね。でもいつまでもつかしら」
「ふふ、素人さんだからって容赦しないわよ」
対峙する3頭の女豹。やがて場内がしばしの静寂に包まれ、観客の鼓動も高鳴る。そして、鋭い金属音がかりそめの静寂を打ち破った。
カーン!
数に任せて相手は突っ込んで来る。ジェミニスミーが張り手のラッシュからラリアットを繰り出すが、セリスは落ち着いていなし、振り回された相手の腕を取ると払い腰で 叩き付けた。
ならばとポーランサリタがビッグブーツを繰り出すが、セリスは体を沈め蟹挟みで軸足を刈って転ばすと間合いを取って身構える。そして二人がダッシュして来た所を、二人まとめてのジャンピングネックブリーカーで迎え撃った。
「たあ!」
「うっ!」
素人とは思えぬセリスの見事な動きに場内は湧いた。ティファが声を張り上げる。
「いいぞセリスー!頑張ってー!」
セリスの予想外の格闘センスに驚きつつも、起き上がった二人はにやりと笑った。
「素人のくせにやってくれるじゃない。…悪いけど本気で行かせてもらうわよ」
ポーランサリタが再び突っ込んで来る。セリスはタックルで迎撃しようとするが、ポーランサリタは目を見張る跳躍力でこれをかわし、セリスの背後を取ると彼女を羽交い締めにした。
「うりゃあ!」
ジャンプ一番セリスの喉元にジェミニスミーのヒップアタックが炸裂する。セリスがぐらついたその隙を逃がさず、二人は正面から組み付いた。
「そらぁー!」
レオタードを無理矢理引っ張られダブルブレーンバスターの体勢で持ち上げられたセリスは、TバックTフロント状態で白い肉厚な尻と黄金の茂みを晒したまま逆さ吊りにされた。
「…!」
頭に血が上り、更に大観衆の面前でこのような姿を晒されたセリスの顔がたちまち深紅に染まる。二人は投げる事なくそのままリング内を歩き回り、四方にセリスの醜態を晒して見せた。客席からは野太い歓声と指笛が響く。
「…いやッ!」
悲鳴を上げ、逆さ吊りのままでじたばたともがくセリスに、二人はなおも桃色ファイトを仕掛ける。散々尻と茂みを晒されると、セリスはトップロープに跨がらされた。そして二人は彼女の両足を、それぞれリング内外から掴む。
「もっと恥ずかしくさせてあげる」
残忍な笑みを浮かべると、二人は繰り返しセリスの足を思い切り引っ張った。
「あ…あーン…っ!
股間にワイヤー入りの太いロープを食い込ませその上でバウンドする羽目になったセリス。彼女の秘処から電撃のような快感が全身に放たれた。
「どう?気持ちいいでしょ?
「ふふ、素人のくせに生意気な子にはお仕置きよ」
セリスは快感に苛まれながら必死に股間を抑えたが、ロープが密着していては詮なき事である。体を弾ませる彼女の豊満な乳房が躍る度に、客席からは次第に下品さを帯び始めた歓声が湧いた。
「ブ、ブレーク!」
レフェリーが上擦った声で割って入る。二人は色々な意味でダメージの大きいセリスをコーナーに拉致すると、彼女の足首をポストの金具に絡ませ再び逆さ吊りにした。
「こんなのはどう?」
トップロープに登ったポーランサリタがセリスの股間を踏み付ける。更にジェミニスミーが、よりにもよってコーナーでダウンした相手の顔面に股間を押し付けると言う、最も下品で屈辱的な技の一つであるブロンコバスターを仕掛けて来た。
「む゛む゛ーん゛っ゛!」
ツンとしたチーズ臭と汗に湿って蒸れたレオタードが酸素に餓えたセリスの呼吸器を襲う。逆さ吊りの上に息ができない彼女に、股間への非情な攻めが追い打ちをかける。観客はやんやの歓声だが、セリスは意識が飛ぶ寸前だった。
足裏の生温かい感覚に気付いたポーランサリタがにやにやと笑う。
「あれ、どうしたの?何かアソコが湿ってるわよ?ふふ、感じちゃった?」
ジェミニスミーもにやつく。
「へえ、あんたそういう子なのね。それならそろそろ一思いにイかしてあげる」
レフェリーが再び割って入ろうとするが、その前に二人はセリスをコーナーから外しリング中央へ拉致する。
「皆の前でイっちゃえ」
ジェミニスミーはセリスをカナディアンバックブリーカーに捕らえる。しかしその両手はセリスの乳房をがっちり掴んでいた。更にポーランサリタはセリスの左脚を抱え込み、空いている右手で彼女の股間を揉みしだいた。
「んんーッ!いや…っ…ああー…ンッ…!」
あらん限りの声を上げ悶え苦しむセリス。耐え難い苦痛と苦しみ、そして乳房と秘処からの痺れるような快感が彼女を襲った。
もがけばもがく程背骨の痛みは激しくなり、動きを止めれば乳房と股間への攻めが激しくなる。
「いや…ああ…ッ…むぐ…んふ…ッ!」
恥も外聞もなく身をよじり悶えるセリス。大興奮の渦巻いた観客席からはイかせろコールが轟いていた。
彼女の口からはいつ「ギブアップ」の一言が発せられてもおかしくなかったが、大観衆の前で恥態を晒され、成り行きとは言え自ら挑んだ闘いにぶざまに負けるのは絶対に嫌だった。
「負けるな、セリス!」
「頑張れー!」
ティナ達も顔を真っ赤にしながら声を張り上げる。そして誰より、セリスが負ける事が許せない女がいた。
「セリスのバカ!何やられてんのよ!このヘタレ!」
絶叫するバルバリシア。その迫力にカインも一瞬たじろいだが、負けじとセリスに声援を送る。そして無二の親友にして宿敵の叫びは、セリスの耳にしっかり届いていた。
「む…ぐ……えーいッ!」
セリスは苦痛と恥辱に耐え右足を振り上げると、ポーランサリタの脳天に踵を叩き込んだ。
「いぎゃッ!」
ポーランサリタがダウンし、ジェミニスミーがバランスを崩した隙を狙いセリスは身を翻して脱出した。そして反動でよろめくジェミニスミーの腹にトーキックを食らわせると、前屈みになった相手の頭を脇に抱え両足を取り思い切り尻餅をつく。キン肉バスターだ。
「せゃあーッ!」
「うぎぇーッ!」
首、背骨、そして股間を一度に蹂躙され、股をおっ広げてKOされるジェミニスミー。セリスは踵蹴りのダメージによろめきながらも立ち上がろうとするポーランサリタの足を取ると、仕返しとばかりカメラの方へ向かって恥ずかし固めを極めた。
「いでゃああ゛〜〜!」
激痛に絶叫するポーランサリタ。セリスはこれまでの鬱憤を晴らすかのように絞り上げる。
「素人、素人って散々馬鹿にして!言っておくけど私は元将軍、れっきとした本当の戦いのプロよ!」
彼女はカメラに晒されたポーランサリタの股間に右手を伸ばすと、レオタードの上からその秘裂を思い切り抓り上げた。
「あ〜ぎゃああ゛〜!」
「よくも恥をかかせてくれたわね!真のプロをなめるんじゃないわ!」
怒りに燃えた彼女の前に、もはやポーランサリタの戦意は消え失せていた。
「ギ、ギブアップ〜!」
新たな女帝の誕生に、皆が熱狂する。
「すごーい!女子プロレスラーに勝っちゃった!」
リュックとユウナが興奮に満ちた顔で言う。ティナとティファは思わず抱き合った。
「やったー!さすがね!」
バルバリシアも、どさくさに紛れてしっかりとカインに抱きついていた。
顔を赤らめながら勝ち名乗りを受けるセリス。皆の興奮とは裏腹に、彼女は唇を尖らせていた。
(もう!こんなの嫌!)
彼女は大歓声の中をそそくさと引き上げる。そして観客は皆世紀の決戦に酔いしれながら家路に着いた。…ある大事な事をすっかり忘れて。
家に着いた一同。リュックがセリスの肩をバンバン叩いた。
「さっすが!強いねー!」
興奮に湧く一同。しかし当のセリスはお冠だった。
「もう!やめてよ、二度とあんなの嫌よ。…全く、マッシュったら…」
その言葉に、セリス本人は元より皆がある事に気付く。
「…あ…マッシュ…」
「…いっけなーい…」
闘志に燃え花道に現れたマッシュとエドガー、それに対戦相手のモヒカンに赤パン姿のレスラーが見た物は、無人の会場だった。
「…おいマッシュ、ラウンドガールのお姉さんはどこだ?観客のお嬢さんはどこだ?」
遠い目をするエドガー。マッシュは頭をかきながら対戦相手に言った。
「…悪いな、寒い所からはるばる来て貰ったってのに」
相手は胸毛の濃い筋肉の塊のような体を虚しさに縮めながらため息をつく。
「…とりあえずギャラだけはちゃんと払って貰うぞ」
「…参ったな、俺もギャラ貰いそこねで無一文なんだよ。体でじゃダメか?」
「…俺の祖国の大地をお前の血で染めてやろうか?」
413 :
以上、自作自演でした。:2009/10/31(土) 14:28:14
池沼スレ
ザンギエフwwwwwwwwww次はポイズンか?
これは春麗キャミィ辺りが出るのも時間の問題w
エロバトルに不覚にも勃起した
作者はキャットファイトが得意分野みたいだが、個人的にはミックスファイトも堪能したい
>>414 さすがにそれはwww
でも今回みたく名前を伏せてのチョイ役としてならあるかもw
>>415 ミックスファイトもいけまっせ
見たい対戦があったら何なりと
名前伏せてのチョイ役で十分ですぞ!w
春麗×キャミィVSセリス×ティナ
これですか!?
んで、ローズが審判役で…
セリスの元に、奇妙な手紙が届いた。
ーこの間はありがとうございました。お陰で助かりました。心ばかりのお礼がしたいので是非いらして下さい。ミス・Yー
「…何かしら、これ…」
怪訝な顔をするセリス。ティファも眉間に皺を寄せながら呟いた。
「ミス・Yって、この前プロレスの試合をドタキャンしたミス・Yよね?…本物かしら?何かの勧誘とか悪徳商法じゃなきゃいいけど…」
バルバリシアは考えこみ、腕組みしながら言う。
「ま、いいんじゃない?折角お礼してくれるって言うんだから。心配なら私達も一緒に行ってあげようか?」
セリスは頷いた。
「そうね、ありがとう」
手紙に書かれた住所には、目を見張るような豪邸が建っていた。
「…すごい…さすが世界チャンピオンね」
門の前で三人が立ち尽くしていると、中から金髪お下げでメイド服に身を包み、赤いベレー帽を被った若い娘が出て来た。
「お待ちしておりました。中へどうぞ」
豪邸の中へ通された三人は、広々とした応接間に通される。程なくして扉が開き、スーツ姿で黒髪をシニョンに纏めた端正な顔立ちの女が入って来た。
「お待たせしました。ミス・Yはもうすぐ参ります」
やがて開いた扉から一人の女が現れた。バルバリシアを彷彿とさせる長身と豊満な肉体に、長く美しい青みがかった銀髪を靡かせ色っぽい黒ビキニを纏った妖艶な美女である。
「こんにちは、ようこそいらっしゃいました。ミス・Yことユウナレスカと申します。どうぞお掛け下さい」
挨拶を返し三人は大きなソファーに腰を下ろした。先程のメイドが茶と菓子を出す。ユウナレスカが静かに口を開いた。
「先日はありがとうございました。見事な試合を見せて下さったようで、お客さんも大変喜んでいたそうですね」
「いえ、こちらこそわざわざありがとうございます」
深々と頭を下げるユウナレスカとセリス。ユウナレスカは静かな口調のまま話を続けた。
「今日はその事のお礼と…実はあともう一つ、お願いがあって来て頂いたのです」
「お願い?」
セリスの問いに頷いたユウナレスカは、明快な口調で答える。
「単刀直入に申し上げます。私の後継者になって頂けませんか?」
「え?」
セリスは目を見開いた。
「私もデビューして早20年になります」
ユウナレスカは静かに立ち上がった。
「来月には40歳、さすがに最近もう潮時かと思っていた所です。しかし男女共に強さとスター性を兼ね備えた後継者が現れず、今日まで無理を重ねてきました」
ユウナレスカは話し続けながら部屋の中を歩き始めた。
「自分で言うのも面映ゆいですが、私は『ガチで男子選手を倒せる美少女レスラー』としてデビューしました。
以降有能なマネージャー、そしてスポンサーだった恋人…後の夫の手腕もあって連勝街道を突き進み、男女のボーダレス化が進んだこの業界に君臨してきました。
しかし私をスターダムにのし上げる代わりに彼は10年前に過労死。私が女帝として君臨する影には、彼の犠牲があったのです。私は大変思い悩みました」
彼女は遠い目をして続ける。
「そこまでしても結局引退の日は誰にも訪れる。永遠の、絶対的スターなど存在しない。
でも絶対的スターと言う、例えまやかしではあっても心の拠り所となる者が無ければ業界は不安定となりファンは離れる。
私はそうなりうる存在を渇望していた。そこへ現れたのがセリスさん、貴女だったのです」
彼女は再び椅子に掛けると、セリスを見つめた。
「もう一度言います。私の後継者に…マット界の新たな希望になって下さい」
その言葉にセリスはやや困惑し、淋しげな微笑を浮かべながらもきっぱりと答えた。
「…ごめんなさい。私にはできません。そこまで私を買ってくれるのは光栄ですが、私には私の人生があるんです」
セリスの言葉にうつむくユウナレスカ。バルバリシアも口を開く。
「…それに、こんな事素人が言うのはおこがましいけど、あんた間違ってない?
確かに旦那さんの犠牲の上にスター選手であり続けるのは言葉に出来ないくらい辛かったでしょうけど、それをまやかしだなんて…
仮にも好きだからこの世界にいたんじゃないの?あんたの言葉は業界自体、更には旦那さんをおとしめてるように聞こえるわ」
ティファも頷いた。
「貴女が自分の業界の今後を憂いるのも、誰もがいつかは引退するのもわかります。
でもそんな事を言ったら必死に努力してる他の若手はどうなるんですか?
そこへやる意思のない人間を無理矢理放り込んで、その上結局それもまやかしだなんて…貴女はセリスのみならず自分の業界や旦那さんも侮辱してますよ」
セリスは再び口を開いた。
「その通りです。申し訳ありませんが、受けられません」
すると、ユウナレスカはため息をつきながらも静かにそして冷たく笑った。
「…そうですか。仕方ないですね。女子の方はまた捜すとしましょう。男子の方は数ヶ月前にいい候補が見つかった所ですから」
「?」
訝しがる三人をよそに、ユウナレスカはメイドに一枚のバンダナを持って来させた。それを見たセリスの顔色が一瞬で変わる。
「そ、そのバンダナは!?」
ユウナレスカは再び冷たく笑い、立ち上がった。
「…こちらへどうぞ」
セリス達は屋敷の中の専用道場に案内された。そしてその中央のリングに立っていたのは、忘れもしない彼だった。
「…ロック…!」
思わず感涙に咽ぶセリス。もうこの世にはいまいと覚悟していた恋人が目の前にいる。彼女の目からは涙がとめどなく溢れた。
「…久しぶりだな」
黒いプロレスパンツ姿のロックは静かに笑うと、リングから下りた。
「ロック…逢いたかった…!」
最愛の恋人に駆け寄るセリス。しかし次の瞬間彼女に突き付けられたのは、あまりに残酷な現実だった。
踵を返しユウナレスカの元へ歩み寄るロック。彼は冷ややかに言い放った。
「ユウさん、残念だな。こいつはモノに出来なかったのかい?」
ユウナレスカの腰に腕を回すロック。セリスの表情が瞬時に凍てついた。
「…ロッ…ク?…どういう事…?」
「…いや、フェニックスの洞窟でレッドドラゴンから命からがら逃げ回った後行き倒れ寸前になっちまってた所をユウさんに助けて貰ったのさ。
フェニックスもお前も見つからないし、もうこの稼業辞めて落ち着かなきゃと思ってた所、ユウさんは俺の事を高く買ってレスラーにならないかと勧めてくれた。
俺にしてみても衣食住に困らず、おまけにユウさんの寵愛を一身に受けられと良いことずくめで渡りに船だったもんでさ。
しかしこの間はお前がレスラーに勝ったって聞いてびっくりしたぜ。…もっとも今となっちゃ俺はユウさん一筋だから会いに行く気も起きなかったが」
ユウナレスカが続ける。
「私は長年この仕事を続けたせいで、行為はできても子を産めない体になってしまった。だからあなたのような素質のある女と彼を交わらせ、未来のスター候補を作らせようと思ったの。でも皮肉なものね、貴方達が実際に恋人同士だったなんて」
ロックが下品に笑う。
「おいおい、俺はユウさん一筋って言ったろ」
ユウナレスカの豊満な乳房に頬ずりするロック。
「本当はマッシュも候補だったけど、彼はいかんせんそっちの気があるからね」
ロックが唇を尖らす。
「そりゃないだろ、俺はこの通りユウさんが大好きなんだぜ」
「ふふ、ごめんなさい」
ユウナレスカはロックを愛おしそうに抱きしめた。
セリスの頭は真っ白になった。彼女はがっくりと膝からくずおれる。しばらくしてようやく頭の中に画像が戻って来た。かつてのロックとの思い出の数々。…もう二度と戻って来ないあの日々。
そして…突然床に突っ伏したセリスはただ泣いた。泣き叫んだ。泣き続けた。痛々しい程に。声の限りに。…その涙が涸れるまで。
ティファとバルバリシアは、真っ赤になった目に涙を溜め二人を睨みつける。
「…あんた達…最低だわ…!この外道…!」
「…私…こんなに人を憎んだ事はないわ…愛を踏みにじり…命を弄ぶなんて…!」
ロックは意に介せずにやりと笑う。
「何だ、やろうってのか?何ならまとめて相手してやるぜ、綺麗なお姉さん方」
殺意すら感じる形相でロック達に詰め寄る二人。しかしそれをセリスが制した。
「…もう大丈夫よ。私がやるわ。ロック…リングに上がりなさい」
彼女の頬には、うっすらと流血の跡すらあった。しかしその流血の源である未だに真っ赤なその瞳に、もう迷いや動揺はなかった。
セリスの後を追い、冷ややかに笑いながらリングに上がるロック。二人は対角のコーナーで対峙する。
ユウナレスカが楽しげに笑う。
「…これは世紀のカードね。次世代の男女のスター候補、それもかつての恋人同士が激突なんて」
そんなユウナレスカを、バルバリシア達は再びきっと睨みつけた。
「…このクズ女。あんたの相手は私達よ」
「…最低。何がチャンピオンよ、この人でなし」
詰め寄る二人。ユウナレスカは不敵に笑った。
「…仕方ないわね」
リング上で対峙していたセリスとロック。二人はやがてどちらからともなく歩み寄る。
「…こんな形で再開するなら、一生会えないままで良かったわ」
呟くセリスの愛らしく端正なその顔に、普段の零れんばかりの輝きはない。その表情はただ冷たく、固く凍てついている。
ロックは鼻で笑った。
「全くだな。お前が遅すぎるんだよ。ま、これも運命って奴かな」
「…そうね」
淋しげに微笑むセリス。そして彼女は消えた。
「!?」
次の瞬間、ロックは腹に突風が吹き付けたような錯覚に襲われた。
「…うぐッ…!」
矢のような胴タックルを決めたセリス。彼女は一瞬にしてテイクダウンを奪うと、ロックにのしかかり袖車絞めに捕えた。
「…うう…グっ…」
ロックはもがくが、セリスの体は自らの体に密着しており、ガッチリと決まった技は中々外れない。たちまち彼の意識が遠退く。
「…こいつ…め…!」
ロックは苦し紛れに、手を強引にセリスの喉元に捩込むと力一杯下から喉輪で押し上げた。
「…う…うッ…!」
今度はセリスの意識が遠退く。強引に技から脱出したロックはセリスの体を抱えるとそのまま自らの体を浴びせ掛けるようにしてマウントを奪った。
「やってくれたな…!」
ロックはセリスの長い髪を鷲掴みにし彼女の上体を引き起こすと、その頬を何度も張った。
「あう!うぐ!」
脳が揺れ、首の骨が激しく橈む。男の打撃は今まで散々喰らった女のそれとは威力の次元が違った。こんな事は地下室で裏切り者として折檻されて以来だ。しかもそれを愛した男にされる日が来るとは。
悲しみに震え奥歯を噛み締める彼女だが、感傷に浸っている場合ではない。彼を睨みつけるとその顎にカウンターでスナップの効いた裏拳を叩き込む。そして彼が怯み手を放した所で、顎に頭突きを見舞った。
「ぐあっ!」
仰向けに倒れ込むロック。セリスはすかさず彼の右腕を取ると丁度四つん這いになるような格好で、その首を両脚で上下から挟むように締め上げた。ストラングルホールドαである。
「うぐぐ…!」
再びロックの意識が遠退く。セリスは力の限り締め上げた。
もはや彼女にとってロックは愛しい恋人でも何でもない、憎らしく倒さなければならないただの最低な男のはずだった。彼女の脳裏には彼と愛し合った日々の事など既にないはずだった。
だが、その事が彼女の足元を掬う事になってしまった。
「…はうッ!」
内ももに走る電気のような快感に、彼女はつい技を解いてしまった。
技から脱出したロックが下卑た笑いを浮かべる。
「俺をなめるなよ。お前と長い間離れてたって、お前の感じる所くらいしっかり覚えてるさ」
彼はセリスに抱きついて押し倒すと、のしかかったまま彼女のうなじを撫で始めた。
「あ…んあ…ッ…!」
セリスの口から、その意に反して荒い吐息が漏れる。ロックは下品に笑いながら彼女を攻め立てた。
「お前、うなじや太もも攻められるとすぐに感じてたよな」
彼はセリスの体にのしかかったまま、左右それぞれの手でその彼女の弱点をいたぶる。
「…いや…アっ…!」
ロックの下で悶えるセリス。彼女の理性は、もう好きでも何でもない男に体を弄ばれる事を必死に拒絶していた。しかし、本能はそうはいかなかった。
「…それにお前、気が強い風に見せ掛けて実はいじめられるのが大好きだったな」
ロックは舌なめずりをすると、彼女の上体を起こしストレッチプラムに捕える。彼女の頭を左脇に抱えねじり上げながら、その舌は首筋を責め、右手はレオタードの切れ込みからねじ込まれ彼女の花園を嬲っていた。
「…ああ…ッ…嫌…あっ…!やめ…て!」
必死に抵抗しようとするセリスだが、力が入らない。意に反して彼女の体は激しくうねり、腰が前後に波打つ。
「へへ、相変わらずだな。少しいたぶられただけでこんなに濡らしてさ」
ロックはセリスの蜜がたっぷり付いた指を、彼女の鼻面に擦りつけた。
「もうべちょべちょだぜ。どうだよ、自分のスケベなマ○コの匂いは」
セリスの鼻腔に、ほのかな甘みを含みつつも挑発的な酸味と刺激的なアンモニア臭の入り交じった卑猥な匂いが満ちる。
背骨に痛みを与えられ、下品な言葉で詰られ、自らの最も恥ずかしい部分の最も恥ずかしい状態の匂いを嗅がされ、この上ない屈辱にも関わらず彼女の体の芯は疼き、花園は更に蜜を溢れさせた。
「いや…あっ…ああ…んッ…!」
彼女は、自分を捨てた男にイかされるなど絶対に嫌だった。しかし体の疼きとうねりは理性の必死の抵抗を嘲笑うように激しさを増すばかり。彼女は昇天寸前だった。しかし、皮肉にもその性欲と言うものがまた彼女を救う事となった。
「へへ、ダメだ、もう我慢できないや」
不意にロックがパンツを下ろす。セリスはその隙を見逃さず、膨張した彼の一物を渾身の力で握りしめた。
「ぎょええ〜〜っ!」
絶叫するロック。セリスは彼の背後に回り胴絞め片羽絞めに捕える。
「…ぐ…む…」
もはやロックに逃れる術は無かった。セリスは彼の耳元で囁く。
「…さよなら。私の大好きだった人」
ロックは、二度と感じる事の出来ない温もりの中で気を失った。
勝負はついた。そしてその瞬間、セリスの瞳からは涸れたはずの涙がとめどなく溢れ出した。
だが、涙に霞むその瞳で彼女が見たものは、更に信じられない光景だった。
「…ティファ…!バルバリシア…!」
冷たい笑みを浮かべ勝ち誇るユウナレスカの足元には、無残な姿の二人が横たわっていた。
パンツとハーフトップを剥ぎ取られ、潮を撒き散らしてぐったりとするティファ。
左手でブラからはみ出た片乳を掴み、右手をびしょ濡れのパンツに突っ込み自らの股奥を愛撫した状態で伸びているバルバリシア。
セリスは、満足に動かせない体を引きずるようにして彼女達に駆け寄った。
「…ごめんね…負けちゃった…」
「…くやしい…こんな…クズ女に…」
泣きじゃくる二人。セリスは唇を噛み締めユウナレスカを睨みつけた。
「いやしくも最強の女帝と呼ばれたこの私よ。二人がかりだろうと素人には負けられないわ」
余裕の笑みを浮かべるユウナレスカ。セリスは一矢報いるべく必死に立とうとしたが、体が言う事を聞かない。
「無駄な事はやめなさい。…でもさすがね。あなたはむろん、この二人も大した者だわ」
ユウナレスカがそう言って手を二回叩くと、メイドと女執事が担架を担いで入って来た。そしてリング上で伸びているロックを乗せると部屋を出て行く。
ユウナレスカが再び口を開いた。
「こうなったら男女とも選び直しね。もうえり好みはしていられないわ。当然貴女方も候補よ。…私とまた闘いたければ、近々楽しい手紙が届くからそれを読むことね。とりあえず今日の所はお帰りなさい。外に飛竜が用意してあるわ」
部屋を出て行くユウナレスカ。悔しくてたまらなかったがどうする事もできなかった。
抱き合って泣きじゃくる三人。やがて彼女達は肩を寄せ合って庭へ出ると、未だ悔し涙の止まらぬ瞳でユウナレスカの屋敷を睨みつけ、飛竜に乗った。
ー1ヶ月後、地下格闘トーナメント「Final Fantastic Fuckers」を開催する。同封したカードの色が同じ者同士三名でのチーム対抗とし、一人ずつ闘って先に相手を全員倒した方が勝ち抜きとする。
勝った者は二本目、三本目と連戦しても、次の者と交代しても良い。また当然、二本先取されたチームの最後の一人が三人抜きを果たした場合は逆転勝ちとする。つまり負けない限り選手は同一のチーム対戦において参戦権を失わないと言うことである。
基本的にルールはプロレスと同じだが、脳天や顔面から落とす等生命の危険を生じさせる技、武器や魔法、特殊能力、その他の道具の使用は禁止とする。
また、原則として女相手の顔面への打撃は禁止だがビンタは可。男相手の急所攻撃も同様だが障害を残さない程度に握る、揉む、しごく等は可。
優勝チームには私と闘ってもらい、勝てれば巨万の富と未来のスターの座を与える。
若く美しい、そして強い男女の熱い闘いを心待ちにしている。以上〜Y−
あの日から三日。セリス達の元に更なる悪夢への招待状が届いた。セリスとティファ、バルバリシアの封筒には赤いカードが入っていた。
バルバリシアとティファが、手紙を握りしめ険しい顔で言う。
「…やってやろうじゃない。絶対優勝して、あの最低女をやっつけてやるのよ」
「今度こそは絶対負けないわ。それじゃ、早速特訓といきましょう。セリス、行くわよ」
あの屈辱を晴らすべく闘志に燃える二人。しかし、セリスはその言葉に頷きつつも表情は浮かなかった。
「…ええ」
地下室に下りる三人。気合い十分なスパーリングを繰り広げるティファとバルバリシアに対し、セリスは沈んだまま部屋の隅で膝を抱えて座り込むだけだった。
「セリス、一体どうしたの?」
ティファが心配そうに歩み寄る。
「練習しなきゃ勝てないよ。早くやりましょ」
バルバリシアがセリスの手を取ろうとする。しかしセリスは冷たくその手を振り払った。
「…嫌よ。やめて。私…もう闘えない。闘いたくない」
「…セリス?」
ゆっくりと立ち上がるセリス。彼女は二人に背を向けると声を詰まらせながら続けた。
「…もうこれ以上関わりたくない…思い出したくない…嫌なの…お願いだからほっといてよ…」
ティファが静かに口を開く。
「…あの…元彼の事…?」
バルバリシアもいつになく優しい口調で語りかける。
「…辛いよね…でも、あんたがいくら悩んだって、どうなる訳でもないのよ?それよりあんたの心を踏みにじったあの女を叩きのめす方が先じゃない?」
ティファも頷く。
「…ほんと、あなたが悲しむのはわかるわ。でもバルバリシアの言う通りよ。…結局はその程度の男だったって事だし、あの女は自分の勝手な欲望で人の想いを踏みにじる最低の奴だったって事よ」
バルバリシアがそっとセリスの肩に手を掛けた。
「さあ、やりましょ」
と、セリスはやおら振り向き、その手を振り払う。
「やめて!」
彼女の瞳には涙が溢れんばかりに溜まっていた。
「何よ…勝手な事ばかり言って…!私だってわかってる、あいつが所詮そんな男だったって事は!もうあんな奴大嫌いよ!…でも、踏みにじられた私の心はどうすればいいの!?」
彼女はなおもヒステリックに叫ぶ。
「貴女達にわかるの!?殆ど諦めてたとは言え、心のどこかでいつかは会えると思ってた人に、会えた瞬間心を引き裂かれた私の苦しみが!永遠に再会できなかったらこんなに苦しまずに済んだのに、何で面と向かってあんな仕打ちをされなきゃいけないのよ!」
唇を噛み締める二人。セリスは泣き濡れる瞳で二人を睨みつけながら叫び続けた。
「どうせ貴女達なんかにはわからないでしょ!素敵な彼氏がいる貴女達なんかに!幸せな貴女達なんかに、私の気持ちなんかわからないに決まってるわ!」
ティファとバルバリシアの顔が強張る。
「貴女達、心の中じゃ私よりも上だって安心してるんじゃない!?どうせ私なんか男に捨てられた惨めで哀れな女程度にしか思ってないんでしょ!」
「バカ!」
バルバリシアは目に涙を一杯に溜めながらセリスの頬を思い切り張った。うずくまるセリス。傍らのティファも、今にも泣き崩れんばかりの表情になっている。
「…ひどいよ…私達が…セリスの事そんな風に思ってるなんて…」
バルバリシアが叫ぶ。
「セリスのバカ!何で…何で私達があんたを…大切な友達を見下さなきゃいけないのよ!何でそんな言い方されなきゃいけないのよ!」
「…そうよ…あんまりだわ…ひどいよ…」
泣き崩れるティファ。セリスは無言のまま泣きながら部屋を飛び出した。
しばし立ち尽くしたバルバリシアは、やがてティファの横に崩れ落ちると声の限りに泣き叫んだ。
家を飛び出したセリスはチョコボを走らせ、夕闇の浜辺に辿り着いた。白い砂浜に既に人気は無く、吹き付ける海風と波の音が響くだけだった。
砂の上にうずくまり啜り泣くセリス。ふと見上げると僅かに残照の残る水平線の上空に三日月と宵の明星が寄り添うようにして静かに輝いている。その光景に彼女は何とも言えず淋しくなり、涙が更にこぼれ落ちた。
と、その時、砂を踏み締める足音に彼女は顔を上げた。
「…ユウナ…」
ユウナはセリスの傍らに腰を下ろすと、静かに語りかけた。
「…聞いたよ、全部。…辛かったね…」
優しい言葉にもセリスは無言で涙を零すだけだったが、ユウナは構わず続けた。
「…あの人、まだ消えてなかったと思ったら実は世界チャンピオンだった上、裏でそんな事やってたなんて…でもほんとひど過ぎるよね…」
セリスは霞み行く水平線をぼんやりと見つめながら投げやりに言う。
「…もういいの。ほっといてよ…もう何もかも…みんな信じられない…大嫌い…」
「…セリス…」
ユウナはセリスの正面に回り、その顔をそっと覗き込んだ。と、次の瞬間。
ーベチャッー
「…う…!何するのよ!」
いきなりセリスの顔に唾を吐きかけたユウナ。立ち上がったセリスは怒りに顔を引き攣らせて彼女を睨みつけ、唾を拭う。
「何よ、弱虫。そんなだから彼に捨てられたのよ」
更にユウナはセリスの頬を思い切り張る。
「このサイテー女!一生そうやってうじうじしてなさいよ、蛆虫!」
「…!!」
さすがにセリスは完全に怒った。目の覚めるようなビンタをやり返すと、衝撃に膝をついたユウナのホットパンツを掴み、パワーと体格差に物を言わせ吊り落しで叩きつける。
「はう!」
砂煙の中、短いホットパンツを食い込まされ尻肉をはみ出させてダウンするユウナ。セリスは彼女の腹をぐりぐりと踏みにじった。
「う…ぐぁぁ…!」
「誰が蛆虫よ!私に勝てっこない弱虫の癖に喧嘩売って、覚悟はできてるでしょうね!」
セリスは苦しむユウナに跨がると、彼女の顔面を左手で力一杯握り締め、こめかみに何度も拳骨を打ち付けた。
「…許さない!私の気も知らないで!ボコボコにしてやるから!」
パンチを喰らう度に脳が揺れ意識が遠退くユウナ。しかし彼女は不敵に笑った。
「…ふん、何よ、弱虫はあんたの方でしょ」
その言葉にセリスは怒りを爆発させた。ユウナを引きずり起こし、いつかバルバリシアをKOした時のようなビンタを叩き込む。
「はぐっ!」
砂の上を転げるユウナ。セリスは彼女の股間と首に腕を回すとボディスラムの形で力任せに抱え上げ、海に向かって投げ捨てた。
ーバシャアッ!ー
飛沫を上げ波打際をびしょ濡れになり転げ回るユウナ。
「死んじゃえー!」
セリスは彼女に走り寄り、大きく足を振り上げ殺意の篭ったストンピングを放つ。
「…死ぬのはあんたよ!」
ユウナは転げて振り上げられたセリスの足の下に潜り込むと、片手で軸足を取りもう片方の手をセリスの尻に宛がい、彼女を前方に引きずり倒した。
「きゃあ!」
今度は自分が水面に叩き付けられ飛沫を上げるセリス。ユウナはそのまま彼女の両足を取り逆エビ固めに極める。
「…むぐぅ!がぼっ!げほっ!」
技自体の痛みまさることながら、波打際でこの技を掛けられたセリスは顔面を波飛沫に晒される事になった。目や口や鼻を容赦無く塩水が襲う。
「…友達を傷付けて、この最低女!溺れ死んじゃえ!」
渾身の力で絞り上げるユウナ。鯱の如く反り返らされたセリスの股間にはびしょ濡れのレオタードが張り付き、秘裂やその周りの茂みがくっきりと浮き上がっていた。
「…げぼっ…あなたなんかに…何がわかるのよ!」
セリスは砂地に手を着くと強靭な下半身のバネを使い、ユウナを後方に投げ倒した。
「きゃっ!」
顔面から砂浜に突っ込むユウナ。セリスはむせながら起き上がると、黒いホットパンツが張り付いたユウナの尻を思い切り蹴飛ばした。
「ふぐぅっ!」
のたうち回るユウナにセリスは再びのしかかり、両手で喉元を締め上げた。その目には完全に殺意が宿っている。だがユウナも負けてはいない。両足を振り上げ足でセリスの長い髪を挟むようにして彼女を後ろへ引きずり倒し、脱出する。
「こんにゃろう!」
セリスに組み付くユウナ。二人は全身砂塗れになりながらとっぷりと日の暮れた浜辺を縺れ合って転げ回った。
「生意気なのよ、このくそ女!死んじゃえ!」
「あんたこそ死んじゃえ!このサイテー女!」
セクシーな着衣を食い込ませて股を開き尻を突き上げ、絡み合いながら感情剥き出しに殴り合う二人。だがやはり二人には確たる実力差があった。
「…う…!」
「…とどめよ!」
ダメージの蓄積したユウナをパワーボムに捕えるセリス。彼女は力任せに引っこ抜くと、ユウナの体を砂の上に叩き付けた。
「あうぅッ!」
砂煙が上がる中ユウナの意識は一瞬飛んだ。怒りの収まらないセリスはなおもユウナの体を持ち上げると、そのまま溜めを作る。
「これで終わりよ!」
勝利を確信したセリス。だがユウナの闘志はまだ消えていなかった。
「私…負けない…!友達を泣かすような奴に!」
朦朧としながらもユウナはセリスの長い髪を根元から掴むと、股間がセリスの顔面に密着しているのを利用し、最後の力を振り絞って彼女の頸動脈を太ももで締め上げた。
「…!…む…うぐ…ッ!」
後ろに倒れ込むセリス。彼女の呼吸器に満ちる磯臭い匂いは、海水に濡れそぼったホットパンツだけが原因ではなかった。
形勢逆転し、勝利目前のユウナ。だが彼女の目には涙が浮かんでいた。
「…セリスのバカ!ティファを…バルバリシアを傷付けるなんて…あなたそれでも友達なの!?…バカ!バカ!大っ嫌い!」
咽び泣きながら絞め上げるユウナ。やがて彼女のホットパンツは、海水と彼女の汗だけではなく、セリスの涙にも濡れ始めた。
セリスはもう耐えられなかった。技の苦しみよりも、心の痛みにである。
「…ごめんなさい…私の負けよ…放して…」
ユウナの太ももを数度叩くセリス。彼女が負けたのは、バルバリシアに一度苦杯を舐めさせられた時以来だった。
技を解くユウナ。暗い無人の浜辺で二人は抱き合い、声を上げて泣いた。
闇に包まれ、月と星だけが照らす中、ユウナは笑みを浮かべながら口を開いた。
「…どう?目が覚めた?」
苦笑しながら答えるセリス。
「…うん。ありがとう。私…本当にひどい女ね…」
「…あなたの気持ちもわかるわ。愛する人に裏切られ、想いを踏みにじられたんだから…愛する人がいなくなっちゃったんだから…」
その言葉にある事を思い出すセリス。
「ユウナ…そう言えばあなた…」
ユウナは淋しげに苦笑した。
「…好きな人に裏切られるのも辛いだろうけど、お互い好きなのに引き裂かれちゃうのも辛いものよ」
うつむくセリス。ユウナが続ける。
「でもだからって、人の幸せを妬んで拗ねたからって何になるの?ましてや自分を大切に思ってくれてる人を…それってカッコ悪すぎない?…そんなのセリスじゃないよ」
セリスの目に再び涙が浮かぶ。
「…ありがとうユウナ…私…本当にひどい事を…」
以前パルマーに嵌められた時彼女からされたように、ユウナは啜り泣くセリスをそっと抱きしめた。
「ティファとバルバリシアだって、きっと貴女を待ってるよ。私も一緒に謝りに行ってあげるね」
「その必要はないわよ」
不意に響く声に振り返る二人。そこに立っていたのは、優しい笑みを浮かべたティファとバルバリシアだった。
「…ティファ…バルバリシア…ごめんなさい…私…何て事を…」
二人の姿を見たセリスは堪らなくなり泣き崩れた。二人は彼女を優しく抱きしめる。
「もういいのよ、貴女がどんなに苦しんだかはわかってるから。貴女だって、私達が本当に憎くてあんな事言ったんじゃないでしょ」
バルバリシアがセリスの髪を撫でた。
「私達はあんたの事が大好きよ。だから、そんなカッコ悪い真似はしないでね。いくら私だって、あんな事言われりゃ傷付くんだから」
セリスは溢れる思いを言おうとしたが、涙で言葉にはならなかった。そして二人は、彼女が泣き止むまでその体を抱きしめていた。
月が水平線にかかる頃、セリスの顔にようやく笑顔が戻った。
「ありがとう、みんな。大切な事を思い出させてくれて」
微笑む四人。と、ユウナが思い出したように傍らのバッグから一枚の青いカードを取り出した。
「それは!?」
「私はリュックとルールーと組むの。いい試合をしようね」
「そう言うこと」
皆が振り返ると、リュックとルールーが楽しげに笑って立っていた。更に声が響く。
「私もね」
声の方に立っていたのはティナ、そしてマッシュだった。その手には黄色いカードが握られている。
「うわ、マッシュ!?…強敵ね…」
顔をしかめるセリス。と、ティファが首を傾げた。
「あら?もう一人は?」
ティナは頭を掻いて答える。
「それが、ちょっと遠くの人らしくて、私達もまだ会ってないの」
「ま、とにかくいい試合しようぜ」
握手をかわす一同。更に声が続く。
「私達も忘れないでね」
セシル、ローザ、そして腰に手を当て自信ありげに立つリディア。その手には白いカードが見える。
バルバリシアが顔をしかめた。
「えー、あんた達も…?」
リディアがにやにやと笑う。
「またボコってあげるわ」
しかしバルバリシアもふてぶてしく言い返す。
「ふん、今回は負い目も何もないもの、あんた達には負けないわ」
笑い合う二人。ティナが駆け寄ってきた。
「まだまだ他にもチームはいるらしいわ。腕が鳴るわね」
「そ、ここにもね」
声の方には月の女神姉妹が立っていた。しかし…
「あら、あんた達、カードは?」
バルバリシアの言葉に笑う二人。彼女達はやがて懐に手を突っ込むと、泣きながらただの道具屋のポイントカードを取り出した。
吹き出す一同。バルバリシアが手を叩いて笑う。
「あはは、何やってんのよ、この落選姉妹!」
「何でなのよー!」
「ひどーい!」
泣きじゃくる姉妹を見て、申し訳ないとは思いつつも一同は笑い声を上げた。リュックがセリス達に駆け寄る。
「ねえねえ、せっかくみんないるんだし浜辺だし、お互い頑張ろうって事でバーベキューでもやんない?」
「賛成ー!」
「んじゃ野郎二人は買い出しよろしく」
バルバリシアの言葉に舌打ちするマッシュとセシル。
「ちぇ、何だよ〜」
「…全く、僕は一応王様だぞ」
「文句言わないの。さっさと行ってらっしゃい」
「へいへい、わかりましたよ」
そそくさと浜辺を後にする男二人。セリスが声を上げた。
「それじゃ、一ヶ月後はみんないい試合をしましょう!必ずユウナレスカを倒すのよ!」
「おー!」
満天の星の下、闘志に燃える者達の宴は始まった。
その日は来た。ティファは着替えを済ませると昇る太陽を見つめ、拳を握る。
「よーし!そろそろ行きましょ!」
振り返るティファ。と、彼女の目が点になった。
「…貴女達、どうしたのその格好?」
セリスはジーンズに可愛らしいデザインの白いカーディガンを羽織り、バルバリシアはその豊満な肉体をダークなスーツに包んでいた。
二人が苦笑する。
「単なる気分の問題よ。あと、どうせ今回も何だかんだで下品でえっちな闘いになっちゃうだろうから、レオタードは温存して多めに持って行こうと思って」
「そー言う事。あんたもせめてパンツ多めに持ってけば?」
つられて苦笑するティファ。
「やれやれ、考え過ぎじゃない?でも何か、こっちのがまともな格好なのに違和感有りまくりなのは何でかしら」
「…習慣て恐ろしいわね」
笑い合う三人。そこへ一通の手紙をくわえたチョコボが走って来た。
ー第一回戦の会場、バラムへ案内する。チョコボに乗られたしー
「…と、来たわね」
「さあ、行きましょ」
支度を調えチョコボに乗る三人。その闘志にはもはや一点の曇りもなかった。
三人に割当てられた第一回戦の会場は、穏やかな雰囲気の港街だった。
「結構遠くまで来たわね。会場はどこかしら?」
「あっちじゃない?何か歓声が聞こえるわ。もう別のチームの試合が始まってるみたいね」
チョコボから降り歩き出す三人。港に程近い広場には特設リングが設けられ、黒山の人だかりが出来ていた。
「わあ、さすがマッシュ!強いわね」
セリスが思わず声を上げた。リングの上では、マッシュがガッツポーズを決めている。その傍らでは、KOされた対戦相手とおぼしき濃紺のガウンを纏った青い長髪の男が伸びていた。
「…ひどいな、こんな闘いは初めてだからお手柔らかにとお願いしたではないですか」
マッシュが頭を掻く。
「…そんな事言われてもな〜」
「やったー!二人抜きよ!」
赤コーナー下ではティナがはしゃいでいる。その横ではソフトモヒカン風の金髪に黒いシャツを羽織り、デニムのハーパンを着けた左顔面に稲妻状のタトゥのような模様のある少年が手を叩いていた。
「ちょっとマッシュさん、頼んますよ。俺の地元なんだから少しは俺にも見せ場を下さいよ」
「お、悪いなゼル。んじゃ次はお前の番な」
「よっしゃー!あざーす!」
喜び勇んでリングインするゼル。歓声が一際大きくなり、暴れん坊コールが沸き起こる。
「うおっしゃー!」
歓声に応え両手を突き上げるゼル。
「やれやれ、何だか暑苦しい坊やね」
バルバリシアが肩をすくめ苦笑する。
「そう?無邪気で可愛いじゃない」
ティファの言葉に、バルバリシアがニヤつく。
「ん?何よ、あんたもしかしてあの子に気でもあるの?彼氏に言ってやろ」
「バカ!」
二人のやり取りを見て楽しそうに笑うセリス。どうやら何とか悲恋の痛手から立ち直れたようである。言い合う二人もそれに気付くと安堵の笑みを漏らした。
続いて青コーナー下から対戦相手がリングに上がる。纏め上げた長い金髪にオレンジ色のロングワンピース姿の女。知性を感じさせる美貌ながらもどこかまだ幼さが残っている。年の頃はセリスと同じくらいだろうか。
観客席の一角の黒い制服姿の男の一群からトゥリープコールと野太い歓声が沸き上がる。女は自信に満ちた表情で腕組みした。
「相変わらず威勢だけはいいわね。でも、それだけじゃ勝てないわ」
ゼルも鼻の下を擦りつつ言い返す。
「へへ、どうかな?本気で行かしてもらうぜ。覚悟しな、キスティスせんせ」
「二人ともいいな?では始めるか」
背中に三日月の紋様が描かれた上着を着て、赤毛を前方に流した奇妙な髪型の、長身で目つきの鋭いレフェリーが二人に歩み寄る。
「ファイト!」
「おりゃあー!」
ダッシュ一番ゼルは左右の掌打のコンビネーション、更にローキックを繰り出すがキスティスは落ち着いてかわす。
「ちっ!じゃあこれならどうだ!」
体を沈め、ボディ目掛けドルフィンブロウを繰り出すゼル。何とかかわしたキスティスだが勢い余って振り抜かれたゼルの拳が長い前髪を掠め、ちぎれた黄金色の髪の毛が数本宙に舞う。
「おっと、危ない危ない」
大きく息を吐くキスティス。リング下ではティファが唸った。
「うーん、粗削りながらも切れがいいわね。将来は私以上の使い手になるかも」
その言葉に再びニヤつくバルバリシア。ティファは横目で彼女を睨みつけた。
リング上ではゼルが嵩にかかって攻め続ける。しかしキスティスのディフェンスは巧みで全く当たらない。
「畜生!うりゃあ!」
焦って大振りな掌打を放つゼル。それを見てキスティスの目が鋭く光った。
「甘いわね」
キスティスはゼルの目元を手指で払うように一撃した。
「痛てっ!」
ゼルが怯んだ所に、チンクラッシャーで追い撃ちをかけるキスティス。更にグラついた彼の足元を掬うとそのまま四の字ジャックナイフに固めた。
「うわ!何だ!?」
目潰しを喰らい顎を一撃されたゼルは自分が一瞬どうなっているか解らなくなった。そして気付いた時には、既にレフェリーがマットを三度叩いていた。トゥリープFCの男達から大歓声、他の観客からため息が漏れる。
「…ちっきしょ〜!やられたぜ!」
頭を掻きむしりくやしがるゼルだが後の祭だった。キスティスは頭を指差し勝ち誇る。
「ふふ、どう?喧嘩が強い上にいい女の私に勝つにはまだまだ甘いのよ」
「ちぇ、良く言うぜ、こんな姑息な手ぇ使っといて。まあ仕方ねえ、負けは負けだ」
顔をしかめリングから下りるゼル。マッシュとティナが苦笑する。
「おいおい、早過ぎるぞ」「何やってるのよ、もう」
「マッシュさんすんません、デカい事言って負けちまって。ティナちゃん面目ねえ、仇取ってくれよ」
「ええ。任せといて」
入れ代わりに颯爽とティナがリングに飛び込む。試合が始まるや彼女もまたゼルのように腕を振りかざして突進した。
「全く、性懲りもないチームね」
軽くいなそうとするキスティス。しかし。
ーパーン!
「!?」
猫騙しで出来た一瞬の隙に、ティナは勝負に出た。
「…!しまった!」
完璧に極まった首固めからはさすがのキスティスも逃げられず、敢え無くカウント3を献上した。
ゴングが鳴り響き、レフェリーがティナチームの勝利を宣言する。ティナ達は歓声の中退場した。
「おめでとう!」
三人はティナ達に駆け寄り祝福の言葉をかける。
「ありがとう!セリス達も頑張ってね!」
「うおっ!誰かと思ったらティファさんじゃないっスか!すげぇ!自分はティファさんとマッシュさんに憧れて格闘家になったんス!すげぇ!絶対闘いてぇ!」
「ふふ、光栄ね。頑張って!」
「ありがとっス!」
笑顔でティファが差し出した右手を両手で力一杯握り締めたゼルは深々と頭を下げた。
「頑張れよ!決勝で待ってるぜ!」
マッシュが堂々たる態度で言った。
笑顔でティナ達の勝利を祝福する三人。一方青コーナーからは暖かい拍手の中静かに敗者チームが去って行く。
と、何気なくそちらを向いたティファの顔色が変わった。
「…!…!?」
「どうしたの?」
ティファの様子に気付いたセリスが声を掛けたが、ティファは頭を横に振った。
「…ううん、何でもないわ」
否定するティファ。確かにこんな事がある訳がない。有り得ない。
しかし、彼女は確かに目にした。ここに存在するはずのない者が敗者チームの中にいるのを。
(…そんな事…ある訳ないよね…)
彼女は必死に自らの疑問を否定すると、笑顔を作ってセリス達に言った。
「それじゃ私達も仕度しましょ」
ロッカールームとして提供されている近くのホテルの一室で、セリスとバルバリシアは着替えていた。
「何だか今回はまともな試合じゃない。替えのレオタード沢山持って来なくても良かったかもね」
笑いながらいつものレオタードを着るセリス。バルバリシアも普段通りのビキニに着替えながら笑った。
「ふふ、わかんないわよ。でもどうせ恥ずかしい汁が付かなくたって汗はかくでしょ」
「違いないわね。…それはそうと、さっき見た?」
セリスは真顔に戻り、バルバリシアに尋ねた。
「ティファ、まるでお化けでも見たような顔してたの。一体何があったのかしら」
「…怪談には時期外れじゃない?」
スーツを畳みながらバルバリシアは眉を潜めた。
「何だったのかしら、本当。ともかく、次は私達の番だから頑張りましょ」
部屋から出ようとするセリス。と、バルバリシアがにやけながら呼び止めた。
「こらこら、パンツ出しっぱなしよ」
顔を赤らめて引き返すセリス。バルバリシアはフリルが付いたピンクのパンツをつまみ、なおもからかう。
「全く、可愛いパンツ穿いちゃって。うわ、くっさーい」
「バカ!」
セリスは顔を真っ赤にししてパンツをひったくるとバルバリシアの頭を思い切りぶった。
「いたた、そんな怒らなくたっていいでしょ。あーあ、闘う前からダメージ喰らっちゃった」
「バカ!知らない!」
怒って出て行くセリス。バルバリシアは頭をさすりながら静かに笑った。
(ふふ、良かった。念のためとは思ったけど、あの子、やっぱり完全に元気になったわね)
セリス達は青コーナーに集結した。赤コーナーには既に相手チームが陣取り、割れんばかりの歓声を浴びている。
一人は黒いタンクトップに長い水色のニットを羽織り、黒いショートスパッツを穿いた黒髪ストレートロングのあどけなさの残る美少女。
二人目は栗色外ハネのボブで黄色いミニスカワンピに身を包んだ愛らしくも活発そうな娘。
三人目は黒いレザーパンツに革ジャンを羽織った目元涼やかな好青年だが、その額には天下御免の向こう傷が見える。
今回の相手もこの街がホームらしいが、その美貌が観客の心を捉えたのかアウェーのセリス達にも大きな声援が飛ぶ。
「それでは第二試合、セリス・ティファ・バルバリシア組対リノア・セルフィ・スコール組の試合を開始する。両チームリングに入れ」
レフェリーの指示に、リングに入った両チームは互いに歩み寄り握手を交わす。
「では先発を残しコーナー下に降りろ」
相手チームはスコールが先発だった。それを見たバルバリシアが嬉しそうに笑う。
「ふふ、あの男の子が先発?じゃあ私が行くわ」
その言葉にティファは毒気をたっぷり含んだ目でバルバリシアをじろじろと見た。
「何よ、人の事言えないじゃない、この浮気者。貴女こそ彼に言いつけてやろうっと」
「う、うるさいわね!」
どぎまぎするバルバリシアを見て、セリスはくすくす笑う。ティファもすぐに笑顔に戻るとバルバリシアの肩を叩く。
「頑張ってね!まずは一勝よ!」
「ありがとう!」
試合が始まる。リング中央で視戦を繰り広げる二人。わずかながらバルバリシアの方が背が高い。
にやりと笑うバルバリシア。
「さあ、楽しみましょうね、可愛い坊や」
坊や呼ばわりされたスコールは一瞬むっとしたが負けずに言い返す。
「こちらこそよろしくな、エロエロフェロモンおばさん」
「ふふ、いい度胸ね。ますます気に入ったわ」
ティファが再び唇を尖らした。
「何よ、私達があんな事言ったらすぐ怒る癖に。本当いい男には甘いんだから」
セリスが笑いながらたしなめる。
「ま、いいじゃない。百戦練磨のバルバリシアだから、必ずいい結果を出してくれるわ」
革ジャンを脱ぎ捨てたスコールの灰色のTシャツに割れた腹筋がくっきりと浮かぶ。バルバリシアはそれを見て舌なめずりをした。
「…全く、スケベなおばさんだな」
呆れたように吐き捨てるスコールに、バルバリシアは不敵に笑って言い放つ。
「女性にそんな失礼な事言うもんじゃないわよ」
しばしの間の後、二人はガッチリと組み合う。上背で勝るバルバリシアだが、細身とは言えさすがにパワーではスコールの方が断然上だった。しかしそこはさすがに海千山千の彼女である。
「…う…!」
急に離れるスコール。彼の顔は朱に染まっており、右の耳たぶにはうっすらと歯型が付いていた。。
「ふふ、どうしたの?」
「き、汚いぞ!」
バルバリシアは好色に笑った。
「甘いわね。そんなんじゃ勝てないわよ」
彼女はリング上で横座りになると、舌なめずりをして右手の人差し指を立て、手前に動かし始めた。
「いらっしゃい、坊や」
「…な、舐めやがって!」
怒り心頭で突っ込むスコールをバルバリシアは冷静にアリキックで迎え撃った。
「うっ!」
前のめりに転ぶスコール。彼女はその体を受け止めると目にも留まらぬ早業でTシャツを剥ぎ取り、乳首を舐め回した。
「うああ…っ!」
快感と羞恥に悶えるスコール。バルバリシアは剥ぎ取ったTシャツをリング外に放り投げると、左腕でスコールの後頭部を手繰り寄せ顔面をその豊満な胸の谷間に埋める。
「ふふ、御望み通り舐めてあげたわよ」
「う…うぷっ」
確認すべくもないがスコールの顔は真っ赤になっていた。クールぶっていてもまだ彼は多感な少年であり、リノア以外の異性を知らぬ彼には刺激が強すぎた。そしてバルバリシアはそんな彼に、なおも悪さを仕掛けていた。
急に手を離し立ち上がるバルバリシア。その右手には一本のベルトが握られていた。
「これ、なーんだ?」
「…!そ、それは…!」
気付いた時には既に遅く、スコールのレザーパンツは膝までずり下げられていた。彼の白いビキニブリーフの前は完全に膨張し、彼は羞恥に顔を真っ赤にしながら前屈みになり両手でそこを隠す。
「イカしてあげる」
バルバリシアはリング中央で狼狽するスコールを一瞥すると一飛びでコーナーに駆け登り、彼目掛けてダイブし、ウラカンラナを放つ。
「んぷっ!」
スコールが気付いた時には目の前に際どい黄色ビキニのみに覆われたバルバリシアの股間があり、彼の体は一回転して押し潰された。彼はもがいたが、まだ初な少年に熟れた金髪美女の股間はあまりに苛酷だった。
淫靡に漂う熟れた美女の香りと餅のような太ももや尻の前に、青い果実はあっさり3カウントを聞いた。
「ふふ、気持ちいいでしょ?」
下品な野太い歓声の中余裕の勝利を収めたバルバリシアは、未だ桃源郷をさまようスコールに一度投げキッスをして意気揚々と引き上げた。
セリスが顔をしかめる。
「もう、何でわざわざまたエロバトルの流れを作るのよ!」
「仕方ないでしょ、可愛い男の子いじめるの楽しいんだから」
ティファが蔑んだ目でぼそりと言う。
「…エロババア」
「この!誰がエロババアよ!」
ティファの頬っぺたを抓り上げるバルバリシア。しかしティファは呆れ顔のまま言い返した。
「ほら、私達にはすぐ怒る」
「ふんだ!当然の区別よ!」
セリスとティファはため息を一つつき肩をすくめた。
一方、赤コーナーでは縮こまるスコールの横でリノアがいきり立っていた。
「何よあのエロババア!絶対許さない!私が行くわ!」
激怒する彼女をセルフィが宥める。
「まあまあ。そんなカッカしてたら相手の思うツボだよ。あたしが行くわ。チームリーダーは最後に出るもんよ」
殺気立つリノアの肩をぽんぽん叩き、セルフィはロープを飛び越えリングに入る。青コーナー側にはティファが堂々とした態度で立っていた。
二本目が始まる。セルフィは身構え、ティファに少しずつ迫って行く。
「その構え、カンフーね?楽しませてもらうわ」
ティファの言葉にセルフィは薄く笑う。
「へへ、悪いけどスコールの仇は取らして貰うからね」
そう言うと彼女はティファに飛び掛かり、目の覚めるような旋風脚を放った。
「うっ!」
紙一重でかわすティファだが、セルフィは攻撃の手を緩めない。すかさず連続蹴りで追い撃ちをかける。
「!…やるわね。でも足技なら私もお手の物よ!」
セルフィのラッシュを切り抜けたティファはジャンプ一番サマーソルトを放つ。それがかわされるや返す刀で水面蹴りを見舞った。
「わっとと!あんたもやるね!」
スウェーとジャンプでかわすセルフィ。二人は間合いを取り、笑みを浮かべ対峙した。華麗な技の攻防に拍手が沸き起こるが、何分二人が激しく動く度に白いパンツが丸見えになるため、その中には助平な笑い声も混じっている。
「えへへ、楽しませてくれるやん。ほな本気でいくで」
セルフィの口調が変わる。と、彼女はダッシュしたかと思うや、大開脚した状態で白いパンツも露に打点の高いニールキックを放った。
しかしティファは見切っていた。これでは打点が高すぎる。案の定彼女は勢い余ってティファの頭上を飛び越えてしまった。
だが、それこそが彼女の狙いだった。
「きゃあ!」
「へへへ、まんまとひっかかりよったな」
後ろからティファの巨乳を鷲掴みにするセルフィ。彼女はにやりと笑うと言い放った。
「食らわしたるわ!秘技・セルフィ流、暴れヌンチャク!」
叫んだセルフィは猛然とティファの乳房を揉みしだいた。いや、揉むと言うよりはもはや振り回すと言った方がいい。そして彼女はそんな状態でも指先でしっかりとティファの乳首を刺激していた。
「あ、あ、あ゛ー!」
経験した事もない刺激と快感にたちまち腰砕けとなり、だらし無く股を開きぺたりと尻餅をつくティファ。お陰で早々と濡れ始めた彼女の白いパンツは丸見えになっている。
「いやあっ、何するのよ!ああんっ!」
「どうや、エエやろ?ほれほれ、公衆の面前でオナってまえ。ほんでイってまえ」
欲求に耐えられず、パンツ越しに自分の秘裂にしなやかな指をあてがおうとするティファ。たまらずセリスとバルバリシアが叫んだ。
「やめて、ティファ!ダメよそんな恥ずかしい真似は!」
「何やってんのよ、このド変態!そんな小娘に負けんじゃないわよ!」
「う、ううー!」
二人の声援に我に帰り、自らの手を必死に理性で抑えるティファ。だが乳房を蹂躙する快感に、すぐ負けそうになる。
「ギブアップか?」
レフェリーが無表情に尋ねるが、ティファは喘ぎながら必死に答える。
「ノ、ノー!」
「…しぶといやっちゃな〜。しまいにゃ失禁させたるで!」
セルフィの手の動きが激しさを増し、体の力が抜けて行く。それは下半身も同じ事で、再度の失禁KO負けの悪夢が迫っていた。
しかしティファは負けない。両手を濡れそぼったパンツのクロッチに押し当て必死に耐える彼女の闘志は消えていなかった。そしてそんな彼女を、勝利の女神も見放していなかった。
「いでゃあ〜!吊った〜!」
突如絶叫するセルフィ。あまりの高速に耐えられず音を上げたのは彼女の手首の方だった。
震えながらも立ち上がったティファが、のたうち回るセルフィを睨みつける。
「…やったわね!今度は私の番よ!」
ティファは激痛に転げ回るセルフィの両足を掴むと、かつて自分が散々苦しめられたあの技を繰り出した。
「ほげえええ〜!」
手首を自爆させたセルフィに、もはやティファの音速電気アンマから逃れる術はない。白いパンツしか被う物のない彼女の秘処は、激痛と快感に無防備に晒される事となった。
「ふざけるのも大概にしなさい!失禁するのは…貴女の方よ!」
ティファの怒りの猛攻は、セルフィの理性、ヴァギナ、秘裂…あらゆる物を陥落させて行った。
「い、いやぁ〜!…おしっこ…漏れてまう〜!」
そして遂にティファの電気アンマが膀胱までも崩壊させようとした瞬間である。彼女は不意に足を止め、セルフィに覆い被さった。
もはやセルフィにフォールを返す気力も体力もなく、ゆっくりとカウント3が入る。
セルフィが喘ぎながらティファに問う。
「…何で…技止めたん?」
ティファは静かに笑った。
「やっぱり出来ないもの。自分が受けた屈辱を他人に負わせるなんて。貴女、せっかくいいセンス持ってるんだから、これに懲りてふざけた真似はしない事ね」
セルフィの目に、じわりと涙が滲む。
「…うん…あたしが悪かったわ…ほんま堪忍ね」
セルフィを助け起こすティファ。その姿に、会場から大きな拍手が鳴り響いた。
「全く、あの子も甘ちゃんね。…ま、そこがいい所なんだけど」
笑顔で呟くバルバリシアの言葉にセリスも頷く。
「さあ、次は私の番ね」
「頑張って。あんたもクリーンファイトで、このままストレート勝ちよ」
「もちろんよ」
満を持してセリスがリングに上がる。先日彼女が女子プロレスラー二人を倒したという名声はここにも届いているらしく、歓声が一際大きくなった。
対するは当然リノアである。だが、彼女は可愛らしいその顔に、何か腹に一物あるような笑みを浮かべていた。
「やってくれるじゃない。でも、調子に乗るのもここまでよ。私が三人まとめてやっつけてやるわ。特に、あのエロババアだけは絶対許さない」
「たいした自信ね。ならば見せて貰うわよ、貴女の実力を」
静寂の中対峙する二人。先に仕掛けたのはリノアだった。
ープシューッ!
「きゃあ!」
いきなりの毒霧攻撃が炸裂する。セリスの視界がふさがれ、全身に液がかかった。
「隙ありー!」
セリスに襲い掛かるリノア。彼女はセリスの顔面に張り手を見舞うと、前のめりになった彼女の頭をポカポカ叩いた。
「えい!えい!えい!」
「痛っ!痛い!」
子供の喧嘩のような攻撃だが、後頭部をもろに叩かれるためかなり痛い。しかしセリスがこんな攻撃で倒せる訳もなかった。
「…いい加減にしなさい!」
怒ったセリスはリノアに組み付くと、そのままパワースラムで叩き付けた。
「はう!」
息を詰まらせ悶絶するリノア。セリスは彼女を引き起こすとスパッツを引っ張り高速のブレーンバスターで再び背中を叩き付ける。
「あー!」
更にセリスは痛みにのたうつリノアの足を取ると、完璧な四の字固めに捕えた。
「あ゛ー!いたぁいー!」
絶叫するリノア。セリスは怒りを込めて絞り上げる。バルバリシアがため息をついた。
「やれやれ、どうやら一番しょぼいのが最後に残ってたみたいね」
ティファも苦笑しながら頭を掻く。
「そうね、実力差が有りすぎるわ。あの子には悪いけど、はっきり言ってセリスには役不足ね」
そんな外野をよそに、セリスは手加減無しに攻め立てる。
「卑怯な真似して!もう逃げられないわよ!さっさとギブアップしなさい!」
しかし、リノアは激痛に頭を掻きむしって苦しみながらもニヤリと笑った。
「…ざんね〜ん、勝つのは私ですよ〜だ」
「何よ、負け惜しみ?みっともないわよ」
眉を潜めるセリスに対しリノアは不敵に笑い、人差し指を立てると左右に振ってみせた。
「…さっき貴女に浴びせた毒霧…あれはね、ストレート果汁100%の林檎ジュースなの。そして、私の可愛いアンジェロは、林檎が大好物な訳よ」
「…アンジェロ?」
と、リノアがいきなり指笛を吹いた。そして次の瞬間、リング外から何かが疾風の如く駆け込んできたかと思うと、それはいきなりセリスに飛び付いた。
「きゃあ!な、何!?」
「わんわんわん!」
飛び込んで来たのは尾が無い一頭の中型犬だった。その犬は猛烈な勢いでセリスの顔をなめ回す。
「きゃあ!くすぐったい!」
リノアが再び不敵に笑う。
「アンジェロ、おっぱい!」
彼女が叫ぶと、アンジェロはセリスのレオタードの胸元を前脚で器用にはだけ、乳首を猛然と舐め出した。
「あっ…あはッ…いやあ…ん…!ワンちゃん、やめて!」
セリスの哀願にも耳を貸さず、アンジェロは彼女の体に付着したジュースをなめ回す。その隙に技から脱出したリノアは、仕返しとばかりセリスに股裂きを仕掛けた。
そして、彼女は意地悪く笑った。
「よぉーし…とどめよ!アンジェロ、プッシー!」
アンジェロがガラ空きになったセリスの股間を襲った。
「あ…ン!あは…あン!うう…ンっ!お願い…ワンちゃん…やめ…て…!」
股を無理矢理開かされる痛みと羞恥、そして全身を襲う快感に悶え苦しむセリス。客席から興奮に満ちた下品な歓声が上がった。
堪らずバルバリシアが怒鳴る。
「ちょっとレフェリー、何やってんのよ!犬なんか使ってるじゃない!」
ティファも猛抗議する。
「そうよ、凶器攻撃じゃない!反則よ!」
レフェリーはしばらく考え込んでいたが、やがて首を横に振った。
「いや、これは犬畜生が本能のままやっているだけだ。凶器とは認められんな」
「何よそれー!うう…セリス、しっかりしなさい!そんな犬ぶっ叩いちゃえ!」
バルバリシアが絶叫するが、セリスは首を横に振った。
「あう…!だ、駄目よ…私…には…出来ないわ…ワンちゃんに…罪はないもの…」
頭を抱えるバルバリシア。その間にもセリスは大ピンチに陥り続ける。レオタードのクロッチはアンジェロの唾液と溢れ出る彼女の蜜を受け止め切れなくなり、セリスの股間下のマットには小さな水溜まりが出来ていた。
「ギブアップ?」
レフェリーが問うが、セリスはもはや意地だけで拒絶する。しかし、彼女には確実に限界が迫っていた。
リノアが舌打ちする。
「もう、強がっちゃって。ならいいわ、これで終わりよ」
そう言うと彼女は、レフェリーの死角を突いて胸元から一つの小袋を取り出した。
「…アンジェロはピーナツバターも大好物なのよね」
セリスの顔が引き攣った。リノアがにやけながら袋を握った手を振り上げる。
「イっちゃえー!」
だが、彼女の悪運は唐突に尽きる事となった。
「きゃっ!」
体温ですっかり融けていたピーナツバターは、彼女自身に振りかかった。顔面、胸元、…そして股間にも。そしてこれが何を意味するかは考えるまでもなかった。
「…!わんわんわん!」
無邪気な愛犬は、今度はご主人様に飛び付いた。
「きゃあ!いやッ、アンジェロ、あはッ…、やめ…なさ…いッ!」
ご主人様の大切な所を猛然と舐める忠犬。たちまちリノアは腰砕けになり身をよじって悶え苦しみ出した。
「ああああ゛〜!」
股を開き、飼い犬に秘処をしゃぶられるリノア。そして生憎彼女にはセリス程の根性も無かった。
「ギ、ギブアップー!」
闘い済んで日が暮れる頃、スコールとセルフィは三人に深々と頭を下げた。
「この度は本当に申し訳ない、うちのバカリーダーが」
「ほんますんまへん。よう言って聞かせますんで」
顔を真っ赤にして無言のままのセリス。ティファとバルバリシアは何とも言えぬ気まずい表情をしていた。
「んー…まあとにかく一つお願いします」
そう言うのが精一杯の二人。やがてスコールとセルフィは伸びているリノアを引きずりながら帰って行った。
そして、しばしの沈黙の後。
「…ぷ…うぷ…っ…」
ティファが吹き出しそうになり、バルバリシアは堪らず笑い転げた。
「う…ぷっ…あははははははは!もうダメ!まさか本物のバ、バター犬が見、見れるなんて!」
悶絶する二人。セリスは彼女達に背を向け細かく震えていた。
「…ほんと…替えのレオタード沢山持って来てよかった…」
振り絞るような声で言った直後、彼女はいきなり振り向いた。
ボコ!ボコ!
「いったぁーい!」
二人の頭を思い切りぶった後も、セリスは真っ赤な顔で涙を流しながらげんこつを握り締めていた。
「バカ!大バカ!最低!貴女達もいっぺん舐められなさいよ!何で私ばっかりこんなエロファイト…うわーん!」
あまりの恥ずかしさに泣き叫ぶセリス。バルバリシアとティファは彼女を必死に宥めながら、三日後の二回戦に思いを馳せた。
>>443 すげぇ…FFの女キャラ総出演てな感じですな
途中獣姦ぽいwwwww乙でした!
受諾した