【 帝都 】 サクラ大戦・第十八幕 【 巴里 】

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571アバン・タイトル ◆Sumire5vIA


 『 明日、俺は神に召されるだろう。 だが恐れは無い。 なぜなら俺には誇りがある。 』 
 『 今日まで生きてきて何も出来なかった俺が、明日は全ての同胞の希望になるのだから。』

 ― マサチューセッツ州 歩兵第54連隊 ジム・ロートン一等兵 1863年6月17日 ―
572神崎すみれ ◆Sumire5vIA :2005/11/20(日) 00:50:12

>201 >206 >26-28 ほか

 『 自由と平等とそして誇りの為に ― マサチューセッツ州第54連隊 ―  』



 みなさん。 こんばんわ。 神崎すみれです。 
 今夜のドキュメンタリーシリーズ第4弾は、今までの怖い話シリーズから一転、感動大作をお送りします。
 
 >26-28 さんの仮想世界のお話や >201 >206 さんなどのお話を察するに、皆さんが暮らす環境の中では世に偏見や差別が蔓延り、
 何が正しいのかぼやけて見えてしまい、理想や人類愛を信じられなくなる方もいらっしゃるようですわね。
 
 たしかに、今日の戦争においては、口では聖戦だ正義の戦いだと言ってはいても、大国のエゴや他民族への侮蔑観が見え隠れして、
 自由や平等の為に命を賭けるなんて胡散臭いものに感じてしまうかもしれません。
 
 そんな時こそわたくし達の戦いを思い出していただきたいのですが、残念なことにわたくし達の戦いは全ての民族、国家、思想を超えた
 ものであり、どちらかとういうと災害派遣のイメージで捉えられるかたもいらっしゃるかもしれません。

 そこで今回は、肌の色の違いという絶対的な運命に挑み、過酷な戦いに身を投じた戦士達の戦いの記録をご紹介いたしましょう。
 そこには純粋に、極めて純粋に自由と平等とそして誇りの為に命を捧げる人々の物語がございます。

 皆さんが生きる世の中には、正義の戦いに殉じる者が確実に存在したという事実から、何か勇気を授かれれば幸いですわ。
 
 『 マサチューセッツ州第54連隊 』 この名は人類が人類でありつづける限り、理想を追う夢をなくさない限り、
 決して風化させてはいけない 「 栄光の名 」 だと思いますわ。


 ※文中、差別的用語が登場いたしますが、当時の内容を正確に表現する為の演出ですので、ご了承下さい。
573上演中 ◆Sumire5vIA :2005/11/20(日) 00:50:54

 〜〜 黒人連隊 〜〜


 南北戦争が激化の一途を辿る1862年、アメリカ。 奴隷制度が存在し、有色人種の人間は個人(白人)の持ち物とされていた時代。

 
 北軍はある画期的な政策を打ち出した。 南部から脱走してきた黒人奴隷を集めて、兵隊として戦力に加えようというのです。
 考えてみれば、奴隷解放運動を掲げる北軍において、黒人の入隊を認めていないという事実は大いなる矛盾でした。

 そこで、マサチューセッツ州知事とボストン市長が中心になって、この問題に取り組むことになり、各方面で協力者を募り、
 議会を動かしてリンカーン大統領もこれを認めました。 但し、白人の連隊に黒人の入隊を認めるという訳ではなく、戦闘部隊が
 黒人のみで編成された連隊を創設するという歪なものでした。 また指揮官以下将校は全て白人と定められていましたが・・・

 ですが、このニュースは北部に脱走してきた黒人奴隷達に希望をもたらしました。
 
 「 自分達の為の戦いなのに、戦って死ぬのは白人ばかり。 黒人は自らの運命をただ他人に委ねているだけの卑怯者さ。 」
 
 そんな今までの無念さを晴らせるかもしれない。 そう志す黒人の若者が募集に殺到し、総勢700名の大型戦闘集団となりました。
574上演中 ◆Sumire5vIA :2005/11/20(日) 00:52:05

 マサチューセッツ州軍管轄で編成されたこの連隊は、第54連隊と命名され、指揮官には「 ロバート・クルード・ショー大佐 」 
 が任命されました。 
 
 白人の大富豪で、奴隷解放運動の先駆者としてこの連隊設立の提唱者でもある父を持つ彼は喜んで引き受けます。

 彼、ショー大佐はこの時24歳。 
 
 幼少の頃から家柄にこだわらず解放運動家の白人や黒人と交流を持ち、人権思想に深い知識と教養がありました。  
 
 また、ハーバード大学を中退してまで北軍に志願し、数々の実戦で戦勲を重ねるなど軍人としての実績も一流でした。

 そんな彼の人望が作用して、彼のもとには固い友情と揺るぎない信念を持つ、優れた白人将校が馳せ参じました。
 また志願した黒人兵の中には彼の事を知るものも多く、そのカリスマ性に導かれて兵のモチベーションはあがりました。

 
 ― 1863年1月。 リンカーン大統領はホワイトハウスで 「 奴隷解放宣言 」 の声明を全世界に向けて発表しました。
 
 そしてまさに同じその時、ボストン郊外の駐屯地では、ショー大佐は兵隊に対し、連隊設立の訓示を行っていたのです。


 「 俺達も何かできる。 俺達だって戦える 」

 「 ふてくされて寝ている奴隷 」 から 「 自由の為に命を賭ける戦士達 」 が誕生した瞬間です。
575上演中 ◆Sumire5vIA :2005/11/20(日) 00:52:41

 〜〜 雌伏 〜〜


 訓練がはじまりました。 ですが、54連隊は他の白人連隊に比べ、「 賃金・被服・居住施設・食事・装備 」 あらゆる待遇面で
 差別され、突撃訓練の段階になっても、銃はおろか靴すら支給されておらず、凍傷で足を痛めるものが続出しました。
 
 そんな状況にもかかわらず、戦闘訓練の内容は苛酷を極め、兵は生傷が絶えず、見る見るボロ雑巾のようになりました。
 
 ショー大佐は訓練が始まるとまるで別人のように厳しくなり、かっての友人にも情け容赦のない采配を振るいました。
 未熟なものは罵倒され、更に規律を乱したものには、奴隷農場と同じムチ打ちの刑罰を下したり・・・・

 そのあまりの厳しさに黒人だけでなく、白人将校もやりすぎだと疑問を感じたことさえあったそうです。

 「 なんて事だ。 これじゃあ農場のほうがマシだ。 まんまとだまされた。 結局あいつも『 白 』のひとりだったんだ。 」
 
 宿営地は夜になると、若い兵の後悔と傷の痛みによるすすり泣きが聞こえ、連隊には挫折感が広がって行きます。 ― しかし!

 3月のある日、非常呼集がかかって兵達が集合してみると、そこには新品の軍服、最新式のライフル銃、そしてぴかぴかの軍靴が
 並んでいました。 そして中央にはショー大佐の満面の笑顔。 彼が補給廠から、なかば強盗まがいのことをして確保した物資。
576上演中 ◆Sumire5vIA :2005/11/20(日) 00:53:21

 ― この時、黒人兵は彼の真意を理解し、そして自分達の甘えを恥じます。

 「 俺達に必要なのは・・・哀れみや同情からくるいたわりじゃない。 何かを成し遂げる為の力だったんだ! 」

 訓練は更に続きましたが、もうくじける者は出ませんでした。 どうせ何も出来ないと馬鹿にした世間を見返す為、
 来るべき戦いの日にこの身を捧げる為、そして勝利を掴む為、彼らは血を吐くような訓練に耐え抜き、精強な兵に成長して行きました。

 南軍が発表した 「 黒人兵とそれを助ける白人兵は家族もろとも全て死刑に処す 」 という脅しの声明文ですら、彼らの戦意を
 挫くどころか発奮させる材料にしかならないほど、士気は高くなっていったのです。

 6月4日、ボストンで行われた出征パレードには多くの黒人がつめかけ、自分達の名誉と誇りの象徴、希望の光である54連隊に
 盛大な拍手と声援を浴びせかけました。 

 連隊は颯爽と目的地であるサウスカロライナに進軍して行きました。 
 
577上演中 ◆Sumire5vIA :2005/11/20(日) 00:54:25


 〜〜 挫折 〜〜
 

 しかし、現地に到着した54連隊をまっていたのは途方もない挫折感でした。

 現地では既に即席の黒人兵集団が徴集されており、作戦に参加していたのです。
 
 しかし、その任務は略奪と暴行、焼き打ちと破壊活動、隠蔽物資の横流しやあまつさえ脱走奴隷の取り締まりなど軍の暗部、
 「 汚れ仕事 」を僅かな給金と食事目当てに喜んで行っており、54連隊が目指す自由の為の戦いなどどこにもありませんでした。

 ショー大佐は猛然と抗議しますが、司令部はまるで相手にしません。 北軍上層部にですら差別の根は深くはっており、黒人兵など
 自分達の私腹を肥やす 「 道具 」 にしか過ぎない。 そう考えていたのです。 

 「 財産集めに必要な猿を実戦に使うなんてもったいない。 」 「 名誉ある戦闘に黒人を出すなんて武門の恥だ。 」
 
 しかもあろうことか、リンカーン大統領までもが黒人兵の実戦参加を認めなかった為、54連隊はやむなく肉体労働に従事します。
 また、現地の白人、そして黒人の将兵からもあざけられ、誹謗中傷の言葉をたえずあびせられました。
 
 今まで様々な苦難を乗り越えてきた54連隊も、この時ばかりはさすがに落胆して嘆きました。

 「 こんなことをする為に厳しい訓練をしてきたはずじゃない。 やはり黒人は黒人なのか。 」

 そういってすねる兵士達に同じ黒人の下士官 ( 異例中の異例で認められた ) が檄をとばします。

 「 そうやって世を恨んで悪態をつくから差別がなくならないんだ! 『 その日 』 が来るまで毅然として辛抱しろ! 」
578上演中 ◆Sumire5vIA :2005/11/20(日) 00:55:53


 「 下士官連中が必死になって、士気の低下を防いでいるうちに何とかしなくては! 」

 ショー大佐以下白人将校はこの事態を打開するため、非常の措置をとります。
 
 司令部に出向き、様々な悪行の証拠をつきつけ、前線に出さないと、これを世間にバラすぞと脅迫します。
 また、従軍記者に54連隊の情報を積極的に流し、世論の批判を煽るように仕向けたりもしました。

 全米、いえ全世界が注目している54連隊が差別されたとあっては、南軍にも嗤われ、司令部の面目も丸つぶれです。

 慌てた軍司令官は、厄介払いをするように即日、チャールストン攻略戦に追求するよう命令書を発行しました。

 『 その日 』 がやってきました。 1863年、7月15日。 マサチューセッツ州第54連隊、出動!
 
579上演中 ◆Sumire5vIA :2005/11/20(日) 00:56:59


 〜〜 初陣 〜〜

 
 54連隊に下った任務は、南軍の大拠点、チャールストンの守りを固める、「 ワグナー要塞 」 の攻撃参加でしたが、
 その前に要塞攻略部隊の補給線を遮断しようと南軍が逆襲してきたので、その迎撃に当たることになりました。

 当初は79連隊、12連隊が戦いましたが、南軍はとても強く、散々に打ち破られて撤退することになり、その殿部隊として、
 後退するまでの時間稼ぎを担う作戦に54連隊は投入されたのです。 明らかに捨て駒でしたが、54連隊の将兵はそんな事など
 全く気にせず、やっと戦えるという喜びに意気軒昂でした。

 ― 7月16日の早朝。 迎撃位置に布陣した54連隊に、霧の中から敵の影が迫ります。
580上演中 ◆Sumire5vIA :2005/11/20(日) 00:58:26


 ― 戦いが始まりました。 

 南軍は予想よりも遥かに多勢で、圧倒的な戦力にものを言わせて攻め込んできました。

 ですが、54連隊は一歩も引きませんでした。 この日の為に、長く苦しい訓練に耐えてきたのですから。
 
 「 ここで逃げ出しては、なんにもならない。 俺達がどれほど出来るか、目にモノ見せてやる! 」 


 ― 強い。 本当に54連隊は強かった。 将兵は正に軍神の化身と化して戦いました。 ―
 
 特に高い身体能力を生かした白兵戦と、鮮やかに統率された隊列射撃は敵を圧倒し、その士気を削ぐほどでした。
 
 逞しい腕は敵を砕き、正確な射撃は突貫してくる馬を討つ。 数的に不利な局面でも、チームワークを生かした連携戦術で逆転する。
 怒号と硝煙渦巻く戦場の中で、54連隊は、ショー大佐の信念が、そして黒人兵の決意が正しかった事を証明していきました。

 彼らは自分達の3倍の兵力を持つ逆襲部隊を撃退するだけにとどまらず、翌17日未明には敵営地に夜襲をかけ、これを撃滅。
 この時、従軍した牧師の証言によると、54連隊の兵は一人で5人の南軍兵士を一分足らずでやっつけてしまうほどだったそうです。

 彼らは「 ワグナー要塞 」攻略の連絡線を確保すると共に、孤立していた友軍の救出にも成功したのです。

 
581上演中 ◆Sumire5vIA :2005/11/20(日) 00:59:58


 〜〜 要塞 〜〜


 南軍の一大拠点、チャールストンの防衛要衝、モーリソン島にそびえる「 ワグナー要塞 」。
 ここを抜けば、事実上南軍の生産能力は壊滅し、南北戦争は北軍が勝利して終結します。 正に決戦。

 しかし、この要塞の攻撃経路は極めて狭く、一度に一個連隊しか展開できません。
 この地形において、要塞を強襲で攻め落とすとなれば、損害を無視した波状攻撃しかありません。
 
 当然のことながら、先陣部隊には多数の犠牲が予想されます。 しかも進撃路は遮蔽物が何一つない砂浜。
 要塞にとりつくまでに砲火の雨嵐によって、袋叩きに遭うのは必定。 これはもう作戦というより暴挙に等しい。 

 作戦会議の席で苦悩する軍司令にショー大佐は進言します。 「 先陣の名誉をわが54連隊にお与え下さい 」

 その夜、明日の作戦内容を知らされた54連隊の将兵は神に感謝し、美しい黒人霊歌の調べが南部の星空に響き渡りました。

 「 ここには卑しいニガーは一人もいない。 みな、誇りある黒人戦士だ。 主よ、星よ、そのことを故郷の家族に伝えてほしい。 」

 6月18日夕刻。 薄暮攻撃に備えて夕日に波打つ浜辺の出発地点に、54連隊は整列します。

 負傷した兵も多くいましたが、後送を拒否し、志願してこの名誉ある戦いに臨みます。
582上演中 ◆Sumire5vIA :2005/11/20(日) 01:00:50


 ― その時、思いがけない出来事が起こりました。

 他の白人連隊の将兵や近郊の白人住民が大挙して押しかけてきたのです。 彼らは普段から54連隊を侮蔑していたので、
 また酷い野次でも飛ばしに来たのだろう。 と54連隊の将兵は暗い気持ちになりました。

 ですが! 彼らの口から出たのは、いやらしいダーティワードではなく、真に敬意のあるエールでした。

 「 ガンバレ! 」 「 やり遂げろ! 負けるな! 」 「 お前ら見直したぞ! 」 「 死なないで戻ってこい! 」

 生まれて初めて白人から喝采を受けた黒人兵は、黒くて凛々しい顔から真っ白い歯を除かせてそれに答えます。

 「 54連隊、攻撃、前進! 連隊旗、前へ〜! 」 ショー大佐の号令に従い、白人の作った花道を行進する将兵。 
 
 ― 堂々と前を向き、胸を張って行進する彼らの目指すものは自由。 そして平等。



 ※ この見事な行進の模様は銅版レリ−フにされて、現在でもマサチューセッツ州公舎前に展示されています。
  
  http://www.asagao.com/bic/gallery/image/54regiment.jpg

   
583上演中 ◆Sumire5vIA :2005/11/20(日) 01:02:36


 〜〜 昇天 〜〜
 

 「 突撃! ぜんしーん! 」 戦いの火蓋は切って落とされました。

 ですが、戦況は最初から劣勢で、死傷者が続出しました。
 何分、要塞内から大砲や曲射砲の雨が降りそそぎ、銃眼から狙い撃ちされるので、さしもの54連隊もなす術がありません。

 各員、気合で突破を試みますが、塹壕やバリケードにひっかかって一度前進が止まると、射撃の的にされるありさま。

 それでも何とか砂丘に取り付き、要塞直前で砲火を凌ぐ地点を確保したものの、こんどは進退極まってしまいました。
 そこでショー大佐は完全に日が落ちるのを待って、夜間攻撃を敢行しようと決意します。

 夜が来ました。 しかし、54連隊が布陣する砂丘に敵の全火力が照準を合わせているので、状況は悪くなる一方です。

 こうなったら決死の覚悟で突撃して戦局を打開するしかありません。 ですが、一体誰が先陣をきるというのでしょう?
 最初に飛び出た兵士は必ず集中砲火を浴びることとなり、いわばその生贄がかせぐ間隙を突く方法しか手がないというのに?

 喉が焦げるような焦燥感につつまれていく戦場。 その時、爽やかで轟々しい命令が飛びます。

 「 我に続け、54連隊! 」  何とショー大佐が剣を振りかざし、自ら立ち上がって突撃を開始したのです。
 
 次の瞬間、猛烈な射撃を浴びて、体中に銃弾を受けた大佐は、天に召されました。
  
584上演中 ◆Sumire5vIA :2005/11/20(日) 01:03:29

 それを見た連隊旗手がすかさず後に続きます。 「 皆、突っ込め! 」 彼は体を蜂の巣にされながら連隊旗を振ります。

 「 行け! 負けるな! 」 54連隊の闘志に火がつきました。 激しい銃弾の嵐の中、全員がいっせいに突撃を開始したのです。

 撃たれても焼かれても、ひたすら前進します。 銃眼を潰し、塀を乗り越え、壁をよじ登り、連隊の将兵はまさに一丸となって、
 熱く巨大な波のうねりのごとく敵軍に襲い掛かりました。 更に要塞内に突入した彼らは鬼神のように戦います。

 塹壕を飛び越え、砲台を叩き割り、立ちふさがる敵兵をなぎ倒し、駆けつける新手を撃ち倒し、要塞本塁に迫ります。
 
 彼らは苦しみも痛みも感じません。 彼らを熱くするのは自由へのあこがれ、差別への怒り、そして自らの誇り。
 




 ・・・・ですが・・・・・・・ここまででした。
 
 南軍は味方の犠牲を顧みない、無差別砲撃を要塞内に敢行するという非道な作戦を強行して、54連隊を殲滅しました。

 54連隊は死傷率90%、戦死率50%というアメリカ史上類をみない損害をだして文字通り全滅してしまいました。

 翌日、逆上した白人連隊の総攻撃も大失敗に終わり、北軍は敗北しました。
 これにより南北戦争が終結するには、更に二年の月日と膨大な犠牲者が必要となったのです。

 
585上演中 ◆Sumire5vIA :2005/11/20(日) 01:05:08

 〜〜 54連隊の魂 〜〜

 
 54連隊は敗れ去りましたが、果たして彼らは敗者だったのでしょうか?
 
 いいえ。 わたくしはそうは思いません。

 たしかに現代になっても黒人差別はなくなってませんし、社会的な法整備も順調とは言いがたいですわ。
 人によっては、この世では人種偏見の種など尽きることなどないとあきらめさえ覚えるかもしれません。

 だからといって、物事を斜に構え、穿った見方をしてどうなるというのでしょう?
 
 「 他人を妬み、世を恨み、生い立ちを呪い、社会に悪態をついて、無気力に生きて無為に時間を過ごす 」

 また、「 濁った目で物事を決めつけ、どうせお前らごときに何が出来る? 」 と過去の記憶と中身のない過信で生きる方々。

 双方にそんなひねくれた生き方で、一体何が変わると思われますか? あなた方は54連隊の活躍から何か学ぶべきですわ。

 「 互いに認め、尊厳のもとで共に進化する 」 これこそ理屈抜きで万物の霊長に定められた使命だとはお思いになりませんこと? 

 そりゃ、「 黒人連隊などプロパガンダにしかすぎない 」 とか 「 表面的に何も変わらないから無駄死に 」
 などと難癖つけることも簡単かもしれませんし、その理論的根拠もございますでしょう。

 ですが、ここに彼らが残した誰にも文句のつけようのない事実がございますわ。


 
586神崎すみれ ◆Sumire5vIA :2005/11/20(日) 01:08:48


 ・・・ワグナー要塞戦後、54連隊の活躍に刺激された黒人がいっせいに立ち上がり、18万人もの黒人連隊が組織され、
 北軍の南北戦争における決定的な勝因になったこと。

 ・・・54連隊の活躍が世界的に報道され、フランス、スペイン、チェコスロバキア、そして日本でも虐げられていた民に
 大いなる希望を与え、人権思想が活発化し、分国や法改正、革命や起業など多方面で影響を与えた事実。
 
 彼らは死んで何も残さなかったのではありません。 
 
 たとえ、結果が裏目に出たとしても決して腐らず、まっすぐ生きることの尊さを半世紀すぎた20世紀の今日でさえ、伝え続けているのですわ。 
 敗れたからといって、彼らを誰も馬鹿にはいたしません。 それこそが彼らの栄光であり、偉業ではないかしら?
 
 >201 >206 >26-28 さんだけでなく、他のみなさんも、何かを目指して立つことの意義を少しはご理解いただけましたでしょうか。
 
 これから、何か腐るような出来事に会った時、わたくし達のほかにも彼らのことを思い出し、自らの心の糧にすてみてはいかがかしら?


 〜〜 完 〜〜