七年間に渡る土の中での生き埋め生活も過去の話し、
ようやく味わうシャバの空気。いいねぇ。
ところはそうは問屋が卸さない。
宣告されたんだよ。
「お前の命はあと七日」
酷いぜおっかさん。
そもそもだ。
そういうのは本人…でなく本蝉に
告知していいもんなのか?
悪意はなかったにしてもなぁ。
悪いのは人間社会だ。
あの世界は情報が氾濫しすぎてるぞ。
指さして笑いながら言うなよそこの小学生。
だが、そんなことをいまさら世間に抗議しても
もはやどうにもならない所まで来ているわけで。
わかってるさ。これが俺の寿命なんだろ?
でもちょっと厳しいな。
世界一周リレーやるには俺が1ダースいなきゃならないのか……
4 :
ノ ̄ -・=- -・=- :::) :03/08/05 17:27
ジャイアンツ愛
…飛行機とやらに潜り込むことに成功すれば
地球の裏側にもいけるかも知れんな。
「空輸」。いい響きだねぇ。
俺の存在価値を高めてくれる良い言葉だ。
しかしまぁ現実を見ろ、と。
結局はこうなるわけだな。
世知辛い。世知辛すぎる。
自身の運命を呪わずにはいられない。
延命処置はできないのか?
命を延ばすことのできる薬品はないのか?
厚労省の認可が下りないからダメなのか?
そうか。俺には人権がないんだ……。
とりあえず空を飛んでみたりなんかしちゃったりして。
…この感触だ!
舞っておる! 舞っておるぞ!
ささやかな優越感じゃな。
そして爆弾投下。
俺のアンモニウム爆弾が周囲に展開する。
これでお前もスカトロ経験者だ。
それも昆虫スカトロのな……
今のところ俺の優位は代わらない。
……今のところはな。
そして無事に木に着陸。
華麗なアクロバットにすっかり御満悦。
そりゃ歓喜と勝利の雄叫びもあげるさ。
狂おしいほどに狂うのさ。
…で?
>1は留蔵
ジオンめ、一週間戦争で何億人死んだと思っているのだ。
で、我にかえる。
…いかんな。残りわずかなこの時間をこんな
スカトロプレイに費やすわけにはいかない。
もちろんターゲットを変更していけばそこそこ
楽しめるのであろうが……。
とりあえず小学生はもういい。
興味本位で俺達を捕獲するな。
こっちは命かかってんだぞ。いやマジで。
それでなくても彼らにはウンザリする。
俺たちをみるや否や、素っ頓狂な声をあげ
近づいてくる。顔には満面の笑み。
不気味といったらありゃしない。
マジで怖いぜ。
お前らは蝉さらいか?
俺に触るなよ。
初対面だぞ?
挨拶もせず、許可も得ずにいきなりソフトタッチと
きたもんだ。身体の節々が痛いんだよ。
とりあえず死の宣告は受け入れてやるから
そっとしておいてくれって感じ。これが本音。
彼らに捕獲された他の仲間達の中には、心ある者達の
手によって無事逃がされた者もいるという。
それ以外の者は…心ない者達によって文字通り飼い殺し。
飼われる上に殺される。
直接的に殺されることもあれば間接的に殺されることも
あるとかないとかウンタラカンタラ。
いやはや、怖いねぇ……。
結論。
捕まったら殺される。
捕まったら殺される。
捕まったら殺される。
捕まったら殺される。
捕まったら殺される。
……そう、捕まったら殺されるんだ。
かなりの高確率で。
そりゃ、必死になるさ。
必死にならざるを得ない。
生きるのに必死なんだ。
そう遠くない日に、確実に死ぬことが
わかっているだけに尚更な。
また生きられるってのに無用に捕まってたまるか。
俺には自殺願望などない。
で、生きることを選択したわけで。
これから余生の過ごし方を模索するわけだが…。
しかし、もう余生かよ、あっという間だったな……。
というか土の中にいる時間が長すぎたな。
後悔先に立たず。こればっかりはしょうがない。
与えられたリミットは一週間。
せいぜい有意義に過ごさなければ……
ん? なにをすれば有意義になるんだ?
そこがよくわからない。
なんか思い出を作ればいいのか?
実際の所、適当にフラフラしてたらあっという間に
一週間、それではララバイ現世。
ってな感じになるのがオチってもんだ。
理想を追い求めるのは簡単だが、実現するのは楽じゃない。
そもそも何が理想なのかも分かっていない状態だしな。
考えても考えてもわからんな。
ま、所詮俺の頭じゃこの程度だろう。
ただ一つ、確実にいえることがある。
それは自分が「生きているということを感じる」ことだ。
簡単なようでこれがなかなか難しい。
生を実感することによって死を現実のものとする。
おお、なんか我ながらカッコいいぞ。
つまり普通に生きよう、と。
それでいいじゃないか。
この世に生を受けてきたことを存分に噛みしめ
宙を舞い、小学生に放尿プレイをし、夏を演出する。
特別なことはする必要がない。
変になんかやると捕まって羽を毟られるのが関の山だ。
でも、せめて二週間くらいあったらなぁ。
それなりの予定も立てられるってのに。
無念ではないが残念だ。
で、こんなときに限って夕立ときたもんですよ。
これじゃ、お空を飛べないじゃない!
全くついてない蝉生だ。
つか、これから一週間毎日雨だった日にゃあ……
しかし俺に何ができる?
できることといえば快晴を祈ることくらいしか…。
テルテル坊主の奴も可哀想に。
なんも悪いことしていないってのに吊るされてやがる。
奴の首には紐が巻きつけられている。
実に残酷。おそらく首の骨はもう折れていることだろう。
…生贄か。
縁起でもない。
だが、明日の天気の犠牲となっているテルテル坊主の奴を
見て俺は他人事とは思えん所がこわい。
「俺もいつか吊るされてしまうのか?」
明日は晴れますように!
って祈りの代償としてでも嫌なのに、そこら辺の
好奇心旺盛な人間の子供達の玩具として吊るされる
可能性の方が高そうな気がするのがまったくけしからん。
緊縛は嫌だ…………
雷鳴が轟いている。
なんてこったい。
ショバ一日目でこれかよ。
明日の快晴を祈るより雷に撃たれないように
祈った方が良さそうだ。
俺の命はこの木に委ねられている……
七日間の命か、一日だけの命か。
さて、どっちだ?
32 :
以上、自作自演でした。:03/08/05 18:57
オナニーしてんじゃねーよ留蔵
33 :
キャプテンサワダ:03/08/05 20:42
…降り注ぐ雨音だけが聞こえる。
雷が消えた。…救われたぞ。助かったぞ。
これで少なくとも雷に撃たれて死亡などという
不名誉な事態は避けることができたわけで、いやぁ
よかったよかった。
あとは動物等に捕まらないように注意するだけだ。
特に人間……まぁ、夜なので過度の心配はいらないと思うが。
油断は禁物。
気の緩みは死を招く。
日も暮れているとはいえ、人間達の姿が完全に消えた
わけではない。現にこの時間になっても人間どもの姿を
見かける。
我々にとっての安息の地というのはもはや
存在しないのだろうか?
生きて辱めを受けず。
生きるか死ぬか。二つに一つ。
シャバ一日目からサバイバル気分ですわ。
それもリミットつきの。
もう嫌こんな蝉生。
……なんてことも言ってられない。
恨むなら親を恨め、と。
だが、俺は親の顔を知らない。
名も顔も知らない親のことをどうやったら
恨むことができる?
38 :
キャプテンサワダ:03/08/06 00:42
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生ぬるい空気の中に時折吹く
涼しげな風がなんとも心地良い。
夏を感じる。
今年は梅雨明けというのが遅かったようだ。
すでに8月。気温はここ数日の間に一気に
上昇したらしい。
それはともかく……
前日までの雨が嘘のように消えた。
……晴れてよかった。
周囲を散策する。
この辺りには人間社会の最たる部分。
草木や緑林の姿はなく、人工的な建物が
至る所に立ち並んでいる。
そしてそれを包み込んでいる空気は薄汚れている。
空気が悪い。
自然の息吹が感じられない。
なんということだ。
さらに周囲を散策途中、仲間に遭遇。
が、その仲間にはすでに死の現実が
近づいている最中であった。
数人の人間の子供たちに蹂躙されていく
仲間の姿がそこにはあった。
手足をもがれ、腹を裂かれ、羽を毟られていく。
彼はまさに、「虫の息」。
助けたい。助けたのは山々なのだが、今俺が
出て行った所で一体何ができる?
人間に勝てるわけがない。
放尿攻撃などたかが知れている。
逆に人間の放尿攻撃を喰らって絶命するかも知れない。
結果、人間の暇潰しの時間が少し増え、虫の息を
する者がもう一匹増えるだけだ。
無駄だ。
もう奴は助からない。
そう思った俺はその場を撤収。
……すまん。
俺は浦島太郎にはなれそうもない…
骸ももはや朽果てた。
一週間というその距離、どこまで
踏みとどまらせることができる?
生き延びられた。ああ、今日も生き延びられた。
弱肉強食食物連鎖。受難に満ちた日はまだまだ続く。
ああ最上川。天上天下唯我独尊。
しかしなんとまあ、人間の多いことか。
もっと人間のいない地方で生まれたかった。
こう、なんというか田舎の地方都市みたいな所で
駅前はそれなりに賑わっているが少し歩けば畑と林の
オンパレード。ベジタリアン大喜び。
都会暮らしは煙が目に染み過ぎる。
公害は嫌だ。郊外がいい。
かといって自力で長距離移動は何気にデンジャラス。
戻れない進めない。八方塞だ。
原爆記念日か…
死んだ人間を弔ってもらえるなんて
羨ましいやらなんとやら……。
こっちは血塗れの松竹梅だ。
ブラッディ松竹梅。
梅は鳥や土竜などメインデッシュ。
食物連鎖の一因を担っているという点で俺たちは
ささやかながらに貢献している。
正直食われるのは癪だが、自然の摂理だ。
それなり諦めもつこう。
竹は生きたまま生体解剖…という名の実験台。
いくら人間界で理系離れが進んでいるからといって
この仕打ちはあんまりじゃないですか、いやどうしたって
あんまりじゃないですか?
生きたまま体の隅々を興味本位で調べられ、傷物にされ…。
麻酔なんてしゃれたオプションなぞ皆無。せめて手の
消毒くらいしてくれよと思ったり思わなかったり。
そして最後はポイ捨てときたもんですよ。
そして見世物小屋の松コース。
内臓を抜かれ、杭で腹を一刺し。
標本という名の死体晒し。
これは見せしめとしては最強だ。
もちろんその前にはあんなことやこんなことなど
もう盛り沢山。
で、見られるわけですよ。
紳士淑女達に。
舐めまわすような目付きで。
捏ね繰りまわすような目付きで。
そして商取引。
売られるわけですよ。
蝉身売買。ああ怖い。
俺の死体には価値がある。
だが、そんなことに喜んでなどいられない。
俺が死んだ所で鎮魂歌など流れはしない。
ましてや記念式典など開かれるはずがあろうか?
いや、ない。
これが人間と蝉の「差」という奴なのか……
55 :
しかばね ◆XI07YcMpS6 :03/08/07 15:36
ジリジリジリジリ……
真夏の太陽が容赦なく俺を照りつける。
灼熱と呼ぶほどではないが、それなりに暑い。
だが、これが夏なのだ。
暑い空気。
それを身体全体で感じ、俺の羽根が震える。
そうだ。
確かに俺はここに存在している。
今日も仲間が骸になっている。
雀に食い散からされた死骸。
はたして奴の蝉生は幸福だったのだろうか?
……いいや、考えるのはやめよう。
それは死ぬ間際の奴本蝉だけが
知っていることなのだから。
今日も今日とて鳴きまくる。
いわゆる今風の言葉でいうと「ガールハント」、
つまりナンパである。
なぜナンパをするか?
それは交尾をするためだ。
そう、まぐわいしたいのだ。シッポリとな。
交尾したいのにはもちろん理由がある。
種の本能…というべきだろうか。
「子孫を残す」
もしかしたら、これは俺が生まれてきた理由の
一つなのかもしれない。
いや、確実にそうだな。
まぁこれは、俺たち蝉に限らずすべての生物に
共通して言えることだろう。
蝉として生を受け、七年間の雌伏の時を過ごし、
無事成虫になったからには、新たなる生命を
生み出す資格が与えられる。
それは俺一匹ではできないことだ。
雌蝉がいなくては雌蝉と交尾をしなくては
新しい生命は誕生できない。
雄蝉+雌蝉=新しい生命
本能が種の保存、交尾を求めている。
これは別にやましいことでもなんでもない。
性欲ではないんだ。
種の繁栄のため、そう、崇高な理念の下に
基づいて行われる聖なる儀式なんだ。
だから別に恥ずかしがることなど何もない。
エロ蝉、好色蝉、セクハラ蝉、和田蝉。
その呼称にはすべてにおいて否定しよう。
だが、なんの断りもなくいきなり雌蝉に
襲いかかり、交尾をするのは危険だ。
それこそ「ケダモノ!」と罵られる。
第一、十中八九逃げられる。
仮に、限りなく強姦に近い交尾がもしうまく
いったとしても、その雌蝉がすでに手付き済み
だった場合も考えられる。そうなったら大変だ。
コンクリートに埋められる心配はないだろうが、
土の中に埋められる心配は大いにある。
幼虫時ならまだしも、この状態での生き埋めは
かなりきつい。
美人局に引っかかった奴の中には住居を
土竜の胃袋に引っ越した者もいるらしい。
……つまり、狙うなら処女を狙え、と。
………………。
(・∀・)!
まあそんな冗談はさておくとして、やはり
一番確実なのは地道に鳴き声で雌蝉の気を惹き、
彼女から交尾の同意を得ることだ。
どうせすぐ死ぬんだからいいじゃないかという
考えよりも、限りある命の中で確実に種の保存を
達成できる方法を選ぶ。
俺って堅実派。
雌蝉をナンパする方法、それは鳴くことだ。
この華麗なる美声を駆使して雌蝉をひきつけ、
交尾に持ち込む。
まあぶっちゃけ言うと俺達の鳴き声は雌蝉に対しての
「交尾させてくれ(交尾させてください)」
の必死の叫びでありメッセージであり嘆願なわけだ。
人間でもいるだろう?
「三万でどうかな?」
アレみたいなものだ。
尤も、人間にとっては性欲、俺らにとっては
種の保存。理念は違うがな。
で、鳴いてみたりする。
…………。
現実は得てしてうまくいものだ。
俺「かぁーのじょー! 俺と交尾しない?」
雌蝉「キモい! キモい! あなたキモい!」
やはりここでもイケ蝉の天下は変わらない。
深刻な嫁不足に陥っているのはどういうわけだ?
俺「お願いです。交尾させてください」
雌蝉「キモい! キモい! あなたキモい!」
……卑屈になっても駄目みたいだ。
別に下心なんかないっていうのに…
しかし何故だろう?
俺が鳴くと寄ってくるのは雌蝉ではなく
人間、それも年端もいかない子供たちばかりだ。
雌蝉寄ってくる → ナンパ成功 → 交尾交渉 → 交尾 → 御満悦
人間の子供寄ってくる → 身の危険 → 拷問ごっこ → 俺の一生は俺の一生は俺の一生は……
雨、太陽、雨、太陽、雨。
こう頻繁に天気を変えられては安心して外を
飛び回るわけにも行かない。参ったものだ。
それにしても……シャバに出て四日目だというのに、
なんなんだこの体たらくは。
まったく成果が上がっていない。
このままでは本当に何のために生まれてきたのか
わからなくなってしまう。
とはいっても……どうしようもないわけで。
雄蝉は居れども雌蝉は居らず。
最近は結婚しない若者が増えているのか?
交尾くらいするだろうに。
やはり雄雌の比率が極端なのだろうか、この地では。
んなことを考えている間に夜になってしまった。
闇夜の中、生い茂る葉すらも影としてに取り込む
巨大な大木の懐にその身を隠し、今日もひたすら汁をすする。
やっぱり木の汁はいいねぇ。
俺は生まれてからずっとベジタリアン。
…雑草は好かんが。
蚊の奴が飛んでいやがる。
呑気なもんだ。
通りすがりの人間の血を吸ってすっかり
御満悦らしい。
確かに人間の多いこの地では蚊の奴は
食事には困らないだろう。
……まったく羨ましい。
怨み辛み妬み嫉み僻み……
せいぜい煙に巻かれて死ぬがいいさ。
平手打ちで圧死でもかまわん。
というか他虫の死を願っている場合
ではなかったな。
自分の死の方が早そうなのが何ともいえず
複雑な気分であったりそうでなかったり。
nanka naketekuruna.
gangareyo..Semi
深夜の真夏。
さすがにこの時間になると外気も相当低くなってくる。
冷えた空気、冷たい風が熱気でしなだれた俺の羽根を
存分に覚ましてくれる。
……いささか風が強いな。
まぁ、この程度の風なら俺が飛行する上では
何の支障もない。台風でも来れば話は別だが…
仲間から深夜のセッションに誘われた。
しかし、断わることにする。
確かに深夜のライブは魅力的だ。
それもオールナイトと来れば尚更だ。
うまくいけば、ライブを楽しみにくるオーディエンスの
雌蝉達の出待ちを受けキャーキャーと悲鳴をあげられ、
あわよくば交尾にまで持ち込めるかもしれない。
……やっぱり参加すればよかったかな?
くそう……
後悔先に立たず。
これでまた交尾のチャンスを逃した。
なんで断わったんだろう?
…どうも自分は焦っているような気がしてならない。
自分の余命が尽きるのが近いということを無意識の
内に感じているから?
まさか。そんなことはわかりきっていることだ。
…そう、わかりきっていることなんだ。
焦ってもいいことは何もない。
焦りは余裕を無くし、失敗を生むだけだ。
…落ち着くんだ俺。
交尾のチャンスはまだある。
夏は開放的な季節。
一夏のアバンチュールを求めて
ということもきっとある…筈だ。多分。
時を待とう。
待ちすぎない程度に。
風の音色が俺の心をくすぐっていく。
静けさや 岩にしみいる 蝉の声
うーん、松尾芭蕉はいい仕事をしたな。
人間界の中で俺らのことを俳句として詠ってくれた
彼に俺は敬意を表したいと思う。
やっぱ昔の人間はわかっているな。
最近の人間の歌は俺達のことなんかまったく
構っちゃくれない。
こんなに風流で情緒豊かだってのに。
この鳴き声、この羽音、季節感を存分に表現する
のにいい素材がそろっていると言うのに。
まったくフ・ザ・ケ・チ・マ・ウ・ゼ。
噂ではどこぞの人間が「カブトムシ」なんて
いう歌を歌ったとかいないとか。
それだけじゃあない。
海外ではカブトムシの名前をかんした楽団が
いるそうじゃないか。
……なんだこの扱いの違いは?
待遇格差もここまでくると酷いもんだな。
昆虫といやぁカブトムシか? クワガタか?
この俺達の存在は無視ですかマスコミの皆さん?
もっとメディアに取り上げてくれよ。
この俺の鳴き声を聞いたら夏の始まりなんだ。
俺は夏の生字引みたいなものなんだぜ?
…と、夏らしくつい熱くなってしまったが、
あまり認知されすぎるのも考え物だな。
有名になりすぎることによるデメリット。
それこそ人間に捕らえられ、殺される
可能性が高くなるだけだ。
周りを見てみるがいい。
繰り返される道路工事やマンション建設。
生まれて間もない俺の後輩たちは成虫に
なることもできずに何百匹何千匹と殺されている。
成虫になっても人間達の魔手が絶えることは無い。
興味本位で殺され、解剖され、晒され、剥製にされる。
俺達は常に死と隣りあわせなんだ。
この地球を破壊しようとする人間がいる限り、
今後もそれが変わることはないだろう。
だが、そんな世の中でも俺たちは生き抜いて
いかなければならない。
この短い命が続いている限り。
まったくついていない。
俺がシャバに出てから、何故か不安定な
天気が続いている。
太陽が昇っているかと思えば突然の夕立。
薄暗い空、汚れた雲が空一面に広がっている。
……もしかして俺は雨蝉なのか?
もし、もし俺がこの世からいなくなった後、
まるで狙っていたかのように天候が回復
し始めたら…俺は雨蝉ということになる。
残念ながら俺はそれを知ることができない。
…まぁ、せめて俺が生きているうちに拝みたいものだな。
澄み切った青い空を。
燦々と照りつける太陽の光を。
それにしても…この風はかなり堪えるな。
台風が近づいているのか?
まったくこんな時に限って……。
飛ばされないように木にしがみつくので精一杯だ。
おまけにこの豪雨。
雨水が容赦なく気に降り注ぐ。
この状況で離陸したら確実に事故るな…。
おそらく、俺の身体は強風に吹き飛ばされ、
人間が造った壁や地面に叩きつけられるに違いない。
奴らの造った壁や地面はとても固い。
俺なんかひとたまりもないだろう。
体中が粉砕されるのが容易に想像できる。
飛ばされたら死ぬ…かも。
……いや、まだ死ぬわけにはいかない。
そうだ、交尾もせずに死んでたまるか。
飛ばされてたまるか!
飛ばされてたまるか!
飛ばされてたまるか!
94 :
しかばね ◆XI07YcMpS6 :03/08/09 18:27
風と雨が俺の体力をかなり奪っていった…
改めて感じる。
自然の厳しさ、怖さという奴を。
こんなこと、土の中でぬくぬくと
過ごしていた時には決して味わうことが
できなかった。
ま、あの時は自然よりも人間の所業の
方に恐怖の矛先を向けていたからなぁ…。
自然はあまりにも大きく、強大で、
それでいて容赦がない。
この「気を抜いたら自然に飲み込まれる」状況。
自然の中で生きることは難しい。
そして厳しい。
たかが交尾目的の蝉生だってのに……
依然として風は強いが雨は止んだみたいだ。
ともかくこれで吹き飛ばされる心配は
なくなったので一安心。
この時間帯は暑からず寒からず。
なんとも言えない。
不満があるとすれば、日光がないことくらいか?
人工的な光は身体に悪いぜよ。
外灯にたむろう奴らの気が知れん。
仲間の吉沼(仮)に会う。
奴は…清々しく、憎たらしいほど
の笑顔を見せている。
だが、奴がそんな顔をしている理由は
聞いたら納得。
俺の顔を見るなり開口一番、
「オレさぁ…昨日、キめたぜ」
…………。マジかよ。
…そうか。こいつは昨日の夜、
とうとう交尾をしたのか。
……。
先を越された。少し複雑な気分だ。
いや、別に悔しくはない。
悔しくなんかないんだ……
ブルーになっていた俺だが、ふとあることに気づく。
「おい…お前…大丈夫か? 顔色が悪いぞ?」
吉沼(仮)の土色の顔はやつれているように見えた。
「大丈夫さ」
吉沼(仮)は力なく笑う。
心なしか、俺はその笑顔に陰りを見た気がした。
……ああ、そうだ。俺達の目的は交尾をして
種の保存をすること。そして、吉沼(仮)は
その役目を立派に果たしたというわけだ。
だが、無事交尾を成し遂げた蝉を待ち受けるのは……死……
自らの死期を早めた吉沼(仮)は、その日の夜、
静かに息を引き取っていった。
交尾をしなくても成虫としての寿命は七日間。
だが、交尾をすることによって死が早まる。
種の保存行為である交尾。
でも、それをしたら力尽き死んでしまう。
…俺達は何のために生きているんだ?
ただ死ぬためにか?
新しい命の創造することへの代償?
……わからない。
そりゃあ交尾はしたいさ。
もちろんエロ目的ではなく種の保存の為にな。
でも、交尾をして自分の死期を早めるのも
なんか釈然としない。
…できれば、もう少しシャバの空気を吸っていたい。
今はそう思っている。
…なんか言い訳っぽいだな。
交尾もできないくせに我ながらよく言うよ。
まあ交尾をするにしろしないにしろ、
俺らを待ち受けているのは確実な
「死」なんだよなぁ。
……俺は何のために生きているんだろう?
俺の存在意義って一体なんなんだ?
自問自答。
されど答えは出ず。
近くで大規模な狩りが行われた。
「狩り」。俺達にとって恐怖の「虫さらい」のことだ。
虫さらい達はその多くが人間の子供達だ。
今回の虫さらいグループは4〜5名。
すでに被害者は数十匹にものぼっている。
…くそっ、だから土曜の夜には注意しろと
あれほど言ったのに…!
彼らは俺達の住処へ土足で上がりこみ、
有無を言わさず仲間をさらっていった。
さらわれた仲間達の行方?
……それは俺にもわからない。だが、彼らが
ここに帰ってくることはもうないかも知れない。
仲間たちは人間に捕まるや否や、籠の
ような物に入れられてしまった。
おそらく、生きているうちにあの籠のような物
から外に出ることはもうできないだろう。
残念だが、俺にはどうすることもできない。
「助けてくれ!」
「頼む! ここから出してくれ! お願いだ!」
仲間達の泣き声が空しく響く。
俺はそれを黙って聞くことしかできなかった。
ちょっと安心するといつもこうだ。
人間達はすぐ俺達の楽園を破壊しにやってくる。
…ここももう安全な場所ではないのかも知れない。
俺達が安心して暮らすことのできる場所は
あるのだろうか?
俺の寿命もあと二日だ。
もう二日…いや、まだ二日も残っている。
人間に捕まって終わる一生なんて真っ平だ。
俺の蝉生だ。俺の限られた一生をそんなことで
無駄にしたくはない……。
昨日までの風雨が嘘のようだ。
すばらしい。
爽やかな日曜。
イッツァビューティフルディ!
イェイ!イェイ!イェェイ……
歓喜の雄叫びをあげるほど俺は機嫌が良い。
突き刺すような太陽。どこまでも広がる青い空。
おお、見てみろ。入道雲まで出ているじゃあないか。
これぞ夏。日本の夏。サマー。
土の中で生活していた時には経験できなかった外界の感触。
何もかもが新鮮に見える。感無量。
やはりシャバに出てきてよかった。
今日は雌蝉に対して手当たり次第に声を掛けることにする。
下手な鉄砲も数撃ちゃ当たるって奴だ。
正直、交尾をして死ぬのは複雑な気分だが、それも
一日の違いだけだ。あまり深く考えるのはよそう。
俺は俺が成虫としてやらなければならないことをするだけだ。
一晩経ったせいか、何かがふっ切れたみたいだ。
どうせ泣いても笑っても俺の命はあと二日だ。
何を今更躊躇うことがある?
残り僅かな時間を存分に生きたいだけさ。
よーし、やるぜ!
目指せ交尾!
…と、思っていたのだが…………
……………世の中は甘くない。
ああ、もう嫌だ。こんな蝉生。
下手な鉄砲は…下手な鉄砲のままだった。
とんだ不良品だぜ。
…いや、俺の腕が悪いってことか?
……。
俺「君の瞳に乾杯……」
雌蝉「キモい! キモい! あなたキモい!」
……ハンフリー・ボガートは嫌いなのか?
そうなのか?
俺「『誠意』をもって君と交尾がしたい」
雌蝉「キモい! キモい! あなたキモい!」
……俺のアレがビッグサンダーマウンテンじゃないからか?
そうなのか?
俺「ファッキンライト! テンキュー!」
雌蝉「キモい! キモい! あなたキモい!」
……俺がカート・コバーンの生まれ変わりじゃないからか?
そうなのか?
俺「僕は死にましぇん! あなたが好きだから…!」
雌蝉「キモい! キモい! あなたキモい!」
……俺もそう思う。
まったくなんということだ!
こんなにやってもダメだなんて!
………やばすぎるぞ俺。
俺にはナンパの才能がないのが?
…と、いうよりも俺からはフェロモンが出ていない?
一族は俺の代で終わり?
このまま死んだら独身貴族を楽しみすぎて
婚期を逃したみたいで笑えんぞ。マジで。
「蝉 島耕作」みたいになるのが夢だったのに…
123 :
しかばね ◆XI07YcMpS6 :03/08/11 00:23
このスレ、セミが死んだらその後はどうするんだ?
125 :
セミのぬけがら:03/08/11 13:18
…穏やかな天気だ。
七日前、シャバに出てきた時と何一つ
変わってないように見える。
…自分でも不思議なほどに落ち着いている。
何故だろうな? 俺にも分からない。
このまま交尾できずに寿命がきちまうみたいだな。
…残念だがそれも仕方がない。
ま、考えようによっては気楽かも知れない。
残された遺族に残す財産も遺産を相続する奴もいない。
気ままな独身貴族を謳歌したおかげで
一族による骨肉の争いとも無縁だしな。
ともかく俺の一族は俺の代で終焉だ。
配偶者もいない。子供もいない。
ま、一応それなりに努力もしたんだが、
どうやらその努力は実らなかったみたいだ。
それもいいだろう。
俺が死んだ所で、何も影響はない。
そして何も変わることはない。
世の中はいつも通りに動きつづけるだけだ。
…さて、と。
とりあえず御近所に挨拶でもしておくか。
こういうことは前もって言っておかないと
都会の片隅で独り暮しの老人が孤独死する
みたいになっちまうからな。
故蝉になってから変に噂されるのもなんか嫌だしな。
木の汁をたっぷり詰め込んだ菓子折りを
手土産に御近所周り。
御近所付き合いは大切に。
人間が来たときとかすぐ知らせてくれたりもするからな。
沈む夕日。
この太陽を拝むのもこれで最後だ。
あばよ太陽。
お前は俺が死んだことにも気づかず、明日になれば
また元気にその姿をさらけ出すんだろうな。
…俺よりもずっと長生きなんだな。
お前の命の果てはいつ訪れる?
……隣の木に抜け殻が。
誰かが成虫になったのか?
…そうだな。
シャバからオサラバする俺みたいな奴もいれば、
新しくシャバに飛び出していく奴もいるだろうな。
きっと嬉しくて周りを飛び回っているんだろうな。
外の世界は何もかもが新鮮に映っていることだろう。
無理もない。
ずっと土の中だったからな……
……同種として健闘を祈ってるぜ。
「よい交尾」を。
すっかり日も暮れたな。
この闇夜とももうすぐオサラバか。
しかし、自分で言うのもなんだが、なんとも
奇妙な一生だったな。
土の中での七年、土の外での七日…。
そして土の外で結局、交尾もできずに
死んでいく哀れな蝉生ってわけだ。
正直なところ、後悔がまったくないといったら嘘になる。
でも、俺はそれでもいいと思っている。
後悔のない蝉生なんてあるわけがない。
この世への未練? そんなものはもうない。
俺は自分の蝉生に満足している。
蝉という種が誕生して何百年、何千年という長い間、
多くの仲間達が生まれ、そして死んでいった。
俺もその中の一匹になるだけだ。
人間は俺らを指さしていう。
「儚い命だ」と。
…儚い、か。確かにそうかもな。
だが、その儚い命、短い時間の中で
俺は懸命に生き、生きることの喜び、
生きることの楽しみ、生きることの悲しみ
を味わった。
それは、とても貴重で価値ある
体験だったと思っている。
怒り?
…俺の中にはそんなものなどない。
なにを怒ることがある?
己の生命の短さをか?
…それが俺の定めだったんだよ。
そう、生まれた時からの定めさ。
俺は土の中で七年間過ごしてきた。
そして外に出て七日間過ごした。
七年。
言葉にすれば容易いがそれはとても長い期間だった。
確かに外の七日間という時間だけを見れば短い。
だが、それまでの期間は欠伸をするだけでは
物足りないくらいに長い。
思えば、土の中で養分を摂取するだけの蝉生も
なかなかのものだったな。
そして意味のあることだった。
すぐそこに死を感じているからだろうか、
俺には「充分に生きた」という実感がある。
七年と七日の蝉生。それも悪くない。
まあ80年90年も生きる人間などには永遠に
わからないかも知れないだろうがね。
人間に捕まって殺される死。
交尾をして力尽きた末の死。
スズメバチや土竜などに食い殺される死。
自然の災害などに取り込まれる死。
どれも死ぬことに変わりはない。
だが、上でいう死とは大きな違いが一つだけある。
今、俺は自分がどこで死ぬか選べるってことだ。
それはとても幸福なことだと思っているよ。
…もう、いいだろう。
………………。
………俺も蝉だ。
この時がくることは覚悟していた。
そう、覚悟はしていた…。
だが……
……やはり怖い。
死ぬのが怖い…、消えてなくなるのが怖い…
…………。
…我ながら情けないな。
この期に及んで怖気づくなんて…。
…落ち着こう。
何もかも考えるのをやめよう。
そうだ、考えなきゃいいんだ。
考えなければ怖くなんかない…
…時間が流れるのを静かに待つことだけに専念しよう……
…時間がたったせいだろうか、
少し気分を和らげることができだ。
なんだかんだ言ってても実際に死を
受け入れるのには勇気がいる。
口では偉そうなことを言いながら、俺にはまだ
その本当の覚悟とやらがなかったのかもしれない。
…でも、もうその覚悟も必要ない。
だってしょうがないだろう?
準備中の看板を無視してズケズケと店内に
入ってこられちゃな……。
…………。
ロスタイム終了、これでゲームセット、か。
俺は…、土に還る…………
……………………
152 :
セミのしかばね ◆XI07YcMpS6 :03/08/13 15:15
>152
禿藁た
(⌒V⌒)
│ ^ ^ │<これからも僕を応援して下さいね(^^)。
⊂| |つ
(_)(_) 山崎パン
155 :
以上、自作自演でした。:03/08/24 19:32
age
156 :
以上、自作自演でした。:03/09/05 08:20
ほしゅ
3日間だけ、黄泉がえって本懐を遂げてください
元気?
夏は終わり
季節は巡る
そして最後のレスは俺が付けるのだった
161 :
以上、自作自演でした。:03/10/07 06:58
ソウハイカンザキ
駄スレあげんなよ・・・
uo
そして最後のレスは俺が付けるのだった