吸血大殲 25章『Memory Of MoonBlood』

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6吾妻玲二 ◆REIJI2xI
  
『意思、果つる者の躯』 導入
 
 エレンはサイスを庇って俺の銃口の前に身を晒した。
 キャルはあのロフトで爆炎に身を焼かれて死んだだろう。
 今、俺の胸に有るのは復讐の炎のみ、インフェルノの首領であるマグワイアを
 追い詰め、彼が逃げ込んだ先は得体の知れない朽ちかけた地下道だった。
 
「古い坑道か何かか?」
 
 いやそれにしてもおかしい……。
 坑道に付き物の搬出用のレールと言った類の物が全く無い。
 そして無秩序に分岐するそれは迷宮と言うに相応しいものだった。
 
 ――――― ピチャリ ―――――。  
 
 不意に側道から水音が聞こえ、咄嗟にH&K、MP5サブマシンガンを構える。
 見覚えの有る服装の男、マグワイア? いや……。
 
 その男の顔には既に生気は無く、空ろに開けられた目と口は恐怖の表情のまま
 凍り付いている。
 
「替え玉か…… チィ、やられたな…… しかし一体誰が……?」
 
 死体に気を取られた瞬間、疾風が走る。
 身をかわした瞬間、首の有った場所を刃が通り抜ける。
 
 MP5で二連射! 
 
 セレクタポジションは3点バースト、9mmパラベラムの連射音が鳴り響く。
 地下道の闇をマズルフラッシュが焼き、敵の姿をくっきりと浮かび上がらせた。
 
 ローブに身を包み顔を隠したその姿は、忍者!?
 
 奴は恐るべき速度で銃弾を掻い潜ると、短刀の一撃を繰り出してくる!
 
 ――――― ギンッ! ―――――。  
 
 MP5の機関部に刃が命中し火花を散らす。
 奴の鳩尾に膝蹴りを叩き込む。
 体勢を崩した奴にとどめとばかりMP5の銃弾を叩き込んだ。
 血飛沫をあげて崩れ落ちる奴……。
 だがそれとは違う予期せぬ方向から叫び声が上がる。
 
「ナニィッ!?」
 
 襲い掛かる影はすぐ隣の、死んだ筈の替え玉の男、
 MP5を発砲! 銃弾は男の右胸と肩口をとらえ、確実にその肉を引き裂いた。
 しかし男は止まらず右手の鋭い鉤爪でMP5を叩き落した。
 
「伏せて!」
 
 横合いからの声に咄嗟に身を低くする。
 そして聞きなれた.45ACP弾の射撃音、男の体に着弾したそれは十字の閃光を放ち
 絶叫と共に男の体は炎に包まれる。
 
 地面を転がるようにしてMP5を拾い構えた先に見たものは、俺よりも年下に見える
 シスター姿の少女。 その右手にはコルトM1911が硝煙をくゆらせてた。