吸血大殲 25章『Memory Of MoonBlood』

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23ローブを着た男
>15>20 『意思、果つる者の躯』
 
 ふと、音がした。 
 布ずれの音、それが一つ、二つ、三つ。 
 ゆったりとしたローブをまとう男が三人、二人の前に姿を現す。 
 その姿は何処か僧侶を連想させたが、胸に刻まれたシンボルはいずれの宗派とも違っていた。 
 
「この地に踏み入れるとは、何処まで不遜か」 
 
 一人の男が口を開く。 
 訛りはきつかったが、それでも英語には違いなかった。 
 
「この地は聖地が代償に、我らが守るべき所」 
 
 手に見慣れぬ錫杖を掲げる。 
 その両脇で、二人の男が二人の知らぬ言葉を朗々と唱いだした。 
 
「如何なる者とて、容赦はせぬ。特に――――――」 
 
 血走り、黄色く濁る瞳が少女を射抜く。 
 
「邪教の手下など、許せるものではない!」 
 
 二人の男が手をかざす。 
 その掌からは炎が生まれ、辺りを赤く染めた。 
 瘴気を孕みながらふくれあがる炎は柱のように伸び、少女へと向かって走る。