自己紹介用テンプレートである。
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一番の決めゼリフ :
将来の夢 :
ここの住人として一言 :
ここの仲間たちに一言 :
ここの名無しに一言 :
前スレ>480 vsパイフウ
(マスター……聞こえないんデスか!? マスター!?)
心の中での絶叫は続く。
正直、今の一撃で仕留めたとは思っていない。
それどころか、この闘いに勝てるとも思っていない。
主の助け無しに、このような強大な敵に勝てるか?
否、否、否。主がいてこそのわたしだ。勝てるはずが無い。
「くぁ……!!」
激痛、銃弾が身体に突き刺さる。ダメージは大したこと無い。
聖別もされておらず、銀製でも無い武器などで吸血鬼は殺られない。
でも……それでも……。
「痛い……」
口から血がこぼれ落ちる。黄色い制服が、赤く染まる。
どうしてわたしがこんな目に合わなきゃいけないんだろうか?
分からない。分からない。
――――――――婦警、上だ。
「!?」
頭の中で、呟かれる言葉。わたしの身体に電撃が走った。
瞬間、身体がバネのように弾ける。
近くに着地寸前の侵入者を気配で捕捉し、その身体にハルコンネンを薙ぐように振り払う。
「……マ、マスター!?」
それは心の中の言葉。
いま、血の絆が主とわたしを繋ぎ止めた。
――――――――やれやれ、この程度の人間相手に苦戦するのでは、夜族とは言えんな。
(ユージン側 導入1)
「――――イグジスト」
乾いた声がして、部屋中の計器がそれぞれの反応を示す。
かきん、という拘束度端子が弾ける音だけが、無意味に高く響いた。
「呪素汚染は?」
「ありません。計測値、すべて許容範囲に収まっています」
「よし、そのまま拘束度端子を使い切るまでテスト。上位魔法を使用させろ」
強化プラスチックの壁越しに見える、異形の黒い鎧を着た騎士の姿。
ただ、それが跨るは白馬ではなく鎧と一体化した二輪の鉄馬であり、
抱くは銀に光る剣ではなく無骨な砲とも電動鋸ともつかない鉄塊である。
戦術魔法士の扱う――モールドである。
しかも、新型の。
拘束度数わずか8のその鋳型は、従来のものとは一線を画したスタイルを持っている。
即ち――人型ではないのだ。
人が着込む上衣だけの部分に、バイクの機能を持つ下部を接続して完成するそのモールドは、
高速で魔族に接近し、上位魔法の一撃で敵を殲滅して離脱する……
ただそのためだけに特化した強襲型モールド。
「………………――イグジスト」
補助呪文がぶつぶつと呟かれたあとに、またも聞こえる撃発音声。
テスト魔法によって発生する事象は、同じ魔法に含まれる効果によって対消滅し、
傍目には何も起こっていないようにみえる。
魔法が行使されたことを示すのは、またも2つ弾けた拘束度端子のみ。
統和機構の支配下にある研究所で行われる新型モールドの実用試験を、ぼくは護衛という名目で眺めていた。
極限まで従来のモールドを簡略化したところに、極限まで機動性を高めるための複雑な機構を盛り込む。
なるほど、確かにこれは画期的ではあるし、ケースSA……対魔族戦闘に効果的かもしれない。
だが――何故か、悪寒がぼくの背を捕らえて離さない。
モールド。ヒトのカタチを維持するためのヒトの鋳型。
それがヒトのカタチをやめて、果たしてモールドたりえるのか……
結論は、すぐに出た。
>4
(ユージン側 導入2)
「よし、最後だ。最上位魔法の詠唱開始」
さらに長い補助呪文の詠唱が開始される。
朗々と、されど抑揚なく唱えられる呪文。
「――――イグジスっ……」
それが、止まる。
「なんだ、どうした」
「……ッ、封呪素筒から、呪素が逆流しています」
「なん……だと」
「ぐううっ……うぐっ……ぎっ、えげ、えぎょぎょぎいいいいひひひひひひひいひいひいひ」
頭を抱え、奇声をあげる鎧の主。
その隙間から、ぞぷりと毀れ出すピンク色の肉の塊。
膨れ上がる肉の体積に耐え切れず、鋼の鋳型が内部から圧されて割れていく。
――――魔族化だ。
すぐさま、実験室内に設置された火器がその頭部を吹き飛ばす。
不死身の魔族も、脳無しには魔法も使えず、再生もできない。
脳髄が床面にバターのように広がるのを、砕けたモールドが落ちる音が追う。
だが、その吹き飛んだ頭が、見る見るうちに再生していく。
「どいてください」
ぼくは研究所の職員に言った。
「もう手遅れです。脳が全身に分散している……銃器では殺せないでしょう。
まだ下級のうちに――」
透明な壁面越しに、嘔吐を誘う醜怪な、されど確かに、今しがたまではニンゲンであったモノを一瞥。
「――あれは、ぼくが処理します」
『式、仕事だ。……ただし、今回だけは無理はしなくていい。断っても構わない』
トウコはいつになく強張った顔で私にそう告げた。
「なんだ、トウコ、勿体ぶらず、早く言えよ。オレが断るも何も内容を聞かないとどうしようもないだろ」
トウコは肩をすくめると話を始めた。
『……今回の仕事は現軋間家当主の抹殺だ』
・
・
・
とある森の中の屋敷というにはボロボロで、廃屋というには綺麗すぎる建物の入り口の前に両儀式は立っていた。
結局、あの式は仕事を受けた。
別段、断る理由も無かったからだ。
式は最強最悪の魔―軋間の噂は知っている。
だからといって、式は尻込みをしない。
今だ、式はギリギリの殺し合いの中で、生の充足感を得ていた。
式から来る殺人衝動、こればかり式が死ぬまで、式は付き合っていかないといけないのだから。
・
・
・
男―軋間紅摩はただ座敷に何もせず座っていた。
そして、侵入者を本能的に察知した。
彼は立ち上がった。
かつて七夜黄理との死闘で味わった『熱さ』を味わう為に……
彼が生きていることを実感するために……
座敷の襖が開いた。
式と紅摩の眼が合う。
――今、ここに
――最強の退魔と最強の魔の血を受け継ぐ者が対峙した。
とても静かなその森を、ずっと入ったところにひっそりと、その屋敷はあった。
私は、その朽ちた屋敷の玄関の前に立つと、ノックも呼び鈴も鳴らさずに、
その屋敷に足を踏み入れた。
いつもなら大した興味も無く聞くトウコの依頼だったが、彼女が珍しく依頼内容を
切り出す前にこちらの身など心配するもので、私は逆にその内容に興味をそそられた。
聞いてみれば、確かにその内容は、トウコを戸惑わせるほど、危険極まりない
内容だった。
軋間家当主、軋間紅摩の抹殺。
軋間という魔に近い家柄が、一族の血を濃くした結果に生まれた、人を超えた化物。
かつて、両儀と同じ退魔の血を引く「七夜」の一族を滅ぼした、紅赤朱と呼ばれる鬼。
一足の靴も無い玄関を抜け、埃が積もった廊下を進む。
その一歩ごとに、私に流れる両儀の血が、その魔の存在を強く感じさせた。
やがて、長い廊下も終わりを迎え、私はその先にある座敷に上がりこんだ。
その部屋は、他と比べて妙に小奇麗で、中央を襖で区切られていた。
――――――いる。
この身体に流れる血が、それを確信させる。
人から生まれた鬼は、この襖の先に居る――――――。
私は懐から短刀を取り出し右手に握ると、ゆっくりとその襖を開けた。
瞬間、ただ悠然とそこに立つそれと目が合う。
私と同じ、戦いの中に生の実感を求めるその目を、真正面から受け止める。
私はそれを受け止めたまま、ぺろりと唇を舐めると、右手に持った短刀を構え、
目の前の鬼と対峙した。
「……実感したよ、オレ達は似たもの同士だ。さぁ――――――殺しあおうぜ」
>7
(両儀式vs軋間紅摩)
……この感覚は何年ぶりか。
紅摩は、かつて七夜黄理と対峙していた時の感覚を思い出した。
目の前の少女はそれと同じ、いや、それ以上のモノを感じる。
鬼は笑みを浮かべて、式へと歩を進めた。
間合いがみるみるうちに縮まる。
そして鬼は、式の頭に向かって、右腕を無造作に突き出した。
ただ、腕を突き出すだけという行為。
単純極まりない行為だが、鬼はそれだけでモノを粉砕できる。
>8
鬼は一瞬のうちに二メートル近くの距離を縮めると、私の頭目掛けて
おもむろにその右手を突き出した。
酷く単調で、そして無駄の無い動き。
身を屈めつつ畳を蹴り、鬼の側面に飛び出してその攻撃をやり過ごすと、
そのまま突き出された右腕の死の線を見る。
その線は、恐ろしく薄く、か細い。
しかしそれは、肩から肘あたりにかけて、確かにそこに存在した
私はその細い線を注意深く正確に、右手に持った短刀でなぞった。
>9
鬼はゾクリとする感覚を感じた。
――間違いない、この少女はあの七夜黄理と同じように自分を破壊できる
理屈ではない。
本能で感じ取った。
鬼は左腕を横薙ぎに払い、短刀を迎撃する。
腕で刃物を受けるという行為……
本来なら無謀極まりない行為だが、こと、紅摩にだけは例外である。
鋼鉄よりも強固なその肉体に式の短刀は傷ひとつつけることは出来なかった。
鬼は笑みを浮かべ、空いた右腕を式の胴に向かって突き出した。
魔壊の右腕が唸りを上げて、式を襲う!
>10
私が繰り出した短刀は、鬼が無造作に薙いだ左腕によって弾かれた。
そう、弾かれたのだ。刺さりもせず、切られもせず、その腕は鋼鉄のように
私の短刀を受け付けなかった。
「……ははっ、とんだ化物だ」
私は一つ声を漏らすと、またもや迫り来る右腕を寸での所で身を屈め、
そのまま脇の下を通って、今度は鬼の背後に抜ける。
その瞬間、微かに見えた死の線に向け、ろくに確認もせずに短刀を振るう。
腕が掠った髪の毛が、はらりはらりと宙を舞い、青々とした畳に着地した。
と同時に、ボタボタボタ、という音とともに、鮮血が畳に飛び散った。
見れば、私の振るった短刀は、鬼の右耳を殺ぎ落としたらしく、
奴の耳があった場所からは、ぼたぼたと血がたれている。
「どうした、こんな事で怯むお前じゃないだろう?
――――――さぁ、もっと愉しませてくれよ」
>11
鬼の血が飛び散った。
「貴様――」
鬼は小さく呟いた。
かつて、鬼は似たような目に会っている。
七夜黄理に首筋にパテを打ち込まれた。
鬼はその時、自分が死ぬものだと初めて知った。
そして、その死の実感を鬼は再び肌で感じ取った。
「―――――」
鬼が何を口走ったかはその時、不明である。
だが、それと同時に座敷やその周囲が一気に何の前触れもなく、『発火』した。
老朽化した屋敷全体にみるみるうちに、火が燃え移った。
崩れ落ちる屋敷の中で鬼はただ、何をすることなくただずんでいた……
>12
目の前の鬼が、何事かを口走る。
その瞬間、突然、本当に何の前触れも無く、灼熱の炎が巻き起こり、
座敷とその周囲を残らず飲み込んだ。
このままここに居座っていれば、間違いなく炎は私の身を焼き尽くすだろう。
「――――――ちっ」
短く舌打ちをして、立ち尽くす鬼を無視し、座敷の障子を蹴破る。
障子の外はすぐ中庭になっていて、そのさらに先は森に繋がっていた。
私は素早く中庭に駆け出し、ある程度の距離を離れると、
炎とともに崩れ落ちる屋敷にその目を向けた。
あれでは、いくら鬼といえども助かるまい。
発火能力まで発現させた時は流石に驚いたが、その結果が自爆では話にならない。
鬼というからどんなものかと思えば、全く大したことは無かった――――――。
「………期待ハズレ、か」
私は興ざめしてそう呟くと、未だ燃え盛る屋敷に背を向けた。
>13
屋敷が炎に包まれ、焼け落ちる。
そして、炎の中から鬼は悠然と姿を現した。
周囲の炎も崩れ落ちる瓦礫も鬼に何一つ傷をつけることはできなかった。
鬼は屋敷に背を向けて去ろうとする式をその視界に捉えた。
その瞬間に式の周囲の木々が『発火』した。
鬼はそのまま、式に歩を進める。
更なる生の実感を得る為に……
>14
私の周囲の木々が、突然激しく燃え始めた。
思わぬ出来事に驚愕し、振り返る。
そこには、まるで何事も無かったかのように、傷一つ無く立ち尽くす鬼がいた。
あの炎、あの瓦礫も、この鬼に傷一つつけることは出来なかったのか。
鬼が、静かに一歩を踏みしめる。
一歩、また一歩。燃える屋敷を背景に、だんだんと私に近づいてくる。
私は、ただ莫迦のように突っ立って、その光景をただ見つめていた。
ああ、こういう奴を待っていたんだ。
こいつは、間違いなく強い。今までで出会ってきた中で、間違いなく一番だろう。
「いいぜ軋間。お前は最高だ――――――」
私は仕舞った短刀を再び構えると、軋間に向けてそれを構えた。
その時、自分の口元が愉しそうに歪んでいる事に、私は気付いてはいなかった。
>15
鬼は式へと間合いを詰める。
その顔に笑みを浮かべて……
心臓が高鳴る。
鬼の身体が嘘のように熱を帯びている。
七夜黄理を殺した時もそうだった。
全身が心地よい熱さに包まれた。
――この少女を殺せば、更にコレを味わうことができるのか
鬼はそう考え、笑みを浮かべる式にあと数メートルの間合いまで近づくと、
――式を含めたその周囲を発火させた
>16
その炎は、私を焼き尽くす――――――ハズだった。
私は、手に持った短刀を素早く閃かせると、発生した炎が私の身体に届く前に
その全てをことごとく殺した。
そのまま、地面を蹴る。
先程から、鬼は左側…つまり、私から見て右側からの攻撃への反応が若干鈍い。
コイツを殺すなら、狙い目はそこ――――――。
私は、鬼から見て右側に回りこみつつ、悠然と立つ魔に向かって走り寄った。
>17
「―――?」
確かに炎は少女を焼き尽くしたはずだった。
だが、少女は鬼に向かってくる。
鬼は本能で理解した。
――カタチは違えど、この少女が自分と同じ異能を持つことを
――そして、少女が自分と同じレベルにいることを
鬼は右腕を式に横薙ぎに振るった。
同時に自分の右側面の空間を『発火』させた。
鬼は自分にできる全てを以って、少女を殺すことにした。
>18
鬼が振るう右手は、無駄が無く、早い。
だけど、それは酷く単調な動き。ぎりぎりにはなるが、かわす事は可能だ。
大きく屈んだその直後、轟音とともに、その悪夢とも思える豪腕が
私の頭上を通過する。
この腕を回避するたびに、私の背中を言い知れぬ何かが走っていく。
紙一重の死をかわすたびに、私は生きる実感を得る。
私は、今この瞬間を、心の底から愉しんでいた――――――。
腕が頭上を通り過ぎたその瞬間、目の端に赤い灼熱が写りこむ。
私は、屈めた身体を思いっきり伸ばし、全身をばねにして地面を蹴りつけ、
巻き起こった爆炎を背にその場から跳躍、地面に転がるとすぐさま体制を立て直し、
鬼をぎらりと睨み付けた。
むやみに攻撃したところで、この鬼の身体には弾かれてしまう。
ならば狙うは、生き物である以上の絶対的な急所――――――死の点のみ。
私は片膝をついたままじっと目を凝らすと、鬼の身体の何処かにあるはずの
死の点を探すのに集中した。
>19
この少女はまだ死なない。
自分のの放つ致命の一撃を紙一重でかわす。
鬼の体が更に熱くなる。
――鬼にとって、ソレは歓喜
――そして、ソレは対峙するモノに死をもたらす
鬼の周りが何時の間にか蜃気楼のようにゆらゆらと揺らめいていた。
鬼が口元を更に歪めた後……
――今度は全てが『発火』した
周りの木々も草も大気も全てが灼熱の炎に包まれた。
>20
突如として巻き起こった、灼熱の嵐は、周囲の草を、木々を、大気すらも巻き込んで、
ただ激しく燃え盛り、その舌を私へと伸ばした。
私は、ただじっと冷静に、私に迫る炎の死を見つめ、その点をついていく。
自分が危機に陥れば陥るほど、逆に頭が冴えていくのを、私は感じていた。
周囲の炎をあらかた殺し終えた私は、鬼の背後に回りつつ、
引き続き死の点を探す事に没頭する。
鬼の左側面には、死の点は無かった。
ならば、あるとすれば背後、または右側面。
燃え盛る炎を、焼けた大気を、倒れ来る木々、私の邪魔をする全てを殺して、
鬼の死の点を探す事に集中する。
不意に、それが見えた。
それは、鬼の右首筋に、ぼんやりとただ広がっていた。
「――――――見つけた」
>21
目の前の少女はこれでも殺せない。
鬼はその事実に驚き、そして歓喜した。
鬼の身体がますます熱くなる。
もはや、人の形をした炎と言い換えても良かった。
安易に触れるモノは焼き尽くされてしまうだろう。
鬼の周りをくるくると少女が舞うように廻る。
鬼の腕を、炎を、倒れる木々を全てかわしながら……
そして、式が何かつぶやいた。
丁度その時、鬼の右手が式をまさに捉えようとしていた……
――決着は一瞬
>22
見つけた死の点に向かって、地面を蹴って一直線に駆け出す。
鬼が繰り出した魔掌は、そんな私を今まさに捕らえようとしていた。
けれど、その動きは………
「――――――遅いよ」
最小限の動きでそれをかわす。
灼熱の魔掌がわき腹を掠り、若草色の紬を焼き、肋骨の二、三本をへし折った。
だが、私はそれらを無視してさらに鬼に詰め寄ると、その首筋に見えた
死の点に向かって、手に持った短刀を振り下ろす。
ばき………という、鉄か何かを割ったような感触。
その瞬間、私の短刀は、寸分違わず、鬼の――――軋間紅摩の死の点を貫いていた。
>23
「―――――」
鬼は断末魔の声は誰にも分からない。
鬼はその場に倒れ附した。
十数年前に七夜黄理が突いたところを突かれ、死ぬとは何かの因果だろうか?
ともあれ、数百年にかかって生み出された究極の怪物は今、ここで潰えた。
>24
鬼――――軋間紅摩は、その存在の死を貫かれ、地面に倒れた。
――――――終わった、か
私は鬼の身体から短刀を引き抜くと、血糊を払って懐に仕舞った。
それからふぅ、と一息ついて、くだらないコトを考える。
あぁ、せっかく気に入っていた紬だったのに、派手に焼けてしまった。
大体、こんな傷を負ってる事が幹也に知られたら、また何て言われるか―――――。
これからのコトに頭を抑えながら、その場から離れようとしたその時、
ふと、鬼の死体が目に入った。
軋間紅摩――――私とよく似た男の残骸。
「じゃあな、軋間。お前は本当に――――最高だったぜ」
私と同じように、戦いの中でしか自分の生を見出せなかった男に
軽く別れの言葉を告げて。
私は、傷ついた身体を引きずりながら、トウコと幹也がいるだろう
事務所への帰路についた。
ハハハハ、軋間紅摩vs両儀式のレス番まとめさ。
「本物」は洒落にならないだろ?
>6 >7 >8 >9 >10>11>12>13>14>15
>16>17>18>19>20>21>22>23>24>25
>5
(魔族側 導入)
消えていく絶望と――――
それと入れ替わるように湧き出てくる恍惚と。
そのふたつを同時に感じつつ、殻をうち破るように。
それは、彼をニンゲンのカタチへと縛り付けていた鋳型の中から、この世界へと生まれ落ちた。
「おぎゃあああああ――ああああああ……おおおぎゃああああ……あああああ!」
産声。
だが、その声に含まれるものは、生まれ落ちた世界に対する不安ではない。
庇護を求める赤子のものではない――
砕けた拘束服の中から這い出るように、それは姿を現していた。
人という有り様の終焉そしてのみ存在する、ただ一言、異形という言葉で表されるモノ。
魔族――そう定義される生物種。
「あ――あ――あ――ひゃひゃああああ! おぎゃああああああ! ああかちゃああああああん!」
一声――同時に、魔族を内部に封じ込めた実験室の内壁に、一斉にひびが入った。
計器に注目している人間がいれば、気付いただろう――魔力計の針が、狂ったように大きく左右に振れているのを。
魔法――物理法則を無視して、自らの望みの事象を生み出す、まさに奇跡を具現化する能力。
そしてそれは、魔族の誇る、絶対の力だ。
だが、実際には誰ひとりとして、計器を覗いている人間などいない。
全員の視線は、突如として現れたその異形に向けられている。
砕けた鎧の上に乗っかるようにそこに佇んでいたのは……一言で言えば、赤ん坊そのものだった。
ややデフォルメされた体型に、ふっくらとした手足。だが、胴体から無数に飛び出ているイボ状の物体が、
どこか異様な雰囲気を醸し出している。
そして何より――その大きさが異常だ。成人男性よりも、一回り小さい程度の大きさの赤ん坊など、
言うまでもなく存在しない。さらに極めつけは――頭部だった。
赤ん坊らしい巨大な頭部に、ぽつん、と。ごく普通の男の顔が、まるで面を貼り付けているかのように存在している。
「あーかちゃああああん! かわいいかわいい〜あかちゃああんでえ―――えええす!」
そんなことを言いながら――魔族はそのアンバランスな肉体に似合わず、機敏な動きで室内を動き回る。
やがて、透明な壁の存在に気付いたのか。不思議そうに首を傾げながら、ぴたり、とその動きを止めた。
壁の向こう側に見える、こちらを引きつった表情で注視する複数の人間をその歪んだ意識の中に認めて。
その、赤ん坊の姿をした魔族は、にい――と、愉しそうな……そして、とても嬉しそうな……純粋な、だがそれ故に歪んだ、
邪悪な笑みを浮かべていた。
>27 vs魔族
がちゃ、と室内へ続くドアが開いた。
その音に反応し、そちらを振り向く魔族。
だが――そこには何もない。
ただ扉が軋むぎいぎいという音だけが、そこに漂っている。
――――ぎい
――――ぎい
――――ぎい!
一際大きい軋み――その後に起こった出来事を、果たして魔族の変質した脳が認識しえたかどうか。
ドアを蹴り飛ばすと同時に、その陰から一陣の閃光となって走る。
10mなどは無きに等しかった。
ただ一足。ただ一撃。
目が合った瞬間には、この手は赤子のような魔族の腹に深々と突き立っていた。
裂いた肉が温んで手に絡み、纏わりついてぬめる感触。
潰れたイボから、黄色く濁った生臭い液がどろりと溢れ、手に掛かる――
――その前に、すでに距離はまた10mを数えていた。
置いた距離の中で、小さく見える異形の元人間を注意深く観察する。
貫手とともに、魔族の体内に残してきた“リキッド”――全身を巡り、高温で焼き尽くす液体――は
ゆうに致死量を超えている。
さて……この程度で片がついてくれれば楽なんだけど。
>28 vsユージン
「――えええぎょおおおおおおああああ!?」
腹部を貫かれたのと。そして、体内を駆けめぐる高温の何か。
それに全身を焼かれ、魔族は悶絶し、その場に崩れ落ちた。まともな生き物であれば、
その瞬間に絶命していたであろうが……だが、魔族はまだ生きている。
「――――え……えおおおおおおお……!」
びくびくと肉体を痙攣させつつ、魔族はか細く声を上げた。断末魔の叫びとも聞こえるその声と同時に、
一瞬にして変化が起こる。
その間、僅か、瞬き数回と言った一瞬……
そこには、表情を純粋な憎悪に歪ませた、異形の赤ん坊が何事もなかったかのように立ち上がっていた。
腹部に穿たれていた疵痕も、もはや存在しない。
「ぎゃああああああ! ゆううじんんんんんん! いーたかったのーおおーよー!」
絶叫と共に、彼の後を追うように一気に跳躍。叫びと同時に発動していた魔法によって、瞬間的に重力を無視。
10メートルという距離を一気に詰める。そして、見た目からはまったく想像できない異常な膂力で彼を掴み上げると、
大きくひびの入った壁に向けて、そのまま盛大に投げつけた。
間を置かず、魔族の胴体に存在していた無数のイボが、一斉にその口を開く。そこから飛び出てきたのは、
先端を鋭い凶器と化した、無数の触手。
それは何かを探すように空中をのたうつと、得物に飛びかかる蛇のごとく、一斉にユージンに向けて襲いかかった。
「きゃっほおおおおおおお! くしざしい、くしざしいいいいいい!」
魔族は、先ほどの怒りも忘れたように、まるまるとした両手を打ち鳴らして、ひとり歓声を上げていた。
>29 vs魔族
(まあ、予想はしてたけど)
数瞬で全身の負傷を元通りに直してしまった魔族に、軽く眉を顰める。
この分だと、成長は速かろう。しかも、最初の銃撃と今の一撃で、相当に魔法を使わせている。
中級以上になると骨だ。次でとどめを――
「ぎゃああああああ! ゆううじんんんんんん! いーたかったのーおおーよー!」
そう叫ぶと――魔族が跳ぶ。
「な……っ」
不可能な動きだった。動きに入るための力みがまるで見えなかった。まるで無呼吸で動いているような。
だが、すぐに考え直す。馬鹿なことを思ったものだ。
魔族に――常識を当てはめるなどと。
距離を詰められた魔族に投げ飛ばされる。
いくら合成人間とはいえ、空中で動く術があるはずがない。
そのままの衝撃で罅割れた壁面に叩きつけられる。
「……がはっ」
肺の中の空気が根こそぎ吹き飛ばされる感覚。
それは水の中で溺れたときのような、目の前が真っ暗になる、力をこめようとするほど抜けて――
もっとも死に近い幻覚。
……けれど、幻覚は醒めるもの。
霞んだ視界と意識が戻ると同時に、足に満身の力を込めて床を蹴り飛ばした。
反動で空を飛ぶ身体と、それが元あった場所に突き刺さる触手の槍。
……危ないところだった。対魔族戦闘で停滞は死を意味する。
その魔力圏に捕らえられたら最後だ。
なんとか隙を――意識の空隙をつくことが大事だ。
適当に向かって来る触手を切り飛ばし、離れた先端を二本掴み取る。
――が、その影から忍び寄ってきた一本が腕の肉を刻む。
触手はそのまま、腕に突き刺さったままでぼくの身体を固定した。
前スレ>481 vs孔濤羅
笑み。
至福の笑みを私は浮かべる。
――――ああ、この瞬間を私は待っていたんだ。
対峙する男の迷い無き瞳。美しい。
これは私だ。ただ、斬るためだけに存在する修羅だ。
「良いぜ……お前は最高だ――――ああ、もう最高すぎる。気が狂いそうなほどにな」
だけど狂わない。
この無駄な思考も、柄を両手で握り、構えを取ったときから霧散した。
構えはまたも正眼。刀の切っ先の更に先に存在する男を見据える。
今の私は戦士。ただ、相手を殺し、己が生き延びることだけを考える戦士。
チャキ、と刀が鳴る。柄を握る手の力を込めた音だ。
だが、その音が相対する修羅に届いたときには……。
斬
10m近くある間合いを一瞬で詰め。
袈裟懸けに刀を振り下ろす。まさに一閃。
跳躍が神速なれば、斬撃もまた神速。
vs両儀式
>31
神速の斬撃を『波濤任擢』の技が迎え撃つ。
撃ちこまれた剣を逆らわずに流し、相手の態勢を崩す技は、
しかし不発に終わる。
それを察知した女剣士が流される前に剣を引いたからだ。
濤羅の剣は即座に跳ね上がり『貫光迅雷』。
それがかわされ、反撃の逆袈裟の一刀を濤羅は防ぐ。
孔濤羅はそれらの動きを一切意識していなかった。
剣は意識などせず、刃圏に入った物を全て切り捨てるのみ。
『沙羅断緬』『雲霞渺々』『驟雨雹風』『鳳凰吼鳴』と
戴天流の技の限りを繰り出す。
相手もそれに応じ縦横無尽に剣を振るう。
その刃の軌跡に入ったものは雨滴ですら断ち切られた。
孔濤羅は次第に忘我の域に達しつつあった。
感情からもしがらみからも解き放たれ、ただ剣を振るいつづけた。
>32 vs孔濤羅
無限の剣戟の応酬。 ――――視える。
微塵の無駄も無い。 ――――私には視える。
この死合いは既に芸術。 ――――こいつの『死』が視える。
「オレはね、視えるんだよ」
一瞬の無駄も許さない状況での発言。それは即、死へと繋がる行為。
だけど私は止めない。
「――――オレは視えるんだよ、『死』が。この世界の有りとあらゆる『死』がさ」
それはとてもとても細くて脆い『線』。
それはとてもとても小さく弱い『点』。
「お前の『死』はとても脆くて弱いな……」
次瞬、男の横薙ぎを跳んでかわす。その跳躍は人間のそれでは無い。
数メートル後ろに控える廃列車まで跳び、着地。
同時、爆発的なスピードで私は男へと駆ける。
――――私は刀身を鞘に納めた。
これから抜き放たれる一刀は必殺の一撃。
受ける刀は全て『殺す』。応戦する刀も全て『殺す』。
残された道などは無い。死ね。お前は死ぬんだ。
音も無く、流れるように刀身が鞘の中を滑る。
右手で鞘を持ち、左手は柄を握る。
先の一刀が神速というなら、この抜刀は如何なる速度か?
刃音すらも殺し、無音で刀は鞘から抜き出た。
この一薙ぎで、全ては死ぬ。そう思わせる一刀だった。
ははっ…面白そうな事やってるじゃないか…。
ねぇ…僕も混ぜてよ…。
っと、自己紹介させてもらおうか。
僕はエミリオ・ミハイロフ。光を操る天使だよ。
…僕が天使だって事、信じない? じゃ、証拠を見せてあげる。
(片手を外に払うと、その背中に、光の翼が音もなく顕れる)
どう? 言っておくけど、タネも仕掛けもないよ? 僕が天使だって事、信じてもらえた?
…なぁんてね。本当は、サイキッカーだよ。とある軍の、サイキッカー部隊の一員さ。
あ、でも、背中の翼のタネとか仕掛けはないよ。これも、僕の能力(ちから)だからね。
簡単にだけど、僕の使う技の説明をさせてもらうよ。
・シャイニングアロー
光の弓矢で相手を射抜く。僕の基本にして主力だね。
・プリズムシール
光のプリズムで対象を閉じ込めて、そのあとプリズムを爆発させる。
・シーカーレイ
早い話がレーザーかな。熱に反応して、一直線に飛んでいく。
・プリズムリフレクター/リフレクターダッシュ
シーカーレイを反射させて、起動を変える役割を持ってる。
ダッシュの方はシーカーレイが当たると8方向にシーカーレイを飛ばす。
リフレクターは一度に5つ、ダッシュは1つしか置けない。
それ以上は制御できないんだ。
・エンゼルハイロウ
天使の輪で相手を縛り付けて…防御を出来なくする。
・トリニティレイ
シーカーレイを、僕を中心にして3方向にぶっ放す。
リフレクターがないと殆ど意味がないのが辛い所だね。
・アークエンゼル
聖なる光で対象を灼き尽くす。
とっさに出せないのが欠点って言えば、欠点。
あと、光の屈折を利用して僕の幻像を作り出してみたり、光学迷彩じみたことなんかも出来るよ。
で、これが僕のテンプレ。
出典 : サイキックフォース2&2012
名前 : エミリオ・ミハイロフ
年齢 : 16
性別 : 男だよ…何か文句ある?
職業 : 自由な遊び人って感じ? 一応軍に所属してるけど
趣味 : 壊す事。色んなモノを、ね
恋人の有無 : いないよ、面倒だし
好きな異性のタイプ : 声が綺麗な人かな
好きな食べ物 : 何が好きって事もないさ
最近気になること : 昔の僕がしゃしゃり出てくる事
一番苦手なもの : ウェンディーと社長
得意な技 : 光を自在に操る事だね
一番の決めゼリフ : はっ…なんて脆いんだ…
将来の夢 : 形あるモノ全ての破壊
ここの住人として一言 : 僕の光からは、誰も逃げられない。そう、誰もね…
ここの仲間たちに一言 : 狩られる側の焦燥、教えてあげるよ
ここの名無しに一言 : ま、退屈させないようにはするさ
カテゴリは…Aでお願いするよ。
>3セラス・ヴィクトリアvsパイフウ
さすがは吸血鬼。
自分が飛来し、着地するまでのわずかな感に
こちらに気づき攻撃―――――それも、その巨大な砲を
横凪に払うという方法で。辺境で仕事をしてきた以上、
ありとあらゆる強化された、もしくは特異体質、もしくはただ鍛え抜かれた
人間を見てきたが、彼女はその中でも相当手ごわい部類に類するだろう。
身体能力のみにおいては。
肉体を強化することなら、ただ鍛えるだけではなくサイボーグ化という手段もある。
身体の一部、場合によっては殆どを機械化することによって人間とは
比べ物にならないほどの単体戦闘能力を手にすることが出来る。
或いは、生体強化サイボーグ。遺伝子レベルの強化処置を施し、
生物的に身体を強化する。戦闘時に物理的限界の生じる機械サイボーグよりも
それはある意味ではより恐ろしい存在だ。”生物”である以上、身体限界はない。
本人の強固な意志次第で、いくらでも強くなる可能性を秘めている。
―――――だが、そのどれもを無条件に殺すことが出来る
と言う確信をパイフウは持っていた。
どれだけ身体を強化しても、それは恐ろしい敵にはなりえない。
気功。これの存在を感知しない相手ならば恐れるに足らない。
もっとも、パイフウに”恐れ”などという感情があるかどうかはわからないが。
たとえどれだけ追い詰められようと、その物鬱げな黒瞳は変わらない。
血と埃混じりの唾を吐き捨て、腹腔に気を溜める。
パイフウの手からウェポンシステムが落ちた。いや、落とした。
彼女までの距離は十数歩。お互いの身体能力なら一瞬で詰められる。
顎を引き、手指を軽く開いた構え。
それは、やはりなおも戦闘を、しかも素拳で行うという事を意味していた。
vsエミリオ
=導入=
力がないのに、それを誇る人。
そんな人は嫌い。
力があるのに、それを認めようとしない人。
――――そんな人は、もっと嫌い。
夢幻歳華、外伝のおはなし。
『よわむしなんてだいきらい』
―――無限の中、私は想い、忘れない・・・・・・・。
====================
私は、いくつかの世界を渡り歩くうちに『彼女』が居る世界へとたどり着いた。
もっとも、彼女が何処にいるのか、そこまでは分からなかったのだが。
そして、同時に一人の少年とであった。
彼は、途方もない可能性を内に秘めた存在。
『彼女』の分身を遥かに凌駕しうる可能性を。
だが。
彼の心にあるのは『畏れ』。
彼の畏れの対象は『自分自身』。彼の『能力(ちから)』は周りを不幸にする。
そう、己で決め付けていた。
このままでは、『使えない』。
そこで、私は『彼』を『飛躍』させることにした――――。
========================
「はぁい♪こんにちわ、はじめまして♪」
『き、君は?』
突然現れた私に、彼が動揺する。
私はかまわず話を続ける。
「実はね、今日はあなたに用事があってきたんだ♪
・・・・貴方には、力があるの。とてつもないね。
私は、その力を使ってあることをしてほしいんだけど・・・・・・・・・。
今のままじゃちょっと力が足りないんだ♪
だから・・・・・・ちょっと、私に付き合ってもらえないかな?」
そういうと、私はD-スペース ―外部から空間的にずれた領域― を展開する。
「ここなら、周りに迷惑はかからないよ♪
それじゃ、はじめよっか♪」
私は、彼に向かって殺意をぶつける―――――――
vs両儀式
>33
飛び退った剣士を迎え撃つ孔濤羅の構えは正調・戴天流『雲霞渺々』
その身に一部の隙もない、カウンター狙いの防御型。
思い描くはかつて成し得なかった、戴天流の奥義の一撃。
それ以外にこの剣士を退ける術はない。
不思議と、できるという自信があった。
それは慢心ではない。
今の濤羅は一振りの剣。
剣が慢心を抱くことはない。
それは、殺すことに拘った者と、全てを剣に捧げた者の差か。
一瞬のうちに迸る刃影十条。
薙いだと見えて、その悉くが刺突という必殺の剣。
戴天流剣術奥義『六塵散魂無縫剣』
今、絶技開眼。
“超純粋”幽祢vs“光の導き手”エミリオ(14歳ver)
夢幻歳華外伝
『よわむしなんてだいきらい』
〜堕天使側導入〜
>37
空に朱い月が浮かぶ夜。僕は一人、空を彷徨っていた。
――また僕は、人を傷つけてしまった。僕の中に潜む、忌まわしい能力(ちから)を使って…。
「どうして…僕はこんな能力を持ってしまったんだ…」
嘆き、悲しみながら僕は自分の両手を見つめる。どんなに洗っても落ちない、血の匂い――。
誰かを傷つけるのは、怖い。辛い。悲しい。でも、傷つけられるのは、もっと怖い。死ぬのはそれよりもはるかに怖い。だから…使いたくない能力を使ってしまう。誰も傷つけたくないのに、傷つけてしまう。
「――こんな能力(ちから)があるから…」
結局、いつもその結論に至る。こんな能力さえなければ、僕は追われる事もない。誰かを傷つける事もない。――お母さんを、殺してしまう事も、なかった。
『はぁい♪こんにちわ、はじめまして♪』
唐突に誰かに話しかけられた。振り返ると…白い着物を着た小さな女の子が、まるでそこに地面があるかのような自然さで、立っていた。
「き、君は?」
まさか、この子も僕と同じサイキッカー? こんな小さな女の子が、僕を追ってきた? そんな…。
僕の動揺などお構いなしに、女の子は言葉を続ける。
『実はね、今日はあなたに用事があってきたんだ♪
・・・・貴方には、力があるの。とてつもないね。
私は、その力を使ってあることをしてほしいんだけど・・・・・・・・・。
今のままじゃちょっと力が足りないんだ♪
だから・・・・・・ちょっと、私に付き合ってもらえないかな?』
一瞬、目の前が真っ暗になった。この子は…僕の能力の事を知っている。僕の能力を知っている、と言う事は、この子は誰かに言われて僕を追ってきた――。
――逃げなくちゃ!!
僕は女の子に背を向けて、全力で空を疾った。
疾って、疾って、疾って――。どれくらい進んだか分からないくらい、ひたすら疾った。
『ここなら、周りに迷惑はかからないよ♪
それじゃ、はじめよっか♪』
軽い、踊るような声が、僕の背後で響いた。
振り返る。
――女の子は、僕のすぐ後ろで、にこにこ笑っていた。
僕は全く進んでいなかったのか、それともこの子は僕に追いついたのか。
分からない。わからない。ワカラナイ。
不意に、空気が変わる。重く、纏わりつくようでいて、鋭く研ぎ澄まされた、ナイフのような空気。
女の子を中心としたそれは――殺意。
「やめてよ…!!」
叫びとも、嗚咽とも取れる声を絞り出した。
“超純粋”幽祢vs“光の導き手”エミリオ(14歳ver)
夢幻歳華外伝
『よわむしなんてだいきらい』
>39
「そうだなぁ・・・・・まずは小手調べっと♪」
私は、炎を呼び出す。
『やめてよ…!!』
彼は、そんな私を見てもなお戦意を見せようとしない。
・・・・正直、気に入らない。
「・・・・はい、いってらっしゃい♪」
私は、その言葉に呪を乗せる。
『言霊』。
それが私の能力。
炎が、彼に向けて突き進む。
まさか、これぐらいはかわして見せるよね?!
“超純粋”幽祢vs“光の導き手”エミリオ(14歳ver)
夢幻歳華外伝
『よわむしなんてだいきらい』
>40
あの子が、炎の塊を僕に向かって放った。
「うわっ…!」
両腕を交差させて顔を覆うと同時に、バリアガードを展開。炎の塊はあとかたもなく消え去った。
「やめてよ…僕は誰も傷つけたくないんだ…」
言いながら、僕はじりじりと後ずさった。隙を見て、とにかく逃げなくちゃ…!!
――人外ヤクザ共の仁義無き戦い―― 天堂天山&ヤハベ vs 岩鬼将造
http://salad.2ch.net/test/read.cgi/charaneta/1017335672/ >455 >461 途中経過纏め>465
今、圧倒的優位に立っているのは自分である。このチャンスを逃さない手は無い。一気に殺ってやる。
―――――――が。
『おどれ極道じゃろうが! 太く短く生きて、ほいで死んでナンボの極道じゃろうが!
じゃちゅうによ、おどれのそのザマァ何ならぁ、おう!?
おどれァそがいにしてまで死にとうないんか! っじゃコラァ!!」』
岩鬼が発した言葉に、天堂は少なからず反応する。
決して油断している訳ではない。現に、このまま殺すのは簡単だ――――だが、
言いっ放しにされると言うのも癪に障る
―――良いだろう、冥土の土産と言う訳でもないが、それくらいは話してやっても構わない――
「………手前ェは……まだ若ぇじゃろう」
首を掴む手は緩めずに、天堂は語りだした。
「………おれだって若ぇ頃ぐれぇある。
親分や兄貴分の言う事も聞かんと良く突っ走っとったし、刀傷や銃創もしょっちゅう作っとったわ。
それでも十分今後もやってけると思っとった…………でもな」
「……違ったんだよ。歳を取って、老いていくにつれ、な…
……明らかに自分が弱って行くのが分かるんじゃ………
衰弱を感じ………寿命を感じ…………死への恐怖ってモンに悩まされる羽目にまでなった………!」
天堂の声に怒気が混じる。いや、それとも憤慨だろうか。
それに伴い岩鬼の首を持ち上げる腕、そして手にも力が入った。岩鬼が、か細い息を漏らす。
「分かるか?!ああ?!若ぇ頃にはこうなるなんてこたぁカケラも思わなかったぜ!
………………そんな時だ。ファントムの奴等が現れた。力を与えてやるっつぅとんじゃ。
………もう、な。そん時ぁ細けぇ事なんてどうでも良くなってたぜ。生きられさえすりゃあ良かった」
「で、今、手前ェの目の前に居るのがその結果じゃ」
天堂が口を笑みの形に歪める。ただし、それには自らへの嘲笑の意味も含めて。
「……言っとくが勘違いするんじゃ無ぇぞ。おれはカケラも後悔なんぞしてねぇんだからよっ!!
むしろ感謝してるくれぇだぜ!!こんな力を手に入れてよぉっ?!!」
「いい加減ヨタ話もここまでじゃ!」
ヤハベが弾幕の中を歩いてくる。こちらに向かって。
この中で相変わらず飄々としていられるのだから、大したものだ。
『よう、田吾作。お前さんの葬式は神父サマが済ませてやっから、安らかにくたばんな』
「神父サマに祈りながらくたばりなぁっ!!!」
とどめだ。首を掴むその手に、一気に力を込める―――――
エリ・カサモトvsタバサwithタオ(盾)
『全国三千万婦女子の憧れ争奪戦』
>前スレ485
「くっ!!」
こういう押し合いはマズイ!
実弾ではいずれレーザーに押し負ける。
「キャノンが弾切れになったらアウトね・・・いちかばちか、やってみるか!」
キャノンが撃ち止めになった瞬間。
「メタスラアタァーック!!」
巨大な弾丸と化したメタルスラッグはタバサ目掛けてぶっ飛んでいった。
あたし? 脱出してるわよ。 もちろん。
〜淫藤宗光/ヒトラーvs竜崎天馬・壇隼人 「ヴァレンシュタイン作戦」導入〜
「健康的で精力的な国民ならばだれでも分かることだが、領土の獲得には
全く恥ずべき所は無く、それを遂行するのは極めて当然のことである」
――アドルフ・ヒトラー
深夜の太平洋の洋上、アメリカ合衆国の沖合い数百キロの地点に、奇怪なオーロラ
めいた光が閃いた。
光が収まった後には、十数隻の軍艦がまるで手品のごとく出現していた。
普通の者には単なる軍艦としか見えないだろうが、少し軍事知識のある者が
見たら己が目を疑うに違いない。
“シャルンホルスト” “グナイゼウ” “アドミラル・シェ―ア”
“アドミラル・グラーフ・シュペー” “プリンツ・オイゲン”“リュッツオウ”
“ティルピッツ” “ビスマルク”……。
皆、ドイツ第三帝国と運命を共にしたはずのドイツ海軍(クリークスマリーネ)
の戦艦達であった。
好事家が見れば、彼女達を間近で見ようと争って近づくに違いない。
しかし、次の瞬間、彼らは心の底からその選択を後悔するだろう。
よく見れば、船体には膿汁めいた緑色の血液が流れる血管が走り、
その側壁からは水兵だったであろう者たちの顔が浮かんでは消えているではないか!!
そして側壁に浮かぶ奇怪な顔は、この世のものでは決してあり得ない声で
歌い始めた。
この世の人間がこれを聞いたら、一生涯うなされ続けるであろう。
“我らは進撃する!! 我らは進撃する!! アメリカへ! アメリカへ向かって!
我々は進撃する!!”
地獄の歌を歌いつつ、地獄の艦隊は洋上を進む。アメリカへと向かって。
“超純粋”幽祢vs“光の導き手”エミリオ(14歳ver)
夢幻歳華外伝
『よわむしなんてだいきらい』
>41
『うわっ…!』
彼は両腕を交差させて顔を覆い、障壁をを展開し炎を防ぐ。
なるほど。やはり実力はある。
加減したとはいえ、私の攻撃を防げる人間はめったにいない。
くす・・・・・・いい道具になりそう♪
だが。
『やめてよ…僕は誰も傷つけたくないんだ…』
その言葉が、私の神経を逆なでする。
不愉快だ。
己の内にある力を知っていながら、それを有効に使おうとしない。
これほど不愉快なことがあるだろうか?
「・・・・・・えいッ♪」
私は、彼の足元に捕縛結界を展開する。
なすすべなく、拘束される彼。
私は、懐から紙人形を取り出す。先ほど捕獲した時、その空間情報から彼の因果を紙人形とつないでおいた。
「ふ〜〜♪」
私は、紙人形を軽く息で吹きとばす。
すると、その紙人形と同じような軌道を描いて、彼の体が吹き飛んでいく。
「ばいば〜い♪」
さぁ、少しはやる気になったかしら?
淫藤宗光/ヒトラーvs竜崎天馬・壇隼人 「ヴァレンシュタイン作戦」導入2
>44続き
そして、その妖艦隊の先頭を走る空母があった。
航空母艦「グラーフ・ツェツペリン」。
史実では遂に未完成に終わったはずの、ドイツ海軍空母であった。
その奇怪な悪魔のオブジェのごとき船体の中の艦長室で、一人の男が
目の前に広がる矩形のスクリーンを眺めていた。
褐色の軍服に身を包んだ、鼻下の髭が特徴的な中年の小男――
アドルフ・ヒトラーである。
「気合が入ってますねえ、総統」
軽薄な声と共に、ヒトラーの姿が揺らぎ、アドニスのごとき美青年――
淫藤宗光が現れる。
「当然だ。我らが冥府より蘇えらせしドイツ海軍をもって始動せし
北米侵攻計画“ヴァレンシュタイン作戦”。
我らこそが、アメリカ本土に上陸する最初の、そして最後の侵略者となるのだ。
我らが冥府より蘇えらせしドイツ海軍水兵及び武装SSには、
アメリカ中の生きとし生けるもの全てを殺し尽くすまで冥府に帰るなと言う
総統命令を下しておる。
御自慢の最新鋭装備も核ミサイルも亡霊の前にはマジノ線と同じよ」
宗光はヒトラーの憑かれたような喋りとは対照的に、どこかおどけたような態度
で言う。
「つまり、僕らが自由の女神の初体験の相手って訳ですね。
どんな声で哭いてくれるかなあ、彼女」
いいつつ宗光は、陵辱され処女を散らされ、気品ある顔立ちの美貌の白人女性
が股間から血を流しつつ泣き叫ぶイメージを脳裏に幻視した。
淫藤宗光/ヒトラーvs竜崎天馬(M)・壇隼人(M)「ヴァレンシュタイン作戦」導入3
>46続き
宗光の軽口に、ヒトラーはふんと鼻を鳴らして答える。
「先だって、余が九大地獄の魔王ヨス・トラゴンから受けた啓示を忘れるな。
我らの行く手を阻む“光”が二つ現れるという」
「そして、その“光”を呑みこまなければ、僕らの野望は果たせない――
でしたね。
ふふ、いかな“光”の勢力といえど、僕らの“アブラメリン魔術”に
よる結界を破れるかな?」
エジプトのナイル河畔に住んでいたという伝説的魔術師アブラメリンの呪文による
結界を、死霊艦隊の周りに彼らは張り巡らしていたのであった。
爆撃機もミサイルも、この結界に当たれば異次元へと消え、二度とこの世
には戻ってこられない。
宗光/ヒトラーは矩形のスクリーンを見つめ、“光”の勢力を待ち構える。
エリ・カサモトvsタバサwithタオ(盾)
『全国三千万婦女子の憧れ争奪戦』
>43
こちらのレーザーが、メタルスラッグの一斉射撃を次第に押している。
「ロボ! 出力をもっと上げなさい!!」
ただでさえ太い光が、さらに太くなる。
「ふふ…ふふはははははははははっ!」
勝利を確信した私は、高らかに嗤う。これで全国三千万婦女子の憧れは私のもの…もとい、私の研究は大きく前進する!
「…ねえ、タバサさん…なんか、熱くない?」
「それはそうでしょう。ここは砂漠ですよ? 暑いのは当たり前です」
何を今更。そう思いながら、答えを返す。
「いや、そうじゃなくて。…このロボ、熱くなってない?」
言われてみれば、確かに熱い。出力を上げれば、熱を持つのは必然。
「しかも…さっきの戦車が突っ込んできてる…拙くない?」
「拙いですね…逃げますよ!」
私はタオの手を握り、ロボの頭部から飛び降りた。
それとほぼ同時に、突っ込んできたメタルスラッグがロボと激突。
耳をつんざくような爆音と、凄まじい爆炎を背景に飛び降りる私達の姿は、まるでどこかの映画のようであった。
「ああ…講義三回分のギャラが…」
鉄屑と化したロボを眺めながら、私は涙を流さずに泣いた。
淫藤宗光/ヒトラーvs竜崎天馬(M)・壇隼人(M)「ヴァレンシュタイン作戦」
導入――竜崎天馬
>47
小高い丘の上で、遙かな洋上を見つめる青年。
その後ろには、青い複葉機。
「あれか・・・」
その目に映るのは、邪悪なる艦隊。
滅んだはずの帝国の亡霊。
「天馬、こっちは準備完了だ!」
青い複葉機の整備をしていた、小柄な青年が呼びかける。
青年――天馬はその声に振り向き、複葉機に近付く。
「ああ、サンクス、ウェル」
整備の青年――ウェルに声をかけながら、複葉機に飛び乗る。
「だけど、本当に行くのか?」
訝しげに問うウェル。
「ああ。あれがアドルフ・ヒトラーだというのなら、行かなくちゃいけない」
「それに・・・流星もそう云ってる」
手にした刀――陸奥守流星に目をやりながら、答える。
「そうか・・・一応『呪的処置』とやらはしたけれど、どの程度役に立つかは知らないぞ」
「ああ、ありがとう・・・じゃあ、行ってくる」
コクピットに入り、ゴーグルを下ろす。
エンジンに火が入り、二重反転式のプロペラが回り出す。
「・・・行くぜ、新・天翔馬(ネオ・ペガサス)」
ごるん!
エンジンの咆哮と共に、風を切って複葉機――新・天翔馬号は飛び立った。
>47>49 淫藤宗光/ヒトラーvs竜崎天馬(M)&檀隼人(M)「ヴァレンシュタイン作戦」
導入――檀隼人
濃厚な白い闇は、同じくらい濃い潮の匂いを伴っていた。
深夜を過ぎた波止場である。
立ち込める霧の中で、ある白人の中年男が一つの影と対峙していた。
「――時間通りだ。まさか本当に来るとは……。前任者から代々受け継いできたものの、たちの悪い
アメリカン・ジョークとばかり……」
「状況は聞いている。今は時間が惜しい」
若いが静かな声で断じられ、中年男は黙った。影は続ける。
「指定した物の準備は?」
「問題ない。ほら、そこに用意出来ている。いつでも発進可能だ」
中年男が指差す先には、艀に繋がれているモーターボートが有った。
軍用らしく、小型だが武骨なデザインである。それに歩み出した影に向かい、男は慌てた様に
声をかけた。
「ま、待ってくれ。これは、こんな事は現実なのか。ヒトラーが蘇っただの、そいつが亡霊の艦隊を
率いて合衆国(ステーツ)を襲撃するだの、おまけにそれを阻む為に君の様な人間を呼ばねばならん事が、
我が国の設立から規定されていたなどと――」
心中惑乱しながら中年男は言う。
ホワイトハウスの最奥部で眠る数々の機密文書の中でも、アメリカ建国当初より保管され続け、
sss級と認定された唯一の文書を想起したのだ。
それは遠い未来、すなわち現在に勃発する大怪事の予言であり、尚且つ事態を打開する為に取るべき
唯一の手段についても言及されていたのである。
「教えてくれ。君は知っているんだろう。これは一体――何なんだ?」
一陣の風が霧を吹き千切った。白い闇の中から、黒い影が現れる。
と言っても学生服だ。その上からでも、鋼線を束ねたかの様な筋肉が見て取れた。
逆立つ銀髪の下を形作るのは匂い立つ青嵐の如き美貌、そして深い深い色彩の瞳。
「『転校生』魔戒十条――その二。“わかる”と言ってはならない。
転校生にわかるのは“滅び”だけ」
軽く微笑んだ。それだけで中年男の不信全てを払う様な笑みで。
「契約は必ず履行される。安心してくれ、大統領閣下(ミスター・プレジデント)」
あらゆる時空間の招きに応じ、如何なるトラブルも解決してのける超戦士『転校生』。
その一人、檀隼人は身を翻しモーターボートに乗り込んだ。
すぐさまエンジンに火が入り、爆音をたなびかせてボートは出港していく。
妖と魔相討つ、凄愴と驚天の魔海へ向かって。
“超純粋”幽祢vs“光の導き手”エミリオ(14歳ver)
夢幻歳華外伝
『よわむしなんてだいきらい』
>45
足元に、魔法陣のような円が展開された。
「え…!? わぁぁっ!」
気が付くと、僕は宙を舞っていた。風に弄ばれる木の葉か何かのように。
そして、そのまま重力に逆らう事も出来ず、地面に叩きつけられる。
「ぐぅっ!」
痛みに顔を歪ませながら、あの子を見る。
――――楽しそうに、にこにこ笑っていた。
「どうして…こんな事するんだ…どうして…僕をいじめるんだ…」
ゆっくりと立ちあがり、ぼやけた頭を何度か振って、意識をはっきりとさせる。
「どうして…僕をそっとしておいてくれないんだ…!」
手に光を集めて、弓矢を作り出し――静かに、引き絞る。
「お願いだから…逃げて…僕にも、この力は制御しきれない…!」
半泣きの顔で、矢を放った。
“超純粋”幽祢vs“光の導き手”エミリオ(14歳ver)
夢幻歳華外伝
『よわむしなんてだいきらい』
>51
彼が、何事か叫びながら私に向けて矢を放つ!
あはは、結構できるね。
けど・・・・・
「当たらないよ♪」
私は身にまとった『オホソラ』に干渉し、『虚郭(キョカク)』を展開する!
時間的概念を持つものを完全に遮断する虚数空間。
《ぎぃんっ!!》
光の矢は、『虚郭(キョカク)』に触れるや否や、金属音とともに消滅する。
「あはは♪残念でした♪
ねぇ?もっと見せてよ。
これで、おしまいじゃないでしょう?」
くすくすと口元を服の袖で押さえて笑いながら彼を眺める。
ほら・・・・貴方は力があるんだよ?
・・・・・立ちふさがる全てを、屠る事ができるだけの。
>前スレ470
桐原朝子VS南条圭
白銀の剣士は一時動きを止め、強大な攻撃を放つ準備に
入ったらしい。彼女の周囲に、巨大なエネルギーが収束していくのを
感じる。あれを放たれては、こちらはひとたまりもあるまい。
ならば答えは一つ。相手の大規模破壊攻撃を、
こちらの大規模破壊攻撃で潰す。
それを考え、南条はペルソナを召喚する準備に入る。
彼の中に棲む、最強のペルソナ。
ヒンズー神話に登場する、雨・雷を操る闘いの神。
「行け……インドラ」
南条の静かな声と共に、それは形を作った。
異国の奇妙な服をその身に纏った、威厳ある人型。
その手には、巨大かつ無骨な槍が据えられている。
「無様だな……お前は」
南条は、彼女の呪詛に対し、冷酷に言い放つ。
「そうやって世界の所為にして、お前は何をした?
ただ背を向けることしかしなったのではないか?」
南条の背に聳える様に浮かぶ「インドラ」の口が、
複雑な呪を次々と詠唱していく。
「その結果、孤独しか得られなかった……そうではないのか?」
「インドラ」の呪は次第に高速化し、日の沈みかけた夕闇の空が、
俄かに黒く染まり始める。
「お前が本当に嫌いなのは、そんな自分自身なのだろう」
「インドラ」の呪が唐突に途切れた。詠唱の完了である。
周囲の空気が、パチパチと静電気を溜めている。
「マハジオダイン………」
南条の情け容赦無い一言と同時、呪は発動した。
聖エルミン学園の屋上を、文字通り落雷の嵐が駆け抜ける。
周囲一帯を巻き込む神の怒りは、南条圭以外の
全てを光の渦へと塗り替えていく―――
>42 天堂天山&ヤハベvs岩鬼将造 『極悪極道 飲む打つ吸う』
顔は濃い紫色に変じながらも、将造は嘲りの眼で天堂を見下ろす。
「……ほうじぇけえ……おどれは……イモ引いちょるっちゅうんじゃ……。
神じゃと? そがいなモン持ち出すおどれとは違う……。わしは……わしは……」
垂れ下がった右膝が後ろに跳ね上がった。切断面に見えるのは赤い肉ではなく、黒い機械の洞。
三本の円錐――ロケット弾を覗かせた。
「極道兵器やど〜!!」
声を限りの叫びとともに、火花を散らして迸るロケット弾は天堂の腹部へと吸い込まれた。
その衝撃で金輪の如き天堂の締めつけを脱した将造は、盛大に後方へと飛んで行く。
何度目か判らぬ程床に叩きつけられた身体は、流石に痙攣を繰り返していた。
喉を抑え、苦しげにむせる。
「若! 大丈夫ッスか!?」
煙の中から三太郎と拓三が馳せよって来る。二人とも服の各所が紅く染まっていた。
将造は答えず、左手の機関銃を捻った。ガチャリ、と重い音とともに外れる。
「……次じゃ」
「へ、へいっ」
三太郎は間髪入れずにリュックから鉄の塊を抜き出し、将造の左手があった場所にはめ込んだ。
機関銃より一回りは大きく、ごつい。工具めいた外見の端は、チューブでリュックと繋がっていた。
「ぐへへへへ……」
将造が笑ったその時。
機械の腕から毒々しいオレンジ色の焔が放たれた。
火竜の舌が、煙の向こうに集結しつつあった天堂勢の残党を嘗め尽くす。
火炎放射器であった。
「カッカッカッカッカ!! おどれら照り焼きにして喰うちゃるわい!!!」
思うさま狂笑を放つその姿は、さながら焦熱地獄の大魔王の如く。
淫藤宗光/ヒトラーvs竜崎天馬(M)&檀隼人(M)「ヴァレンシュタイン作戦」
>49 >50
矩形のスクリーンに映った青い複葉機を見て、宗光/ヒトラーは目を細めた。
「単独で、しかもあのような旧式の複葉機で来るとは……。
勇敢なパイロットだな、だが愚か者だ」
アブラメリン魔術による結界――霊的視覚を持つものには蛍光性ピンクの壁に
見えるだろう――が、パイロットと愛機を異次元へといざなうであろう。
――が
「まあまあ、総統、あれが九大地獄の魔王ヨス・トラゴンのいう“光”の勢力
かもしれませんよ、一つ試してみましょう」
宗光の声と共に、
グラーフツェッペリンの滑走路からメッサーシュミットMe109が飛び立った。
ドイツ空軍(ルフトヴァッフェ)の代表的戦闘機である。
しかし、このメッサ―シュミットは地獄の艦隊から吐き出されるに相応しいもの
だった。
メッサ―シュミットの周りには、毛をそられたサルめいた顔つきの小人達――
グレムリンがマントを翻し付き従っていたのだ!!
メッサ―シュミットの機銃から吐き出される弾丸と共に、グレムリン達が
新・天翔馬号に襲いかかる!!
“超純粋”幽祢vs“光の導き手”エミリオ(14歳ver)
夢幻歳華外伝
『よわむしなんてだいきらい』
>52
《ぎぃんっ!!》
耳障りな金属音を響かせて、僕の放った矢は女の子の目前で消滅した。
バリアガード? いや…むしろ小規模の結界、と言った方が近いかもしれない。
「あはは♪残念でした♪
ねぇ? もっと見せてよ。
これで、おしまいじゃないでしょう?」
女の子は口元を服の袖で押さえて笑いながら、僕を見ている。
逃げる事は出来ない。あの子も逃げるつもりはない。
能力を使うのは怖い。誰かを傷つけるのは怖い。でも、自分が傷つくのはもっと怖い。
<――どっちも怖いなら、なるべく怖くない方に逃げれば良いじゃないか>
「え…!?」
何処からともなく、誰かの声が聞こえた。辺りを見まわしても、僕とあの子以外の人影はない。
「…今のは、一体…」
僕はただ、呆然と立ち尽くした。
淫藤宗光/ヒトラーvs竜崎天馬(M)&檀隼人(M)「ヴァレンシュタイン作戦」
>55
洋上を行く新・天翔馬号。
その前に現れる、メッサーシュミット。
「お出迎えが来たか・・・行くぜ、ペガサス!」
メッサーシュミットを前に、さらに加速する新・天翔馬号。
二重反転式プロペラが、その音をさらに高める。
そして先頭のメッサーシュミットとすれ違い、
刹那。
メッサーに無数の弾痕が穿たれていた。
しかし、敵はそれだけではない。
グレムリン――伝承に語られる空の怪物。
退去して押し寄せるそれを完全に躱しきれず、何匹かが新・天翔馬号に取り付く。
「くっ! 舐めるな!」
機体を反転、宙返りのような姿勢を取らせる。
天地が逆となり、機に固定されているわけではないグレムリン達はたまらず離れる。
そこに反転を終えたした新・天翔馬号が突っ込む!
『GYUUUAAAAAAAAAAAANAAA!!!!!!!!』
言語化出来ないような叫びと共に、グレムリン達が引き裂かれる。
「この程度で、止まりは、しない!」
>38 vsタオロー
・
・
・
全ては終わった。
出来得る全てのことをした。
……ふと、思う。
この男は、人を殺め、返り血を浴びることが好きなのか、と。
答えは否。
修羅と自認する男は、哀しみの業を背負っている。
泣きながら人を殺めている。
「………お前、全然愉しそうな面しないんだな」
それがこの死合いの感想。
そう、それだけだ。
まあ、オレは愉しかったから文句は無い。
もし、一つだけ我が侭を言わせてくれるなら、
男の成すべきことが終わったその時、また殺り合いたいものだ。
じゃあな、復讐貴。
次に会えるときを、オレは愉しみにしているぜ。
“超純粋”幽祢vs“光の導き手”エミリオ(14歳ver)
夢幻歳華外伝
『よわむしなんてだいきらい』
>56
「どうしたの?
かかってこないならこっちから行くよ?」
なにやら、呆然としている彼を見ながら私は言霊を練りあげた。
自らの存在情報をエネルギーへと還元し、それをキューブ状のクリスタルへと組替える!
「え〜い♪」
そして、そのクリスタルを呆然とする彼めがけて放った!!
彼に激突したクリスタルから、彼の存在そのものをその場に縛り付ける捕縛呪が形成される!!
「あははは♪」
私は、空間転移で彼の目の前に移動し、首筋へと牙を突き立てた!!
流れ出る血とともに、彼の体から生命エネルギーを奪っていく。
もちろん、すべてを吸い尽くすこともできるのだが・・・・・・。
「ぷはぁ・・・・♪ごちそうさま♪」
あえて、死なない程度に抑えて首筋から口を離す。
そのまま、彼の体をぽいと投げ飛ばした。
どうかな?
「ねぇねぇ、どう?
やるきになってくれた?」
私は、ニコニコ笑いながら彼に問い掛ける。
天堂天山&ヤハベvs岩鬼将造 「魔界の首領(ドン)」
>42 >54
オレの危惧は当たった。
天堂が田舎ヤクザの始末に時間をかけすぎ、そのために反撃を許してしまったのだから。
「老人は話が長いからいけねぇや。」
ロケット弾に吹き飛ばされる天堂を一瞥すると、反対方向に弾き飛ばされた田舎者に向き直った。
手元でいじり回していた十字架の下端を、男のいる方向に向ける。
自らの義手が発した炎に照らされる、男の顔。
ごつごつとした醜い面相は、まるで荒野だ。
あの荒野を耕すために必要なものは鍬ではなく、鉛の弾丸だろう。
オレのすぐそばを、炎の舌がかすめて通っていく。
高熱で黒い衣が煙をあげた。
「オイオイ、この服はイタリア製だぜ・・・」
舌打ちしてから、十字架型拳銃の引き金を引いた。
一度、二度、三度。
>55>57 淫藤宗光/ヒトラーvs竜崎天馬(M)&檀隼人(M)「ヴァレンシュタイン作戦」
闇色の波を掻き分け、隼人の駆るボートは海上を進む。
最前から隼人の両眼は水平線の方角を凝視していた。
彼方に蛍光ピンクのベールが舞っている。吐き気を催す毒々しい色が、まるで生物の如く
のたくり蠢く。
だが、常人には見分けられはすまい。
隼人の霊的視覚が視たピンク色の紗幕――それは妖気であった。
「……これはまた。どえらい気だ。舐めてかかった訳じゃないが――」
呟いた隼人の顔に緊張の色が走る。『転校生』の超感覚は、魔界のベールの中から響く
銃撃音を捉えていた。
「ほう。俺の他に、あいつらに挑む者がいる、と言う事か――」
隼人はモーターボートの速度を更に上げた。
淫藤宗光/ヒトラーvs竜崎天馬(M)&檀隼人(M)「ヴァレンシュタイン作戦」
>57 >61
スクリーンから、撃墜されるメッサ―シュミットと引き裂かれるグレムリンを見て
宗光はひゅう、と口笛を吹いた。
「すごいなあ、大空のサムライってとこですかね」
その後に、感嘆したようなドイツ語が続く。
「見事だ……“レッドバロン”リヒトホーフェンに匹敵する……
或いはそれ以上か」
しかしすぐにヒトラーは声から感嘆のひびきをを拭い去る。
「奴が二つの“光”の勢力の一つである疑いは強まった。
しかし、この“アブラメリン魔術”による結界を突破できる者など
そうはおらん。
二つの“光”よ、我らの結界を破らねば、我らを止めることはできんぞ」
そして、宗光/ヒトラーは満腔の自信を込めて、毒々しいピンクの壁を見やる。
果たして伝説の魔術師アブラメリンの結界を敗れるか? “転校生”よ、竜崎天馬よ。
vs両儀式 エピローグ
>58
技を放ち終え我に返ったとき、すでに和装の剣士の姿はどこにも見えなかった。
残心し周囲をうかがっても気配はない。
“退けたのか?“
確信が持てない。
血振りをし納刀するまでにかなりの決心が必要だった。
雨は変わらず降りつづけ、ガイノイドの少女は
何事もなかったかのように傍らに立っている。
孔濤羅はまるでこれがが夢でるかのように感じた。
“夢、か
いっそ全てが悪夢であったなら、それはどれほどよかったか”
そう、友の裏切りも、妹の死も悪夢であってほしいと何度も願った。
だがこれは紛れもない現実。
その証拠に、瑞麗の依代であるガイノイドは今も傍らに立っている。
先ほど自身の手で腕にはめた銀の腕輪を少女から取り戻すと、
濤羅は歩き出した。
ガイノイドの少女はぎこちない動作でそのあとをついていった。
END
孔濤羅vs両儀式の纏めだ。
前スレ>419>420>421>424>448>452>457>462>463>469>473>481
現スレ>31>32>33>38>58
“超純粋”幽祢vs“光の導き手”エミリオ(14歳ver)
夢幻歳華外伝
『よわむしなんてだいきらい』
>59
あの子が、赤いクリスタルを僕に向かって投げつけた。
棒立ちになっていた僕に、それを避ける術などある筈もなく。
「か…身体が、動かない…!?」
一瞬にして、クリスタルに捕縛された。
『あははは♪』
あの子が、空間を飛び越えて僕の前に現れ――。
「くっ…あぁっ…!」
僕に抱きつき、首筋に噛みついた。
「うぅっ…うあ…ぐ…」
彼女が僕の首筋を吸うたびに、身体から力が抜けていく。どうすることも出来ず、僕はただうめきとも喘ぎとも言えないような声を漏らすだけだった。
『ぷはぁ・・・・♪ごちそうさま♪』
彼女はそう言ってから、僕の身体を投げ捨てた。
力が入らない僕の身体は、まるで打ち捨てられた人形のように地面に転がった。頭の中が真っ白で、何も考えられない。背中の翼は、すでに消えていた。
『ねぇねぇ、どう?
やるきになってくれた?』
もっと遊ぼう。そうせがむ含みを持った声で、彼女が問い掛ける。
<ほら…立てよ。ちゃんと遊んであげないと、あの子に失礼だろ?>
また、さっきと同じ声が何処からか聞こえて来る。
「あ、そ、ぶ…?」
<そうさ。これは遊びだ。僕らはあの子と遊んでるんだよ>
「あそ、び…」
<そう、楽しいお遊戯。ちょっと過激だけど、怖くなんかないんだ>
遊びなのか…そうなんだ…。
真っ白になった頭に響く誰かの声は、僕の全身にじわじわと広がっていった。
遊びなら…いいか。どうせ彼女は傷つかない。傷つかないなら、遠慮なんか要らない。だから…全力で遊ぼう。
起き上がり、片手を横に払う。
背中に、再び光の翼が現れた。
「――じゃあ、遊ぼうか」
薄い笑いを浮かべながら。僕は名前も知らない女の子に告げた。
――人外ヤクザ共の仁義無き戦い―― 天堂天山&ヤハベ vs 岩鬼将造
>54 >60
この状況からなら身動きは取れないだろうと思っていたが―――甘かった。
(こいつ………どんだけ武器を隠し持ってやがる?!)
そう思ったときには既に遅い。右膝から発射されたロケット弾はまともに天堂を捉え、
その衝撃で天堂の身体を岩鬼から引き剥がし、吹き飛ばし、床へと叩きつけた。
仕事を終えたロケット弾は後方のコンテナへと炸裂し、爆音を上げる。
「ぐ……畜生め……」
至近距離からの直撃は、流石にダメージが大きい。
床からのろのろと立ち上がった天堂は、腹を押さえながら苦しそうに低く呻いた。
「何が極道兵器じゃ………大の大人がオモチャ遊びなぞしてんじゃねぇ……!」
軽く、吹っ切れかけた感情をなんとか抑え、炎を吐く岩鬼の姿を見据えると、
天堂は、吼えた。
「うおぉぉぉぉらあぁぁぁぁっっっ!!」
そのまま、炎の壁に突っ込む。もはや多少焼け付く程度の事など気になりなどしない。
とりあえず、今、考えている事は一つだけだった。
(――――野郎………思いっきり一撃加えてやらにゃあ気が済まねぇ……!!)
比良坂初音vs青山素子 第1章 〜ひなた荘最後の日〜導入
ばちん!!
マルチは強烈な平手打ちを喰らい、教室のガラスごと廊下へふっ飛ばされた
平手打ちを喰らわせたのは彼女の主、比良坂初音だ。
「言ったはずよ・・・・手加減はするなと・・・」
そう言ってマルチの首根っこを掴み、持ち上げると今度はそのまま床へ叩きつける
「お前のその手心のせいで、かなこが危険にさらされるかも知れないのよ!!」
初音はごほごほと咳き込むマルチの背中をさらに蹴りつける
初音としてもここまでするつもりは無かったのだが・・・・・しかしこのマルチという娘
愛しさと同時に、すさまじいまでの嗜虐心をくすぐられるのだ
だからついやりすぎてしまう。
「何のためにお前に戦う力を与えたのか、これでは分からないわ
お前には私がもしいない場合、たとえわずかな時間でもかなこを守ってもらいたいのよ・・・・・」
初音はしばらく考えた後、廊下に横たわりえぐえぐと泣いているマルチにやさしく話しかける
「お前に狩りのやり方を教えてあげる・・・・・」
>68
比良坂初音vs青山素子 第1章 〜ひなた荘最後の日〜導入2
こうしてやってきたのがひなた温泉、もっとも適当に電車やらバスやら乗り継いでいた結果、辿り着いただけなのだが
何分、八重坂の街では頻発する怪事件とやらが色々と噂になりつつある、当事者としては好んで火種を蒔く
必要もないだろう。
初音はベンチに腰掛け、子蜘蛛たちからの情報を整理している・・・どうせ大した獲物もいないだろう
今夜は湯治かしら?と思っていた初音の目に子蜘蛛を通じて複数の少女たちの姿が映る
なかなかの粒ぞろいだ・・・・特に茶色の髪の少女(声がマルチちゃんに似ているのは気のせいかしら?)
と、厨房に立つ背の低い黒髪の少女がいい
これなら久々に楽しめそうだ・・・・・・。
「あの・・・ご主人様、お茶買ってきました」
舌なめずりしていた初音はマルチの言葉で我に返る
初音の折檻でぼろぼろになったその身体はすでに修復していた、そう彼女は機械であって機械ではないのだ。
「あら・・・ありがとう・・でもね」
そこで初音はマルチの顔を見ながら言葉を続ける。
「私は鳥龍茶はS社のしか飲まないと、この間教えたのでは無くって?」
マルチの顔色が見る見るうちに青くなって行く
そんなマルチの様子を意地悪く眺めながら初音は笑ってマルチの頭を撫でる
「ふふっ・・・・そんなことで怒りはしないわ、それより行きましょう、狩りの相手が見つかったわ
ほら、あなたにも見えるでしょう?」
子蜘蛛を通し2人の眼には旅館風の建物が映っている、その玄関には『ひなた荘』と書かれてあった。
>68
比良坂初音vs青山素子 第1章 〜ひなた荘最後の日〜導入3
広々とした入り口をくぐり、初音は挨拶もなしに中へと踏みこんでいく
「おお、モトコ帰った・・・なんや、お客さんか?」
肌の黒い少女とまだ幼い少女が初音の前に立つ、どうやら2人とも異人らしい
2人は初音の顔をじーっと見ると、相談事を始める。
「なぁ?サラ、この姉ちゃん知っとるか?」
「しらねー、モトコの知り合いじゃねーのか?似てるし」
「まぁ・・・・そのもとこって方は私に似てますの?」
思わず口を挟んでしまう初音。
「おう!似とる、似とる、でも姉ちゃんの方が綺麗やな」
「まぁ!うれしい・・・・ですけど残念ですわ」
そう言うなり、初音は常人の目には見えない糸を放つ
スゥとサラの首が血潮と共に刎ね飛ぶ
「可愛がってあげようかと思いましたけど、異人の肉は臭いが苦手で・・・ですから殺す以外に楽しむ方法がなくって・・・
ごめんなさいまし」
2人の首から噴水のように血があふれ出し、廊下を血の海へと変える。
その血の海を平然と初音は進んでゆく、と、行く手に1人の少女が倒れている。
この少女は・・・・たしかむつみとか呼ばれていたか?
余りの光景に既に彼女は気を失ってしまっている。
「貴方も容姿は申し分無いのですけど・・・・生命力が弱過ぎますわ」
気絶したむつみの心臓を伸ばした爪で貫き、トドメを刺すと
その傍らでみゅーみゅーと鳴く温泉ガメを踏み潰し、さらに奥へと足を進める。
>69
比良坂初音vs青山素子 第1章 〜ひなた荘最後の日〜導入4
お目当ての少女・・・確か、なる・・とか言う名前だったか?
少女は恋人らしい男と必死で窓から逃げようとしているが、ムダな事だ
この建物は既に結界で封鎖している・・・ただの人間には逃れる事は叶わない
初音はほくそえむと、2人の逃げ込んだ部屋のふすまを開け放した。
「に・・・逃げるんだ!成瀬川」
男は初音に必死で組みつき、少女を逃がそうとする・・・・
「ふふっ・・いい心がけだこと・・・・」
初音は微笑むと、そのまま男の身体を一気に爪で斬り裂く
上半身のみの無残な姿で男はごろごろと外へ転がって行く
「さぁ、これで邪魔者はいなくなったわ・・・・本当はもう一人欲しいのですけどそれはマルチちゃんに取っておいて
あげないといけないもので・・・・ですから貴方だけで我慢することにいたしますわ」
じわりじわりと初音は、なるに近づいてゆく
「あんたなんか・・・・あんたなんか怖くないんだから!!」
なるは手当たり次第に手近な物を初音に投げつけ、必死で抵抗する。
それが初音の嗜虐心を余計に刺激する事も知らずに・・・・
「ますます気に入ったわ、念入りに可愛がってあげる」
>70
比良坂初音vs青山素子 第1章 〜ひなた荘最後の日〜導入5
「狩り…ですか…?」
言葉の意味が解らず…私は…御主人様に訊ねました…
どんな事…と訊ねようとして…ちらりとお顔を窺います…
そこには…楽しげな…でも…ひどく残酷に感じる表情が見て取れました…
思い返してみると…今まで…留守を守ることはあっても…
自分から獲物を探しに行った事はありません…
でも…今の私では…巣を守ることはおろか…自分の身すら…守ることはできません…
そう…御主人様の…お役に立つには…もっと…頑張らなくちゃ…
心の隅に不安を残しながら…私はこくんと頷きました…
でも…そのときは…これから起こる惨劇など…夢にも思っていなかったのです…
…………………………………………………………………………………………
>71
比良坂初音vs青山素子 第1章 〜ひなた荘最後の日〜導入6
それから…しばらくして…
私は…御主人様に連れられて…ここの温泉へとやってきました…
中の様子を…子蜘蛛達が…囁き知らせてくれます…
お屋敷の中には…6人…くらい…それを…全て…狩るのです…
御主人様と………私が…
お屋敷―ひなた荘…から少し離れたところで…
御主人様の歩みがぴたりと止まります…
「…?…」
『いいこと?ここからは…ひとりでお行きなさい』
不安そうな表情の私に…諭すように…お言葉を続けます…
『心配することはなくてよ…お邪魔する入口が違うだけ・・・。
それに…あなたが狩るのは一人だけ・・・あとは私・・・
教えたでしょう? あの子を狩るのは赤子の手を捻るよりも・・・簡単な事よ。うふふ・・・』
ホッとすると同時に………もし…出来なかったら…と…不安がよぎります…
…つい先日…御主人様のお叱りを…受けたときの事を思い出し…
…ガタガタと身体が震えます…
……ご期待に…そえるように……しなくちゃ……
お屋敷の裏口からこっそりと入ると…あの子の姿を探します…
たしか…厨房の中にいる………
辺りを警戒しながら…厨房の中を覗き込んだその時
>72
比良坂初音vs青山素子 第1章 〜ひなた荘最後の日〜導入7
『あの……? どちら様ですか?』
いきなり…背中に声をかけられて…驚いて振り向くと
…私の目の前にいたのは…私と同じくらいの背の…黒髪の女の子…
…気弱そうな……どことなく…儚げな……そんな感じの子…
…いきなり振り向いた私に…彼女も驚いたみたいです
(…この子を……”狩る”…?……わたしが…?…)
御主人様は…このお屋敷の玄関に入ったところでしょうか…?
『あの……?』
何の疑いもせず…私を見つめる眼…微かに…不安げな…
「あ…はい…実は……」
私は…その子に怪しまれないよう…平静を装いながら…
気づかれないように…逃げ出さないように…ゆっくりと近寄りました
そして――――
>73
比良坂初音vs青山素子 第1章 〜ひなた荘最後の日〜導入8
「あの…ごめんなさい…」
私は…その子に…話しかけました…
…やっぱり…私には…この子の命を…奪うなんて出来ない…
…じゃあ……贄に………?…
…でも…それは…一生を…巣の中で過ごすという事………
…じゃあ…どうすれば……?
………嘘を………つこう………
そう…逃げられてしまったことにすれば……
お叱りは…受けるかもしれないけれど…
…でも…この子には…お日様の下で…笑っていてほしい…
―――「ここから…逃げてください……いま……すぐに…出来るだけ…遠くに…」
女の子は…怪訝な顔で…私を見つめていました…
でも…私の真剣な表情を信じてくれたのか…
『え…?あ、あの…避難訓練…ですか? か、懐中電灯は…』
…玄関の方からは…微かに…血の香りが…漂ってきています…急がないと…
…逃がさなきゃ…別のところから…御主人様に…見つからないように…
『あ…玄関からじゃいけないんですね? じゃあ…ここからなら大丈夫ですよ。』
…焦っている私を見て…女の子は…抜け道を教えてくれました…
『えへ♪ここって古い建物だから、こんな通路があちこちにあるんですよ』
…にっこりと微笑んだ女の子に案内されて…
…私は…狭い…暗い通路を…進んでいきました……
…この子の笑顔は…やっぱり…光の下に…あってほしいと思いながら…
>74
比良坂初音vs青山素子 第1章 〜ひなた荘最後の日〜導入9
…地下室には既に一人、先客がいたようです…
『しのぶ!?無事やったんやね!』
『あれ…?きつねさん?きつねさんも…訓練?』
私と一緒に来た子は…しのぶちゃん…
…すでにいた人の名は…きつね…さん?
『訓練?そんなんやない、ここには殺人鬼が入ってきとるんや』
『殺人鬼…?』
まだ良く解っていない顔で女の子―しのぶちゃんが聞き返します。
…きつねさんは拳を…血が滲むくらいに握り締めながら
怒りを隠そうともせず…吐き捨てるように…
『玄関にお客さんが来たみたいだったけど、うち、手が離せなくてな
少し経って行ってみたんや…そしたら…スゥと…サラが…っ……!
むつみまで……くそっ!…誰が…あんなむごい事を……』
『え…?』
『…殺されとったんや…3人とも…
嘘やないで…うちが…この目ではっきりと見たんや』
ようやく…事態を…理解したのか…蒼ざめた顔のしのぶちゃん…
胸に手を組んで…不安そうな表情で…
>75
比良坂初音vs青山素子 第1章 〜ひなた荘最後の日〜導入10
『そんな……なる先輩、景太郎せんぱいは?』
『………わからん。でも、なるとけーたろのことや、悪運だけは強いからな、あの二人。』
大丈夫…のはずや。』
きつねさんは…自分自身にも…むりやり納得させるように…
『……しのぶ。うちらはうちらでここから外に逃げるんや。
きっと――なるとけーたろも無事に脱出しとる。
……と、その子――いや、メイドロボか? ひょっとして―』
細い目をさらに細め、私に疑いを向けるきつねさん…
(…そのとおりなんです…私は…あなた達を…狩りに来た……でも…ちがうんです……
…私……なんて…こんなに矛盾しているの…?……どうすれば…いいんでしょう…?)
…そんな私の表情を見かねたのか…慌てて…しのぶちゃんが…
『ち、ちがいますよ、きつねさん。この子は私を助けてくれたんです…』
『…そやな。それに、メイドロボに人を殺せるわけあらへん。
しのぶを助けてくれたんは礼を言うわ。おおきにな。』
辛いなか…無理矢理に見せた…きつねさんの笑顔に…
…わたしは…本当のことを言い出すこともできず……
ぺこりと…頭を下げるだけでした…
>74
比良坂初音vs青山素子 第1章 〜ひなた荘最後の日〜導入9
「ふん・・・・余計な真似を」
マルチの造反----もっとも予測はしていたが-----を知ると
「ふふっ・・・・・わずかな時間でしたけどなかなか楽しませてもらったわ
恋人のそばへお逝きなさいな」
自分の身体の上で淫らに腰を振る、なるの身体を爪で引き裂き、初音は地下室へと向かった。
どうせ、こうなるとは思っていた、願っても無い機会だ
主従の重みを今度こそ彼女に思い知らせてやる。
初音は残酷に微笑む・・・・だが、その微笑の中には恐らく彼女自身も気がついてない憂いの色があった。
一方、そのころ血の海と化した廊下では自らのはらわたを散乱させながら
玄関へとはいずる景太郎の姿があった。
「知らせなきゃ・・・・・素子ちゃんだけは・・・・逃がさなきゃ・・・・・」
>61>62 淫藤宗光/ヒトラーvs竜崎天馬(M)&檀隼人(M)「ヴァレンシュタイン作戦」
迫る妖気の渦から目を離さず、隼人はひとりごちた。
「この結界、半端な魔術じゃないな。俺の『気』でも破れるかどうか」
暗天を見上げる。空中では未だ機械と妖物の死闘が繰り広げられていた。
「顔も見知らぬ相手ではあるが、ひとつ協力を要請してみるか。……乗ってくれるといいんだが」
そう言うと左手を高々と天に掲げた。と、掌が青白い光を放ち始める。
次の瞬間、夜空へ向けて迸った一条の閃光は、青い複葉機の背後に迫りつつある
悪鬼の群れを消し飛ばしていた。
『転校生』のみが有する『気』を操る奥義、その『気砲』であった。
続いて右手を翳す。こちらは黄金色に輝いたかと思うと、掌から人間の頭部程もある光球が飛び出した。
汚れた生ける死人すら浄化する『聖光気』である。飛び上がった球は、一直線に
複葉機へ向かって天を駆け上がる。
無論、複葉機の撃墜が目的ではない。見知らぬ共闘者に聖なる『気』を宿す為だ。
「説明もなしで悪いがな。あの戦闘機のパワーに『気』の力を上乗せすれば、さて?」
>76
比良坂初音vs青山素子 第1章 〜ひなた荘最後の日〜導入11
「ふふっ・・・・マルチちゃん上出来よ」
影のようにゆらりと地下室へ降り立った初音はマルチの造反を知った上で
言葉でマルチを嬲る。
「ええと・・・しのぶって言ったかしら?さぁ、手はず通りその娘を殺しておしまい」
「そしてこっちの余り物は・・・・・」
そこで初音はきつねの方を向き、言葉を続ける
「私が殺すことにするわ・・・・・・」
きつねは初音の凶眼を目の当たりにして、なお強がる。
「なんでや!なんでうちらが殺されなあかん!!そないな綺麗な顔しておいて、あんたそれでも人間か!!」
「人間か・・・ですって?くくっ・・・・・ふふふっ・・・・・」
きつねの言葉を聞いて、初音は心底愉快そうに笑うと、これみよがしに右腕を斑色の鉤爪へと変化させる
「見ての通りですわ・・・・・私は人間ではなくってよ・・・・さぁお話はおしまい、お別れですわ」
そこで言葉を切ると、初音はそのまま恐怖に硬直するきつねの身体を一息に引き裂いた。
>79
比良坂初音vs青山素子 第1章 〜ひなた荘最後の日〜導入12
目の前で…きつねさんは…御主人様の鉤爪に…引き裂かれていきました…
鮮血が飛び散り…私と…しのぶちゃんの頬を濡らします…
『…あんたも…バケモノの……仲間やったんか……
…やっぱり………だましたんやな…』
そう呟きながら…蔑みと憎悪の混じった双眸で…私を睨みつけながら……
スローモーションの映像のように…ゆっくりと…倒れていきます…
「!!…ちがう……違うんです……私は…本当に……」
私の言葉は…もう…耳には届いていませんでした…
きつねさんは…冷たい床に倒れ…目を見開きながら…血で床を染めて…
最後まで…ずっと…私を…睨んで……その短い生命を……終えました…
「しのぶちゃんを…殺す……?」
御主人様のお言葉が…頭の中に響きます……
…そう…それをするために…私は…ついてきたのに…
…御主人様の…お役に立つために…巣を…奏子様を…守るために…
…でも…目の前の…恐怖に震えている子を…
…私を信じて…笑顔を見せてくれたこの子を………殺す……?
…でも……でも………
…堂々巡りの中…わたしは、…何も出来ず…何も答えることができず…
…幾度も…目の前の…恐怖にガタガタと震え…哀願する…女の子と
…私を…冷たく見下ろしながら…微笑んでいる…御主人様を…見比べ…
……ただ…立ち竦んでいました……
>80
比良坂初音vs青山素子 第1章 〜ひなた荘最後の日〜導入13
「ふふっ・・・・・マルチちゃんどうしたの?」
意地悪く初音はマルチに問い掛ける。
一方、マルチは完全に怯えきったしのぶを前にして・・・・救いを求めるように初音を見つめている。
その表情は初音の心の中の苛立ちを加速させた・・・・・何なのだ、この気分は・・・・
「そう・・・・なら殺しやすいようにしてあげるわ!!」
苛立ちを吹き飛ばすように声高に叫ぶと、初音は糸を放ち、しのぶの四肢を斬り落とす。
「ふふっ・・・・・この娘はもうすぐ死ぬわ・・・でもすぐには死ねない・・・・たっぷりと苦しむことになるわ
だから・・・・早く楽にしておやり、これならあなたが苦しむ事はない・・・むしろ人助けになるわ」
初音はマルチの耳元でそうささやくと、ゆっくりとマルチの両手をしのぶの首筋へと導いた。
>81
比良坂初音vs青山素子 第1章 〜ひなた荘最後の日〜導入14
「ひっ……!」
御主人様の腕が振り上げられて…私は…思わず…目を瞑り…身体を…縮こませました…
…でも…それは…私へのお仕置ではなく……
……いえ…やっぱり…私への…お仕置だったのです
目の前の…しのぶちゃんの…細い手足が…赤い血に塗れ…身体から離れ…
…まるで…風に吹き飛ばされる…木の葉のように…空を舞っていたのです…
「あ……あぁ……そん…な……」
…四肢を失った身体から溢れる鮮血に…呆然としている私の手を…
…御主人様は…しのぶちゃんの…その白く…細い首に…優しく添えてくれました…
『助けて…お願い……』
か細い…しのぶちゃんの声が…わたしの耳から…入ってきます…
『こんなの…嘘…ですよね…? だって…助けて…くれたんだもん……』
(…しのぶちゃんを…助ける?…楽にして…あげる…?…でも…ころして…?……)
…頭の中をグルグルと廻る…こたえの出ない…問いかけに……
…両腕は…ガタガタと震え…力を入れることも…できません……
「うぅ…ごめんなさい……ごめんなさい……」
私は…ただ…泣きじゃくりながら…命を終えようとする…目の前の子に…
…同じ言葉を…繰り返します…
自分が殺すはずだった相手に向かって…何を言っているんだろう…
こんな…こんなはずじゃ…なかったのに……
私はただ…しのぶちゃんは…太陽の下で……微笑んでいるのが…似合っている…
ほんとうに…ただ…そう思った…だけなのに……
何回「ごめんなさい」を…言っていたのか…
…我に返った時には…
目の前の…動かなくなった…女の子の…魂の抜け殻と…床に散らばった…細い手足に…
…自分の無力さと…もう…戻れなくなってしまった…墜ちてしまった…自分の魂を…感じながら…
…霞がかかったような…おぼろげな意識のまま……身体を…預けていました……
>82
比良坂初音vs青山素子 第1章 〜ひなた荘最後の日〜導入14
「しっかりなさい、マルチちゃん」
初音はマルチを抱きとめ、優しく言い聞かせる
「酷な事をさせてしまったわね・・・・・・でも苦しむ事はないわ、あなたは殺していないもの・・・・」
マルチの頭を撫でながら、さらに言葉を続ける。
「私が間違っていたわ・・・・・無理にあなたを汚そうとした・・・・・でもやっぱりあなたはあくまであなたらしく
仕えてくれればいい・・・・それがわかったわ」
(それにしても私も甘くなったもの・・・・・・)
苦笑しながら、マルチに口付けようとしたとき
初音は自らの張った結界が破られるのを感じた、どうやらなかなかの使い手がこの場所へ足を踏み入れたようだ
なら・・・・狩りの時間はもう終わりだ。
「さぁ、早く駅へお戻りなさい・・・・これから戦いが始まるわ」
初音はマルチを外へと送り出すと、侵入者を迎え撃つべく準備を始めた。
>60>66 天堂天山&ヤハベvs岩鬼将造 『関東ヴァンパイア一家 喧嘩血祭り』
血みどろの修羅場にはもはや物足りない程の三発の銃声。
神父姿の男が撃ったそれは、しかし意外な効果を上げていた。
不死身の悪鬼と見えた将造がよろめいたのである。心臓からは僅かにそれているが、左胸には
更なる赤色が刷かれていた。
「若……痛ぇ、痛ぇッスよお……」
三太郎はそれだけ言うと、ごぼ、と口から血塊を吐いて崩れ落ちた。
拓三の方は既に地に伏している。頭部の辺りの床は濃い赤に変じていた。
「……おんどれ……」
痛みではない痙攣に震える将造は、黒風と化して疾り来る吸血鬼を睨み据えた。
「クソじじい!! 地獄へ逝きさらせええええええ!!!」
左手から業火を噴出させながら、『極道兵器』は地を蹴った。
比良坂初音vs青山素子 第1章 〜ひなた荘最後の日〜 素子側導入1
>83
桜の見頃は過ぎてしまったが、私はこれぐらいの葉桜も好きだ。
先日の花見が思い出され、わずかに苦笑する。
その後、一瞬にして表情をひきしめる。
いかん、いかん。私は修行の身。たるんでいてはいけない。
「ただいま、帰り―――」
玄関へ手を掛けようとして、わずかな違和感を感じ手を止める。
これは…邪気?
わずかだが、ひなた荘の中から不穏な気が流れ出ている。
それに加え何者かによって結界が張られているようだ。
「魔」の者と闘った経験がなければ、私もここへたどりつけなかったかもしれない。
それぐらいに見事な結界だった。
今のひなた荘の存在を認識できる者は、この街にはほとんどいないだろう。
何があった?
結界のほころびを探そうかと考えていると、わずかながらある匂いが感じ取れた。
「これは、血の臭い? 結界の向こうからか!?」
普通ならば、結界の向こうの匂いを感じ取ることなどできない。
私が優秀だからではなく、おそらく…
「誰か、大怪我をしてるのか?」
時は一刻を争うようだ。この結界をうち破るしかない。
私はゆっくりと愛刀『止水』を抜く。
「今」の「流れ」を感じ取り―――流れのままに剣を振るう!
「神鳴流奥義、斬魔剣弐の太刀!!」
私の放った奥義は扉を傷つけることなく、結界だけを切り裂いた。
その刹那…咳き込むほどの生臭い匂いが吹き付ける。
「みんなは無事か?」
無事に決まっている。なんの確証も無いが、ひなた荘に何かあるわけがない。
根拠もなくそう思いながら、私はあらためて玄関の扉を開けた。
比良坂初音vs青山素子 第1章 〜ひなた荘最後の日〜 素子側導入2
>85
人のわずかな意志など、運命の神は見向きもしていないのだろうか?
私のささやかな願いを裏切るように、玄関には二つの遺体があった。
「スゥ…サラ…」
地面が揺らぐような感覚がする。ガラガラと何かが崩れるような音すら聞こえてくるような気がする。
スゥとサラ、二人の身体には首がなかった。
見回すまでもなく、すぐ首は見つかる。それからは何の表情も感じ取れない。
自分たちの身に何があったかすら分からなかったのだろう。
苦しまなかったのなら、せめてもだ。
あまりの事に感覚が麻痺していたのだろうか?
ボンヤリとそんな事を考えていると、またむせかえるような血臭が襲って来た。
気が付けば、…逆に言えば今まで気が付かなかったのだが、私は血の海の真ん中に立っていたらしい。
慌てて口元を押さえ、トイレに駆け込もうとすると…むつみさんが居た。
いつもよりわずかに青い表情で静かに眠っているようにも見える。
「む、むつみさん? また、気絶したんですか?」
震える声で、なんとか軽口を叩いてみる。
よくよく見れば、むつみさんの身体にはわずかな傷口があった。
しかし、それは心臓の真上にある。―――致命傷。
再びわき起こる圧倒的な喪失感。さっきまであった嘔吐感すら無くなってしまった様だ。
視界の端には無惨に踏みつぶされた、たまの姿があったのだが、
それに気付かないまま、私は呆然とし続けていた。
>64はミスだ。
孔濤羅vs両儀式の纏めだ。
前スレ>419>420>421>424>448>452>457>462>463>469>473>481
現スレ>31>32>33>38>58>63
比良坂初音vs青山素子 第1章 〜ひなた荘最後の日〜導入3
>86
どのくらいそうしていたかはわからないが、実際にはほんのわずかな間なのだろう。
私の耳に、なにかひきずるような物音が聞こえた。
「誰だ! 誰かいるのか!?」
止水を構え直して目を向ける。そこには、浦島がいた―――上半身だけの。
何も考えられず、ただ駆け寄る。
「しっかりしろ、浦島ぁ!」
「モトコちゃん…逃げ…」
「しゃべるな、もうしゃべらなくていい…!」
私に何ができる? 必死に考えたが何もできない。
否、誰がここにいようとも今の浦島に何かできる筈もない。
「逃げて…モトコちゃんだけでも…逃げ…」
そして、気付いた。
浦島はもう私の姿が見えている訳ではない。
ただ私に「逃げろ」と伝えたい、その一心でこんな身体でここまで来たのだ。
「もういい…もういいんだ、浦島……」
今まで麻痺していた感情が一気によみがえる。
「…浦島ぁ……!」
私は止水を掴む事すら忘れ、両手で浦島を抱え込み
その目が閉じるまで泣き続けた。
比良坂初音vs青山素子 第1章 〜ひなた荘最後の日〜導入4
>88
なる先輩の事はあまり語りたくない。
私ですらわかるほどの明らかな陵辱の跡があった。
(だが…その表情に微妙なものを感じたが、気のせいだろうか?)
もはや私の感情は哀しみなど通り越していた。
誰がこんな事を? そして、そいつは今どこに?
先程の結界といい、明らかに人外の魔物の仕業に間違いない。
心の動きを無理矢理抑え付け、気の流れを感じ取る。
不覚にも皆の笑い顔が思い出され、何度も泣き出しそうになったがなんとか気配を掴んだ。
地下室の方から魔の気配が漂ってくる。
何故今まで感じ取れなかったのだろうかと思うぐらいの禍々しい気配。
それほどに私が動転していたのか、それとも―――もはや、気配を隠す必要がなくなったか。
再びわき起こる不吉な予感を振り払うように、私は地下室への階段を駆け下りる。
……そこも血の海だった。
無惨に引き裂かれたキツネさんと、…さらに残酷にも四肢を切り飛ばされたしのぶが居た。
二人ともこときれているのは、一瞬で見て取れる。
そして、まだ空気が生暖かい。魔の気配もずいぶん濃い。
その気配は隠し通路の方に続いていた。
二人を…いや、ひなた荘の皆をこのままにしておくのはつらいが、気配を追う事にする。
「皆…仇はとるから、少しだけ待っていてくれ……」
>83
比良坂初音vs青山素子 第1章 〜ひなた荘最後の日〜導入15
…結局……私は…狩ることはできませんでした…
…でも…御主人様は…そんな私を叱るどころか…優しく…
『さぁ、早く駅へお戻りなさい・・・・これから戦いが始まるわ』
「え…? 戦い…? …まだ…?」
どうやら…狩りは…まだ終わってはいないようです…
…私を…戻らせるという事は…”ちから”が必要な…相手なのでしょうか…?
…不安そうな私の表情を感じたのか…御主人様は…静かに仰いました…
『大丈夫よ。少し遊んでいくだけ・・・気に病むことは無くてよ。』
「…はい… お気を…つけて…… 」
こくんと頷き…わたしは…血塗られた…ひなた荘を…後にしました…
比良坂初音vs青山素子 第1章 〜ひなた荘最後の日〜
>89>90
隠し通路を抜けると、そこは再びひなた荘本館前の広場だった。
そこに立っていたのは、漆黒の制服に身を包んだ長い黒髪を持つ少女。
間違いない、この女が「魔」だ。
「貴様だな。貴様がみんなを……っ!!」
止水を真っ直ぐに突きつける。
女がこちらを値踏みするような目をしたような気がしたが…
その表情は私の怒りに油を注いだ。
「貴様がみんなを殺したのかぁっ!!」
返事も聞かぬまま、私は真っ直ぐにその黒髪の女へと斬りかかった。
比良坂初音vs青山素子 第1章
〜ひなた荘最後の日 外伝 戦慄のナハツェーラー〜
「クックックッ、大量にイキのいい獲物がいると匂いがするな……」
唇を歪めて、その男は笑った。
彼は超越者―吸血鬼。
夜には獲物を狩ることもある。
そして、たまたまその旅館が眼に入った。
あとはやることは決まっている。
彼は裏口から厨房に入った。
「……おっと、これは迂闊だったな」
彼は厨房においてあった一升瓶を弾みで落としてしまった。
「まあ、いいか、誰か来れば、それが最初の犠牲者になるだけだからな」
瓶が割れ、中身が床にぶちまけられる。
そして、異臭があたりを覆った。
「……こ、これは!? ぎゃああああああああああああああああああ!」
男は悶え苦しみ……
そして、息絶えた。
男の身体が灰に還っていった。
――割れた瓶のラベルには『精力補充、ニンニクエキス!』とかかれていた。
>91
比良坂初音vs青山素子 第1章 〜ひなた荘最後の日〜
「ええ・・・そうよ」
初音はにこりと微笑むと、素子の剣を右手の爪を伸ばし受けとめる
「それにしても私達良く似ているわね・・・・あの異人の娘が言ってた通りだわ」
そう言って、初音は素子のがら空きの胴体に左掌底を叩きこむ
「だから・・貴方も可愛がってあげる・・なるって娘みたいにね!」
一方、そのころ
「そう・・・だ・・まだやらないと・・いけないことが・・・・」
浦島景太郎は、息を拭き返していた。
この男の生命力はまさに人間を超越している・・・・
景太郎は震える手で携帯電話のボタンを押す
「もし・・もし・・・・警察・・ですか」
最期の力を振り絞り言葉を紡ぐ・・・・・
「ひなた荘・・・・・皆殺され・・・・・素子・・・・長い髪の女の娘・・セーラー服・・・早く・・・・・」
さしもの彼もここまでが限界だった。
それだけ言い終わると、今度こそ本当に浦島景太郎は息絶えた。
天堂天山&ヤハベvs岩鬼将造 「吸血兇状旅」
>66 >84
田舎ヤクザ顔面を耕すつもりで放った銃弾は、奴の胸に吸い込まれた。
二発目と三発目は、田舎者の子分である二人組の頭と胸にそれぞれ風穴を空けた。
オレの思惑とは少し違う結果になったが、そう悪くもない。
よろめいた田舎ヤクザの顔に今度こそ命中させてやろうと、十字架型拳銃を構えた。
その時、天堂の叫びが倉庫内の空気を震わせた。
信じ難いほどの速度で、田舎ヤクザに向かって駆ける。
田舎ヤクザもそれを迎え撃つべく、獣のように吠えて跳躍した。
その左手からはいっそう激しく炎が噴きあがり・・・一筋の炎がオレの足元にまで伸びてきた。
「うわっちっちぃ!なんでオレの方にまで飛ばすんだよ!」
炎はオレの靴とズボンを巻き込んだ。
比良坂初音vs青山素子 第1章 〜ひなた荘最後の日〜
>93
「ぐっ……!」
魔の者の見た目が当てにならない事は頭では理解しているが
実際に体験するのは何年ぶりだろう?
凄まじい力の掌底が叩きこまれる。
しかもまだあの女は余力を残しているようだ。
「巫山戯るな。私と貴様が似ているだと?
それに、可愛がるだと?」
間合いを取り直し、止水を構え直す。
そして気の流れを剣に集めて、大きく振り上げる。
蓄えられた気が三日月の様な形を取り、閃光となって女に向かう。
「侮辱するのもいい加減にしろ!」
秘剣! 斬空閃!」
私はこの斬空閃を何発か続けて撃つ事ができる。
体勢が崩れたところを仕留めてやる……!
>95
比良坂初音vs青山素子 第1章 〜ひなた荘最後の日〜
「あら?その技・・神鳴流ね」
初音はひらりと宙を舞い素子の放った気刃を避ける
「確かに神鳴流は華麗かつ豊富な技で知られる退魔剣術ですけど・・・・・・」
素子の背後に降り立つと、そのまま素子の耳元で言葉を続ける
「技の習得に気を取られ・・・基礎をおろそかにしては無いかしら?」
素子が振り向き、剣を振るうより早く、初音は屋敷の中へと逃げ込む
「鬼さんこちら・・・うふふふふっ」
比良坂初音vs青山素子 第1章 〜ひなた荘最後の日〜
>96
斬空閃を避けられた事よりも、奴が神鳴流の名を知っていた事に愕然とした。
基礎をおろそかにしているだと?
巫山戯るな。私がこの技一つ一つを身につけるために
どれだけの修行をして来たと思っている!?
振り向きざまの抜き打ちも届かない。
「鬼さんこちら・・・うふふふふっ」
顔が紅潮するのが感じられるほど、私の怒りは膨れあがっていた。
「鬼だと? 鬼は貴様だ。
私が…この私が、神鳴流の名にかけて貴様を地獄に叩き帰してやる!」
ひなた荘へと逃げていく女を追いかける。
逃がさない。絶対に逃がしてなるものか。
私の頭にはただそれだけしかなかった。
――人外ヤクザ共の仁義無き戦い―― 天堂天山&ヤハベ vs 岩鬼将造
>84 >94
『うおぉぉぉぉらあぁぁぁぁっっっ!!」』
『クソじじい!! 地獄へ逝きさらせええええええ!!!』
火の海となりかけている倉庫内で、二人の叫びが木霊する。
二人とも相手を完全に睨み付け、一歩も臆する事無く、
真っ直ぐにブチ当たろうとする。
――天堂は鉤爪を振りかぶりながら。
――岩鬼は左手から未だ火炎を撒き散らしながら。
お互いが止めとなる一撃を放とうとしている事は明らかで、
お互いとももはや相手をブチ倒すことしか頭に無いのも明らかだろう。
天堂の狙いはただ一つ―――相手の、腹。
(ドテッ腹に――風穴あけてやろうじゃねぇかっ!)
そして、一瞬の、交錯。
天堂の右手は、確かに岩鬼の腹を貫いていた。
>97
比良坂初音vs青山素子 第1章 〜ひなた荘最後の日〜
ひらりひらりと素子の剣をかわしながら、初音は思う
ここまで嬲り、嘲りがいがある相手は久しぶりだ・・・・
なら・・あの仕掛けも無駄ではなかったということ
あれを見たら、彼女はどんな顔をするだろう、どんな声で泣くだろう
そう考えるだけで、初音の口元はほころんでいく。
メチャクチャに剣を振り回し、なおも追いすがる素子をちらりと見やると
初音は糸屑の煙幕を張る、周囲が白いもやで包まれ視界は全くといっていいほど利かなくなる
そして、もやが晴れたとき、すでに素子の前から初音の姿は消えうせていた。
>94>98 天堂天山&ヤハベvs岩鬼将造 『実録・天堂組外伝 吸血の掟』
ぞぶり、と鈍い音がした。
将造の背から血染めの巨腕が姿を現している。――天堂の手だ。
傷口から湯気を立ててソーセージ状の物体がはみ出していた。云うまでもなく、腸である。
もう血は吐いていない。吐くほどの血は流し尽くしている筈だ。
この期に及んで『極道兵器』の顔に浮かぶのは、それでも微笑であった。
「これが、わしの最後の秘密兵器よ……」
かすれた声が洩れ、同時に生身の右手が天堂の喉へ叩き込まれる。速さより重さを重視した様な一撃、
それは天堂の喉元を掴んでいた。
「馬鹿力じゃあ!!」
かつてサイボーグの腕すらひしいだ生得の怪力を以って、将造は天堂の喉輪を締め上げる。
比良坂初音vs青山素子 第1章 〜ひなた荘最後の日〜
>99
敵はひなた荘へと逃げ込んだ。
この中ならどこに何があるか目をつぶっていてもわかる。
隠し通路の事も多少なら知っている。逃す心配など全くない。
そう思った矢先、視界が真っ白になった。
煙幕かと思ったが、違う。これは細かい糸屑の様だ。
吸い込むと何があるか分からない。
少し離れて一つ息を付いた後、再び剣を振るう。
「はぁっ!」
気の流れが螺旋状になり、糸屑が吹き飛ばされる。
不意打ちを警戒したが、逃亡のために目くらましをしただけらしい。
目を閉じ、魔の気配を探る。
「そちらか…逃さんっ!!」
―――頭に血が昇り過ぎていた私は気付かなかった。
ここには遺体がいくつもあった筈なのに、
血の海しか残っていなかったという単純な事実を。
私は炎に誘われる羽虫も同然だったのだ。
>101
比良坂初音vs青山素子 第1章 〜ひなた荘最後の日〜
初音は背後から迫る素子の姿を認めると、そのまま振り返って素子と向かい合う。
「あら・・・流石ね、もう見つかってしまったわ」
その表情はあくまで余裕だ。
「そんな素子さんにご褒美よ・・・お友達に会わせてあげるわ」
初音は自分の背後のふすまを勢いよく開け放つ
そこから姿を現したのは巨大な蜘蛛
いや・・蜘蛛なのは下半身のみだ
上半身は複数の人間の肉体が歪に組み合わされている
その人間たちとは、なるでありしのぶでありスゥ、サラ、むつみ、きつね・・・・・
ここ、ひなた荘にて初音の手にかかった者たちだった。
「さぁ・・・・お友達同士、楽しく遊んで頂戴な」
ぎちぎちと脚を鳴らしながら、人蜘蛛は素子へと迫っていく。
「お願い!今度こそ殺して・・・・・・私達殺されてなおこんなことを・・・」
「そや、はよううちらを楽にしてんか!」
「素子さん・・・・・頼みます・・・・・」
醜悪な人蜘蛛と化した彼女達は口々に素子に哀願する
だが、願いとは裏腹に、身体は素子を殺そうと爪を振るい、牙を剥く
少女たちの悲痛な表情を眺めながら、初音は心から愉快そうに微笑む。
「さぁ、どうなさるのかしら?素子さん」
比良坂初音vs青山素子 第1章 〜ひなた荘最後の日〜
>102
ひなた荘に帰ってから何分も経っていない筈だが、
私はずっと悪夢の中にいるような、そんな非現実感の中にいた。
大きな喪失感がそうさせていたのかもしれない。
現実を認めたくない心が、ずっとあったのだろう。
だが、そんな悪夢など今の光景に比べれば、子供だましのような光景だった。
「そ、そんな…私は、私は…!」
剣を振るう事も忘れ、赤子のように首を振る。
どうしたらいいか分からなかった。
かぎ爪が私の制服を裂き、牙が肉を抉る。
それでも私にはどうする事もできなかった。
ただただ、後ずさりする。
「やめ…こんなの……イヤだ…っ!」
傷の痛みなど感じない。ただ、ここから逃げ出したかった。
神鳴流も何もない。ただの少女の様に私の身体は震え続けていた。
>103
比良坂初音vs青山素子 第1章 〜ひなた荘最後の日〜
「ああっ・・・素子ちゃんごめんなさい!!」
「すまん、かんにんや」
少女たちは涙を流しながら素子に詫びるが、しかしその身体はさらに素子を傷つけて行く
初音はそんな悲惨な光景を心からの笑顔でうっとりと眺める
しかし・・・今一つ刺激が足りない・・・ここらでもう一押しするか
「ああ・・そうそういい事を素子さんに教えてあげますわ
貴方の命を彼女達に差し出せば・・・もしかして皆様もとに戻れるかも・・・・・
試す価値はあるのではなくって?」
この一言を聞いては蜘蛛の少女たちも泣いてばかりはいられない
必死の形相で素子を説得する。
「だまされたらあかん・・・うちらのことはええから!!」
「そうよ!!化け物のいう事なんて信じちゃだめ!」
初音は素子を試すように・・・・ゆっくりと問い掛ける。
「さぁ・・・どうなさるの?早くしないと手遅れになるわよ・・・・くすくすくす」
比良坂初音vs青山素子 第1章 〜ひなた荘最後の日〜
>104
「それは本当か…?」
ふらりと立ち上がる。あの女の言う事を信じられる訳などない。
それでも一縷の望みがあるのなら、その言葉に賭けて見るべきではないか?
それは言い訳だ。私はここから逃げ出したかった。
もうイヤだ。例えそれが死という逃げ道でも、私には甘美な手招きに思えた。
止水を捨てようとして―――気付く。
みんなが助かるのはいい。その為なら命なんか惜しくも何ともない。
だが、あの女が生きていれば同じ事ではないか?
またみんなが…いや、それ以外の人々までが同じ目に会うのではないか?
血が出るほどに唇を噛みしめる。
駄目だ。あの女の誘いには乗れない。
道は自分で切り開く。
「みんな…もしもの事があっても、私も後で必ず行くから…」
大上段に止水を振りかぶる。
魔のみを滅ぼす技、これならばあるいは蜘蛛のみを切り離せるかもしれない。
「神鳴流奥義、斬魔剣弐の太刀―――!!」
これ以上ないほどに気の流れが高まる。私の生涯で最高の一太刀なのは間違いない。
頼む、成功してくれ。
先程捨てかけていた神仏への祈りを、私は再び行った。
>105
比良坂初音vs青山素子 第1章 〜ひなた荘最後の日〜
「まぁ!お友達になんて酷い事を」
言葉こそ余裕だが、初音は正直驚いていた
まさか・・・これほどの潜在能力を秘めていたとは・・・・・
少女たちの身体から、わずかずつだが蜘蛛の部分が滅んで行くのが初音には見て取れる
すでに殺してあるとはいえ、これでは面白くない。
(もう少し楽しみたかったのですけど・・・潮時ね)
初音はポケットの中でぱちりと指を鳴らす、それと同時に人蜘蛛の身体がきしみ、砕けてゆく
「い、痛い・・苦しい・・」
「景太郎・・・助けてよ・・・・」
少女たちは悲鳴を上げながら。悶え苦しむ・・・そして轟音とともにバラバラに弾け飛んだ。
蜘蛛の部分は煙を上げて滅んで行く、後に残ったのは四散した少女たちの屍のみだ。
初音は素子にあくまでもやさしく話しかける。
「ふふっ・・素子さん?お友達を殺した気分はどうかしら・・・・・」
「貴方さえ、命を投げ出せば皆救われたかもしれませんのに・・・・・
全く未熟者が余計なことをなさるから・・・ふふっ・・・くくくっ・・・・うふふふふふ」
紅に彩られた広間に、初音の笑い声が響き渡っていった。
>30 vsユージン
「へええええ――あああばあああああ!」
触手の一本が彼――ユージンを壁に縫いつけたのを認めて、魔族は嬉しそうに歓声を上げた。
数本の触手が切り落とされた痛みなどとうに忘れて、両手を赤ん坊がそうするように、無茶苦茶
に振り回す。
「おーにいちゃああああん。ああそおびいいいっましょっ!」
叫びながら、魔族は少年の腕を貫いたままの触手をロープのようにうねらせると、二重三重に、
少年の腕へと絡み付かせた。
「なわとびい、なわとびいいいいい! おにいちゃあああああん!」
触手はユージンを壁から解き放つと、そのまま彼を、ひび割れた床へと思いきり叩き付けた。
肉がぶつかる音が、魔族の笑いを押しのけて、鈍く室内に響く。
「ひいとおおつう、ふたああつう、みっつうう――――」
一声ごとに、魔族はユージンを床に叩き付けていく。やがて飽きたのか、魔族はユージンごと、
触手を一気に引き戻した。
床を引きずる、鈍い音。ユージンが奏でる異音のひとつひとつに、魔族は目を輝かせて歓喜する。
「おぎゃあああああああ――あああかちゃああんでえええええええす!」
目の前にぶら下げたユージンに、魔族はそう楽しそうに宣言すると、口を開き――その中から現れた、
異様なほどに長く太い舌で、少年の顔を、べろり……とひとなめした。
>107
(まあ――よくもやってくれたものだな)
口から溢れる血が泡をたて、唇に張り付く。
それを魔族の舌が舐めあげていった。
唾液――それが妥当だろう。だが違う液体かもしれない。とにかく生温い、臭い液体――が
ぬるり、と頬を伝って顎から床に落ちる。
その滴る音が、魔族の舌がぽんと破裂する音でかき消される。
(かなりやられたな……肋骨が二本やられてる)
左手が蛇のようにしなり、次の瞬間には先ほど掴んだ触手の先端が魔族の目を潰している。
(内臓は無事……受身は取れたから)
返す手刀が閃き、腕に絡む触手を切断。そのままリキッドが焼き尽くす。
(しかし、無駄な傷を負ったな……もう少し大胆に攻めてもよかった)
自由を回復した右手が首を刎ねた。やたら大きな頭蓋がくるくると宙を踊る。
(やれやれ……この傷、治るのに何日要るかな)
腹に再び手を突き立てて、抉る。傷口を広げ、血管を露出させるために。
こんどこそ、仕留める――リキッドを手から噴出させる
何故かはわからない――――しかし、貴方達は闘技場へと送り込まれた――――
生き残る方法はただ一つ――――闘って、闘って、闘い抜くのみ――――
さぁ――――殺しあおうか?
(殴り愛〜今〜開幕)
(観客席から飛び降りる)
……3秒だ!!3秒で皆殺しにしてやる!!
さあ。掛かってこい!!!
>110
くだらない……さっさと終わりにしよう。
ビジュアル系の男に近寄っていく。
>110
よお、3流がいきがっているじゃねえか……
俺が相手してやるゼ……
(笑みを浮かべて)
んん、どうしたぁ……
(右手の鈎爪を四季に振り下ろす)
(何故か、闘技場の真ん中に放り込まれる)
・・・はっ!?
なんで、なんで俺はここに?
>110-112
(なるべく遠くに逃げて、音便に事を済ませようとする)
>110 四季
お宅も云ってくれるじゃねェノ?
二秒だ。二秒で終わらせてやる。
(不敵に笑うとゆっくり近寄る)
ああ、来たか!! 良いぜ、早速殺してやるよ親友!!
>112
クヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒッ!!
おい、テメェ誰に向かって口聞いているんだよ。
面白ぇじゃねーか!!
(振り下ろされた右手を掴み取り>111に投げ飛ばす)
>111
おい、オレはヴィジュアル系じゃ無いぞ。
秋葉のお兄さんだ!!
>114
来るなら来い……さあ!!!
>115
投げ飛ばされてきた>111を再び蹴り返す。
>115 >116
けっ、こザかしイ……
ヲイヲイ、どこ見てんだ?
アアン?
(横島に向けて一気に跳躍、勢いで鈎爪をふり下ろす)
>115 四季
いくぜぇ、キモノ・ボーイ!!
喰らえ、シャボンカッター!!
(波紋で高速回転させた掌大のシャボン玉を打ちこむ)
>110
(闘技場に落下)
いたた…危ないじゃないっすかぁ!
……それじゃとりあえず、いきましょっかぁ♪
>113
(横島に向かってダッシュ)
>117 惣太
はっ! 見つかった!
って、俺んとこなんざ、来るなぁ!
(ゴキブリの勢いで回避)
面白そうだねぇ……あたしも混ぜておくれよ!!
(全身からブレードを出現させ、四季に襲い掛かる)
>117
邪魔が消えたところで……
(>115に手刀を打ち込む)
まずは――ひとつ。
>119 キョウコ
(ピキーン)
お嬢さん! こんなところで一人っきりは危険ですよ!
是非とも、ボクがお側にー!
(こちらもカウンターのよーにダッシュ!)
>119 キョウコ
シニョリータ、此処に居るのは危ないぜぇ!!
デートのお誘いなら、後で受けるからさァ!!
>118
(カッターで右肩が切り刻まれ、血が噴き出る)
おい、痛ぇなぁ……これは痛ぇんじゃないのかなー?
(空中に巻き上がった血が、剣に変形)
じゃあ、オレもやってやっかー!!
(落ちてくる剣は片っ端から掴み取り、投擲投擲投擲)
>123
ふふ…おもしろそぉですねぇ♪
でもねぇ、あんまりキョウコに近づくと燃えちゃいますよぉ?
(思いっきり体温を上げてみる)
>126 キョウコ
はう・・・!
(触れるぎりぎりで回避)
く・・・ま、負けるかぁ!
(文珠で「断熱」結界を張り、抱き付く)
>121
ぐぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!! (身体で受ける)
くくくくく……フハハハハハハハハハハハハ!!
まだだ、もっと……もっとだ!! (血まみれ)
(身体でイヌガミの攻撃を受け、そのまま抱きついたあと、血刀でぶった刺し)
>122
チィィィィ……!! ――――ぐおぉ!! (顔面で受ける)
ヒ、ヒヒヒヒヒヒヒ!! (そのまま、ユージンの手を噛み付く)
>127
逃げンじゃねえヨ……
テンション下がるだろうが……
オイ……!
(横島の背後から貫き手を繰り出す)
>128
ちっ!!
(攻撃を腹に食らい、血塊を吐きながら)
いいじゃないか……その意気だよ!
(首筋を狙ったブレードの一撃)
>127
セ、セクハラですかぁ!?
そぉいうのはあまり好きじゃないんですよねぇ…
残念ですけどぉ、ごめんなさい♪
(腕から抜けだして突き飛ばす)
>125 四季
(剣で左腕を裂かれ、血が流れる)
くぅ、やってくれるな、ジャパニーズ・キモノボーイ!!
だがっ!この俺が貴様を倒すぜっ!
(四季に向かっていく)
>128
ふん……このまま焼くのはたやすいけど。
(拳を押し込み、歯をへし折る。指を一本食いちぎられても気にもとめない)
さあ……これでどうだ。
(腹を凪ぐ一閃)
>131 キョウコ
(殴り飛ばされて、(>129)惣太の攻撃は回避)
ぐ、はぁ!
・・・ま、負けるかぁ! って、また来たッ!
あんたもあんたで邪魔すんじゃないっ!
怪我するぞっ!
(霊波刀を構えつつ――――キョウコに再び肉薄!)
・・・って、この程度で諦めるかぁ!
>132
キヒヒヒヒヒヒ……さあ、来い!!
ぶっ殺してやるぜ!! 貴様の腸は秋葉の餌だ!!
>133
グフゥゥゥゥ……クククククク……残念だったな。
(>134の攻撃で首だけと胴体がオサラバ)
(ユージンに噛み付いたまま、呻く生首)
クヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒッ!!
さあ、どうするどうする!? ――――へぶらっ!!
■遠野四季:死亡
>135
(生首を払い落とす)
……まあ、どうでもいいけど。
(そのまま>132にむかっていく)
>134
しつっこいなァ…
そぉいう人、嫌いなんですよねぇ…
(バックステップで回避し、地面を溶かして追撃を防ぐ)
>135
ちっ、脆いねぇ。
>132>136
もっと楽しませなよ!!
(全身を回転させ、刃の竜巻となって二人に突進する)
>137 キョウコ
ってぇ!
(溶けた地面に足をとられて転ける・・・が、そのまま跳ね起きる)
地面が溶けてる!? なんて火力・・・だが、今の俺に効果はないっ!
お嬢さ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ん!
(意にも介せず、突進)
――断熱結界の消滅まで、あと3レス。
>135 四季
これがジャパニーズ・ボーイの最後か・・・・・・
敵ながら天晴れだぜっ!
(>129 >134 の様子を見て)
そこのソードを持ってるボーイ!!
助太刀するっ!!
>135
あれ?誰か死んじゃいましたぁ?
まぁ、いいんですけどぉ♪
>139
ま、まだ追ってくるんですかぁ!?
その根性に免じて…相手してあげましょっかぁ♪
(接近して貫き手から回し蹴りをしかける)
>136 ユージン
(視界の端で近寄ってくるのを確認する)
ヤツの止めをさしたアンタが相手か。
冷酷!残忍!そのアンタをこの俺が倒すっ!
>138 アズサ
(口上を言っているときに突進してくる)
何ィ!ちっ!
(何とか避けるも、胸を裂かれる)
熱烈歓迎は嬉しいが、熱い抱擁はベッドの中で十分だぜ!!
行け、シャボンカッターッ!!
(足めがけてを放つ)
>139
(いきなり横島の前に出没、鳩尾に蹴り)
女性の扱いを知らない奴はゆるさん!
>135 四季
(なんか聞こえた気もするが、今は目の前のお嬢さん!)
>141 キョウコ
(抜き手を脇に逸らすものの、回し蹴りをまともに喰らって吹っ飛ぶ)
見えた・・・今、見えたっ!
チラリとじゃなくもろに見えたぞっ!
――――ぷちん。
お嬢さ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ん!
(再び抱き付き!)
――断熱結界の消滅まで、あと2レス。
>142
冷酷? 残忍? ……どっちも暗殺者にいう台詞じゃないね。
(攻撃をしかけようとする……が、>138を見て飛び退く)
危ないな。……向かってくるなら、容赦はしないよ。
(土を掴みあげて投げ、目潰し)
>142>145
ハ! 面白くなって来たねぇ!!
(足目がけてのシャボン玉を、ふわりと跳躍してかわす)
(その際に目潰しは、あらぬ場所で弾ける)
まずは……歳食ってる方から行こうかね?
(跳躍し、そのままブレードを装着した踵を>142に落とす)
>144
ちょ、本気ですかァ?
闘技場で抱きついてくるなんて…
く…このッ―――離して下さいってばァ!!
(抱きつかれ中)
>146
無視してくれるとは……よほどの自信家だな。
だが……
(一瞬で背後に移動すると、その首に手をかける)
ほら、へし折るぞ。どうする?
>146 アズサ
歳がいってるとは失礼な!まだまだ若いんだぜ、俺は!
(横っ飛びに転がるように飛んで踵を避ける)
デートのお誘いを受けたからには、此方も全てを出すぜぇ!
喰らえ、シャボンカッターッッ!!
(両腕で掌大のカッターを作り出し、放出。一個は首、残りは胴体へ)
>147 キョウコ
あ、ああ! ええ感触や!
これや、これなんや!
俺が求めていたんは、これなんやぁ!
おじょうさ――――――
(押し倒そうと、体重を掛け・・・)
>143 都知事
(前に蹴り飛ばされた)
げ、げふっ!
何しやがる、おっさん!
ええとこやったのに・・・・・・邪魔すんなッ!
――断熱結界の消滅まで、あと1レス。
>147 キョウコ
大丈夫ですか!?お嬢さん!!
>150 横島
ふっ・・・・・・。俺は女のために戦う!
知っているか!?
世界で初めてのジャケットつまり背広は、
イギリスの「セビロード」にある小さな洋品店で作られたという!
ブラックアウト!
(暗黒騎士ガウザーに変身、剣で渾身の突きを放つ)
>148>149
・・・甘いね。SS級傭兵のこのあたしが、この程度で怯むと思ってるのかい?
(肉体の変化が始まる。全身が歪み、肉体が膨張し、
全身を硬質化した皮膚が覆う。
その姿は、爬虫類に似ている)
(肉体の膨張によりユージンの手が緩んだ所に、強烈な肘撃ちを腹に叩き込む)
(迫るシャボンカッターに対しては、高熱の火炎を吹き出す。
それは首を狙ったシャボンを蒸発させ、尚シーザーに迫る。
胴体の一個はアズサの胴体を抉るが、致命傷とはなり得ない)
>151
はい、大丈夫ですよぉ♪
格好いいお兄さん、ありがとぉございますねぇ
じゃあ…とりあえずこの人(>150)、殺っちゃいましょっかぁ
(というわけで>151と協力)
(>150の足を払いにいく)
>152
くっ……がはっ、く、くそっ、
ただの人間じゃないのか……
(指先から生じさせたリキッドに、腕の振りぬきで高圧をかけ――射出)
……ほら、爆弾つきのナイフみたいなものだ。これでも平気でいられるか?
>152 アズサ
こいつぁ驚いた・・・・・・ホントに熱烈歓迎してくれんのかい!
(地面を転がるようにして辛くも避けるが、余熱で右のブーツが焦げる)
近くでこれとはねぇ!熱いキスもほどほどにしないといかんぜ、シニョーリータ!
シャボンカッタァーッッ!!
(掌大のカッターを顔めがけて放出、左手でもう一個作り出すと、宙に浮かせる)
>151 ガウザー
んだとおい、格好つけてんじゃ・・・化けた?
こいつも化け物かっ!
ええい、もはや遠慮はいらねーっ!
(栄光の手で攻撃を捌きつつ、左手に文珠取り出す)
>153 キョウコ
ガ――――――――――――――ン!
そ、そんなヤツと手を組むのか・・・お嬢さん・・・
しかも、殺すって・・・ウゾッ!
あぎゃっ!
(足払いですっころばされる)
――断熱結界、消失。
>153 キョウコ
ああ・・・・・・そうするか。
女性の敵は生かしてはおけん!
(>153と協力)
>156 横島
ほう、俺の剣を避けるとは!少しはやるか・・・。
(弾かれた剣を構え直す)
だが、倒れた時点でお前の命は終わった!
(倒れた横島に飛び掛かり、両断を狙う)
>154>155
(両者に油断なく注意を配りながら)
いいね・・・最高。こんなのを待ってたんだよ。
最近は味わえなかった感覚さ!!
(リキッドを片腕で受けとめるが、爆発の衝撃により
吹き飛ばされる。だがその勢いすら利用して、
アズサはシーザーに肉薄する)
先ずは、一人、って所だよ。
(カッターをかわしながら、シーザーの胸へと抜き手の一撃)
>158
あれを防ぐ……どころか、利用か。
手ごわいな……
(しばし静観)
>158 アズサ
俺とダンスでも踊るつもりかい、セニョリータ?
全身全霊でエスコートするぜ!
(むしろ向かっていくように突っ込み、抜き手を半身ずらしながら回避)
(それと同時に先ほど放ったカッターをレンズにして相手の目に太陽光線を照射)
さぁ、踊ろうか?血色の波紋疾走(ブラディ・オーバードライヴ)!!
(左の流血に波紋を流し、無防備な口に血のブリッドを叩き込む)
>156
形勢逆転、ですねぇ♪
――――そろそろ遊びも終わり…ってコトで
(首を狙って手刀を放つ)
>157>161
うぉわっ!
(転んだところに二連撃!)
も、文珠 「斥」!
(斥力が発生、二人が触れる前に弾き飛ばされる)
・・・マジで殺す気ですか?
じょーだんじゃねぇ! 逃げるっ!
(ゴキブリさえ超えた速度で逃走開始!)
>160
(目くらましを食らい、怯んだ所に、血の弾丸が叩き込まれる)
ちぃっ――
(咄嗟の判断で、火炎を吐き出す。当然狙いは付けていない。
が、血の弾丸は瞬時に蒸発)
>163
(その怯んだ一瞬の隙を逃さない)
(背後からの手刀が首筋へと吸い込まれるように向かう)
>162 横島
何!?
(文殊の能力で弾き飛ばされる。立ち上がった時にはすでに横島は遙か遠くに)
ふん・・・・・・逃げたか。
もう少し骨のある奴かと思っていたが・・・情けないことこの上ないな?
そんなことだからもてないんだ・・・。
(剣を突きつけ、挑発してみせる)
>163 アズサ
これも駄目かよっ!最高だぜ、セニョリータ!
ならば此方も最高の技で応えるまでっ!
喰らえ、シャボンカッターッ!!
(レンズに展開した物を含めて三個、相手の首めがけて投げつける)
>164>166
(背後からの手刀が、アズサの喉を貫通する)
がはっ!!
(そして、前方から迫るシャボンカッターが、首に食い込む)
ちっ・・・しくじった、かね・・・
(ユージンのリキッド、爆発)
イヌガミ=アズサ 消滅
>162
(文珠により弾き飛ばされる)
いったぁ〜〜〜、お尻ぶつけちゃったじゃないっすかぁ!
って……あんな遠くに、逃げ足速いんですねぇ♪
これならもうちょっと遊んでも、おもしろそぉですよねぇー
ふふ……お兄さん、私ともっと遊びませんかぁーー?
今度はもうちょっと、相手してあげますからぁ♪
>167
さて、次は……今度こそあなたです。
(>166目掛けて貫手を一突き)
>165 ガウザー
むかっ!
女にもてない? 大きなお世話じゃっ!
つーか、なんであんたがそれを知ってる!
>168 キョウコ
・・・お、お嬢さんが俺の相手・・・ぐ、ぐふふふ・・・
はっ! いかんいかん。相手は俺を殺す気なんだ、
例えどんなに可愛くても・・・可愛くても・・・か・・・お、俺はどうすればっ!
(距離を保ったまま、グルグルと二人の周りを回る)
>165 >168 二人の前に覆面を被った男が現れた
「すまないが、引いてくれないか。君たちには忠夫を倒せない。」
>167 アズサ
最高に熱かったぜ、セニョリータ
(投げキッスを送る)
>169 ユージン
というわけで、改めて開始しようかぁ!
シャボンカッター!
(カッタ―を打ち込みしながら後方にジャンプ)
>172ツェペリ
うまく接近戦にもっていかないと辛いな……
(左腕を犠牲にし、カッターを叩き落しながらツェペリに迫る)
>170 横島
おや? やはり正解だったか・・・。
女性に好かれるような相手がセクハラなどするわけはないと思っていたが。
しかもその服装。金もないと見える・・・。
(立ったまま横島の挑発を続ける)
>171 ?
…………奴はこの俺が倒す。
邪魔をするな!
(警戒態勢)
>173 ユージン
腕を犠牲に防ぐだと!
・・・・・・命知らずは身を滅ぼすぜ、セニョール?
ならば、こっちも相応にいかせて貰う!
行けェ!シャボンカッターッ!!
(カッターを展開しながら後退したとき、>171の背中にぶつかる)
な!?し、しまった!
>170
ほらほらぁ、一緒に遊びましょうよぉ♪
楽しいデートになりますよぉ、きっと
>171
なんですかぁ?
邪魔しないで貰いたいんですけどぉ…
それとも、キョウコと遊んでくれますぅ?
>175
(ずたずたに引き裂かれた腕をかざしながら)
――――――もらった。
(手刀を繰り出す。が――)
な……なにっ!?
(シーザーの体勢が崩れたことで、逆に攻撃を外し、>171に手を突き刺してしまう)
>174 ガウザー
ぐがががが!
セクハラ!? ち、チクショウ・・・言いたい事いいやがって・・・
それに金は、金はかんけぇねーだろっ!
なんつーか、西条と同じぐらいムカツクヤツだ・・・今の内に片付けておいた方が、
あ、いやいや・・・さすがに敵わない・・・
>176 キョウコ
で、デート!?
デートですか!
はい! 行きます、行かせていただきます!
お嬢さ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ん!
(凄まじい勢いで砂煙を上げながら、突進!)
>171 には気付いていない。
>178
「ならば仕方あるまい。拳で分からせるまで!」
覆面を脱ぎ捨てそれを顔に引っ掛け、それ越しに殴りつける
「どうだ、この拳でなら思い出したろう。
それともまさか、忘れたのか。この拳を。
この、父の拳を!」
「お初にお目に掛かる皆さん。
愚息がお世話になっております。あ、これは名刺です。」
名刺を各人に配る
>180 大樹
ジャ、ジャパニーズ・ビジネスマンがなぜ闘技場に・・・・・・
(毒気を抜かれた顔で呟く)
>178 横島
ハッハッハッ・・・・・・。
これだけ言われてもかかって来れないとは、相当の臆病者だな。
(とまで言ってから、横島がキョウコに突進)
ふん、女絡みだと熱くなるか。
だが、やらせん!
(跳躍して横島とキョウコの間に立つ)
(そのガウザーの前に>179が出没して横島を殴る)
>180 横島大樹
あ、これはどうも。
(素直に名刺を受け取る)
>180
な、なにものなんだ、この男……
(呆気にとられて見やる)
<ロゼット一行vsナルバレック>
「さてと、私が此処まで出向いた訳は分かるな、シスターケイト?」
私は今、新教徒の国、アメリカに出向いていた。
理由は先日、ローマで悪魔が暴れる事件があったこと。
まあ、即座に始末させたが……
原因を調査してみると、現在、アメリカで起きている魔界を核とした悪魔どもの仕業らしい。
別に放置しておいても良いが、どうせ、刺激に餓えた身だ。
この際、アメリカの異端対策機関もろとも、一掃するのも悪くあるまい。
今回ばかりは、埋葬機関外の他の口うるさい司教どもも、諸手をあげて、私の提案に賛成した。
奴等は新教徒どもなら幾ら死んでも構わないらしい。
話を元に戻す。
今、アメリカ東海岸の某所でマグダラ修道会の幹部の1人、シスター・ケイトと交渉をしている。
交渉内容は『魔界と罪人の殲滅を埋葬機関』に任せること。
もちろん、シスター・ケイトは難色を示した。
30分ほど話をしたところで……
「そうか、ならば仕方ないな。実力行使させてもらうまでだ」
隠しもったナイフを一閃。
それだけでシスター・ケイトは、頚動脈を切断されて死んだ。
ふん、ここの幹部は戦闘能力もないのか。
『き、貴様っ!』
背後のシスター・ケイトの付き添いの神父の銃の撃鉄を起こす音がした。
「遅い」
その瞬間に私の投擲したナイフが神父の額に突き刺さった。
声も立てずに神父は倒れた。
「殺気ぐらい隠せ。楽しめやしない」
私はそう呟いて、交渉場所を後にした。
やることは決まった。
――今、マグダラ修道会の主力が結集しているサンフランシスコの奴等の拠点を徹底殲滅。
久々に楽しめそうだ……
>178
本当に来るんですかぁ!?
冗談半分だったんすけどぉ…
まぁ、面白くなりそ―――――ってなんで(>178)出てくるんですかァ!
しかもさっきのおかしな人まで前に……
別に、いいですけどぉ……つまんなぁい
>180
おじさん、サラリーマンか何かですかァ?
ま、キョウコの楽しみの邪魔しなければいいですよぉ♪
>184
サンフランシスコの奴等の拠点である修道院。
主力というから、期待して行って見れば、期待外れも甚だしかった。
そろいも揃って脆い。
エクソシストどもの銃撃などは撃つ前から既に回避できる。
視線、身体捌き、殺気、全てにおいて、単調極まりない。
それらが如実に私に弾道を教えているというのに……
銃撃を一通りかわしたところで驚愕する奴等の群れに黒鍵を数本投げ込み、爆発させる。
これを数回繰り返すだけで、抵抗するモノはいなくなった。
修道院に響き渡る悲鳴、それが心地よく、私の衝動を満たす。
だが、少々、不足気味だ。
まあ、いい。
このまま、悪魔どもの拠点に乗り込む。
少しは楽しめるだろう。
そう考えていたところに唐突に、背後の礼拝堂の扉が開いた。
そして、そこに3人の子供(ガキ)の姿があった。
「ふん、生き残りか。丁度いい、嬲り殺しにするか。さっきは、素っ気無く殺しすぎたんでな」
私は笑みを浮かべて、ガキどもに近づいていった。
>179-180 親父
(殴り飛ばされる)
・・・親父? なんで!?
いや、親父がこの場に? そうか、そうかそうか!
ふ、ふふふふ、ふふふははははははははははははははははははっ!
これは親父を殺せ、と言う啓示じゃっ!
間違いないっ!
子が親を越える瞬間が来たッ!
くたばれ、糞親父ぃ!
(霊波刀で斬りかかる!)
ちっ……状況が不透明すぎる。
ここは退く。
(客席をましらのように飛び去り、出口へ)
次は殺す。必ず殺す。
(……退場)
>187 何か感慨深げにうなずいてから目を見開き、白刃取りする
「そうだったな。お前の栄光は白刃取りから始まったんだったな。
父もそうなのだぞ。」
>179-180
>187
(変身を解く)
父親か……どうやら俺の出る幕はなさそうだ。
息子の更正は父親に任せるとするか……。
しかし、横島……なんてバカな奴なんだ!
(そう言い残し、姿を消す)
(暗黒騎士ガウザー/黒岩省吾・退場)
・・・・・・闘争の空気じゃないね、まったく・・・・・・
(退場)
>187>189 横島親子
陰謀と血の色の空から私は舞い降りた。
いや、特に意味はないのだが。
とにかく私は闘技場の真中に降り立った。
その際なんか(>187>189)踏んだ気もするがとりあえず無視する。
「え〜っと……」
一瞬の思考ののち、
「し ゅ 〜 り ょ 〜 ♪」
私は厳か……とは程遠い声で告げると共に、放射状に衝撃波を放った。
>186
『怒りと悲しみと涙と』
vs “殺人卿”ナルバレック
礼拝堂の中。ステンドグラスから差し込む光。そして、床に広がる『赤』。
その中心に立つは一人の女。
倒れ付す亡骸の中には、私の見知った顔がいくつもある。
私に支部の中を案内してくれたシスター。受付でにこやかに笑っていた牧師・・・・・。
「う、うえぇぇぇ・・・・・」
「アズ・・・・ッ!!」
その光景を直視したアズマリアが、嘔吐する。
『ふん、生き残りか。丁度いい、嬲り殺しにするか。さっきは、素っ気無く殺しすぎたんでな』
女が、私たちに向き直る。
「・・・・・・あんたが・・・・・やったのね。」
『それ以外に誰がいる。』
「・・・・・・せない!」
『?』
「許せないって言ってるのよッ!!」
私はホルスターから銃を抜き、トリガーを引く!
だが、彼女は銃撃をすべて紙一重でかわしていく。
この!この!この!
私は、躍起になってトリガーを引く!!
「やめるんだ!ロゼット!」
突然、クロノが私の腕を抑える!
「何を・・・・ッ!?」
「いったんここは引くんだ!!」
「そんな事・・・・!!」
「たった一人で彼らを屠ったやつに勝てるとでも?!
一旦体勢を立て直すんだ!!アズマリアも・・・・・!!」
・・・・・・くッ!
私は、いまだ嘔吐し続けているアズマリアをみやる。
「・・・・・武器庫に行って武器を調達してくる。
そしたら、教会の車で何処かへ逃げるんだ。そこで、他の支部からの救援を待つ。いいね?」
「・・・・・わかった・・・・・わ。」
私は、じりじりと後ろに下がりながら、礼拝堂の扉へ向かう。
『逃げるのか?まぁ一向に構わないがね。私を楽しませてくれるなら。』
ぐ・・・・・・!!
私たちは、礼拝堂の扉を蹴り開け、外へと飛び出した。
なんだか毒気ぬかれちゃいましたよぉ…
迎えも来た事だし、帰りましょっかぁ
それじゃ、また来ますねぇ♪
サヨナラ〜
(キリサキ キョウコ 退場)
>189 クソ親父
何を抜かすか、非常識親父っ!
霊波刀を素手で受け止めるなっ!
だいたい、なんで親父が・・・!
>192 スミレ
(踏まれて、衝撃波で綺麗に流されました)
「し ゅ 〜 り ょ 〜 ♪」
なんか知らんが、終わったらしい。
ともかく思考もまとまらぬまま、衝撃波に吹っ飛ばされた俺であった。
【退場】
>192 >195 同じく吹き飛ばされていく
「ハハハーッ、勝負はまだ一回の表だー!」
その時、一陣の風が主を失った覆面を闘技場へと舞わせた
【退場】
>193
3人は抵抗が無駄と分かると即座に尻尾を巻いて逃げ出した。
戦術的思考としては賢明な判断だ。
常識でいえばの話だが――
少なくとも私相手に逃げられるかどうかは別問題だ。
私は3人を追跡する。
元々、ヒトとして限界レベルにある私と普通の女子供では鬼ごっこをしたところで結果は明白だ。
見る間に私と3人の距離が縮まる。
距離がある程度、縮まったところで、先ほど嘔吐していた少女の足を目掛けて指弾を発射する。
無様に少女が転倒した。
残りの2人は驚いた顔では振り返り、少女を助け起こす。
その時には私と3人の距離はわずか2〜3メートルにまで縮まっていた。
「まあ、確かに逃げるのは自由だが、成否は別問題だったな」
私は立ち止まり、3人にそう話し掛ける。
「これからだろう、ショーの開始は? ああ、武器は使わん。素手で相手をしてやろう。
何、即死させるような不粋な真似はしないさ。安心するがいい」
まあ、せいぜい盛大に悲鳴をあげてもらおう。
>186
『怒りと悲しみと涙と』
vs “殺人卿”ナルバレック
「きゃうッ!?」
突然、アズマリアが悲鳴をあげて転ぶ。
見ると、彼女の足を『何か』が貫いていた。
・・・・銃!?そんな者持ってなかったはずなのに!!
「アズ!」
「しっかりして!!」
『まあ、確かに逃げるのは自由だが、成否は別問題だったな』
え?!
顔を見上げると、女が私達2〜3メートル後ろまで追いついていた。
いつの間に・・・・・・!!
『これからだろう、ショーの開始は? ああ、武器は使わん。素手で相手をしてやろう。
何、即死させるような不粋な真似はしないさ。安心するがいい』
そう言うと、ニタリ、と女が笑う。
く・・・・!!
私は、銃口を女に向ける!
「このッ!!」
当たらないと分かっているが・・・・今の私にできるのはこれぐらいだけ・・・・。
「クロノ!アズをつれて先に!!
私も、後から!!」
「ロゼット?!」
「その足じゃ走れないでしょ?・・・・・・・・・クロノ、よろしく。」
「・・・・・わかった。じゃぁ、『後』で!」
走り去るクロノの足音を背に、私は女に向き直る。
「さぁ・・・・かかって来なさいッ!!」
>198
「ふむ、威勢だけは一人前だな」
私は目の前の少女を観察する。
じっくりと……
「……お前、人を撃った事がないのか、もしかして?」
微妙に少女の手が震えているのが分かる。
殺す覚悟のないことだけは確実なようだ。
「つまらんな。これではゲームになるかどうか。お前を即座にくびり殺して、残り2人を甚振ってもいいのだが……」
少女にゆっくりと近づく。
「まあ、撃って見るがいい。発砲しないと可能性はゼロだが、発砲するともしかすると私を殺せるかもしれんな」
それでも絶望的に低い確率であるだろうがな……と心の中で付け加える。
とりあえず私の役目は終わったらしい。
人のいなくなった闘技場を見まわしてそう納得する。
立ち去ろうとして……ふと私は振り返る。
そして全力の空想具現化。
まあ、それに特に意味があったわけではないのだが。
「…… 帰 っ て 寝 よ 〜」
つぶやくと私は、闘技場のあった場所を後にした。
【退場】
>199
『怒りと悲しみと涙と』
vs “殺人卿”ナルバレック
『ふむ、威勢だけは一人前だな』
女は子馬鹿にしたように私に言う。
そして、舐めるように私を観察している。
『……お前、人を撃った事がないのか、もしかして?』
!!!
く・・・・・・!
「・・・・当たり前よ!!私をあんたみたいな外道と一緒にしないで頂戴!!」
私は、精一杯の強がりをしてみせる。
だが・・・・・。
奴のいうとおり。私は・・・・人を撃ったことはない。
さっきは怒りに任せた勢いの行動だったが・・・・・・。
こうして冷静な状態になれば・・・・・・・。
『つまらんな。これではゲームになるかどうか。お前を即座にくびり殺して、残り2人を甚振ってもいいのだが……』
・・・・・!!
「それはッ!!」
私は思わず息を呑む。
『まあ、撃って見るがいい。発砲しないと可能性はゼロだが、発砲するともしかすると私を殺せるかもしれんな』
く・・・・そ・・・・・・。
ならッ!!
『だむ!!』
私は、銃のトリガーを引く!
銃口を『天井に』向けて!!
天井には、装飾としてレリーフなどがある。
炸裂した『聖火弾(セイクリッド)』がレリーフを打ち砕き、彼女の頭上に降り注ぐ。
「今ッ!!」
私は、脱兎のごとくその場を駆け出した!
>201
……私の頭上にレリーフの破片が降り注ぐ。
右腕を挙げて、黒鍵を作り出す。
そして火葬式典を発動、爆発。
それだけで少女の賢明の策は潰えた。
「ククククク……、ハハハハハハハハハハ!」
逃げる少女の背中を見ながら、高らかに笑う。
そうか、そんなに私を殺したくないか。
教会では誰もが殺したいと思っている私を……
――決めた。
少女を殺すだけでは飽き足らない。
少女の価値観を崩壊させて、その上で殺すか。
信じるモノが崩壊した時のヒトの表情には又、格別の趣がある。
――さて、『殺人講義』の開講と行こう
逃げる少女に向けて全力疾走する。
あっという間に距離がゼロになる。
少女の首筋を掴んで締め上げ、壁に向かって投げ捨てる。
そして、少女に問い掛ける。
「さて、ひとつ、聞こう。何故、お前はヒトを殺さない?」
>199
『怒りと悲しみと涙と』
vs “殺人卿”ナルバレック
背後で大きな炸裂音。
次の瞬間。
「あぐ?!」
いきなり、私の首を誰かが後ろからつかむ!
「ぐ・・・・げほ・・・・。」
そのまま、きりきりと締め上げたかと思うと・・・・・。
《どかっ》
「あうっ!」
いきなり壁へと投げつけられる。
首を締められた事と背中をしたたかに打ち付けたことによって、大きく咳き込む。
そんな私を見下ろしながら、女は静かに口を開いた。
『さて、ひとつ、聞こう。何故、お前はヒトを殺さない?』
それはそう、まるで教え子に問題を問い掛ける教師のように。
人を殺さない理由?!
「・・・・げほっ・・・・。そんなの・・・決まってるでしょ!?」
私は、のどを抑えながら叫ぶ。
「『生きてるから』よ!!それ以上の理由が必要?!」
自分でいっておきながら、間抜けな答えだと思う。
だが・・・・・少なくとも、私はそう思うッ!!
>203
『「生きてるから」よ!!それ以上の理由が必要?!」』
なんとシンプルでつまらない答えだろうか。
うわべを飾るにしてももう少し、気の利いた言葉は欲しいところだが……
「……………」
無言で少女に左手首を掴み、『捻った』。
本来、ありえない方向に少女の手首が廻る。
少女の苦悶の叫び。
まあ、私を前にして、この程度のペナルティはあってなきが如しだが。
『講義』を再開する。
「『生きているから』か。昔から、ひどくありふれた命題の一つだが……」
苦悶の表情の少女にただ、言葉を続ける。
「その理屈であれば、お前は人だけでなく、悪魔も、牛も豚も蟻も殺せないことになるぞ」
私は笑みを浮かべて、少女を見つめる。
「命は等しく等価値だからな。そこにもし優先順位をつけるなら、それはどうしようもない矛盾だ。違うか?」
>204
『怒りと悲しみと涙と』
vs “殺人卿”ナルバレック
『……………』
女が無言で私に近づいてくる。
そして・・・・・。
《こがきっ!》
「あ”あ”あ”ッ!!」
手が・・・・手首が・・・・・ッ!!
悶絶する私をつまらなそうに眺めながら、女は続ける。
『『生きているから』か。昔から、ひどくありふれた命題の一つだが……
その理屈であれば、お前は人だけでなく、悪魔も、牛も豚も蟻も殺せないことになるぞ
命は等しく等価値だからな。そこにもし優先順位をつけるなら、それはどうしようもない矛盾だ。違うか?』
・・・・が・・・・・・ぁ。
私は、悶絶しながらその問いを耳にする。
ぐ・・・・・・。私は答えに詰まる。
「あ・・・ぅ・・・う・・・・・ぅぅぅぅ・・・・・・・。」
口から零れるのは、呻き声だけ。
女は、つまらなそうにため息をつく。
そして・・・・・
>205
「ふん……」
軽く溜息をつく。
この少女を支えるのは酷く薄っぺらい信念のようだ。
そろそろ瓦解するか?
少女の腹につま先で蹴りを入れる。
柔らかい感触とともに、少女の肋骨が2〜3本折れたのが感じ取られた。
少女が声にならない悲鳴をあげて、のた打ち回る。
それを尻目に私は少女に話し掛ける。
「結局、ヒトは『殺す』という行為に理由をつけて制限しているにすぎん。
無意識下でやはり、命に順位をつけているのだよ」
少女の価値観はいつ崩れるだろうか?
「ヒトを殺せないというのは結局、倫理・道徳観の問題にすぎない。
ヒトを命の最高位にいると考えた場合のな。そして、そこに殺せないという禁忌の枠を大抵の者は構築する」
私の唇が歪に歪む。
かつて、私自身もこの問いを受けたことがあるのだ。
「では、私の場合はどうか。私は別に自分自身も含めて、命に優先順位をつけていない。
だから、禁忌の枠は最初から存在しない。故に迷いもなく、殺せる」
私はただ、回答を延々と紡ぎだす。
「ならば、何故、埋葬者である私ことナルバレックは悪魔のみならず人を殺すか? 答えは簡単だ。
悪魔より人の方が絶対的に数が多いからだ。手近にいるモノの方がより殺しやすいからな。
まあ、その結果、『殺人卿』という異名を拝名するに到ったがね」
そして、『講義』は第2講へと移る。
「では、再び問おう。お前はこのように自分が殺されそうな局面でも引き金は引けないのか?」
私は問いとともに、殺気の篭った視線で少女を睨みつけた。
>206
『怒りと悲しみと涙と』
vs “殺人卿”ナルバレック
《どかっ》
「あうぅっ」
女の蹴りが、私の腹を直撃する。
ぎ・・・・・・・これは・・・・アバラやられた・・・・?!
私は、地面をのたうつ。
『結局、ヒトは『殺す』という行為に理由をつけて制限しているにすぎん。
無意識下でやはり、命に順位をつけているのだよ。
ヒトを殺せないというのは結局、倫理・道徳観の問題にすぎない。
ヒトを命の最高位にいると考えた場合のな。そして、そこに殺せないという禁忌の枠を大抵の者は構築する。』
そのとおりだと・・・・思う。
『では、私の場合はどうか。私は別に自分自身も含めて、命に優先順位をつけていない。
だから、禁忌の枠は最初から存在しない。故に迷いもなく、殺せる。
ならば、何故、埋葬者である私ことナルバレックは悪魔のみならず人を殺すか? 答えは簡単だ。
悪魔より人の方が絶対的に数が多いからだ。手近にいるモノの方がより殺しやすいからな。
まあ、その結果、『殺人卿』という異名を拝名するに到ったがね』
女は淡々と語り続ける。
そして、『講義』は第2講へと移ったようだ。
『では、再び問おう。お前はこのように自分が殺されそうな局面でも引き金は引けないのか?』
・・・・・・・・・・・・・・・・・。
「ふ ざ け な い で !」
私は、ゆらりと立ち上がった。
>207 つづき
がしゃり、と。立ち上がった瞬間痛みが走る。
だが、私はその痛みを無視して女をにらむ。
「『自分も含めて命に優先順位をつけてない』?!
あんたはね、結局自分が『生きてる』って実感がないだけよ!だから他人の命も軽く見られる!
それは優先順位をつけてないんじゃない、『つけかたがわからない』だけ!
あんたは、結局『自傷行為』でしか『生の実感』を得られないかわいそうな人。
・・・・・・・・・私は違う。
今朝食べたミートボールが美味しかったとか、階段を踏み外したとか・・・・・。
そんな瑣末なことでも自分が生きてるって事を実感できる!
それを・・・・そういうことを感じられなくなるって事は・・・・・。
酷く、酷く、悲しいことなのよ!」
叫ぶと同時に、胸に激しい痛みが走る。
「私には・・・・時間がない。
でも、その限られた時間のなかで絶対にやり遂げたいことがある。
あんたに、それだけ労力をかける価値のあるモノってある?!
・・・・・あるわけない・・・・・。
他人を傷つけ、自分を傷つけ、刹那に生きることしか知らないあんたに・・・・・。
そんなものあるわけないわ!!」
私は、ぐっと女に人指し指を向ける。
「そんな奴に、ヒトの命を・・・・・語ってなんか欲しくないッ!!」
>207 >208
『そんな奴に、ヒトの命を・・・・・語ってなんか欲しくないッ!!』
少女が私にビシリと言い放つ。
愉快、全く以って、愉快だ。
「クックックッ、なるほどな。ここまで、私に大見栄をきったのはシエル以来だな」
実に愉快だ、この私にここまで言えるものはそうは存在しない。
「ああ、お前の指摘も間違ってはいない。私は『殺すこと』でしか実感を得られない狂人だ」
そして、酷く腹立たしい。
狂人に常人の理屈は時として我慢がならない。
「だが……」
少女の頭を掴み、壁に叩きつける。
「いくら、お前が吠えようともこの力の差はいかんともし難い事実だ。
お前が何を言ったところで、お前は死ぬしかないのだよ」
>209
『怒りと悲しみと涙と』
vs “殺人卿”ナルバレック
《どごっ》
「・・・・・・ッ!!」
声にならない悲鳴をあげる。
私は、女に頭を掴まれ壁に叩きつけられる。
額から、血が流れ出る。
『いくら、お前が吠えようともこの力の差はいかんともし難い事実だ。
お前が何を言ったところで、お前は死ぬしかないのだよ』
そう言いながら、女は私の頭をぐりぐりと壁に押し付ける。
「あ゛ぁ・・・・ぁ・・・あ゛・・・ぁぁぁ・・・・・ッ!!」
イタイ、イタイ、イタイぃぃぃぃぃぃ!!
『くだらんな、さっきの大見栄はどこへ行った?』
私の手足は、もうすでにぐったりと力なく垂れ下がっていた。
死ぬ・・・・・?死ぬの?
「い・・・・や・・・・・・・・。死に・・・・たくない・・・・。」
『何か言ったか?』
「死ぬ・・・の・・・・はいやぁぁぁぁぁ・・・・・・・・・。」
私の声に、一瞬女が笑ったような気がした。
女が、私に止めを指さんと―――――
《がしゃぁぁぁん!!》
『?!』
「ロゼットッ!!」
私の耳に入ってきたのは――――
ガラスの砕けるような音とクロノの声!!
私は、何とかしてクロノの方へと向き直ろうとする。
見えるはずもないが・・・・・。
「・・・・・・・・!!その手を離せッ!!
彼女は・・・・僕の『契約者』なんでね。
勝手な真似は・・・・・止めてもらおうかッッッ!!」
>210
唐突に少年が窓ガラスを突き破って、飛び込んで来た。
わざわざ、殺されに戻ってくるか。
あのまま逃げていれば、助かったかもしれないものを……
『――彼女は・・・・僕の『契約者』なんでね。 勝手な真似は・・・・・止めてもらおうかッッッ!!』
契約者?
……ああ、そうか、ようやく、思い出した。
資料で見たマグダラの子飼いの悪魔―クロノとはこいつのことか。
「ふん、言いたいことはそれだけか? 私の前にお前等が立ちふさがること、その意味を分かっていないのか?」
両手に幾本もの黒鍵を作り出し、戦闘体勢を取る。
「埋葬機関第1位『ナルバレック』、この名前を持つ者の前に立ちふさがることは如何に無謀か、普通の知性があれば分かるはずだがな!」
そういい終わると同時に、黒鍵を全てクロノに投擲した。
ある黒鍵はまっすぐ飛び、ある黒鍵は滑らかな曲線を描いて、クロノへと殺到した。
この程度で終わってくれるなよ?
212 :
エリ ◆Eri.06RI :02/04/06 23:21
エリ・カサモトvsタバサwithタオ(盾)
『全国三千万婦女子の憧れ争奪戦』
>48
煙が晴れていく。
そこにはメタルスラッグとロボの残骸があった。
「タバサは健在か・・・」
子供の手を握り悲しそうにしているタバサが見えた。 あ、ちょっと子供痛そう。
「さて、どうしたもんかな・・」
軽く構え、あたしはタバサの動作に備えた。
>209
『怒りと悲しみと涙と』
vs “殺人卿”ナルバレック
『埋葬機関第1位『ナルバレック』、この名前を持つ者の前に立ちふさがることは如何に無謀か、普通の知性があれば分かるはずだがな!』
「知ったことかッ!」
ぐったりとしたロゼットをほおると、彼女が僕に向けて何本もの剣を投げつける。
「おぉぉぉぉぉぉぉ!」
その剣を、あるものはかわし、あるものは障壁を張って受け止め、僕はロゼットへと向かう。
《ざすっ!》
「ち!!」
かわしきれなかった一本が僕のわき腹を抉る。
と同時に、炎が巻き上がる!
「ぐ・・・がぁぁぁぁぁぁッ!!」
これが・・・・埋葬機関のトップの力か!
一発掠っただけで、これほどとは・・・・ッ!!
けど・・・・・ッ!!
「あ゛ぁぁぁぁぁ!!」
僕は、かまわずそのままさらに突き進む!
ロゼット・・・・今・・・・助けるッ!!
>213
まあ、『契約者』を自称するなら、かの者の行動も理解できない訳ではない。
マスターを助けるのはある意味、必然の行動と言えよう。
だが、私の前でその行動はいささか無用心すぎた。
致命的といってもいい。
この私にさぞ攻撃してくださいといわんとばかりにクロノは私に背を向けて、少女の方に突き進む。
私はコレを見逃すほど、悠長な性格はしていない。
カノックの袖から金のナイフを取り出し、一気にクロノに飛び掛る。
私がクロノの右肩にナイフを突き立てたのとクロノが少女の所に到達したのが同時だった。
エリ・カサモトvsタバサwithタオ(盾)
『全国三千万婦女子の憧れ争奪戦』
>212
「さて、どうしましょうかね…」
軽い構えを取るエリ殿を眺めつつ、考えをめぐらせてみる。
主戦力を失った今となっては、肉弾戦による決着しかない。しかし、肉弾戦となると、こちらが若干不利。勝てないとは言わないが、確実性はない。もし負けてしまえば、私は彼女に酒を奢らなければならない。
「あのさあ。タバサさんのあの杖とエリさんの杖を交換で良いんじゃない?」
私が握っていた方の手を軽く振りながら、タオは口を開いた。
――なるほど、その手があったか。
「うむっ! では、それで行きましょう」
私は鞄の中から例の杖を取り出し、エリ殿に近付いた。
「一つ提案ですが。貴殿のお持ちの杖と、私のこの杖、交換と言う事でどうでしょう?」
>62>78 淫藤宗光/ヒトラーvs竜崎天馬(M)&檀隼人(M)「ヴァレンシュタイン作戦」
「なんだ、機体が重いッ・・・」
メッサーシュミットとグレムリンを退けたものの、新・天翔馬号のエンジンが不調。
そう、機械の不調を呼ぶ、グレムリンの力だ。
エンジンの出力は通常の60%にまで落ち込み、操舵にも支障が出つつある。
そして、背後に迫る更なるグレムリン。
「ケツに付かれた!? まずいっ!」
空戦において、背後を取られることは致命的・・・
常の天馬と新・天翔馬号ならば、大したことのない状況。
しかし、今の新・天翔馬号では・・・
その瞬間。
背後のグレムリンが、消滅した。
洋上からの青い光が、グレムリンを消したのだ。
「何・・・?」
そして、もう一つ、光がこちらに向かってきた。
しかし、先程の光と違い、黄金色の輝きを放つソレからは破壊の力を感じない。
光が、新・天翔馬号に当たる。
と、同時に、新・天翔馬号が黄金色の光を宿す。
「これは・・・一体・・・?」
エンジン出力が上がる。
操舵の感覚が戻る。
「これなら・・・行ける!」
舵を一度、天に向ける。
再加速、そして、艦隊の方へ舵を向け直す。
「アフターバーナー、起動」
「ロケット、点火」
新・天翔馬号が、さらに加速する。
霊的視覚を持ったものには、蛍光ピンクの毒々しい色の壁に黄金色の光が突き立ったように見えるだろう。
そう、まるで邪を貫き通す聖なる槍のように。
そして、壁は砕け散った。
>209
『怒りと悲しみと涙と』
vs “殺人卿”ナルバレック
僕の手がロゼットに届いた瞬間―――。
「がっ?!」
肩口に、鋭い痛み!!
「こ・・・の!!」
僕は、彼女の腕をつかんで投げ飛ばす!
そして、刺さったままのナイフを無理やり引き抜いた。
「ッ・・・・・・・・・・!」
聖別されたナイフは、僕の手を焼く。
だが、そんな事はお構いなしに僕はロゼットを抱き起こした。
「しっかり・・・!!」
「・・・・・・・。」
ロゼットは、力なくふっと笑い―――――
が く り と 、 首 か ら 力 が 抜 け る 。
「ロゼッ・・・・ト? ロゼット!!」
「・・・・・・・・。」
「く・・・・拙い・・・・な。」
出血と怪我による昏睡状態。早く治療しないと・・・・・。
「悪いね。君の相手をしてる暇はないみたいだ。
悪いけど、退かせて貰うよ。」
僕は傷の痛みをこらえながら、ロゼットを担ぐ。
そして、先ほど突き破った窓から外へと飛び出した。
エリ・カサモトvsタバサwithタオ(盾)
『全国三千万婦女子の憧れ争奪戦』
>212
無防備に歩いてきたタバサから交換という提案が出た。
「・・・殴りあうよりは建設的か。 いいよ、それで」
タバサの出した杖の価値は判断できないが飲み代くらいにはなるだろう。
「それじゃ。 楽しませてもらったよ」
あたしはタバサと杖を交換して別れると骨董屋に入った。
>217
クロノから投げ飛ばされた私は、空中で姿勢を整え、着地する。
その間にクロノは捨て台詞を残して、窓から少女とともに逃げ去った。
逃げ切れると思っているのか、この私から……?
私も奴を追撃するために窓から飛び出した。
・
・
・
奴は街中に逃げ込んだ。
人ごみに紛れて、逃げるつもりか?
愚かとしか言い様が無い。
この国では証拠隠滅の必要すらない。
ローマにとって、プロテスタントが何人死のうと知ったことではないのだから。
まあ、私にはそのような事情はどうでもいい。
ただ、自ら、獲物を増やすような真似をした奴に感謝しつつ、街中を駆ける。
奴の背中が見えた。
少女を抱えているクロノと身軽な私。
どちらに機動性があるかは自明の理だろう。
両手に黒鍵を作り出し、奴にむかって無差別に投擲する。
狙いは適当だ。
必然的に爆発による巻き添えに多くの通行人が巻き込まれる。
悲鳴が辺りに木霊する。
そんな中、奴に声をかける。
「お前の主人は人を殺したくないそうだ。だが、お前が街中に出たせいで、このような人死にがでることになったな。
全く主人の意一つ、まともに汲めない、無能な悪魔だな! ハハハハ!!」
私はそうクロノを嘲笑した。
エリ・カサモトvsタバサwithタオ(盾)
『全国三千万婦女子の憧れ争奪戦』
>212
無防備に歩いてきたタバサから交換という提案が出た。
「・・・殴りあうよりは建設的か。 いいよ、それで」
タバサの出した杖の価値は判断できないが飲み代くらいにはなるだろう。
「それじゃ。 楽しませてもらったよ」
あたしはタバサと杖を交換して別れると骨董屋に入った。
“超純粋”幽祢vs“光の導き手”エミリオ(14歳ver)
夢幻歳華外伝
『よわむしなんてだいきらい』
>65
彼から、明らかに先ほどとは違う空気が放たれる。
それは、ぞくぞくするほどの敵意。
来た・・・・か。
わたしは、くす、とほくそえむ。
さぁ、見せて頂戴。あなたの力。
「あはは♪それじゃ、いくよぉ?!」
私は、彼の足元に再び捕縛結界を展開する!
さぁ、本気のあなた、見せてよ♪
淫藤宗光/ヒトラーvs竜崎天馬(M)&檀隼人(M)「ヴァレンシュタイン作戦」
>78 >216
黄金の光を身にまとった新・天翔馬号は、黄金の矢と化して結界を突き破った。
その姿はまさに、希望を乗せて天翔ける天馬。
結界が破られた次の瞬間、グラーフツェッペリンの艦長室のスクリーンは
清浄な黄金の光で満たされた。
「うわっ」
「ぐうっ」
若々しい声と中年男の声、二つの苦鳴があがる。
いまだ目を手で押さえたままの宗光の口から、押し殺したドイツ語のうめきが漏れる。
「撃て、撃ち落とせ!! 奴をこれ以上近づけるな!!
もう一人は海にいるぞ、爆撃か魚雷で沈没させろ!!」
ヒトラーの命令とともに、グラーフツェッペリンの滑走路から
メッサ―シュミットMe109、スピット殺しと恐れられたフォッケウルフFw190
の編隊が飛び立ち、新・天翔馬号に襲いかかる。
さらに、
飛龍ワイバーン、鳥の体に鹿の足と頭を持つ妖鳥ぺリュトン、人面鳥ハーピー、
蛾人間モスマンといった飛行妖怪達も、大群で新・天翔馬号に殺到する。
そして洋上の隼人の乗るモーターボートには、
ハインケルHe111、ユンカースJU88といった爆撃機が猛爆を加え始め、
海中に潜んでいたUボートから次々に魚雷が発射される。
いかに二人が超人とて、この圧倒的な物量に抗い得るか。
エリ・カサモトvsタバサwithタオ(盾)
『全国三千万婦女子の憧れ争奪戦』
〜終章〜
>218
紆余曲折を経て入手した変身ステッキを持ち帰った私は、おかしな個所がないか丹念に調べた。
「…ふむ。例の杖の販売元とは違うようですね。まずは一安心と言ったところでしょうか…」
安堵のため息をつきながら、杖を軽く振ってみる。
「あれ? タバサさん、なんか落ちたよ」
タオが一枚の紙切れを拾い、私に差し出した。
「む? …説明書ですか…」
例の杖にも説明書がついていたのを思い出し、嫌な気分になるが、一応目を通してみる。
「ふむ…材質はパピルス、書かれている文字は…古代文字ですね」
ちょっとだけ安心してから、私は早速解読作業を始めた。
「――何ですか、このふざけた内容は…」
二日掛かりで解読作業を終えた私は、正直呆れていた。
『杖を手に持ち(笑顔が基本)、以下の呪文を唱えつつ、杖を振るべし。「ラヴリーファラオのマジック」』
「…幾ら『全国三千万婦女子の憧れ』とは言え、19歳にもなってそんな呪文を唱えるのは、気が退けると言うか、私が退きますよ…」
ぶつぶつ言いながら、私は杖を机の上に置いて、研究に没頭する事にした。
――数時間後、タオはマミーに姿を変えたタバサを目撃したと言う。
>222 淫藤宗光/ヒトラーvs竜崎天馬(M)&檀隼人(M)「ヴァレンシュタイン作戦」
「・・・わらわらと出てきたな」
ゴーグルを直しながら、天馬は呟く。
目の前には雲霞の如き戦闘機と妖魅の群れ。
しかし、この圧倒的な物量差を前にして、天馬は笑った。
「行くぜ、新・天翔馬号。お前の本当の力を見せてやれ」
プロペラが折り畳まれる。
翼が後傾、車輪が収納される。
ロケットエンジンが唸りを上げる。
猛烈な轟音と共に、速度を上げる新・天翔馬号。
どこまでも上がる速度と轟音。
不意に、轟音が消えた。
「・・・来た!」
否、消えたのではない。
音が付いて来られなくなったのだ。
そして。
新・天翔馬号を囲んでいたものたちが、吹き飛んだ。
あたかも、透明な刃に薙ぎ払われたように。
そう、音速を超えた新・天翔馬号は、衝撃波を生んだのだ。
暗黒騎士ガウザー VS 紅の騎士ギーラッハ 導入
製薬会社、燦月製薬の脱税疑惑。
その燦月への査察に、東京都知事・黒岩省吾、すなわち俺は出向いていた。
―――――もっとも、脱税などというのは査察の名目に過ぎなかった。
製薬会社の「ただの」疑惑など、俺にとってはどうでもいい。
俺が興味を持ったのは、燦月に勤める俺の『同族』が伝えた言葉。
『リァノーン』と呼ばれる、夜魔の森の女王の名だった。
燦月は、彼女の力を利用して何やら企んでいるらしい。
種族は違えど同じ闇に生きる者として、俺は彼女の力を知っていた。
彼女の力が俺の目的に利用できるものなら、利用してみせる。
利用できない代物なら……叩きつぶすまで。
野心を胸に秘めつつ、俺は査察を続けた。
初日の査察ではほとんど得る物はなく、俺は1人帰る羽目になった。
収穫は、たった1つ。
俺は人気のない夜の街を、あえて1人で歩いていた。
その「収穫」である、圧倒的とも言える闘気の持ち主を引き寄せるために。
天堂天山&ヤハベvs岩鬼将造 「吸血の代紋」
>98 >100
天堂の鋭い爪と並外れた力が田舎者の腹を突き破り、はらわたをえぐり出した。
腹に穴を開けられた田舎ヤクザは苦痛の表情すら浮かべることもなく、天堂の喉に手をかけて常識の通用しない馬鹿力で締めあげた。
目の前で繰り広げられる壮絶な光景に、オレはしばらくのあいだ言葉を忘れて立ちつくした。
凄い。凄惨で、凄絶で、惚れ惚れとしてしまう闘いっぷりだ。
オレの経験したどんな喧嘩も銃撃戦も、この二人の闘いにくらべれば犬のじゃれ合いに等しい。
「まったく、イカレたイカシた奴らだぜ。」
オレは二人に向かって(二人ともかろうじて意識が残っていた)話しかけた。
「オレも見習いたいところだが、実践するのは今日じゃない。お前らが派手に潰し合ってくれたお蔭で、オレの組織は事業拡大と事後処理で明日から忙しくなっちまうからな。」
天堂組の物だった利権や構成員の吸収、変動した暗黒街の勢力バランスへの対処・・・やるべき事はいくらでもある。
「ま、今夜はおもしろいモンが見られたわ。礼を言うぜ組長さん。」
「あと、そっちの百姓・・・お前の名前ってなんだっけ?とにかくありがとよ。お疲れさん、俺は帰って寝るわ。」
二人のヤクザ、時代遅れのヤクザたちに声をかけると、オレは二人に背を向け歩き出した。
火傷を負った足が痛むが、代価としては最少限だ。
“超純粋”幽祢vs“光の導き手”エミリオ(14歳ver)
夢幻歳華外伝
『よわむしなんてだいきらい』
>221
足元に、さっき僕を宙に舞わせた魔法陣のようなものが迫って来た。
「同じ手は…二度も食わないよ」
僕は薄笑いを浮かべたまま、軽く地面を蹴り、自分の意志で舞い上がった。
「正面からが駄目なら、搦め手で行くしかないよね」
そんな事を呟きながら、空中に光のプリズムを置いていく。
「さて、何して遊ぼうか?」
表情は相変わらず薄笑いのままで、僕は彼女に問い掛けた。
>219
『怒りと悲しみと涙と』
vs “殺人卿”ナルバレック
「なんて―――ことを!!」
僕は、あたりの被害を見て歯をかみ鳴らす。
完全に僕のミスだった。
人目のつくところならば・・・・そう考えていた僕の読み違い。
『お前の主人は人を殺したくないそうだ。だが、お前が街中に出たせいで、このような人死にがでることになったな。
全く主人の意一つ、まともに汲めない、無能な悪魔だな! ハハハハ!!』
彼女の嘲笑が耳に障る。
だが、彼女の言うとおりだ・・・・!!
僕が、唇をかんだその時。
「く・・・ろ・・・・・の。」
「ロゼット?!」
担がれていたロゼットが気がついたようだ。 ロゼットはぼそぼそと掠れるような声で僕の耳元につぶやく
「そこの・・・路地裏に・・・。 そして・・・・・。」
「!!! そんなこと!!」
彼女が立てた作戦は、実にめちゃくちゃなものだった。
「ほかに方法がある? かけて・・・みましょうよ!」
「どうして・・・いつもそうやって無茶するかな!ロゼットは!!」
「はは・・・ごめん・・・・・・・。」
「・・・・・信じるよ。君を。」
「ありがと・・・・・。」
僕は、ふっと微笑んで、路地裏へと向かう。 そこに、迷いは、ない。
====================================
そうして、私、ロゼットは路地裏の壁を背もたれにし、女を迎える。無事な腕で、拳銃を構える。
『どうした、見捨てられたのか?』
一人だけの私を眺め、女が嘲笑を私に向ける。
私は、彼女のそれを無視し・・・・・。
すぅ、と一度大きく息を吸う。 そして――――――
“―――star of Bethlehem,star on high―――”
天にましますベツレヘムの星よ
“ mircle LOVE of mid-night sigh ”
真夜中の空に神の愛の灯火をともし
“Let your luminous light from heaven Enter our heart”
天国のまばゆき光で我等の心を照らしたまえ
歌を、聖歌を歌う。女が、怪訝な表情を浮かべた。
お願い・・・・間に合って・・・・。
エリ・カサモトvsタバサwithタオ(盾)
『全国三千万婦女子の憧れ争奪戦』
エピローグ
>220
あたしはご機嫌でグラスを傾けていた。
「予想よりゼロが二個多かったわね」
予想より遥かに高く売れたのだ。当分金には困らない。
「感謝しないとね」
グラスにウイスキーを注ぎ、掲げた。
「へんてこ魔女タバサに乾杯!」
比良坂初音vs青山素子 第1章 〜ひなた荘最後の日〜
>106
私の頬を鮮血と、わけのわからない体液が伝う。
何が起きたかわからなかった。
技は確かに成功した。みんなが傷つくはずはないのだ。
「ふふっ・・素子さん?お友達を殺した気分はどうかしら・・・・・」
止めろ―――
「貴方さえ、命を投げ出せば皆救われたかもしれませんのに・・・・・
全く未熟者が余計なことをなさるから・・・ふふっ・・・くくくっ・・・・うふふふふふ」
言うな―――
手がブルブルと震えている。止水の重みを支えきれない。
「う、うぁぁぁぁ!」
私は泣いた。自分が、全てが怖くなったのだ。みんなの断末魔の声が耳から離れない。
私が殺した?
私が殺したのか?
何故、そんな事を―――
「貴様だ……」
私自身の声とはとても思えない、しわがれた声が私の喉から振り絞られる。
「貴様さえいなければこんな事には……」
それを責任転嫁とののしるだろうか?
それでもいい。私の飛び散りそうな理性をつなぎ止める、たった一本の細い糸。
今の私は、自らを地獄から救い出してくれるという
はかなげで頼りない蜘蛛の糸にすがりつく罪人に等しかった。
>228
「……自分への鎮魂歌(レクイエム)でも歌わせているのか?」
私は少女へと近づく。
びくっ!と少女が反応して、発砲。
だが、かすりもしない。
発砲の瞬間に地面を滑るようにして少女の側までもぐりこむ。
そして、少女の首を片手で掴んで締め上げる。
「まあ、私相手にして長生きできたほうだと評価しておこう。ああ、安心しろ。残りの2人も後を追わせてやる」
ギリギリと少女の首を締める。
少女の身体から次第に力が抜けていく――
>222>224 淫藤宗光/ヒトラーvs竜崎天馬(M)&檀隼人(M)「ヴァレンシュタイン作戦」
「やったな、見知らぬ相棒」
軽い笑いを浮かべた隼人のモーターボートは、横へ右へと波に白い描線を描いて進む。
上空からの爆撃で立つ水柱を背に、逆巻く波を走破して死霊の艦隊へと肉薄する。
その顔が強張った。
「このスクリュー音……魚雷か!」
海中より迫る魚雷すら探知した隼人は操縦桿から片手を離し、身を傾けて海面へと近付けた。
またもや掌に青白い光が灯ったかと思うと、生じた光球は海中へと迸る。
放たれた『気』は凄まじい速度で疾り、そして幾十にも分裂した。それぞれがボートに接近
しつつあった魚雷に取り付く。
まるで意思あるが如く、ボートを爆砕しかけていた魚雷は全て反転した。
無機物を意のままに操る『操作気』の秘技であった。
撃ち返された海の小悪魔たちは、己が主人の元へと帰還し――。
先程の空爆に数倍する水柱が二つ、三つと天を突いて上がった。
それに振り向きもせず、隼人のボートは一直線に駆ける。
目標は一点。妖気の最も濃い艦、巨大空母グラーフ・ツェペリン。
>225 暗黒騎士ガウザー VS 紅の騎士ギーラッハ
都知事自らが脱税疑惑の査察等と。
妙な話と思うておったが何の事は無い……。
己は知事の本質に即座に気が付いた。
野心を秘めし人外の魔物の臭い……
なれば考えうる事は燦月製薬の裏の顔を知り、利用する事を目論んでおるのだろう。
恐らく、目的は御姫と見て間違い有るまい。
己は誘う様に人気の無い道を行く彼奴の前に立ちふさがる。
「都知事殿で有るな……、」
「御姫に仇成す不逞の輩、いかな立場に有ろうとも見過ごすつもりは無い」
背後よりヒルドルヴ・フォーク を持ち出すと感触を確かめる様に一度大きく空振りする。
刃 は大気を切り裂き、唸りを上げると鳶の構えへと収まる、彫像の如き不動の姿勢。
「己が剣の露と消えるが良い」
>230
比良坂初音vs青山素子 第1章 〜ひなた荘最後の日〜
「貴様さえいなければこんな事には・・・・」
素子の憎悪の声を聞き、初音はますます楽しげに笑う。
「なら、どうなさるの?私を殺すとでも・・・・・でも、できるかしら?」
一方・・そのころ-----ひなた荘玄関
「あ・・・・あわわわっ・・・」
まだ若い警官が中の様子をみて、腰を抜かしていた。
こんな平和な温泉街でまさか・・・こんなことが・・・・・
しかも、中ならかすかに何者かが争う物音が聞こえる
それが何なのか確かめる勇気は警官には無かった。
久々の通報に張りきって出動した事も忘れ、転がるように逃げ出しながら
無線で助けを呼ぶのがやっとだった。
「す、すいません・・・大事件ですっ・・・み・・・皆殺されてますっ、至急応援をっ!!」
>233 暗黒騎士ガウザー VS 紅の騎士ギーラッハ
「ふっ…………」
紅の鎧に身を包み、巨大な剣を構えた男。
その男の言葉に、俺は思わず片頬を持ち上げ、笑みを浮かべる。
姫様に忠誠を誓う、騎士と言うわけか。
「ああ、あんたが噂の騎士殿か。話程度には聞いている」
俺は少しずつ、その紅の騎士のほうへ歩を進める。
笑みの表情は崩さず、あえて無警戒に騎士の傍らにまで近づいていく。
「あんたとは戦ってみたかったんでな」
騎士の横をわずかに通り過ぎたところで、俺は足を止める。
「名前くらいは聞いておこうか」
そう言って相手のほうに向き直る。
その瞬間、俺と騎士との視線が交錯した。
比良坂初音vs青山素子 第1章 〜ひなた荘最後の日〜
>235
「そうだ! 貴様を殺してやる!」
私は無我夢中で剣を振るった。
それは型も何もないただ振り回すだけの稚拙なものだった。女にかする筈もない。
奴はわざとギリギリの所で剣をかわしている。
頭に血が昇った私の剣筋はますます単純になっていく。
気の流れを感じるどころではない。
「くっ…」
涙で視界がぼやける。憤怒に押し流されていた哀しみがまた押し寄せてきたのだ。
これではみんなの仇などとれない。どうすればいいんだ!?
感情に支配されて思考がまとまらない。
振り払ったはずの絶望までもが、ゆっくりと私の心を再浸食し始めていた。
〜アーノルド・ラスキンvs遠野志貴 アーノルド・ラスキンside導入〜
其処では今、正に一つの闘争が終わろうとしている。
闇と同じ色のカソック、月光を返して蒼く映える黒髪に、未だ
あどけなさの残る顔。
勝利者の少女は疲れたような表情と何の色も湛えない瞳で目の前で
終わりつつある事象、即ち死徒の消滅を眺めている。
乱れ髪の女死徒は全身を幾本もの投剣、死徒を殲滅させる概念武装たる
黒鍵により壁に磔とされている。既に手の先、足の先は失われており、
それは確かめる迄もなくあと数分もすれば完全に消滅することを示している。
それは彼女にとって何時も通り終わる筈の事――その瞬間迄は。
「全く、滅びゆく者の願いに耳を傾ける事すらしないのかね、君達は」
『灰は灰に、塵は塵に。死徒相手に情けは無用です』
カソックの少女が振り返るその横を、何処から現れたのか黒い外套と
シルクハットの壮年の男、アーノルド・ラスキンが悠然と磔にされた
女死徒の前へと足を進める。
既に足と腕を失っている女死徒と僅かに言葉を交わしたラスキンは、懐から
取り出した刀の鯉口を切り、女死徒の首を刎ねる。
『一体何をするつもりですか?』
「既に摂理の扉は開いている。今更こんな事をしようとも、手遅れなのは
君にも理解っているだろう? 好きにさせ給え」
首だけとなった女死徒を手にすると、ラスキンは何重にも<停滞>呪文を
掛け重ねてその懐へと仕舞い込む。首が消えた後の懐には何の厚みも伺えない。
「せめて最後の願いぐらいは聞いてやるべきだと言っているのだよ。
現世で背負わねばならぬ業を棚上げにして禍根を残すとは、貴様達の方が
余程罪深い」
『私は暇な貴方と違って忙しいんです。いちいちそんな事に構っていたら
キリがありません』
まるで敵と認めたかのように少女の双眸がきつく見据える。対するラスキンは
といえば、それを意にも介さずといった風に刀を納める。
「ならばその忙しい君に代わって、私が彼女の要望を聞き入れようと
言っているのだよ」
『それは…』
ラスキンは言葉を詰まらせた少女の顔を僅かに確かめた後、現れた時と
同様に横をすり抜ける。
「そういうことだ、君は君の仕事に励めばいい」
そう言い残してラスキンの姿は闇の中へと消える。後には呆然とする
少女だけが残された。
>236 暗黒騎士ガウザー VS 紅の騎士ギーラッハ
「己はギーラッハ、御姫に仕えし騎士」
彼奴はまるで無警戒の様に己の間合いに入ってくる、ただの馬鹿では有るまいが。
やはり己を知った上で誘っておったのだ、此奴は……。
如何な輩であれ、己がやる事は只一つ。
「参る!」
鳶の構えより袈裟懸けにヒルドルヴ・フォーク をゲ戟ち下ろす。
重量を載せた一撃。
かわせぬ奴ならそれまでの男。
〜アーノルド・ラスキンvs遠野志貴 アーノルド・ラスキンside導入〜
>238
「おかしい、気配はこちらだったのだが」
只、暗闇に声と足音のみが響く。
女死徒の望みのうちの1つである、自分を死徒にした者の殲滅を頼まれた
ラスキンは、毎晩その痕跡を追って各所を捜索していた。
そしてようやく気配らしきものを掴んだのが此処、高校であった。
夜の校舎。人の気配は無く只静まり返る廊下。首だけとなり眠るように
目を閉じる女死徒を片手に掲げ、ラスキンはまるで散歩でもするかのように
軽快な足取りで歩く。
そして、その足音が止まり廊下の先の暗闇を凝視した表情が険しくなる。
背格好からしてこの学校の生徒でもおかしくないその姿は、しかしながら
異様な気配を放っている。
ラスキンは手にした歩行用杖を強く握り、歩調を落としながらもその影へと
近寄った。
>238>240 遠野志貴VSアーノルド・ラスキン 導入
放課後。
生徒指導室の椅子に座りながら、俺――遠野志貴は指導部の先生の到着を待っていた。
最近、俺が夜の街を出歩いていることが教師達に知れてしまったらしく、生徒指導室に呼び出されたのだ。
実際、遠野志貴は目的があって夜の街を徘徊していたのだから呼び出されるのは仕方ない。
もっとも、俺自身はその事に何ら非を感じていたワケではないのだけど。
だが、肝心の先生が現れず、こうして待ちぼうけをくらっている。
指導部の教師達は、揃って体育系の部活の顧問達だ。
もしかすると、部活が終わるまでやってこないつもりかもしれない。
「……くっ」
ぎり、と唇を噛む。
こんな事をしている場合じゃないって分かってる。
早く学校を辞して、街へ出てまた探さないと……アルクェイドを、あるいはロアを。
どっちが先でもいい、それが結果としてアルクェイドに繋がる筈だから。
――分かっているけど、俺にはこんな事しかできないんだ。
「……何やってるんだろ、俺」
答えはない。
そのまま、ずっと無人の教室で放課後の音だけを聞いていた。
かちん。
長い秒針が、音を立てて夜の七時になった事を告げてくる。
生徒指導室には誰もやってこない。
学校の閉鎖時間は六時、教師達が帰るのが六時半だから、校舎には誰も残っていないという事になる。
「……忘れられたかな」
我ながら、こんな時間まで律儀に待っていた事に苦笑したくなる。
その間、ずっと一人で何をすべきか考えていた。
それを成す為にも、一刻も早く街に出て吸血鬼を探し出さないと――。
>241 遠野志貴VSアーノルド・ラスキン
当然のように、廊下には人影がない。
電灯の明かりも途絶えて、窓から差し込んでくる月光だけが、青白く廊下を照らしている。
カツン――。
ふと、誰もいないはずの校内に靴音が響いた。
カツン、カツン、カツン……と、几帳面と思えるほどのリズムを刻んでいる。
こんな時間に、一体誰が……?
そもそも校内で靴音をさせているなんて、非常識極まりない。
そちらへと向き直った。
遠すぎてはっきりとは分からないが、かろうじてコート姿とシルクハットが見て取れる。
手に何かを掲げ持っている様だが、その詳細まではまだ見て取れない。
と、その紳士――シルクハットなんて被るのは紳士くらいのモノだろう――がこちらへと歩き出してきた。
心持ちペースを落としているのか、先ほどに比べると静かな靴音だ。
一歩、また一歩と距離を詰め、その姿が少しずつ明確になり……なっていくにつれて悪寒が全身を駆けめぐった。
紳士が掲げ持っているモノは生首、しかも髪の長さからして女性のモノ。
それを、手のひらの上に載せてこちらへと歩いてくる。
――何だ、コレは。
だが、俺はまだ戦慄を覚えるには早すぎた。
一歩、まだ一歩、飽きもせずに紳士は歩いてくる。
そして、その全貌を捉えた瞬間、俺は背筋をぞわりと蠢くモノを感じ――辛うじて悲鳴を飲み込んだ。
「弓……塚?」
そう、その首は、行方不明になったはずのクラスメイト……弓塚さつきのモノだった。
それが、弓塚だったモノが、老紳士の手のひらの上で、静かに目を閉じて佇んでいる。
「ハ……」
何て、出来の悪いホラー映画だろう。
夜の学校の廊下で、突如として現れた老紳士が、行方不明のクラスメイトの首を持って現れる……。
こんなシチュエーション、ワケが分からなさすぎてリアリティも何もあったモノじゃない。
あまりに現実感を欠いた、しかし確かな現実を目の前にして、遠野志貴は固まっていた。
非常識にはアルクェイドと出会ってから多少慣れたつもりだったが、こんなのは知らない。
思考が空転する、鼓動がやかましく自己主張する。
息が、上手くできない――。
>239 暗黒騎士ガウザー VS 紅の騎士ギーラッハ
俺は迫り来る刃を、余裕の笑みを浮かべたまま避ける。
剣圧が風を生み、俺の髪をわずかになびかせた。
「ギーラッハか。その名前、覚えておこう」
紅の騎士、ギーラッハの目を真っ向から見据え、俺はそう告げる。
俺は視線を合わせたまま、風を切る音を立てて彼に指を突きつけた。
「知っているか!?世界で初めての切手は1840年、凹版印刷という手法で作られた。
その印刷手法は、元々騎士たちの鎧兜に、模様を彫り込むための手段だったという!」
蘊蓄を語り終えると、俺は自分の眼前に手をかざす。
「ブラックアウト!」
その言葉とともに、俺の体は昏い蒼の鎧に包まれたような姿に変わる。
俺のもう1つの姿、「暗黒騎士ガウザー」である。
「むん!」
かけ声とともに、俺は剣を抜く。
弓を引き絞るような構えから、ギーラッハ目掛け刺突を繰り出す!
>237
比良坂初音vs青山素子 第1章 〜ひなた荘最後の日〜
「ふふっ・・・くすくすくす」
初音は、素子を執拗に翻弄し挑発する。
だが・・そろそろ潮時だろう。
「もういいわ・・・・・お友達の所へいかせてあげる・・それと
せめてものお詫びに、極限の快楽を味あわせて差し上げますわ」
初音は、素子の懐に入り込み、そのまま押し倒し犯す-----つもりだった
だが、偶然か否か素子の剣が初音の身体をかすめる。
ばしゅん!!
初音のセーラー服は千切れ飛び、白い肌が露になり
さらに、その衝撃で初音はふすまごと奥の部屋へ吹き飛ばされる。
これが彼女の秘めた力か・・・・やはり先ほどの人蜘蛛への一撃は伊達ではなかったようだ
なら・・・・遊ばず、次で一思いに殺してしまうべきだ。
初音は体勢をなんとか整えようとしながら、考えをまとめていた。
>243 暗黒騎士ガウザー VS 紅の騎士ギーラッハ
「600年の時を過ごして来た己に歴史を語るか?」
その時奴の姿が一変し、暗黒騎士ガウザーの本性を顕す。
「面妖な……」
人に有らざる者の仮面を拭い去りし時の豹変ぶりには慣れておるが、
此奴は単に表情や言動だけでは無く、正に変身したのだ。
その右手が剣を抜くや否や、刺突を繰り出してくる。
片手突き?
「ぬるいわ!」
己は踏む混みつつヒルドルヴ・フォーク でその突きを左へと弾くと、
その勢いのまま右肩から奴に体当たりを仕掛ける。
比良坂初音vs青山素子 第1章 〜ひなた荘最後の日〜
>244
わずかながら手応えがあった。
剣に込められていた退魔の気が効果をあげたのだ。
少しだけ冷静な思考が戻る。
(倒せない相手じゃない…! みんな、必ず仇は取るからな!!)
しかし、仇を取った後はどうする?
戻り始めた理性が再び余計な事を考え始める。
(集中しろ、素子。今は目の前の魔を滅ぼす事だけでいい―――)
止水を構え直して丹田の気を全身に巡らせる。
一気に間合いを詰めて、奥義を放つ。
鉄をも斬り裂く、閃光のごとき技―――
「斬鉄閃!!」
剣の軌跡が螺旋を描いて、女に迫る。
>242 遠野志貴VSアーノルド・ラスキン
ラスキンが軽く左目に掛けた片眼鏡へと触れる。
活性化された<霊視>に映る像が表すのは、目の前の少年が纏う
微かながらも、しかし尋常あらざる気配。
それこそはまさしく、これまでラスキンが追い続けていた女死徒の敵への手がかり。
つまりは、この少年こそが現在巷を賑わす殺人鬼か、或いは関わりがある
ということ。
「成程、少し試させて貰うとしようか」
そう呟いたラスキンが、荒事に備えるべく女死徒の首を懐へと仕舞う。
そして手にした杖を握り直すと、刺突の構えを取りながら少年との間合いを
一息で詰める。
ラスキンを見たまま呆然とする少年へと挨拶代わりの一撃が放たれる。
「失礼、時間が余り無いのでね。少々手荒に行くとするよ」
>245 暗黒騎士ガウザー VS 紅の騎士ギーラッハ
『ぬるいわ!』
ギーラッハが一声叫ぶと、俺の突きは巨大な剣に弾かれた。
がら空きになった俺の胴に、紅の騎士が肩口をぶつけてくる。
俺の突きを受けきるとは、やってくれる!
仮面の奥で深く笑みを浮かべつつ、俺は後ろへと跳躍する。
紅の鎧に包まれた肩はしかし、俺が飛ぶより一瞬早く、肋の辺りを打った。
肺が振動し、苦痛の息がわずかに漏れる。
「伊達じゃないと言うことか、騎士殿?」
俺の言葉にはまだ笑みが残っていた。
いや、むしろそれは―――――――――
強い相手と戦える歓喜の言葉だったのかも知れない。
「ならば、こちらも本気で行くとするか!」
剣を正眼に構えると、俺は地面を蹴ってギーラッハとの間合いを詰める。
その勢いを利用して、剣を袈裟切りに切り下げていく。
>246
比良坂初音vs青山素子 第1章 〜ひなた荘最後の日〜
素子の奥義が発動するのと、初音が体勢を整えるのは、ほぼ同時
初音は素子の剣を交わし、そのまま喉笛を爪で斬り裂こうとする
だが、足が思うように動かない。
辛くも剣は避けたものの、さらに追撃の剣が迫る
こんなときに・・・・当たり所が悪かったか、五体満足なら殺すことなぞ造作無い相手なのに
初音はころころと床を転がりながら、舌打ちする。
そのとき・・・・2人の戦っている部屋へと連絡を受けた警官隊が踏みこんできた。
警官達の眼に飛び込んできたのは、狂気の表情で剣を振るう少女と
それから必死で逃げる少女の姿
そして・・・バラバラに斬り裂かれた複数の死体・・・・・
余りの光景に、警官たちも数瞬、あっけに取られていたが
やがて、本来の職務を思いだし
警官たちは、迷うことなく素子へと銃を構える
「動くな!!警察だ、大人しく剣を捨てろ!!」
彼らは状況のみで判断した結果、素子を犯人と断定したのだった。
警官隊の登場は、初音にしても以外だった
(結界を張り忘れていたのね・・・私とした事が・・・さて・・・どうするか)
どうやら、彼らは素子を犯人と思っているらしい・・・・ならこれを利用させてもらう
いずれにせよ、ここまで騒ぎが大きくなってしまった以上、脱出を優先すべきだろう。
初音は声を張り上げながら、警官たちに向い転がって行く
「助けてくださいまし!友人を訪ねて参ったら・・皆殺されていて・・しかも私まで!」
比良坂初音vs青山素子 第1章 〜ひなた荘最後の日〜
>249
どうやら女は足を捻ったらしい。好機だ。
そう考えた瞬間―――
「動くな!!警察だ、大人しく剣を捨てろ!!」
自分の事だとは思わなかった。今の止水は刃を落としてある模造刀だ。
そのまま持ち歩くのは不味いが、銃刀法自体には引っかからない。
事態を説明しようと、この女が何をしたかを話そうとした。
「助けてくださいまし!友人を訪ねて参ったら・・皆殺されていて・・しかも私まで!」
「なっ…!」
『怒髪天を突く』という言葉がある。
まさしく今の私に相応しい言葉だ。怒りの余り、全身が総毛立つ。
「何を言うか、貴様ぁっ!! 」
私は周りの状況も忘れ、再び剣を振り上げる。
それがどんな結果を呼ぶかなど、思考の枠外であった。
ただただあの女を殺す事しか頭にない。
「どけっ、私の邪魔をするな!」
立ちふさがる警官を恫喝する。銃など怖くもなんともない。
私の全身は、怒りに支配されたまま突き進んでいった。
>247 遠野志貴VSアーノルド・ラスキン
「ハア……ハア……」
定まらない息遣いのまま、メガネを外した。
ポケットに手を突っ込み、中の七つ夜――ナイフを手に収める。
『成程、少し試させて貰うとしようか』
紳士がそんな事を言って、弓塚の首を懐に仕舞った。
何かの手品でも使っているのか、そこに首があるようなふくらみは見受けられない。
まったく、まったくもって非常識にすぎる。
しかし、目の前から弓塚の首が消えてくれたことで、多少麻痺しかけていた理性が正常に働いてくれるようになった。
――否、そんな事に思いを馳せている余裕などありはしない。
次の瞬間には、老紳士が一足で俺との間合いをナシにしてしまっている。
反応するよりも早く、杖での突きを繰り出してきていた。
喉元を狙った一撃、喰らえば骨くらいは砕かれかねない一撃。
避けるのは間に合うまい、と喉元に迫る一撃をナイフで打ち落とす。
ガギィ、と音をさせてナイフと杖が弾けあった。
その反動で距離を取って、低く身構える。
なんだ、案外やれるじゃないか……。
やっぱり、遠野志貴は異常な事には慣れっこらしい。
そう言えば先生が言ってたっけ、特別な力は特別な力を呼ぶって。
なら、こんなのは異常でもなんでもなくて、遠野志貴にとっての当たり前なのかもしれないな、と馬鹿げた考えが浮かんだ。
>250
比良坂初音vs青山素子 第1章 〜ひなた荘最後の日〜
素子が怒号と共に剣を振りかざしたとき
もうすでに初音は警官の人垣のなかにいた
もちろん術をかけて自分の姿が彼らの記憶に残らないようにしている。
さて・・どうするか?
初音は暫し考える・・・
その足元がやはりふらつく・・・どうやらかなりの重傷らしい
ここはこのまま帰った方がよさそうだ。
片足を引きずりながら、初音は外へと向かった。
玄関に差しかかったところで、中年の刑事が初音を呼びとめる
「君、待ち給え・・・署で詳しい事情を聞かせてくれないか」
初音は煩げに刑事の瞳をちらりと見つめる
刑事の顔から意志の力が抜けて行く。
「私は帰りたいの・・いいわね」
「はい・・・・どうぞ」
刑事は、初音の言うがままに道を開ける。
「うふふっ・・・ありがとう」
初音は刑事に一礼すると、そのままひなた荘を後にした。
背後に素子の悲壮な叫び声と銃声を聞きながら・・・・・
>248 暗黒騎士ガウザー VS 紅の騎士ギーラッハ
己が体当たりを受けたにも関わらず彼奴は即座に袈裟懸けに斬り込んで来る。
そうでなくては……。
突きを捌いて左後方に回したヒルドルヴ・フォークを流れる様な曲線で躍らせ、
頭の後ろに回すと、
「セイヤァッ! 」
大上段から十二分に重量と速度を乗せ、一気に戟ち下ろす!
彼奴の切り込みにカウンターを当てるが如く。
比良坂初音vs青山素子 第1章 〜ひなた荘最後の日〜
>252
私の声に脅えた警官が、銃を発砲する。
遅い。すでに剣は振り下ろされている。
「秘剣! 百花繚乱!!」
爆発的な気の流れが、花びらの形をとって具現化する。
その後に立っていたのは私だけだった。
しかし、あの女の姿は無い。
「くそ、どこに行った!? 出てこい!!」
玄関の方へと走る。
途中何度も警察官らしき人物に咎められるが、全員叩き伏せた。
手加減はしなかったが、死んでもいない筈だ。
「どこだ、どこに行った!!
逃げるのか? 姿を見せろ―――!!」
喉が張り裂けんばかりに叫んだが、
その声に応えるものはすでにいない。
私の叫びを聞くものは、散りかけた桜の花だけだった……
そして私は、殺人犯の汚名を着せられ指名手配される事となった。
(第1章 完)
>53 桐原朝子VS南条圭
破壊の渦と、天の怒りがエルミン学園の屋上を埋め尽くしている。
雷と相克するかの様に、渦を構成するエネルギーは姿を変えて雷と絡み合う。
互いのエネルギーが互いを食い尽くさんとうねり、ぶつかり、轟音を上げる。
そこはさながら破壊の共演、世界を否定しようとする力と、それを断罪せんとする力のぶつかり合い。
どちらの力も一歩も退かぬ。
――いや、渦のエネルギーが雷に侵食され始めている。
次第に屋上を雷鳴が支配しだし、破壊の轟音はその力を弱めてきている。
雷が、渦を少しずつ、だが着実にうち消していく。
そして、一際大きい雷鳴と共に、渦のエネルギーは拡散されて消えた。
あまつさえ、残った雷が朝子である銀の剣士へと殺到し、その力を叩きつけた。
予想だにしていなかった事態に、まともに雷を喰らって吹っ飛ぶ。
いぶし銀の薄片が尾を引きながら、屋上のフェンスにぶつかり、派手な音をさせて止まった。
だが、それでさえさしたるダメージがなかったのか、ふらりと立ち上がる。
否、そうでもないようだ。
いぶし銀のヴェールのあちこちに欠損が見られ、姿全体がぶれて見える。
まるで赤い剣士がダメージを被った時のようだ。
『――嫌いよ、あたしは』
言葉を発しながら、しかしそれは誰かに聞かせようとしているモノではない。
南条の言葉を聞いての上なのかも怪しい。
『――嫉妬と、嫌悪感と、衝動的な殺意と、あたしの心の中はそんなモノばっかり。
ただ、人が幸せそうにしているだけで許せないの。
そんな、そんな人間なのに、心にはまるっきり曇りもないような顔をして平気で生きている。
やさしいふりをして、笑顔を浮かべて、偽物の思いやりを見せて――そんなあたし自身が一番嫌い!』
絶叫。
心の中で認めていながら、目を瞑っていた自らの本性。
もはや、桐原朝子には何もない。
ただ、腕を振り上げ、宙を滑って南条を目指す。
その手の中にある赤い剣を、南条目掛けて振り下ろした。
前スレ>494 まとめ >495
ヨコシマ&ロゼット一行 VS G.G.スレイマン
『ボーイ・ミーツ・ガール?』
横殴りの豪雨?
吹き荒ぶ風に乗る砂粒?
怒号のような勢いで迫る「死」を内包した呪弾は、「絶望」を織り上げながら宙を馳せた。
視認出来る数をとおに超えている、出鱈目な「暴力」をスレイマンは振るう。
ええい。一度は避けられたけど、もう無理じゃっ!
そもそも避けたら、この娘にもシスターにも当たる。もはや、諫める事も流す事も出来ない。
スレイマンめぇ・・・・・・やたら上等な手を使ってくれるじゃねーかっ!
やむを得ず、再び文珠を展開!
「反」――――停滞する力場が飛来した呪弾を捕捉捕捉捕捉!
ありったけの言霊と呪力を溜め込んだ力場は、時を置かずに「呪弾」を吐き出した。
文珠の霊力を帯びて倍する速度と破壊力を持った呪弾が、スレイマンの生み出す銃弾と食い合い、
弾けては消える。押し寄せる「死」は確実に俺を、シスターの少女を、黒髪の少年を捕えんとしていた。
それだけなら、まだしも。
「G.G.スレイマン!」
思わず、声が零れていた。呪弾の波に乗り、スレイマンが走り、迫る。
地を蹴る音も異常なほど高く、弾のように駆ける体はそれこそ風に並ばん勢いだった。
そして何より、スレイマンの右手に据え付けられた「増幅杖(ブースターロッド)」
――――そこから滲み出る圧倒的な殺意と死が、再び俺の身を竦ませた。
「即死」――――重い、あまりにも重い呪を俺の霊感は感じ取とる。
冗談じゃない! あんなもの喰らえるかっ!
だがしかし、反射結界を維持したままでは文珠を投げる事も出来ない!
そもそも・・・一体何を使えばいいんだ? あいつには「爆」も満足に効かないってのに!
悩み、戸惑い、迷走する。そうやって、俺が結界を維持し続ける間にもスレイマンは加速した。
とっさに出来たのは、一文字刻んだ文珠を足下に落とす事。
それを軽く蹴飛ばし、俺とスレイマンを結ぶ直線上へ・・・・・・よし、今だっ!
「軟」――――文珠から文字が浮かび上がると、スレイマンの足下を軟化させずぶずぶにした。
バランスを乱し、急速に速度を落とす。
よっしゃ、そのまま転けろッ!
たっぷりと呪いをその姿に投げつける。が、ぎりぎりの所でスレイマンは体勢を立て直した!
狡いっ、なんであそこから持ち直せる? 魔法か、魔法の力か?!
結界から弾き出される呪弾に晒されながらも、スレイマンは疾る――――
死ぬッ! 死んでまう! 今度こそ間違いなく、なんの迷いもなく死んでしまう!
「イヤやぁ! 死にとうない! 助けてぇ!!」
それでも結界は逸らさなかったのだから、我ながら偉いと思う。
>108 vsユージン
「――――あぎゃ?」
不思議そうな声を上げて宙を舞う、巨大な頭蓋。それはくるくると回転しながら、鈍い音を
立てて床に落ちた。
まるでボールのように数回バウンド。最終的にそれは、置き去りにした自らの肉体を向い
て完全に停止した。両目を丸く見開いて、切断面から血を噴水のように吹き出す身体を、
怪訝な表情で見つめている。
「け――うけ?」
首を跳ね飛ばされた胴体が、どこから声を出しているのかは知らないが……そんな間の
抜けた声を上げた。一瞬の間を置いて、切断面から噴水のように血液が噴き出してくる。
バランスを崩したのか、ぐらり、と僅かに体勢が崩れた。
再び腹が抉り取られる。むき出しになった内臓器官に、先ほどの灼熱の液体――”リキッド”
が大量に流し込まれた。体内に侵入した液体は、今どこそこの異形の化け物を焼き殺さんと、
全身を駆けめぐる。悲鳴にもならない魔族の絶叫が、室内を埋め尽くした。
脳組織を、およそ二割程度しか保持していない頭部は、急速に死にかけていた。かすれた呻
きを発しながら、身動きひとつ取ることなく、どこからか悲鳴を発する自信の身体をただぼんや
りと眺めている。
魔法を生み出すことも出来ず、そして血液の循環もない脳組織は次々に壊死し、頭部だけと
なった魔族から、認識力そのものを静かに奪い取っていった。
最後に……甲高く咆吼し、そして膨張する肉体を見つめながら、頭部であったそれは、数秒
後には、ただの肉塊へと転じていた――――
咆吼。
顔無き魔族が、甲高く咆吼する。展開した魔力圏は、自らの肉体を犯していた異物を完全排除。
即座に損傷の復元を開始する。
だが――それでは終わらない。魔族そのものに変化が起こる。肉体が急速に巨大化。およそ二
メートルほどの巨躯になった時点で、その「成長」を停止する。後頭部に、元々の顔よりも一回り
小さい、まるで干し首のような顔がぽつん、と現れていた。それは、まるで蛙のように大きな口と開
くと、白目を剥きながら、朗々と歌詞無き歌を奏で始める。
瞬間――魔族の周囲に、不可視の力場が発生した。それは、魔族の鎧であり。魔族の武器であり。
そして、魔族の肉体そのものである。
恒常魔力圏――
そう呼ばれる、魔法によって生み出された小さな世界。この空間では、あらゆる存在が全て、魔族の
意志の下に完全に屈服する。
それを纏った魔族は、肉塊となって転がっているそれとまったく同じ顔を、歓喜に歪ませながら……
うけけ、と声を上げた。
>231
『怒りと悲しみと涙と』
vs “殺人卿”ナルバレック
『……自分への鎮魂歌(レクイエム)でも歌わせているのか?』
女が、そんな事を言いながら一歩私に近づく。
ぐ!!
私は思わず発砲しない。
だがそれはかすりもしなかった。
発砲の瞬間に地面を滑るようにして、女が私の懐にもぐりこむ。
《がっ!》
「うぐ―――!」
『まあ、私相手にして長生きできたほうだと評価しておこう。ああ、安心しろ。残りの2人も後を追わせてやる』
ぐぎき、と首の骨が悲鳴をあげる。
・・・・・間に・・・・合わない・・・・・?
私の腕が、くたりと落ちる。
その時――――
『“天の彼方より世界を見つめる幸せの星よ 歓びの星よ”
“長き歳月 我等に愛を贈りたまえ”
“聖なるかな 聖なるかな 聖なる光よ――――” 』
あたりに響く美声。
と同時に降り注ぐ柔らかな光。
『なんだ・・・・傷が・・・・塞がってる?』
『ママ・・・もうぜんぜん痛くないよ?』
通りでは、突然の事態に皆が驚きを隠せないでいる。
『ち?!なにがッ!!』
女の腕から、少し力が抜けた。
今・・・・!!
驚愕する女の前に、アズマリアを抱きかかえたクロノが翼をはためかせ舞い降りる。
≪すまない。少し、遅れた!!≫
「だいじょうぶ・・・・ですか?」
クロノの封印を解き、アズマリアの神霊力で怪我人を助ける。
ここまでは成功だ。
後は・・・・・・!!
>258
先ほど通りで巻き添えになった連中がテープの巻き戻しのように、傷が癒えていく。
そして、私の目の前に悪魔―クロノが舞い降りた。
「ほう、奇跡か。教会の記録で読んだことはあるが、実物を見るのは初めてだな」
いいものを見せてもらった。
一度、殺した連中を再度殺せる機会というのは中々に無い。
「ふむ、この奇跡は死んだ者も蘇らせれるのか? だとしたら、まさに『魔法』であり『奇跡』だが」
私は目の前の少女と悪魔を見据えて言う。
「ああ、少々、唐突だったな。東海岸でお前等の上司であろうシスター・ケイトとかも殺したんでな、
ふと、思っただけだ、気にしなくていい」
目の前の3人が愕然とした表情に変わる。
「さて、そこの『奇跡』の少女だけは殺さないでおこう。あとで、使い道がありそうなんでな!」
そう、言いながら、右手で作り出した黒鍵で悪魔―クロノに斬りかかる。
>231
『怒りと悲しみと涙と』
vs “殺人卿”ナルバレック
『ほう、奇跡か。教会の記録で読んだことはあるが、実物を見るのは初めてだな』
げほげほ咳き込む私を尻目に、女は二人に向き直る。
『ふむ、この奇跡は死んだ者も蘇らせれるのか? だとしたら、まさに『魔法』であり『奇跡』だが』
女が、一瞬にやり、と笑みを浮かべたように感じた。
『ああ、少々、唐突だったな。東海岸でお前等の上司であろうシスター・ケイトとかも殺したんでな、
ふと、思っただけだ、気にしなくていい』
な・・・・・・!?
今――――なんて・・・・・・。
『さて、そこの『奇跡』の少女だけは殺さないでおこう。あとで、使い道がありそうなんでな!』
そう、言いながら。
右手で作り出した黒鍵でクロノに斬りかかる。
だが。
《だぁん!》
私の拳銃が、火を噴いていた。
女の足元めがけて。
>260は>259の間違い・・・・・。
>260
私の左足に銃弾が打ち込まれたらしい。
体勢を崩す。
その瞬間に黒鍵を爆発させて、クロノは弾き飛ばしたが……
ふむ、これはこれでイレギュラーな事態だ。
左足の傷口に指を突っ込み、弾丸を抉り出す。
そして、応急処置で神聖療法を施す。
……気が変わった。
もう、少し、目の前の少女を詰問するとしよう。
その前に悪魔の方をどうにかするか。
爆発の余波で、吹き飛んだ悪魔が立ち上がる。
私はその瞬間を見計らって、懐から取り出した『槍』を悪魔に投げつけた。
悪魔の腹が槍に貫かれそのまま壁に磔になる。
「ほう、即死しないか。確かに急所ではないがな、『神殺しの槍』で即死しないとは見上げたものだ」
悪魔が私を憎々しげに睨みつける。
「だが、それは悪魔であるお前に絶対に抜けん。しばらく、そこで見物していろ。あとで、一撃に首でも刎ねて楽にしてやる」
私を撃った少女に向き直る。
自分の行為に呆然としているようだ。
……まあ、いい。
殺人講義の第3講目を開始しよう。
「さて、再びお前に問おう。先ほどの銃撃、お前に殺意はあったのか?」
>253 暗黒騎士ガウザー VS 紅の騎士ギーラッハ
吹き付ける暴風のように、ギーラッハの大剣が俺に襲いかかる。
俺は咄嗟に手首を切り返すと、大剣を受け止めるべく構え直した。
悲鳴のような、鈍い金属音。
ビルドルヴ・フォークを受け止めた、俺の剣が立てた音だ。
圧倒的なまでの重圧を持つ、紅の騎士の一撃。
ビルドルヴ・フォークの巨大なまでの刃が、俺を刀ごと裁断すべくじりじりと迫ってくる。
少しずつ、しかし確実に、俺と刃の距離が縮まっていく。
重圧に腕が痺れ、俺の刀が軋む音を立てる。
「あんた―――本当に強いな」
俺はそうつぶやくと、大きく身を屈めた。
ほんの一瞬だが、ギーラッハがバランスを崩す。
その一瞬を利用して、俺はギーラッハの左側へと回る。
合わせていた剣を抜き、刃同士が摩擦音を響かせた。
ギーラッハの剣圧から解放されると、俺はそのまま剣の背に手を添える。
「それだけ強いのに、姫様に従うしか知らないとはね―――」
その言葉とともに、奴の肩口を狙って下から直線に切り上げていく!
>262
『怒りと悲しみと涙と』
vs “殺人卿”ナルバレック
「ぐあぁッ!?」
「クロノ!!」
クロノとアズマリアの悲鳴。槍に腹を貫かれ、クロノが壁に磔にされている。
『ほう、即死しないか。確かに急所ではないがな、『神殺しの槍』で即死しないとは見上げたものだ。
だが、それは悪魔であるお前に絶対に抜けん。しばらく、そこで見物していろ。あとで、一撃に首でも刎ねて楽にしてやる』
いやになるような笑みを浮かべる女を、クロノがにらみつける。
その視線を平然と受け流し、女は私に向き直る。
私は、俯いたままこぶしを握り締めていた。
『さて、再びお前に問おう。先ほどの銃撃、お前に殺意はあったのか?』
「悪いけど、あんたのくだらない講義を受ける気はさらさらないわ。」
私は、一歩足を踏み出した。そして、すぃと彼女の横を通り過ぎる。
「ロゼット!クロノが!」
私は、悲鳴をあげるアズマリアも無視しクロノの前に立つ。
「ロゼッ・・・・ト。」
「黙ってて。」
そう言うと、槍に手をかける。
「ふ・・・ん!!」
からんと音をたて、壁から抜かれた槍が地面に転がる。同時に、地面にひざをつくクロノ。
「ロゼット・・・・癇癪を起こしたら・・・・駄目だ・・・・!!」
「・・・・・・。」
「ロゼット!!」
「・・・・・・落ち着いて。私は冷静だから。」
どうしようもないほどの怒りとは。ここまで人を冷静にさせるものなのか――――。
「封印をとくわ。そしたら――――逃げるわよ。
そのまま、一番近い支部に飛んで。そこで体制を立て直す。
すべては・・・それから。あんたもそういったでしょ?」
「・・・・・・わかった。」
私は、懐中時計を操作する。と同時に、クロノに流れていく私の『何か』。
≪行くよ、アズマリア。≫
「あ・・・・はい!!」
アズマリアを抱きかかえ、クロノが私に手を伸ばす。
最後に、私は一度女に向き直る。
「あんた・・・あんたが何者かは知らない。けど。
あんたは私が『殺す』。何があろうと『殺す』。必ず『殺す』。」
≪ロゼット・・・・・。≫
クロノが、その翼を羽ばたかせ、空へと舞う・・・・・。
>246
「ふん、逃げたか。まあ、負け犬の遠吠えに終わらないことを期待するよ」
私は薄笑いを浮かべながら、3人を見送った。
――2日後
「やれやれだ。悪魔というのはこんなに脆いものなのか? 27祖の足元に及ばんぞ?」
私は、魔界の勢力の拠点の一つを襲撃していた。
瞬く間に悲鳴をあげ、殲滅されていく悪魔たち。
こうも呆気ないと、少々、興が冷める。
そこに背後から鋭い殺気を感じて、私は咄嗟に飛び退いた。
直後、私がいた場所を巨大な光の弾が通過していった。
「ほう……、少し、覚悟が出来たか?」
私は笑みをたたえて、襲撃者を見る。
そこにいた襲撃者―ロゼット・クリストファは 憎悪に燃えた眼で私を睨みつけた。
>251 遠野志貴VSアーノルド・ラスキン
少年が眼鏡を外し、ポケットから取りだしたナイフを手にする。
それは今時珍しい飛び出しナイフ、手の中で刃が跳ね上がる。
瞬間、刺すような殺気が露わとなる。最初の一撃は少年が手にしたナイフにより
阻まれ、ラスキンが僅かに感嘆の表情を浮かべる。
手加減がされているとはいえ、短い刀身で突きを的確に裁くその手腕こそは明らかに
訓練された者の動き。
そしてその勢いを受けて僅かに跳んだ少年が低く構える。
ラスキンも軽く下がり、杖の握りを変えてその柄を払う。
「ほう、少しは出来るらしいな」
ラスキンが手にした杖の床に柄が落ち、転がる。
乾いた音が廊下に数度響く。
窓の外からの月光を返して白く輝くのは仕込み杖の露出した刃。
そして間を置かずに少年の側方に回り込みながら踏み込み、放たれるのは
大きく弧を描き振り下し、切り上げ、横に凪ぐ三連撃。
少年は蒼く輝く瞳で冷静にそれを見据え、いずれも難なく防ぐ。
鋼の衝突する甲高い音が闇に響き、生じた火花が数度ラスキンと少年の姿を暗闇の中に
浮かび上がらせる。
最後に横凪ぎの一閃が壁を削り、僅かにラスキンの構えが崩れる。
再び間合いが開き、攻守が逆転する。
>265
『怒りと悲しみと涙と』
vs “殺人卿”ナルバレック
ちっ・・・はずしたか。
私は拳銃をホルスターにしまいショットガンを構える。
魔呪を詰め込んだ水銀を炸薬代わりにしたモノ。破壊力は馬鹿にできない。
『ほう……、少し、覚悟が出来たか?』
ニタリとわらいながら、私に向き直る女。
いや、『埋葬機関第一位“殺人卿”ことナルバレック』。
それが、支部で聞いた彼女の名前。
そして―――彼女が、シスターケイトを・・・NY本部を壊滅させたということも。
今回のこの行動。これは完全に私の独断だ。
故に――――クロノも、アズマリアもいない―――――。
「ええ、十分に。ナルバレック卿。」
私は、銃口を彼女に向ける。
彼女の余裕、それは自分の力にそれ相応の自信があるということだろう。
「けどね・・・・・。」
私は、にたりと笑う。
「散弾まで全部かわすのは無理でしょう!?」
私は、ショットガンを乱発する!!
>267
散弾銃が私に向かって火を吹く。
――なかなかいい判断だ。
手に持った黒鍵を爆発させ、散弾を吹き飛ばすと同時に少女―ロゼットの視界を塞ぐ。
そのまま、物陰へと飛び込む。
散弾銃は近距離ではマグナム以上に危険な銃器だ。
迂闊に接近すれば、頭を吹き飛ばされてもおかしくない。
……ふむ、これでいくか。
「I punish you」(我は汝を罰する)
「God's Thunder defeats you」(神雷が汝を滅するであろう)
「Confess your sin!」(悔い改めよ、汝の罪を……!)
詠唱が終わると同時に紫電がロゼットの周りに駆け巡った。
さて、お楽しみはこれからだ。
>266 遠野志貴VSアーノルド・ラスキン
老紳士の体勢が崩れた。
好機と見て、今度はこちらから打って出る。
あいつがやったように、俺も一足で間合いを詰める。
老紳士の姿を、全身を『視る』――全身に、のたうつような死の線が見て取れた。
そのまますくい上げるように、左肩にある『線』めがけてナイフを振るった。
キィン――。
その一撃は澄んだ音をさせながら仕込み杖の刃に受け止められている。
片眼鏡の奥の目が、冷静にこちらの姿を見据えていた。
もう、体勢を立て直したのか?
――いや、まだだ。
あいつは未だ体勢が崩れたままだ。
今のだって、相当無理をして受け止めている。
なら、このまま一気呵成に行くだけだ。
切り上げ、突き込み、振り下ろし、横薙ぎに振るう。
月光を照り返しながら、蒼白い軌跡を描いて縦横無尽にナイフが疾る。
だが、そのことごとくを、あいつの仕込み杖の刃が受け、弾き、打ち落とし、受け流していた。
一刀ごとに金属が打ちつけ合う音をさせ、その残響が消えないままに次の剣戟が新たなる音を奏でる。
あいつは未だ守勢に回るばかり。
しかし、こちらの攻撃も未だ実を結ぶ気配を見せない。
一向に、埒が、開かない。
なら、埒を開けるとしよう。
ナイフを捌いている仕込み杖の刃をギリ、と睨む。
途端、頭の芯を万力で締めているかのような頭痛。
ギリギリと音を立てて、脳が軋んでいるかのようだ。
それに耐え、決して攻撃の手を休めないまま仕込み杖の死を『視る』。
そこにある複雑な線へとナイフを打ち込み、線に沿って通し、走らせる。
一際高い金属音をさせながら、仕込み杖の刃がくるくると宙を舞った。
>268
『怒りと悲しみと涙と』
vs “殺人卿”ナルバレック
ナルバレックの目の前で、散弾がいきなり炸裂する!!
「なっ!?」
視界が・・・・・!!
『I punish you (我は汝を罰する)
God's Thunder defeats you (神雷が汝を滅するであろう)
Confess your sin!』(悔い改めよ、汝の罪を……!)
ナルバレックの声が響く。
そして。
次の瞬間、私の周りを雷撃が包む!!
「がぁッ!?」
・・・・・・・くぅッ!!
手足に走る激痛と、つったような感覚!!
「やってくれるッ!!!」
私は、今だ痺れるような感覚の残る手足を奮い立たせ、あたりを見回す。
「どこッ!!どこに隠れたッ!!
逃げてないで姿を見せなさいッ!!」
私は、叫びながら当たりに銃口をさまよわせる。
>第18章 429
死徒27祖による『聖域』襲撃
ヘルパートVSエンハウンスwithコルゴン
降り注ぐ凶器に対し、エンハウンスは片手に提げた剣――
「魔剣」の名を冠する禍々しき剣、アヴェンジャーを向けた。
次の瞬間、ヘルパートは自らの不用意さを悔いる事となる。
剣から放たれた衝撃波が、襲い来る五指を悉く吹き散らし、
無力化する。
せめて全ての指の内一本でも残しておけば――
この程度の衝撃波に翻弄される事無く、体制を立て直す事も
可能であったかも知れない。
だが、ヘルパートはこの攻撃で全てを使い切っていた。
絶対殺人者が覚える筈のない「焦り」を覚えた――
その時点で、この戦いは終わっていたのだ。
二転三転、地面を転がり、視界が回転する。
それがやがて止まり、視点が黒い銃口――ブラックバレルを
捕らえた時、ヘルパートは自らの敗北を悟る事となった。
その時彼の心を巡った感情――それこそが「絶望」であると知る前に、
神殺しの銃弾は、彼の存在の全てを奪い尽くしていた。
ヘルパート 死亡
>270
隙は一瞬、作れば十分だった。
そもそも、アレで殺す気はなかったのだ。
仕留めるならさっきのアレでも黒焦げにすることはできた。
だが、この身の程知らずは痛めつけてから殺す。
さっき、対峙した瞬間にそう決めていた。
私を探す無様な襲撃者の視線が私の隠れているところから離れた瞬間に、
一気に奴の懐に飛び込んだ。
奴が私に気づいて銃口を私に向けた時はもう手遅れだった。
奴の腹に掌底を叩き込む。
奴の身体がくの字に曲がる。
間髪入れず、奴の頭を掴んで地面に叩きつける。
そして、奴の銃を持つ手を踏みつけた後、言った。
「常識から言って、私と張り合えると思ったのか、ロゼット・クリストファ?」
私の右足がロゼットの銃を持つ右手を踏み潰した。
ロゼットの苦悶の声が辺りに響き渡る。
私はロゼットを嘲笑する。
「私を殺したいと思っている者は数え切れない。その程度の温い殺意では、私を退かせる事は不可能だ」
ナイフを取り出し、ロゼットの左足に突き刺す。
――絶叫。
「安心しろ。すぐには殺さん。今度は実地で人の身体の耐久性についての講義といこうか。
……講義に使うのは、お前の身体だがな」
>272
『怒りと悲しみと涙と』
vs “殺人卿”ナルバレック
突然。そう、突然。
私の視界にナルバレックが入ってくる。
しまった。そう思う間もなく。
《ぼくっ、どしゃぁ!》
「ぐッがッ!?」
私の体は、地に組み伏せられていた。
奴はがし、と私の足を踏みつける。
『常識から言って、私と張り合えると思ったのか、ロゼット・クリストファ?』
嘲りの言葉、そして。
《こきゅり!!》
「あ゛ぁぁぁぁぁぁ!!」
銃を握っていた手の骨が、音を立てて砕ける。
『私を殺したいと思っている者は数え切れない。その程度の温い殺意では、私を退かせる事は不可能だ』
そして、足に走る激痛。
「い゛ゃ゛ぁぁぁぁぁぁっぁぁッ!!」
獣のような咆哮。
『安心しろ。すぐには殺さん。今度は実地で人の身体の耐久性についての講義といこうか。
……講義に使うのは、お前の身体だがな』
心なしか、その声に歓喜が混じっているような気がする。
この女・・・・・ッッ!!
楽しんでいる。私を蹂躙することを心から。
「う・・・うぅ・・・・・。」
涙が流れる。
傷の痛みからではなく、悔しさから。
奴に、一太刀すら与えてやれない己のふがいなさに。
「くやしい・・・・悔しいよぉ・・・・・!!」
>273
私はロゼットの四肢のそれぞれ1本ずつ、計4本の黒鍵で地面に磔にした。
苦悶の声とともに、ロゼットは後悔の涙を流す。
「愚かだな。私ならばそのような状況になっても、眼だけで相手を殺すぞ?」
ナイフをロゼットの右肩に突き立てる。
――再度、絶叫
「ロゼット・クリストファ、お前の意思は所詮、その程度だったということだ」
ロゼットの左手の指を一本ずつ、折り曲げていく。
再び、ロゼットの絶叫。
この交響曲は単調すぎて、いささか、聞く者に飽きを感じさせるのが欠点か。
「能力で劣るなら、意思の強さで勝負となる。だが、こと殺すと意思において私に敵う者などいやしない。
最初から、これは勝敗が決していたのだよ」
ロゼットの顔を踏みつける。
鈍い音がして、ロゼットの鼻はつぶれた。
「少し、見れる顔になった。さてと、まだまだ講義は続くぞ」
>269 遠野志貴VSアーノルド・ラスキン
曲がるでもなく、折れるでもなく、断ち切られた刃。その先は
暫く空を舞った後で、壁へと突き刺さる。
更に迫る斬撃が身を引くラスキンの外套を切り裂く。役に立たなくなった仕込み杖を
少年へと投げつけ、間合いを取ったラスキンは、しかし外套に出来上がった傷を暫く
訝しむように見入る。
其処にあるのは、切れ味の悪い刃物を叩き付けただけのような出来の悪い裁ち切り跡、
幸いにして身体には至ってはおらず、先程の鉄をも切り裂く一撃には程遠い。
再度、ラスキンが片眼鏡に指を掛ける。
少年が手にするナイフには何の魔術的要因も見つからない。
「ふむ。少し、君に興味が沸いたよ」
ラスキンは更に間合いを取る。懐から皮表装の分厚い本を取り出すと、
頁の1枚を引き出し、少年へと向かい放り投げる。
その指が複雑に動き、詠唱が重ねられる。
「契約者アーノルド・ラスキンの名に於いて命ず、カシモラルの眷属よ、此処に」
空中で紙の表面が盛り上がる。徐々に形作られるそれはずらりと揃った鋭い牙を持つ
大きな犬へと姿を変える。
但し、只の犬ではなく、その背中にあるのは鷲の翼。
低く唸り声を上げるそれは、全身を大きく撓めると狙い違わずに少年へ飛び掛かる。
再度、本を懐へと仕舞いながらラスキンは言う。
「犬の餌で終わる心算はなかろう、君も?」
>274
『怒りと悲しみと涙と』
vs “殺人卿”ナルバレック
女は、私の手足に剣を突き立て地面に固定する。
十字架に磔られたキリストのように。
「う、うぅぅぅ・・・・・。」
『愚かだな。私ならばそのような状況になっても、眼だけで相手を殺すぞ?』
そして、奴はナイフを右肩に突き立てた。
「い゛ぃぃぃぃ!」
『ロゼット・クリストファ、お前の意思は所詮、その程度だったということだ』
いいながら、奴は私の左手の指を一本ずつ折り曲げていく。
「ぐ!ぐくッ!!」
『能力で劣るなら、意思の強さで勝負となる。だが、こと殺すと意思において私に敵う者などいやしない。
最初から、これは勝敗が決していたのだよ』
奴が私の顔を踏みつけた。
ごりっと鈍い音がして、鼻がつぶれた。
「あ・・・・・う・・・・ぁ・・・・・。」
『少し、見れる顔になった。さてと、まだまだ講義は続くぞ』
「悪いが講義はここまでだ。」
「ロゼット!!」
?!
聞きなれた、声。それと同時に、奴の体が蹴り飛ばされたように飛ぶ。
「く・・・・酷い・・・な。」
「うぁ・・・・・!!」
私を、見つめる二つの顔。クロノ・・・・・それにアズマリア。
「どうしてこう無茶をする?!一人でどうこうできる相手じゃないだろ!!」
「う・・・・今・・・・外してあげます・・・・。」
アズマリアが、私の手足を固定する剣を抜いていく。
「二人とも・・・・アリガト・・・・・・。」
私は、荒い息をしながら奴をにらみつける。
「クロノ!封印をとく! あいつを・・・・あいつを『殺す』!!」
私は懐中時計に手を伸ばす。
その時。
《ぱぁん!》
頬に走る鈍い痛み――――――
>276
突如、側面からの衝撃。
私は弾き飛ばされた。
空中で体勢を整え、着地する。
「ほう、お仲間の登場か……?」
なにやら、仲間同士で揉めているようだ。
悪魔―クロノがロゼットの頬を叩いた。
・
・
・
「ああ取り込み中、悪いがもういいか? 何時までも茶番劇を見る気はないのでな」
両手に何本もの黒鍵を作り出しながら、私は3人にそう声をかけた。
>277
『怒りと悲しみと涙と』
vs “殺人卿”ナルバレック
いきなり頬に走る痛み。
クロノが、私の頬を平手で叩いたのだ。
「な―――」
「ロゼット。」
何をする―――と言いかける私を制してクロノが口を開く。
「僕と君は、何の為に契約したんだ?
何の為に命を削って・・・・ここまで来たんだ?
ここで、あの女を殺すために、か?」
ただ、淡々と。クロノは続ける。
「それ――――は。」
言葉に詰まる。
「怖いです・・・・今のロゼット・・・・。
ロゼットは・・・・ロゼットは・・・・・・・。
いつもはもっと明るくて・・・・もっとやさしくて・・・・・。」
アズマリアが、涙声になりながら私の怪我の止血をする。
「憎むな、なんて言わない。悲しむな、なんて言わない。
そういった感情は・・・時に全てを押し流す。 でも、流されちゃいけない。受け入れちゃいけない。
・・・・そこに、見出さなきゃいけない。
自分が、本当に成さなきゃならないことを!!」
クロノが、私の瞳を見つめる。
瞳に写る私は、酷く醜く見えた。
「ご・・・めん。ごめん・・・・なさい・・・・。ごめんなさい・・・・!!」
私の目から、涙がこぼれる。
先ほどの悔し涙とは違う、『涙』。
そんな私の髪の毛を、やさしくクロノがなでる。
『ああ取り込み中、悪いがもういいか? 何時までも茶番劇を見る気はないのでな』
女が、詰まらなそうに言う。
「ロゼット、アズマリア。君らはここで見ててくれ。
彼女の相手は・・・僕がする!!」
そう言って、クロノが私達に向かってふっと微笑んだ。
>278
「ふむ、最初に死ぬのはお前か。 『百人殺し・クロノ』……?」
実に滑稽だ。
そもそも、私の相手をできると思っているのが――
「まあ、良かろう。そこの女、ロゼットはなかなか弄りがいがある玩具だ。
契約者のお前をくびり殺した後、絶望のどん底で殺してやるのも一興か」
右手の黒鍵3本をクロノに向かって投擲する。
爆発はさせない。
ただの聖別された剣として、クロノに飛んでいく。
こちらはただの牽制。
左手の黒鍵3本を上空に向かって放り投げる。
ある程度の高度に達したところで水葬式典を発動。
辺りに聖水の雨が降り注いだ。
「どうだ? 悪魔であるお前にさぞ苦痛だろう、クククク……」
>275 遠野志貴VSアーノルド・ラスキン
「ハ……ハハ」
本当に、何てデタラメだろう。
今俺の目の前に現れた怪物は、間違いなく本の一頁だった。
それが老紳士の言葉と印を受けてか、非常識な化物――アルクェイドだったら幻想種と呼ぶだろうか――へと変貌している。
『犬の餌で終わる心算はなかろう、君も?』
「――犬の餌も鮫の餌もお断りだっ!」
その、翼の生えた犬という非常識な生物が俺へと牙を剥き、爪を振るう。
ギィィィン。
化物の爪と、俺のナイフがぶつかり合う。
ギィィィン。
また弾け合う。
肉食獣の動きは、羽を持っている事でその不可解性を増して俺を叩きのめそうとする。
ギィィィン。
さらに弾く。
……そろそろ化物の動きが分かるようになってきた。
ギィィィン。
まだ弾く。
……もう、何も考えなくても弾ける。
様子見は充分だ。
俺の目には、化物の全身にのたくっている死の線が『視え』ている。
見た目がどんなに異常でも、例えどれだけ力が強く、動きが速かろうとも。
相手が人間でも化物でも神でも――生きてさえいなくても。
線が視えるなら、何だって殺してみせる。
次に繰り出されてきた爪の一撃、それを繰り出している足、その付け根にある線目掛けてナイフを振るった。
犬の足をくぐり、複雑に絡み合うような軌跡を描いてナイフが閃く。
そのまま、ナイフは寸分違わずに線を断ち、足を『殺した』。
その事実に怯んだような動作をする化物。
だが、もはやこの無様な犬に構ってやるつもりは毛頭ない。
線を断ちきった勢いでナイフを翻し、胴体左上部に視えている点目掛けてナイフを突き込む。
まっすぐに、狙いあやまたず目標へと吸い込まれていくナイフの切っ先。
ただ、それだけでこの非常識な化物は『死んだ』。
死んだそれは、ビデオの巻き戻しみたいに現れた時の挙動を逆回しで再現する。
次第にディテールを、立体感を失ってただの頁に戻っていく。
宙をひらひらと漂いながら、音もなく床に落ちた。
「は――あ、あ」
今まではあまり気が付かなかったけど。
俺の心臓は早鐘のようになり、呼吸も上手くできていない。
常識を越えたところでの命のやりとり……。
やっぱり、こんなのはよく分からない、分からないけど――。
俺の口元は皮肉げに歪んでいた。
>279
『怒りと悲しみと涙と』
vs “殺人卿”ナルバレック
『ふむ、最初に死ぬのはお前か。 『百人殺し・クロノ』……?』
「なめてくれるなよ、人間?」
『まあ、良かろう。そこの女、ロゼットはなかなか弄りがいがある玩具だ。
契約者のお前をくびり殺した後、絶望のどん底で殺してやるのも一興か。』
「勝手に人の契約者を玩具にしないでもらおうか。不愉快だよ、お前!」
二人の戦いが始まる。
ナルバレックは、剣をクロノに向けて投げつけると同時に空に向けて投げつける。
何を?!
次の瞬間、空から雨のように水が降り注ぐ!
「なっ?!」
クロノが驚愕する。
見れば、クロノの体に水があたった所からしゅうしゅうと煙が噴き上がる。
まさか・・・・これは・・・聖水?
『どうだ? 悪魔であるお前にさぞ苦痛だろう、クククク……』
「ち!!やってくれるッ!!」
クロノは慌てて雨から逃れようと飛びのく。そこをめがけて剣が投げつけられる!
「クロノ!!!」
「いやッ!!」
私とアズマリアの悲鳴が響く。
だが。
「なめる・・・なぁぁぁぁぁッ!!」
クロノが咆哮し、剣を素手で受け止める!
「がぁぁぁぁぁ!!」
そして、飛び来る剣をそのまま剣で弾き落とした!。
最後に、受け止めた剣をナルバレックに向けて投げつける―――――!
>281
黒鍵が私に向かってくる。
だが、かわす必要もない。
――何故なら
『ボンッ!』
黒鍵は私に向かってくる途中で爆発したからだ。
「悪いな。コレは私の魔力で形成される。爆発も全て任意に行えるのだよ」
懐から、『槍』を取り出す。
「しかし、お前も幸運な奴だな。コレを何度も喰らえる悪魔などそうはいやしないぞ」
槍を手にして、クロノへと一気に駆けより、突きの連打を繰り出す。
「死ぬ気でかわせよ? 急所を貫かれれば、その時点でお前は即死する!」
>282
『怒りと悲しみと涙と』
vs “殺人卿”ナルバレック
剣が奴に向かって飛ぶ!
だが、奴はかわそうともしない。
《ぼんッ!》
剣は奴に届く前に爆発する!
『悪いな。コレは私の魔力で形成される。爆発も全て任意に行えるのだよ』
そう言うと、奴は懐から槍を取り出し、構える。
『しかし、お前も幸運な奴だな。コレを何度も喰らえる悪魔などそうはいやしないぞ』
槍を手にした奴は、クロノへと一気に駆けより突きの連打を繰り出す!!
それは、まさに電光石火のごとく!
『死ぬ気でかわせよ? 急所を貫かれれば、その時点でお前は即死する!』
「なめるなよ!!」
クロノは自らの手が焼けることも構わず、奴の槍を掴む!!
「おぉぉぉぉぉぉッッ!!」
そして、その槍ごとナルバレックを振り上げた!!
そして、槍からナルバレックを振り落とす!!
空中で体勢を立て直そうとするナルバレックめがけ・・・・
「いけぇぇぇっ!!」
槍を、投げつけた!!
>283
槍が私の右わき腹を貫いた。
そのまま、私は地面に墜落する。
・
・
・
立ち上がって、槍を引き抜く。
「ふむ、人間でこの槍に貫かれたのはキリスト以来か? もっとも奴を人間と定義していいかは謎だが」
普段、前髪で隠れている私の右目に指をかける。
「人間というのは刷り込み次第でどうにでも化ける。それこそ、お前等、悪魔と同様にな」
自分の右目を指で抉り出す。
心地よい痛みが私の全身を振るわせる。
「ちなみに、私は『目を抉る』というのがキーだ。この行為が自己への暗示となる」
10メートル近い間合いを一足飛びに詰め、クロノに肉薄する。
「楽には殺さんぞ。此処までさせたんだ、少しは足掻いて見せろ!」
私は槍を三節根状に変え、クロノを滅多打ちに打ち据える。
http://salad.2ch.net/test/read.cgi/charaneta/1016196534/ 17章>505から
空中大殲「ヤツは空にいる」 スミレ・横島side導入
「OK、それじゃ、ついてきなよ。埒をあけてあげるからさ」
狂乱の一夜が明けたべネツィア。
その北13Km、マルコポーロ空港で途方にくれていた私達に、
声をかけて来た男はそんな事を言った。
その言葉を信じたわけではなかったのだが、
交通機関が麻痺状態のこの状況では選べる選択肢は他になかった。
メレムからの情報ではすでにこの国には、宗教、軍事問わずさまざまな機関から人員が送りこまれている。
そんな中に死徒二十七祖の二十一たる私がいるのはいかにも拙い。
つまり藁にもすがる気持ちだったわけだが。
「いや〜助かりましたね〜、スミレさん」
まさかで飛んでしまった小型機の中で、横島がそんなのんきなことを言う。
「そうね〜。ところで気になってたんだけど〜」
私はそれに同意しながらも御神苗に向かって問い掛ける。
「これって軍用機っぽいね〜」
「軍用機だからな」
御神苗がそういった途端、唐突に横島が立ちあがった。
「なんでや〜!」
「いきなりど〜したの横島〜?」
声をかけるが横島は止まらない。
「俺なんも悪いコトしてへんのに軍に拘束なんてあんまりや〜!」
「ってちょっと待て」
御神苗がつっこむがどうやら聞こえてないらしい。
「俺は悪くない! 無実や! 冤罪なんや! 信じてくれ〜!!」
「そこまで言われると疑いたくなるな……」
「あはは、横島〜、自首した方が罪が軽くなるよ〜」
「スミレさんまでなに言うんすか!?」
「だって横島、この前もさ〜」
「……なにやってんだか」
私と御神苗と横島がそんな大騒ぎをしていた頃――
4000m離れた空から静かに彼らの飛行機に迫るものがあった。
そいつは待っていたのだ。
彼らが空に来るのをずっと――。
そいつは「衾」といった。
空中大殲〜ヤツは空に居る
御神苗優の場合
これが・・・・・・世界最高レベルのGSねぇ……
目の前で大騒ぎしている横島を見ながら、俺は苦笑した。
人は見かけによらないってことか・・・・・・ま、俺が言えたこっちゃねぇか
肩をすくめ、脇に置いておいたコップに手をかけようとした時
――――ッ!
脳内で警鐘が鳴り響いた
「ど う し た の 〜 ?」
スミレの間延びした声が遠くに聞こえる。
危険信号はだんだんと大きくなる。
「・・・・・・この圧迫感・・・・・・」
なんだ・・・・・・まるで戦場に居るような・・・・・・この感じは・・・・・・
思考が加速する。
危険信号はすでに臨界点をを振りきっていた。
そして――――
機体が揺れた。
「なんだっ、なにがあったんだっ!」
「な ん の 音 〜? 今 の 〜?」
うろたえる2人を尻目に、俺は窓へ駆け寄り、外を確認した。
そこには――――化け物がいた。
>285 >286
空中大殲 「ヤツは空にいる」 衾側導入
妖───それは、どこにでもいる。
深い山にも、清い川にも、蒼い海にも、暗い森にも。
──────────────そして、高い空にも。
その妖───昔の人間は、彼を「衾」と呼んでいた───は、空腹だった。
最近、まともなエサにありついていない。
以前は、人間の詰まった空飛ぶ鉄の塊が、よくこの辺にも飛んできたものだったが、最近はさっぱりだ。
実を言えば、この空域での行方不明事故があまりにも多いため、航路が変更されて久しいのだが、
もちろん衾がそのような事実を知るハズもない。
昔のように、地上に降りてエサを探そうにも、最近の人間共は妖に対して、ただ恐れるだけでなく反攻してくる。
キルリアなんとかいう装置で捕まえられそうになったのは、衾にとって苦い思い出であった。
「妖も生きていきづれえなァ、最近はよォー」
そんなコトを考えながら空を漂っている時だった。
衾の視界に、一機の飛行機が飛び込んで来たのは。
見たところ、さほど大きくはない。人間も、大した数は入っておるまい。
だが、ないよりはマシだ。前に人の肉を喰らったのは、いつのコトだったろう。
「ひィ〜ひひひ、久しぶりのエサだァ〜〜〜」
妖はレーダーには映らない。
衾はその小型機に接近し、身体を長く伸ばし、くねらせながら絡みついていく。
こうやって少しずつ機体を溶かしながら、中の人間を喰らっていくのが、たまらなく好きなのだ。
動きを封じてしまえば、どこにも逃げられないし、怯える人間共の表情をじっくり見るコトもできる。
「やっぱり、空はいいなァ〜〜。
苦手な大量の炎もねえし、何よりエサを横取りする他の妖もいねえしよー。
おっと、忘れねえうちに、頭に入ってる奴を喰っとかねえとなァ。
こうすると、こいつ揺れだして面白えからなあ〜〜〜」
空中大殲〜ヤツは空に居る
>287 衾
窓を見た俺は目を疑った。
そこにいたのは――――文字通りの化け物だったから。
緑の体色。泥人形のような体。
顔は細長。二つのギョロついた目。
大きく開かれた口には乱食歯が並んでいる。
子供の悪夢に出てそうなソレは、
身体を大きく伸ばしながら機体に絡みつかせていた。
―――こいつのせいか
妙に冷めた感想だった。まぁ、周りが異常に騒々しかったせいもあるかもしれない。
そして、ヤツの首が機首へと伸びていくのを見た俺は、
飛ぶようにコクピットへ駆けた。
「そこにいるのは危険だ!!早く中へ逃げ込め!!」
俺はコクピットのドアを開け放ち怒鳴ると、
腰から愛用のSAUERを引き抜き、セーフティーのロックを外した。
―――これでどれだけのことが出来るかはわからねぇ。
しかし、パイロットが逃げる時間を稼ぐことくらいは出来るはずだ―――
>288 空中大殲〜ヤツは空に居る
「なんだっ、なにがあったんだっ!」
ゆ、ゆれる!?
来た時の旅客機だって揺れなかったのに、軍用機なのに揺れる・・・これは、ヤバイ!
事故ですか、落ちますか、死にますか、お終いですかぁ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!
イヤやっ! こんなところで死にとうないっ!
でも飛行機事故なんて、どうにもならへんがなぁ!
「ぎゃー! いやー! もうあかーーーーーーーーーーーーーーーん!」
御神苗が振動をものともせず走っていったが、それどころじゃない。
俺は今、最後の時を迎えようとしているのだから。
頭の中で、何やら信号が目まぐるしく駆け巡った。
そうだな。うん。今さら足掻いたって、どーせ無駄。
そうさ、出来る事と言ったら――――――――――
「スミレさ〜ん!! 死ぬなら・・・死ぬならその胸の中で死なせてっ!」
隣の座席に座るスミレさんに飛びつき、胸に顔を埋めながら抱きしめる事だけだった。
ああ〜、なんつーかええ感触や。
せめてこの感触に包まれて死ねるだけでも・・・いや、まだだ! まだ足りん!
「スミレさん! 落ちるまでの時間で出来る事を――――――!」
>280
燦月製薬が誇るヴァンパイア3銃士の1人、『人形使いナハツェーラー』は、
今、とある校舎の前にキメラヴァンプを引き連れて現れた。
此処に魔術師アーノルド・ラスキンがいるという情報を掴んだからだ。
燦月製薬でナハツェーラーが進めていたとある計画をラスキンに潰され、ナハツェーラーの面子は潰された。
故に、彼自ら、雪辱の機会を晴らす為に、出向いたのだ。
斥候のコンドルヴァンプの偵察によると標的は2階の廊下で何者かと戦闘中らしい。
「丁度、いい機会だ。私の屈辱を此処で晴らしてやろう」
・
・
・
ナハツェーラーは校舎へと入り、2階への階段へと昇る。
その途中で……
「―――!」
画鋲を踏んだ。
体勢を崩し階段から転落するナハツェーラー。
そのまま、勢い余って、踊り場のガラスを突き破り、外へとナハツェーラーは飛び出すハメになった。
「ぐ、ぐおおおおお――」
窓ガラスを突き破った際にガラスの破片で傷を負ったナハツェーラー。
彼は血を失い、冷静さを失った。
吸血鬼の血を求める本能が彼を支配する。
そこに腹をすかせた野良犬が通りかかった。
「SYAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!」
ナハツェーラーは本能のままに犬にとびかかった。
腹をすかせた犬も野生の本能で反射的に、ナハツェーラーに向かって飛び掛る。
――――鮮血
喉笛に牙が突き立てられた。
ナハツェーラーの喉笛に……
そのまま、犬はナハツェーラーの喉笛を食いちぎり、咀嚼する。
「――――――」
大量に血を失ったナハツェーラーは最早動くことが出来なかった。
犬の仲間がやってくる。
彼らの今夜の食事は300年生きた吸血鬼になった――
>263 暗黒騎士ガウザー VS 紅の騎士ギーラッハ
暗黒騎士の剣が、己がヒルドルヴ・フォーク を受け止める。
「止めおったか!?」
己が渾身の一撃を正面から止められたは久々、みな捌くなりかわすなりするが常の事。
剣ごと両断せんと更に力を加えた時、一瞬手ごたえが失せると彼奴は己が正面より
消え失せた。
目標を失ったヒルドルヴ・フォーク が地面を抉り、己も前方に体勢を崩す。
『それだけ強いのに、姫様に従うしか知らないとはね―――』
彼奴の剣が己の肩を切り裂く、鎧を突き抜け、血飛沫が舞う。
重力に反した切り上げでこの切れ味、己が剣を防ぎ切った事から考えても相当な業物。
いや……、此奴の剣腕こそが、か?
「己は御姫の騎士、無論姫の言葉は重きもの」
「なれどただ従っておる訳では無い、姫の為と思わばあえてその言葉に従わぬ事とて有る」
地面よりヒルドルヴ・フォーク を引き抜く。
「それが仕えると言う事、そして姫に仕えるは己が喜び」
「己は自らの喜びの為に姫に仕えておるのだ」
「他人にどうこう言われる覚えは無いわ!」
正面より左へ、大きく横薙ぎの一閃を加える。
比良坂初音vs青山素子 素子側幕間「羅刹・鬼を喰う鬼」一
>254
どこにも行く場所の無くなった私は、一人山にこもっていた。
ただがむしゃらに剣を振るう。
血反吐を吐き、腕の筋肉が動かなくなるまで剣を振るい、
動けなくなればそのまま地べたで眠った。
食事を取った記憶すらないが、こうして生きているからには何かを食べていたのだろう。
制服はボロボロだが気にも止めない。獣と呼ばれようが、関係ない。
考える事はただ一つ。あの魔を滅ぼす。
いや、言葉を飾っても仕方がない。そんな相手などもういないのだから。
「……殺す」
ただその思考のみが私を支配し、動かしていた。
他の事を考えれば、二度と立ち上がれないだろう。
あの魔物がどこにいるか? それを探す方法はないのか?
理性を働かせればあの日の事を思い出す。それを忘れるために再び剣を振る。
その繰り返しの毎日を送り続けていた。
そして、空転する私の運命の歯車が再び回り始める日が来た。
比良坂初音vs青山素子 素子側幕間「羅刹・鬼を喰う鬼」二
>292
その日も私は無様に地面に倒れ休息を取っていた。
ふと、人の気配がする。
こんな山奥に誰が…と訝しむ事すら面倒くさい。
そのまま浅く低く呼吸を続ける。
「探しましたえ、モトコはん」
私は聞き覚えのある声で話しかけられて、即座に立ち上がった。
「あ、姉上? 何故ここに?」
「何故やあらしません。さっさと道場に帰りますえ。
そんな心根で修行しても、得るものなどあらしませんえ」
「待って下さい!今帰る訳にはいきません。
私は、みんなの仇を!」
思い出したくない光景が再び脳裏に浮かぶ。
その光景を消し去るためには―――
「わかっとります」 「え?」
姉上はゆっくりとかぶりを振った。
「神鳴流の者に調べをつけさせましたんえ。
ひなた荘を襲った魔の名は、比良坂初音。
今は八重垣学園の生徒として、何食わぬ顔でおります」
一瞬にして憤怒で目の前が真っ赤になる。
あの女が学校に通っているだと?
私の全てを砕いておいて、そんな真似を……!
八重垣学園の名前は聞いた事ぐらいはある。
剣道部にはかなりの腕前の者がいるという噂の所だ
我知らず、私は駆け出していた。
>289 空中大殲〜ヤツは空に居る
振動がきた瞬間から考えていた。
因子が集まれば、歪みを引き寄せることになる。
その極みがあのベネツィアでの祭りであったわけだが……
その影響を引き摺っている今の状態なら、私と横島だけでも窓の外のモノ程度、引き寄せるに十分すぎると理解してはいる。
しかし……
「スミレさん! 落ちるまでの時間で出来る事を――――――!」
「って横島、ちょっと黙っててね〜」
横島をいなすつもりでヒョイと手を振った。
ごきぃ!
響き渡った愉快な音に、私の意識は引き戻される。
戻ってきた意識ではじめに認識したのは、向いてはいけない方向に首を曲げた横島の姿だった。
「え〜っと……」
激しく揺れる飛行機の中、やけにぐったりとした横島を抱きしめて、私に出来たことといえば、茫然と中空を見上げることぐらいだった。
比良坂初音vs青山素子 素子側幕間「羅刹・鬼を喰う鬼」三
>293
「行かせまへんで、モトコはん」
ふわりとした動きで、姉上が私の前に立ちふさがる。
突き飛ばして走ろうとするが、あっさりとかわされて足を引っかけられる。
再び地面に転げる私を、冷ややかな目で見つめる姉上。
「今のあんたは自分を見失のうとる。気の流れもつかめとらん。
そんなんであの化け蜘蛛に勝とうなどムリどすなあ」
五月蠅い―――
「もともと神鳴流は魔を狩る―――」
黙れ―――
「モトコはん? 聞いて―――」 「黙れぇぇっ!」
どこからわき起こったのだろう? 私の中に凄まじい力の流れが感じ取れる。
あの女に勝てると思わせる程の力。なんだ、こんな簡単な事だったのか。
膨大な量の気の流れが心地よい。
「!! あきまへん、モトコはん!
そんな風に怒りのままに気をつこうたら、あんたの身がもちませんえ!」
「五月蠅いですよ、姉上」
軽く剣を振るったつもりだったが、姉上は反応もできず吹き飛んだ。
近くにあった大木に当り、その大木をなぎ倒した後にやっと止まる。
神鳴流最高峰の剣士をもあっさりと葬る程の力。
これなら勝てる。何日ぶりかわからないが、私の唇は笑みの形を作っていた。
「あ…あきまへん。気の流れに飲み込まれたら……」 「五月蠅いと言いましたよ。姉上」
むしろ笑顔のままもう一度剣を振るうと、姉上は静かになった。
「待っていろ、比良坂初音…」
その笑みは、ひなた荘で見たあの女の笑みに酷似していたが、私が気付くはずもなかった。
>292-293 >295
比良坂初音vs青山素子 初音側幕間
『うちの妹が、そないな事をしでかすはずがおまへん!!
うちは妹を信じます!!』
TVには人殺しだの死ねだのとラクガキだらけの荒れ果てた道場の中で泣き叫ぶ素子の姉の姿が映っていた。
これを目にするのはもう何十回目だろうか・・・・・・
あれから数週間
TVでは女子校生による凄惨なバラバラ殺人事件の話題で持ちきりだ
教育評論家だの弁護士だのが
毎日のように『受験教育の歪み』だの『ゆとり教育の必要性』だのと語るのは
真実を知るものとしては失笑せざるをえない。
しかし・・・未だに行方不明というのは気に入らない
初音は、足首の傷をそっと撫でる
傷こそ癒えたが、その跡はまだ薄く残っている。
やはり・・・・・あの時無理をしてでも殺しておくべきだったか?
どこかで野垂れ死んでいてくれれば幸いなのだが・・・・・
「さて、何処へ逃げたのかしらね」
心の中のわずかな不安をごまかすように初音はそっとつぶやいた。
『では、次のニュース・・・・モルモル王国の内戦は激化の一途をたどり・・・・・』
>280 遠野志貴VSアーノルド・ラスキン
異界の悪魔といえども、只殺しただけであれば、死体も残り人で言うところの
血液である霊液も流れる。
しかしながら呼び出した悪魔は、本来の急所である部分、即ち心臓や脳とは
全く別の部分を貫かれ、その痕跡すら残さずに元の紙切れへと戻った。
暫くはそれを眺めていたラスキンは、我が意を得たという面持ちで少年へと向き直る。
鉄の刃を易々と断ち切り、更に悪魔の存在を無に帰す。それこそは――
「成程、直死の魔眼にこんな場所でお目にかかれるとはな」
そう呟いたラスキンの手には、いつの間にか日本刀が握られている。
身を沈め、未だ鞘に納められたままの刀を腰溜めに構える。その口元も
相対する少年と同様に歪んでいる。
「手加減は出来んぞ」
地を蹴り、ラスキンが駆ける。その速度は先程よりも更に速い。
そしてその軌道は壁へと近づき、身体が傾き脚を壁に付けるも、そのままの
勢いで地面の如く床と平行に走る。横凪ぎの一閃が少年の身体を縦に捕らえ、
切り裂かんと迫る。
対して少年はそれを身を捻って交わしながら、迫るラスキンへとナイフを突き立てる。
廊下の奥より響く硝子の砕ける音(>290)と同時に、再度剣戟の音が辺りを支配する。
打ち合った直後、ラスキンが素早く刀を鞘に収め、空中で振り向き様に小剣を
三本連続して投げるが、しかしいずれも身を屈めた少年の身体を掠めもせずに
廊下に突き刺さる。
天地を逆にしてラスキンが天井に足を付ける。その姿はまるで重力が天井に
向いているかのように、地面に脚をつけている時と何ら変わりはない。
天井で再度構えを取りながらラスキンが言う。
「その歳で大したものだ、しかし刃の届かぬ相手にはどうする?」
>前スレ479 エンハウンスVS黒川丈【ゴースト】 前スレまとめは
http://salad.2ch.net/test/read.cgi/charaneta/1017335672/493 ほんの僅かの間に、状況は大きく動いた。
エンハウンスは壊れかけ――それでも復元呪詛と意志の力で動ける。
肉塊は、奴らと同じ顔をしている男に始末された。
炎上して崩れていく肉塊。
当面の敵は、期せずして消え去ったようだ。
そして、その第三者はエンハウンスに何やら話しかけてきている。
だが、その言葉をエンハウンスは聞いていない。
目は、敵である男の一人が逃げた方向をずっと見たままだ。
敵と同じ顔をした男の事は気になるが……。
その行動から、敵ではないと判断し――味方かもしれないが、無視して走り出した。
後のことは知らない。
(そろそろ、血が足りん……)
一刻も早く奴を寸刻みにして、血を啜らねばなるまい。
両腕に巻いた、呪紋がびっしりと書き込まれた包帯の下では、腐敗と侵食が着実に進行しつつある。
もう、そう長くは戦闘継続できないだろう。
あまり長引くと、左腕が腐り落ち、右腕の神経節が残らず破壊されてしまう。
言うことを聞かない体を無理矢理押さえつけながら、敵の消えた闇へと飛び込んでいった。
空中大殲 「ヤツは空にいる」
>288
飛行機に絡みついた衾は、早速機首へと首を伸ばす。
いつも通り、まずはパイロットを喰らうのだ。こうすると、飛行機は面白いように揺れ始める。
中でパニックに陥る人間を見るのが、何よりの楽しみだった。
身体の一部を鋭く尖らせて伸ばし、キャノピーを突き破る。
その後で、花弁のように変形したそれが、パイロットに食らいつく……はずだった。
だが、その一撃は空を切る。
コクピットに飛び込んできた人影が、いち早くパイロットを逃がしたのだ。
「なんだァ〜、てめえはよォ〜〜?」
とっておきの楽しみを邪魔されて、面白いハズがない。
そいつは腰から引き抜いた銃で衾を撃ってくる。
狙いは正確だが、そんなものでは衾は倒せない。
「ひはははァ〜〜、効くかよ、そんなモン!」
触腕を更に大きく開き、闖入者に食らいつこうとする!
>289 >294
その間にも、衾の身体は更に強く機体を締め付ける。
各所で、ギシギシという音が響いた。
このままの力で締め付けられ続ければ、そう長くは保つまい。
中で展開する光景を、衾は知る由もなかったが………
>291 暗黒騎士ガウザー VS 紅の騎士ギーラッハ
『それが仕えると言う事、そして姫に仕えるは己が喜び』
『己は自らの喜びの為に姫に仕えておるのだ』
『他人にどうこう言われる覚えは無いわ!』
怒りの叫びと風の唸りが同時に巻き起こり、横薙ぎの大剣が俺に迫る。
さすがに、俺の暗黒剣でも二度は受けきれまい。
「ふっ!」
俺はタイミングを合わせて地面を蹴りつける。
地面から飛び立った瞬間、真一文字に走った剣が俺の足元すれすれの所を通り過ぎる。
「全く、余程姫様に心酔しているようだな・・・」
俺は嘲笑を込めて、そう言ってみせた。
もっとも、その言葉には自嘲も含まれていたのかも知れない。
―――――― 何せ、俺は人間に惚れているんだからな。
心中で舌打ちして、俺は下らない思考を追い払った。
剣を振り切った奴の胴目掛けて、こちらも真一文字に斬りつける
さらにその力を利用して、ギーラッハの頭部目掛け蹴りを放っていく。
空中大殲〜ヤツは空に居る
>299 衾
パイロットがコクピットから離れたのと、 化け物がキャノピーを突き破ったのは、
ほぼ同時だった。
コクピットに激しく風が吹きつける。
化け物はコクピットを覗き込む。
悔しそうな顔をそたヤツはこう言い放った。
『なんだァ〜、てめはよォ〜』
と。
へぇ・・・・・・・言葉をしゃべるのか、こいつは・・・・・・
俺はそんな馬鹿なことを考えながら銃口をヤツに向けた。
「俺は御神苗優だ!覚えとけ、化け物野郎!」
強風の中とはいえ、正確にヤツに銃弾を叩き込む。
しかし――――
『ひははははァ〜〜、効くかよ、そんなモン!』
ヤツは笑いながらさらに大きく腕を広げながら迫ってくる。
ハンドガン程度じゃあどれほどの効果があるか、とは思ってたけどな、
ここまで効かないんじゃ話しにならねぇ!!
俺はコクピットの扉を叩きつけるように荒々しく閉めると、
そこに背をつける。
なんとかしなきゃ――――なんとか――――
焦りを抑えながら、俺は必死に打開策を考えていた。
比良坂初音vs青山素子 幕間外章「羅刹・鬼を喰う鬼」
>295>296
素子の目は、今まで見た事もないような色をしていた。
あんなに真っ直ぐな娘だったのに。
あんなに優しい娘だったのに。
何故あんな風に変わってしまったのだろうか?
想像する事すらできない。
声を掛けようとしたが、こみ上げてくる血の塊を吐き出しただけだった。
どちらにしても、今の私の声など耳に入らないかもしれないが。
ゆっくりと瞼が重くなる。
痛みは感じないがひどく寒い。素子の技の冴えは私を遙かに越えていた。
それは鋭すぎる剣。硬すぎてもろい鋼鉄。
あの娘は滅びへの道を突き進んでいく。
私が最後に見たものは、鬼気を身に纏う大切な妹の姿だった。
――人外ヤクザ共の仁義無き戦い―― 天堂天山&ヤハベ vs 岩鬼将造
>100 >226
真正面からぶつかり合う一瞬。
貫き手を放つ一瞬が、やけにはっきりと見えた。
こちらの鉤爪が、確実に相手の腹部のど真ん中を捉え、
抉り、貫く、一瞬の間に、生暖かい内臓や血の温度を感じる。
天堂は、岩鬼の肩越しに岩鬼の背中から生えている自分の右手を確認し、
満足そうに微笑した。
(直には殺さねぇ――その為にわざわざ心臓じゃ無く腹を狙ったんじゃからな)
これで良いだろう。向こうは徐々に体力を失っていく。
反撃する余力も無い。くたばるのは手前ェだ―――
がっ。
―――などと考ていた天堂の頭に、意識が戻る。
もはや大した事も出来ないであろうと思っていた岩鬼の腕が伸び、
手がこちらの喉に食い込んでいる。
(……こ、コイツ……?この後に及んで……な…なんちゅう…バカ…力じゃ……!)
怪力の前に、逃れる事も敵わない。
喉を締め上げる力はだんだんと増していき、やがて、ごきゅっという音が漏れた。
喉が、潰されたのだ。
痛みと、閉塞感がいっきに襲う。徐々に来る苦しさに悶えながら、
岩鬼とともにその場にどさりと倒れこむと、近くから、声が聞こえた。
『お前らが派手に潰し合ってくれたお蔭で、
オレの組織は事業拡大と事後処理で明日から忙しくなっちまうからな』
ヤハベの声だった。
(――――畜生。マジか?手前ェの……一人勝ちかよ?―――)
意識が、朦朧とし始めた。
比良坂初音vs青山素子 第2章 〜夜に舞う黒髪〜素子側導入
>302
私は八重坂学園 の校門前に来ていた。
間違いない、あの時と同じ結界が張ってある。
やっと見つけた。思わず笑みが浮かぶ。
夜を選んだのは偶然だ。
もっとも時間など気にはしないが。
人の目がなんだというのだ?
ただ、あの魔――比良坂初音とかいうらしい――を叩き斬る。
それだけが今の私の全てだ。
結界を前に止水を抜く。
軽く剣を振るうと、結界が切り裂かれた。
ついでに校門自体も真っ二つにして、入りやすくしてやった。
こんどは私が狩人だ、比良坂初音!
>297 遠野志貴VSアーノルド・ラスキン
俺の、目のことを知っている?
目の前で死んだ化物を見て、それに感づいたというのか。
一体、こいつは何者なんだろう。
などという疑問を差し挟む余地すらないような、あまりにもデタラメな老紳士の動き。
壁を走っての刀の一撃、それを身を捻ってかわすや否や繰り出したナイフを易々と受け止めてみせる。
それで弾け飛んだ老紳士が、今度は小剣を手に取って投げつけてくる。
とっさの判断で身を屈めてかわしつつバネを溜め、老紳士に跳びかかろうとして……その目論見はあえなく潰えた。
目の錯覚でも何でもなく、老紳士がさかしまに立っている。
「もう、何をされても驚かないけどな……」
だが、目の前の状況が厄介であることには変わりがない。
こちらの獲物はただのナイフ、地上から天井へ一撃を加えるにはあまりにもリーチが足りない。
加えて、老紳士の獲物は日本刀、アレなら天井から俺に斬りつけるのはたやすいだろう。
圧倒的不利のはずのこの状況に、しかし俺は焦っていなかった。
『その歳で大したものだ、しかし刃の届かぬ相手にはどうする?』
「……どうするって? 届かせるしかないだろう?」
溜めたバネそのままに俺は跳ねた……窓枠へ向けて。
迫る窓枠に足を掛けて身をたわめ、更なるバネを溜める。
窓枠から弾けた俺は、天井に立つあいつ目掛けて大上段からナイフを振るう。
その軌跡はまるで蒼白い流星が地を這い、そして舞い上がったかのように。
流星の終着点は老紳士の左肩に視える死の線だ。
>300 暗黒騎士ガウザー VS 紅の騎士ギーラッハ
奴の斬撃にヒルドルヴ・フォーク を戻すが完全には間に合わず、斜めに交差した刃が
ヒルドルヴ・フォーク の表面を滑り、火花を散らす。
上に逸れた奴の剣をかわす為に頭を低くした処に奴の蹴撃、
即座に身を引き、かわすが蹴りはコメカミを切り裂き、血が頬をしたたる。
「やりおる……」
ヒルドルヴ・フォーク の刃を戻す暇とて無い、
蹴りで接近した奴の胴体目掛け、ヒルドルヴ・フォーク の柄を叩き込む。
>298 エンハウンスVS黒川丈【ゴースト】
――状況は最悪だった。
エンハウンスだけでなく、仇敵であるゾアハンターまでも出現。
ついでにそろそろ栄養が足らなくなってきている。
(……逃げ切れるか?)
無理だな、と結論した。
エンハウンスと名乗った男だけならまだしも、ゾアハンターの追撃までは逃れられまい。
(そして、勝てもしないだろうな)
それもまた、結論は容易だった。
最大限に力を引き出してなお殺しきれなかった相手が、二人も揃っているのではどうしようもない。
(だが諦めるのは『俺』じゃあない)
聴覚を最大限にまで強化して索敵する。
……追撃してくるのが二人。
足音から判断するに、エンハウンスの方が先か。
(やるんなら、体力がまだある今、一撃で決めるしかない)
ゴーストは立ち止まり、右腕をゆっくりと変異させる。
爪を伸ばし、筋力を強化し、息を殺す。
更に体表面の色を灰色に変化させて、ビルの外壁に貼り付いた。
―――人の耳には絶対に聞こえない足音が、近づいてきた。
>301 空中大殲〜ヤツは空に居る
ヤケに鈍い音がして、俺の視界が途切れた。
ああ、これは知っている。美神さんに張り倒された時と、似たような感覚・・・が。
ぷつり。
その、感覚さえも途切れた。
混迷する意識の闇の中、俺の全身は不思議と柔らかな暖かさに包まれていた。
あれ、この感じは――――覚えがあるぞ?
この温もりは・・・
「スミレさん?」
ふと、起きあがる。どうやら一瞬、気を失っていたようだ。
微妙に痛む首をコキコキと鳴らすと、回された手を逆に握り返し――――・・・
窓の外の化け物に。そう、化け物に気付いてしまった。
たまたま目が行った先にあったのは、窓を這い回る丸太。
全身の霊感が化け物だと告げる、「妖怪の腕」らしかった。
その丸太に押さえつけられて、どうやら飛行機はガタガタ抜かしているらしい。
――なんだ、事故じゃなくて化け物か。
俺の喉から嘆息が漏れる。事故はどうしようもないが、妖怪なら俺が専門家!
それこそこの丸太の一本や二本、何とかなる! 恐らくッ!
何処か心配そうなスミレさんの手を離れると、俺は右手に「栄光の手」――霊気の塊を展開した。
敵は外か――――――ならっ!
迷わず俺は扉に手を掛けると、そのハンドルを回して開放する!
妙に勢いよく開け放たれる搭乗用のドア。悲鳴が聞こえた気もするが、気にしないっ!
蒼い世界への道を拓いた時――――何故か、俺は扉の外へ引っ張られていた。
あ。ようやく、ここで思い出した。 気圧差、ってヤツだ。
急速に力を失う足下はどうにも頼りなく、体は羽虫のように軽く誘われようとしていた。
・・・澄み渡る、大空へと。
比良坂初音vs青山素子 第2章 〜夜に舞う黒髪〜
>304
あの日から…しばらく経った日……御主人様が…巣を離れている夜…
…わたしは…なんとなく…胸騒ぎがして…不安な気持ちに襲われて…
…ぼおっと…玄関で…佇んでいました…
(…うぅ…不安です…御主人様…はやく…お帰りになって下さい…)
…そんな時……静寂を破る…大きな雑音が響き渡ります…
バシッ!!
私は思わず耳を…手で覆いました…
今の音は、確かに結界が破られた音… 頭の中に直接響く音です…
しかも…こんなに大きな音………力任せに…破ったに違いありません…
音と一緒に…背筋が…ぞくぞくする…冷たい…嫌な感覚も…
…身体に…錘をつけられたような……重苦しいような感覚も…
…頭の中に…一緒に入って来ます……
「…だ…れ…?…………え!?…」
わたしは…恐る恐る…玄関から校門を覗き見ました…
…そこには……真っ二つになった…校門と…
…遠目からにもはっきりと解る…憎悪の魂形……あの女の人です…
そう…御主人様と狩りに行って……御主人様が仕留め損ねた…あの人…
…巣に帰ってきてからの…御主人様の…お言葉…時折見せる…憂いを帯びたお顔を思いだし…
…わたしの不安を…膨らませていきます…
(あれから…あの人は…復讐のみを心の支えに…ここまでやって来たのだろう…
…それならば……………目的は…御主人様の…………………命……)
…私は咄嗟に駆け出しました……子蜘蛛を…御主人様の元に向かわせ……
……巣を……守るために……
比良坂初音vs青山素子 第2章 〜夜に舞う黒髪〜
>309
結界を切り裂いた途端、魔の気配が濃くなっていく。
この中心に奴がいるのか?
しかし、気配があの時と違うような気もするが…
まあいい、入ればわかる事だ。
玄関の方へ歩いて行くと、一人の少女の姿が見えた。
比良坂初音ではない。もっと小柄な影だった。
緑色の髪、奇妙な耳カバー…メイドロボ…とか言ったか?
「比良坂初音はどこだ?」
不躾な質問ではあるが、このメイドロボは間違いなく比良坂初音を知っている筈だ。
機械の身体から、わずかな魔の気を感じる。
間違いない、あの女と同質のものだ。
「言いたくないのならば、無理矢理言わせるだけだ」
私はとっくの昔に鞘を無くした止水を、そのメイドロボに突きつけて見せた。
>307 エンハウンスVS黒川丈【ゴースト】
ビルの谷間にわだかまる闇を、エンハウンスはかき分けるように走る。
逃げた男の足取りは、はっきりと知覚できる。
夜の世界において、吸血種の感覚は他のいかなる生物より鋭い。
それを辿って夜の陥穽を、敵を求めて走る。
もう、あまり余裕はない。
腕からは絶え間ない激痛が走り、血は決定的に足りない。
戦闘継続能力はギリギリのところまで来ている。
だが、恐らく奴自身も手負いだろう。
向こうも決着は急ぐはず。
なら、その時こそ仕留めてみせる。
一撃でだ、次はない。
ふと、とあるビルの谷間で立ち止まった。
今まで追ってきた男の気配が此処で途絶えている。
つまりは――。
「近いか」
呟き、辺りの闇一帯に知覚を張り巡らす。
何処から来ても対処できるように、全身の力を抜く。
体が固まっていては、柔軟な動きに支障が出るからだ。
息を殺し、まるで夜と同化したかのようにエンハウンスは佇む。
「――――」
狩りをするに際して、息を殺して身を潜める肉食獣が、こんな雰囲気を発するのかもしれない。
そんな押し殺した殺気というモノを全身から漂わせて、ただ動きをじっと待つ。
雌雄を決する一瞬を。
>308 空中大殲〜ヤツは空に居る
目を醒ました横島は、窓の外の怪物に気付くと、扉に向かって駆け寄った。
どうやら外に出て撃退する気らしい……ってなにか拙かったような?
だが私が気がかりを思い出すより早く、
コックピットから2人のパイロットが転がり出してくる。
彼らのうちの1人が脇を通りすぎる横島に怪訝の目を向ける。
その彼は横島が扉に手をかけたのを見て、悲鳴を上げながら止めに走った。
そこで思い出した。
「横島、ストップ!」
だがその制止は間に合わず、
横島は扉を開け放った。
同時に、気圧差によって、機内の全ての物が機外に吸い出され始める。
当然横島もその対象に含まれる。
私は慌ててイメージを具現化する。
空想具現化――空想を現実に転換する超抜能力によって、
気流の断層を生成し、風の流れをせき止める。
だが一瞬遅い。
彼が機外に吸い出される。
彼――横島を止めようとしたパイロットが。
一瞬、彼を助けるためのイメージを練りかけて、止める。
そちらまで助けようとすれば、生成した断層を維持できず、横島まで殺してしまう。
だから私は、
「……ゴメン、ね……」
自分が見殺した彼の末路をただ見送った。
比良坂初音vs青山素子 第2章 〜夜に舞う黒髪〜
>310
女の人―侵入者は、迷いもせずこちらに向かってきます
激しい…憎悪を剥き出しにしたままで…そして口を開くなり…
『比良坂初音はどこだ?』
厳しい口調で…尋問…いえ…脅迫するように…問い掛けます…
女の人は…やはり…御主人様を…狙っていました…
(…それなら…なおさら…巣に…いれるわけには……)
わたしが黙っていると…更に言葉に怒気を含んで…
『言いたくないのならば、無理矢理言わせるまでだ』
抜き身の刀を、わたしの目の前に突きつけます。
(…ひッ!……………………熱ッ!…)
わたしの身体に潜む…魔の気配を感じているのでしょう…
…眼には明らかに殺意が宿っています…
…突きつけられた…刀身からは…チリチリと…焼けつくような…感覚…
…これが…「聖なるもの」…今のわたしの身体には…害を及ぼすもの…
…もちろん…御主人様にも………
(…この人を…御主人様に会わせては…いけない……)
わたしは…とっさに後ろに跳ぶと、右手を振り上げました…
…斬糸を繰り出し…侵入者の首筋めがけ…振り下ろします…
天堂天山&ヤハベvs岩鬼将造 「組長最期の日」
>226 >303
流血と火炎によって地獄のようなありさまの倉庫から、オレは立ち去った。
ここは倉庫内とうって変わって、涼しい潮風が吹きつけてくる。
そのまま、部下の待つ車に戻った。
「きちんと仕掛けたか?」
「へいボス、ご言いつけ通りにしやしたぜ。」
凶悪な面相の修道士姿の男が答える。
「よーし、そんじゃパーティーの最後を飾る花火だ!」
オレはポケットから小さな機械を取り出すと、その中心に配置された赤いボタンを押した。
閃光が夜の港を照らし出し、続いて轟音が鳴り響く。
倉庫の四隅に仕掛けさせておいた爆薬を、起爆させたのだ。
柱と壁を失った倉庫の天井が崩れ落ちる。
たとえあの二人がまだ生きていたとしても、今の爆発で完全に生還の望みは吹き飛んだ。
流血と硝煙のパーティー会場は崩壊し、前時代の遺物、時代遅れのヤクザたちの墓標となった。
素晴らしい闘争心を持った男たちだった。
このオレが惚れ込んでしまうほどに。
だが、考えが古すぎた。
現代を生きるのに必要なのは計算高さだ。
「さーて、帰るぞ。キリコちゃんに報告しなきゃなー。」
空中大殲 「ヤツは空にいる」
>301
後で起こった突発事態(>308 >312)に、衾の意識は支配された。
コックピットへの闖入者――「俺は御神苗優だ!」とか叫んでいたが――のコトなど、既に頭から消えている。
御神苗に食らいつこうとした触腕は、侵入した時と同様の素早さで引っ込んでいった。
>308 >312
機体の揺れ方が変わった。
衾がふと後ろを見ると、開いた扉から、一人の人間が放り出されてくる。
どうやら、さっき機首にいたパイロットのようだ。
もちろん、衾がこの絶好のエサを見逃すハズがない。
触腕を伸ばし、食らいつく。悲鳴を上げる間もなく、男は衾の腹中へ消えた。
だが、続いて吸い出されそうになったバンダナの少年は、見えない手に掴まれたかのように踏みとどまった。
その手に光る霊気の塊、ナリは貧相だが、あれはただ者ではない。
ああいうヤツは、食事の邪魔になる。早めに始末するに越したコトはない。
(それに、あいつは喰ってもうまくなさそうだしなァ〜〜)
そう決めると、衾は少年に向かって数本の触手を伸ばした。
人間は空を飛べない。引っ掴んで外に放り出せば、終わりだ。
>311 エンハウンスVS黒川丈【ゴースト】
(バレて、やがるな……)
立ち止まったエンハウンス。
一息で攻撃出来る距離なのだが、待ち伏せが悟られている以上奇襲にはならない。
だがもう、ゴーストには仕切り直す体力も時間も無い。
(覚悟を決めろ。奴は強い。無傷では勝てない。だが……俺は何時だって生き延びてきた)
そう。愛したはずの杏子を食らい、殺し、見捨てることによって、だ。
(……それでも、アイツは俺に死んで欲しくねぇって言ったんだ)
アイツの復讐を叶えるまでは死ねない。
その思いが、力尽きかけたゴーストの体を奮い立たせる。
かくして――――最後の刃が交錯する。
>303>314 天堂天山&ヤハベvs岩鬼将造(M) 『平成残血伝』
燃え盛る天井が、壁が、折り重なった二人の極道へと堕ちて来る。
背中に鉄骨が当たった。もう将造は呻きを殺し切れていない。
全身に血を被り、あまつさえ天堂の巨腕に腹部をぶち抜かれた、凄惨とも酸鼻ともつかぬその姿よ。
それでもまだ、血涙を滴らせる両眼からは闘争の炎は消えてはいない。
将造の口元が酸欠の金魚じみて震える。発する声はもう聞き取れるかどうかという程弱い。
音量だけは。
込められた気迫は、今なお鬼神も三舎を避ける凄まじさであった。
「ヒヒヒ……まだよ、まだこれからよう……」
捻り潰した天堂の喉笛を更に締める。瀕死の人間とも思えぬ怪力が、生身の腕に漲った。
力を込めた所為で、ぴゅる、と全身の傷から鮮血が噴き出す。
「わしが死ぬまで……ケンカは終わらんのじゃあ……」
天堂の喉元を締め上げたまま、唐突に将造の動きは固まる。
双眸には、尚も煮え繰り返る様な色彩を躍らせて――。
『極道兵器』最期の喧嘩は、今ここに終りを告げた。
空中大殲〜ヤツは空に居る
>315 衾
機体がミシミシと嫌な音を立てる中、
俺は必死で打開策を考えていた。
機体の揺れが少し変わった。
顔を上げた俺の目に映ったのは――――
ドアを開け放った横島と、
それを止めようとして外に放り出されたパイロットの姿だった。
外に放り出された彼を見逃そうはずも無い。
待ち構えていたヤツは、彼を一飲みに喰らった。
そして、尚も手を横島に向けて伸ばそうとしている。
しかし、これはチャンスだ――――おそらく、唯一の。
「スミレ、横島!出来るだけ時間を稼いでくれ!」
「俺が武器を持ってくる、その間でいい―――頼む!」
俺はそう叫ぶと、カーゴスペースへの扉を開け放つと、
冷気を放つ其処へ身を躍らせた。
比良坂初音vs青山素子 第2章 〜夜に舞う黒髪〜
>313
メイドロボは後ろに飛び跳ね、右手を繰り出した。
遅い。全くもって遅すぎる。
一気に間合いを詰めて叩き斬ってやろうかとも思うが、
体力を消耗するのさえ勿体ない。
右から迫り来る斬糸(これも洗練されていない。月明かりでもはっきり見て取れた)を
あえて切断せずに、止水で絡め取る。
そして思い切りこちらに引っ張ってやった。
そいつの体重は見た目通りだったらしく、軽々と宙に舞う。
近づいてきたところに地面に叩き付けるようにして左掌底を繰り出す。
私の手に伝わってきた感触は、考えていたよりは柔らかいものだった。
>318 空中大殲〜ヤツは空に居る
俺が開け放った扉から、逃げてきたはずのパイロットが吸い出され・・・喰われた。
吐き出される寸前の俺には対処のしようもない、一瞬の出来事。
スミレさんが空想具現化で気圧差を誤魔化す、ほんの少し前の事。
――――ち、チクショウッ!
俺自身の迂闊さに、不甲斐なさに堪らず歯を食いしばる。
ギリギリと奥歯が鳴って、微かに痛んだ。
どうして俺はこう、バカで――――――
――――と。
後悔に浸る暇さえ、そいつは与えてくれなかった。迫り来る数本の触手が目の前に踊る。
右手に霊力を収束させ、刃を生む――「栄光の手(ハンズ・オブ・グローリー)」と名付けた、俺の力。
振るい、払い、薙ぐ。
霊力の塊はわけもなく、その化け物の末端を切り裂いた。
この程度なら、俺でも捌ききれる!
思いの外チョロい相手にニタリとした笑みが戻ってきた。
おっしゃ、なんて事はない。てきとーに防いでおけば、きっと御神苗のヤツが・・・
「スミレ、横島! 出来るだけ時間を稼いでくれ!
はい? 出来るだけ時間を稼げ!?
聞き返すわけにも振り返るわけにもいかず、俺はただただ触手を捌き続ける。
あ、あの〜。
ここからどうやって、時間を稼げと?
・・・ええい! 今さら何を言ってもはじまらんか!
俺は再び右手に霊力を集中――刃ではなくもっと別の――霊波刀が音もなく消えると、霊波は手の形に安定した。
「伸びろっ! ハンズ・オブ・グローリー!」
霊体の腕は触手を薙ぎ払いながら、飛行機の外へ伸びていった。
>319
「!?…ひっ…!……」
侵入者は…わたしの漸糸を避けようともせず…いとも簡単に…刀で絡めとりました
そして…わたしを地面に叩きつけると…掌を…わたしのお腹に…押し付けてきたのです…
「がふっ…………うあぁぁぁぁっ…!…」
打撃と…その後の…燃えるような痛みに…わたしは悲鳴を上げました…
…組み伏せられながら…闇雲に繰り出す拳は…悉く避けられ…受けられ…
…触れられている掌からは…焼けつくような痛みが…身体を襲います…
…全然…敵わない…私では…何も…できない……
…私は…侵入者との…力の差を…嫌というほど感じながら…
それでも…まだ…諦めきれずに…
…右腕から放っている斬糸を…引き寄せ…侵入者―女の顔をちかづけます…
(…唇から…精気を…奪って………その後は…贄に…
このようなちからを持つものなら…充分…喜んでいただけるはず…)
…そう…考えながら…
比良坂初音vs青山素子 第2章 〜夜に舞う黒髪〜
>321
私の気がメイドロボの表皮を焦がす。
完全に魔属になっているようだ。
不意に私の身体が引きずられる。
何故か、私の顔とそいつの顔とが接近する。
なる先輩の死に様が頭をかすめた。
思い出させるな、この雑魚め―――!
止水にさらに気を込める。
普通ならば、絡め取った糸が焼き切れるだけだろう。電気を流しすぎた導線と同じ事だ。
だが、この距離ならば、本体であるこいつにも気が流れ込む筈だ。
自分の糸で腕を切断されるがいい!
比良坂初音vs青山素子 第2章 〜夜に舞う黒髪〜
>322
突然…繰り出している糸が…青白い火花を上げます…
思わず目をつぶりますが…火花は消えません…
…そう…これも…頭の中に…直接訴える…感覚なのです…
お腹に感じる…焼けつく痛みと…同じ…
火花は…一瞬のうちに…糸を焼ききり…私の右腕をも…焦がしました…
「あ……あぁぁぁ…っ……!」
よほど強いちからだったのか…火花は…一瞬で…右腕全体に廻ります…
…動かない右腕……身体を動かし…逃れようにも…
…上から押さえつけられ…逃れる事は敵いません…
…残った左腕を…眼前の敵に振り回しながら…
…私は…心の中で…御主人様に…助けを…請うていました…
…自分の…無力さを…涙しながら…
――人外ヤクザ共の仁義無き戦い―― 天堂天山&ヤハベ vs 岩鬼将造
>314 >317
コツコツと靴の響く音がやがて遠くなり、
しばらくして後に、爆音が全てを揺るがした。
先程までの火に加え、爆音の衝撃が、飛び散るコンテナの破片が、崩れ落ちる天井が、
そこにいる全ての者に降り注ぐ。
(まだ……まだじゃ……なんとか……血がありゃあ……血さえありゃあ……!)
朦朧とした意識のまま、天堂は必死に這おうとする。ぼやけた視界で探ってみれば、
幸い近くにはつい先程ばかり銃撃に倒れたといった感じの部下の姿がある。
そこまで行ければ――少しでも血があれば――なんとか、生命を保てる。
この状況から、生還ができる―――そう思ったのも、束の間。
岩鬼はさらに手に力を込めて来た。
(くあ…………!)
もはや声を出す事さえ敵わない。
頭の中で叫び声を上げ、天堂は動かなくなる。動けなくなる。
ぼんやりしていた視界に黒味が増し、その濃さを増し、完全に黒が全てを染め―――
天堂の意識は、完全に途切れた。
――――あとは、炎が全てを舐め尽くして行く。
さながら、倉庫は巨大な火葬場となった。
しかし、それからしばらくして駆けつけた警察達が調査を開始した所、
死体があった痕跡などは一切が消え失せ、そこにはただ倉庫の火事の痕だけが残っていたと言う。
……そして、その様子を見終え、建ち並ぶ倉庫の影から姿を消し去る怪しい男が一人。
彼が事後処理をしたかどうかは定かでは無い。が――――
―――裏社会に生きる者達にとって、夜はまだ、始まったばかりだ。
【GAME OVER】
比良坂初音vs青山素子 第2章 〜夜に舞う黒髪〜
>323
メイドロボの右腕が焼け焦げるのと対照的に、私の右腕は完全に自由となった。
この体勢では全力は振るえないが、問題ない。
無闇に振り回される左腕を避けつつ、剣を振るう。
メイドロボのボディは、ちょうど腰のあたりで分断された。
また、なにか嫌な光景が頭をかすめるが、今度は一瞬で振り払えた。
過去を振り返っている暇などない。
痙攣すらしなくなった、機械と魔の入り交じった物体は見向きもせずに
私は校舎の方へゆっくりと歩いて行く。
次はお前の番だ、比良坂初音。
>306 暗黒騎士ガウザー VS 紅の騎士ギーラッハ
大剣の柄が、俺の腹部に撃ち込まれる。
こちらも剣の柄をぶつけ、その打撃を止めにかかろうとする。
しかし、その勢いは殺しきれない。
鈍い音。
その音とともに、奴の剣の柄が俺のレバーに食い込んだ。
腹部の痛みから、痺れるような感覚が全身に走り、剣を取り落としかける。
仮面の奥で歯を食いしばりつつ、俺は剣を構え直した。
柄を振り切ったギーラッハ目掛けて、右肩から袈裟切りに斬りかかる。
振り降ろした所で手首を切り返し、脇腹を狙っての斬撃。
二連撃の後、俺は両手で剣を強く握りしめる。
そして、先2つの斬撃が交錯した部分目掛け、渾身の突きを繰り出す!
>284
『怒りと悲しみと涙と』
vs “殺人卿”ナルバレック
「っがぁ?!」
いきなりナルバレックが自分の目を抉ったかと思うと、次の瞬間クロノは地面に這いつくばっていた。
な―――に?!
「ぐ・・・・う」
うめくクロノの頭を、奴ががしと踏みつける。
「クロノ!!」
アズマリアの悲鳴。
奴は、槍の切っ先をクロノへと向ける。
させない――――ッ!!
「だぁぁぁぁぁっ!!」
私は、傷が痛むのもかまわずに駆け出していた。
そして・・・・ナルバレックに向かってタックルを仕掛ける!!
意識していなかったのか、一瞬やつの体勢が崩れる。
私は、勢いを止めることができずたたらを踏んでその場に転がった。
「ロゼット!!」
「クロノ!!このまんまじゃ・・・・・!!
―――――封印を―――――解くわ!!
こいつを『止める』わよ!!」
私は、地面に這い蹲りながら懐中時計をずたぼろの腕を何とか動かしながら目の前に持ってくる。
上手くいかないのがもどかしい。
そして・・・・口を使って・・・・懐中時計を操作する!
≪おぉぉぉぉぉぉ!!≫
私の中から何かが流れ出す。
それに呼応し、クロノの体が変容していく!!
>328
クロノが翼を持った異形に変化していく。
「ほう、それがお前の正体か? ふむ、そこらに転がっている悪魔どもよりはマシのようだな」
右手を口に当てつつ、私はそう呟く。
まあ、これくらいの代物は出してもらわないと興冷めというものだ。
再び、数メートルはある距離を瞬時に詰める。
空に逃げられると、始末に困る。
右手の三節根の槍を一気に右から左へ振りぬく。
今の私の腕力に加えて遠心力による加速がついたソレは悪魔の肉体といえど容易に砕く凶器。
喰らえば、ただではすまないだろう。
しかし、これはただの布石。
私のもう一方の左手は金のナイフによる突きをクロノの首に向かって閃光ともいえる突きを繰り出していた。
>329
『怒りと悲しみと涙と』
vs “殺人卿”ナルバレック
『ほう、それがお前の正体か? ふむ、そこらに転がっている悪魔どもよりはマシのようだな』
≪まぁね。自慢にはしたくないけど、100人殺しと呼ばれたこともある。
そこら辺の爵位も名前もない様な奴等と一緒にされちゃ困る。≫
ニヤ、と一瞬奴が笑みを浮かべる。
次の瞬間、奴は一瞬のうちにクロノとの間をつめる!!
速い!!
奴は右手の三節根の槍を一気に右から左へ振りぬく!
クロノにかわす術は・・・・ない!!
だが!
《がしぃ!》
≪いったろ? その辺の連中と一緒にされちゃ困るってさ。≫
クロノは平然と槍の一撃を左手で受け止める。
クロノが、自由な右手を奴へと振り下ろそうとする―――が。
「クロノ!!」
≪ちぃッ!≫
奴の左手が金のナイフによる突きをクロノの首に向かって閃光ともいえる突きを繰り出す。
慌ててそれをかわすクロノ。
クロノはいったん奴との距離をおき、翼をはためかせ中に舞う。
≪やってくれる!!≫
そう言うと、クロノは翼をたたみ、奴へと急降下をはじめた!!
>330
元々、人と化け物には絶望的なまでの差がある。
常識の人は非常識の化け物には勝つことはできないのだ。
だからこそ、人はその差を工夫で技術で補ってきた。
私は左手のナイフの柄のスイッチを押す。
空を斬る音がして、ナイフの刃がクロノの心臓に向かって飛んで行った。
急降下で勢いのついているクロノにはこれを完全に回避する術はないだろう。
だがこれで仕留められるととも思っていない。
三節根状の槍を元に戻して、そのままナイフを追うように跳躍する。
奴の回避行動まで計算にいれて、突きを繰り出す。
狙いは胴体。
どこをどう動いても、この槍の餌食だ。
>331
『怒りと悲しみと涙と』
vs “殺人卿”ナルバレック
≪なぁぐッ?!≫
クロノが、空中で体勢をくずす!
何が?!
見ると、ナイフの刃だけが、クロノの胸を貫いている!
運良く、心臓からはずれている様だが・・・・・いや、ずらしたのか。
そこを、奴が狙う!
奴は、三節昆を槍状に戻す。
止めを刺す気―――――!?
くそ!!銃が!使えれば・・・・・!!
私は、ぼろぼろの手を見る。骨の折れたこの手では・・・・・・!!
「ロゼット!」
「アズマリア?!」
アズマリアが、私の肩を掴む。
「私に銃を貸して!!」
「何いって!!」
「時間が・・・・ないんです!!」
「――――!!」
私は、アズマリアに銃を渡す。
「いい!?あんたはトリガーを引くだけでいい・・・・。標準は私が!」
「はい!」
私は、アズマリアの手を包むように、手を添える。
震える、小さな手。
私は、飛び上がる奴の槍に標準をあわせ・・・・・!
「アズマリア!」
「!!」
衝撃が、私の手に激痛を走らせた。
放たれた銃弾が奴の槍を弾き飛ばす。
≪おおおおおおお!!≫
体勢の崩れたナルバレックに、クロノがこぶしを叩き込む!!
渾身の一撃を受け、ナルバレックが地面に叩きつけられた――――!
>332
予想外のことは起きるもの。
完全に死角の外からの攻撃だった。
槍を弾かれ、その隙に強烈な一撃を喰らい、私は地面に叩きつけられた。
「ごふっ!」
吐血する。
さっきの一撃で折れた肋骨が内臓にでも突き刺さったようだ。
私としたことが、その少女2人を過小評価しすぎたか。
――ちっ、なんて失態
そこに立ち上がろうとする私に1人の人影が立ちはだかった。
>331
『怒りと悲しみと涙と』
vs “殺人卿”ナルバレック
私は、アズマリアとクロノ――少年の姿に戻った――に支えられながら、奴の目の前に立つ。
「これだけダメージ受ければ、しばらくは動けないわね?」
私は、奴を見下ろす。
手には、添え木とともに固定されたナイフの刃。
クロノの胸に突き刺さっていたもの。だ。
「あんたは・・・沢山の人を殺した。
それを許すつもりはないわ・・・・。だから!!」
私は、ナイフを振り上げ、奴へと振り下ろす!
《ぞす!!》
手に伝わる、確かな感覚。
ナイフは―――――奴の顔をかすめ、地面に突き立てられていた。
「だから―――殺さない。
もうすぐ、マグダラのみんなが来るわ。あんたは、みんなに引き渡す。」
『甘いな・・・・。今、ここで殺さなければ、また私は殺すぞ?』
奴は、ニタリ、と笑う。
「かまわないわよ。
『甘い』って言われてもね。―――それが―――私だから――――――。」
そう言って、私は奴に背を向けた。
>257 vs魔族
――無様な。失態の極みだ。
確かにとどめとなる一撃で相手を仕留められない……
それで、暗殺用合成人間とはよくいったものだ。
――――ずん
身を襲ったのは、その愚鈍さのツケであるかのような衝撃だった。
まるでその空間そのものに拒絶されたように、不可視の壁が頬を叩いて突き飛ばす。
揺れる脳幹の重みを頭蓋の中で味わいながら、冷たい床を転がる寸前――
――なんとも禍々しい歌を聴く。
(……まさか、『謡うもの』!? 恒常魔力圏かッ)
愕然と思いながら、その魔族を見る。
明らかに先ほどまでと様相を異なくする容貌。肥大した肉体。
(中級に“成長”したか……ッ)
隠さず舌打ちをひとつ。手間を取りすぎた。
ミセス・ロビンソンやフォルテッシモの能力ならともかく、接近することが一義にある
ぼくの能力では、恒常魔力圏に包まれた魔族を倒す手段がない……
呆けているうちに――
――――ッ!
暗殺者の勘だけで横に身を逸らす。もといた場所を千々に裂く衝撃の余波を利用してさらに飛行。
ぼろぼろに罅割れた壁に叩きつけられそうになるのを、うまく膝の発条で勢いを殺す。
――そのまま跳躍。続く振動。
壁に叩きつけられたのは、さっき刎ねた奴の首だ。自分で投げてきたらしい。
柔らかい肉の塊とて、充分な速度を与えられれば砲弾と同じ。
背中から着地する寸前、行きがけに拾い上げたモールドの破片を投げつけてみるが、
銃弾にも等しい速度の一撃はことごとく奴の手前で霞のごとく消えてしまう。
(やはりだめか……無駄だ。恒常魔力圏の中では、奴は王だ。何者も刃向かえない……)
何パターンもの戦術が脳裏に浮かび、自分の敗北を結果づけて消える。
一秒にも満たぬ時間で試算を続けるたび、次第に濃くなる絶望の黒い影。
(くそっ、くそっ……やはり駄目なのか、くそっ)
何度やっても同じこと。いかなる攻め方をしても、どんな犠牲を払っても、リキッドがあの肉体に届くことはない。
しかしそれでも、自分にはリキッドしかないのだ……
――そう、リキッドしかない。
確信して、なかば自嘲気味に笑む。
とにかく、今は逃げること――それしかない。
合成人間の脚力を生かした、室内360度全方位を使った逃亡が始まった。
>334
甘い、本当に甘い。
誰にも為し得なかった私の殺害をロゼットは見逃した。
だから、死ぬのは目の前の3人。
殺すチャンスを彼らはスルーした。
そして、そのチャンスは私に廻ってきただけ。
無論、私に殺人という行為に関してはスルーはありえない。
右手に黒鍵を作り出し、3人に狙いをつける。
丁度、その時、背筋に殺気。
咄嗟に横に飛ぶ。
――銃声
先ほどまで、私のいたところに無数の銃弾が撃ち込まれた。
銃声のした方向に振り向く。
そこには、大勢のエクソシストたちが私を睨みつけていた。
なるほど、時間をかけすぎたか。
増援が来るとはな。
この状態でも奴等をくびり殺すことは十二分に可能だ。
だが、あとのこともある。
――増援はこれだけではあるまい。
「仕方あるまいな。今回はこれで幕だ。だが、次は無い。体勢を整えた後、次は確実にお前達を殲滅する。
せいぜい、首を洗っておくことだ」
エクソシストたちにそう告げた後ロゼットたちの方にも言い放つ。
「お前達、3人は本当に甘い。この世界に生きる以上、必ず、その甘さが命取りになる。せいぜい、肝に命じておくことだ」
言い終わると同時に、両手に作り出した黒鍵を四方八方に投げつける。
周囲に無数の爆発が巻き起こる。
爆発の混乱に乗じて、私は一気に駆け出した。
>336
『怒りと悲しみと涙と』〜エピローグ〜
vs “殺人卿”ナルバレック
『お前達、3人は本当に甘い。この世界に生きる以上、必ず、その甘さが命取りになる。せいぜい、肝に命じておくことだ』
「どうしたんですか?ぼ〜っとして。」
「ん?いやちょっとね・・・・・・。」
私は、あの女の言葉を思い返していた。
確かに、私は甘いんだと思う。
けど・・・・・・。
「それでも・・・・ね。」
「???」
「いや、なんでもない、なんでもない!
そうだ、クロノは?!」
「えっと・・・準備しにいきましたよ?
確か、倉庫に・・・・・・。」
「そっか、んじゃ手伝いにいこ?」
「あ、はい!」
たとえ、それが甘さだとしても。
私は、私の道を信じたい―――――。
ロゼット一行vsナルバレックのレス番まとめだ。
なにはともあれ新生ナルバレックの第1戦だ。
つきあってくれたロゼットには感謝しておくか。
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なんて、無様。
訂正だ。
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>327 暗黒騎士ガウザー VS 紅の騎士ギーラッハ
袈裟懸けの一撃をヒルドルヴ・フォーク で受ける。
「む?」
己が剣の上を明らかに不自然に滑る奴の刃、
そして振り切られた奴の剣が翻り己が胴を薙ぎにかかる。
「賢しいわ!」
己はヒルドルヴ・フォーク の根元でガッシリと受け止めると弾き返す、が
直後に見えたのは彼奴の完璧なまでの突きの姿勢。
己が返す力すら利用しおった。
閃光が走る!
体と体がぶつかり、己が背中からは鎧を突き通して長々と刃が凶悪な血の波紋を見せた。
「見事な……!」
心臓を狙っての強烈な突きを僅かに身をかわしてずらす他には無く、肺を突き通した刀は
鍔元まで胸に埋まっていた。
気管を逆流した血液は口腔を満たし、
「だがしかし…… ここで終る訳にはいかぬ!」
血を吐きながら発した言葉。
抜けぬ剣で固定された奴に向ってヒルドルヴ・フォーク で上段より斬撃を加える!
>270 暗黒騎士ガウザー VS 紅の騎士ギーラッハ
俺の剣が鎧ごと奴の肺を突き破り、肉を貫く感触が腕に伝わる。
もらった!
そう確信する寸前。
『だがしかし…… ここで終る訳にはいかぬ!』
血の混じった言葉と共に、ギーラッハは俺の頭部目掛けて巨大な鉄塊を振り下ろす。
あれだけの深手を負いながら、攻撃に転じるとは……。
吸血鬼の不死性もあるだろうが、それだけでできることでもあるまい。
―――――なぜか、妙な苛立ちを感じる。
剣は奴の肉体に食い込んだまま、抜ける気配もない。
迷っている暇はない。
即座に剣を握る手を離すと、右拳で剣の横側を殴り付けた。
傷の深さと剣の巨大さの両方が影響してか、奴の剣はあっさりと制御を失う。
それでも、紅の騎士の目から戦いの意志は消えない。
「はっ!よっぽど姫様のことが好きなんだな!」
そう叫ぶと、ギーラッハの懐に潜りこみつつ、奴を貫いている剣の柄に肘を撃ち込む。
さらに、顎を狙って、拳を突き上げていく。
>341 は >340宛てだ・・・。
俺が間違えただと!?
>341 暗黒騎士ガウザー VS 紅の騎士ギーラッハ
刺さった剣に更に肘の一撃を喰らい、よろめいた処に更なる拳が迫る。
ヒルドルヴ・フォーク を手放し、両手でその拳を受けると、蹴りを入れて奴を突き放す。
「よもや…… 己が剣を手放す事になろうとは…… 」
胸を貫いた刀の柄に手を掛ける、
「ぐぅ……ぬぅぅぅ……。」
ズルズルと抜けていく刀身と鎧には血が滴り、紅の鎧を更に鮮やかな赤へと染め上げていく。
「ガァァァァッ!!」
刀が抜けたと思うや一振りして血潮を払うと、
「御姫を守れぬ様な己なら、滅びるが良いのだ! なれどそれを成すは貴様では無い!!」
一気に踏み込んで片手三段突きを奴に叩き込む。
>343 暗黒騎士ガウザー VS 紅の騎士ギーラッハ
ギーラッハは苦痛に顔を歪めつつ、自らの腹部を抉っている刃に手をかける。
血飛沫を飛び散らせ、苦鳴を上げながら、俺の剣を引き抜いてみせた。
『御姫を守れぬ様な己なら、滅びるが良いのだ! なれどそれを成すは貴様では無い!!』
そういう、ことか・・・・・・。
その言葉が、俺の苛立ちの理由を教えた。
こいつには、何の迷いもなく想いを貫ける相手がいる。
それが愛なのか、忠誠なのか。そこまではわからなかったが。
人間相手に惚れ、戸惑い続けている俺とは、違う。
深く考える間もなく、ギーラッハは素早く突きを繰り出す。
身をのけぞらせ避けようとするが、避けきれずに二の腕を裂かれる。
さらに、執念の追撃が俺の脇腹を抉り取っていく。
「くっ……そんなものか!」
脇腹が血に濡れる感覚を感じつつも、俺は奴の腕を脇に挟み込んだ。
そのまま、俺の剣を握った腕に肘打ちを連打していく。
「あんたのリァノーンへの想いはそんなものか!」
>344 暗黒騎士ガウザー VS 紅の騎士ギーラッハ
己の突き出した突きをかわし、脇に挟むと彼奴は腕に肘打ちを連打してきた。
己は腕の筋肉にこれまでに無き程の力を込め、耐える。
「見るが良い、貴様と己とでは背負うて居るものが違うのだ!!」
もう片方の手を奴の脇に刺し、背後で手を組み合わせるとその胴をギリギリと締め上げる
「テイヤァッ!」
血を吐きながらの絶叫!
そのまま持ち上げると身を反らせて背後に倒れ込み、奴の頭を地面へと叩きつける。
“超純粋”幽祢vs“光の導き手”エミリオ(14歳ver)
夢幻歳華外伝
『よわむしなんてだいきらい』
>227
「あれ?はずれちゃった♪」
彼は、空に逃れることで私の捕縛結界を回避する。
『正面からが駄目なら、搦め手で行くしかないよね』
そんな事を呟きながら、彼は空中に光のプリズムを置いていく。
ふぅん・・・・・なるほどね。
『さて、何して遊ぼうか?』
「うん♪そうだねぇ・・・・・。
―――――こんなのはどうかな?」
私は、空間転移で技の射程範囲に移動する。
「当たるかな?」
そう言いながら、自分を中心に呪力をリング状に展開する。
これに接触した対象は、呪力に体の自由を束縛される。
さて、どうくるかな?
“超純粋”幽祢vs“光の導き手”エミリオ(14歳ver)
夢幻歳華外伝
『よわむしなんてだいきらい』
>346
「へぇ。君も『天使の輪』を使うんだ」
声にちょっと驚きを交えながら呟いた。
「それじゃ、こんなのでお返ししてみようか」
言いながら、手に集めた光を撃ち出す。
撃ち出された光――シーカーレイは、彼女の放ったリング目掛けて一直線に走った。
リフレクターは、まだ使わないよ。とっておきだからね。
僕は、胸の中で呟いた。
>373>377
こんばんは。
>345 暗黒騎士ガウザー VS 紅の騎士ギーラッハ
目の前の景色が、突如変化する。
凄まじいまでの膂力に放り投げられたのだと気付いた時には、俺は頭部から地面に落ちていた。
まるで体中が薄い膜に包まれているかのように、全身の感覚が鈍っている。
そして、強烈な吐き気。
肩で息をし、吐き気を押し戻しながら、俺は立ち上がった。
全身が、無様なまでに震えている。
立ち上がった瞬間、俺の足元に剣が突き刺さる。
紅の騎士が、俺に放り投げて寄越したのだ。
攻撃を狙ったのか、それともあえて渡したのか、それはわからなかったが。
ギーラッハの顔も血に汚れ、苦痛に歪んでいる。
肩が大きく揺れ、息と同時に血を吐く有様。
俺よりもダメージは大きいかも知れなかった。
なんという、覚悟だ。
「お前も……自分の剣を取れ!」
そう宣告すると、俺は地面を蹴り、跳躍した。
そのまま、電灯の上に飛び乗ってみせる。
紅の騎士が動き、大剣を取りに動く。
奴が剣を構えたその瞬間、俺は電灯から飛び掛かり、両断すべく斬撃を放つ!
「さあ、真の力を見せてみろ!」
すまない。
>348は誤爆だ。
比良坂初音vs青山素子 第2章 〜夜に舞う黒髪〜
>325
女の剣が一閃すると、辺りに熱気が走ります。
先ほどまでの…焼け付くような…鈍い痛みに代わり…
激しい…全身に電流を流されたような衝撃が…私を襲います…
でも…それは一瞬…
女は…私の状態を確かめようともせず…くるりと踵を返し…
校舎の方へと…足を……進めていきます…
ガタガタと左腕が震え…力が入りません…
女の放った剣は…化物と化した…私の身体を灼き…
黄泉の世界へと送り出していたのです…
私は…自分が…助けることのできなかった…
あの…女の子…しのぶちゃんの…笑顔を思い浮かべながら…
……ゆっくりと…意識を手放しました…
…御主人様…奏子様………そして…しのぶちゃん……ごめんなさい………
(HMX−12(贄)死亡)
比良坂初音vs青山素子 第2章 〜夜に舞う黒髪〜 初音側導入
マルチの放った蜘蛛からの報告を受けて、初音はすぐさま自分の住処たる八重坂学園へと
舞い戻る。
今夜はかなこは家に帰している、無理をせず巣に潜んでいればいいのだ・・・・
しかし、あの娘のことだ、この前の事を気にして、勝てぬ戦いを挑んだのは目に見えていた。
もし、そうだとすれば今から駆けつけてもマルチは助からないだろう
案の定、初音が裏門から校舎に足を踏み入れたとき、すでにマルチの蜘蛛は力尽きようとしていた。
初音は憮然とした表情で、自分の手のひらの子蜘蛛を見つめる
おりしも、ゆっくりと校舎に向かってくる強い気配を感じる・・・・・だが何やら変な感じがする。
初音はそれを迎え討つべく、というよりそれが何なのか確かめるべく玄関へと向かった。
“超純粋”幽祢vs“光の導き手”エミリオ(14歳ver)
夢幻歳華外伝
『よわむしなんてだいきらい』
>347
『へぇ。君も『天使の輪』を使うんだ。
それじゃ、こんなのでお返ししてみようか』
そう言うと、彼は閃光を私の放ったリングに向けて放つ。
閃光がリングを直撃し、相殺される!
――――?!
『アレ(リフレクター)』を使わない?!
ということは・・・・・これは虚実の『虚』。
次に『実』がくるはずだ。
ならば―――――!
私は、オホソラに再び干渉し『虚郭(キョカク)』を開く。
さぁ・・・・・どうぞ♪
比良坂初音vs青山素子 第2章 〜夜に舞う黒髪〜
>352
もう一つの魔の気配が近づいてくるのを感じる。
懐かしいとさえ言える気配。
記憶に打ち込まれ、いまだに外れない棘のようなソレ。
「来たか…比良坂初音…」
笑みが浮かぶ。
復讐は虚しいものだ、などとどこの馬鹿が言った言葉だ?
―――楽しい。
これからあいつに憎悪を叩き付けられるかと思うと、身震いする程楽しい。
一方で、頭の芯は凍り付いたように冷静だ。
「糸」がないか注意深く観察しながら、私はゆっくりと歩みを進めた。
“超純粋”幽祢vs“光の導き手”エミリオ(14歳ver)
夢幻歳華外伝
『よわむしなんてだいきらい』
>353
僕の放った光が、彼女のリングを打ち消した。
「これで終わりじゃないよ」
僕は適当にばら撒いたプリズムのほぼ中心に疾った。
「今度のは――避けられるかな?」
僕自身を中心に、前方と左右後方に光を放つ。
プリズムに反射した光が、彼女に向けて疾走する。
だが。これすらも囮。
放った光を追って、僕自身も彼女に向けて疾った。
>354
比良坂初音vs青山素子 第2章 〜夜に舞う黒髪〜
「あら・・・・お久しぶりね」
素子の背後に、マルチの無残な姿が転がっている
大切な下僕を失った怒りをかみ殺しながら、初音は素子を観察する
やはり不自然だ、わずか数週間でここまでの気を扱えるまでに成長したのか?
いかに素質が一流でも、普通の人間には不可能なはず・・・・
あくまでも平静を装いつつ・・・あえて初音は素子を挑発した。
「ですけど、貴方が行かなくてはならないのは学校ではなく警察ではなくって?」
>349 暗黒騎士ガウザー VS 紅の騎士ギーラッハ
ヒルドルヴ・フォーク を拾いつつ思う。
己にもはや残された力は僅か。
確実に仕留めねばなるまい、使いとうは無かったが……。
思った瞬間奴は有ろう事か電灯の上より飛び掛り、斬撃を繰り出してくる。
絶好の機会と、ヒルドルヴ・フォーク を振りかざした瞬間。
「何と!?」
奴の速度は予想を遥かに上回って己へと届く、
その斬撃は肩口へと食い込み……、しかしそこで止まる。
「流石の業物の此度の戦いで刃こぼれしたか?」
奴に渾身の蹴りを入れて距離を取ると、
「授かりし力、御姫の為に……!!」
体勢を崩した奴に向けて、大きく振りかぶり己が魔力を集中させる。
「喰らうが良い!!」
剣戟と魔力の融合技、十字剣閃!
“超純粋”幽祢vs“光の導き手”エミリオ(14歳ver)
夢幻歳華外伝
『よわむしなんてだいきらい』
>355
『これで終わりじゃないよ』
彼は適当にばら撒いたプリズムのほぼ中心に疾る。
やはり・・・・・ね。
『今度のは――避けられるかな?』
彼を中心に、前方と左右後方に光が放たれる。
プリズムに光が反射し、私に向けて迫りくる!!
「よけないよぉ♪ よける必要、ないしね♪」
《ぎぅん!》
光弾は、全て『虚郭(キョカク)』に弾かれ消滅する!
私は、『虚郭(キョカク)』を開放し次の攻撃に備える・・・・が。
そのひと時、私に隙が生まれた。
「な――――!?」
気がついた時には彼が私の目前まで接近していた――――。
比良坂初音vs青山素子 第2章 〜夜に舞う黒髪〜
>356
ついに会えた。
憎むべき敵。
私が全てを失う事になった元凶。
「久しぶり? そうか、あれからそんなに経っていたか。
私の方はお前の事を思い出さぬ日はなかったぞ」
私は攻撃に備え、すり足気味に歩きながら近づいた。
逃がさない。今度はどこにも行かさない。
「警察だと? そんな者に何が出来る?
お前を足止めする事すらできなかったあいつらに、用があるとでも思ったのか?」
空気の流れが読めるようだ。髪の毛一筋の動きすら感じ取れる気がする。
「それに―――」
私の唇に、押さえきれなくなった凄惨な笑みが浮かぶ。
「お前は私の獲物だ、比良坂初音」
振り上げた止水が、月光を映して冷たく輝いた。
淫藤宗光/ヒトラーvs竜崎天馬(M)&檀隼人(M)「ヴァレンシュタイン作戦」
>224 >232
新・天翔馬号を易々と蹂躙するかに見えた戦闘機群と飛行妖怪達は、新・天翔馬号
の放つ衝撃波に木の葉のごとく吹き飛ばされた。
大半は空中分解するか海面に激突するかしたが、一部は友軍への災厄となった。
Fw90がHe111とワイバーンもろとも、もつれあってグナイゼウの甲板を
直撃した。それらは甲板を貫き、艦底で爆発した。
灼熱の爆風は機関室の温度を急上昇させ、ボイラーが爆発する。
次の瞬間、空中に破片と膿汁めいた血液と火柱が吹き上がり、グナイゼウは
奇怪な断末魔をあげつつ、ゆっくりと海中に没していった。
一瞬のうちに、死霊艦隊は三分の一以上の航空兵力と巡洋艦、そして多数の
Uボートを失ったのである。
しかし、宗光とヒトラーも迅速に次の手を打っていた。
グラーフ・ツェッぺリンの甲板上に、黒い軍服を着た男たちが集まる。
アドルフ・ヒトラーと第三帝国を守護するドクロの騎士団――武装SSである。
今回、宗光とヒトラーが冥府から蘇えらせた武装SSは、霊的・肉体的に
特に優れたものたちからなる精鋭中の精鋭であった。
武装SSの亡霊たちは二手に分かれ、一組は新・天翔馬号を高角砲で撃ち落とさんとし、
もう一組はモーゼルKar98を構えて海からの侵入者を待ちうける。
>359
比良坂初音vs青山素子 第2章 〜夜に舞う黒髪〜
「あら?・・・・私はお友達を殺した罪を償えといったつもりでしたのよ
それに、お姉様も心配してらしたわよ・・・・ふふふっ」
初音は微笑みながら、さらに素子を挑発する
だが、そうこうしているうちに素子の纏っている気がまた一段と濃くなってゆく。
初音は何時の間にか、自分が後退してることに気がついた
(私が・・・押されている)
気に入らない状況だ・・・・・・あちらが動かないのなら、こちらで動いてみるか。
初音は右腕を軽く動かす、と同時に鋼鉄すら両断する斬糸が素子を斬り裂くべく
宙を舞った。
“超純粋”幽祢vs“光の導き手”エミリオ(14歳ver)
夢幻歳華外伝
『よわむしなんてだいきらい』
>358
「近くで見ると、結構可愛いんだね」
彼女に近付きながら、そんなことを呟いた。
「でも、可愛いからって甘やかしちゃいけない、って思うんだ。――お仕置きしなくちゃ」
疾走の勢いのまま、彼女に鋭い蹴りを放つ。
小さな身体に、僕の蹴りが食い込んだ。
「これは、おまけだよ…それっ!」
手に集めた光で作り出したプリズムを、彼女に投げつけた。
なす術もなく、プリズムに封じ込められる彼女。
「――砕けちゃえ」
微笑とともに宣言する。
彼女を封じたプリズムが、爆発した。
>357 暗黒騎士ガウザー VS 紅の騎士ギーラッハ
暗黒剣による必殺の斬撃は、しかし、ギーラッハの肩をわずかに裂いて止まった。
思わず、俺は舌打ちする。
不安定な体勢の俺に、ギーラッハの蹴りが叩き込まれる。
渾身の力が込められたであろう蹴りに、俺の体はまるで冗談のように吹き飛んだ。
辛うじてバランスを取って立ち直った瞬間、ギーラッハは奇妙な構えを見せた。
『喰らうが良い!!』
紅の騎士が、咆哮とともに剣を振りかぶった。
次の瞬間。
全身に揺らぐような衝撃が走った。
剣が砕ける鈍い音。
そして、肉体が引き裂かれるいやな音。
何が――――起こった?
ギーラッハのほうを見やると、奴の息は以前よりさらに荒くなっていた。
はっきりとは理解できなかったが……最後に何かしてみせたという事か。
俺の体は奴が放った奥義に蹂躙され、限界を迎えていた。
変身は解け、人間体に戻ってしまっている。
俺の着ていた白いシャツが、みるみる朱に侵食されていく。
足は震え、今にも地に膝を突こうとしている。
もう――――終わりか。
そう悟った瞬間、俺の意識が途切れかけた。
いや、まだだ、あと少し・・・。
俺は自らの傷口を握りしめ、その痛みで最後の意識を必死に保つ。
「知って……知っているか―――――」
俺はその表情に笑みさえ浮かべて、俺は紅の騎士に指を突きつけた。
「世界で……もっとも偉大な騎士は……」
そこまで言うと、膝の力は完全に失われた。
俺の体が地面へと、スローモーションのように近づいていく。
「騎士……は……」
最後の言葉は告げられぬまま、俺の体は完全に地に倒れ伏した。
(暗黒騎士ガウザー/黒岩省吾・死亡)
比良坂初音vs青山素子 第2章 〜夜に舞う黒髪〜
>361
「姉上? ああ、姉上は既に越えた」
先程のメイドロボの物とは比較にならない速さと鋭さの斬糸が迫る。
だが、それは見ている。対処法も知っている。
円を描くようにして止水を振ると、私に届くはずの糸は消え去った。
斬ったのでは無い。
気を集中させ焼き尽くしたのだ。
気の高まりが物理的に体温すら上げている。
今の私にかなう魔など、この地上にはいない。
「さあ、こんどはこちらからだ!」
掛け声と同時に大きく踏み込む。
大地が私の踏み込みを受けて大声で啼いた。
神鳴流の技など必要ない。
自らを一振りの剣として、渾身の突きを放った。
“超純粋”幽祢vs“光の導き手”エミリオ(14歳ver)
夢幻歳華外伝
『よわむしなんてだいきらい』
>362
『近くで見ると、結構可愛いんだね』
彼はそんなことを呟いた。
『でも、可愛いからって甘やかしちゃいけない、って思うんだ。――お仕置きしなくちゃ』
そして、そのまま勢いよく私に向けて蹴りを放つ。
私のからだが、蹴りの直撃を受けて吹き飛ぶ!
「――――ッ!!」
『これは、おまけだよ…それっ!』
そう言うと、手に生み出したプリズムを私に向けて放つ。
体勢を崩している私には、それをかわすすべはない!
この――――!
プリズムが私の体を包み、拘束する。
『――砕けちゃえ』
彼が微笑とともに宣言した。
次の瞬間――――
プリズムが爆裂する!
「く・・・・・・ッッ!!」
この程度の攻撃で、やられることはないが・・・・・・。
爆裂の影響で、頬に擦過傷ができる。
私は、その傷を撫でながら彼に向き直る。
「ふふ・・・・・。私に傷をつけた人間なんて・・・・・久しぶりだよ♪
うんうん、お兄ちゃん、力持ってるね♪」
私は、にこり、と彼に笑みを浮かべる。
そこに、絶望的なまでの殺意をのせて。
>232>360 淫藤宗光/ヒトラーvs竜崎天馬(M)&檀隼人(M)「ヴァレンシュタイン作戦」
黒い風と波を切り裂いて、モーターボートは死魔の艦隊へ突入した。
三十七ミリ連装機関砲が、十五センチ単装砲が、三十八センチ連装砲が雷火を噴く。
その尽くは空を切り、或いは海を強打した。
単なる操船技術のみでここまで砲撃をかわせる訳も無い。モーターボートそれ自体が淡い燐光を
発している事からも判る様に、隼人の『気』によるコントロールが機体性能以上の力を引き出している
のであった。
ボートの舳先はそびえ立つ鉄壁へ向けられている。――グラーフ・ツェペリンの舷側へと。
だが隼人は速度を落とさない。水脈を引きつつ、吸い込まれる様に空母へ突撃した。
上がる爆音と業火は、それでも巨大艦を揺るがす事はなかった。
黒煙の中に隼人の姿は見えない。
その長躯は天空にあった。
激突する瞬間、跳躍した隼人は船体を蹴って更なる高みへと躍り上がったのである。
船体に浮き出た死霊の顔が蹴り潰され、汚液と悲鳴を散らす。
回転しながら『転校生』は甲板の上を舞う。眼下にはそれぞれ武装した死霊たちが群れている。
「先ずはお出迎えの準備といこう」
裂帛の気合いとともに両手から放たれるは光の雨。『散弾気砲』で亡霊兵士の一角を雨散霧鐘させ、
着地しざまに襲い掛かる銃火を掻い潜って高角砲へと『気砲』を撃ち出す。
青い複葉機を睨んでいた対空砲は、あっけなく四散した。
「不法侵入だが、パーティの用意は出来ているぞ」
にやりと笑った隼人は、死霊たちにもう一度『気砲』を叩き込んだ。
>363 暗黒騎士ガウザー VS 紅の騎士ギーラッハ
エピローグ
ヒルドルヴ・フォーク を杖の様に使い、かろうじて己は立っている。
今宵はあまりに血が流れすぎた、己の血への乾きも限界と言って良い。
黒岩省吾に近づき、その血を得んとした時、かすかな言葉が聞こえた。
突然、感情の嵐が心に吹き荒れる…… 違う、違うのだ。
己が立っておるは御姫より授かりし血、故……。
そして貴公を仕留めたは御姫より授かりし力……。
「己は自らの力で勝利した訳では無い…… 」
されど、己は負けてはならぬ、御姫に報いる為、己が心は捨てた筈……。
己が頬を伝うは傷より流れし血潮であろう、己が味わったどの血よりも塩辛く、
それは心の奥にまで染みとおっていった。
終 劇
>364
比良坂初音vs青山素子 第2章 〜夜に舞う黒髪〜
斬糸が気によって焼き尽くされる
と、同時に初音の心臓を狙い渾身の突きが放たれる
もっとも、その動きは直線的で、避けることは造作もなかったが
初音はあえて、ギリギリまで引きつけ、それから後方へ飛び退る。
(そう・・・・憎悪と狂気で限界を強引に超えたのね)
初音にははっきりと感じていた
先ほどの突きの際、素子の骨が、肉が悲鳴を上げているのが・・・・・
ならば、不戦不抵抗で適当にあしらい、自滅するのを待つか
硬すぎる鉄は逆にもろいものだ。
しかし・・・・・初音は自分の肩口をちらりと見る
紙一重とはいえ、余裕を持って交わしたにも関わらず、服が破れて痣が出来ていた・・・・・
(適当にあしらうのは無理みたいね・・・本気で戦って私の方が持つかどうか・・・・)
初音は剣を構え、再び自分へと迫る素子に対して再度、斬糸を、今度は一方だけではなく素子を包囲するように放つ
(ならば、消耗戦に持ちこむまでよ!!)
“超純粋”幽祢vs“光の導き手”エミリオ(14歳ver)
夢幻歳華外伝
『よわむしなんてだいきらい』
>365
彼女は、自分の頬を撫でながら、にこりと笑った。
傷? 彼女は、傷を負った? 僕の能力で?
「まさか…ね」
転んで擦り剥いたかなんかしただけだ。僕が彼女に傷を負わせられるはずはない。
そう考えて、自分を納得させた。
「あはは。そんな怖い顔しないでよ。じゃないと…」
僕は彼女から距離を取るべく、疾った。
「もう遊んであげないよ」
僕の顔に貼り付いているのは、作り物めいた薄笑い。
比良坂初音vs青山素子 第2章 〜夜に舞う黒髪〜
>368
糸に囲まれたようだ、だがこの程度の密度なら問題ない。
斬糸はいえ、糸。捕らえてしまえば斬るのは容易い。
初音は間合いを取り続けている。私の疲労を待つ気か?
愚かな話だ。姉上と対峙してから、全く疲労を感じない。
再び気を高め、剣閃と共に宙へ放つ。
地面すれすれを、刃のごとく凝縮された気の塊が飛んでいく。
2発、3発。いくらでも撃ち出せる。
しかし、こんなのは囮に過ぎない。
なにより、止水で斬り刻んでやらないと気が済まない。
もうもうと巻き起こる土煙を目くらましにして、私は再び間合いを詰めた。
>360>366 淫藤宗光/ヒトラーvs竜崎天馬(M)&檀隼人(M)「ヴァレンシュタイン作戦」
機体のあちこちから異音がする。
音速を超えた飛行は、さしもの新・天翔馬号にも大きな負担を与える。
「そろそろ限界かな・・・?」
異常を感知し、素早くロケットエンジンを切り、通常飛行へ。
「アレが、旗艦だよな・・・」
グラーフ・ツェッぺリンを確認して、呟く。
そのグラーフ・ツェッペリン甲板上で、光が舞った。
「さっきの援護の人かな?」
それを確認し、一気に急降下。
新・天翔馬号はビリビリと震えながら、凄まじいスピードで降下する。
海面が、近付く。
海面ギリギリのところで、機首を起こし、そのまま滑るように甲板へ。
「タッチ・ダウン、だな」
完全に止まるまで待たずに、刀を片手に飛び降りる。
着地と同時に、一閃。
わらわらと寄って来ていた亡霊兵士どもが、吹き飛ぶかのように斬り裂かれる。
先に来ていた学生服の男に声をかける。
「さっきはサンクス、助かったよ」
その手には、透明な刃――――陸奥守流星。
“超純粋”幽祢vs“光の導き手”エミリオ(14歳ver)
夢幻歳華外伝
『よわむしなんてだいきらい』
>369
私は、口に塗った薄紅を指でそっと拭う。
そして、軽く振り上げる。
この薄紅には、私の言霊を強化する効果がある。
彼女は、自分の頬を撫でながら、にこりと笑った。
『あはは。そんな怖い顔しないでよ。じゃないと…』
彼はそう言いながら距離を取ろうと空を翔ける。
『もう遊んであげないよ』
彼の顔に貼り付いているのは、作り物めいた薄笑い。
「あはは♪それはやだなぁ?」
そう言うと同時に、私は指を振り上げる。
「よけちゃ、駄目だよ?」
そして、まっすぐ指を振り下ろす!
指先から発せられた衝撃波は、亜光速で対象に到達する。
さぁ!!どう?!
>371
比良坂初音vs青山素子 第2章 〜夜に舞う黒髪〜
気弾が、素子から次々と放たれる
それはひなた荘で見たときよりも、はるかに速く巨大だ。
それを辛くも避けながらも、初音は相手が自分の策略にはまりつつあることをほくそ笑む
愚かな娘だ・・・・技を繰り出せば繰り出すほど自分の破滅が近づいていることも知らず・・・・
それに・・・初音は、土煙にまぎれて接近する素子の姿を正確に捉えていた
気のコントロールが出来ないため、隠密性は無きに等しいことに彼女は気がついていないらしい・・・・
「そこよ!!」
初音は、また斬糸を土煙の中の素子へと放つ
どうせ、また焼き斬られるだろうが、別にかまわない
彼女の力を消耗させるための攻撃なのだから・・・・・
比良坂初音vs青山素子 第2章 〜夜に舞う黒髪〜
>374
土煙の向こうの初音の動きが手に取るようにわかる。
大きく右へ…そして、再び右へ。
どうやら私の位置を掴んでいるらしい。
それは当然だ。私は殺気を隠していない。
これほどの心地よい意志をどうして抑え付ける必要があろうか?
だが、鬼ごっこは嫌いだ。
再び繰り出されて来た糸を、焼き切った後に私は止水を逆手に構えた。
一呼吸で投げ放つ。
武士の魂?
くだらない。
刀は敵を倒すためにあるのだ。精神論を語るためにあるわけではない。
止水には気をこめていない。
いくら魔の者とはいえ、これを感知するのは至難の技のはずだ。
“超純粋”幽祢vs“光の導き手”エミリオ(14歳ver)
夢幻歳華外伝
『よわむしなんてだいきらい』
>373
彼女が指を振り上げるのを見て、僕は両腕を顔の前で交差させ、防御姿勢を取った。行動を見届けてからバリアガードを展開しても、この距離なら間に合うはずだ。
『よけちゃ、駄目だよ?』
そう言って、指を振り下ろした。
次の瞬間、防御姿勢のままで吹っ飛ばされた僕がいた。
「な…!?」
バリアガードを展開する暇もなかった。
「驚いたな。こんなに速いとは思わなかったよ」
衝撃波を防いだ腕が痺れている。とは言え、使いものにならないほどではない。
「――君と遊ぶのって、結構骨が折れるね」
言いながら、プリズムをばら撒いていく。
実際に使うかどうかはともかく、置いておくだけでもそれなりにプレッシャーは与えられる、と判断してのことだ。
377 :
以上、自作自演でした。:02/04/09 01:58
駄スレ
>377 『デリート(消去)』
>375
比良坂初音vs青山素子 第2章 〜夜に舞う黒髪〜
「ごっ!!」
まさか・・・・・剣士が剣を手放すなんて・・・・・
予想外の攻撃、初音は大きくバランスを崩し、頭から転倒した。
剣は初音の脇腹を貫いていた
焼けるような痛みが初音の全身を走る。
剣を腹に刺したままふらふらと起きあがると
初音は校舎の中へ逃げ込もうとする。
ダメージはそれほどでもないが、痛みがひどい・・・・・
このまま戦えば、間違いなく殺される・・・・・ここは逃げないと
しかし、あせりとは裏腹に、足が進まない
どうやら、先ほどの転倒で古傷を痛めたようだ。
背後に、ひたひたと迫る素子の鬼気を感じながら
初音は、もがくように逃げ惑うしかなかった。
比良坂初音vs青山素子 第2章 〜夜に舞う黒髪〜
>379
土煙が晴れると、倒れ込んでいる比良坂初音が見えた。
脇腹から生えた止水は、昆虫採集のピンのようだ。
動きは鈍い。どうやらうまく動けないようだ。
ことさらゆっくりと、足音を響かせる様にして近づく。
追い付くと同時に蹴転がして、腹を踏み付ける。
「貴様はスゥとサラの首を刎ねた」 右と左の肩口を突き刺してやる。
「むつみさんの心臓を突き刺した」 左の肺に穴を空けてやる。
「浦島を両断した」 臍の横に刀を突き立てる。
「なる先輩を辱めた」 下腹に剣を刺す。
「キツネさんを引き裂いた」 右の太股に大きく疵を付ける。
「しのぶの四肢をバラバラにした」 左脚に刃が走る。
……まだおさまらない。
再び蹴転がし、今度は背中を向けさせる。
「貴様と私が似ているとも言ったな。ならば―――」
止水を閃かせる。
その風に、つややかな髪がふわりと巻き上げられた。
「これで間違える事はなかろう」
比良坂初音の黒髪は、肩口のあたりで切り裂かれていた。
聞け、魂を冒涜する不死者共よ。
汝等は大罪を犯した。
存在その物が罪である汝等は、生き歩くことが罪だ。
清涼なる空気を吸い、母なる大地を踏みしめることが罪だ。
『罪』とは汝等を指す言葉なのだ。
理解したか? 理解したら我が剣の艶となりて、聖の下に滅せよ。
また、我が主神オーディンを悪魔と蔑み、侮蔑したキリストの子達。
貴様等も罪人だ。主を貶めた罪は重いぞ。
此処には価値ある魂など無い。限りなく絶無。
なれば、今の私は<選び出す者>では無いであろう。
神に仇成す者に鉄槌を下す者――<戦乙女>だ。
この血で染められた大地を浄化するその時まで、私は闘うぞ。
出典 :PSソフト「ヴァルキリープロファイル」
名前 :ヴァルキリー(本名:レナス・ヴァルキュリア)
年齢 :23(人間換算)
性別 :女
職業 :<魂を選定する者>
趣味 :人々の幸せに満ちあふれた顔を見ること。
恋人の有無 :皆無
好きな異性のタイプ :強き意思と、優しい想いを持つ者。
好きな食べ物 :特に無し。
最近気になること :巨人族との殲争。世界の終焉。
一番苦手なもの :闇を好み、夜を歩く屑共。
得意な技 :剣、弓を用いた神技。
一番の決めゼリフ :「……霊柩無き者はただ滅するのみ」
将来の夢 : 特に無し。
ここの住人として一言 :住人では無い。断罪者だ。
ここの仲間たちに一言 :仲間……我と共に歩む者など、いるのか?
ここの名無しに一言 :私は神だ。されど、この身体は肉に覆われ、血が巡っている。
心臓を貫かれれば息絶え、首を飛ばされれば死ぬ。
――――要するに、今の私は限りなくお前達に近い存在だと言うことだ。
崇めたり、祀ったりする必要は無いぞ。
>380
比良坂初音vs青山素子 第2章 〜夜に舞う黒髪〜
一思いに殺されると思っていたが・・・・・
この展開自体は、好都合だ・・・剣を抜いてくれたおかげでもう少ししたら動けるようになるだろう
しかし、苦しいのには変わりないが・・・・・
初音は改めて素子の顔を見る、その瞳はすでに尋常ではない・・・
完全に彼岸に行ってしまっている。
「どうしたの・・・貴方の憎しみはこの程度?もっとよ、もっと痛みを頂戴な・・・・・・くくくくっ・・・・・」
激痛の中でなお、初音は笑い、素子を嘲る、本当は悶え泣き喚きたいほど苦しいのだが
その姿を見せたくはなかった。
もっとも、素子には聞こえていないようだ・・・・ぶつぶつと呟きながら初音に剣を突きたてている。
再び蹴転がされ、今度は背中を向けさせられる。
さて・・・・そろそろ動こうかしらと、初音が思った瞬間、妙な感触と風に舞う黒いもの・・・・
まさか!!
初音は自分の身に起こった事を悟った、と、同時に痛みは一瞬にして吹き飛び
それにかわって凄まじい怒りが全身を駆け巡る。
「よくも・・・・よくも・・・私の大事な黒髪を・・・・許さない!!」
初音の叫びと同時に素子にまとわりついた初音の黒髪が無数の毒蜘蛛へと変化し
素子の身体にその牙を突きたてた。
「高熱と激痛に苦しみ悶えて死になさいな!!」
なんと良い劇場だ!
最高の役者も揃っている。
これでこそ、私の舞台も盛り上がるというもの!
出典 : 小説ウィザードリィ 隣り合わせの灰と青春
名前 : フラック、と呼ばれております。
年齢 : いくらほど生きた事か。数千、といったところでしょうかな。
性別 : その様な事に意味などありましょうか。
職業 : ございませんが・・・フラックをやっている、と言うべきですか。
趣味 : あえて言うなら、最高の舞台を作り上げる事ですな。
恋人の有無 : まさか。
好きな異性のタイプ : ございません。
好きな食べ物 : その様な事は、特に。
最近気になること : 人間がようやく私の相手をこなせるまで育ってきた事、ですかな。
一番苦手なもの : さて・・・ここは退屈とでもしておきましょうか。
得意な技 : ”傀儡”の術による死体の操作、ですな。
一番の決めゼリフ : ”ようこそ我が小劇場にお越し下さった!”
将来の夢 : その様な事、人間にお聞きになるべきでは?
ここの住人として一言 : 良い役者が揃っているようで、実に楽しみだ!
ここの仲間たちに一言 : 仲間? さて、いますかな?
ここの名無しに一言 : 観客がよいと私の舞台にもますます磨きが掛かる! とくとご覧あれ!
エリvsマッカーチス 『another mission』
前スレ >499
煙幕にその身を隠して、マッカーチスはメタルスラッグの死角へと移動した。
優秀なセンサーを持つマッカーチスにとって煙幕は、一方的に敵を狙い撃つための最高の隠れ蓑となる。
マッカーチスは胴体の両脇から後方に突き出した二本の煙突のような筒を、前方に向けて倒した。
その筒、二門の加速ビーム砲にエネルギーを集中し、狙いを定める。
メタルスラッグのキャタピラめがけて、二条の光線が迸った。
>335 vsユージン
「へげ? けええ? えけえええええ! すっごおおおおおおいぃぃぃ!」
猛烈な勢いで動き始めたユージンに対して、魔族はそんな歓声を上げた。身長とほぼ同じ長さにまで延びた
長大な腕を延ばし、その高速移動する彼に、素早い挙動で突き込んだ。だが、タイミングは完全に遅れる。
少年を捕まえようと五指を一杯に開いた掌は、そのまま誰も居ない壁へと、深々とめり込んだ。
「うはあっ! おにごっこ? まってえええええ!」
声とほぼ同時。空間に突如、真紅の刃が連続して顕現した。<ハック>――に近い性質の魔法だ。それは一瞬
その場に制止すると、魔族の知覚に従い、ユージンの後を追うように連続で射出される。僅か一瞬で、ひび割
れていた壁面が、魔力によって撃ち出された刃によって、ずたずたに斬り裂かれる。だが……そこにはユージ
ンは居ない。
「はやいはやああああい! おにいちゃあああんんん!」
その声を撃発音声として、さらに魔法発動。同時に、『謡うもの』の奏でる歌が、にわかにその強さを増す。瞬間、
ユージンの周囲で、小規模な衝撃波が連続して発生する。それは一撃一撃ごとにその強さを増し、最終的には、
壁を砕くほどの威力にまで発達していた。
だが……衝撃波自体は、敢えてユージンから、僅かに照準が外されている。
「おにさんでええええす! にげて、にげてえ! けへええ!」
今の彼にとって、ユージンなど「敵」では有り得ない。ただの玩具でしかない。何も知らない子供が虫や動物を
いたぶるような――そんな感覚だ。
まだ、遊び足りない――そう言わんばかりに、魔族は両腕をしきりに蠢かせながら叫んでいた。
>385 vs魔族
(……バカにしてくれる)
突き出される腕を緩急交えた足運びで眩惑しながら回避すると、
その腕を足場にしてさらにジャンプ。
当然、恒常魔力圏が発動して魔法が不可視の力場を形成するが、それは服の胸元を裂くにとどまる。
続く衝撃波の連射は……反った身では避けきれない。
瞬転。
衝撃を交差させた腕で受け、壁面まで吹っ飛ばされる。
猫のように身を丸め、衝突して速度が死んだ瞬間、足が壁を捉えて蹴り抜く。
――行く先は、天井。
蛍光灯を蹴り破ると、割れたガラス片が雹のように魔族めがけ降り掛かる。
それに魔族が注意をし、消し飛ばす一刹那で。
奴の視覚の死角に滑り込んだ。
……ごぷっ
口から溢れそうになったのは、生臭い鉄の匂いのする液体だ。
堪えきれず、つうっと一筋、深紅の筋が顎へと伸びる。
あまりに激しい運動のせいで、折れた肋骨が肺に刺さっているのだ。
痛みなど――さっきから痛覚神経を全力で流れっぱなしだ。いまさら変わらない。
じわり、じわりと、指先から犯していく痺れ。
(まだ……まだだ。まだ足りない……)
仕込みにはまだ量が足りていない。
まだ……ここで倒れるわけには、いかない。
脳にまで響く鋭痛に眩っとしながら、魔族がこちらに気づいたのを見て取ると、ぼくは再び跳ねた。
>386 vsユージン
びょんびょんと元気にはね回るユージンを見ながら、魔族はどこか不満だった。
玩具が元気なのはいいが、悲鳴のひとつも立てないのでは、あまり面白くなくなってきてしまったのだ。
そこで――魔族は考える。
――どうすればいいんだろう?
――どうすれば悲鳴が聞けるだろう?
――どうすれば……もっと面白いだろう?
その時だった。ユージンが、口元から鮮血を一筋滴らせて、地面に着地している。痛みをこらえているのは、
魔族の歪んだ思考でもはっきりと分かった。瞬間、彼は思いつく。
(腕を吹き飛ばしてみよう。そうすれば、きっと綺麗な悲鳴を聞かせてくれる。きっと、きっと)
自らのその考えに、魔族は歓喜の表情を浮かべた。それは、言葉と立って外界へと吐き出される。
「へえ――げへえええええ! ぷちっと、ぷちっとお!」
瞬間、ユージンが再び中へと跳び上がった。先ほどと対して変わらぬ、恐ろしく素早い動き。だが、恒常魔力
圏内におけるあらゆる事象は、全て魔族の意識の元にある。この程度の速度であれば、捕捉はたやすいことだ。
「ぷちっと、ぷちっとお! おにいちゃああん! ほおおおおおお!」
奇声。それを撃発音声として、魔族は魔法を発動した。全身が一種の魔法回路と化している魔族にとっては、
如何なる現象も即座に物理界面へと顕現させることが出来る。発動した不可視の魔力は、ただ純粋に<粉砕>の
意味を組み込まれ、宙を駆け回るユージンの左腕めがけて襲いかかっていた。
聖都キムラック。
その地に存在するという人類に敵対する女神と、それを奉ずる邪教。
何人ものエージェントを呑み込んだその地に対し、埋葬機関は最強の手札。
ナルバレックの投入を結論した。
「……で、後どれくらいだ?」
「直線距離なら大した事は無いのですが、道が曲りくねってますからねぇ。
ようやく半分と言ったところでしょうか?」
外輪街で、情報収集を目的とした下部組織の構成員と接触したナルバレックは、
聖都の中心にさえに続いていると言う地下水路を通り、さっそく潜入を開始していた。
聖都の護りを固めているという『死の教師』と呼ばれる手練揃いのエージェントでも遊んでみたいが、
まずは目的に集中すべきだ、ということぐらいは彼女も弁えていた。
(無論、デザート代わりに帰り道の雑魚を皆殺しにするつもりではあったが)
しかし、血宴の時はまだまだ先のようではあった。
禿頭の案内人が掲げる松明が照らす範囲は酷く狭い。
古く、崩れかけた地下水路を進むナルバレックは嘆息をついた。
「……退屈だな」
「仕事というものはそういったものですよ」
はっはっはと笑う案内人に、ナルバレックは更に嘆息する。
「女神か。頭の悪い連中の妄想と言い切りたいところなんだがな」
「貴方は信じていないのですか?」
「居れば滅ぼす。居なければ教主とやらを殺す。どちらでもいいさ」
「なるほど。シンプルでいいですね」
それっきり数分間の沈黙が続く。
ふと、何かを思い出したように案内人が立ち止まった。
「……あ、ところで私、自己紹介をしましたっけ?」
「いらん」
ナルバレックの短い拒絶を気にも止めずに、案内人はごく自然に振り向き
―――ながら、『見えない剣』を抜剣、首筋目掛けて疾らせた!
>388
ナイフで一閃。
直後、乾いた音がして『何か』が地面に落下した。
――硬質の物体が割れる音。
「ふむ、死の教師が使うというガラスの剣か。
……極々、自然な動作で急所への必殺の一撃。暗殺者としては及第点だな」
じりじりと男は後退しつつ、笑顔のままで私に問う。
『流石、見事な物ですね。
……あぁ、ところで一つ後学の為にお聞きしておきたいのですが、何故私が斬りかかると御分かりで?』
「簡単だ。私を相手に笑顔を向けられる奴は王冠ぐらいしかいない」
男の問いにこちらも笑みを浮かべて返す。
「それにな、私には週1度割合で暗殺が行われているのだ。これくらい感知できなければとっくに死んでいるよ」
男が再び、口を開いた――
>389 (殺人卿vs死の教師)
「なるほど。そんな下らない事で失敗とは。私もまだまだですな」
笑みは、変わらない。
脱力した両腕を垂らし、静かに後退りながら言葉を続ける。
「短い付き合いになるでしょうが、一応、自己紹介をしておきますよ。
私はネイム・オンリー。聖都の守護者―――貴方の敵です」
酷く静かな声。
内容は宣戦布告だが、そこには感情の昂ぶりは無い。
欠片も、無い。
「それでは噂に聞く殺人卿の力、御見せ願いましょうか」
ふい、と松明を持っていた右腕が動いた。
放り投げられた松明がクルクル回り、二人の姿を映し出す。
貼り付けた笑みのネイム。
唇に期待を乗せた笑みを浮かべるナルバレック。
―――ネイムの右腕が閃くと同時に、未だ宙に在った松明が砕けた。
闇が、辺りを覆う。
>390 (殺人卿vs死の教師)
ネイムとかいう男が名乗りをあげた後、灯りが消された。
辺りが漆黒の闇に覆われる。
「ふむ、視界だけでも奪おうという魂胆か? まあ、別にかまわんが……」
私は右手に黒鍵を作り出し、戦闘態勢を取る。
「来い、先手をうたせてやる。……つまらん芸を見せるなら即座にくびり殺すぞ?」
私は薄笑いを浮かべつつ、闇の向こうにいるであろうネイムにそう告げた。
>391 (殺人卿vs死の教師)
「……ありがとうございます、とでも言わなければなりませんかね?」
ネイムが静かに呟く。
体術によるものか、それとも靴に何か秘密でもあるのか、
キメの細かい砂であるにも関わらず彼の足元からのは音は無い。
す、……と右腕が上がる。
その手の先には、篭手と細いロープ――そしてそれに括り付けた短剣の刃がある。
「カウンター狙い……というのは正しいのですが。
それは私の武器のリーチが、貴方のそれよりも狭い場合に有効な戦術です」
闇の中。
本来、人間の視力では相手の位置がわかるはずのない状況だが、
薬物によって強化された目はナルバレックの姿を完全に捉えていた。
……自分の姿が見えていないナルバレックの姿に、唇を吊り上げる。
「しかし、縊り殺すとは物騒な話ですな。―――逃げてしまって良いですかね?」
からかうような台詞と共に振り下ろされる右腕。
ナルバレックの首筋を狙った短剣の刃は、静謐に投擲された。
前スレ
http://salad.2ch.net/test/read.cgi/charaneta/1017335672/440-441 から
(ハインリヒ=フォン=キンケルVS遠野秋葉)
『カチャ』というドアノブと音で私は目が覚めた。
元々、眠りは浅いほうだ。
割と些細なことで目が覚める。
チラリと薄目を開けて、ドアの方向を覗き見る。
――兄さん?
どうして、私の部屋に?
まさか?
柄にも無く、鼓動が高まる。
わざと眠ったり振りをする。
兄さんが私を求めてくるなら、素直に受け入れよう。
・
・
・
足音が近づいてくる。
私のベッドの側で止まる。
そして、その時、すごく『厭な感じ』がした。
そうまるで四季のような……
薄めを開けて、兄さんを見る。
凄く『厭な』表情をした兄さんがいた。
そして兄さんの右手はまるで人間のソレをは思えないような爪が……
「――――!?」
咄嗟に横転して、ベッドから転がり落ちる。
直後、柔らかい音がした。
立ち上がって、ベッドをはさんで、『兄さん』と対峙する。
私の枕は見事に切り裂かれていた。
あと、少し反応が遅れれば、今ごろ……
私は『兄さん』を睨みつけつつ、話し掛ける。
「――兄さん、一体、何のつもりですか? 深夜の訪問にしてはいささか、乱暴じゃありませんか?」
エリvsマッカーチス 『another mission』
>384
ずずん、と衝撃がメタルスラッグを襲った。
「被弾!? 損傷は・・・キャタピラをやられたか!」
死角から攻撃を受け、キャタピラを破壊された。だがあたしにダメージはない。
「くそ!」
ハッチを開けて飛び降りる。手近な物陰に潜んで周囲を索敵する。
「さて、どうしようかな・・・」
比良坂初音vs青山素子 第2章 〜夜に舞う黒髪〜
>382
「大事だと? 貴様のような化物に大事なものがあったのか?」
嘲笑しようとした刹那、全身に言いようのない痛みが走る。
私の身体はいつの間にか無数の毒蜘蛛に覆われていた。
くだらない。
この程度の大きさの魔なら、少し気を高めれば消滅させる事ができる。
ついでにこの蜘蛛の親玉の肌も灼いてやろう。
そう思い、気を高めた瞬間―――
比喩ではなく、視界が紅くそまった。
「―――!?」
声が出ない。呼吸がおかしい。毒か? いや、こんなに早く身体が冒される筈は無い。
自分の手を見ると。返り血では無い紅い血に濡れていた。
私は理解していなかったが、私の身体は高まった気によって崩壊を始めていたのだ。
毛細血管がはじけ飛び、臓器が壊死し始めている。
加えて、極限まで高まっていた代謝は猛スピードで身体中に毒を運搬する。
しかし、その痛みすらも心地よい。
一振りごとに自らをも刻む剣。それが今の私だ。
ろくに紅を引いた事もない私の唇は、笑顔の形のまま紅く染め上げられていた。
>305 遠野志貴VSアーノルド・ラスキン
『……どうするって? 届かせるしかないだろう?』
簡素で、それでいて力強い回答。
そしてその言葉を実践すべく少年が跳躍する。側方へと跳び、窓枠を蹴り、
大きく身を縮めて更に加速された弾丸の如き跳躍がラスキンへと迫る。
そして抜刀するよりも早く、少年のナイフはラスキンの肩を捕らえる。
しかし、空を切り裂く音の後に残されたのは鮮やかに切り裂かれた
ラスキンの外套のみ。
少年が空中で身を翻し、天井に着地する。片足を軸に独楽のように回り、
そのまま横凪ぎの一閃を放つ。変わり身の魔術、<瞬動転移>により
外套だけをその場に残して背後へと身を滑らせたラスキンが繰り出す
逆袈裟の一撃と衝突する。
更に回転は続く。今度は手の中のナイフが低い軌道から鋭く跳ね上がり、
ラスキンが上段から返す刃を弾き返す。
しかし、天地を逆にしての攻防は、其処で少年を支えている慣性の抱擁が
解かれることにより終わりを告げる。
落下しながらも、猫のように空中で体勢を立て直した少年が再び廊下に降りる。
それを追うラスキンも刀の切っ先を少年へと向けて飛び降りる。
着地の衝撃を殺すために全身を撓めた少年が、上方からの一撃を避ける為に
弾かれるように跳びすさり、再度間合いが開く。
低く構え、四肢を床に付けるその姿はさながら蜘蛛のようにも見える。
しかし、ラスキンは刀を鞘に収める。
怪訝な表情を浮かべる少年を、殺気の消えた表情で眺めるように見た後で
ラスキンが口を開く。
「すまない、先に謝っておくよ」
そして、鞘の先が床を打つ。
打たれた床を起点にして、何本もの亀裂が延びる。
その先が少年の背後、床に刺さった小剣に達した時、崩壊の音を上げて廊下が崩れた。
>395
比良坂初音vs青山素子 第2章 〜夜に舞う黒髪〜
初音には素子の異変など、もはやどうでもよかった。
「髪が・・・私の大事な髪が・・・かなこが誉めてくれた髪が・・・・」
殺意と涙で濡れた瞳で、素子を睨みつける。
「お前が死ぬのを待つのはやめたわ・・・・・今ここで殺してあげる!!」
溢れる涙を拭こうともせず、初音はそのまま素子に殴りかかる。
素子の気に触れて、振り上げた平手が焼け爛れてゆくがかまうことなく
渾身の力で素子の頬を打つ。
さらに体勢を崩した素子の襟首を掴み、校舎の壁へと叩きつける。
「この程度で死んでは駄目よ・・・・・もっと苦しめてあげる・・・・」
“超純粋”幽祢vs“光の導き手”エミリオ(14歳ver)
夢幻歳華外伝
『よわむしなんてだいきらい』
>376
『――君と遊ぶのって、結構骨が折れるね』
彼はそう言いながら、プリズムをばら撒いていく。
ふぅん―――プレッシャーをかける気・・・・?
なら!
しゅんと、私の姿が消える。
「ばぁ♪」
次の瞬間、私は空間転移で彼の目の前に出現する。
一瞬驚きの表情を浮かべる彼をからかう様に、もう一度転移。
今度は、彼の右横。
「お〜にさんこ〜ちら♪ てのな〜るほうへ♪」
私は両手を叩きながら再び空間転移。
今度は、彼の真上に。
連続して空間転移を繰り返す私に翻弄され、彼があらぬ方向を見る。
今!
「ちょん♪」
私は、彼の背後へ転移し、彼の背を『軽く』押す。
無論、ただ押しただけではない。
先ほどの空間転移の際に発生した空間相違エネルギーを両手に込めて、だ。
私の一撃を受けて、彼が吹っ飛ぶ。
あはは、変な格好♪
「くすくす・・・・ひっかかった♪」
私は、にらみ付ける彼の視線を受ける・・・・・・。
比良坂初音vs青山素子 第2章 〜夜に舞う黒髪〜
>397
狭まった視界の所為で反応が鈍った。
痛みは全く感じない。
血まみれながらも絶好調であるとすら言えるが、急所を貫かれれば死ぬだろう。
しかし、飛んできたのはただの平手打ちだった。
ダメージは全くないが、頭が揺れる。
さらに、血に濡れた私の髪が私の視界をふさぐ。
「髪が・・・私の大事な髪が・・・かなこが誉めてくれた髪が・・・・」
笑わせるな。人の貌を真似ただけの化物のくせに。
「お前が死ぬのを待つのはやめたわ・・・・・今ここで殺してあげる!!」
死ぬ? 私がか? そうかもしれないな。だが、まだだ。
「この程度で死んでは駄目よ・・・・・もっと苦しめてあげる・・・・」
まだ死ぬものか。私が死ぬのはお前を殺してからだ。
手の平と目の周りの血だけをぬぐって、再び立ち上がる。
口の中に溜まった血を地面に吐きだした。
どちらのダメージが大きいかはわからない。
それでも、月が傾く前に決着が着くだろうとは予測ができた。
呼吸を乱さないよう、ゆっくりと前進する。
>255
桐原朝子VS南条圭
南条のペルソナが放った雷は、容赦無く銀の剣士を打ちのめし、
そのエネルギーを炸裂させた。
僅かにこちらの魔法の威力が勝っていたようである。
大幅なダメージを受けたはずであるにも係わらず、
銀の剣士―――否、桐原朝子は立ち上がった。
片方だけ覗かせた瞳に憎悪の色を滾らせ、
今も猶言葉を発しつつ、南条へと詰め寄る。
それは、誰に対しての物でもない、自分自身に対する呪詛の言葉であった。
「やはり無様で、哀れだな、貴様は」
言って南条は、ゆっくりと刀を上段に構える。
「自らの『ペルソナ』を認められなかった―――
その結果が、これだ」
朝子が振り下ろしてくる剣は、今の南条にはあたかもスローモーション
の如く、遅れて見えた。
半身をずらし、上段からそのまま面を打ち込むことも、カウンターで
逆胴を狙う事も、容易に可能だ。
だが、南条は敢えて、降りかかる剣を真っ向から受け止め、
絡め取るようにして下段へと流す。
そして、真正面から彼女の瞳を見据え、静かに語った。
「よく分かった。貴様には殺す価値も無い。
貴様は貴様の分身に殺される。それが、相応しい末路だ」
“超純粋”幽祢vs“光の導き手”エミリオ(14歳ver)
夢幻歳華外伝
『よわむしなんてだいきらい』
>398
『ちょん♪』
背中のほうに気配を感じ、振り返ろうとしたとき、すでに僕は地面に転がっていた。
『くすくす・・・・ひっかかった♪』
彼女は楽しそうに笑っていた。
僕は地面に転がった姿勢のままで彼女を睨み付けてから、静かに立ちあがった。
「あはは。痛いなぁ」
渇いた笑い声を上げる。
「――痛いよ」
笑いを浮かべることもせず、僕は彼女に突進した。
>366>372 淫藤宗光/ヒトラーvs竜崎天馬(M)&檀隼人(M)「ヴァレンシュタイン作戦」
「こちらこそ助かったよ。君の戦闘機がなければ、この付近の結界は破れなかった」
片手を上げ、隼人は飛行機から降りてきた青年に言った。
「俺は『転校生』、檀隼人。――と云っても判るまい。詳しく説明したいが、時間が無い」
隼人の黒瞳が青年を見やった。
手にした白刃、精悍な相貌、しかし不思議と春風めいた雰囲気を漂わせている。
善と悪と云う狭隘な括りではなく、光と闇を以って人を分けるなら、この青年は確かに光の中を
歩んできたのであろう。
己が闇をも認めながら。
戦いと死に充ちたこの世界にもいるのか、こんな人間が。
希望というやつ、まだ捨てたものではないらしい。
心中に頷きつつ、隼人は青年に話し掛ける。
「どうも狙いは同じのようだ。急ごしらえだが、ここは一つ同盟と行かんか?」
>399
比良坂初音vs青山素子 第2章 〜夜に舞う黒髪〜
素子がゆらりと立ちあがる、常人ならとうに悶絶しているほどのダメージを負いながらも・・・
「そうでなくては、面白くないわ」
素子が立ちあがったとき、すでに初音は素子の頭上へとジャンプしていた
真剣よりも鋭い人差し指の爪を伸ばすとそのまま急降下で斬りつける。
まっすぐに素子の心臓を狙っているように見えるが
その実、糸を使い直前でフェイントをかける・・・・
真の狙いは、右腕。
(剣を握れなくしてから、それからゆっくり殺してあげるわ)
“超純粋”幽祢vs“光の導き手”エミリオ(14歳ver)
夢幻歳華外伝
『よわむしなんてだいきらい』
>401
『――痛いよ』
む――!
彼は、私が構えるより早く仕掛けてくる。
「ち!」
近接戦を挑まれればこちらが不利―――!
とはいえ、今の状況下では空間転移も間に合わない。
―――――しかたないッ!!
私は、炎を生み出す。
「え〜い!」
そして、彼めがけ放つ!!
これだけの近接距離では、私にも被害が出る可能性もあるが・・・・。
背に腹は変えられない―――か!
>396 遠野志貴VSアーノルド・ラスキン
『すまない、先に謝っておくよ』
何のことかと訝しむいとまもあればこそ、老紳士は日本刀の鞘で廊下の床を打った。
たった、それだけで、それだけのことで。
床が、ひび割れていく。
そのひびは急速に広がりながら廊下を侵食していき……ついには崩落へと。
轟音と共に崩れ落ちていく廊下。
破壊の触手はそれだけに留まらず、壁を砕き、階上の廊下までをも生け贄にしていく。
それに巻き込まれるように、俺も老紳士も階下へと落ちていった。
粉塵が立ちこめ、見るも無惨な崩壊の後の上で。
まるで何事もなかったかのように俺とあいつは対峙する。
空は銀色の月、これ以上ないくらいの真円の月。
地上にはそれを照り返す二つの刃。
一つは短く、一つは長く。
それぞれに月光に映えている。
短い光――俺のナイフが闇夜を切り裂いて瓦礫の上を駆ける。
長い光――老紳士の日本刀がそれを受け止める。
月光がぶつかりあったかと錯覚させるほどの音をさせながら互いに弾け合う。
光が、闇の中でぶつかりあいながら音をさせている。
まるで自分自身がその光になったかのような錯覚。
意思持たぬ光は、ただただ愚鈍に閃き続けるだけ。
五月蠅かった鼓動も、思い通りにならない呼吸も、何もかも忘れて。
遠野志貴はその打ち合いに忘我していた。
>402 淫藤宗光/ヒトラーvs竜崎天馬(M)&檀隼人(M)「ヴァレンシュタイン作戦」
学生服の男から、共闘の提案。
普段であればいぶかしむだろう。
いや、このような状況であればこそなおさらのはず。
だがそのようなことは全く感じなかった。
それは、彼――檀隼人――の瞳が、あまりにも深い悲しみに満ちていたからだろうか。
「ああ、オレ一人じゃ、まともにここにも来られなかったわけだしな。その同盟、乗らせてもらおうか」
「オレは天馬、竜崎天馬だ。よろしく頼むぜ、戦友」
残った亡霊兵士どもをなぎ倒しながら、二人は艦内に進入する。
グラーフ・ツェッペリンの中は、まさに異界と化していた。
ただいるだけで、おかしくなりそうなほどの濃密な妖気に満ち。
通路は末期ガン患者の内臓のごとき異様な色彩で、呼吸するように動き。
壁にはドクドクと脈打つ血管が走っている。
「コイツは・・・予想以上だな・・・」
ぼそりと呟く。
この濃密な妖気の中にあって、天馬、隼人とも特に異常はない。
それは彼らの非凡さを表すのか、それとも別の何かがあるのかはわからないが。
二人は、異界と化した艦内をひた走る。
比良坂初音vs青山素子 第2章 〜夜に舞う黒髪〜
>403
あと何度剣を振るえるのだろうか?
人ごとのように冷静に計算を始める。
かなりの出血。全身を冒す毒。良くて数回。悪ければ後一回といったところだろう。
無駄な攻撃はできない。
比良坂初音は宙に舞っていた。
愚かな事だ。羽根もないのにどうやって空中で攻撃を避ける?
着地の寸前に今度こそ動けないように切り刻んでやろう。
そう思ったが、月光にきらめく蜘蛛の糸がちらりと見えた。
爪でなく、あの糸で斬るつもりか。
いや、それとも……
一瞬反応が遅れた。糸を使い、空中で軌道を大きく変えつつ初音の爪が迫る。
狙いは…右腕?
回避は間に合わない。ならば。
私は、ほんのわずかだけ身を開く。
蜘蛛の爪はさらしを切り裂いて、私の右の乳房に刺さった。
この体勢では剣を振るえないが―――
灼熱する気が私の左腕を紅く染める。
このままでは防御されてしまうだろうが…
同時に、再び口の中にたまっていた鮮血で初音の目をふさぐ。
五臓を砕いてやるぞ、蜘蛛よ。
毒に冒された私は、魂の色すらをも紅から黒へと変え始めていた。
“超純粋”幽祢vs“光の導き手”エミリオ(14歳ver)
夢幻歳華外伝
『よわむしなんてだいきらい』
>404
彼女が炎の塊を撃ち出した。
「それはもう見切ったよ…」
ぎりぎりまで引き付けて、紙一重の所で身体を横にずらして躱し、そのまま彼女の背後に回り込む。
「どれくらい痛かったか、教えてあげる」
振り返った彼女の顔面に、左右の拳を叩きつけてから、軽い動作で回し蹴りを浴びせて、彼女を吹っ飛ばす。
さらに、即座に作り上げた光の矢を、彼女の身体に撃ち込んだ。
「…とまあ、これくらい痛かったんだ」
くすくす笑いながら、彼女が起き上がるのを待った。
>407
比良坂初音vs青山素子 第2章 〜夜に舞う黒髪〜
初音の爪が素子の左の乳房に突き立つ、失敗か・・・・
だが、右腕が駄目ならば、そのまま肺に穴をあけてやればいい。
初音は、さらに力を込めて爪を素子の胸に突き立てようとするが
素子の鬼気に押され、上手く身体が動かない。
一旦、距離を置こうとしたとき、初音の視界が紅く染まる
「くっ・・・目潰しかこんなもの・・・?ああああああっ・・・」
それも只の血ではない・・・素子の気が入っている。
その痛みにたまらず初音は両目を手で押さえる。
そのとき、素子の渾身の拳が・・・初音の身体へと炸裂する
しかも悪い事にそれは先ほど剣を突きたてられた左肺の傷を直撃していた・・・・
衝撃と、臓腑を焼き尽くされる激痛
悲鳴を上げる事も出来ずに、初音はグラウンドへと吹き飛ばされた。
“超純粋”幽祢vs“光の導き手”エミリオ(14歳ver)
夢幻歳華外伝
『よわむしなんてだいきらい』
>408
『それはもう見切ったよ…』
なんと?!
彼は、私の攻撃を紙一重でかわし、そのまま背後に回り込む!!
『どれくらい痛かったか、教えてあげる』
彼の、にやりと笑う顔が視界に入る。
次の瞬間、顔面に左右の拳を叩きつけたかと思うと連続して回し蹴りを浴びせかけられる!!
「ちぃ!!」
見事な連携。
私の体は、大きく体勢を崩して吹き飛ばされる!
さらに、体勢を直すまもなく――――
「な!?」
光の矢が私の体を打ち据える!
私は、そのまま大地にたたきつけられた。
『…とまあ、これくらい痛かったんだ』
くすくすと彼の笑いが聞こえる。
「うん、今のは結構痛かったかな?」
私は、つっと立ち上がる。
ふふ・・・・うん、いい素材・・・・・。
私は、自分の頬を触る。
そこには、ぱっくりと大きく裂けた傷――――。
ロストレガシィ(古代呪文)ですら、傷つけることのできない私の体に付けられた傷・・・・・。
私は、つぅと流れる血を指でぬぐい、舐める。
「うんうん♪こうじゃなくちゃ♪
『彼女』を殺すには・・・・・これぐらいできないとね♪」
淫藤宗光/ヒトラーvs竜崎天馬(M)&檀隼人(M)「ヴァレンシュタイン作戦」
>402 >406
異界と化した艦内を、隼人に続き走る天馬の足が、はたと止まった。
足裏に異常な感覚を覚えたのである。
おや、と思い足元を見た天馬の目が、驚愕に見開かれた。
いつのまにか通路の床は、おびただしい髪の毛に埋め尽くされていたのである。
そして髪の毛は二人の足に絡みつき、二人の足を止めた。
驚愕に顔を歪めていた隼人の顔に、次の瞬間、怒気が浮かんだ。
これらの髪の毛は全て、強制収容所で殺されたユダヤ人の死体からとったものだと
いうことを、髪の毛から伝わる悲しみで知ったのである。
髪の毛に足をとられて進めぬ二人の前で、髪の毛の中からゆっくりと一人の男が
姿を現した。
酷薄な容貌に二ヒリスティックな笑みを浮かべた小男――ドイツ第三帝国宣伝相
ヨゼフ・ゲッベルスである。
ゲッベルスはその矮躯からは想像もつかぬ大声で、国民に総力戦態勢への協力
を呼びかける演説を始めた。1943年の総力戦布告演説である。
それを機に、二人の周りをナチスの高官たちが取り巻いた。
ヒムラ―が自分はザクセン王ハイドリッヒ一世の生まれ変わりであると
胸を張った。
ゲーリングがドイツ空軍に敵無しと大言壮語した。
メンゲレが自分の人体実験は必ずや将来の医学の発展に貢献すると自画自賛した。
アイヒマンが大量のユダヤ人を収容所に移送する指令を下した。
それらの声はやがて一つになり、質量すら伴うかのような思念波となって
二人の精神に叩きつけられる。
“超純粋”幽祢vs“光の導き手”エミリオ(14歳ver)
夢幻歳華外伝
『よわむしなんてだいきらい』
>410
『うん、今のは結構痛かったかな?』
軽い調子で呟きながら、彼女が立ちあがる。
――その頬に、大きな傷がついていた。
「あ…え?」
見間違いかと思い、頭を何度か振ってから、もう一度彼女を見る。
「そんな…嘘だよ…」
だって――僕には彼女に傷を負わせる事なんて出来ないはず。なのに、彼女は傷を負っている。
さっきの傷は転んでついたかもしれないけれど、今度の傷は――転んでできる傷じゃない。
「僕は…僕の能力で…彼女に、傷を負わせたの…か?」
彼女が何か言っているようだけど、僕の耳には届かない。
「僕は…僕は…!!」
彼女に背を向け、走り出した。
とにかく、彼女に傷を負わせた現実から逃れたい一心で。
比良坂初音vs青山素子 第2章 〜夜に舞う黒髪〜
>409
私の拳を受け、今度は初音の方が大きく吹き飛ばされる。
同時に私の方も、再び血を吐いた。
もう毒のせいか傷のせいかわからない。
月明かりの中、全身を紅く染め上げてゆるやかに歩みを進める。
―――遠い。
―――身体が冷える。
―――こんなに遠いと、こんなに寒いと、余計な事を思い出してしまう。
? 余計な事?
そうだ。目の前の敵を倒す以外に何を考える?
握力が無くなってきた。止水を逆手に構えて両手で構える。
浅い息を吐く初音を見下ろすと、制服は紅く染まっている。
どこかで見たような光景。だがもう思い出す事もないだろう。
とうとう膝がくずおれた。
倒れ込むようにして、初音の心臓に止水を捻り込む。
その感触に陶然としながらも、私の意識は闇に落ちていった。
“超純粋”幽祢vs“光の導き手”エミリオ(14歳ver)
夢幻歳華外伝
『よわむしなんてだいきらい』
>412
いきなり、彼が私に背を向け走り出す。
はぁ・・・・・・。
「どこいくの?」
私は、空間転移して彼の目の前に立つ。
彼は、思わず尻餅をついた。
おびえた様に私を見つめる彼。
そこに、先ほどまでの高圧的な姿は、ない。
ふぅん・・・・・なるほどね。
ようは、彼は精神的に不安定なのだ。
それを爆発させれば・・・・・。
くす・・・。
私は、口元を抑えて笑う。
「ねぇ?ここからは逃げられないと思うなぁ♪
だって、ここは私が作った世界だもの。
ここから出るには・・・・・私が、貴方を出してあげるか――――私を殺すか。
どっちかしかないよ♪
もちろん、私は貴方を出してあげるつもりなんてないよ。
なら――――わかるよね?
くすくすくす・・・・・・・。」
比良坂初音vs青山素子 第2章 〜夜に舞う黒髪〜
>413
ゆっくりと時間が流れている。
視界が真紅から漆黒へと変わっていく瞬間。
まるで夕焼け空を見つめているかのようだ。
だが、あの夕日の先にたどり着けないだろう。
そんな刹那とも、永遠ともとれる時間に漂う私の意識に静かに呼びかける者がいた。
「夢は視れたかしら?」
>411 淫藤宗光/ヒトラーvs竜崎天馬(M)&檀隼人(M)「ヴァレンシュタイン作戦」
「くぁっ・・・!」
凄まじい、思念の渦。
いや、最早これは怨念か。
二人を取り巻くナチス高官の亡霊どもは、生前の異常性をさらに凶悪に剥きだし、その妄念を叩きつけてくる。
隼人はいざ知らず、天馬はこのような攻撃に慣れていない。
ゆえに、抵抗力も低い。
あまりの思念の圧力に、膝をつく。
その時、足下から、別の思念を感じた。
痛み、苦しみ、悲しみ・・・ありとあらゆる負の思念。
そう、ホロコーストで死んでいったものたちの思念だ。
その悲しみが、天馬に伝わった。
その苦しみが、天馬に伝わった。
その怒りが、天馬に伝わった。
「おぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!!!!!!」
怒りと悲しみを込め、吼える。
流星の剣が、光の残像を残して奔った。
>400 桐原朝子VS南条圭
南条が朝子の眼前で言葉を発した瞬間、白い爆発的な閃光が南条の目を撃つ。
そして次瞬――いつの間にか赤い闇の中にいた。
上下感覚のない赤い闇の中で、上昇感も落下感も、浮遊感もないままに、ただそこにいる。
『あたしも、お医者様になるの。お父様みたいに』
ふと、女の子の声がした。
『朝子はお利口さんね』
『もっともっと勉強するんだ。でないと、医者にはなれないぞ、朝子』
少女の、母と父の声。
『これくらいは当然だな。英一達はもっと優秀だった』
『それは仕方ありませんわ。朝子は女の子ですもの』
『どうした、桐原の妹にしてはだらしがないぞ』
『なんだ、こんな問題も分からないのか』
教師の、両親の、兄の声。
言葉には決して悪意などない。
だが、朝子の胸にはその言葉を聞く度に痛みが走った。
『利口ぶった女って厭だよなあ、可愛げなくて』
『違う! あたしは利口ぶってなんかいない。
お父様達の期待に応える為に一生懸命やってるだけなのに――』
朝子が実際にそう口にしたワケではない。
誰の耳にも届かずに、朝子の叫びは胸の奥深くに沈められる。
『どうしても医者にならなければいけないってことはないんだ』
父親の声。
――まあ、四人もいれば凡庸な子供も一人くらいいるさ。
そんな言葉を、父の言葉の背後に聞いていた。
『いいのよ、朝子。あなたは幸せなお嫁さんになって、あたし達を安心させてちょうだい』
母親の声。
違う、あたしがしたいのはそんな事じゃない、そんな人生を生きたいんじゃない。
お父様、お母様の期待に応えて、お兄さん達と同じように一人前と認めてもらって……。
仕方がないわ、例え親でも出来のいい子供の方が可愛いに決まってる。
朝子の悟り、それがますます親子の距離を遠くした。
彼女が辿り着いたのは、高校の養護教諭という資格。
『あら、じゃあ、医者の親戚みたいなモノですのね』
兄の妻の声。
どんなに一生懸命にやっても、朝子の声は満たされない。
養護教諭は医者ではないから。
それでも朝子は努力した。
嫌われたくない、能力がないために親に見限られはしたけれど、もう誰からも嫌われたくない。
笑顔を絶やさず、言葉を荒立てず、誰にでも優しく、そして穏やかに――。
>415
比良坂初音vs青山素子 第2章 〜夜に舞う黒髪〜
「ふふっ・・・・よかったわねぇ、私を殺せて」
ここは八重坂高校のグラウンド、だが激闘の痕跡はどこにも見当たらない
せいぜい、校門が真っ二つに斬り倒されているくらいのものだ。
それも、そのはず・・・・最初からそんなものは起っていないのだから・・・・
初音が素子に見せた夢を除いて
初音はあまりのことに呆然とする素子を嘲笑する。
その足元では、「ご主人様ぁぁぁぁ〜怖かったですぅ〜」
頼りないながらも、精一杯巣を守ろうとしてくれた下僕がすがり付いていた。
「ふふっ・・・・他愛無いものでしたわ、今の貴方の心はスキだらけ
憎しみと狂気に支配された心ほど操りやすいものはないのよ
普通の狩人や妖なら、こうはいきませんけど・・・・」
「でも、なかなか楽しい見世物でしたわよ、何も無い暗闇に向かって
必死に剣を振りまわす、貴方の姿は」
素子からは、もはや何の気も感じない
初音の夢の中で踊らされ、全て消耗しきってしまったのだ。
もはや、剣はおろか箸すら持てないだろう・・・・・・
「それにしても、まさか夜、しかも満月に直接『巣』に乗り込んでくるとはね
その考え無しの無謀のおかげで助かりましたわ」
初音はじわりじわりと、素子に近づく
素子にとっては、これこそがまさに悪夢だっただろう・・・・
しかし、これは紛れもなく現実だった
夜風になびく初音の豊かな黒髪がそれを証明していた。
素子の頬にそっと手を触れ、耳元で囁く
「だから・・・勇敢な素子さんにご褒美よ、お友達に会わせてあげる・・・・」
こうして青山素子は・・・堕ちた。
“超純粋”幽祢vs“光の導き手”エミリオ(14歳ver)
夢幻歳華外伝
『よわむしなんてだいきらい』
>414
突然僕の目の前に、彼女が現れる。
「う、わぁっ!?」
僕はその場にへたり込んでしまった。
そんな僕を見て、彼女は口元を抑えて笑いながら、言葉を紡いだ。
『ねぇ?ここからは逃げられないと思うなぁ♪』
「え…ど、どうして――」
『だって、ここは私が作った世界だもの。
ここから出るには・・・・・私が、貴方を出してあげるか――――私を殺すか。
どっちかしかないよ♪
もちろん、私は貴方を出してあげるつもりなんてないよ。
なら――――わかるよね?
くすくすくす・・・・・・・』
その言葉は、僕にとって、死刑宣告に近い響きを持っていた。
「嫌だよ…そんなの、嫌だ…」
立ちあがる事も出来ず、地面に腰を下ろしたままで後ずさる。笑顔を浮かべたまま、近付く彼女。
「嫌だ…嫌だ…嫌だ…嫌、だ、ああ…」
能力で誰かを傷つけるのも、僕が傷つけられるのも。
「――嫌だよぉっ…〜〜〜〜〜〜〜っ!!」
絶叫と。声にすらなっていない叫びと。
そこで、僕の意識は途切れた。
…
糸の切れた人形のような状態となった彼は、声にすらなっていない雄叫びをあげながら、辺り構わず光を放った。
この閉じられた『世界』を壊そうとするかのように。
比良坂初音vs青山素子 終章 〜闇に沈む泡沫(うたかた)〜
>418
私は闘っていた。
いや、それは違う。惨殺を続けていた。
スゥとサラの二人の首を刎ね、むつみさんの心臓を貫く。
―――止めろ。
浦島を両断し、腸をあらわにした後で、なる先輩の服を引き裂く。そして……
―――もう、嫌だ。
キツネさんの鼓動を止めて、しのぶの四肢をバラバラにした後、優しく首に手を掛ける。
―――お願いだ、止めてくれ―――!!
私は牢獄に魂を捕らわれ続けていた。
それはあの日のひなた荘。
主人公は私。何度繰り返されたかわからない惨殺劇。
だが、大切な人達を手に掛けるのは、あの女ではなく私の役だった。
再び、手に嫌な感触がする。
私の歓喜…違う! これはあの女の歓喜だ。
蜘蛛の糸で心が切り刻まれ、蝕まれているが、その糸につなぎ止められてバラバラになる事すら許されない。
叫びは声にならない。涙を流す事すら許されない。
私は……いつまでこうしているのだろうか?
繰り返される悪夢の中で絶望に沈むことだけが、私に許された全てだった。
>420
比良坂初音vs青山素子 終章 〜闇に沈む泡沫(うたかた)〜
「それはね・・・・私が飽きるまでよ」
素子の慟哭に答えるように初音は囁く
抱いて精を奪おうにも、もうすでに素子の身体からは搾り取れるような精は一片すら残っていない
ならば、飽きるまで玩具になってもらおう、それが初音の考えだった。
(さて・・・・そろそろ、別の夢でも見せてあげようかしら)
初音は、素子の頬に手を触れようとする・・・が途中で手を止める。
彼女の最愛の恋人が『巣』を訪れたのだ
初音は恋人を出迎えるために、素子を転がしている教室を出る。
『かなこ・・・こっちに来ては駄目よ・・・ふふっ・・・
今日はどんなお菓子を作ってくれたのかしら?』
遠くから、愛し合う恋人同士の囁きが聞こえてくる・・・・
そして暗闇の中で1人残された素子は涙を流し、幼子のように哀願していた。
「殺して・・・・・・ころしてぇ・・・・・」
了
比良坂初音vs青山素子
>67>68>69>70>71>72>73>74>75>76>77>79>80>81>82>83>85>86>88
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>415>418>420>421
特別参加
>92
もの凄い長編になってしまいましたけど
お楽しみいただければ幸いですわ。
比良坂初音vs青山素子
導入
>67>68>69>70>71>72>73>74>75>77>76>79>80>81>82>83
>85>86>88>89>90
第1章 〜ひなた荘最後の日〜
>91(>92)>93>95>96>97>99>101>102>103>104>105>106
>230>235>237>244>246>249>250>252>254
幕間
>292>293>295>296>302
第2章 〜夜に舞う黒髪〜
>304>309>310>313>319>321>322>323>325>351
>352>354>356>359>361>364>368>371>374>375
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>415>418
終章 〜闇に沈む泡沫(うたかた)〜
>420>421
マルチちゃんが修正版を作ってくれたので
こちらを上げさせていただきますわ。
ありがとう、マルチちゃん。
エリvsマッカーチス 『another mission』
>394
マッカーチスは、キャタピラを破壊されて動きを止めたメタルスラッグに迫った。
まだエンジンが生きているために振動する車体を、巨大な鋏で捕らえ圧倒的な力で切断した。
切断面から砲弾や電子機器がこぼれ出して、床に転がる。
ひとつの機械の命を滅ぼした怪物は、次の目標、血と肉の命を狙う。
再び加速ビーム砲にエネルギーを集中、エリを遮蔽物もろとも消滅させるつもりだ。
>387
……ぶちり、と、肉が裂けて。
「ぐっ……」
腱が軋む音。骨が折れる音。筋が断たれる音。
それが同時に発生し――捩れて飛び散る。
「……ああっ!」
堪えきれない悲鳴が、喉を引き裂くように搾られていく。
腕に掛かった負荷が、一瞬で常人より遥かに強靭な肉体すら、
まるで紙粘土のように何気なく、ぶっつりと腕をミンチにする。
そのまま、衝撃の渦に跳ね上げられるままに飛ぶ腕。
スプリンクラーのように血を撒くそれを、残った左腕で掴む。
(まったく、やってくれたもんだよちくしょう……腕一本、安くない)
指が食い込むほどに、元・ぼくの腕を握って――放す。
血に濡れた腕から滑り落ちるように、それが床に向かう。
(ただ、おかげで計画は早まった……それだけは、感謝したっていい。
……今のが、最後のチャンスだったのに)
ぱさっと、意外に軽い音をたてて、腕が落ちる。
そして、ぼくは一散に走った。
向かうは――この部屋の入り口。
あと少し――あとほんの、わずか。
いけるか、否か。
(遠野四季vsコルネリウス・アルバ)
「又、侵入者かい……? 全く、昨日のアオザキとその弟子といい……。アラヤの計画も穴だらけだな」
マンションの地下の工房で金髪の美青年―コルネリウス・アルバはそう愚痴をこぼした。
「……しかし、見ない顔だな。アオザキの関係者でもなさそうだ、何者だ、コイツ?」
目の前の鏡でマンションに乱入してきた男の様子を見る。
男の風貌は、白髪で着物らしきもの着た少々、目つきの悪い――と言った感じだった。
男はマンションの住民の若い女性の後を追って、このマンションに入ってきたようだった。
「おいおい、この前の通り魔事件の再現かい?」
アルバが苦笑しつつ、様子を見ていると、男が女に一瞬のうちに肉薄し、背後からどこからともなく取り出した剣で女を串刺しにした。
「――――!?」
アルバは言葉を失った。
今のは魔術か何か?
明らかに剣は何も無いところから『現れた』。
「ちっ、計画も最終段階というのにとんだイレギュラーだ! こんな時にアラヤはいないしな」
アルバはそう毒づいて、立ち上がった。
男を始末する為に……
こんな男に計画を邪魔されては困る。
折角、舞台の幕は上がったのだから……
(>425はミス)
>387
……ぶちり、と、肉が裂けて。
「ぐっ……」
腱が軋む音。骨が折れる音。筋が断たれる音。
それが同時に発生し――捩れて飛び散る。
「……ああっ!」
堪えきれない悲鳴が、喉を引き裂くように搾られていく。
腕に掛かった負荷が、一瞬で常人より遥かに強靭な肉体すら、
まるで紙粘土のように何気なく、ぶっつりと腕をミンチにする。
そのまま、衝撃の渦に跳ね上げられるままに飛ぶ腕。
スプリンクラーのように血を撒くそれを、残った右腕で掴む。
(まったく、やってくれたもんだよちくしょう……腕一本、安くない)
指が食い込むほどに、元・ぼくの腕を握って――放す。
血に濡れた腕から滑り落ちるように、それが床に向かう。
(ただ、おかげで計画は早まった……それだけは、感謝したっていい。
……今のが、最後のチャンスだったのに)
ぱさっと、意外に軽い音をたてて、腕が落ちる。
そして、ぼくは一散に走った。
向かうは――この部屋の入り口。
あと少し――あとほんの、わずか。
いけるか、否か。
>426 vsアルバ
気付くと、オレは女をつけていた。
この女、何かが変だ。
何が変なんだ?
何かが変なんだよ。それ以上は分からねぇ。
気付くと、オレはマンションのフロアの中にいた。
眼前には女の背中。
オイオイ、こんなところで殺るのは少し不味いだろう?
でも、似ているんだ。
此処はあの路地裏と同じ。
誰も来ない。誰も見ない。
同じ街にあるのに、同じ世界に存在しない。
だから、此処でバラしても何ら問題は無いだろう。
ということで、女の背中を剣で貫いた。
オレの体重を女に預けると同時に、首筋にかぶりついた。
そのまま、女の片腕を引きちぎった。
胸くそ悪い雰囲気をフロアを、赤く染める。
これで少しは、此処もまともになっただろう。
でも――――なんだ、こいつ普通のヒトじゃないか。
何が変だったんだ? 分からない。まあ良い、もう少し遊ぶか。
>428
(遠野四季vsコルネリウス・アルバ)
「おいおい、何で死徒がこんなところにいるんだよ?」
アルバはフロアの惨状を見て、そう愚痴をこぼす。
丁度その時、アルバの気配に気づいた四季と眼があった。
「――ここで大人しく、キミが退散してくれるなら、私も目の前の人形ぐらいは大目に見るけどな」
アルバは四季の眼を凝視する。
――死徒はヒトの枠から外れた化け物、基本的にヒトの理屈は通じない。
そして、アルバの目の前にいる四季も例外ではなかった。
四季の眼に宿るのは狂気の光。
明らかに、アルバの警告を聞くつもりはないと告げている。
アルバは決断した、こいつを排除することを……
「キミもね、長生きしたかったら人の嫌がる事をしちゃダメだぜ。そういうことをすると早死にすることになるぜ」
アルバが四季にそう告げると同時にエレベーターの脇の階段から、ぞろぞろとマンションの住民が現れた。
「出会って、いきなり悪いが消えてもらうよ。キミみたいなイレギュラーは困るんだ、実際」
アルバはそう言い捨てて、2階へつづく階段へと踵を返した。
それが引き金となって、眼の虚ろな人形たちが四季を取り囲む。
人形といえど、その力は人間の比ではない。
容易に人を撲殺できる殺人人形たちだ。
それは、今、四季に明確な殺意を持って襲い掛かった!
>429 vsアルバ
気に入らねぇ。なんだあいつは?
初対面でいきなり説教か? テメェ、何様だ?
ちくしょう。マジで説教か? 説教なのか?
オレ、説教なんてされたこと無いから分からねーよ。
オレは文句を言おうと口を開きかけた。
その時――――無数の人影が、所狭しと襲いかかる。
「うおっ!!……なんだぁ!?」
飛びかかってきた中年男性の胴を爪で切り裂く。
同時に、眼前に駆け寄った女の首を蹴り潰した。
だが、止まらない。
「オイッ……お前等、卑怯だぞ!! なんでみんなしてオレを襲うんだよ!!」
無数のヒトに組み敷かれ、無数のヒトに蹴りつけられる。
痛い。痛い。痛い。血が、血が滲み出る。
テメェ等――――殺すぞ?
同時、オレを組み敷いていたニンゲン共に、無数の剣が生える。
機能を停止し、崩れ落ちる死体。
だけど、すぐに変わりのニンゲンが襲ってくる。
(さっき、オレに説教をしたやつは誰だ? あいつ、なんか勘違いしているぞ)
ガキの顔を握りつぶし、そのガキの肩に足を掛ける。
同時、跳躍。無数のニンゲンを飛び越え、階段まで跳ぶ。
瞬間、疾走。赤い男を追い掛ける。
「オイ、そこの赤い奴待てよ……なんだよ、なんであんただけ逃げるんだよ? なぁ!!」
>430
アルバにとって、ソレは予想外の出来事だった。
男が人形を全て惨殺して、自分の後を追ってくるなんて、思考の外だったからだ。
2階のフロアで2人は対峙する。
「おいおい、勘弁してくれよ。なんで、第5階級クラスの死徒がこんなところにうろついているんだ……」
男がなにやら問い掛けてくる。
『オイ、そこの赤い奴待てよ……なんだよ、なんであんただけ逃げるんだよ? なぁ!!』
アルバは苦笑しながら、答える。
「ハハハ、私がキミを相手にする必要もないと思ったからさ。蝿をイチイチ、気にしていたらキリがないだろう?」
アルバの顔から笑みが消える。
「だがな、事情が変わった。あれだけの人形の修復は手間なんだぜ。それにキミのおかげで色々と面倒なことになった。
――しっかり、息の根を止めてやるよ。死徒退治は私の専門外なんだけどな!」
アルバがそう叫ぶと同時にフロアの壁からクリーム状のものが湧き出てきた。
アルバの悪意の具現ともいえるそれらはみるみるうちに四季の周りを取り囲む。
あるモノは人型に、あるモノは獣型に……
ただ、それらは常に不気味に波打っており、表面が流動していた。
まさに異形のモノたちだった。
「こいつらはアオザキを始末するためにとっておいたんだけどな、使ってやるだけ、ありがたく思えよ!」
いっせいに異形が四季に襲い掛かった。
異形の爪や牙が四季を引き裂かんと殺到する。
>431 vsアルバ
「ぐぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
肩から袈裟懸けに切り裂かれた。痛い。
胸を貫かれた。これも痛い。
背中も、足も、顔も、とにかく切り裂かれた。もちろん痛い。
痛い、痛い、痛い。
「クヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒッ!! これは――――痛いな!! とにかく痛いな!!」
逆らう術など持たない。
一匹の獣もどきが突進してきた。
速い。そう思った時には、既に吹き飛ばされていた。
数瞬後、壁に激突。
壁に無数の亀裂が走り、血が、オレの口か血が溢れ出す。
「ぐぅおおぉぉ!!……テメェ……なかなか面白いことできるじゃねぇか……」
そう、語り始める間にも、獣もどきが襲いかかってくる。
獣もどきの爪を、身体で受け止めるごとに血が噴き出た。
だが、こんな奴は無視だ。遊ぶ価値も無い。
無数の爪と牙に己の身体を切り裂かれながらも、遠野四季は進む。
一歩、また一歩。ゆっくりだが、確実に。
「痛い……痛いよなぁ? お前……言ってること矛盾しているぜ?」
一歩、また一歩……。
「人様に嫌がられることはしちゃいけねぇって、お前が言ったじゃねーか。
お前、オレが切り裂かれて悦ぶとでも思ってんのか?」
>431
あっさりと四季はアルバの異形の餌食になるはずだった。
……が、又しても、アルバの予定調和は突き崩された。
しかも、全く、予想外の形で……
四季は血まみれになりつつも、アルバに向かってくる。
その迫力に押され、アルバはじりじりと後退する。
一歩、四季が進む。
一歩、アルバが下がる。
又、一歩、四季が進む。
……一歩、アルバが下がる。
・
・
・
ドンとアルバの背中がロビーの壁にぶつかる。
もう、アルバには後退する余地は残されていなかった。
四季がアルバに問い掛ける。
『人様に嫌がられることはしちゃいけねぇって、お前が言ったじゃねーか。
お前、オレが切り裂かれて悦ぶとでも思ってんのか?』
アルバが苦虫を噛み潰した顔で返答する。
「思ってないぜ。だが、蝿を叩き潰すときに、蝿の痛覚を考える馬鹿はいるかい?
それと同じことさ。キミは私にとって蝿なんだ。鬱陶しい蝿を潰して、何がいけないんだい!?」
アルバがそう答えながら、右手を突き出す。
アルバの右の掌から、魔力の塊である不可視の衝撃波が放たれた。
>433 vsアルバ
――――なんて、酷い。
こいつ、悪者だぜ、オイ。
オレが蝿だってよ。アハハ。
「――――オレが、蝿だと? このオレが蝿? 蝿……ぐぉっ!!」
瞬間、オレの肩が抉り飛ぶ。
まるで、トラックに正面衝突されたかのような衝撃波だ。
肩にむしゃぶりついていた獣もどきごと、哀れ、オレの肩は飛んでいく。
だけど激痛よりも、発見のほうが先立った。
獣もどきは、吹き飛んだあと、不定形に戻り、動かなくなった。
――――なんだ、こいつ等、シヌのか。
同時、フロア中に撒き散らされたオレの血が牙を剥く。
血が、血が剣となり、針となり、刀となり、獣もどきを貫いたのだ。
「ヒヒヒヒヒヒヒヒ……痛い……痛いなぁ……ちょっとは、蝿の気持ちも分かったぜ」
肩から滝のように流れ出る血も、例外では無い。
全てが剣となり、床に落ちる――――前に、掴み取り、赤い男へと投擲。
肩から流れ落ちる血は止まらない。なれば、この投擲も止まりはしないだろう。
ただただ、夢中でオレは男へと剣を投げ続けた。
>256
ヨコシマ&ロゼット一行 VS G.G.スレイマン
『ボーイ・ミーツ・ガール?』
というか――――何が起こったの?!
私達に降り注ごうとしていた呪弾が、弾き返りながら相殺しあう。
これも、あの男が?!
「―――なんなのよ?!あの覗き魔は!!」
私はそんなことを口走る。
正直、さっきから何が起こってるのかさっぱり把握できない。
ただ判っているのは――――!
目の前のブラックロッドが、覗き魔めがけて走りよろうとしていること!
「クロノ!!」
「ッ!!」
クロノが、二人の間に入るように走る。
その時!
「あ?!」
なにやら、ブラックロッドの足元がずぶり、と沈む。
また・・・・なんかやったの?!
もっとも、ブラックロッドは意にかいした様子もなく迫りくる。
この!!
私は、覗き魔をちらと見る。
『イヤやぁ! 死にとうない! 助けてぇ!!』
「・・・・・・」
滝のように涙を流しながら叫ぶ覗き魔。
とてもじゃないがこいつにこれだけのことができるようには見えないのだが・・・・・。
そうこうしている間にも、ブラックロッドが覗き魔めがけ迫っている。
クロノは―――間に合わないか―――――!!
「〜〜〜ッ!!この!!」
私は、覗き魔めがけ杖を振り下ろそうとするブラックロッドの腕に漂準を合わせ・・・・・。
「当たってよ!!」
トリガーを引く!
腕を打ちぬかれ、一瞬ブラックロッドが体制を崩した。
そこに、追いついたクロノが間に入る!
「だぁッ!!」
掛け声とともにブラックロッドのボディに蹴りをかます。
思わず吹っ飛ぶブラックロッドに、先ほど覗き魔から受け取った石を投げつけつつ・・・・・。
覗き魔を抱えて地面に伏せる。
《どぉぉぉぉぉん!!》
二人が伏せると同時に、大きく爆炎があがった――――!!
(>419修正)
“超純粋”幽祢vs“光の導き手”エミリオ(14歳ver)
夢幻歳華外伝
『よわむしなんてだいきらい』
>414
突然僕の目の前に、彼女が現れる。
「う、わぁっ!?」
僕はその場にへたり込んでしまった。
そんな僕を見て、彼女は口元を抑えて笑いながら、言葉を紡いだ。
『ねぇ?ここからは逃げられないと思うなぁ♪』
「え…ど、どうして――」
『だって、ここは私が作った世界だもの。
ここから出るには・・・・・私が、貴方を出してあげるか――――私を殺すか。
どっちかしかないよ♪
もちろん、私は貴方を出してあげるつもりなんてないよ。
なら――――わかるよね?
くすくすくす・・・・・・・』
その言葉は、僕にとって、死刑宣告に近い響きを持っていた。
「嫌だよ…そんなの、嫌だ…」
立ちあがる事も出来ず、地面に腰を下ろしたままで後ずさる。笑顔を浮かべたまま、近付く彼女。
「嫌だ…嫌だ…嫌だ…嫌、だ、ああ…」
能力で誰かを傷つけるのも、僕が傷つけられるのも。
「――嫌だよぉぉっ!!」
叫ぶ。声の限りを尽くして。
「来るな、来るな、来るなくるなクルなくるなぁっ!!」
腰を下ろしたままの姿勢で後ずさりながら、盲滅法に光の矢を放つ。当然そんなものは当たらない。
相変わらず笑顔のままで、彼女は近付いてくる。
「こんな、こんなちからが、ちからがあるから、からっ、だから、だから」
頭の中が真っ白になって、目の前が真っ暗になって、身体が熱くなって、汗は冷たくて、何処からか聞こえてきた声は、もう聞こえなくて、
そこで、僕の意識は途切れた。
…
糸の切れた人形は、再び立ち上がり、声にすらなっていない雄叫びをあげながら、辺り構わず光を放った。
まるで、この閉じられた『世界』を壊そうとするかのように。
>434
「なんだと!?」
アルバは驚きの声を上げた。
あたり一面、唐突に何の前触れも無く、突如、剣が『生えた』のだ。
彼の異形は皆、串刺しになった。
「ハハハハ、この無限の地獄(ゲヘナ)の中で更に地獄(ゲヘナ)を作り出すか――!」
アルバは自分の絶対の自信の持った異形を破られた事実に驚愕し、笑う。
そこに――
「ぐっ――」
四季の投擲した剣がアルバの右肩に突き刺さった。
「――痛いな、痛いな、痛いな、痛いな、痛いな! ああ、本気で死ぬほど痛いじゃないか!!」
アルバもただやられている訳ではなかった
自分の身体に防御を意味するE・I(ユル)のルーンを刻む。
不可視の壁により、剣が叩き落された。
「――死徒風情が。何が理由でこの世にいるか知らんが、とっととあの世にいけっ!」
アルバは右肩から流れる自分の血を左手ですくう。
そして、四季へと左手を横一文字に振るった。
アルバの血しぶきが四季へと飛んでいき、『発火』した。
魔術師の悪意の具現の炎が四季を飲み込もうとしていた。
vs アルクェイド 『企業の論理』
導入 1
0000 「目標」、「ダミー01」と接触。二分三七秒の後、これを殲滅。
0025 「目標」、「ダミー02」と接触。三分一一秒の後、これを殲滅。
・
・
・
0143 「目標」、「ダミー10」と接触――――――目標ポイントへの誘導に成功。
居並ぶ廃ビルの影に、今、二つの人影があった。
一つは白く美しい女性。一つはボロをまとう血色の悪い男性。
女性は見下ろし、男性は戸惑い慌て、命乞いを繰り返す。
もちろん彼女はそれに従うつもりなどなく、無慈悲な殺戮の爪を振り上げ・・・
だが、振り下ろされる事はなかった。
ある言葉に女性の手が止まる。顔色を僅かに変え、男性に近づきその手を取った。
それは、対象と「撒き餌」の距離が最小になる事も示す。
「観測者」はこれを好機と判断・・・傍らにあるスイッチを押し込んだ。
途端、男性は弾ける。
頭の内側から膨張し、頭蓋を頭皮を突き破り、爆発は辺りに飛び散った。
体さえも粉々に砕き「撒き餌」はその役割を果たす。
返り血に肉片に血みどろに、女性は染まった。
0144 「目標」・・・「ダミー10」との接触を継続する事にした模様。
「ダミー10」、「目標」に対する作戦規定外の言動を確認。次のステップへ以降。
0145 「ダミー10」、「脳皮質爆弾(コーテクス・ボム)」による処置を断行。
0145 「目標」、破裂した破片を全身に浴びる。直ちに各種センサーシステムを起動。
レーダーに目標を確認。同時に儀式魔術の「道」の接続も確認。
0150 第一次作戦断行。
「観測者」は、辺りを見やった。
早急に取りそろえたにしては上出来な数の「APM(対人ミサイル)」が配備されている。
目標は眼下に捕らえる血まみれの女性。人間一人を殺すには十二分すぎる数のミサイルが舳先を向けた。
取り囲む廃ビルから一斉に煙と轟音を散らし、ミサイルは宙を駆け出し――――
0200 ・・・第一次作戦の失敗を確認。
vs アルクェイド 『企業の論理』
導入 2
「――――と、言うわけだ」
ミラーシェードの男は傍らの男に説明をしつつも、自ら一冊のファイルをめくっていた。
一つは企画書。
「吸血鬼」を捕獲した後「処置」を施し、「死徒」の特性を持たせた「モノ」を市街に放つ。
「撒き餌」には過度の暴走や逃走を防ぐために「脳皮質爆弾(コーテクス・ボム)」を処置済み。
あらかじめ虚偽の情報を「目標」が接触する可能性から鑑みて「協会」に流布。
この組合については「別件」を与える事により、行動を拘束。
また、この接触に置いて「目標」についての情報を取得。
同時に「地脈」について解析開始。想定される戦闘区画を羽田に決定。
スクワッター(不法占拠者)の排除並びに、一般市民の避難を早急に断行。
シャーマンによる「地脈操作」の儀式を開始。そして、特定区画の地脈を一時的に断絶する。
目標を捕獲もしくは殲滅するのを目的としたプロジェクト――――
「真祖の姫『アルクェイド・ブリュンスタッド』の捕獲並びに殲滅」作戦企画書。
もう一冊のファイル――これにはアルクェイドの個人情報が細かく記されていた――に、
目を通しながらミラーシェードの男は呟く。
「半ば、予定通りに第一次作戦は終わった。いくら真祖の姫君とは言え、疲弊はしているだろう」
ファイルを閉じると、おもむろに立ち上がる。
その手にマシンガン――イングラム・バリアント――を持って。
「規定外だ、と言う苦情は作戦終了後に受けよう。今はともかく――――」
企画書の末尾には、こんな一文があった。
『最終作戦が失敗した場合、アズ・テクノロジーは羽田を放棄する』
「生き残る事だ」
0205 第二次作戦開始。
導入
vsアルクェイド
>438>439
嘆息と共に、その黒い人影は、どこか荒廃した雰囲気の漂うその大地に足をつけた。
片手に携える巨大な金属の固まり――スタッフと呼ばれる魔力増幅器――と、身に纏う
モールドとを繋ぐ金属製の魔力誘導管が、鎖のような、じゃらり……と言う音を立てる。
金属の仮面越しに、どこか濁ったその空を見上げながら。彼――レイオットは、嘆息と共に呻いていた。
「なんとも、これは――厄介なことになったな」
最初から、疑念だらけの依頼ではあった。
日本という東洋の国家への、戦術魔法士の派遣。魔族事件の一文が書類に記述されてはいたものの、
わざわざこんな遠くまで戦術魔法士を連れに来るまでもなく、空軍戦力による封滅作戦を実施すれば、
魔族の駆除は可能だ。第一、魔法士による殲滅戦を実施するには、時間が経ちすぎてしまっている。
胡散臭い。それが、彼の第一印象だった。
しかし――気が付けば、彼はこの地に立っている。ふと脳裏に、申し訳なさそうな、そんな表情でこちらに
頭を下げていた童顔の監督官のことが思い出されるが、一瞬でその顔を消し去る。
文句のひとつも言ってやりたいが――
「まあ――何はともあれ、生き残らないとな」
つい先ほど聞かされたばかりの言葉を、口の中で転がしてみる。生き残る。当たり前のことだが――どこか、
言葉にしづらい何かがある。一瞬だけ、彼は苦笑を浮かべた。
かぶりを振り……浮かび上がった感情の全てを、意識の中に拡散させる。
ふう――と、ため息をひとつ。
「――さてと。行くか」
言葉は軽く。だが、その表情にはどこか獰猛な笑みを浮かべて。
レイオットは、戦場に向けて足を踏み出した。
>440 vs アルクェイド 『企業の論理』
崩れ落ちた瓦礫の山の中にターゲットを確認。
対人ミサイルとは言え、その爆発力は弱くなっていたコンクリートを破砕しきったようだ。
その中でも、平然と佇む血まみれの女性。
真祖、アルクェイド・ブリュンスタッド。
ドラゴンに匹敵する脅威に、はたして人の身で何処まで敵うのか。
ミサイルすら通じない相手に、手持ちの火器だけで何処まで張り合えるのか。
羽田を潰してまで殲滅すべき相手なのか・・・
紫雲は軽く目を閉じ、邪念を払う。
会社のする事に疑問を抱くなど、馬鹿げている。
俺はただ、使命を全うするのみ。
ライトマシンガン「イングラム・バリアント」の射程限界の位置に陣取ると、
ビルと瓦礫の遮蔽を利用して体を隠す。
マシンガンだけ露出させると、スマートリンクの目を通してアルクェイドの姿を捕捉。
――――そのまま、トリガー。音を殺したライフル弾が虚をつくように馳せた。
>437 vsアルバ
炎が、オレ/シキの身体を、包んだ。
視界が、紅く染まる。 / これは血の色か?
熱い、とても熱い。 ヒヒヒヒヒヒヒ、熱すぎるぜこの野郎。
視界の奥で、男が喚いているのが聞こえた。
何かを叫んでいる。
驚愕している。
恐怖している。
チッ、オレを説教したり、切り裂いたり、燃やしたり、
こいつは何がしたいんだ? そんなにオレが嫌いなのか?
ああ、オレは嫌いだね。大っ嫌いだ。――――コロシテヤル。
そのとき、オレを包む紅蓮の炎が更に激しく燃え上がった。
男が何かをしたらしい。熱い。
ヒヒヒヒヒヒ、オレはそれを笑顔で応えてやる。
笑顔を浮かべながらも、一歩一歩、床を踏みしめる。
熱い、熱い――――――――なぁ!!!
瞬間、跳躍。炎の尾を引きながら、壁を蹴り、天井を疾る。
男がオレが跳んだ気づいた、その時には……男の首筋に、牙が突き立っていた。
赤い炎に包まれながら、赤い服を着た男の赤い血を、赤い瞳をしたオレが吸う。
フハハハハハハ、今日は変な日だぜ。
>442
確かに魔術師の呪いともいえる血の炎は四季を包み込んだ。
――だが、四季は止まらなかった。
四季が跳躍し、アルバの首筋に牙を突きたてる。
「ぐっ、この……。離れろっ!」
四季の頭を突き放そうとするが四季はビクリともしない。
魔術師である人間と死徒の差がそこにあった。
次第にアルバの四肢からぐったりと力が抜けていく。
アルバの視界も暗くなっていく。
アルバは次第に混濁していく意識の中で思った。
(失敗した。こんな化け物と、関わるべきではなかった――――)
その思考を最後に、赤いコートの美青年の意識は永遠に断たれた。
◆御神苗優vsシグモンドvs???◆導入
――――京都駅
春の日差しと桜の花乱れる季節…。
スプリガン―――御神苗優は、京都に来ていた…。
春の修学旅行として…。
京都は古い街だ。
外敵を防ぐ為平安京の時代から結界で閉ざされ、その内部では呪術が渦を巻いていた…。
それ故に、怨念などが外に出る事無く、現在でも淀んでいる…。
感覚が鋭い人間――ないしは存在ほど、迷わされる事が多い。
男が一人ホームから降りてきた。
長い包みを背負い、ロングコートをはためかせ。
そして喫茶店へ入る
「リストに載っているヤツはコイツか―――」
手元のファイルを読み終えるとバッグに収め、
代金を払って出て行った…。
修学旅行の自由行動中…、微妙な殺意を御神苗は感じていた…。
――――そして、『静かなる闘争』が始まった。
>441 vsアルクェイド
瓦礫の間を縫うように、慎重に、だが迅速に接近する。
元々対人戦闘をも考慮に入れられて設計されているタクティカルモールドは、
その激しい動きにあっても音らしい音も立てない。
廃墟越しに、ターゲットを視認する。血にまみれてはいるものの、渡された資料の写真とは
寸分違わぬその姿。
「――――あれが?」
思わず、疑問が口をついて出る。
見た目には、恐ろしく美しいの女性という、ただそれだけでしかないのだが。少なくとも――
化け物には見えない。見た目が当てにならないのは、今に始まったことではないのだが。
「――――――」
何はともあれ……戦うのであれば、もう少し近寄る必要がある。
戦術魔法の射程には、まだだいぶ遠い。
総重量60kgの装備を身につけているとは思えない軽快な動作、瓦礫の山を移動する。
彼女はまだ、こちらには気付いていない。
彼自身は気付かなかったが――紫雲からライフル弾が放たれたのは、ちょうどその時だった。
“超純粋”幽祢vs“光の導き手”エミリオ(14歳ver)
夢幻歳華外伝
『よわむしなんてだいきらい』
〜エピローグ〜
>436
私は虚郭(キョカク)を開き、暴走する力の本流を受け止める。
「くすくす・・・・・・。」
絶叫を上げながら、彼は己の力を開放し続ける。
やがて、彼も力尽きたのだろうか。
ぐったりと地面に足をつき、ぜぇぜぇと荒い息をする。
「うん♪
貴方、力持ってるよ♪
誰にでも誇れるだけの力がね♪」
私は、彼の頭をぽふぽふと撫でる。
「あはは♪
さっきのは嘘だよぉ。
きちんと出してあげるから安心してね♪
そのかわり―――――私と約束してほしいんだ?」
彼が、うつろな瞳を私に向ける。
「多分・・・・うん、もうすぐかもしれない。
貴方の前に、きっと力を持った人が現れると思うんだ。
その人を―――――殺しなさい。何があっても、ね。
ね、指きりしよ?」
私は、呆然とする彼の手をとり、小指と小指を握る。
「ゆ〜びきりげんまん♪
うそついたらはりせんぼんの〜ます♪
ゆ〜びきった♪」
それだけすると、私は彼と距離をとる。
「それじゃ、もう会うこともないと思うけど♪
ばいば〜い、『エミリオ』♪」
============================
《ちり〜〜〜ん・・・・・・・。》
鈴の音を残して、彼女は虚空に消える。
と同時に、先ほどまで彼女達がいた空間は、元の空間へと移送される。
そこに残るは。
呆然とたたずむ一人の少年のみ―――――――
はっきり言って迷惑だ!〜御神苗優vsシグモンドvs???
俺、御神苗優は、修学旅行で京都に来ている。
初めての電車での国内移動、しかもそれが初めての修学旅行の俺は、
多少どころじゃなく浮かれていた。
久々の休日を思いっきり堪能するつもりだった。
それを邪魔する奴はなんぴとたりとも許さん!!
そういう不退転の決意をもって・・・・・・
だが、その決意も、運命には勝てなかったみてぇだ。
自由行動になってからこっち、
俺の周囲に付きまとう、微妙な殺気・・・・・・
なんなんだよ、調子が狂いっぱなしだ。
冗談じゃねぇ、俺は修学旅行中だぞ!
闘争開始!
>443 vsアルバ エピローグ
血を与えはしない。吸うだけだ。
赤い男の血は、酷く不味い。
だが、総じて男の血とは不味いものだ。
むしろ、美味しかったほうが気持ち悪いと解釈する者いる。
かくして、オレと男は紅蓮の炎で一体となり、その炎を男の鮮血で静めた。
炎が消え静まるそのときには、既に男は灰となり、
フロアには四季ただ一人が佇んでいる。
否、「一人」では無い。
オレはフロアの中央にあるエレベーターを見据える。
一階で止まっているはずのそれが、動き始めた。
何奴か? 知る必要は無い。
大方、このマンションの主か何かだろう。
ハ、良いぜ。コロシテヤルよ。
今日はまだ、3人(人形無視)しか殺ってねー。
テメェを殺して……死人番号は頂きだ!! ヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒ!!
そして、扉は開かれる。
――――Round2 Fight
遠野四季vsコルネリウス・アルバのレス番まとめさ。
……なんだ、言いたいことがあるならいえよ。
>426>428>429>430>431>433>434>437>442>443
>448
俺の名は本庄。
燦月製薬・・・・・・・・いやイノヴェルチに雇われた狗だ。
お前らの知るところでは、逃げた御姫様の”食べ歩き”の残飯を
探し出して掃除する仕事をしていたな。覚えているだろ?
任務は当然あれだけではないがな。まったく、骨が折れるぜ。
そうだな。俺流の仕事のやり方を教えとくか。
これは組織の決まりだが・・・・・・・・ツー・マン・セルで行動する。
宛がわれた化物の相棒が一人、俺が一人。
たいてい相棒は血の気の多い奴だからな。俺は抑える役さ。
次、武装は抑える事。民間人に知られちゃ不味いんだ。上の存在はな。
だから、俺に宛がわれる武装はちゃちなもんさ。ナイフ、拳銃、軽機関銃。
まあ、それでも仕事はやりぬくがな。それがプロってもんだ。
さて・・・・・・・・・そろそろ行くか。
出典 :吸血殲鬼ヴェドゴニア
名前 :本庄。字みたいなもんだ。名前は捨てた。
年齢 :犬に年齢はいらん。死んだら捨てられるだけだ。
性別 :男
職業 :燦月製薬所属。あとは秘密だ。当然だな。
趣味 :無い。猟犬に必要な事だと思うか?
恋人の有無 :あればこんな仕事から足を洗ってるさ。
好きな異性のタイプ :犬とは言っても、そんな下らん事に気をかまける馬鹿犬じゃないな。
好きな食べ物 :犬は何でも喰うもんだぞ?喰わせればな。
最近気になること :リャノーンの吸い殻。
一番苦手なもの :上の連中には頭が上がらんな。あと、サメンギャー。生臭いからな。
得意な技 :殺すことだ。一応これでも猟犬だ。
一番の決めゼリフ :『悪く思うなよ、ボウヤ』
将来の夢 :片田舎に自分の家でも建ててのんびり暮らしたいところだ。所詮は夢に過ぎないがな。
ここの住人として一言 :プロがやる仕事っていう物を教えてやる。
ここの仲間たちに一言 :仲間?そんな者が俺にいると思うか?
ここの名無しに一言 :見ていてもらっても困るんだがな。口封じにいくかもしれないぜ?
―――俺が知っている事は三つ。
一つ、三ヶ月前、突然送られてきたこの銃とリスト。
二つ、リストに載っている奴を仕留めれば莫大な報酬がくる事。
三つ、リストに載っている奴らはバケモノだという事。
日本という国は酷く暑い。
ロングコートを着た俺は少し人目を引いているようだ。
標的である男―――御神苗優。
一見ハイスクールの学生に見えるが、
その実、アーカム財団の超A級エージェント、
『スプリガン』であるのは事前に調べていた。
現在ストーキングをしているが…。
距離は10m。
標準的なヤツなら気付かれにくいが…。
この状態ではもう少し距離を開けたほうがいいだろう。
まずは…軽く誘いをかけてみる。
わざと奴の前を歩き、引き離す。
はっきり言って迷惑だ!〜御神苗優vsシグモンドvs???
>451 シグモンド
俺は寺の中を見学しながら、周囲に気を配る。
しかし、なんなんだよ、ホントに。
どうにも感覚が狂って、相手の位置がつかめねぇ・・・・・・
友人たちと談笑はしていたが、正直、頭を抱えたかい気持ちだった。
その時、ソイツは現れた。
春たけなわだってのに黒いロングコートを着た男。
これ見よがしに現れた奴は、俺の横を通り過ぎると、
足早に去っていく。
・・・・・・運命は俺に安息を与えてくれねぇのか・・・・・・
俺は内心嘆息をつくと、友人たちと離れ、奴の尾行を開始した。
相手が誰だかしらねぇが、なんぴとたりとも俺の邪魔をすることは許さん!
俺は修学旅行にきてるんだ!
>445 vs アルクェイド 『企業の論理』
崩れ落ちた瓦礫の山の中、全身血塗れ身体を見て思う。
「……不様、なんて不様な姿かしら」
かつて返り血一つ受けずに数十体の堕ちた真祖を狩り尽くしたのに。
ただの死徒だと油断した?
これが誰かの罠なのは間違いない、それが埋葬機関じゃないのは間違いない。
連中の中に近代兵器を使うのはシエルだけだ。
だが……。
不意に身体に衝撃が走り、思考が中断される。
不気味なほど正確な射撃が正確にわたしの心臓に叩きつけられる。
一体何処から!?
軽く百メートル以上先に人間が二人見える。
一人はわたしを撃った男だろう、もう一人は…鎧?
「まあ良いわ、せっかくの歓迎だもの挨拶をしないとね」
瓦礫を払いのけ、跳躍する。
この程度の距離はわたしには無意味だ、思い知ってもらおう。
わたしに手を出した代償がどれほど高くつくのかを!!
撃ちこまれる銃弾を手刀で弾きながら、僅か数秒で男達のもとに辿りつく。
「貴方がこの悪趣味な歓迎のホスト?…良い度胸ね」
「喜んでいただけて、何より」
男は無表情にそして不敵に返す。
「そう、覚悟は出来ている訳ね…」
先ずはこの男に悪趣味な歓迎の責任を問ってもらおう。
男の肩を狙い左手を軽く振り上げ…そして振り下ろしす。
これでこの人間は無力化するはず。
その後で、誰の差し金かを聞き出せばいい。
エリvsマッカーチス
『another mission』
>424
あたしの目の前でメタルスラッグが真っ二つになった。
切断面から零れ落ちる砲弾や電子機器・・・。
「捕まったらあたしがああなるのか・・・」
身震いして機動兵器を見るとビーム砲をこっちに向けていた。
「ッ!」
大急ぎで遮蔽物から駆け出す。駆けながらレーザーを撃ち込み、ビーム砲を破壊した。
と、同時に弾が切れた。
「チィッ!」
グレネードを放り投げ攪乱する。
空になったカートリッジを落とし、次を装填する。
ショットガンだ。コッキングレバーを操作して初弾を送り込む。
「く、腹の下にもぐりこめば・・・やれるか?」
◆御神苗優vsシグモンドvs???◆
>452御神苗
誘いには乗ってくれたようだ。
友人と談笑しているヤツは本当に只のハイスクールの学生に見えたが、
狙いに気付き、尾行を掛けてくる手際はプロであるとオレを確信させた。
調べておいた場所まではもう少し。
だが…、この土地は微妙にカンが狂う。
余計な奴らを連れてきても分らないかも知れん。
「やれやれだ…」
sigh...
小さく息をつき、奥の方へと誘い込む。
この辺でいいだろう。
「御神苗優で間違いないか?」
そう、声をかけた。
18章 >472 >502
前スレ >50 玲二
アーカードvsファントム
サイトの向こう、炎が赤いコートの男を照らし出す。
予期せぬ状況の変化に、僅かながら焦燥が生まれる。
なぜなら、炎による熱は空気の流れを乱し、狙撃に悪影響を及ぼす為だ。
『落ち着きなさい……焦っては、ダメ』
男の身体能力から考えて、不意を討てるのは、恐らく一発。
この一撃、外す訳にはいかない。
再び頭の中に、声が響く。
『撃て』と。―――アーカードを撃て、と。
意識が徐々に透明になっていき、銃と私の境界が曖昧になる。
サイトが私の目となり、銃身が私の腕になる。
呼吸が、深く遅くなる。
勝負は一撃――――ただ、一撃。
>411>416 淫藤宗光/ヒトラーvs竜崎天馬(M)&檀隼人(M)「ヴァレンシュタイン作戦」
空間それ自体をシンバルの如く打ち鳴らす呪詛の大音響。頭蓋と脳髄と、そして精神の奥底までを
揺する魔の波動に耐え、隼人は歯を食い縛り、調息を整えた。
その隣りで一刀を構えた天馬が咆哮する。視界に入れただけで網膜を切り裂きそうな陸奥守流星、
その鋭さよ、煌きよ。
あれは――何という潜在能力を秘めた武器だ。それを操るあの男もまた。
賛嘆の想いとともに、隼人は『気』を発する源である丹田へ力を凝集した。
両眼をカッと見開き、叫ぶ。
「いええええええええっ」
突き出した右の掌底から、と言うより隼人の全身から目も眩む様な閃光が迸った。
それは天馬の振るった剣光と渾然一体となり、周囲に群がる悪霊を飲み込んでいく。
剣気一如と化した奔流は、嘗て鉤十字の紋章を以って世界に牙を剥いた狼たちを、
全て白光の彼方へと追いやった。
光が過ぎ去った後、二人を拘束していた髪のうねりはことごとく床を這い、吸い込まれる様に
姿を消す。
荒い息を一つ吐いてから、隼人は同じく肩で息をしている天馬へと向き直った。
「――行くか。もうこの先は一本道のようだ」
いずこの世界で見知った知識か、隼人の脳裡にはグラーフ・ツェペリンの艦内図が収められていた。
先に立ち歩を進めるその顔は幾分蒼ざめている。
『転校生』と言えど、無尽蔵に『気』を連発出来はしない。身体に『気』を貯めるまで、
暫くの時間が必要なのであった。
回廊の先、戦艦には有り得ぬ大仰な扉の前に二人は立った。
洩れ出る邪気と妖気に顔をしかめ、隼人は巨大な扉を押し開ける。
さて……私も、正式参戦しておきましょう。今までも何度か、貴方がたの
前に姿を見せましたが…。
今晩は(グーデン・アーベント)、皆さん。私は、イザーク。イザーク・
フェルナンド・フォン・ケンプファー。薔薇十字騎士団位階9=2(メイガス)、
称号”機械仕掛の魔道士”―――単に”魔術師”でも構いませんがね。
私は「あの方」に仕えし忠実な下僕。薔薇十字騎士団の行動理念と共に、
私は有ります。その障害となるならば、いかなる存在も――
排除して差し上げましょう。
出典 :トリニティ・ブラッド
名前 :イザーク・フォン・フェルナンド・ケンプファー
年齢 :さてね。
性別 :男
職業 :薔薇十字騎士団幹部
趣味 :人造生命体の開発
恋人の有無 :必要有りませんね。
好きな異性のタイプ :美しい方です。
好きな食べ物 :人肉です。―――嘘ですよ。
最近気になること :アベル・ナイトロード…彼は非常に興味深い。
一番苦手なもの :特に有りません。
得意な技 :”魔術”―そう言っておきましょうか。
一番の決めゼリフ :”この優しき夜、星の精に囲まれて、いざ王座の月の女王顕れなん。
されど、地上には光なく”―――キーツ。
将来の夢 :”我等、炎によりて世界を更新せん”
ここの住人として一言 :せいぜい、足掻くことですね。
ここの仲間たちに一言 :仲間? 何でしょうかね、それは。
ここの名無しに一言 :とくと御覧ください、世界が炎に包まれる様を――
闘争中、失礼しましたね。
>453 vs アルクェイド 『企業の論理』
閑散としたビル街――――だった、一角。
今は廃ビルと倒壊した瓦礫に囲まれ、硝煙と微かな熱気を帯びた「戦場」と化していた。
急速に迫るアルクェイド。
直線的に迫る姿にフルオートを叩き込むものの、正面からの射撃はすべてを”手”で止められた。
そもそも運動能力も反射速度も、人とは比べ物にならないのだ。
この程度はまだ、予想の範囲内。
振り上げられた左腕を視認すると、紫雲は強化反射神経により加速した。
投薬と電気刺激が意識を、肉体を極限の速度に押し上げる。
人間を遙かに超越した一撃も、今の紫雲には人とさして変わらない。
飛び退き、離脱。
振り下ろされた左手は軽くアーマージャケットの一部を切り裂いただけで終わった。
加速し、十数メートルの距離を稼ぐと、アルクェイドではなくその足下へ銃弾を斉射。
瓦礫が飛び散り、視界を覆う中に素早く手榴弾を投擲・・・信管が作動し、即座に破裂した。
ミラーシェードの向こう側で轟音と閃光が踊る。
二重の煙幕に隠れながら、紫雲はさらに距離を取りつつ、マシンガンの射撃を続けた。
牽制にもならない頼りないマメ鉄砲を振るいつつ、紫雲の足はあの戦術魔法士の元へ向かう。
今は、この場から移動しないと――――
はっきり言って迷惑だ!〜御神苗優vsシグモンドvs???
>455 シグモンド
京都には路地(ろうじ、と読むんだそうだ)が多い。
奴は俺を誘き出すように、とある路地へと姿を消した。
後を追い、俺も路地へと足を向ける。
路地の奥に、奴はいた。
黒コート、黒の長髪をポニーテール風に纏めている男。
ソイツは、ゆっくりと口を開いた。
『御神苗優で間違いないか?』
・・・・・・俺は内心で嘆息をつきながら、面倒くさそうに答えた。
「あぁ、そうだよ?サインはお断りだし、それに今は修学旅行中なんでね。
ちゃっちゃと終わらしてくれるとありがたいね。―――どうせろくな用事じゃねぇんだろ?」
俺はいつでも動けるように体を微妙に動かしながら、
奴の反応を見ている。
ここまで近寄ればわかる。こいつは相当の手練だと。
まったく、俺に安息の日ってのは何時来るんだ――――
そんな馬鹿げたことを考えながら、俺は奴の出方を観察していた。
“超純粋”幽祢vs“光の導き手”エミリオ(14歳ver)
夢幻歳華外伝
『よわむしなんてだいきらい』
〜エピローグ:2〜
>446
気が付くと、僕は街角にいた。
何かに怯えて、彷徨っていたあの場所。誰かと出会い、気を失うような思いをした場所。
でも、何に怯えていたのか、どんな体験をしたのか、全く思い出せない。
夢でも見てたんだろうか。そう思いながら、はっきりしない頭を何度か振ってみた。
状況は、あまり変わらない。
「…ミリオ〜!」
聞き慣れた声が、僕の背後から聞こえてきた。ウェンディーの声。
「ウェンディー…?」
声のした方を見る。ウェンディーが息を切らせて走ってくるのが見えた。
「良かった…探したのよ」
ウェンディーはそう言って、僕を抱きしめた。
まだぼんやりしている頭に、誰かの言った言葉が蘇ってくる。
『貴方の前に、きっと力を持った人が現れると思うんだ。
その人を―――――殺しなさい。何があっても、ね』
殺す…力を持った人を――殺す。
「ウェンディー…」
僕はウェンディーから離れ、光で作り出した弓矢を、静かに彼女に向けて引き絞った。
「殺さなきゃ…力を持った人を…僕は、殺さなきゃ…」
「エミリオ!? どうして…」
訳が分からない。そんな表情で僕を見つめる。
「殺さなきゃ…ならないんだ。何があっても…誰であっても…」
限界まで引き絞った弦から手を放し、矢を放った。慌てて矢を躱すウェンディー。
「だから…じっとしててよ…。すぐに済むからさぁ…」
くすくす笑いながら、次の矢をつがえる。
僕のその笑い声は――――驚くほど、誰かに似ていた。
The END
◆御神苗優vsシグモンドvs???◆
>460御神苗
『あぁ、そうだよ?サインはお断りだし、それに今は修学旅行中なんでね。
ちゃっちゃと終わらしてくれるとありがたいね。―――どうせろくな用事じゃねぇんだろ?』
そう、ヤツは言った。
気軽に言ってはいるが、全身はいつでも動けるように待機している。
「ああ、手早く済まそう」
抜き撃ちでSIGSAUERを撃ち込む。
音が周囲に漏れるとヤバイのでサイレンサーは特注品だがつけてある。
―――この間合いなら、外さない。
そう、オレは確信した。
だが、京都の妖気を舐めていたようだった。
はっきり言って迷惑だ!〜御神苗優vsシグモンドvs???
>462 シグモンド
『ああ、手早く済まそう』
奴は言うが早いか、俺も愛用してるSAUERをぶっ放してきた。
手早すぎるぜ、おい!!いきなり街中で発砲かよ―――
俺はすぐさま行動に移った。
路地の壁に体をぶつける様にして拳銃弾を避けると、
一気に間合いを詰め、奴の手に納まっている拳銃を蹴り上げる。
放物線を描いて後方に飛んでいく拳銃が地面につくよりも早く、
俺は奴にケンカキックを叩き込むと路地の出口に向かって駆けた。
逃げるんじゃねぇ、とか言うなよ?
冗談じゃねぇ、こっちは無手だ、相手が何の獲物持ってるかもわからねぇのに、
戦えるかってんだ。文句言うならお前がやれ!
>459 vsアルクェイド
「――なんと、まあ……」
ほぼ一息で、紫雲に肉薄したその動きを見て――実際には視認出来なかったのだが――
彼は、呆れたように声を上げた。魔力計には、如何なる反応も検出されていない。
つまる所、何かの術を使ったという訳でもないようだった。
ニヤリ――と笑みを浮かべて、胸中で納得の言葉を吐き出す。
(なるほど――確かに、まともな生き物じゃないみたいだな)
振り返りつつ、手にした巨大な機械――スタッフを構えた。ごきん……という金属音が響いたが、
それは突如発生した銃声に掻き消された。
紫雲が、発砲を続けながらこちらへと向かってきている。
と、その一瞬後――アルクェイドを包む込むように、轟音と閃光が生まれた。それを認識すると同時、
よどんだ空気を切り裂くように、彼は鋭く、声を上げる。
「――顕っ!」
撃発音声。瞬間――小型の爆弾に匹敵する爆発的な力が、アルクェイドの内部から一気に弾けていた。
発現点を体内に設定された<ブラスト>が炸裂する――!
淫藤宗光/ヒトラーvs竜崎天馬(M)&檀隼人(M)「ヴァレンシュタイン作戦」
>411 >457
巨大な扉の内部は、何らかの聖堂らしき大広間であった。
しかしその広大さは、あきらかにグラーフ・ツェッペリンが三台は並べられそうな
広大さである。おそらく、この大広間も異空間の一つなのだろう。
二人は知らぬことだが、この大広間は、完成の暁にはギザのピラミッドの
数倍の規模を誇り38万人を収容可能だった幻の帝国大聖堂クッペル・ハレを
模したものであった。
しかし、その内部に飾られた石像たちは人頭の龍ケマトリエル、黒い巨人ザミエル、
昆虫人のごときゴチエルといった地獄の魔王たちばかりであった。
聖堂の奥にわだかまる闇から、軽快なエンジン音とともに、
十台のBMWR−75オートバイに乗った亡霊武装SSどもが姿を現した。
鋼鉄の死馬を駆るドクロの騎士たちは、隼人と天馬に向け7.92ミリ機銃を
乱射しつつ、三十六式軽てき弾筒を投げつける。
(>465の修正)
>459 vsアルクェイド
「――なんと、まあ……」
ほぼ一息で、紫雲に肉薄したその動きを見て――実際には視認出来なかったのだが――
彼は、呆れたように声を上げた。魔力計には、如何なる反応も検出されていない。
つまる所、何かの術を使ったという訳でもないようだった。
ニヤリ――と笑みを浮かべて、胸中で納得の言葉を吐き出す。
(なるほど――確かに、まともな生き物じゃないみたいだな)
振り返りつつ、手にした巨大な機械――スタッフを構えた。ごきん……という金属音が響いたが、
それは突如発生した銃声に掻き消された。
紫雲が、発砲を続けながらこちらへと向かってきている。
と、その一瞬後――アルクェイドを包む込むように、轟音と閃光が生まれた。それを認識すると同時、
よどんだ空気を切り裂くように、彼は鋭く、声を上げる。
「――顕っ!」
撃発音声。瞬間――魔法が発動する。それ自体が小型爆弾並みの破壊力を持つ、<ブラスト>――
「第一の業火」と呼ばれるその魔法は、まっすぐに、閃光の中で動きを止めている彼女に襲いかかった。
◆御神苗優vsシグモンドvs???◆
>464御神苗
京都の妖気か、微妙に狙いが逸れていた。
狙った銃弾は反射的に動いたヤツに当たる事無く避けられた。
素人でも出さないようなケンカキックを受け、ヤツは路地へと消えた。
「逃げられたか…。しかし、長引きそうだな…」
sigh...
小さく息をつくと銃を拾い、コートに収めると追跡を開始した。
何処に行くかは分っている。
だが、気づかれないように進めなければならない。
京都の妖気がまた、新たなるバケモノを呼び寄せている事に、
オレは気付く術は無かった…。
>417続き 桐原朝子VS南条圭
全てを切り裂いて、赤い闇よりもなお赤い光が走って光景を一転させる。
高速道路、三台並んで走ってくるのは桐原家の家族旅行。
人の形をした朝子の殺意が車に襲いかかる。
父の、母の首を落とし、エンジンを一閃する。
次の車へ移動し、兄の手と首を切り落とし――後部座席の妻と子供達もそのまま見殺しにした。
ガソリンタンクに切れ目を入れて、最後の車へ移動する。
事務的といっていいほど無感動に、滞りなく事は運んだ。
先頭の車を最初に手掛けていれば、事はもっと簡単に済んだだろう。
だが、朝子は脅える家族が最後にどんな顔で何を言うのか知りたかったのだ。
結局、純粋な恐怖の表情と悲鳴以外に朝子が得られたモノはなかったが。
玉突き衝突、炎上。
空虚な気持ちだけが残った。
車を離れる寸前に剣士の方を見ていた甥っ子の目が、まだこちらを見ている様な気がした。
それでも、海外にいる次兄の居場所を確かめる。
どんなに距離が離れていても関係ない。
海外で、学会の合間に羽を伸ばす次兄を、路地裏に追い詰めて刻んだ。
胸に残った空虚な部分が、さらに膨れあがったようだった。
そして、止まらなくなっていったのだ。
『――お父様も、お母様も、お兄さんも、みんなあたしの事を本当に愛してはくれなかった。
誰も愛してくれなかった。
……みんながあたしをちゃんと愛してくれれば、こんな事にはならなかったのよ!』
赤い闇の中に浮いている小さな白い人影。
それは桐原朝子ではあるが、南条の知っている彼女のようでもあり、今しがた見た少女の面影がだぶっているようでもある。
『――あたしは……みんなに愛されたかっただけなのに……みんなが悪いのよ!』
親から愛されていないと感じ、それは自分の能力が足りない為だ、自分に愛される資格がないからだと納得してしまったら……。
その後の人生は、どんな苦しみの連続になるだろう。
小さな人影が南条の方を向く。
泣きはらした目、何度も涙を拭ったのだろうか、こすれて赤くなったほっぺた。
『――嫌いよ。みんな嫌いよ。あなたも大嫌い、あたしも大嫌い!』
膝を抱え、背中を丸めた朝子がくるくると回り始める。
光の粉をまき散らしながら、朝子は小さくなっていく。
『――いなくなってしまえばいいのよ!』
濁流に落ちたひとひらの雪のように、朝子は自分の白さを失い、周囲に溶けて消えていった。
憎悪と嫌悪と哀しみの赤い闇に光が差し込んだ。
だが、それは希望と喜びを意味するのではなく、闇の帳を必要とした魂が消滅したため。
赤い闇が、晴れていく――。
>466 淫藤宗光/ヒトラーvs竜崎天馬(M)&檀隼人(M)「ヴァレンシュタイン作戦」
「何だよ、これ・・・」
扉を開くと、グラーフ・ツェッペリンの中にも関わらず、広大な広間が目の前に広がる。
空間がねじ曲がっているのか、まさにここは魔境。
そして、中には異形の石像たち。
「趣味、わりぃな・・・」
顔をしかめながら呟く。
どことなく子供じみたその仕草は、先程までの戦いの時とはまるで違って見える。
しかし、広間の奥から響くエンジン音を聞き、その顔が一瞬で引き締まる。
現れたのはバイクに乗った亡霊ども。
機銃を乱射し、擲弾筒を打ってくる。
「どわぁぁぁぁ!」
慌ててそばの石像の陰に隠れる。
機銃はともかく、擲弾筒は厄介だ。
かといってこのまま隠れていても埒があかない。
ならば・・・
「どぉぉぉぉりゃぁぁぁぁぁぁ!!!」
かけ声と共に、隠れていた石像を蹴り倒す。
ゆっくりと傾ぎながら倒れる石像。
亡霊どもの間にもさすがに動揺が走る。
その隙をつき、石像の影から、飛び出して斬りかかる!
「まずは、一つ!」
斬光一閃、亡霊兵士が斬られて塵に帰る。
返す刀で、もう一人も塵に帰す。
機銃の照準がこちらを向いているのを確認する。
一瞬身を屈め、次の瞬間ゴム毬のように、跳ねる。
目標を失った機銃が空しい音を立てる。
「三つめ、四つめ!」
再び、斬光。
――そう、達人たる天馬の前では、亡霊兵士など、遅るるに足らず。
>469続き 桐原朝子VS南条圭
時間にすれば、ほぼゼロだったに違いない。
南条の剣が朝子の剣をいなし、互いにすれ違う。
いぶし銀のヴェールが、車のフロントガラスの様に粒状に砕けて消える。
朝子の頭上で緑色の光輪が輝く。
体を包む銀の曲面に輝く線が縦横に走る。
線で区切られた曲面は、細かな銀の薄膜となって朝子の体から浮き上がり、消滅した。
朝子は、コンクリートの床にぺったりと座りこんでいる。
鼓動は正確に脈を打ち、呼吸も規則正しい。
だが、それ以外の反応は皆無だ。
朝子の黒い瞳に、魂の輝きはなかった。
父を嫌い、母を嫌悪し、兄たちを呪った朝子。
自分の仕事を、職場を、住む町を憎んだ朝子。
それらを殺し、あるいは滅ぼそうとして剣を振るった挙げ句、ついには誰よりも嫌いだった自分を消してしまったのだ。
胸元には、朝子に復讐の力を与えた、今や黒焦げのブローチ。
それだけが、力を振るった証明。
戦いは、哀しみは終わった。
◆御神苗優vsシグモンドvs・・・緑川淳司◆
〜緑川淳司、乱入〜
>464>468
「良い天気だなぁ・・・」
古い街並を眺め歩きながら淳司はそう呟いた。
先日、京都に住む彼の友人に呼ばれた淳司は無事に用を済ませた後も一泊泊めてもらい、
今日は朝から京都中を回っていた。
せっかく来たのだから見て回らなければ損、というやつである。
しかし勿論、この時の淳司はこの後事件に巻き込まれるとは思ってもいなかった。
「ありがとうございました〜」
雰囲気のよかった喫茶店から出た淳司にいきなり修学旅行中らしい学生がぶつかってきた。
彼はぶつかった事を詫びるとまたあわてて駆け出していった。
それを見送ると落としてしまった財布を拾おうと地面にしゃがもうとする。
しかし後から「邪魔だ」という声が聞こえたと思うと彼は押しのけられてしまった。
そして淳司を押しのけたその男はそのまま通り過ぎていってしまった。
いつもの淳司ならそのまま内心悪態をつくだけだろう。
しかし今日の彼は久しぶりに来た京都を楽しんでいたところを邪魔されたのだ。
(ここまでの気分が台無しだ。)
一言でも良い、ぶつかった男に謝ってもらいたかった。
そう思った淳司は財布を拾い、そのまま男を追いかけて言った。
>467 レイオット&紫雲 vs アルクェイド 『企業の論理』
並みの人間じゃない!?
人間の動きでは絶対にかわせない筈の爪を避け、更に銃弾をばら撒き、
わたしの動きを止めながら距離を取る。
追撃、そして閃光。
同時に襲ってくるのは、灼熱の爆炎。
爆圧に弾き飛ばされ、廃墟の壁に叩きつけれる。
熱い、痛い、何より身体を何かに犯されるおぞましい感覚!!
もう一人の鎧の男か…この力は戦術魔法と呼ばれている技術。
世界を犯し事象を世界に上書きする力…それをわたしに使うとなんて。
―― なんて不遜、なんて愚か、なんて屈辱!! ――
この人間達は、人の規格を超えている。
そして、敵意を持ってわたしに牙を向けてくる、ならば…。
――― わたしも敬意をもって殺すべきだろう ―――
頭から余分なモノが消えていく、熱い怒りと冷たい思考が同時に入り混じる奇妙な感覚。
昔は怒りなど持っていなかった、ただひたすら冷たい思考だけがあった。
だが今は違う、それが嬉しい、それが楽しい。
だから金色の魔眼と薄い微笑を顔に張りつけ、彼等に見せてやろう。
真祖の本当の力を。
体内に『世界』から力が流れこむ、世界と繋がっている限りわたしに出来ない事はない。
身体能力が無制限に上がり続けるのが実感できる。
―― だって、逃げていく男が止まって見える ――
次の魔法士の一撃がより先に、わたしの手が人間の首を後ろから掴んでいた。
「遅いわね、貴方の限界はその程度?」
わたしの言葉が聞こえた訳でもないだろうけど、二人は一瞬で反応した。
人間としては神速の反応だが、わたしには無意味。
…だから、そのまま魔法士に叩きつけた。
「じゃあ、そろそろ死んで」
並みの人間なら十分即死できるだけの力、この二人はどうだろう?
まさかこれで終わりではないでしょうね。
>466>470 淫藤宗光/ヒトラーvs竜崎天馬(M)&檀隼人(M)「ヴァレンシュタイン作戦」
鉄の騎馬兵たちが放つ銃声は、澱んだ大気を熱く刻み込んで二人を追撃する。
投げ付けられた手榴弾が手近の石像で爆発した。盛大に降り注ぐ石の飛沫を避けながら、隼人は
宙へと躍り上がる。
脇の半魚神ダゴン像を蹴る勢いもそのままに、迫るバイクへ蹴りを叩き入れた。『気』の秘術を
極めた隼人の手足は、外へと放つ『硬気』に頼らずして魔怪邪霊を討ち砕くのである。
亡霊兵士は腰の辺りで二つに千切れ飛んだ。主を失ったバイクは横転する。
「五つ」
止まらぬ余勢を駆って、隼人は吸血神チャウグナル・ファウグン像の裏手へと走り込んだ。
その後を銃火を閃かせつつ一機のバイクが追う。
バイクが像の背後に入り込もうとしたその瞬間、影から振るわれた隼人の裏拳は、兵士の顔面を
破砕していた。
「六つ」
呟く隼人の頭上に影が落ちる。雷瞬、跳んだ隼人は投擲された手榴弾を掴み取り、投げた本人たちへ
投げ返した。
彼方から響き渡る爆発音。
「七つ、八つ」
着地しざまに回転する身体から放たれた後ろ廻し蹴りは、側を駆け抜けようとしたバイク諸共、
亡霊を吹き飛ばした。
向こうで五人目を両断した天馬に笑いかける。
「九つ、そして十という訳だ」
◆御神苗優vsシグモンドvs緑川淳司◆
>472緑川
焦らず、歩いてゆく。
向こうの行く先は分っている。
最低限見失ければいい。
途中、男がしゃがみこむ。
「邪魔だ」
そう押しのけて追跡を続行する。
(命中させられなくて苛立っているのか?)
そう自問する。
そうかも知れん。
油断をしていたのは否定できん。
だから―――必ず、仕留める。
この時、もう少し京都の妖気を警戒すべきだったが…。
新たなバケモノを敵に回した事に気付く間もなく、
バスに乗って移動するヤツを追う事にした。
「しかし、キョウトは…暑いな…」
そう思いつつコートをタクシーの中で脱ぐ。
はっきり言って迷惑だ!〜御神苗優vsシグモンドvs緑川淳司
>472 緑川 >475 シグモンド
男を蹴り飛ばした俺は、脱兎のごとく路地から逃げ出した。
今の俺は、一応は高校生。しかも修学旅行中だ。
無闇な行動をとるわけにゃいかねぇ。
しかも、そろそろ次の集合場所へいかねぇと、
集合時間に間に合わなくなっちまう!
脱兎のごとく飛び出した俺は、喫茶店から出てきた、
眼鏡の若い男と鉢合わせちまった。
全速で走ってた俺が止めれるはずもない。
思いっきりぶつかっちまった。
俺はぶつかったことを詫びると、すぐさまバス停へと移動する。
次の集合場所は清水寺。
―――のんびりと寺見物してる場合じゃないが、
この際仕方ない。みんなに迷惑かけねぇよぅ、
少しはなれたところで様子を見よう。
そう考えながら、運良くきた清水行きのバスに飛び乗った。
>473 vs アルクェイド 『企業の論理』
極限まで高められた反射神経でも追い切れない、出鱈目な速度。
気付けば首を掴まれ、レイオット向けて投げつけられる。
まるで子供が小石でも投げるかのように、無造作で無遠慮で無邪気な投擲。
堪らず、手にしたイングラムバリアントを瓦礫に引っかける。
圧倒的な運動エネルギーに鋼鉄の銃身が軋み、曲がった。
それでもなお、紫雲の体は慣性を殺せずに飛び続ける。
そして、激突――――
骨格が悲鳴を上げ、皮膚装甲が裂ける。鋼鉄の塊に近い魔法士も、
今の一撃で横転した。
拙い、まさかこれほど力の差があるとは。
体勢を瞬間で立て直すと、ミラーシェードに仕込まれた無線を接続。
シャーマンによる支援を要請・・・都市精霊、と呼ばれるモノが力を行使して、
紫雲とレイオットの存在を辺りの風景と同化させた。
都市精霊特有の「隠匿」の能力――だが気付かれるまで、長い時間は掛かるまい。
その間に・・・紫雲は次の作戦ポイント向けて、魔法士を促しながら急いだ。
◆御神苗優vsシグモンドvs緑川淳司◆
>475 シグモンド >476 御神苗優
「あっ・・・」
淳司が追いかけていた男は彼の目の前でタクシーに乗りこんでしまった。
ここで引き返せばこの後面倒な事に巻き込まれる事はなかったのだろうが
今日の淳司は何故か頑固だった。
先ほどの喫茶店の店先に向かい、レンタルしてあったマウンテンバイクにまたがる。
そして淳司は男の乗ったタクシーを追い始めた。
この時間は道が込んでいたらしく何とかタクシーを途中までは追いかける事ができた。
しかし、いくら淳司が吸血鬼であったとしても全力に近い速度で長時間走る事はできない。
タクシーを見失ってしまう。
(…俺は何をやってるんだ?)
タクシーを見失い自転車を止めた淳司は思った。
よく考えれば―むかつきはするが―よくあることだし、そこまで目くじらを立てることもないだろう。
そう思った淳司は観光を続けることにする。しかし……
(……ここ、どこだ。)
タクシーにだけ集中していたせいで淳司にはここがどこだか分からなくなっていた。
肩から掛けていたバックから地図―観光用の物だ―を取り出し、あたりを見渡してみる。
(……清水寺の近くか)
せっかく来たのだし、と淳司は清水寺に寄ってみる事にした。
遠野四季vsコルネリウス・アルバのレス番まとめさ。
失敗したな。訂正だ。
>426>428>429>430>431>432>433>434>437>442
>443>448
エリvsマッカーチス 『another mission』
>454
今まさに死の光を放とうとした砲身の片方が歪み、ねじれていった。
エリの放ったレーザーショットの仕業だ。
次の瞬間にはもう一方の砲身も同様に破壊された。
「ギエイイイイン!」
怒りの声にも聞こえる唸りをあげ突進しようとしたマッカーチスの足元に、
数個のグレネードが転がり炸裂した。
激しい戦闘で強度が限界に達していたのだろうか、八本の脚のうち二本がちぎれ飛んだ。
しかし、脚の数が減っているにもかかわらず鋼鉄の怪物の勢いは一向に衰えない。
人間を殺すにはあまりに過剰な質量の鋏が、エリめがけて突き出された。
>425 vsユージン
「け、けけけけええええ! おにいちゃああああん……どおこにいい、いくのおおお?」
けたけたと上機嫌に笑いながら、魔族はユージンに向かいゆっくりと歩き出した。
思惑通り、腕を潰したら、彼は綺麗な声で啼いてくれた。とてもとても嬉しい。
だが――まだ、足りない。
(これじゃ、まだ面白くない。今度は、どうしよう? 一体どこを潰せば。
どこを切り刻めば。また綺麗に啼いてくれるかな? どうすれば楽しくなるんだろう?)
ぽと、と音を立てて、潰れた肉の塊となった腕が、上から重力に従い落ちてくる。
正面には、だらだらと血液を垂れ流しているユージンの姿。入り口に向かい、ただ走り続ける彼を見て。
魔族は、また何かを思いつく。
そうだ――今度は、脚にしよう。
(下から順番に、ハムのようにスライスしよう。切り立てのハムは、彼にご馳走してあげよう。
きっといい声で啼いてくれるに違いない――)
その自らの思いつきに満足した魔族は、意識を走り続ける彼の左足に向けて照準した。
即座に体内に魔法回路を組み上げ――――
「ほおおおおおおおおおっ――――!」
魔法発動。瞬間的に活性化した魔力圏は、ユージンの右足に纏まりつき――魔族の意志を具現化せんと、
不可視の刃を無数に顕現させる。
ユージンの正面には、扉を開けて彼を待て散る入り口が、あと数歩と言った距離にまで迫っていた。
>481 vs魔族
――――5
「液体燃料の類を――」
(単純だな……)
にやりと、唇を歪める。
(逃げようとすれば……足を止めに来ると思った――よッ!)
力の限り、床を蹴る。
――――4
「大気中にミスト状に散布し、空気と混交させ――」
浮いた体に追いすがるように、螺旋を紡ぐ不可視の鞭。
「うあっ……!」
足を刻む、無数の刃。
……だが、切断には至っていない。
そのままぼくの身体は半回転して――罅割れた強化プラスチックをぶち破り、
研究室へと転がり込む。
――――3
尖った破片が背中に余すところなく突き刺さり、ずたずたに肌を裂くが、
それよりも酷いのは肋骨の刺さった肺だ。
込み上げる血が喉に詰まって、息が出来ない。
もっとも単純で、深い責め苦。
――だが、急いで詰めを……
――――2
「……発火、させれば、凄まじい爆発と、それに伴う酸素消滅、気圧による内臓破裂――」
ずりずりと……這って身体を進ませる。
コンソールパネルに手を伸ばし、……シャッターを降ろすスイッチを……
魔族がけらけらと笑いながら、こちらに手を伸ばしているのが見える……
――――1
……押した。
凄まじい速度で閉まるシャッターに、魔族の姿が覆い隠され、
伸ばしてきていた手はその速度の前に鋭利に切断される。
ごとんと落ちる腕。
無論、このシャッターも魔族には何ほどにも値しない、紙の防壁に過ぎない。
だが――少なくとも、『リキッドを汗に混じらせ、空気中に散布した空間と隔てる』ぐらいの
効果はある!
「――――――それを、燃料気化爆発という」
――――0
室内に残してきた腕に仕込んだリキッドが発動すると同時、轟音と振動が研究所全体を包んだ。
(アルトルージュvsロゼット&クロノ&アズマリア)
「はあ、どうしてこんなことに巻き込まれるかなあ?」
次々に襲い掛かってくる悪魔を適当に引き裂きながら、私は愚痴をこぼす。
「――そもそも、コレって逆恨みよね?」
背後から襲い掛かってきた悪魔に振り向き様に右腕を振りぬく。
悪魔の半身が消し飛ぶ。
「――しかも、絶対に勝てないって分かってるくせに」
私は、今、アメリカのサンフランシスコにいる。
ただの気紛れの旅行で……
けど、まさかのまさか、こんなことに巻き込まれるなんて……
――きっかけははるか昔に遡る。
「魔界」の悪魔達は私の領地に侵攻してきた。
それを完膚なきまで殲滅した。
ただ、それだけのことだ。
しかし、その時から、私は「魔界」にとって殲滅対象となったらしい。
事ある度に、私にちょっかいを出してきた。
その度に全て返り討ちにしてきたが……
そして、今回もたまたまこの近代都市で悪魔達と遭遇してしまった。
私を捕捉した時から、雪崩のように悪魔が襲い掛かってくる。
おかげでこの通りにいるモノは私とプライミッツマーダ―、そして悪魔、
あとは巻き込まれた不幸な人間の死体だけになってしまった。
「プライミッツマーダ―、命令よ。悪魔の発生元を辿って殲滅しなさい。
私はここの残りの連中を殲滅するから」
プライミッツマーダ―は私の方を見た後、一気に通りを駆け抜けて、消えていった。
これでどうにかなるだろう。
「さてと、残りの連中を片付けるかしら?」
残りの悪魔の殲滅を続ける。
――あらかた、殲滅し終えた時だった。
通りに乾いた銃声が響いた。
>483
VS アルトルージュ
先にこっちを見てくれるとうれしいかな。
ttp://members.tripod.co.jp/tajuunin/taisen/battle_04.html 『The redoing saints』〜プロローグ〜
……… that the possibility always branches infinitely
============================
『悪魔が暴れている。』
通報を受けた私達は、現場に直行した。
そこで見たものは。
倒れた人。四肢がバラバラになった悪魔。そして、その返り血浴びて立つ女性。
その腕は、ヒトのものか、悪魔のものか分からないほど、血で汚れている。
「――――ッ!!」
私は、思わず引き金を引いた。
地面を、銃弾がえぐる。
しごく、うんざりとした表情で私たちに向き直った。
その顔を見た瞬間。
《ど く ん》
心臓が跳ね上がる。
――――既視感。私・・・・こいつとどこかで・・・・・?!
「・・・・ット?ロゼット?!」
「どうしたの?!」
「え―――?」
クロノとアズマリアの声で、私は我に帰る。
「何でもない・・・・・。」
私は、内心の動揺を二人に悟られないように、銃を構えた。
《ぬるり》
「?!」
私は、首筋に何か違和感を感じる。
何か、ぬらりとしたものが付いているような感覚。
私は、あわててそれを拭ってみる。
「な―――によ、コレ・・・・・。」
それは、『血』。
傷もないのに、その血は私の首にぬめりついている。
「聖痕(スティグマ)じゃあるまいし――――。
何なのよ・・・・・コレ・・・・・・・!!」
私の背筋を何か冷たいものが走り抜けた。
>484 『The redoing saints』
「…………?」
先ほどの銃声は私を狙ったモノのようだった。
弾丸が正確に私の急所に着弾する。
けど、同情したくなるくらいにその銃撃も無意味だった。
何やら、聖別処理されているらしい弾丸もこと、私、アルトルージュの前では……
私は並の概念武装ではダメージを負わない。
高位の幻想を超えるにはそれ以上の幻想を持ち出すしかない。
……銃声のした方に振り向く。
「えっ……?」
そこにはどこかで見たシスター服の少女が立っていた。
誰だろう?
何だろう?
この違和感は……
かつて、彼女を私は―――
そこで私の思考にノイズが走る。
それ以上は靄にかかったように思い出せない。
「まあ、いいか……」
余計なことは考えないようにする。
私は死徒、そして彼女はハンター。
ただ、それだけ……
「……見た所、そんなに経験があるという訳でもなさそうね。でも、私を殺しに来たというなら、相応の対処はするわ」
私は何やら動揺している彼女ににっこりと微笑む。
「覚悟はいい、勇敢なシスターさん?」
そのまま、私は彼女にゆっくり間合いを詰めて行く。
訂正ね。なんて無様。
>484 『The redoing saints』
「…………?」
……銃声のした方に振り向く。
「えっ……?」
そこにはどこかで見たシスター服の少女が立っていた。
誰だろう?
何だろう?
この違和感は……
かつて、彼女を私は―――
そこで私の思考にノイズが走る。
それ以上は靄にかかったように思い出せない。
「まあ、いいか……」
余計なことは考えないようにする。
私は死徒、そして彼女はハンター。
ただ、それだけ……
「……見た所、そんなに経験があるという訳でもなさそうね。でも、私を殺しに来たというなら、相応の対処はするわ」
私は何やら動揺している彼女ににっこりと微笑む。
「覚悟はいい、勇敢なシスターさん?」
そのまま、私は彼女にゆっくり間合いを詰めて行く。
>486
VS アルトルージュ
『The redoing saints』
『……見た所、そんなに経験があるという訳でもなさそうね。でも、私を殺しに来たというなら、相応の対処はするわ
覚悟はいい、勇敢なシスターさん?』
じゃり、と女・・・・の姿をした悪魔が足を一歩踏み出す。
この圧倒感・・・・・!
生半可なやつじゃない・・・・・。
私は、先ほどまで頭の中を駆け巡っていた考えを振り払う。
・・・・・恐れは、人を弱くする。
かつて、そう教えられた事を思い出した。
「アズマリア!結界の準備! クロノ、武器出して!!」
私は、クロノから武器を受け取った。
そして、構えた二丁拳銃の引き金を引く!
銃声を合図に、アズマリアが駆け出した。
私は、彼女をサポートするように弾をばら撒く。
「急いで!時間をかければこっちが不利になる!」
私は、アズマリアを叱咤する―――――!
>482 vsユージン
「げへ――うへへええ」
壁をぶち破りながら向こうに転がりでたユージンを、哄笑を続けながら魔族はゆっくりと追跡する。
魔法によって切り刻まれた右脚は、千切れてこそいないものの、その傷はろくに立ち上がることも
出来ないほどに深く刻み込まれている。漂う新鮮な血臭が、さらに魔族を興奮させた。
踊りを踊るような、どこか滑稽なしぐさ。相手の恐怖を助長しようと、ゆっくりゆっくりと、身動きの取
れない獲物に向かって接近していく。室内を埋め尽くすのは、けらけらという魔族の笑いだけだ。
「おにいちゃあああん……つうかまあえたああああ!」
余裕たっぷりに、歌うように言葉を口にする。長い、指先に鋭い鉤爪を備えた腕が、ユージンに
向かい伸ばされた――その瞬間。こちらと向こうを遮断するように、シャッターが下ろされる。
「うげえええええええええええ!?」
切り落とされた腕を振り回すようにして、魔族は苦痛の絶叫を上げた。
その双眸を憎悪に染めた魔族は、腕を再生させながら、シャッターごとユージンを打ち抜く為に、
即座に魔法の構築にはいる。
「ほおおお――――」
発動の、その刹那―――――!
純粋な破壊が、室内に弾けた。瞬間的に発生した膨大な熱量と爆圧が、室内に存在するあらゆ
るものを粉砕し焼却。さらには、急速な燃焼作用で、領域内に無酸素状態を作り出す。
三段構えのこの殺傷力の前には、魔族の誇る恒常魔力圏も、その処理能力を大きく上回る破壊力に
処理能力が破綻が完全に破綻した。
――――「殺菌」。
そう呼ばれるこの方法は、理論上、上級を含めた全ての魔族を殲滅出来る。
故に。
ただ一人、室内に残された魔族は、その圧倒的な破壊力の直撃を受けて、肉片のひとつも残さすに……
あっけなく、この世から消滅していた。
>487
『The redoing saints』
彼女が私に向かって幾度も発砲する。
酷く無意味な攻撃だった。
右腕を一振りするだけで弾丸を叩き落す。
それでも数発被弾したが、ダメージにもならない。
どうやら聖別されている弾丸のようだが、いかんせん概念武装としてのレベルが低すぎる。
高位の『幻想』を打ち破るのは、より高位の『幻想』のみ……
生半可な『幻想』では私は倒せない。
「さてと、もう、満足した?」
無意味な発砲を繰り返す彼女と私の間合いが段々と詰まっていく。
「あなたには同情するわ。死徒27祖第9位アルトルージュ・ブリュンスタッドに挑んだ不幸をね……」
私と彼女と間合いがあと数メートルまで迫った。
>488 vs魔族・その後
機材が床に落下した音で、まぶたが開いた。
どうやら、少し気を失っていたらしい。
……ひどい怪我だ。
振動の止んだ室内で、ひとり、呟く。
傷口に右手を当て、リキッドで焼く。失血死を防ぐ応急処置だ。
口から漏れる吐血だけは防げないが、冬眠モードに入りさえすれば、
それでも連絡を入れ、回収を待つくらいは持ってくれる。
視界の隅に、切り落とした魔族の腕がまだかすかにぴくぴく痙攣しているのが見えたので、
手を伸ばし、完膚なきまでに焼き尽くしておいた。
「……き、君、大丈夫か」
またまどろみかけた意識を醒ます声。
――さっきの実験の責任者か。
律儀にも逃げず、部屋の隅でガタガタ震えていたらしい。
……そう、まだ任務は残っていた。
何も答えず、その首に貫手を刺し込む。
「……何故、って顔ですね」
間抜けにも大口を開けた男に、懇切丁寧に説明してやる。
「統和機構には、失敗を繰り返す無能に与える資金も時間もない――
最後のチャンスだった、というわけです」
ぽん、と軽い破裂音。
それだけで、この部屋にはぼくしかいなくなった。
懐から通信機を取り出し、いつもどおりにスイッチを押す。
「……任務完遂しました。損傷多大のため、回収を依頼します――」
――――――Fin
>486
VS アルトルージュ
『The redoing saints』
『さてと、もう、満足した?』
そんな!!
彼女は、私の放った銃弾を平然と受け止める。
ダメージはほとんど無いの?!
『あなたには同情するわ。死徒27祖第9位アルトルージュ・ブリュンスタッドに挑んだ不幸をね……』
死徒27祖?!しかも9位?!
・・・・・話には聞いている。
吸血鬼の中でも、高位に属する連中。
ドラキュラ伯爵を除けば、彼らこそ吸血鬼の頂点といえるだろう。
「こ、このぉぉぉぉ!!」
私は、ゆっくりと足を進める彼女に向けて弾を打ち続ける。
それでも、彼女の足は止まらない!
くそ、くそ、くそ!!
結界は・・・まだか!!
私は、アズマリアを見る。ちょうど、2つめの反響体(エコーズ)を設置したところだ。
「ロゼット!!」
クロノが私に新しい銃を渡す。
もっとも、これでどうにかなるとも思えないが!!
どうする、どうする?!
ついに、彼女が私の眼前に迫る。
彼女が腕を振り上げ――――――
「ちぃ!!」
私は、彼女の顔めがけて空になった銃を投げつける!
一瞬彼女の動きが止まった。
その隙に、私は横っ飛びにはねる。
逃げられるとは思わないが―――――とにかく、このままでは不利、だ!
>491 『The redoing saints』
少女はひたすら無駄な抵抗を続ける。
同情を通り越して、呆れる。
少女の目の前に到達する。
そして、右腕を無造作に振り下ろした。
――瞬間、少女が銃を私の顔に投擲。
視界がふさがれ、狙いが外れる。
「――粘るわね」
少女は傍らにいた少年とともに必死に間合いを取ろうとする。
「―――――」
その時、私の側にある車が目についた。
「面倒くさいし、これで終わらせようかな?」
車につかつかと近づき、両手で持ち上げる。
「じゃあ、さよなら」
そのまま、車を少女と少年へと投げつけた。
無慈悲な鉄の塊が2人と飛んでいく。
闘争のまとめ
ユージンvs魔族
>4 >5 >27 >28 >29 >30 >107 >108 >257 >335 >385
>386 >287 >425 >481 >482 >488 >490
お見事。
こう来るとは思わなかった。お疲れさん、楽しかったよ。
>486
VS アルトルージュ
『The redoing saints』
「なんじゃそりゃぁぁぁ!?」
彼女が、行き成り車を掴んで私達に向かって投げつける!!
冗談じゃない!!
「ロゼット!!」
クロノが、がし、と私の体を抱える。
そして、車から逃げるよう飛び跳ねた!
《どしゃぁん!》
私たちが、先程までいたところに車が叩き付けられる。
と同時に、クロノが私を押し倒す形で地面に転げる。
「つつ・・・・さんくす、クロノ!」
「どういたしまして!・・・・・さてどうしたもんか。」
立ち上がる私達を追撃しようと、アルトルージュが迫る。
DAM!!
私は、再び拳銃の引き金を引く!
視界の端で、アズマリアを見る。
丁度、3つ目の反響体を設置したところだ。
あと―――――一つ!!
>494 『The redoing saints』
「――本当にしぶといわね」
飛んでくる弾丸を左手で叩き落しながら、愚痴をこぼす。
「私はしつこいのは嫌いなの……」
一足飛びに彼女までの間合いを詰める。
十数メートルある間合いが瞬時にゼロになる。
「じゃあ、これでおしまい。今度こそ、さよなら――」
私が彼女の頭へと右手を振り抜いた。
>495
VS アルトルージュ
『The redoing saints』
『じゃあ、これでおしまい。今度こそ、さよなら――』
彼女が、私の頭めがけて手を振り下ろす――――
途中で、びくりと動きが止まる。
アズマリア!!
見れば、アズマリアが最後の反響体を設置し終えたところだった。
権天使級捕縛結界(プリンシパティウス)!
たとえ、27祖でも、これなら暫くは!
「動けないでしょう、さすがに!! クロノ!!」
「はい!!」
クロノから反響体を二つ受け取り両手に構える。
「これでも・・・・食らえッ!!」
そして、彼女の胸めがけて突き立てる!!
直接受ければ・・・・結構な負荷になるはず!?
「もう・・・・一個ぉッ!!」
二つ目の反響体を、腹に突き立てる。
「これで、お終い!!」
私は、銃のカートリッジを福音弾(ゴスペル)に交換する。
希少銀に極小魔呪を埋め込んだ、私たちの持つ最強武器!
私は、彼女の頭に銃口を向ける―――!
>447 vsアルクェイド
気がつけば――――
意識が白くなるほどの衝撃を受けて、レイオットは地面に倒れ込んでいた。
軽い脳震盪でも起こしかけたかのように、思考が纏まらない。
だが、それもほんの一瞬のこと。
全身に走る重い痛みと、強い吐き気を堪えて、彼はすぐさま身体を起こした。
胸部に、圧迫されるような異物感。そして……胸部に鋭い痛み。
「――――くっ」
衝突時のダメージで、モールドの胸部が盛大に歪んでいる。
見たところ、拘束端子にダメージはないようだったが……
(これは――ひびぐらいは入ってるな)
ぼんやりと呻く。ふらふらと立ち上がりながら、彼は正面に佇む、血塗れの女に視線を移した。
全身から発散している圧倒的な気配に、レイオットの本能が全力で逃走を促している。
アレには――――勝てないろ。だが同時に、別のこともはっきりと分かるのだ。
絶対に、アレからは逃げられない。
「ははっ――参ったね、こりゃ」
表情をしかめながらも、そんな軽口を叩く。逃げられないのであれば、戦うしかない。
痛みを誤魔化しながらスタッフを構え――操作桿を操作する。
呪文書式板を変更、即座に無音詠唱――――
……と。その直前に、全身に、僅かな違和感が走った。
何かに包み込まれるような……そんな、違和感。
「……これは」
呟く。見れば、既に立ち上がった紫雲が、移動するようにこちらを促した。
例の女――アルクェイドを無視して、瓦礫の廃墟の中を進んでいく。
だが、彼女は、こちらの動きに気付いた様子はない。
(――――そうか、これは)
ここに来て、ようやく気付く。『隠匿』の能力とやらが働いているのだ。
「……なるほどね。便利なもんだ」
苦笑しつつ、彼は紫雲のあとをついて走り出した。
気付かれる前に――場所を、移動しなければならない。
>496 『The redoing saints』
「―――!?」
コレは――!?
身体が動かない――!?
彼女が私の体に『楔』を打ち込む。
この圧迫感は……
そして、彼女が銃口を向けた。
どうせ、通用しないのに――そうタカをくくっていた。
が、一瞬後、凄まじい光弾が私を飲みこんだ。
・
・
・
痛い、いたい、イタイ……
これは身体の半分は吹き飛んでいる。
ああ、左上半身と顔半分は見事に吹き飛んでいる。
痛くないはずは無い…・…
どうにかして立ち上がり、残った右手で楔を引き抜く。
激痛が走る。
「アハ、アハ、アハハハハハハハハ――」
ああ、実におかしい。
こんな目にあわせされたのは初めてだ。
私の身体を支配するものは……
――屈辱、そして歓喜
この受けた屈辱、彼女に何倍にもして返してやろう。
まずは彼女の四肢を引っこ抜く。
次に臓物を抉り、あたりにぶちまける。
苦痛と絶望に歪む彼女の顔を想像する。
それはとても、トテモ、タノシイコトダ……
そして、すぐにそれは現実になる。
いや、ならせるのだ。
「アハ、アハハハハハ、殺してあげる。これ以上、無い無残な死に方で――」
再生が始まりつつある顔で彼女を睨みつけ、死刑宣告を下す。
私の金色の瞳は1000年間かつて無いほどにカガヤイテイルダロウ……
>495
VS アルトルージュ
『The redoing saints』
『アハ、アハハハハハ、殺してあげる。これ以上、無い無残な死に方で――』
福音弾が炸裂し、彼女は体が半分吹き飛んだにもかかわらず・・・・・。
笑いながら私に迫ってくる・・・・・!
「ひ―――!!」
私は、思わず声にならない悲鳴をあげる。
足が一歩下がる。
「ロゼット・・・・・。」
アズマリアが、私の服の袖を掴む。
その手は、私以上に怯え震えている。
く――――
「・・・・・クロノ!」
「何?!」
「逃げる・・・・わよ! 私一人でどうこうできやしない!!
一旦、本部へ――――――」
「だね・・・・。アズもいるし・・・・・・。」
私達は、じりじりと後ろに下がる。そして――――
脱兎のごとく駆け出した。
アズマリアの手を引いて、車へと!
>499
『The redoing saints』
3人は車に乗り込んで、通りを疾走していった。
「――好きなだけ逃げるとはいいわ。 ゼッタイニ、ニガサナイケド」
ようやく、走れる程度に、身体は再生した。
「アハハハ――!」
狩りの愉悦に身を震わせながら、私は駆ける。
途中にある障害物は全て無視して――
ヒト、クルマ――
私の進行上にいるヒトは紙のように消し飛び、クルマは何かの模型のように吹き飛ぶ。
全てを粉砕して、3人の車を追いかける。
私の背後で幾重に悲鳴の交響曲が織り成される。
――ジツニイイキブン
そして、ようやく、3人の車を
――ミツケタ
3人の車に肉薄、体当たりを喰らわせる。
車はくるくる、クルクル、狂々とスピンして向かい側の店のショーウインドウに突っ込んだ。
「でて来なさい。イマカラ、ナブリコロシテアゲルカラ――」
私は車の方に向かって、そう告げた。
>499
VS アルトルージュ
『The redoing saints』
「な、なんなのよ!?アレ?!」
車を『走って』追いかけてくる彼女。
その車を跳ね飛ばし、ヒトはまるで舞い散る木の葉にように吹き飛ぶ。
そして――――
《どぉん!》
彼女が、私たちの車にタックルを仕掛ける!
「うわわわわわ!!」
「チ!!アズマリア!」
「きゃぁぁぁ!!」
車は、あっちやこっちにぶつかりながら、暴走する!
そして、店のショウウィンドウに突っ込みようやく止まる。
「つつつ・・・・・クロノ!アズマリア!無事?!」
「なんとか・・・・ね。」
「はい・・・・・。」
《ずしゃ》
『でて来なさい。イマカラ、ナブリコロシテアゲルカラ――』
魂が震え上がるような声。
彼女が、来た。
「・・・・・く、クロノ・・・・・。」
「わかってる・・・・・。」
私は、震える手で懐中時計に手を伸ばす。
そして、封印を―――――解いた。
>501
『The redoing saints』
少年が翼を持った悪魔に変化した。
――ダカラ、ドウシタ?
「アハ、アハハハハハ、それで? どの道、シヌのよ、あなたタチ――!」
金色の眼で悪魔を睨みつけながら、そう叫ぶ。
そして、空想具現化のイメージを練り始める。
――イメージは赤熱する溶岩
――地球創世の時の赤い灼熱の大地。
――脈動する火山。
通りのアスファルトが赤く染まった。
固体としての形状から液体としての形状にアスファルトは姿を変える。
そして、圧倒的な灼熱の液体は奔流となって3人に向かって殺到した。
>502
VS アルトルージュ
『The redoing saints』
『アハ、アハハハハハ、それで? どの道、シヌのよ、あなたタチ――!』
彼女が嘲笑すると、大地から焔が沸きあがる―――!!
≪ちぃ!!≫
クロノが、私とアズマリアをかかえて飛び上がる。
と同時に、先ほどまで私たちのいた場所を、溶岩が埋め尽くした。
「ば、化け物!!」
≪言わなくてもね!≫
クロノが、ゆっくりと地面に降り立つ。
≪二人は、ここで。彼女の相手は僕がする。 それと、ロゼット。まずくなったら・・・・・。≫
「わかってる、逃げるわよ。 ・・・・・・逃してくれるかわからないけど。」
《 ど く ん 》
跳ね上がる心臓、脳裏に再び走る既視感。
それは、さっき彼女の顔を見たときに感じたそれと同じ。
ずきり、と。一瞬だけ今度は左腕が痛む。
何なのよ・・・・コレ・・・・・・!!
私は、けだるい体を抱えながら頭を掻く。
何か―――何かを私は忘れてる。
いや忘れてるんじゃない。覚えがないのだから。
なら、この既視感と焦燥感は何なのだろう。
そんな私を背に、クロノが彼女に飛び掛る。
>503 『The redoing saints』
悪魔が私に飛び掛る。
――何時か、何処かで見た風景
あの時はどうだったか。
結末は?
又、思考にノイズがかかる。
どうでもいいことに気を取られている場合じゃない。
悪魔の貫き手が私の右わき腹を貫いた。
「――アハハハ、それで?」
仕返しに右手を振りぬく。
ただ、それだけで悪魔はボールのように向こうに飛んで行った。
「――私の方が強い」
自分のわき腹が流れる血を右手でぬぐいつつ、右手についた血をぺロリと舐める。
丁度、そこに私から逃げようとする2人の少女が眼に入った。
「逃げるの、又? どうせ、行き先は地獄よ?」
空想具現化のイメージを練る。
イメージは氷河。
――何者も凍てつく大地
――全てが停止した白い世界
通りがみるみるうちに白い絨毯に覆われていく。
そして、私から逃げようとする2人の少女の足元も凍りついた。
続けざまに空想具現化のイメージを練る。
――それは白い凶弾
――時として、人をも殺せる氷の弾
彼女たちに無数の雹が勢いよく降り注ぐ。
動くことも出来ない彼女たちを、無数の雹が容赦なく痛めつける。
「どう、痛い? 苦しい? デモ、マダコンナモノジャスマセナイ」
私は笑みを浮かべて、白い路上を彼女たちに向かって歩いていった。
>405 遠野志貴VSアーノルド・ラスキン
崩壊して散乱する、かつて廊下だった瓦礫の上、平面など無いに
等しい足場。しかしラスキンはまるで大理石の廊下でも歩むように、
滑るように駆ける。
対する少年も瓦礫の起伏など無いかのように、僅かに震わせるような
奇妙だが淀みのない足裁きを続ける。
暗闇の中で銀光が翻り、突きが、凪払いが、切り返しが何度も互いの
輪郭を掠めては鮮血が舞い散る。
しかし、少年の表情は何処か遠い場所を観るような、行為に没頭する
ようなものなのに対して、互角に立ち回る筈のラスキンの表情は焦りの色が
伺える。
胸元に手を当てて、その表情は益々色濃く厳しくなる。
「不味いな、時間が無い」
鋭い突きを避けたラスキンが後方へと大きく跳ぶ。その先にある崩壊の中で
未だ崩れ落ちない柱を蹴り、更に高く空へと。
月を背に、両手に構えた計8本の投擲用短剣を少年を中心とした円を描くように
次々と投げつける。
更にそれに続くのは少年へと迫る上段より高く振りかぶる一撃。
しかし、振り下ろされた刀は途中で気勢が途切れることにより無様に地を打つ。
ラスキンの懐より、長い髪の毛が零れる。
それに続いて転がり落ちようとする女死徒の頭を掴もうとする左手、その上を
ナイフが滑るように流れた。
>502 >503
『The redoing saints another』
イノヴェルチが誇るヴァンパイア3銃士『人形使いナハツェーラー』は今、散髪に来ていた。
「ふっ、いかなる時にも身だしなみを忘れない。それが策士のダンディズムなのだよ」
――と彼の弁である。
『ナハツェーラー様、髭剃りの具合はいかがでしょうか?』
床屋がナハツェーラーに尋ねる。
ナハツェーラーは気持ちよさそうに眼をつぶったまま答える。
「うーん、 ト レ ビ ア ン だよ、 ト レ ビ ア ン。この調子でやってくれたまえ」
・
・
・
しばらく時間が立つ。
何時の間にか髭剃りの感覚がない。
「――どうしたのかね? 手を休めるのは感心せんな……」
眼を開けて、台座から床屋の方を見る。
が、彼が眼にしたのは床屋ではなく……
――赤熱する溶岩だった。
「――――!?」
声を上げる間もなく、ナハツェーラーは溶岩に飲み込まれた。
なお、床屋が外の騒ぎに気づいて、さっさと逃げ出したのは又、別の話である……
闘争の途中経過を纏めておくとしよう。
淫藤宗光/ヒトラーvs竜崎天馬(M)&檀隼人(M)「ヴァレンシュタイン作戦」(途中経過)
導入
>44 >46 >47 >49 >50
序盤〜中盤戦
>55 >57 >61 >62 >78 >216 >222 >224 >232 >360 >366 >372
>402 >406 >411 >416 >457 >466 >470 >474
そして闘争は続く。
エリvsマッカーチス
『another mission』
>480
眼前に機動兵器が迫ってきた。巨大な鋏であたしを殺すつもりだ。
あたしは逃げずに前に走った!
「っつえぇぇぇい!!」
体勢を低くして飛び込む。 紙一重で鋏をかわした。
「ドンピシャ!!」
真上にショットガンを構え、連射した。
ドゴォン! ドゴォン! ドゴォン!!
機動兵器殺しの異名を持つ散弾を至近距離で浴びせた。
流石に耐え切れなかったらしい。鋏が吹き飛んだ。
「痛ッ!」
跳んできた小さな装甲片がベストを裂き、あたしの体を傷つける。
「この!!」
今度は胸部に散弾を叩き込む! 装甲が弾け、内部が露出した。
そのまま畳み掛けようとして止まった。
「コイツが停止したらあたしも潰される・・・」
それはマズイ。 グレネードはさっきので撃ち止めだ。
他の武器では火力が足りない・・・。
思考するあたしの手に、こつん、と何かが当たった。
そこには127ミリ砲弾。メタルスラッグのキャノン弾だ。
「コレだ!」
すかさず掴み、機動兵器の露出した箇所に突っ込む。
そして威嚇気味にショットガンを撃って機体下部から走り出す。
追いつかれるのは分かりきっている。
ならある程度のダメージは覚悟しなきゃならない。
ショットガンを投げ捨て、ヘビーマーダーを抜いた。
狙いは突っ込んだ砲弾・・・!
「これで、終わりよ・・・!」
両手で構えトリガーを絞る・・・!
>435
VSロゼット一行&ヨコシマ「俺を2Pカラーと呼ぶな!!」
身にまとうかのように呪弾を従え、スレイマンは突き進む。
と、ヨコシマがなにやら防壁を展開する。
なんと、防壁はスレイマンの呪弾を飲み込み、さらにヨコシマ自身の力を乗せてこちらに返してくる。
凄まじいまでの使い手だ。
しかし、ここで手を緩めるわけには行かない。スレイマンは自在護符を【幸運】に設定。
一時的に個人パラメータの『運』が上昇し、ある呪弾は『偶然』スレイマンの脇をすり抜け、
また、ある呪弾は既に放ってあった呪弾と『偶然』食い合い、徐々にその数を減じていった。
ヨコシマまで後数歩。
スレイマンは凶大な死の呪文を孕んで赤熱するロッドを構え、ヨコシマに向かって突き出さんとする。
唐突に、スレイマンの足元がぐにゃり、と揺れた。
目をやれば、まるで柔らかい地面に沈んだかのように―――いや、本当に右足が地面に沈んでいる。
高速走行中だ、当然大きくバランスを崩し、転倒しそうになる。
「ふざけるのも大概にしろ!! この糞が!!」
叫ぶと同時にスレイマンは残った左足を地面に突き立てるかのように深く沈めると、
自重で体全体が倒れる力すら利用して、前に大きく一歩を飛び出す。
そのまま【浮遊】を展開し、飛び出した力をそのまま慣性に換え、文字通り地表を滑るかのように移動する。
そして、ロッドを振りかぶり、ヨコシマに向かって殴りかからんとする。
と、またもや突然世界が、ぐらり、と揺れた。
―――否、外的な要因ではない。立て続けに呪力を行使し続けた結果、
呪力を行使する核たる脳に重大な負荷が掛かり、視界を歪ませているのだ。
スレイマンは【幸運】を解除し負荷を軽減。
さらに、循環器系の身体施呪を強化し、直ちに脳に酸素と栄養を送り込もうとする。
が、その隙を突かれた。
霊視眼がその銃弾を発見したときには完全に着弾コースだった。
何とか体をひねってかわした物の、ロッドを持つ右手に接触し、大きく体勢を崩される。
さらに、黒髪の少年と、いつの間にやら接敵状態になっている。
黒髪の少年はスレイマンの懐に潜り込んだかと思うと、鋭い蹴りを放ってくる。――狙いは、腹部。
この体勢からでは既に呪力による防御は望めない、スレイマンはロッドを腹部に構え衝撃に備える。
そして、少年の蹴りと、ロッドが接触。
ロッドに込められた【即死】が発動するものの、その対象は本来ヨコシマだ。
少年に対してなんら効果を上げることなく、目的語を失った死の呪文は蒸発した。
さらに、なかば浮遊状態にあるスレイマンの体は、接触による衝撃で大きく吹き飛ばされた。
>511
VSロゼット一行&ヨコシマ 「撃て正義の 文 殊 砲 ! !」
二,三歩たたらを踏んで、着地する。
スレイマンが立つ足元は硬く、先ほどまで立っていた場所のように不安定ではない。
―――そう、吹き飛ばされたのではない『吹っ飛ばされてやった』のだ。
ここでなら、何が来ようと対応しきってみせる。
と、眼前に文殊が投げ込まれる。瞬時に爆発。
ヨコシマが先ほど、この少年達に文殊を手渡したのは確認している。
そう来るのは読めていた。多少展開は狂ったが、まとめて殺せば済むだけの話だ。
「ハ、馬鹿が、バァァアカが!! 同じ手が二度通じるとでも思ったか!?」
スレイマンは左手の自在護符を【呪盾】に設定すると、それを最大出力で展開しつつ一歩を踏み出し、
自ら爆炎の中にその手を突っ込むと、爆炎を放出し続ける文殊を己が左掌に握りこんだ。
自在護符が複雑、かつ高速にその印形を変えながら、熱を、炎を、衝撃を、その掌に押さえ込む。
が、膨大な熱量を抑えきることは出来ず、スレイマンのその指先はどんどん炭化していく。
地面に倒れ伏し呆然と見上げる少年とヨコシマ、そしてシスター達に向かって、スレイマンは告げる。
「ク、ハ、ハ、貴様に出来て俺に出来んという法があるとでも思ったか、ええ!?」
「アンタっ! 何するつもりよ!」スレイマンを狙撃した少女が叫ぶ。
「小娘、貴様は後だ! さっきの礼だ、そこでガタガタ震えてボサっと見てろ!
テメェは手間と暇をかけて『命だけは』助けてやろう、楽しみにしておけ、ク、クハハハハハッ!!」
スレイマンのロッドが唸り、次々に【卵】を生み出していく。その数六つ。
【卵】は、踊るように滞空したかと思うと、【卵】を頂点とする幾何学模様――六ボウ星――を描き出した。
「ハ」
歯切れの良いスレイマンの掛け声とともに【卵】は弾け、【呪盾】に似た呪力壁を各々が展開する。
さらに、各々が伸張し、地面に転がっているヨコシマ達に向けられた、正六角形の長い『筒』を編成した。
「アカンっ! もー、アカンっ! なんだか俺の人生がここで終わる気がとってもするっ!!」
ヨコシマは叫びながらも、尋常ではない量の体液を眼部から滝のように排出する。
周囲に水のスクリーンを張り、熱気に備える算段だろうか?
面白い術だが、無駄だ。
これの威力は、文殊の使い手であるヨコシマ自身も良く判っているはずだ。
呪壁の筒は銃身。本来指向性を持たない爆発力を制御し、押さえつけ、方向性を与える。
左掌は撃鉄。筒の底部に叩きつけ、撃発の契機となり、さらに弾の力を増幅させる。
そして、弾薬は『爆』の文殊。指向性を与えられていないが故に純粋な、霊気の爆薬だ。
「ヨコシマ!! そこの小僧も、後ろの尼僧共も、もろともに貴様自身の術で灼きつくしてくれる!!」
吼えつつ、スレイマンは砲身たる『筒』の底部に文殊を握りこんだ左掌を叩きつける。
凄まじい爆発音とともに、抑えられていた文殊の威力は解放され、
『筒』の内側を螺旋を描きながら突き進み、そして、文殊は爆炎をまといつつ砲口から吐き出された。
◆御神苗優vsシグモンドvs緑川淳司◆
>476御神苗>478緑川
タクシーは清水寺についた。
途中、渋滞が起こったが、誤差の範囲内だ。
ヤツの姿を追い求めて清水寺の敷地内に入る。
ヤツと同じ感じの服装の学生がいるが…。
ヤツ自身はいない。
おそらく同じように離れた所からこちらを探しているのだろう。
こうなると下手にさっきのように誘い出すのは難しい。
#
シグモンドは清水寺の林の陰に立ちながらそう考えた。
銃の残弾を確認し、背負ったギターケースを脇に置き、静かにターゲットを探し始める。
#
――ヤツが俺を探し出す方が先かも知れんな。
そう内心苦笑しつつ…。
唐突に見知らぬ男が声をかけてきた。
闘争の経過をまとめておく。
G.G.スレイマンVSロゼット一行&ヨコシマ
>256>435>511>512
19章分のまとめは>495に
18章分のまとめは>515となる
以下、次スレで闘争続行となる。
闘争の途中経過だ。
導入:>444
>447>451>452>455>460>462>464
>468>472>475>476>478>513
続きは次スレだ。
>471
桐原朝子VS南条圭
最早、彼女に何が起こったかを確認するまでもなかった。
彼女は南条の言葉通り、自ら封印していた「ペルソナ」に自分自身を
食い尽くされた。
今の彼女に残るのは、只「虚無」のみである。
無気力に座り込む桐原朝子を見下ろしながら、南条は思い返していた。
自らの、幼き日の事を。
英才教育を受け、南条財閥を背負って立つ事を義務付けられて育った。
彼自身、そんな自分に何の疑問も抱いてはいなかった。
唯周囲の期待に応える為、闇雲に与えられた勉学をこなすだけであった。
しかし、そんな彼を変えた出来事が二つ。
一つはこの場所。聖エルミン学園への入学。
この場所で彼は、信頼出来る友と出会った。個性の強い面子ではあったが、
彼等は南条に、世界の広さを教えてくれた。
そして、数ヶ月前のあの事件。
腕の中で力を失っていく、彼の最も敬愛する男に対し、
彼は確かに、自らの意思で誓った。
この国の「一番」になると。
南条財閥の意思ではなく、彼自身と、その老人の為に。
目を閉じ、再び開く。
改めて桐原朝子を凝視し、思った。
もう少し、人生の歯車が狂っていれば――
彼女が自分で、自分が彼女であったかも知れない、と。
彼女は、ある意味では彼の映し鏡なのだ。
だが――
「所詮貴様は、破滅の道しか歩めなかった。
そして俺は、踏み止まった。それだけの事だ」
南条は刀を鞘に収め、踵を返した。
「これはせめてもの餞だ。せいぜい、良い夢を見るがいい――」
桐原朝子の前に、何時の間にか初老の翼人が姿を見せていた。
その翼人の表情は、先程までの戦闘時とはうって変わって、
慈愛と哀れみの表情に満ち満ちた顔だった。
そして翼人の優しく弧を描いた唇が、美しいテノールで唄を紡ぎ始める。
それと同時に、無表情で座り込んでいた桐原朝子の頭が垂れ下がり、
瞼を閉じ始めた。
全てを失ってしまった者に対し、赦しを与えるかのような神々しい旋律が、
夕闇に染まる御影町に響き渡っていく―――
それは、南条が彼女に送る最大限の餞、「子守唄」であった……。
(ばさり、とファイルを置いていく)
>28 軋間紅摩 vs 両儀式
>87 孔濤羅 vs 両儀式
>109-200 殴り愛〜今〜
>234 エリ・カサモト vs タバサwithタオ(盾) 『全国三千万婦女子の憧れ争奪戦』
>326 ――人外ヤクザ共の仁義無き戦い―― 天堂天山&ヤハベ vs 岩鬼将造
>339 ロゼット一行 vs ナルバレック
>370 暗黒騎士ガウザー VS 紅の騎士ギーラッハ
>423 比良坂初音 vs 青山素子
>463 幽祢 vs エミリオ(14歳)夢幻歳華外伝 『よわむしなんてだいきらい』
>479 遠野四季 vs コルネリウス・アルバ
>493 ユージン vs 魔族
『空中大殲〜ヤツは空に居る』
本 章 の ま と め よ 〜 。
導入>285-286 衾側導入>287
>288>289>294>299>301>308>312>315
>318>320
以 下 次 号 〜(けらけら)
>516 桐原朝子VS南条圭 エピローグ
南条の、ヤマオカの子守唄にゆっくりと瞼を閉じる朝子。
だが、魂の砕けた彼女が夢を見ることなどあるまい。
その事を、遙か上空から一部始終を眺めていた老紳士――裏次郎は知っていた。
桐原朝子に復讐の力を与えたイェマドの遺産管理人。
強風の吹き荒れる上空に浮かびながら、その全身は一切なびいている部分がない。
その裏次郎は、自分の知識にない力を振るう少年――南条の事を計りかねていた。
「あのような遺産、聞いたこともない。いや、そもそも俺以外に遺産をバラ撒くがいるはずもないのだが」
遺産でなく、守護神ですらなくイェマドの遺産に対抗しうる力。
そんなモノは最古の歴史学者である裏次郎の知識にも存在しない。
否、存在するワケがないのだ。
超古代文明イェマド、それの遺産に抗しうる力など……。
だが、現実に桐原朝子はただの、遺産も持たない少年が振るう力の前に敗れた。
そして、その事は裏次郎の計画成就に大きな障害にもなりかねない。
事実、桐原朝子はつい先頃発見したザンヤルマの剣の継承者、矢神遼に最初にぶつけるはずだったのだ。
しかしながらその計画は、こうして破綻せざるを得なくなってしまった。
「……構うモノか。俺の企みを成就させるのに、この程度の障害は想定して然るべきだろうよ」
イェマドはその勢力圏を宇宙にまで広げながら、突如として謎の崩壊を遂げた。
その原因を裏次郎は知りたい。
教典にザンヤルマと記されるその大破壊を、この愚かな今世に再現する。
それこそが裏次郎の望みなのだから。
「少年一人、剣一本思う通りに操れなくて何で望みが叶えられるモノかよ。
ザンヤルマの剣士誕生という望みを」
ふと視界の端に、自分とは立場を異にする遺産管理人達――水緒美と丈太郎の姿を認める。
騒ぎを嗅ぎつけて、遺産の回収に動き出したといったところだろう。
もはや長居は無用か、と心の中でひとりごちながら手の中のステッキを意識する。
次の瞬間、そこに何の痕跡も残さずに裏次郎は消え去っていた。
後にはただ、風が吹きすさぶのみ。
その後の事は我関せずといった風情だ。
そう、もうこの物語は終わっているのだから。
>506 遠野志貴VSアーノルド・ラスキン
幾度となく体を掠めていく刀。
その度にしぶく鮮血。
だが、俺のナイフもまた老紳士の全身に無数の傷を刻んでいる。
線や点を断つまでには至らないが、着実に、少しずつ刃は深く、正確に届くようになりつつあった。
ならばもっと早く、もっと深く、もっと正確に――!
そう念じながら放った突きは、しかし老紳士の姿を捉えられない。
見上げた俺の視界に、宙を舞いながら短剣を投擲してくるあいつを見つけた、それも八本。
だが、俺には分かる。
その軌道は、明らかに当てようとする意志がない、おとりだ。
本命は、刀を大上段に振りかぶったあいつ自身の一撃。
俺はその姿を睨み付け……刀を持つ腕に走る線を見つけた。
あいつの刀より早く、あの線を断ちきってやる。
手の中のナイフを意識しながら、あいつの一挙手一投足を細大漏らさず視界に収める。
交錯する一瞬だ、そこで勝負を決めてやる。
だが、その思惑はあいつ自身の体勢が崩れた事によって外された。
無様に着地し、瓦礫を叩く刀。
まさに無様、あまりにもお粗末な行動に嘲笑すら浮かべる俺。
まあいい、この状況がチャンスである事は間違いないのだから。
先ほどから視認していた左腕の線へと走るナイフ。
取った、そう俺は思った。
これで、後は――。
後は、何だ?
ほんの僅かに途切れた本能、その間に滑り込んできた理性。
俺は、一体何をしているんだ?
そして、本能をこじ開けたそれは……。
忘れてない、忘れてたワケじゃない。
だが、俺は改めて目にした弓塚の首を前にして、まったく動けなくなってしまっていた。
視界から消えたことで、なかった事になったとでも思っていたのか?
忘れていた、否、押し殺していたいろんなモノが堰を切ってあふれ出す。
恐怖、理性、鼓動、呼吸……。
忘我していた俺は、一瞬にして現実へと引き戻されていた。
そんな俺の思考とはまったく関係なく、一度勢いづいたナイフは止まらない。
最初の狙い通りに、老紳士の左手にある線を綺麗になぞる。
狙いあやまたず、寸分の狂いもなく、老紳士の左腕が体から離れ、瓦礫の上に音を立てて落ちた。
あまりに綺麗な切断面、そこから流れ出す赤い血……。
現実に引き戻された理性は、その光景に再び凍り付く。
自分のやった事に、それがもたらした結果に、その光景に。
「俺は、何を……?」
手が震える、上手く力が入らない。
そんな自分を捕まえるかのように、ナイフを強く握りしめる。
それでも手の震えは止まってくれない。
ただ、呆然と震えながらそこに立ち尽くしていた。
>521 遠野志貴VSアーノルド・ラスキン
昏々と眠りについていたわたしの意識が、暗い、昏い最奥からひきずり、揺り起こされる。
わたしの意識の奥底に、外界からの光が届く。
その光の中に、わたしのいちばん会いたかった人が―――――――居た。
「―――――志貴、くん?」
わたしの口がうごいて、不思議と声を紡ぐ事ができる。
「……一度だけ、志貴くんって呼んでみたかったんだ―――」
最期に、なんて………いわなくてもわかってくれるよね?
「―――ありがとう……ばいばい」
――――志貴くん、と・・・もう声には為せずに唇だけをうごかす。
感謝の言葉は想いつづけてきた人と、願いを叶えてくれた人に。
お別れの言葉は、最期に会いたかった人に―――――――――
髪の先から灰になり、風に流れていくのがわかる。
わたし自身が、崩れていくのがわかる。
もう、話すこともできない。
だから最期に、想いつづけてきた人の顔をココロに焼きつけて――――――――
わたしは、すべて、灰となり、散っていった。
>522 遠野志貴VSアーノルド・ラスキン 〜エピローグ〜
呆然と立ち尽くす二人の間を,、十月の風が冷たく吹き抜ける。
そして、その風に乗って女死徒、弓塚さつきという名の少女の存在は
静かに灰へと還ってゆく。
「つまりは、そういうことか。お互い、最早戦う意味も意志もあるまい。
すまなかった、これは私の借りにしておいてくれていい」
刀を腰に納め、左腕へと止血処置を施すラスキンが思い出した
かのように言う。その表情には最早先程迄の殺気は微塵もなく、
また腕の痛みを気にする様子もない。
「私は彼女に二つの事を頼まれていてね。一つは彼女を死徒にした
存在の殲滅、要は敵討ちという奴だ」
ラスキンが屈み込み、瓦礫の間から何かを拾い上げる。
それは先程迄少女が身に付けていたリボン。右手だけで器用に畳み、
小さな束にする。
「そしてもう一つは彼女の想い人、つまり君と最後に逢わせて欲しい。
そう頼まれていたのだよ。彼女が滅びるのは既に変えられない事実だった、
私はそれを僅かに先延ばしにしただけ過ぎない」
ラスキンは未だ震える少年にそのリボンを手渡す。戸惑うような顔は、
どうすればいいのかと問いかけるように手の中をじっと見ている。
「一生それを抱えて生きろとは言わないが、せめて覚えていてあげると良い。
去りゆく者への敬意とは、そういうものではないかね?」
震えは止まったものの、未だに目を伏せる少年の回答を待たずに
ラスキンは続ける。
「死者の願いは不遜なれども、とは言うが。しかし全てに絶望しそうな者へと
救いの手を差し伸べ、可能ならばそれを叶える。どんなに僅かでもいい、
神ならずとも特殊な技術者たる我々にもその位は出来る、そう思うのだよ」
そして身体に纏わりつく埃を払い、ラスキンが瓦礫の間から帽子を
拾い上げて被り直す。
「しかし理解らないのは、君から漂うその気配だ。それは彼女を死徒にした
輩と非情に似通っている。その説明は――」
振り返り、闇を凝視するラスキンが再び刀へと手を掛ける。
闇の奥からの気配を受けて、再びその身体に纏う殺気が露わになる。
「奴に求めるとしようか」
遅くなったけど纏め。
エリvsマッカーチス
『another mission』
本スレ
>384>394>424>454>480>510
以下次スレへ続く、と。
>523 遠野志貴VSアーノルド・ラスキン エピローグ
――――――――。
思いの丈を俺に告げて灰になった弓塚。
手の中には、老紳士から手渡された彼女のリボン。
言葉もなく、ただそれを見つめ続ける俺。
リボンはこんなにも軽いのに。
俺に託された想いは重すぎて――瓦礫の上に膝を付きそうになる。
「俺は……っ」
でも、俺はとっくにアルクェイドにいかれてしまっている。
いきなりそんな事を言われても俺には応えられない。
俺はそんなに器用じゃない。
弓塚とは特別親しいワケじゃない、ただのクラスメイトだ。
言葉をかわしたこともほとんどない。
そう、ただのクラスメイトだった、はずなのに……。
人の想いは、とても重いモノだと思う。
それを時間を掛けて、受け止められる様に軽くするんだ。
鍛えると言い換えてもいい。
――けど、俺と弓塚にはその時間がない。
だから、重すぎる。
受け止める事なんてできない、できないけど……。
ただ、それでも……このリボンは俺が持っていないといけないような気がする。
もう、何処にも行くことのない想いは、此処にしかあり得ないから。
いつか、俺がこの手で彼女の想いを葬ってあげよう。
だから、その餞の為にも……俺は、奴を殺さなきゃいけない。
もう気付いている、さっきから痛む胸の古傷、跳ねる鼓動、一定しない呼吸。
それは弓塚の首を見た瞬間からだったから誤解していた。
これはそんなのじゃない、その原因は……。
後ろに立っている、弓塚の運命を狂わせたあいつだ。
老紳士も、弓塚の願いを叶えんとしている。
そして、何よりアルクェイドが探している奴で、街にはびこる殺人鬼。
ゆっくりと振り向き、手の中のナイフを握りなおして、老紳士より気持ち前に立つ。
それが去りゆく者への敬意って事になるのかは分からない。
ただ、俺はそいつ目掛けてただ疾った。
続く……?
黒騎士ブラフォード対燦月の走狗
【英国 『風の騎士達の街』 20:00】
「ママがぁぁ!!」
夜の街道を駆け抜ける小柄な影。
一目で小僧と判るその影は、尋常でない焦燥感により塗り潰されていた。
俺が前に立つ。前も見なかったのか小僧は俺にもろにぶつかる。
いい当たりだ。餓鬼とは思えない。
「どうしたんだ小僧。何があったか順を追って説明してみろ」
右も左も判らないほどに気が動転していた小僧だが、
ようやく落ち着いて話を聴くと、どうやらこいつの母親が化物になったと。
「まったく・・・・・・・やれやれだな」
俺の名は本庄。下の名前はとっくに捨てた。
俺の所属する燦月製薬・・・・・・・・・・いやイノヴェルチは
長年に渡り――それも俺の生まれる何世紀も前から――化物、
ことに吸血鬼の研究をしている組織だ。
貴族や有力者に同志を増やしていき、遂にナチスドイツと
手を組むまでに組織化されることになった歴史がある。
よりによってそんな気違いどもの参加に入ったのが俺の運のつきだ。
おかげでこんなド田舎に派遣される羽目になった。
イノヴェルチが追ってきた吸血鬼製造法。
その先端にある『石仮面』によって生まれた吸血鬼が、
そしてそいつによって造られた屍生人がこの町に繁殖しているらしい。
これ以上屍生人が増えるのを防ぐため、
吸血鬼の存在が漏洩する事を防ぐため。
何より燦月製薬の研究のために俺達はここに派遣されてきた。
「よしよし、恐かったな。安心しろ。すぐにおまえの母さんは元に戻るさ」
優しく小僧を抱きとめようと腕を広げると、小僧は自分から飛び込んでくる。
ガクガクとまだ震えている。余程恐かったのか。それとも・・・・・・・・・
ゆっくりと俺の胸に、首元に顔を近づけながら小僧は嘯く。吐息は冷たい。
『母さんを元に戻せるの?』 「ああ」 『どうやって?』 「こうさ」
右手のナイフで小僧の首を刈り取るのと、左手の40口径が小僧の胸を貫いたのは同時だった。
『WRRRYYYYYYYYAAAAAAA!!!!』
生憎、小僧が本性を現す。まったくひでえ顔だ。屍生人が。
・・・・・・・・・・・・相棒、出番だぜ。
後ろに控えていたコートの大男が軽く腕を振るう。
小僧の頭は一撃の下に叩き潰された。
地面に血と脳漿が振りまけられ泥なのか血なのかもよくわからない。
これじゃあ不死身だって言ってもたまらんだろう。ちょろいもんだぜ。
有象無象の区別無く、死を振り撒く化物どもが。さっさと終わらせてやらなきゃな。
「?!」
いきなり、大地が揺れる。ただならぬ鬼迫に俺どころか相棒までもが狼狽する。
そこへ現れたのは―――――