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――――――だが、ボールはゴールに突き刺さらない。
突き刺さったのは、牙だ。
ホークの牙が女の骨まで潜り込み、/がしゅっ
次の瞬間噛み千切る。/ぶぢっ ぼぎばりばりにちゅがりばき
暗い闇から生えた腕が女を掴み、/つぷ……
右腕と右肺をいっしょくたに握り潰す。/ぐしゃり
残った部分をもう片方の腕が丸ごと掴むと/ぐち みしみし
そのまま大地がめり込むほどに叩きつける。/どごん びちゃっ
崩れた電機甲冑が勝手に浮き上がり、元の形に組み合わさる。
転がっていた頭を指でつまんで首に乗せると、眼が再び炯々と光りだす。
――――――性質の悪い冗談のように、無傷のホークがそこにいる。
『ごちゃごちゃ五月蝿いぜ。無粋な』
身体の半分を欠けさせた女は、それでも悪夢のような笑みをやめていない。
『――クク、そうだ。俺も、お前も、あいつも同じなのさ。
理屈なんざ知ったことか。ただ何もかもが憎くて仕方ない。
そこには破壊があるだけだ……だから殺しあってるんだろうが』
ホークが指先をパチンと鳴らす。
『だから――最後は思いっきり派手に壊しあおうじゃねえか』
それは、私じゃ想像も理解も出来ないくらい遥か遠くで
想像も理解も出来ないほどの破壊が動き始めた音だった。