「犯人扱い」遺族を唖然とさせた「河野公安委員」
今年に入って立て続けに3人の老人が殺された連続殺人事件。現場となった長野県の飯田市と高森町は普段は長閑な
田舎町ゆえに住民は恐怖の底に叩き落されたが、それも、この9月13日、西本正二郎(27)の逮捕で一応の解決を見た。
金欲しさに起こした無職男の身勝手な犯行だった。
しかし、事件は終わっていなかった。いや、西本の逮捕で、もうひとつの“事件”が浮かび上ってきたのである。
それは警察が犯した重大な過ち。
最初の被害者、島中実恵さん(77)が殺されてからひと月半たった6月10日の朝のこと。実恵さんの娘、桜井好子さん(52)
のもとに突然、警官がやって来た。
「すぐに署に連れて行かれて、何の説明もなく、署名と印鑑を押すように言われました。素直にサインしましたが、
まさに、それがポリグラフを受ける承諾書だったのです」(好子さん)
ポリグラフとは、ウソ発見器のこと。遺族のはずの好子さんは有無を言う間もなく電極コードが延びる椅子に座らされ、
白衣姿の捜査員から次々に質問を浴びせられた。
「凶器は寝巻きの紐ですか」「事件当日、コンビニに行きましたか」……。
まるで容疑者扱いである。だが、次に通された4畳半にも満たない取調室では初老の捜査員から、のっけからこんなことを
言われた。
「犯行現場から見て、(犯人は)身内、家族以外いない」
その後は延々と続く取調べである。事件当日の行動に始まって、家族の行動、財布の中味から生命保険にいたるまで……。
「途中1時間の休憩があったけど部屋から出してもらえず、許されたのはトイレだけ。結局、解放されたのは深夜12時過ぎでした」
取調べは翌日も翌々日も続き、数日置いてはまた呼ばれ……、やがてそれは1週間にも及んだ。
「何度も呼ばれるので、これ以上仕事は休めませんって言ったら、“もう仕事には行けなくなるから、辞めたほうがいい。
早く本当のことを話したらどうだ”と責めるのです」
母親を失ったばかりの彼女を追い詰める警察。あまりの辛さに、ふと認めてしまおうかと思ったこともあったという。
もちろん解放後も警察の監視は続き、いつしか親戚も彼女を避けるようになっていた。
http://www.shinchosha.co.jp/shukanshincho/20041014/tempo.html