お初にお目にかかります。皆様。いえ、どこかでお目にかかった方がいるかも知れませ
ん。こんにちは。海外伝奇RPG「World of Darkness」やGURPSのHPでつらつらと記事
を書いているセミプロ翻訳家、∀蓮花です。
魔獣の絆、購入しました。私の住む京都でもすごい売れ行きで、結構なことだと思いま
す。意欲的なルールであり、是非本格伝奇への道を精進して歩いて欲しいと思います。と、
言ってもじゃあお前が「ガープス・妖魔夜行」「World of Darkness」「ナイトメア・ハン
ター」「In Nomine」といった先駆ゲームを押しのけてプレイするのか、と言われれば、買っ
た以上プレイはしますが、「愛用ゲーム」になるかどうかはさてどうでしょう、これから
です。
一読者として気になったのは、宗教に関する記述です。間違いだらけであることについ
ては、よしとしましょう。元ネタが明白でしらけるのも、国産RPGは今やどれも似たよ
うなものですから非難はしません。
ですが、意図的に宗教を「自分と異質な存在を排斥するだけの存在」としてのみ書くの
はどうかやめてください。世界観である、という主張は一定レベルまで理解します。です
が、私のようなキリスト教徒(兼仏教研究者兼神道研究者)にはとてつもなくつらいので
す。あなたにコンベンション会場で魔女狩りをされる人間の心情がわかるのですか!?
よく聞いて下さい。読者のかたがたも、です。釈尊は夜叉や修羅、人喰らい鰐にも区別
なく説法を行いました。キリストは神の愛は広大無辺であり、その前に許されない存在は
ないと説きました。ヨハネ・パウロ二世は言っています「仏教やイスラム教、世界のあま
ねく宗教に神の光がある」と。
無論これがゲーム用にディフォルメされた宗教であり、実際の釈尊や神(YHVH)の
意志はGMによって違う、という解答なのでしょう。それは理解します。ですが、それを
理解しない人々が、この日本ではあまねく多数であるのです。ですからせめて、少しでか
まいません。次のサプリメントでけっこうです。ほんの一行「ここに記述されている内容
の全てはフィクションであり、実際の教説はこうこうです」、と書いて下さい。
この日本のRPGシーンにおいて、狩られるのは魔物ではありません。我々、別にカル
トでもなく普通に宗教を信じている人々です。それとも、「キリスト教徒は魔女狩りや異
教弾圧を行ったから悪だ」と言うのですか? そうであるなら、現代においても部落差別
や異民族差別を行い、「単一民族国家」などという妄想を垂れ流している我々日本人全て
は断罪されてしかるべきだと思うのですが。
以上、苦言です。ただ、RPGとしての「魔獣の絆」を筆者は最大限に応援しています
し、期待もしています。頑張って欲しいと思います。ですからそれ故に、お願いするので
す。どうか無神論者、それも思索ではなく無知によって神を否定する人々だけのために存
在するRPGだけは作らないでください、と。