ダブルクロスを遊んだプレイヤーの話だよ。5話にわたったキャンペーンもついに
最終回……というところでGMは突然こんなことを言い出したんだ。
「ああ、今回PC1だけは一騎討ちでボスと戦ってもらうよ。仲間と別の場所で
戦う事になるんだ」
仲間を支援する能力しかないプレイヤーはちょっとぶつくさ言ったけど、まあそんな
展開もリプレイにあったしなあ、ってことでキャラクターの能力を調整して、セッションに臨んだんだ。ところがねえ……。
PC1しか近づけないという危険な場所に向かっている間、他のキャラクターは
周囲のザコ敵と戦っていたんだけど、そこになんと事件の黒幕が現れた!
「おいっ、お前が黒幕か!お前のせいでPC1は!」
「ふふふ……まあ聞け。私の正体を教えてやろう」
てなわけでお決まりのボスの口上が始まったんだけど、これがどうにも終わらない。
プレイヤーがさあ戦うぞ、今か今かと身構えるたびに、まあ最後まで聞いてくれ、
もうちょっとだ、とどうにも話が続くうえに、ついにはボスの悲しい過去の回想シーン
まで始まってしまったんだ。
過去のシーンだから当然プレイヤーの出番はなし。
世の中には、人の話なんてこれっぽっちも聞かずにすぐさま問答無用、とばかりに
切りかかるプレイヤーもいるけど、この時のプレイヤーはずいぶんお行儀がよかった
んだなあ。今回はそれが災いして、結局えんえん40分以上もGMの一人語りが
続いちゃったんだ。
「えーい、問答無用。いくぞ!」
ようやく始まった戦いは壮絶なもので、これまたいつまでたっても終わる気配がない。
気がつくと、主人公のはずのPC1は最終回が始まってから、2時間以上出番なし。
これじゃあいくらなんでも、さあ一騎討ちだ、って気合ももたないよね。
ところが、話はこれで終わらないんだよ……。
その相手というのが、近づいたものを化け物にする力を持った怪物で、
キャンペーンのヒロインを体内に取り込んだと言うもの。主人公も気を取り直して
声を振り絞ってロールプレイを始めた。
「じゃあ俺は、『こんなことはもう、やめるんだ!』って中のヒロインに呼びかけるよ」
「『キシャー』どうやら怪物はしゃべれないし、ヒロインも気を失ってるみたいだね」
「……攻撃するよ」
一騎討ちということで他のプレイヤーは手出しをできないし、しゃべれる人間は
ほかにいないし、主人公の口上は誰も聞いてくれないってことで、こっちは淡々と
孤独な戦いが始まったんだね。
これも長々戦いが続いたんだけど、さすがに今度はほかのプレイヤーが2時間
放置される、ってことにはならなかった。途中で仲間たちの前に、NPCが現れたんだ。
こりゃPC1を助けに行けるのかな、と身を乗り出した仲間たち、甘かった。
「彼女は言うよ。『私が助けに行くわ!』」
「ってマスター、ちょっと。ぼくらが行くんじゃないんですか?」
「ああ、だって近づいたら怪物化しちゃうじゃないか。言ってなかったけど、彼女は
実はヒロインのクローンだから、大丈夫なんだよ」
ようやく出番かと思った仲間たちもこれにはがっくり。そのまま彼らは舞台を
下ろされちゃったんだ。あーあ。
結局助けに現れたNPCのおかげであっさりとボスは倒されたんだけど、戦い終わる
頃には一同、すっかりだれちゃってねえ。
GMも思惑と外れることがいろいろあって望みのエンディングを迎えられないまま
最終回は終わったんだ。まだまだ事件は続く、って感じだったらしいけど、あらすじを
後で聞いても、プレイヤーにはちんぷんかんぷんだったらしいなあ。
最終回の演出にしたって、やりすぎると吟遊詩人マスターになっちゃうってお話だよ。
……というのは表向きの話。実はこれ、後日談と言うか”オチ”があってね……。
このセッション、5話にわたるキャンペーンの最終回だって書いたけど、期間は
書いてないよね。
なんとこのキャンペーン、みんなで泊りこんで最初の一話から最終回まで一気に
やってしまおうっていう企画モノだったんだ!
朝から晩まで夜通し5話連続でセッションをするわけだから当然最後の方になると
意識も朦朧としてくるし、シナリオの矛盾が途中で分かっても調整したりする頭が
働かなくなっちゃうんだよね。
一話ごとにプレイヤーの意見を出したり取り入れたりする余裕があればまだ
よかったんだけど、それもできないくらいのせわしなさだったんだろうねえ。
今では、またそのメンツでその最終回の後の話をやるキャンペーンをのんびり
遊んでるらしいよ。こんどはあんまり詰め込みすぎないようにしてひとりよがりに
ならないように楽しく遊んでくれるといいなあ。
なにせ、締め切りごとに徹夜で一気に原稿を書き上げなきゃいけないなんて
羽目になるのは嬉しいことじゃないからねえ!(えっ、違うって?)