【千夜一夜】クロちゃん【二夜目】

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200NPCさん
 またいつもの冒険者たちなんだけど、今日はどうも日が悪いのか、それともマスターが意地悪なのか、
呪文は尽きるわアイテムは尽きるわと言った具合でダンジョンから命からがら逃げ出してきたんだ。
ところが運の悪いときってのはとことんまでついてないもので……。

「(遭遇表を振って)どうやらまたお客さんのようだ。今度は巨人みたいだね」
「またかよ、カンベンしてくれェー!」
「こりゃ今度こそ年貢の納め時かも知れませんね」
「落ち着いてる場合かよ。もうみんな、ちょっと小突かれただけでも死ぬんだぜ!」

 そこで黙々とルールブックを読んでいた盗賊のプレイヤーはこんな事を言い出したんだ。

「おいっ、<交渉>判定に成功すれば敵の態度も変わるらしいぞ!」
「ああ。でもこの巨人は”敵対的”だから、君達のレベルではとても成功しないと思うよ」

 DMはどうせ成功しないだろうとのんきに構えていたんだけど、甘かった。

「なあ、ここに載ってる”支援”ってのをすればボーナスがつくんじゃないか?」
「そうだそうだ、支援だ!僕は土下座をしながら涙を流すよ!これで+2だ!」
「なに、じゃあこっちも土下座だ。さらにさっき手に入れた財宝を包んで渡すよ!
上質の山吹色の菓子扱いで+2だっ!」
「+2だ!+2だ!」
201NPCさん:2006/05/02(火) 22:29:48 ID:???
 ここで+2、+2と言ってるのは、技能とかの判定を多人数で協力して行うときのルールだよ。
「手伝う」ことにしたキャラクターが判定に成功すれば、代表一人の判定にボーナスがつくんだ。
さて、プレイヤーたちがわいわい言ってるうちに、”言いくるめのポーション”なんてのもあって、
気がつくとボーナスは莫大なものになっていたんだ。
 あんまりひどいのはDMが却下してもいいんだけど、ここは全滅させてもかわいそうだと
仏心をだしたDMが全部認めちゃったんだね。

「分かった分かった。それで、結果はどうなったの?」
「えーっと、”友好的”まで行ったよ」
「うーん、それじゃあ巨人は君たちを襲うのをやめて、親切に森の外まで案内してくれる事になった。
巨人と一緒にいるのを見て他の獣たちも襲ってこない。どうやら無事に森を抜けたよ」

 何とか生き残った冒険者たち、酒場で次の冒険のことを話し合い始めた。

「やれやれ!何とか帰って来れたな。だけど、あのダンジョンの敵は強かったなあ…」
「なあに、大丈夫さ。今度は山ほど言いくるめのポーションを持っていって、かたっぱしから
土下座して回るんだ。あのモンスターたちみんなについてきてもらえば、ボスなんかひとたまりもないはずだぜ!」