MTG Sideboard Online 日本語版: 8th Edition
222 :
タイ屋:
決勝: 大磯正嗣 vs. ルーカス・ガルヴィン
Rui Oliveira
はっきり言って、ガルヴィンのデッキをなんと呼んだらいいか分からない。ライフと
セファリッド・リアニメイターが同じ60枚デッキの中に入っているのだ。プレイする
のは信じられないぐらい難しそうだ。ルーカス・ガルヴィンはアメリカがトロフィー
を守る最後の希望である。彼の対戦相手は日本のスーパースター、大磯正嗣で、こち
らはごく普通のアルーレンを使っている。
彼らは英語で賞金の分割をどうするか決めてから、トリッキーなデッキリストを偏執
的に調べ尽くした。一方スーパーボウルを観戦しているグループはかなり騒いでいた。
どうやってその騒音を無視してそんな作業をできたのか、ちょっとわからない。
僕らは実際、それがキックオフよりも前に終わるかどうか比べていたほどだ。
二人ともマリガンしたけれども、展開は早かった。ガルヴィンは《俗世の教示者/
Worldly Tutor(6E)》で《セファリッドの幻術師/Cephalid Illusionist(TOR)》を
サーチ。一方、その間に、正嗣は《極楽鳥/Birds of Paradise(8ED)》からスタート、
《生ける願い/Living Wish(JUD)》から《ヴォルラスの要塞/Volrath's Stronghold
(ST)》に繋いだ。3ターン目にルーカス・ガルヴィンは幻術師を使ってデッキのほぼ
全部(1枚だけ残していた)を墓地に送り込んだ。
それから、2回《陰謀団式療法/Cabal Therapy(JUD)》を使って正嗣の手札を破壊。
次のターン、ルーカス・ガルヴィンが《死体発掘/Exhume(UZ)》を見せると、大磯正嗣
の目が目に見えるぐらい広がった。投了する前に《縫合グール/Sutured Ghoul(JUD)》
が場に出ても、ちょっとおかしな感じで困惑していた様子だった。
こうやって書くと短いけれども、ゲームそれ自体は時間がかかった。毎ターン、常に
間違った選択をする可能性はいろいろあるわけで、二人とも時間を費やして、自分の
プランを正しく進めるために静かに思考を巡らしていた。
223 :
タイ屋:05/02/07 15:07:57 ID:???
2ゲーム目は正嗣にとっていいスタートというわけではなかった。彼は手札を見て、
ほとんど肉体的とさえ言える苦痛を感じたようだった。マリガンか否か、それが問題
だ。結局我らがハムレットはキープを選択。2ターン目に陰謀団式療法でセファリッ
ドの幻術師を落としたが、一方アメリカ人は《コーの遊牧民/Nomads en-Kor(ST)》
と、この対戦で鍵を握る《古の法の神/Kami of Ancient Law(CHK)》を出した。
もっとも、大磯は気にしてないようだった。4マナ揃った彼は《魔の魅惑/Aluren(TE)》
と《洞窟のハーピー/Cavern Harpy(PS)》を出した。ガルヴィンはハーピーにレスポン
スで神を使うかどうか決める前に、ジャッジを呼んでタイミングについて確認してい
た。最終的に彼は神を使うことにした。今度は大磯が対応して、《ワタリガラスの使
い魔/Raven Familiar(UL)》と2枚の《花の壁/Wall of Blossoms(ST)》を出す。魔の魅
惑を守れるものはなかったが、代わりに《吸血の教示者/Vampiric Tutor(6E)》が見つ
かった。
ガルヴィンがターンを返してきたので、それで十分だった。彼はもう一枚魔の魅惑を
引っ張ってきて、陰謀団式療法をフラッシュバックして問題ないか確認する。日本人
が細かいマジックを展開する間、ルーカス・ガルヴィンは無言で座ったままだった。
《オーリオックのチャンピオン/Auriok Champion(5DN)》が《生ける願い》されたので、
大磯を止める方法がないのが分かった。そういうわけで、第3ゲームに進むことになっ
た。
大磯はこのゲームをひっくり返したことで、目に見えて生き返ったようだった。彼は
何秒か天井を見つめたあとで、自分の顔を手のひらで叩いて気合を入れなおしてから、
サイドボードにとりかかった。
224 :
タイ屋:05/02/07 15:10:01 ID:???
またしても、大磯は自分の手札を見てショックを受けていた。彼はとてもキープした
がっていた、そう、マイク・タイソンとの対戦がスケジュールに入っているかのよう
に。ガルヴィンがキープするのを決める前にほとんど手札を見なかった。大磯正嗣は
何度か祈るようにした後で決断を下した。キープ。
彼は極楽鳥からスタート。一方ガルヴィンは吸血の教示者でセファリッドの幻術師を
入手して2ターン目にプレイ。大磯は自身の教示者経由で陰謀団式療法をプレイ。宣
言は失敗、世俗の教示者と吸血の教示者と縫合グールという手札が公開される。再び
彼は長考に沈む。特大の縫合グールに踏み潰される瀬戸際にいるのだ。
たっぷり1分は使った後で、彼は2枚目の極楽鳥をプレイして、ガルヴィンの《禁忌
の果樹園/Forbidden Orchard(CHK)》で出たトークンを使って療法をフラッシュバッ
クした。ガルヴィンはもう一度吸血の教示者を使用、《星明りの聖域/Starlit Sanctum
(ONS)》を積む。
彼はそれを出してさらにタップアウトで《コーのシャーマン/Shaman en-Kor(ST)》を
パズルに追加する。それから丸1分はゲームを止めてから、うなずいてターンを終わ
らせた。大磯正嗣はこれで勝てるのだといった態度でプレイを続けた。ガルヴィンは
セファリッドの幻術師の力で自分のデッキの大半を墓地に送り込んだ。
大磯はあらためて考えて、ガルヴィンの墓地を確認した。彼はたぶん《棺の追放/Coffin
Purge(OD)》が手札にあればと願っていたのだろう。持ってない以上、別のプランがな
いか考えていた。彼の手札は魔の魅惑、洞窟のハーピー、極楽鳥と土地だけだった。
打つ手はないかに見えた。
彼は魔の魅惑を出して、そのまま、非常に驚いているルーカス・ガルヴィンにターン
を返した。このアメリカ人は目の前の日本人がどんな種類のトリックを出してくるの
か、しばらくあれこれと考え始めた。
ルーカス:「手札は2枚? 《蛆たかり/Maggot Carrier(8ED)》はそのうち何枚?」
225 :
タイ屋:05/02/07 15:11:04 ID:???
ジャッジが蛆たかりのテキストをオラクルで調べる間、ゲームがストップした。ルー
カス・ガルヴィンは大磯正嗣が1枚は持っているに違いないと確信している様子だっ
た。グランプリ決勝戦の最終ゲームで大磯がこんなブラフを決めたということになる
のか? ガルヴィンは無言のまま、大磯正嗣のデッキリストを心の中でチェックしつ
づけた。
ルーカス:「よし、持っていたら君の勝ちだ("Well, if you got it, you won.")」
彼は賭けることにして、迷わず土地をタップした。《クローサ流再利用/Krosan
Reclamation(JUD)》を使ってから、《再活性/Reanimate(TE)》をプレイした。大磯が
立ち上がった。この日本人はどうやらブラフを張ったりしていたわけではなかったら
しい。彼は何かをやってのけた。ブロークン・イングリッシュで質問していた。
正嗣:「その再活性のために対象は?("Target for the Reanimate?")」
みんなが彼を見た。対象? そんなの縫合グールに決まってるだろう。いや待て、
ルーカス・ガルヴィンの手札に一枚カードがあるぞ。そそそそそ! それは縫合グー
ル。ガルヴィンはグールを手札に持っていた。彼のプランでは、フラッシュバックで
陰謀団式療法を自分に撃って、グールを墓地に落としてからリアニメートするつもり
だった。
今、彼の再活性はスタックに乗っていた。そのための完璧な対象は手札にあった。彼
は療法を今から使うこともできない。第一それはソーサリーだ。大磯の「プランがあ
る」ブラフが、ルーカス・ガルヴィンを最後の最後で致命的なミスプレイに陥れたの
だ。
226 :
タイ屋:05/02/07 15:13:58 ID:???
観客の誰かが言った「オーマイゴッド!」
ルーカス:「僕には信じられない。信じられっこない。誰もこんなへまなんてやりっ
こない」
会場内の開けた場所では、何人かの日本人プレイヤーがハイタッチをしていた。彼ら
はアメリカにやってきて、グランプリを獲った。グランプリ史上もっともイカした瞬
間の一つに違いない。
グランプリ・ボストン2005の優勝者は大磯正嗣だ!
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原文:
ttp://www.wizards.com/default.asp?x=mtgevent/gpbost05/fin 原題:Finals: Masashi Oiso vs. Lucas Glavin
原著:Rui Oliveira
翻訳:タイ屋
というわけでGPボストン決勝。食堂の食券を忘て昼食食べられなかったので昼休みに
訳した。急いだので翻訳荒い/雑だと思う。