●蓬莱学園の雑談! 5改訂版]●

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506NPCさん
蓬莱学園の終焉

東京都台東区宇津帆島
……そこは廃墟だった。
「数年前には10万人いたなんて、信じられないな」
 かつて生徒たちが笑いさざめきながら通った校舎も、今は風の音を空しく響かせるだけ。
「誰かいるー? おーい?」
 答えるのはウミネコばかり。
 さび付いたパンター戦車、朽ち果てた路面電車、そして環状線の通勤電車は止まったまま動かない。
「終わったんだね……。あたしたちの青春が」
「夢だったのさ。真夏の夜の夢。戻ってくるんじゃなかったよ」
 かつて委員会センターと呼ばれたビルも、窓ガラスは割れ放題で、人気はない。
 あの時は賑わった新町も、赤錆びたシャッターが降ろされ、猫達だけが昼寝の邪魔をとがめるように二人を見つめた。
 クラブ会館も男子寮、女子寮もほこりと海鳥の糞がうずたかく積もり、不在が長期間であったこことを示していた。
「何もかも全部、去ってしまったんだな……誰も彼もみんな……」
 空ばかりが青い。だがそこには複葉機もジェット戦闘機も気球も無い。海にも船は無く、ただ空しい青さを映し出すだけだった。
「この島って人がいないと広いんだね。ごみごみして嫌になるときだってあったのに……。裸人の人とかマフディーとかさ、大嫌い
だったのに、あんな奴らでもいなくなると、……寂しいよ」
 鼻をすする音だけがやけに響いた。白い雲が音もなく流れていく。

 ちりん どこかで鈴の音が鳴った。
「おじさん達、夢の続きを探してるの?」  
507506:05/01/18 02:00:22 ID:???
「え?」
 二人の後ろには、小柄な女生徒がいた。
 懐かしい濃緑の制服、黒髪の下には人形めいた整いすぎている顔、白すぎる手には碁石のようなものが乗っている。
 石が震えると、ちりんという音が再びした。
「ここにはもう何もないわ」
 女生徒の色の薄い唇がわずかに開き、言葉を紡ぎ出した。
「何があったか知りたければ、旧図書館に行けばわかるわ」 
「どういう事だよ? 廃校になったんじゃなかったのか?」
 だがその言葉に何の反応もせず、少女は背を向けた。

 ちりんという音ともに少女の姿がかき消える。
 そして、同時にチャイムがなり始めた。音程が狂って歪んだ音は、二人を嘲笑うかのように響き渡って唐突に終わった。
 黒いカラスたちが、旧図書館の方向でさかんに飛び回って鳴き声をあげた。
 それが終わりの始まりだった。