足立区という名の、土地がある。
東京23区の北に位置する、大きな土地だ。
東京の住人の中には、足立区のことを呪われた土地≠ニ呼ぶ者も居るという。
たしかに足立区には、呪われたとしか思えないような場所がいくつかあった。
江北橋の霊、舎人の奇怪な公園、そして、大谷田陸橋の幽霊。
忌まわしい事件や事故が起こった現場も各地にあり、
西新井駅北側の小さなトンネルにも、幽霊が出ると言われている。
1989年には、綾瀬という地区において、
女子高生コンクリート詰め殺人事件が発生し、
足立区中を、恐怖のどん底にたたき落としたということもあった。
被告の裁判は長い間続いたが、最後には、主犯格やサブリーダーほか
関係者の刑が確定し、今では、退屈ではあるが平和な日々に戻っている。
そんな日々の中で、戦士を夢見る若者が青雲の志を持って旅に出たとしても、
別段、珍しいことではないだろう。その若者の名を、爆竹がパーンと言う。