またーりとGURPS全般の話 〜 the 9th ed. 〜
GURPSマジック・呪文物語『<<他者変身>>』
「皆さん、こっちですよ〜〜〜〜(^−^)」
どよどよどよどよ
富農や調理師マイスター、貴族に連れられた料理人、騎士のような軍人たちの姿が牧草のせせらぎに顕れた。
とても頑丈そうな鉄檻の上には更に金網が据えられており、上にはローブ姿の男が佇んでいた。
檻は3個並べられており、男はその屋根を歩いて廻る。先頭の宮廷商人を見つけると、肩幅より開いた騎馬立ちに、
両腕を膝に置くように垂らして座った。
「元気か天下り(藁」
この風習はかれらが起源を知らないほど根強いのだろう。華美で腹立たしいほど豪奢な宮廷魔術師が、男に構おうとする。
「おめでとう。」
鎌首だけ器用に擡げて、棒読みで返答する兵士服の男。
「それでは皆さん(^▽^)オークション開始です」
落札も、実は出来レースだが誰もそのことを口に出さない。
厩舎には、男が徹夜で練り上げた結果、が犇めいていた。
館内に静謐と大気を突き破る文字を持つ嘶きが別世界を形成する。
その間も、大広場からは牛と獣人型の<ニ本腕の鶏>が檻で毛皮と肉の灼ける匂いを放ち、引き摺り出されていた。
再度登る前に檻の外からくまなく水をかけるのは、男の弟子の仕事だ。男は、彼女に私塾さえ用意してやれないことを悔やんだ。
「1,2,3,4,5、5個。いっぺんにじゃだめですかね?」
「無理ですよー。1個づつにしてください。」
真顔でなんてことをいうのか。無気力な兵士が無茶な注文をつける。後で獄長に注意するよう、魔化長に上申せねば。
「うーむ、それでは」
男は足下の鞭や鏝の痕が残る動物の肌や、麻縄に粗衣の糸屑のように絡み付く毛を視界に収めると、頑丈な鉄の隔たりごしに呪文を掛けた。
館からは競が終わったのだろう、なにかと豪奢な人々が吐き出されてくる。
富農が豚のおこぼれで飲酒するような業界の黒豚は、男は弟子の口にまで入れることはできないだろう。
戦士であるのに樫のロッドを構えた兵士たちが、油断無く、この麗かな良い季節に悲痛な音声を漂わせる頑丈な鉄檻を警戒する。
そんなモノの上に明日の昼まで乗って起きていなければならないわけだ。編まれた魔力が熾き続けている必要が有るのだ。
ただ、動物の檻は臭いが凄いので、便所に移動する必要は無かった。鉄の台の上で膝を伸ばし足下の鉄を踏みしめ、垂れる。
呪文は濫りに使うものではないが、酒も禁止されている食事時には消臭と芳香の呪文だけは欠かせない。
檻番を離れて官給弁当を食べたり煙草を吸いにに移動できる兵士も、たまに居残ってくれた。
だが「呪文は事故ったらあかんど」と注意する老兵が居た。弟子の村を追われた境遇などを自慢したいとは思わないが、
都会っ子、娑婆雑、という単語にはなぜかむかついた。お前は便所に住んでいたのかと小一時間問い詰めたかったが、
持ち場を離れるわけには行かない。
男は、治安が良くなればよいのにと引き篭もりのような取りとめの無いことを祈った。小高い位置なので、都市が見渡せた。