神話編その1
「私の見聞のうち、まずはこの国の神話について語ろう」
「この国の神話では、世界の始まりは太陽の出現から始まる。それ以前は永遠の闇
の世界であったという。太陽が天に輝くと共に大地が大洋から浮き上がり、我々が
イーストエンドと呼ぶこの島が現れた」
「この島に降臨したのがファリス、ファラリス、マイリーの三神であった。この土地
ではそれぞれ別名で呼ばれている。神々は己の似姿である人間を造り、列島に住まわせ
自分たちを崇拝させた」
「また、チャ・ザ、ラーダ、マーファは、この国の神話では中盤にならないと現れず、
別世界から来た渡来神と見なされている。何か文化的な理由からだとは思うが不思議な
事である」
神話編その2
「少し述べておくが、ラーダとヴェーナーは元々は人間であったとされ、チャ・ザは
渡来神、マーファは穀物を司る神としてファリスとファラリスが己の分身として生んだ
神とされている。我々の大陸の神話とはまったく異なっている。私の考えでは、神の血
を受け継いだ【神人】と混同されてこのような神話ができたのではないかと考えている」
「この土地では人間を死後、神々の一員として崇拝する風習がある。多大な功績がある
とか、激しい怒りや不遇を抱えたまま死んだ人間を神とし、神殿を建て日を決めて祭礼
を行うのである。驚くべき信仰と言うべきだろう」
神話編その3
「さらに異様なことに、ファリスとファラリスは兄弟あるいは姉妹であり、双子である
ともされている。これは大陸から来た人間には信じられない事だが、それは神々の信仰
について述べる場所で詳しく語る。ともかく、ファラリスはこの地では重要な主神であり、
邪神であるとは見られていない」
「こうした神々は我々が知る存在と違い、非常に人間味あふれている。マイリーは乱暴者
だし、ファリスは少女のように感情の起伏が激しい。マーファは人間達の侮辱に激怒
し凄まじい災いを地上にもたらしたりする。」
神話編その4
「神話は、我々が知るような神々の戦いで終わるのではなく、ある存在との戦いで
終焉を迎える。おそらく【神殺しの竜】の事と思われるが、【太陽を呑み込む龍】が
突然この世界に現れたのだ。神々は全員でこの龍と闘い、そして深く傷ついた。太陽
を呑むことで世界を滅ぼそうとした龍を封印したものの、神々は己の身体を癒すため
遠い天上世界で深い眠りにつき、もはや地上に直接介入することがなくなったのである」