そして小5のクラス替えで 2年間のブランクからくる気恥ずかしさはなかった
小5のうちは俺には好きな人(と言っても恋には至らない)がいたから
その子はただの友達でしかなかった
学級委員だった俺は運動会の組み分けのとき
その権力をそのとき好きだった子と同じ組にすることに使うほどだった
そうくしているうちに俺の小5が終わりを告げた
その頃からだと思う
俺がその子に恋心を抱き始めたのは
小6の春
小学校での恒例の遠足がある
その遠足のときにはもう俺の心はその子のものとなっていた
俺はなんとかその子の隣を歩こうと努めたが
そのとき俺は困惑を覚えた
なんとライバルがいたのだ
その子と親しげに話すそいつ
俺は負けじとその子の横を歩いた
今思うと周りには俺の好きな人がバレバレではなかったかと思う
その日俺はその子との会話に満足できなかった
だが解散してからその帰り
俺はその子に、一緒に帰ろうと誘われた
俺は今までにないくらい話した
帰りは4時過ぎだったと思う
しかし俺らの話は家に帰り着いても終わらなかった
それから数ヶ月が過ぎた
夏休み
その子は毎日俺のうちに来て
俺たちは一緒に宿題をしていた
宿題も終わり
夏休みも中盤に差し掛かった頃
俺たちは冒険することになる
その子と俺はまた一緒のクラスにあいまみえることになる
クラスが違っても一緒に遊ぶことも多かったからか 学校の規則を破って校区外に遊びにいったのだ
幸いなことに校区外では事故などは起こらず
無事帰ってきた
かのように見えたがそれはまるで逆だった
家に帰ると親が血相を変えて俺を睨んだ
そして俺はみっちり怒られた
その子は怒られはしなかったようだが
注意されたと言っていた
それからは校区外にでることも控えて
今度は夜遅くまであそぶようになっていた
夜、その子の家で遊んでいるときが
俺の至福のときだった
しかし俺はまだ告白できずにいた
小6の秋
理科の実験で、グループを作って夜
星の観察をするという宿題が出た
もちろん俺はその子と同じグループになって
夜星の観察をすることとなる
何度も言うが俺とその子の家は近い
その日も一緒に観察へと出かけた
最初は普通の観察だった
オリオンザも確認して少し俺はロマンチックな気分になっていた
その子も同じ気持ちだったのであろうか
帰り(といっても家からそう遠くない場所だった)に話をしながら帰った
もう家に着くというところでその子は俺に提案をしてきた
回り道をしよう、と
俺は快諾し、いろいろな話をしながら歩いた
話をしだすと時間が流れるのは早い 別れようとしたその瞬間
俺は後ろから抱きつかれた
俺はびっくりしてその腕を振り払った
するとその子は泣き出してしまった
夜なので顔もよく見えない
玄関の明かりだけがその子の顔を照らしていた
俺はなぜ泣いているのかが分からなかった
ただ「女の子を泣かせてしまった」ことにのみ
戸惑いを感じていた
俺はそんなとき
急にその子がいとおしくなった
小6でその言葉は生意気といわれるかもしれないが
そしてその経験はあまりにもあっけなく訪れた
次の瞬間、俺はその子を抱きしめて言った
「・・・好き」
俺の人生、最初で最後の言葉だ
あまりにも短く 且つ とても分かりやすい
いかにも小学生らしい告白だったのではないだろうか
その子はいっこうに泣き続けていた
俺は返事を自分から聞く勇気がなかった
俺が抱きしめていた腕をほどこうと力を弱めた瞬間
「好きっ!わたしも好き!離さないで!」
その子が発した言葉に俺は耳をうあがった
俺は妙な満足感に襲われた
そして妙に冷静になっていた
そして軽くキスをしてからその日の別れを言って家に入った
それが俺のファーストキスだった
END