やれやれ、今日は疲れた一日であった。蟹鋏君の意見を参考に、
Prodisc のフタロ Teac CD-R55Sの 4倍速モードで書いたもの
太陽誘電のシアニン PX-W2410A の 4倍速モードで書いたもの
を用意する。原盤はグラモフォンの Karl Boehm + Wiener Philharmoniker
の Beethoven Symphony No.6. 「本当の音」のアナログディスク
も持っているから、比較に便利かと思って選んだ。書きソフトは
CDWWIN。一度イメージファイルを作ってから、焼いた。
視聴室へ行って再生しようとすると、アンプ系がすべてディジタルである
ことに気が付く。こりゃ、だめだ。となりの映像調整室へ行って、そこの
スタジオモニタで間に合わせることにする。こちらのオーディオ系には
アナログ信号入力もあるので。そこに、まず SONY 555ESJ という高級(?)
CDプレーヤーをつないで試聴するも、原盤、フタロ、シアニンで差が
わからず。安いプレーヤーのほうがいい、という意見を思い出して、
SONY CDP-597 とかいう 3万円くらいのをひっぱりだして聞いてみるが、
差がわからず。ついでにいえば、555ESJ とCDP-597の差もわからず。
なにか、がっかりする。
ついでに、と CDP-597を分解し、ピックアップから RF信号をひっぱり
だす。オシロを接続して、みなさんおなじみのアイパターンを観測し
ました。波形のピークピーク値は:
原盤 0.6Vpp
シアニン 0.5Vpp
フタロ 0.4Vpp
で、反射率に差があるのがわかる。確かに原盤のジッタも少ない。
ジッタがないと、アイパターンの網目模様がはっきりする。昔の
伝送エンジニアは、これを「アイ(目)がぱっちり開いている」
といったものだ。
シアニン、フタロは目の開き具合いもこの順に悪くなる。しかし
時間軸の乱れというより、信号の電圧値が低くなっている影響の
ようだ。
あれだけの波形の違いが音で聞けないのか、やはりお前の耳は腐って
いるのか、と言われそうだが、この違いが音に出ないのがディジタル
オーディオの原理なのである。しかし腐った耳には聞こえなくても、
計測器の耳にはなにか引っ掛かるかもしれないと思い、1kHzのサイン
波、および矩形波を記録した CD (フタロおよびシアニン、書き込み
機は 55Sと 2410Aでともに 4倍速) を作成し、FFTアナライザでスペ
クトル純度および側波帯の広がりを計測する。ノイズフロアは
-95dB(理論値どおり) に出る。ジッタの影響は、まったくない。
まずは検証して貰ったことに多謝する。
違いが分からなかったという結果には残念であるが、
>>336の後ろの2行から
個人差によるものだと納得する。
DACのタイミングに「ジッタ」が到達していないことを確認するため
に、CDプレーヤーのクロック信号 (11.29MHz)を観測する。ADコン
バータの動作はこれに完全に同期していること、逆にピックアップ
からのRF信号(ジッタを含む)は、まったくクロックとは関係ない
タイミングで読み出されていることを確認する。
もしクロックにタイミング的な揺れがあれば、スペクトラムアナラ
イザでスペクトルの広がりとして観測される。マスタークロック
をスペアナ (HP8563E)で観測。11.29MHz を 30Hz分解能で観測し
たが、どのディスクを演奏しても、差なし。駆動系等は読み出し
タイミングに有意な影響は与えていないと結論してよい。
ああ、まだ途中ね。失礼。
本日試みた限りでは、メディア/書込み機の違いによる音質差は、耳でも、
測定器でも検出できなかった。理論どおりのことで、当然の結果である。
昨日までは音質に差があるかどうかを検証するには、1000人くらいを動員
して聴取テストしなければいけないかと思っていたが、プレーヤーがこれ
だけ理屈どおりに動いているのを見ると、考えが変わった。差がないこと
を立証するテストは簡単だ。2台のプレーヤーに同じマスタークロックを
供給して同期をとっておき、異なったメディアに焼いた同一音源を再生
する。再生波形のずれはクロック周期の整数倍だから、遅延素子でその
補正をして、アナログ出力波形を比較すればOK。これなら数10万円で
実施できる。波形が合致する(音の差がない)という結果が出るのは
ほぼ確実だが。
やった。蟹鋏の勘違いが証明された。
(・∀・)イイ!
>>サーボ系のジッタ???
うーむ、こりゃどこかの企業が大がかりなブラインドテストを
実施してくれないものかなと思ってしまったりする。
エンジニアのようだから聴いてみるが、他に音質に影響を与える要素は
何か思いつかないか?
こうなると、「音に差がある」が本当で、それが聞いている人の思い
違いでないと仮定して、何が起きているのか、たいへん興味深いこと
である。
まず、メカ駆動系の大電流による雑音が、DAC以後のアナログ系に混入
している可能性がある。これは主にプリント基板パターン設計の問題
だ。アナロググラウンド/ディジタルグラウンド分離などを正しく
行なえば回避できるが、安価なプレーヤー(通常、これ)ではモーター
駆動から DACまでオールインワンの制御ICを使っているので、場合
によると不可避的にこれが発生する可能性がある。
プレーヤーのディジタルアウトに外付けDACをつないで再生して、
音の劣化がなくなる(どんなメディアでも同じ音になる)なら、上記
が原因だったと推定できる。
外づけDACを使っても、メディア差があるようだと、原因はまた別の
ファクターを考えなければならなくなる。使用プレーヤーが、信号
レベルの影響を受けやすいもので、フタロ CD 程度の反射率だとC2
でも訂正できないほどエラーが頻発している、などが原因の候補に
なる。
残念ながら、オレの環境(プレーヤー、人間、測定器)では、メディア
による差を検出できなかった。差が発生する(検出できる)環境
において、だれか外づけ DACの試験をしてみてもらえないか。
(報告終り)