「このひとさ」
「ん」
「ものすごくマッチョなのはそれがうりなんだろうからいいけど、
ほんとにもてるのかな?妄想だったらそんなのふれて回られちゃ迷惑」
「ん、ユキ、そんなん気にしてたんか」
「うん、ちょっとね、聞き流せなくて。
とくに気になったのが『女は助手席に乗せてみたらわかる』ってとこ。
いい女だったら車庫入れのとき協力してくれるのはもちろん、
運転中もお茶を口に運んでくれたり、お菓子を口に入れてくれたりして
尽くしてくれるって。そんな人いないでしょ。
接客中のホステスさんだってしないよきっと」
「自分こそマザコンなんじゃないか?」
「もしいても、「あいつは男の前でだけ働き者だ」って嫌われてるタイプだと思う」
「厳しい・・・」
「だいたい『助手席に座らせてもらうなら恐縮しろ』なんてへんだよ。
ただで送り迎えしてもらっている、というのならまだしも、
デートなら好きで運転してるわけじゃない。
車の運転するくらいでこんなに威張らないで欲しい。
このひと、自分が女の人に運転してもらうときにも
お菓子口に入れてあげたりするのかね。気持ち悪い」
「正論ですが、ユキさん」
「なに?」
「いつになく辛らつですね」
「・・・大神は、ボクに愛情がないなんて思わないよね?」
「ユキに愛情がなくて誰にあるんだ」
「本質的に男が嫌いだから夫や息子を骨抜きのマザコンに育てようとしてる
なんてちょっぴりも思わない?」
「思うわけないだろ」
「よかった。ちょっとだけ、ほんのすこしだけ図星を指されたような気がしてたんだけど」
「気がしてたのっっ!?」
「大神さえボクを信じてくれてたらいいの・・・ふふ、怒って損しちゃった」
「・・・ちょっと、読み返してみようかな・・・」