ジャンプキャラ・バトルロワイアルSS投下専用スレ PART.1
認識にも拠るんだろうが、絵柄に忠実な場合他作品のキャラは言葉の通じる宇宙人くらいに思ってるのかもしれん
外国でさほど親しくない知り合いと遭遇したらなんとなくお茶してしまうとかそういうレベル
だが荒れる荒れない以前に、ここは投下専用スレなんでそういうのはもう一つのスレに書いた方が良い
俺ももう書き込まない
「つまり君は殺し合いなんてやめてみんなで協力してこのエレガントなゲームを脱出しようと?」
「もちろんだ!」
趙公明は不敵な笑みをたたえながらカズキを見た。
見慣れない服を着た人間の少年からは、いくつもの死線を潜り抜けたと思われる強さを感じる。
だがあまりにも未熟、ハッキリ言って自分の敵ではないだろう。
「フフフッ、君の勇気には敬意を表するがお断りするよ。
せっかく鍛えた力なのだから今ここで使わずしてどうするというんだい?」
「力は人を守るためにある! 殺し合いなんかに使っちゃ駄目だ!!」
「君とは話が合わないようだな、邪魔だから引っ込んでてくれたまえ」
趙公明は手の内で如意棒をクルリと一回転させると、棒先をカズキに向けた。
「伸びたまえ如意棒!」
赤い光を放ち矢のような速度で伸びる如意棒が、正確にカズキの首を狙う。
慌ててドラゴンキラーで受けようとした刹那、風の刃が如意棒を弾いた。
打神鞭を構えている魔性の美女は風を操りながら趙公明とカズキの間に入る。
「何の真似だい? 妲己」
「あはん。趙公明ちゃんには悪いけど、わらわはこの坊やの側につくわん。
あなたなら知ってるでしょうけど、わらわは元の世界に戻ってジョカ様に協力しないといけないの。
太公望ちゃんにもやってもらう事が残っているし、優勝して一人だけで帰っても仕方ないわん」
「太公望君か。彼とこの世界でゴージャスな戦いを繰り広げるのも悪くないね」
「悲しいわん、殷ではあんなに仲良くしていたのに、今はすっかり平行線ねぇ」
妲己はわざとらしく頬を涙で濡らしながら大気を練る。
仙道以外が使えば体力を大幅に消費する宝貝だが、妲己は仙道の中でも最強クラスの実力者だ。
いかに力を制限されたこの世界においても、打神鞭程度の宝貝を操るなど造作も無く、体力の消耗もほとんど無い。
しかし、打神鞭の威力が元の世界より大幅に落ちている今、趙公明を相手にどこまで戦えるだろうか?
あの如意棒という武器は非常に丈夫で伸縮自在、武器の扱いに長ける趙公明に持たれていてはやっかいだ。
カズキという少年と二人がかりでかかれば追い詰める事はできるだろうが、半妖体になられては返り討ちにあうだろう。
(ここは逃げた方がよさそうねん)
「逃がさないよ」
妲己の考えを読んだ趙公明は如意棒を振りかざして飛び掛ってきた。
「危ない!」
カズキは妲己を押しのけドラゴンキラーの刃で如意棒を弾く。
なかなかよい反応に趙公明は小さく笑った。
「ハハハ、暇つぶし程度にはなりそうだよ!」
趙公明はさらに攻撃を続ける。
真っ直ぐに顔を狙って突き出した如意棒をカズキに首だけ倒して避けられると、
そこから手首のスナップを利かせて横薙ぎに首を打つ。
威力こそほとんど無いもののバランスを崩してしまったカズキは倒れまいと踏ん張るが、腹部に趙公明の膝が叩き込まれる。
内臓を揺さぶる衝撃にカズキの視界が一瞬混濁する。
趙公明は続けざまに脳天へ如意棒を振り下ろそうとして、力いっぱい後ろに飛んだ。
刹那、趙公明のいた位置を鋭い輪状の風が切り裂く。
「あはん! わらわを忘れないでねぇん」
「さすがに二人相手じゃ分が悪いかな?」
互いに余裕の笑みを崩さないまま対峙する最強の仙道。
妲己は打神風を何発も連続で放つが、趙公明はそのすべてを如意棒で弾き飛ばした。
弾かれた風の刃は近くにあった建物の壁にぶつかり、傷ひとつ作る事無く霧散する。
「どうしたんだい妲己? 何やら奇妙な制限を受けているとはいえ、そんなそよ風しか起こせないのかな?」
「何なら趙公明ちゃんも宝貝を使ってみたらん? 悲しいくらい弱体化してるわよ」
「という事は、この棒を支給された僕はラッキーだったという事かな? そら、伸びるのだ!」
伸ばした如意棒を巧みに操り、勢いをつけた一撃を妲己の頭上に振り落とす。
妲己は軽やかに地を蹴って如意棒を避けると、カズキのかたわらに着地した。
「そういえばお名前をまだ聞いてなかったわねん。私は妲己ちゃん、向こうは趙公明ちゃんよぉん。あなたは?」
「お、俺は武藤カズキ。君達、中国っぽい名前だね」
「中国?」
おや? と妲己は首をかしげた。
ジョカ様の予定によれば、中華人民共和国が成立するのは数千年も後の事だ。
という事はこの少年、自分達のいる時代のはるか未来からこの世界に召喚されたらしい。
「ウフフ、面白いじゃない。カズキちゃん、後で色々お話しましょ」
蟲惑的にささやいた妲己は、カズキの頬を艶やかな指で撫でる。
するとカズキの頬がポッと朱に染まった。年上好きのカズキにとって妲己は非常に魅力的だった。
もっとも、妲己の実年齢が大幅に……という言葉さえ小さく思えるほど上回っているとは夢にも思わなかったが。
「妲己くん、お喋りは終わったかな?」
趙公明は伸びたままの棒を持ち上げ、力いっぱい横薙ぎに払う。
妲己はカズキの頭を地べたに押さえつけて棒を避け、地面スレスレを這う風の刃を放った。
本来の威力には及ばないが、まともに当たれば足に深い傷を負って動けなくなるだろう。
「おっと!」
趙公明は華麗なジャンプをしながら如意棒を縮め、空中でクルリと横に一回転した。
「アン・ドゥー・トロワ!!!」
回りながら再び伸ばした如意棒は十分な速度と遠心力を加えられており、
咄嗟にドラゴンキラーの甲で防いだカズキは自分を押さえていた妲己もろとも1メートルほど吹っ飛ばされた。
「うわっ!」
「キャアン!」
地面に倒れ身体に埃がついた事に苛立ちながら、妲己は頬に冷や汗を垂らしてた。
「さすが趙公明ちゃん……初めて使う武器なのにあそこまで使いこなすだなんて……」
「アハハハハ! 僕はゴージャスな戦いを演出するために様々な武器の扱いを習得しているのだよ!!」
着地した趙公明はすぐさま如意棒を縮め、伏したままの妲己とカズキに肉薄した。
接近戦じゃ分が悪いと妲己は逃げようとするが、さっきの衝撃で身体を上手く動かせない。
「さあ妲己くん! 年貢の納め時だよ!!」
「くっ……!」
敗北の予感に妲己は怒り、打神鞭を握り締めた。今さら風を撃っても趙公明の接近は止められまい。
せめて一矢報いてやろうと、相討ち覚悟で打風輪を生み出す。
だが妲己が打風輪を放つタイミングを見計らっているその時、カズキが吼えた。
「ウオオオオオオオオオオオ!!」
気力で立ち上がったカズキはドラゴンキラーを力いっぱい振り上げ趙公明に向かう。
普通の人間かと思ったが、身体能力は天然導士ほどではないにしろ常人離れしているらしい。
予想外の事態に趙公明は笑う。思ったより楽しめそうな相手じゃないか、この少年は。
(今だわっ!!)
喜悦に意識が傾いた刹那の瞬間、妲己は打風輪を趙公明目掛けて撃ち出した。
打風輪とドラゴンキラーの同時攻撃。
完璧なタイミングで放った妲己の一撃は、カズキの攻撃が到達するのと寸分たがわず趙公明を襲うだろう。
今さら立ち止まれない、避ける暇も無い、防げるのは片方だけだ。
だが趙公明は斜め下に如意棒を突き出し叫んだ。
「伸びろ!」
コンクリートの地面に接してなお伸びる如意棒に身体を持ち上げられた趙公明は、
走っていた勢いを殺さず棒高跳びの要領で飛び上がろうとしていた。
これなら両方の攻撃を避けられる。妲己は作戦の失敗を悟りながら、よろよろと立ち上がる。
「フハハハハ! 残念だったね妲……」
高笑いをする趙公明の左足に突然熱い感触が走る。
カズキのドラゴンキラーが趙公明の足に小さな傷を負わせたのだ。
如意棒に上空へ持ち上げられながら趙公明は感嘆する。
ただの人間かと思ったら、妲己の協力があったとはいえこの自分に傷を負わせるとは!
「ハハハハハ! カズキくんだったね、素晴らしい!」
全力で走っていた勢いが強かった事と、感動によって一瞬我を忘れたせいで必要以上に伸びた如意棒のせいで、
趙公明は予定していたよりも高く遠くへ飛んでしまった。
それを好機と見た妲己はカズキに向かって駆け出しながら、打神風を着地地点に向けて放つ。
「むっ」
風の刃を逃れるため趙公明はさらに如意棒を伸ばし刃が通り過ぎるのを待たなければならなかった。
その隙に、妲己はカズキの手を取って全力疾走する。
「しまった……」
打神風をやりすごした趙公明が着地した時にはもう、妲己とカズキは建物の陰に入っていた。
慌てて後を追う趙公明だが、結局二人の姿は見つからずじまい。
「フフフ……カズキくん。この借りは必ず返すよ……エレガントなゲームの中で!」
中国三大怪奇小説の中でももっともマイナーとされる『封神演義』をカズキは知らなかった。
超有名な妖怪、金毛白面九尾の狐の伝説も、中国から日本にそういう妖怪が来たという程度の知識しかない。
だからこの妲己という女性が何者なのか、名前を聞いても気づけなかった。
妲己が紀元前の中国から来た仙女であり、自分同様ゲームを脱出しようと思っている。
それだけ分かれば十分だとお人好しなカズキは思った。
大阪の街を縫って逃げた二人は、大阪郊外にある民家で身体を休めていた。
同室のベッドに妖艶な妲己と並んで腰掛けている現実に、カズキは緊張を覚える。
本当に古代中国から来たのかという際どい水着のような衣装は、仙女だからという理由で無理矢理納得した。
「あはん。よかったらカズキちゃんの事、詳しく教えてもらえないかしら?
人間にしてはずいぶんと体力があるみたいだし、あなたの時代の人間はみんなそうなのん?」
「そうじゃないよ。俺は錬金の戦士の特訓を受けてるんだ」
カズキから情報を引き出しながら、妲己は時折うぶな少年の手を握ったり、
腕に胸が当たりそうなほど寄り添ったりと、巧みに少年の心を揺さぶる。
スーパー宝貝傾世元禳があればもっと簡単に誘惑できるが、傾世元禳が支給されているとは限らない。
しかしそれでも妲己は男を誘惑する術を学びつくしていた。
こういう純情そうな少年はあからさまな色仕掛けより、こういった何気ない仕草の方が効果的。
カズキはともに趙公明と戦った事もあって、妲己に心を許しつつあった。
少なくとも、妲己の本性を知るまでは全力で彼女の力になってくれるだろう。
「ねぇねぇ、よかったらあなたの時代の事や中国の歴史を知ってる範囲でいいから教えてくれないかしらん?」
「うっ、うん。でも中国の事はあまり詳しくないなぁ。日本史なら普通の高校生レベルの話は出来るけど……」
「わらわはこの国の事をよく知らないわん。地理でも歴史でも教えてちょうだい」
妲己はカズキの肩にそっと自身の頭を預けた。
美女の甘い香りがカズキの鼻腔をくすぐり、心臓が早鐘のように脈打つ。
……否。脈打っているのは心臓ではなく、武装錬金を封じられた黒い核鉄だった。
その真の力を秘めたまま、静かに開放の時を待つ魔性の金属。
恐らく過酷な未来が待っているだろうカズキだが、今は妲己とともに一時の安らぎを得ていた。
その安らさえ偽りを孕んだものだと知らず……。
【黎明】
【大阪難波】
【趙公明名@封神演義】
[状態]:左足に軽傷。
[装備]:如意棒@ドラゴンボール
[道具]:荷物一式
[思考]:1 エレガントな戦いを楽しむ。太公望、カズキを優先。
【大阪郊外の民家】
【蘇妲己@封神演義】
[状態]:軽度の疲労
[装備]:打神鞭@封神演義
[道具]:荷物一式
[思考]:1 カズキと一緒に夜明けまで休む。
2 どんな事をしてもゲームを脱出し元の世界に帰る。可能なら太公望も連れて戻る。
【武藤カズキ@武装錬金】
[状態]:軽度の疲労
[装備]:ドラゴンキラー@ダイの大冒険
[道具]:荷物一式
[思考]:1 妲己と一緒に夜明けまで休む。
2 ゲームを脱出するため仲間を探す。斗貴子、ブラボー優先。
3 蝶野攻爵がこの状況でも決着をつける気なら相手になる。
4 ゲームから脱出し元の世界へ帰る。
207 :
守るべきもの:2005/07/09(土) 19:01:55 ID:EyGIn/HN
アイゼンと言う男を殺す。星矢の頭の中にはそのことしかなかった。
一刻も早く岡山へ。
焦る気持ちは疾風迅雷の速さで鳥取県を突き抜けた。しかし……
星矢の早さは警戒心を無視した無謀な突撃だった。
中国自動車道は左右を森に囲まれた潜伏するにはうってつけの場所だ。
「手を挙げなさい。坊や!!」
不意に森の方から声がした。そして機械音。相手は間違いなく銃をもっている。しかし、あの声は……
女性のものだ!!
「聞こえなかったの?手を挙げなさい!」
間違いない。あれは女性だ。
星矢は両手を挙げて、
「お、俺には殺し合いをする気なんかないよ。ほら、武器も持ってないし、
そっちこそ出てきてくださいよ!」
女の人とは戦いたくないよ……星矢の無垢な気持ちは女性の心を動かした。
「わかった。今出ます」
姿を現した女性の身長は180cm近くあり、長いブロンドの髪でかなりの美人だ。
その手にはサブマシンガンが握られている。
その姿を見て星矢は赤面した。
「フフッ。可愛い坊やね。赤くなっちゃって。」
「こ、子供扱いは止めてください。俺の名は星矢です。」
彼女の笑顔に星矢はもじもじしながら答えた。さすがの聖闘士も女には弱い。
「あら、ごめんなさい。私の名前は麗子。警察官よ。このマシンガンは私の支給品。運がいいのよね。私。」
支給品。その言葉を聞いて星矢の目から涙がこぼれた。石崎のことを思い出したのだ。
星矢は泣きながらこれまでの経緯を麗子に話した。
「ふーん。確かにアイゼンとかいう人は許せないわね。よーし、私も手伝ってあげる」
戦いは男の仕事。そう思っている星矢には麗子の言葉が信じられなかった。
「大丈夫。私は警察官だし、五輪でも金メダルとったことあるんだから。
そこらの男より頼りになるわよ」
男勝りの麗子の発言に戸惑いながらも、共闘を了承した聖矢。
(俺が今為すべきことは二つ。石崎さんの敵討ちと、麗子さんを守ることだ)
【岡山県北部初日黎明】
【マシンガンチーム】
【星矢@聖闘士星矢】
【状態】健康
【装備】なし
【道具】なし
【思考】1.麗子を守りつつ愛染を殺す。2.ハーデスを殺す
【秋本・カトリーヌ・麗子@こち亀】
【状態】健康
【装備】サブマシンガン
【道具】支給品一式
【思考】1.星矢に協力する。
「(思ったより力の消費が激しいな)」
男は近くの木に座り込み、デイバックの中に仕舞っている盤古幡を見つめ、考える。
私はこの宝貝、盤古幡をどこまで使いこなせるのか。
先刻の戦闘では重力を50倍に増加することが出来た。全力で行えば100倍は到底無理でも、それに近い出力が出るだろう。
攻撃を広範囲に行え、一方的に重力を倍増させることができるこの宝貝、支給品の中でも間違いなく最強の部類に位置する。
唯一つ問題があるとすれば、使用者の力を大量に消費すること。
スーパー宝貝であるこの盤古幡は通常、本来の持ち主である崑崙の教主元始天尊以外が使用すると1分で死に絶えるという恐ろしい物。
この世界では盤古幡の力が弱体化しており、その分、力の消費も抑えられている。
が、それでも盤古幡を使用した場合、極度の体力の消費を避けられないだろう。
「(50倍…あれでも余力を残したつもりだったが…予想以上に体力を消耗した。全力で発動すれば半日は確実に動けなくなるだろう)」
藍染は考えを改める。私はこの盤古幡を侮っていた、と。
例え動けるようになったとしても、恐らくまともな歩行すら困難だろう。1日回復に費やしてもどこまで元に戻るか分からない。
「(15倍の時点では平気だった。それでも鬼道を数発繰り出す程の力の消費なのだが。しかし50倍はその程度の消費では済まなかった)」
盤古幡の出力を50倍にまで上げたあのとき、愛染は体力の半分以上を持っていかれた。自分の意思で消費したのでない。
気がつけば吸い取られていたのだ。まるで盤古幡が愛染を殺そうとするかのように。
「(この宝貝…盤古幡には意思、のようなものを感じ取れた。そして、その意思は…)」
拒絶。この盤古幡は私を受け入れていない。故に私を殺そうとしたのか。なんと気位の高い武器だろう。
宝貝は本来、宝貝自身が主と認めない限り、仙道であろうがその手に持つだけで体力を吸収する。
更に使用するとなると、せいぜい数発が限度である。
この何もかもが制限されたこの世界、通常の宝貝であれば、主と認められていなくても使用する分では何も問題ないだろう。
威力は軽減されているが、その分、上記のデメリットもある程度軽減されている。それでも力の無いものが使えば有害だろうが。
しかし、このスーパー宝貝『盤古幡』は違う。この盤古幡も力を制限され、デメリットも軽減されているが、それでも格が違う。
主と認められていない者、力の無い者が持てばたちまち力を吸い取られる。更に使用するとなると、下手をすれば命さえ奪われるだろう。
その比は通常の宝貝とは全く異なる。藍染もそのことを理解していたからこそ、普段はデイバックに仕舞っているのだ。
今は平然と木に座り込んでいるが、その実は盤古幡を使用して消費した体力を少しでも回復させてようとしている。
藍染は決して弱くない。むしろ尸魂界、いや、護廷十三隊でも最強の部類に属するだろう。
しかしその藍染ですら盤古幡に主と認められず、その結果、休息を余儀なくされたのだ。
「(だが、いつかはこの盤古幡に私を認めさせ…いや、私に屈服させて使いこなしてみせよう。さすれば…)」
「(外傷は無い。だけど体の内部、内臓にダメージがあるな…くそ)」
キルアは今、愛染の背後から数メートル離れた場所にいる。あの戦闘の後キルアは藍染の軍門に下った。
が、隙あらば藍染を拷問にかけ、この世界からの脱出方法を吐かせようとしている。
藍染の背後にいるのはそのためである。しかし、先程の戦闘でその全身に盤古幡の力を浴びたキルアにそれは出来ない。
いや、正確に言えば、ダメージのせいで動きが鈍くなっており、藍染に全く隙が見当たらない現状では不可能なのだ。
「(あのやろう…あんなとんでもないもん使っておいて、平然と本なんか読んでやがる…)」
キルアは知らないが、藍染は盤古幡を使用した代償として、半分近く体力を消費している。
しかし藍染はそれを全く悟られず、更に隙さえ見せていなかったのだ。
「(戦いの後、あいつは俺の能力『念』ついて訊いてきた。苦し紛れに『燃』を教えたが、あの野郎のことだ。
すぐに気づくだろう)」
『燃』とは『念』の存在を隠すために方便として使われる教え。
その教えは大まかに言えば、心の中で強く念じることによって、力を得る、といったものである。
「(俺の念、オーラを電気に変える能力をあいつに見られていたら、即座に看破されていただろう)」
不幸中の幸いである。キルアが先程の戦いでその能力を見せていたらものの一瞬で嘘と見破られていただろう。
だが、石にオーラを込めて投げつけたことで『燃』では説明できない事象を見られてしまった。
…もしかしたらもう気づいているかもしれない。だが、あいつは今のところ、念に興味は無いみたいだ。
恐らく、あの本を読み終えてから本格的に念を調べ始めるのだろう。
もしそうなれば下手すれば俺の命が危ない。俺はあいつに嘘をついたから。
そうなる前に、脱出方法を聞きだして逃げなくては。だがどうする?現状ではそれは不可能。
なら今から逃げるか?…駄目だ、体はなんとか戦闘を行える状態に戻ったが、もう一度あの武器を使われたらおしまいだ。
あの武器がある限り一人で奴を締め上げるのは無理だ。…仲間が必要だ。数人、それも強力な力を持つ仲間が。
いくらあの武器が広範囲に攻撃が行えるとしても数人いれば…なんとかなるかもしれない。
希望的観測に近い考えである。それはキルアも分かっている、しかし一人では何も出来ないのも事実。
「(…今は体の回復に努めるか…)」
キルアは待つ。藍染の背中を見つめながら。…奴が隙を見せる一瞬を。
「おい、あいつらどう思う?」
「う〜む…そうだのう」
藍染とキルアを遠くから見つめる影が二つ。それは太公望と富樫であった。
二人は四国へ向かうため下山していたが、近くから叫び声が聞こえたのでここまでやってきたのである。
幸いにも太公望たちは下山の途中であったため、森と街道の境目にいるキルアたちを見下ろす形になり、
キルアたちには決して居場所を悟られることが無い位置つくことができたのだ。
「わしらのような関係ではないということはたしかだのう」
「どういうこった?」
「純粋な協力関係ではないということじゃよ。あの子供を見るのだ。あの顔は明らかにダメージを負っている顔だ。
見たところ出血は無いようだからおそらく内部のダメージだろう。そんな子供を放っといてあの袴の男は悠々と
書物を読み耽っている。仲間なら心配して近寄ったり、介護するなりするものだ。おそらく主従関係に近い関係、
どうやらあの袴が主で、あの子供は何らかの理由であの男の元におるのだろう」
太公望はその異様な光景を眺め、そう察した。
だが、太公望の関心はそれにはなく、彼らがゲームに乗っているか否か、どのような能力を持っているか。
その二点がひたすら気になっていた。どのような能力を有しているかは定かではないが、
あの子供がダメージを負っていることから彼らが戦闘を行った(どこで誰と戦ったかは分からないが)ことは明白。
それが自衛のためなのか自ら戦闘を仕掛けたのかはわからない。用心に越したことは無いだろう。
「富樫よ、多少予定が変わるが、ここでやつらを観察するぞ」
富樫は静かに頷く。ここはあの二人から多少距離があるとはいっても、どのような能力があるかは定かではない。
警戒のため声も最小限に抑えておく必要がある。居場所を悟られないためにも。
「(あやつらは今しばらくここで休憩をとるつもりだのう。行動を開始する前に見極められれば良いのだが)」
彼らが動き始めたとなると、必然的に追尾しなければならない。その場合、太公望と富樫の目的
四国へ渡ることを断念せざるを得ない。それはまだいい。一番危惧すべきことは彼らが都市へ向かうこと。
人を探すのならば都市へ向かうのは間違いではない。しかし太公望たちが一番に優先するのは自身の安全。
仲間を探す者、ゲームに乗った人間、その他の目的を持った人間、様々な人が集まり、
かつ山林に比べて身を隠す場所が少ない都市は武装が貧弱な太公望と富樫にとって危険極まりない場所である。
彼らがそのような場所へ向かうなら彼らの監視を中止せざるをえない。
太公望たちがあくまで監視を行うのは、自身の安全が極めて高い場所いることが絶対条件なのである。
「(さて、どうするかのう…彼奴等に何かしらのアクシデントでも発生すれば見極めれるのだが…)」
目の前の美しい長髪の女性を見て思い出す。
アテナ……沙織さんは一体どうしているだろうか。
星矢はハーデスとの聖戦後のことを何も覚えていない。
エリシオンにて、星矢はハーデスの剣からアテナを守るためにその身を犠牲にし、心臓を貫かれた。
星矢は薄れゆく意識の中、確かに感じ取ったのだ。、壮大で心安らぐ小宇宙とアテナと地上の愛と平和を守ろうとする小宇宙、
アテナと一輝達の小宇宙がハーデスの邪悪な小宇宙を見事打ち倒すのを。
ハーデスが倒れたことによって漆黒の闇に彩られた冥界は崩壊し、地上は光を取り戻した。そして光溢れる地上へ帰ったのだ。
星矢が覚えているのはここまで。アテナと仲間と共に地上に帰ったあとの記憶は何も無い。
自分が生きているのか死んでいるのかさえ分からない。だが、今となってはそんなことはどうでもいい。
星矢の頭の中で渦巻いている疑念、それはハーデスが生きていたこと。
あのとき、俺たちはアテナと共に確かに冥王ハーデスを打ち倒した。それは間違いない。
なのになんであいつは生きている?なんであの場所にいた?
星矢は主催者と名乗る者たちの中にハーデスがいるのを見つけたとき、言葉を失った。
全身を黒衣のローブで覆っていて顔は確認できなかったが、あの禍々しくも、神々しく偉大な小宇宙…ハーデスに間違いなかった。
俺達の戦いは無駄だったのか?ヤツは何度でも蘇るのか?…様々な思いが脳裏に浮かぶ。
死してなお、地上の平和とアテナを守るためにその誇りすら捨ててハーデスの尖兵として蘇ったサガとデスマスク達。
サガ達の真意を知らずとはいえ、かつての仲間と命をかけて戦ったムウ達。
そして…神しか通れない嘆きの壁にて、アテナと俺達のために命を散らした十二人の黄金聖闘士。
彼らの死は無駄だったのか?俺達が流した血は意味が無かったのか?
…いいや、無駄じゃない。少なくとも俺達は生きている。一輝、サガ、デスマスクもいる。
必ずみんなの力を合わせて他の主催者もろとも倒す。これ以上の犠牲を出さないためにも。
「どうしたの?涙なんか流して…辛いことでも思い出したの?」
星矢はいつのまにか涙を流していた。思い出していたのはアテナと仲間達のことだけではない。
先程までサッカーを心底楽しそうに語っていた…石崎のことを思い出していた。
俺達があのときハーデスを確実に倒しておけば…石崎さんは死ぬことはなかった。
このゲームに参加することはなく、大好きなサッカーを続けられたはずなんだ…!
大好きな仲間と大好きなサッカーを……だけど石崎さんはもう二度とできないんだ…。
そう思うだけで涙が頬を伝う。止め処なく流れる涙。どうしようもない思い。
しかし星矢は涙を拭う。その後悔と悲しみの涙を決意に変えるために。
「いいや、なんでもないよ。ちょっと昔を思い出していただけだって」
そう、今度こそ守りきろう。この女性を。きっと守りきってみせる。
それが石崎さんへの罪滅ぼしと誓い。もうこれ以上平和を願う人を犠牲にはしない…!
「そう…辛かったらいつでも話してね。お姉さんが力になってあげるから。…あ」
目の前に二人組みが見えた。まだ年端も行かぬ子供と袴でオールバックの男……あれはアイゼン!
「麗子さんはここから銃でサポートしてください。…あいつは俺が倒す」
まだあの二人に気づかれていない。ここに麗子さんを置いていけば戦いに巻き込むことはないだろう。
そう考えた星矢は銃でサポートという名目で麗子をここに留めたのだ。
「分かったわ、でも無茶は駄目よ。危なくなったらすぐに逃げなさい。いいわね?」
普段の、正義感の強い麗子ならまだ子供である星矢を止めたのだが、星矢からは、常人の大人を超えた、
何か力強いものを感じた。だから星矢を信じたのである。
「ああ、分かったよ麗子さん。それじゃ行ってくるよ」
そう言うと星矢は静かに歩き出す。…アイゼンの元へ
……今、まさに戦いが始まろうとしていた。
【岡山県北西/黎明】
【藍染惣右介@BLEACH】
[状態]:わき腹負傷。骨一本にひび
[装備]:刀「雪走り」@ONE PIECE アバンの書@ダイの大冒険
[道具]:荷物一式(食料三人分)スーパー宝貝「盤古幡」@封神演技
[思考]:出会った者の支給品を手に入れる。断れば殺害
特にキメラの翼を求めている。
【岡山県北西/黎明】
【キルア@HUNTER×HUNTER】
[状態]:回復中。戦闘は可能
[装備]:なし
[道具]:荷物一式 爆砕符@NARUTO
[思考]:藍染の手下にはなったが、従うつもりは毛頭無い。
隙を見つけ、拷問にかけるつもりでいる。
また、脱出の術を持っている者、探している者と出会えば
そちらに寝返る可能性が高い。
【岡山県北西/黎明】
【太公望@封神演技】
[状態]:健康
[装備]:無し
[道具]:荷物一式 宝貝『五光石』@封神演技 怪しげな液体 支給品不明(本人確認済み)
[思考]:目の前の二人組み(藍染とキルア)を見極める。
【岡山県北西/黎明】
【富樫源次@魁!!男塾】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:荷物一式
[思考]:目の前の二人組み(藍染とキルア)を見極める。
【マシンガンチーム】
【岡山県北西/黎明】
【星矢@聖闘士星矢】
【状態】健康
【装備】なし
【道具】なし
【思考】1.麗子を守りつつ愛染を倒す。2.ハーデスを倒す 。
【秋本・カトリーヌ・麗子@こち亀】
【状態】健康
【装備】サブマシンガン
【道具】荷物一式
【思考】1.星矢に協力する。
>>195>>197>>198>>200の修正・追加
泣くよりも文句を言うよりも先に、今はやるべきことがある――――。
春野サクラは林の中を慎重に歩き続けていた。
とてつもない、自分の知る物とは遙かに次元の違う強さを持った“主催者達”。
それに勝てないまでも、明らかに自分より強いと思われる参加者の面々。
(どうしてこんなことに…!)
何度心の中で疑問を叫んだだろう。
『殺し合いをしてもらう』と告げられた大きな部屋の中で恐怖と不安で滲んだ涙を拭っていたはずなのに気が付いたら山の中にいた。
恐怖と孤独感に震える手を無理矢理に動かしデイバックを開く。
支給品を一つ一つ確認し、サクラは最後に名簿を開いた。
そして……それを確認したサクラの顔にはもう、涙は流れていなかった。
『うずまきナルト』
『奈良シカマル』
信頼できる仲間の名前を見つけたからだ。
シカマルは今や、里一番の切れ者と評されるほどの頭脳を持っている。
ナルトは…ナルトは、かつて下忍時代にスリーマンセルを組んだ大切な仲間だ。
意外性ナンバー1忍者とも言われていたけど、ナルトは強い。技とかもだけど、何よりもその心が。
アイツならきっと、こんな状況でも諦めたりとか絶望したりはしない。
一緒にカカシ班として任務をこなしていた下忍時代はナルトを馬鹿にしたこともあったけど、今は、ナルトならきっと火影になれると信じてしまっている。
(……わたしだって)
サスケ君とナルトにいつも庇われていてあの頃とは違う。
サスケ君の里抜けを止められずに泣いてばかりいたあの頃とは違うのだ。
そう。
(今度は私が――――二人を助ける番!)
そう自分に誓った日から、それこそ血の滲むような努力を続けてきた。
大切な二人を助けるための力を身につけるために……!
(とにかく、ナルト達を見つけよう)
そして、どうにかしてこのゲームから脱出しよう。
そう決意し再び名簿を確認したサクラは、その中にもう一つ、知っている名を見つけた。
――――『大蛇丸』。
サスケに呪印を付け、彼の里抜けを促した張本人。
アイツがあの熾烈を極めた中忍選抜試験に現れたときから、何かがおかしな方向へ転がっていってしまったような気がする。
沸き上がる怒りに、名簿を持つサクラの手が震える。
大蛇丸に会えればサスケの居場所もわかるはずだ。
もちろん自分があの化け物じみた“元三忍”の一人に勝てるとは思わないが、ナルトやシカマルと一緒なら……。
深く息を吸い、吐き出す。
(どこかの町に行こう)
町にはきっと、人が集まるはずだ。
そこまで行けばナルト達の情報も得られるかもしれない。
もちろん“その気になっている”人がいる可能性もあるけど…そうしたら、全力で戦おう。
自分はこんなところで死んでいる場合じゃない。
自分にはやるべきことがある……!
地図を広げコンパスを確認する。
どうやら一番近い町は“京都”という所のようだ。
ヘアバンド代わりの額あてを結び直し、キッと前方を睨む。
地上よりも見つかりにくいだろうと考え、木々間の枝を飛んでいこうと決めたサクラは手近な木に足をかけた。
(……!!チャクラが練りにくい…!)
木を水平に登るためには、足の裏にチャクラを集めて木に吸着させる必要がある。
多すぎず少なすぎず、適量のチャクラを必要な時に必要なだけ練れるのは一人前の忍者としての必須条件だ。
足の裏は特にチャクラを集めにくいとは言われているが、サクラは基本的なチャクラコントロールは同期の中でも秀でている。
もちろん木を水平に登るなんてことは朝飯前だ。
更にサクラはこの二年半、綱手の元で緻密なチャクラコントロールを要求される医療忍者としての修行を積んでいるのだ。
そのサクラでさえ、チャクラを練るのにいつも以上の神経を使う。
この島では、何か、チャクラを妨害するような力が働いているのだろうか。
……九尾を封印されていて莫大なチャクラを内蔵するナルトはともかく、シカマルは大丈夫だろうか。
ふと過ぎった不安を頭を振って振り払うと、サクラは慎重に山中を歩き始めた。
そして――――。
それからすでに、数時間が経っている。
サクラは自分の前方に人の気配を感じ、足を止めた。
息を殺し茂みの隙間からそちらを伺うと、木の根本に座り込んでいる男の背中が見えた。
何をしているのか、手を動かしながらブツブツと呟いている。
青を基調とした見慣れない服装。仕組みのよくわからないトゲトゲ頭。
座り込んでいる姿から推測するに、背はかなり高い。
(どうしよう……)
ゲームが始まってから初めて見つけた人間。
声をかけるべきか。でも…何て?
もし、彼が“その気になっている”人間だったら…。
その男はまだ、背後にいるサクラに気づいていない。
(とにかく確かめてみよう)
音を立てないように細心の注意を払いながら懐に手を伸ばす。
そこには、支給された武器である奇妙な物があった。
コルトローマンMKV。
説明書にはそう記載されていた。
初めて見る物だが、恐らくこの引き金を引けば先端の穴から何かが飛び出るのだろう。
それがどんな威力を持つのかはわからないが、自分の忍具がない今、武器と呼べるものはこれしかない。
少しの間それを眺めていたサクラは、やがて意を決したように引き金に指をかけた。
男は未だ、サクラに気が付いていない。
静かに、静かに、サクラは男に近づく――――。
「もっと詳しいデータが必要だな…」
そう呟くと、乾貞治はパタンと手帳を閉じた。
自分がなぜこんな所にいてこんな状況に陥っているのか、訳がわからない。
わかっていることと言えば、自分の現在地が日本で言う兵庫県と京都府の境目辺りにある林の中であること。
もっと詳しく言えば、この林を抜けた辺りには山陽自動車道と呼ばれる高速道路があるということ。
それから、名簿に越前リョーマ、竜崎桜乃、跡部景吾の3人の名前があったということ。
自分に支給された物が水、食糧、地図、コンパス、時計、名簿、鉛筆、そして…大小様々な大量の弾丸であることだけだ。
一応それらの事実を、いつも持ち歩いていてポケットに入れたままだった手帳に書き留める。
それが何の役に立つのかはわからないが、少なくとも乾を落ち着かせるという効果はあった。
――――ゲーム開始からすでに数時間が経過していた。
地形や現在地を確かめるために歩きっぱなしだったため、テニス部で鍛えた足腰もかなり疲労している。
一応周囲を見回して人気がないことを確かめると、乾は近くの木の根本に腰を下ろした。
(杉の木…ということは、ここはやはり日本なのか?)
杉という木は確か、日本特産の針葉樹だったはずだ。
周辺の木々を見渡し、発覚した事実をまた手帳に書き込む。
普段から愛用しているマル秘ノートに比べるとこの手帳の余白は少ないが、仕方ないだろう。
デイバックを開き、水を少量摂取する。
(越前達は無事だろうか……)
この名簿が真実である可能性は50%程だろう。
だが今は、その確率を上下させられるほどのデータが手元にない。
有無を言わず、あの主催者達に従わざるを得ない状況だ。
従うと言っても、人を殺す気などさらさらないが……。
出発してからの数時間。乾は誰とも出会っていない。
そのせいなのか、どうも自分が異常な状況に置かれているという危機感が沸いてこない。
メガネをかけ直し、乾は再度水を含んだ。
「とにかく…越前と竜崎先生のお孫さんを見つけなくては」
乾の後輩である越前のデータは、ノートを持っていなくともそらで言えるくらい熟知している。
竜崎桜乃についてのデータは乏しいが、それでも乾は一つの答えを導く。
「彼らが東京を目指す確率…92%」
越前も、竜崎桜乃も、家は東京にある。
日本を象ったこの島で、自分の家や通っている学校がある地域を目指す可能性はかなり高い。
それ故に、乾は東京を目指す。
普段は飄々として、目が透けて見えない位の分厚いメガネの下で何を考えているかわからない乾だが、彼が実はかなり面倒見のいい先輩であることは青学テニス部に所属する
者なら誰でも知っている。
脱出を目指すにしても、それは自分一人ではあり得ない。
必ず、彼らも一緒に連れて行かなくては。
当たり前の事のように、乾はそう考えていた。
(脱出と言えば)
この首輪について考えなければならない。
生憎、手鏡を持ち歩くような性分ではなかったのでどんな形状の物が付けられているのか確認すらできていない。
(なんとかして外せないだろうか)
機械には弱くない方だとは思う。
だが道具もなければ形状すら確認できない現状では完全にお手上げだ。
「他に考えなければならないのは……跡部か」
乾と氷帝学園テニス部部長・跡部景吾との間に接点はほとんどない。
青学と氷帝は都大会で何度か対戦したことがあり、互いの顔と名前は知っているが、乾自身は跡部とそこまで話したことはなかった。
身体的な特徴やテニスの癖などのデータは持っているが……跡部の人柄についてはそこまで詳しくない。
……彼は、このゲームに乗るのだろうか。
氷帝テニス部200名による『氷帝コール』。
ジャージを放り投げながらの『勝つのは俺だ!』宣言。
そして『俺様の美技に酔いな』発言。
「まいったな…」
いいイメージがあまりない。
跡部に関する記憶を辿りながら、乾は表面上はあくまでも無表情に困った。
(この名簿に載っている跡部があの跡部なら、少なくとも人間であることは確かだ)
相手が人間なら、例え彼がゲームに乗っていたとしても、戦うなり逃げるなりは出来るはずだ。
逆に、彼がゲームに乗っていないのであれば仲間を一人増やすことが出来る。
そう結論付け、乾はこれからの行動方針を決めた。
(まずは近くにあるはずの山陽自動車道を探す。それから京都に向かい、可能ならば病院を探そう。何か役立つ物があるかもしれない。そして最終目的地は東京だ)
そうして少しの休憩を終え、乾は座り込んでいた木の根本から立ち上がろうとし――――失敗した。
「動かないで」
若い、女性の声。
後頭部に突きつけられている筒状の物。恐らくは――――拳銃。
(こういう場合はどうするべきなのか…)
初体験だな、とくだらない事実に気が付き、口元が笑う。
現実感がわかないせいなのか、声が女性の物だったせいなのか…乾は自分でも驚くほどに落ち着いていた。
「質問に答えてください」
そう言うサクラの声は凛としていた。
今自分が武器を突きつけている男は、身動き一つしない。
油断なく身構えながら、サクラはさらに質問を続けた。
「あなたは、このゲームに乗る気はあるんですか?」
「ないよ」
あっさりと拍子抜けするほどの即答が返り、サクラは困惑する。
「……本当ですか?」
「ああ。どう言えば信じてもらえるのかな」
人間の急所の一つである頭に武器を突きつけられているというのに、やけに冷静に……むしろ楽しそうに、男が答える。
(なんなのコイツ…もしかして、この武器、殺傷能力はまったくなくて、コイツはそれを知っているとか……)
サクラの支給された武器は、人間に対してはかなりの殺傷能力を持つ当たり武器だ。
もっともその武器は大幅に狂った照準に設定されていたのだが、それはサクラも、元々の持ち主である槇村香も知らないことであった。
予想外の男の態度に、拳銃の威力を知らないサクラは心中で様々な不安と憶測を渦巻かせる。
「君は乗る気なのか?」
「まさか!私は仲間を捜してるんです」
「奇遇だな。俺もだよ」
まるで世間話をするような気軽な口調。
この男は、信用できるのだろうか……?
「どうすれば信じてもらえる?」
サクラの心を読んだようなタイミングで、男が更に質問を重ねた。
「……」
「……よし、こうしよう」
妙な沈黙を破り、男が口を開いた。
「俺のことを話すから知ってくれ。そこから信用できるかできないか判断してくれないか」
「……はぁっ?!」
「俺の名前は乾貞治。青春学園中等部3年11組。テニス部所属。身長は184p。体重は62s。誕生日は……」
(なんなのこいつ――――っ!!?頭おかしい?てゆうか、キモい!!)
内なるサクラの叫びは乾には届かず、彼の自己紹介はその後延々と30分以上続いた――――。
【兵庫県と京都府の境目にある林/出発から数時間】
【春野サクラ@NARUTO】
[状態]:健康
[装備]:コルトローマンMKV@シティーハンター(ただし照準は滅茶苦茶)
[道具]:荷物一式
[思考]:1.目前の男が信用できるか確かめる(でもキモがっている)
2.ナルト、シカマルと合流して脱出を目指す
3.大蛇丸を見つける
【乾貞治@テニスの王子様】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:荷物一式(水を少量消費済み)、手帳、弾丸各種
[思考]:1.この女性(サクラ)に信用してもらう
2.東京に向かい、越前、竜崎桜乃、跡部と合流する
3.脱出を目指す
戸愚呂は歯噛みしていた。目の前に現れたこの男(数度の交錯の後、C・ブラボーと名乗った)。このふざけた名前の
男に苦戦しているという事実、そして自分の力、再生という力が予想以上に弱体化しているという現実に。
「直撃!ブラボー拳!」
男、C・ブラボーが裂帛の気合いと共に拳を突き出す。戸愚呂はそれを後方へ跳ぶことで回避する。
C・ブラボーも、他の異能力者と同様、手刀で海を割れるほどの人間離れした身体能力は制限されている。故にそれは、
普段であれば回避ついでに体中から針を噴射し、邪魔者を串刺しにできる程度の一撃。だが。
(忌々しい!再生を上手く制御できん!)
出会い頭の一撃。頭上から強襲してきたときに砕かれた左頭蓋。外見上は完璧に再生しているものの、内部の状態は
お世辞にも良好とはいえない。とてもそこまでの大掛かりな反撃に回せる力は残っていない。この男、弱くない。
全身に浅い傷を負わせる程度のことはできたものの、圧されているのは自分の方だ。
頭部の再生に力を割かねば遠からず自分は死ぬが、力を割いた状態で殺せる相手とも思えない。
万全の状態なら、無類の生命力を誇る戸愚呂だが、再生能力が著しく制限されているこのゲームでは十全に自分の真価を
発揮できない。それに、対峙者であるC・ブラボーはその制限された身体能力を、オリハルコンでできた武器である程度
補完できているというのも大きい。徐々に、だが確実に、戸愚呂は押されていった。
戸愚呂は苛立つ。本当なら、今、自分はあの女(北大路さつき)で楽しんでいるはずであったのに、と。
それなのに、現実では。女は未だ五体満足な状態で震えており、逆に自分が闖入者によって追い詰められている。
そして、認める。一対一では目の前の男に勝てない―――ならば!!
ヒュッ―――
残された力を振り絞り、両手の指を鞭状に変化させ、闖入者たる男と、その背後にいる獲物として見定めた女を共に薙いでやる。
(ククク……どうする?避けてもいいが、女は死ぬぞ!)
その一撃をブラボーはトンファーで受け、力の方向を変えて受け流そうとする。が、この攻撃は直線ではなく、曲線。
流れのままに戸愚呂の指はトンファーに絡みつき、その武器の自由を奪う。そして、そのまま、ブラボーの心の臓を突き破らんとする
一撃へと軌道を変えた。男、C・ブラボーは抵抗することなく武器を胸元に引きつけると、無造作に武器から手を離し―――
「両断!ブラボチョップ!」
心臓にその指が到達する寸前、手刀で武器に絡みついた戸愚呂の指を切断。制限下では肉体から離れた指を操ることもできず、
切り離された指は単なる肉片と化す。その交錯の間で、戸愚呂は、この状況下においては、自分に勝ち目が薄いをいうこと確信する。
故に、自分の支給品の内の一つ、攻撃用の呪文カード、左遷(レルゲイト:行ったことのない場所に飛ぶ)を使うよう頭を切り替える。
これはもう少し温存したかった。自分の弟に匹敵するような実力者と出会ったときのために。だが。
現在の自分では勝てないと認めざるを得ないという事実は屈辱以外のなにものでもない。が、こんなところで無様な屍を晒すよりは
余程いい。自分はしぶとい。この場は乱入者を排除し、ゆっくりとこの女を手遊び殺してやる。そして、体力を回復させ、
万全の状態となった後で、ブラボーとかいう、人を食った名前の男の息の根を止めてやる。
一呼吸の間をおいて、戸愚呂は、一枚のカードを取り出し、宣言する。
「左遷(レルゲイト)、使用!対象、『キャプテン・ブラボー』!!」
――戸愚呂のミスは逃走用の漂流(ドリフト)ではなく、攻撃用の左遷(レルゲイト)を選んでしまったということ。
――戸愚呂の不幸は、呪文カードが「対象者の名前を指定しないと発動しない」という性質を持っていたこと。
本来、呪文カードが存在するグリードアイランドで、対象者の名前を特定するために使われるバインダーが支給されなかったこと。
そして、C・ブラボーの本名が防人衛であることを知らなかったこと、の三つ。
そして、何よりも不運だったのは、それらが全て不可抗力であったということ。
……結果として、呪文カードは発動しなかった。
そして、それが致命的な時間を相手に与えてしまい……
「粉砕!ブラボラッシュ!」
この言葉が、不死身のはずの男、戸愚呂(兄)が聞いた最期の言葉となる――
【福井県/黎明】
【防人衛(C・ブラボー)@武装錬金】
[状態]:体力消耗(大)完全回復には数時間が必要
[装備]:ディオスクロイ@BLACK CAT
[道具]:荷物一式
[思考]:1.一人でも多くの命を守る
2.上記の思考の結論として、ゲームを中断させる。
【北大路さつき@いちご100%】
[状態]:普通 (放心状態)
[装備]:なし
[道具]:荷物一式・支給品不明(本人も未確認)
[思考]:不明
【グリードアイランドのスペルカード@HUNTER×HUNTER 】
衝突(コリジョン):使用者をこのゲーム中で会ったことのない参加者の元へ飛ばす ×1
漂流(ドリフト) :使用者を行ったことのない場所(このゲームでは県単位で区切る)に飛ばす ×1
左遷(レルゲイト):対象者を舞台上のランダムな位置に飛ばす ×1
は、発動しなかったため、スカアイテムと思われ戸愚呂の死体と共に放置してあります。
【戸愚呂兄 死亡確認】
【残り118人】
2レスじゃ上手く収まりませんでした。すいません。
不死身と不運と慢心と 2/2の
>故に、自分の支給品の内の一つ、攻撃用の呪文カード、左遷(レルゲイト:行ったことのない場所に飛ぶ)を使うよう頭を切り替える。
を
>故に、自分の支給品の内の一つ、攻撃用の呪文カード、左遷(レルゲイト:対象者を舞台上のランダムな位置に飛ばす)を使うよう頭を切り替える。
に修正します。
>>219-222を以下のように修正します
戸愚呂は歯噛みしていた。目の前に現れたこの男(数度の交錯の後、C・ブラボーと名乗った。)
このふざけた名前の男(ざっと目を通した名簿にラーメンマンだとかキン肉マンだとか言う名前があるような世界では、
存外普通の名前なのかもしれない)に苦戦しているという事実、そして自分の再生という力が予想以上に弱体化しているという現実に。
「直撃!ブラボー拳!」
男、C・ブラボーが裂帛の気合いと共に拳を突き出す。戸愚呂はそれを後方へ跳ぶことで回避する。
C・ブラボーも、他の異能力者と同様、手刀で海を割れるほどの人間離れした身体能力は制限されている。故にそれは、
普段であれば回避ついでに体中から針を噴射し、カウンターで串刺しにできる程度の一撃。だが。
(忌々しい!再生を上手く制御できん!)
出会い頭の一撃。頭上から強襲してきたときに砕かれた左頭蓋。外見上は完璧に再生しているものの、内部の状態は
お世辞にも良好とはいえない。とてもそこまでの大掛かりな反撃に回せる力は残っていない。この男、弱くない。
全身に浅い傷を負わせる程度のことはできたものの、圧されているのは自分の方だ。
頭部の再生に力を割かねば遠からず自分は死ぬが、力を割いた状態で殺せる相手とも思えない。
万全の状態なら、無類の生命力を誇る戸愚呂だが、再生能力が著しく制限されているこのゲームでは十全に自分の真価を
発揮できない。彼は、スピードやパワーではなく、異能としか呼びようの無いタフネスとトリッキーさを身上にするタイプだからだ。
それに、対峙者であるC・ブラボーはその制限された身体能力を、オリハルコンでできた武器である程度
補完できているというのも大きい。徐々に、だが確実に、戸愚呂は押されていった。
戸愚呂は苛立つ。本当なら、今、自分はあの女(北大路さつき)で楽しんでいるはずであったのに、と。
それなのに、現実では。女は未だ五体満足な状態で震えており、逆に自分が闖入者によって追い詰められている。
そして、認める。一対一では目の前の男に勝てない―――ならば!!
ヒュッ―――
残された力を振り絞り、両手の指を鞭状に変化させ、闖入者たる男と、その背後にいる獲物として見定めた女を共に薙いでやる。
(ククク……どうする?避けてもいいが、女は死ぬぞ!)
その一撃をブラボーはトンファーで受け、力の方向を変えて受け流そうとする。が、この攻撃は直線ではなく、曲線。
流れのままに戸愚呂の指はトンファーに絡みつき、その武器の自由を奪う。そして、そのまま、ブラボーの心の臓を突き破らんとする
一撃へと軌道を変えた。男、C・ブラボーは抵抗することなく武器を胸元に引きつけると、無造作に武器から手を離し―――
「両断!ブラボチョップ!」
心臓にその指が到達する寸前、手刀で武器に絡みついた戸愚呂の指を切断。制限下では肉体から離れた指を操ることもできず、
切り離された指は単なる肉片と化す。その交錯の間で、戸愚呂は、速さでは相手が自分を圧倒しているということ、
この状況下においては、自分に勝ち目が薄いをいうこと確信する。
故に、自分の支給品の内の一つ、攻撃用の呪文カード、左遷(レルゲイト:対象者をどこかに飛ばす)を使うよう頭を切り替える。
これはもう少し温存したかった。自分の弟や、それに匹敵する実力者と出会ったときのために。だが。
現在の自分では勝てないと認めざるを得ないという事実は屈辱以外のなにものでもない。が、こんなところで無様な屍を晒すよりは
余程いい。自分はしぶとい。逃げるのもいいが、この場は乱入者を排除し、ゆっくりとこの女を手遊び殺してやる。
邪魔者は確実に追いやる、もしくは絶対の安全を確保して逃げさる。これは、それを可能にする支給品なのだから。
そして、体力を回復させ、万全の状態となった後で、ブラボーとかいう、人を食った名前の男の息の根を止めてやる。
一呼吸の間をおいて、戸愚呂は、一枚のカードを取り出し、宣言する。
「左遷(レルゲイト)、使用!対象、『キャプテン・ブラボー』!!」
――戸愚呂のミスは逃走用の漂流(ドリフト)ではなく、攻撃用の左遷(レルゲイト)を選んでしまったということ。
戸愚呂はもう分かっていたからだ。このカードは、逃走用の漂流(ドリフト)と違い、と相手が複数の時には使いづらいということを。
ならば、一対一のこの状況で使う。今なら、美味しそうな獲物を独占できるというおまけ付きだ。
――戸愚呂の不幸は、呪文カードが「対象者の名前を指定しないと発動しない」という性質を持っていたこと。
本来、呪文カードが存在するグリードアイランドで、対象者の名前を特定するために使われるバインダーが支給されなかったこと。
そして、C・ブラボーの本名が防人衛であることを知らなかったこと、の三つ。
そして、何よりも不運だったのは、それらが全て不可抗力であったということ。
……結果として、呪文カードは発動しなかった。
そして、それが致命的な時間を相手に与えてしまい……
「粉砕!ブラボラッシュ!」
掛け声と共に放たれた怒涛の連撃は、戸愚呂の身体を、急所か否かに関係なく名の通り、粉に還すような勢いで蹂躙した。
遺されたのは元が人間であったのかどうかも怪しい肉塊の山。それは、かつて男、ブラボーが持つトンファーが、人狼を欠片に滅した
情景の再現の如く。
不死の力、再生を奪われた異能者は。吸血鬼が塵に還るという伝承のように、血霞の中、その命を手放した。
【福井県/黎明】
【防人衛(C・ブラボー)@武装錬金】
[状態]:体力消耗(大)完全回復には数時間が必要
全身に軽度の裂傷
[装備]:ディオスクロイ@BLACK CAT
[道具]:荷物一式
[思考]:1.一人でも多くの命を守る
2.上記の思考の結論として、ゲームを中断させる。
【北大路さつき@いちご100%】
[状態]:普通 (放心状態)
[装備]:なし
[道具]:荷物一式・支給品不明(本人も未確認)
[思考]:不明
【グリードアイランドのスペルカード@HUNTER×HUNTER 】
衝突(コリジョン):使用者をこのゲーム中で会ったことのない参加者の元へ飛ばす ×1
漂流(ドリフト) :使用者を行ったことのない場所(このゲームでは県単位で区切る)に飛ばす ×1
左遷(レルゲイト):対象者を舞台上のランダムな位置に飛ばす ×1
は、発動しなかったため、スカアイテムと思われ戸愚呂の死体と共に放置してあります。
【戸愚呂兄 死亡確認】
【残り118人】
武藤カズキは顔を真っ赤にしながらドラゴンキラーを握り締めていた。
なぜ真っ赤なのか。それは薄いガラス戸の向こうに肌色の人影があるからだ。
「趙公明ちゃんのせいで埃で汚れちゃったわん。汗も拭きたいし、お風呂はどこかしら?」
という妲己の言葉が事の始まり。
日本の簡単な地理や歴史、錬金の戦士に関する事柄を話し終え、
カズキが古代中国の仙人について訊ねようとしたその時、妲己は突然そう切り出したのだ。
古代中国から来た妲己では現代日本の風呂の使い方が分かるまいと思ったカズキは親切心で風呂場に案内したが、
残念な事に蛇口からは水もお湯も出てこなかった。
わざわざ飲み水が支給されているのだから、民家の蛇口から水が出ないのは当然かもしれない。
「仕方ないわぁん。せめてタオルで汗を拭う事にするから、カズキちゃんは見張りをよろしくねぇん」
蟲惑的なウインクをした妲己は洗面所で服を脱ぎ、今はタオルで埃や汗を拭っているだろう。
洗面所前の廊下に座り込みながら、カズキはチラリと後ろを見る。
磨りガラスの向こう、不鮮明な輪郭ながらも胸がボンッと突き出し、腰がキュッとくびれているのが分かる。
そして白いタオルでたわわに実った胸の辺りを拭いている最中だった。
「あぁん、水に余裕があればタオルを濡らすくらい出来るのに……残念」
バッとカズキは顔をそむける。
(だっ、駄目だ駄目だ。雑念を捨てて見張りに集中しないと。エロスはほどほどにと斗貴子さんにも……)
と、雑念を捨てようとした矢先カズキは思い出す。
学友の岡倉が持ってきた『Hでキレイなお姉さん』という名前の本。
それを知り、後に己の年齢を明かした時に「年上だと嬉しいか?」と訊いてきた斗貴子さん。
(うあぁ……)
カズキは軽い自己嫌悪に陥った。何だか自分がすごいエロスな男に思えてならない。
(斗貴子さん……)
斗貴子は分別のある方で、カズキも年頃の男の子だからとあの本の事をあまり気にしてはいなかった。
(妲己さんの場合、どうなんだろう……)
出会ったばかりの自分にいとも簡単に気を許し、汗を拭っている間見張りをしてて欲しいと頼む始末。
ちょっと危なっかしいところがある妲己を、何としても自分が守ろうとカズキは誓った。
無論斗貴子とブラボーの事も心配だったが、あの2人ならきっと大丈夫。
今はこの絶世の仙女を守る事が第一。だから――。
カズキはドラゴンキラーを握り締め、ゆっくりと立ち上がって呟く。
「妲己さん、用心して」
戸の鍵は閉めた。だが居間にあるガラス戸の存在までは失念していた。
確かに居間の方からカラカラという戸の開く音が聞こえた。
出来るだけ音を立てないよう、ゆっくりと開く音が。
(趙公明か? それとも……)
それとも別の敵か?
それとも殺し合いを恐れて民家に逃げ込もうとしている弱者か?
それとも錬金の戦士、斗貴子さんとブラボーのどちらかか? もしくは2人が?
最後に浮かんだ淡い期待をカズキは振り切る。そう都合よく仲間と合流出来るはずがない。
「カズキちゃん……」
「……ちょっと見てきます」
不安げな妲己を勇気づけるように、カズキは力強く静かな声で答えた。
足音を立てないよう用心しながら廊下を曲がり、居間に通じる戸へ向かう。
「はぁ……はぁ……」
ドア越しに聞こえてくる荒い息遣い。
恐怖に震え走ってきたのか? それとも何者かと戦い疲れているのか?
練磨された神経が少しずつ削れていく。
居間の戸にも一部磨りガラスが使われていたが、人影は見えない。
(ドアを開けるか? でもオレの存在に気づいて、いきなり襲ってくるかもしれない……)
ドアノブに伸ばした手が空中で震える。
自分の選択が生死に直結している。そして自分が殺されれば妲己も危ない。
誰かの命を背負う重さ。
幾度か背負った経験はあるものの、カズキはまだ極限時でも冷静さを維持出来るほどの鍛錬は積んでいなかった。
ゴクリとつばを飲み込み、ゆっくりとドアノブを握る。
刹那、ドアノブが下がり居間側へと引っ張られた。
「わっ!?」
突然の出来事に対処し切れなかったカズキはバランスを崩し、ドアに向かって倒れてしまう。
「えっ!?」
勢いよく開いたドアの向こう、自分よりも低いだろう身長の少年が一際大きな左腕を構えた。
身の危険を感じたカズキはそのまま床を転がり、ドラゴンキラーを少年に向ける。
「うわあぁぁぁぁぁぁっ!!」
少年は悲鳴を上げながら、大きな手甲をつけた左拳を振り回した。
半ば恐慌状態にある少年の瞳に恐怖の色を感じ取ったカズキは、
少年がこのゲームの状況に怯え助けを求める弱者だと悟る。
「待ってくれ! オレは殺し合いなんてする気は……」
「あああっ!!」
少年は足をもつれさせてカズキに向かって倒れ込んできた。
手甲をドラゴンキラーで受けながらカズキは少年を抱き止めようとするが、勢いに押されて自分も倒れてしまう。
「落ち着いて! オレは……」
「カズキちゃん、何事!?」
突然、開きっ放しの戸から妲己が飛び込んできた。
カズキも少年も条件反射でそちらを見、赤面して固まる。
妲己は右手に打神鞭を持ち、左手でバスタオルを持ち、そのバスタオルで胸元から太ももの辺りまでを隠していた。
そして彼女は、バスタオル以外身に着けていない。
バスタオルからは、大きな胸が微妙にはみ出している。風が吹けばタオルが揺れて股間が丸見えになりそうだ。
白くムッチリとした扇情的な太ももは、もうバッチリ見えちゃっている。
「だだだだだ妲己さん!?」
「わっ、わっ、わー!?」
慌てふためく2人の純情少年の前で、妲己は「キャアンッ」とわざとらしい悲鳴を上げて廊下に引っ込んだ。
「ボクは武藤遊戯って言います」
「武藤?」
カズキは服を着た妲己と並んで、居間にあるテーブルに座っていた。
その対面に座っているのがさきほどの少年、武藤遊戯だった。
「奇遇だな。オレも武藤っていうんだ、武藤カズキ。こっちは妲己さん、古代中国から来た仙女なんだ」
「あはん。よろしくね、遊戯ちゃん」
3人は簡単な自己紹介を済ませる。
遊戯は童実野高校の一年生であり、二年のカズキよりひとつ下のようだ。
しかし外見は下手したら小学生と間違えてしまいそうなほど幼い。
服についているチェーンなんか明らかに似合ってないが、首から下げている逆三角形の首飾りはよく似合っていた。
それでもとあるカードゲームでデュエルキングになったという才能を持つ遊戯だったが、
そんな事がこの殺し合いゲームで役立つとは到底思えなかった。
また、彼の仲間達……城之内克也、真崎杏子も役に立ちそうにない。ライバルの海馬瀬人はそれなりに使えそうだが。
妲己は少々残念に思い、カズキは遊戯の仲間も守るべき者として認識し闘志を燃やした。
「遊戯ちゃんの支給品は魔甲拳っていうのねぇん」
「はい、これが説明書です」
遊戯に差し出された説明書には、魔甲拳は鎧化(アムド)と唱える事により鎧と化す特殊な武器とあった。
熱や吹雪、呪文を弾く作用もある優れた装備ではあるが、女性用だというので遊戯は鎧化しなかったらしい。
「女性用……ねぇ」
呟く妲己を見て、遊戯は魔甲拳を外した。
「あの、よかったらどうぞ」
決して肉体的には強くないものの、優しい心を持つ純朴な少年は、か弱い女性である妲己の身を思って魔甲拳を差し出す。
「いいのぉん? ありがとう、遊戯ちゃん」
妲己はパッと笑顔を輝かせて魔甲拳を受け取ろうとする。
が、その瞬間遊戯の手が一瞬止まった。
「……どうしたのん?」
「いえ、何でもありません」
いぶかしげに妲己は訊いたが、遊戯は誤魔化すように微笑んで魔甲拳を渡す。
さっそくつけてみようと、妲己は「鎧化」と言ってみる。
すると手甲の表面がヒュルヒュルと解けて、妲己の胴体と左半身を守る鎧と化した。
「ちょっぴり胸がきついけど、なかなか素敵ねぇん。ありがとう遊戯ちゃん」
妲己はとびっきり嬉しそうな笑顔を作って、遊戯の両手をぎゅっと握った。
カズキ同様純情そうな少年は頬を紅潮させてうつむく。
(なら、カズキちゃんと同じ方法で誘惑するのがいいわねぇん)
心の内で酷薄な笑みを浮かべた妲己は、遊戯の手を自身の胸の前へと導き、抱きしめるように握り締める。
「あなたみたいな優しい子にあえて本当によかったわぁん。これからもよろしくね」
「はっ、はい。こちらこそ」
――こうして、妲己の魅力に惑わされる2人目の少年が誕生した。
遊戯もまた、妲己の本性を知れば考えを改めるだろう。
しかししたたかな女狐はか弱い女性を演じ、心からカズキと遊戯に頼っているフリをする。
事実、妲己は2人を頼りにしていた。このゲームから脱出するための手駒として。
妲己は見抜いている、この武藤遊戯という少年がただ者ではない事を。
彼は言わなかったが、あの逆三角形の首飾りから不思議な力を感じる。
果たしてそれが自分にとって役立つものかどうかは分からないが、切り捨てると判断するには早計だ。
ただの人間かと思っていたカズキ同様、何らかの力を持って己を守ってくれるかもしれない。
(ウフフ。カズキちゃんに遊戯ちゃん、奇しくも同じ苗字を持つ子同士、仲良くわらわを守ってねぇん)
妲己は保護欲を駆り立てるような笑顔を武藤2人に向ける。
それを見た武藤2人は、妲己の力になろうと心から思うのだった。
しかし――。
(気をつけろよ相棒。あの女、何かヤバい感じがするぜ)
(もう一人のボク、考えすぎだよ。
カズキ君だって妲己さんを信頼してるみたいだし、妲己さんも感じのよさそうな人だもの)
(……オレもこんな状況だから疑心暗鬼になってるのかもしれないが、用心するに越した事はない)
(心配性だなぁ。でも君がそこまで言うんなら、念のため気をつけておくよ)
武藤遊戯の内にあるもう一つの人格だけは、妲己の本性をかすかに嗅ぎ取っていた。
【妲己ちゃんと愉快な武藤達】
【大阪郊外の民家/黎明】
【蘇妲己@封神演義】
[状態]:健康
[装備]:打神鞭@封神演義 魔甲拳@ダイの大冒険
[道具]:荷物一式
[思考]:1 カズキ、遊戯と一緒に夜明けまで休む。
2 どんな事をしてもゲームを脱出し元の世界に帰る。可能なら太公望も連れて戻る。
【武藤カズキ@武装錬金】
[状態]:軽度の疲労
[装備]:ドラゴンキラー@ダイの大冒険
[道具]:荷物一式
[思考]:1 妲己、遊戯と一緒に夜明けまで休む。
2 ゲームを脱出するため仲間を探す。斗貴子、ブラボー、城之内、杏子、海馬を優先。
3 蝶野攻爵がこの状況でも決着をつける気なら相手になる。
4 ゲームから脱出し元の世界へ帰る。
【武藤遊戯@遊戯王】
[状態]:軽度の疲労
[装備]:無し
[道具]:荷物一式
[思考]:1 妲己、カズキと一緒に夜明けまで休む。
2 ゲームを脱出するため仲間を探す。斗貴子、ブラボー、城之内、杏子、海馬を優先。
3 ゲームから脱出し元の世界へ帰る。
230 :
名無しかわいいよ名無し:2005/07/11(月) 00:35:37 ID:gxZ7qvGp
ヒソカは更木と対峙するとおもむろにポケットからトランプを取り出した。
更木はそれに一瞬怪訝そうな顔をしたがヒソカの殺気を感じ取り、口の端を
吊り上げ笑い、ムラサメブレードを持つ手に力を込める。
「簡単に、死ぬんじゃねぇぞ」
「それはこっちの台詞だヨ」
ヒソカは一瞬でトランプに念を込め、更木はヒソカに向かって疾駆する。
数度の、そして全てが一瞬の攻防。
ムラサメブレードが地面を削る音が響き渡る。
ヒソカのトランプをその身に受けようと意にもかけずに間合いを詰める更木
をヒソカが身をかわしてやり過ごす。
それが数度繰り返され、更木の胸板には四枚のトランプが突き刺さっていた。更木はもう一度距離を詰めんと疾駆する。ヒソカはトランプを一枚投げ、四肢にオーラを漲らせた。
再び更木の胸板にトランプが刺さる。だがそれでも、更木の動きは止まらない。更に距離を詰め、ブレードを振りかぶる。ヒソカは下がりながら
トランプを構える。横薙ぎの一撃を避けつつトランプで受けようとして、トランプごとヒソカの二の腕が切り裂かれた。
弾かれる様にヒソカは距離を取る。
ヒソカは思っていた。力の劣化が激しいと。
更木は気付いていた。自分の戦い方が保てなくなっていることに。
それでも、ヒソカは狂気でもって笑い、更木は不服と表情を歪める。
「テメェ、チマチマと斬り合ってんじゃねぇ」
「心配いらない。実験は終わったヨ。予知しよう。君は踊り狂って死ぬ」
その言葉に、その殺気に、その狂気に、更木は心のそこから狂喜する。
231 :
狂戦士2:2005/07/11(月) 00:37:59 ID:gxZ7qvGp
「へぇ、良いじゃねぇか。なら、殺しあおうぜ」
更木は地を蹴り疾駆した。
が、そこでヒソカの腕の傷がなくなっている事に気付く。
「この世界では力は劣化する。でも、特性は消えない」
ヒソカは微笑む。
瞬間、更木に向かって全方位からトランプが飛来した。
更木の全身にトランプが突き刺さり、血が辺りに舞う。
それでも、更木は止まらない。
「やるじゃねぇか……。外すぜ」
更木は眼帯を外し、ブレードを振りかぶる。更木の気配が一瞬で圧倒的に大きくなった。
念を修めたヒソカは本能で後退する。その足を、更木の左手が掴んだ。
「一体どうして逃げるんだ?何で、それだけ強くて苦痛を恐れる!?」
更木は絶望的な程の狂気を剥き出しにして笑う。
ヒソカの胸板に紅い線が奔った。
【ヒソカ@ハンターハンター】
[状態]:健康
[装備]:無し
[道具]:荷物一式(支給品不明)
[思考]:1更木と遊ぶ 2知り合いとの合流、パピヨンと行動
【更木剣八@ブリーチ】
[状態]:健康
[装備]:ムラサメブレード@バスタード
[道具]:荷物一式 サッカーボール@キャプテン翼
[思考]:1ヒソカと遊ぶ 2志々雄と決着を付ける 3強いヤツと戦う
前回タイトル忘れとりました。スマソ
――長野山中の別荘地
「オイおめえ!」
山吹色の道着を纏った黒いツンツン髪の男、孫悟空はその視線の先に居る最悪の吸血鬼。
悪の帝王ことDIOをジっと睨み吸えていた。その悟空の険しい表情にいつもの陽気さは微塵も無い。
「こいつにいきなり襲い掛かったってのは本当か?こんな馬鹿なゲームに本気で乗る気なのか?」
悟空は傍らに横たわっているルフィにチラリと目線を配った後、その真意を確かめる様にDIOを問い詰めた。
「だとしたら、どうだと言うのだ?そこの小僧が死のうが他の参加者を殺そうが所詮は取るに足らぬ人間共、
このDIOの知った事ではない」
事も無げに言い放つDIO、彼にとって自分以外の参加者など己の空腹を満たす餌でしかない。
主催者の意図に従う気は毛頭ないが腹が減れば参加者を殺し、その血を啜る。
詰まるところ今現在の彼の行動原理はそれだけであった。ただ本能に従い他者の命を吸い尽くす。
そんなDIOの言葉を聞いたルフィがブルブルと身体を震わせ彼を睨みつけた。
「コノヤロ〜!」
拳を握り締め今にも襲い掛からんと立ち上がったルフィだったが――
「やめろッッ!!」
悟空は手を前に突き出しルフィを静止させる。
「なんだよお前!?邪魔すんな!!」
「おめえじゃアイツには勝てねえ!殺されっぞ!」
先刻DIOと戦っていたルフィは悟空が割って入るまで一方的に痛めつけられ内臓にまでそのダメージを負っている。
悟空でなくともルフィに勝ち目がない事は誰の目にも明らかだった。
しかしその程度で引き下がるルフィではない、むしろ彼の性格を考えれば悟空の言葉は逆効果といえる。
「ンガー!!んなもんやってみなくちゃ分かんねえだろ!いいからそこどけよ!!」
悟空の言葉が癪に障ったのか、まるで駄々っ子のように食ってかかるルフィ、
悟空が譲らなければ延々と喚き続けるつもりだろう。
そして当然、隙だらけなその姿をDIOが見逃す筈もなかった。
「フン」
鼻を鳴らしクナイを二本、悟空とルフィそれぞれダーツの的の如く狙いを付け投げつけるDIO。
狙うは頭部、命中すれば百点満点ゲームセットだ。
「危ねえ!」
間一髪それに気づいた悟空が喚き散らしていたルフィを蹴飛ばし飛んでくるクナイからなんとか身を避わす。
「いってえな!急に何すんだーッ!」
助けられた事にも気づかず単に蹴飛ばされただけと勘違いしたルフィは相も変わらず喚き散らすが悟空は既に取り合わず――
「・・・どうやら言っても聞いちゃくれねえみてえだな?」
意識は既にDIOの方へと向けられ敢然と対峙していた。
「フン、まずは貴様からだ!その後でじっくりと、小僧の方も始末してくれる!」
そう言って悟空に向かい歩を進めるDIO、迎え撃たんと身構える悟空、そして――
「WRYYYYYYYYィィィィッーーーッッ!!」
射程距離2mまで近づいたDIOは己の分身、ザ・ワールドを発現させ散弾の如き怒涛のラッシュを悟空に繰り出した。
(な!ざ、残像拳じゃねえ!!なんなんだこりゃ!?)
突如DIOの身体から出現した不可思議な人型のヴィジョンに虚を突かれたのか、
ガードの隙間から数発まともにパンチを食らった悟空は体勢を立て直すタメ後方へと飛びのきDIOから距離を取る。
「むぅ・・・先程の小僧といい貴様も『スタンド』が見えるのか?」
明らかにザ・ワールドが見えている悟空のその反応にDIOは声を上げる。
「スタンド?」
DIOの疑問に首をかしげる悟空、だがそれも当然である。
彼の世界に『スタンド』などという概念はそもそも存在しないのだから。
「フン、まぁどうでもいい、見えていても『それ』が使えないのであればな、所詮このDIOの敵ではない」
本来、『スタンド』は同じ『スタンド』使いでない限り見えないのが、そのルールだ。
しかし目の前の男は『スタンド使い』でも無いのにスタンドが見えているではないか。
これも、この島がもたらす現象の一つなのか?
しかし単に見えているだけでスタンド使いでないのならば最強のスタンドを持つ自分にとってなんら問題にはならない。
そう思ったDIOは再び重火器の一斉放射の如くザ・ワールドのラッシュを放つ。
「無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄ーッ!!」
時速300km以上コンマ数ミリ秒で繰り出される超高速のラッシュが悟空を襲う。
しかし悟空、先程とはうって変って暴風の様に荒れ狂うパンチその全てをガードもせずに紙一重で避ける避ける避ける。
「む?こいつ!?」
原型も残さず葬るつもりで放ったラッシュが一撃も当たる事無く空振りに終わりDIOは思わず目の色を変えた。
「ひゅ〜、あっぶね!あぶねえ!さっきはつい驚いちまったけどよう、良く見りゃなんとか避わせっぞ!」
薄笑いを浮かべ挑発するかの様な悟空の台詞にDIOの顔が一層険しくなる。
しかし当の悟空は決して目の前の相手を挑発しているワケでも、ましてや侮っているワケでもなく、
それは未知の強敵に対する期待の表れ、つまりは『強いヤツがいるとワクワクする』彼の悪い癖だった。
「我が最強のスタンド、ザ・ワールドの攻撃を『良く見れば避わせる』だと?
マグレで避わせたからといって、いい気になるんじゃあない!」
DIOは思う。
マグレに決まっている。
でなければザ・ワールドのラッシュをスタンドも持たないタダの人間がどうして避わせるというのだ?
「マグレなんかじゃねえって、それにそんくらいならオラにだって出来っぞ?」
そう言って腰を深く落とし構えを取る悟空、
独特ではあるが前傾姿勢なその構えは明らかに攻撃重視の型である。
「フン、ラッシュの速さ比べか?面白い」
その顔に再び余裕の色を宿らせDIOはザ・ワールドを発現させる。
相手は多少身体能力に優れているとはいえタダの人間。
今度こそ確実に葬り去ってくれる、そしてその血を貪って糧としてくれる。
「無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄ーッ!!」
三度、怒涛のラッシュが悟空を襲う、しかし悟空、今度はガードもせず避けもせず―――
「うおりゃああああああああああああああっっーーー!!」
独特の前傾姿勢から一足飛びで懐に飛び込み散弾銃の如しザ・ワールドのラッシュに応戦。
手足が分裂したかと見紛う程の悟空の攻撃は宙空でザ・ワールドのパンチとぶつかり合い
まるで金属音の様な硬物同士が激しくぶつかり合う音をひっきりなしに辺りに轟かせる
「すっげ〜」
轟音を響かせ激突する両者、その限界を超えた超人同士の戦いの光景は傍らで見ていたルフィのド肝を抜く。
DIOと悟空、その二人の攻防は全くの互角と言えた。
しかしその均衡が段々と崩れてくる、悟空がザ・ワールドのラッシュを押し返し始めたのだ。
「なにぃぃぃ〜〜〜っっ!バ、バカなこいつ!こいつのスピードッ!ザ・ワールドより!!」
悟空の息もつかせぬ連続攻撃に次第に防戦一方となるDIO、その顔には既に余裕の笑みは無い。
「りゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃっっーーーっ!!」
その攻撃に既にガードすら間に合わなくなったDIOに対し止めと言わんばかりに悟空は蹴りを入れる
その蹴りを思い切り顔面に食らい後方の林まで吹っ飛ばされるDIO。
「ヌゥ、なんというヤツだ、ザ・ワールドのラッシュのスピードを上回るとは・・・」
すぐさま立ち上がるDIO、肉体的なダメージは思ったより少ないが完全に力負けした事実に心中穏やかではない。
「今のでわかったろ?わりいがオメエはオラに勝てねえ」
降伏を進める悟空の言葉だったがDIOは全く聞き耳持たず「フン!」と鼻を鳴らし悟空にゆっくりと近づいていく。
「まだやんのか?しょうがねえヤツだな」
半ば呆れた様に声を上げ再び構えを取る悟空、しかし次の瞬間彼にとって予想だにしてなかった事が起きる
それは射程距離まで近づいたDIOがザ・ワールドを発現させ繰り出したパンチに悟空がカウンターを合わせようとした瞬間だった。
ドギャッ!!
後頭部からコンクリートを鈍器で叩いた様な鈍い音が鳴り響き悟空は前のめりにつんのめる。
振り向けば一瞬前まで前方にいた筈のDIOが悟空の死角、背後から後頭部を殴りつけたのだ。
「ク・・ど、どうなってんだ?スピードはオラの方が上だった筈なのに、なんでいきなり後ろに?」
確実に合わせられる筈だったカウンターを外され、その上視認する事もできず背後に回りこまれ殴られた。
その不可解な現象に膝をつきながら悟空はワケも分からずDIOを見る。
「チッ!煮崩れしたカボチャの様に頭を粉々にフッ飛ばすつもりだったのだが・・・・・・
貴様が単に頑丈なだけなのか?それとも我がザ・ワールドが思いのほか弱体化しているのか?」
舌打ちしDIOは見下ろしながら持っていたクナイを一本悟空に投げつける。
「クッ」
飛んでくるクナイを避けるタメに悟空は膝をついた体勢からジャンプし空へと逃れ、次の瞬間――――
「世界(ザ・ワールド)!!」
――――時が止まった―――――
空へ飛んだ悟空はそのまま宙に固定されてしまった、木々のゆらめきも草葉のざわめきさえも止まってしまった。
この何もかもが静止された世界でただ一人DIOは悠々と口を開く
「フフフ、正に世界を支配する能力、これがザ・ワールドだ!もっとも貴様には見えもせず感じもしないだろうがな」
そして懐から残ったクナイ7本全て取り出し―
「さっきは仕留め損なったが、今度は逃さん!」
そのまま宙に固定された悟空目掛けその全てを投げつけ、悟空に刺さるほんの数センチ手前でクナイが動きを止める。
「クックック、チェックメイトだ!」
今にも悟空に襲い掛からんとするクナイの群れ、その恐ろしい光景を見てDIOが邪悪極まりない笑みを漏らす、そして――
「時は動きだす」
―――静止された世界が再び動きだした。
「いっ!!」
クナイを避けるタメに宙に逃れたはずなのに、目の前には突如出現したクナイの群れ、
またもや理解を越えたその現象に悟空は不思議に思う暇もなく今まさに襲い掛かるクナイからもはや死は免れぬかと思われた、
その瞬間―――――
「界王拳!!」
悟空がそう叫ぶと彼の身体は灼熱色に発光し、遅いかかるクナイから身を守るべく超反応で手足を突き出した。
数倍に高められた身体能力を駆使し死に至る急所だけは手足を盾にして防いだモノの数本のクナイはガードを掻い潜り悟空の胴体に無残にも突き刺さる。
「ぐぎ・・・」
そして空中から力無く地上に崩れ落ち気を失う悟空。
「フン!土壇場で何か妙な技を使って即死だけは免れた様だが・・・・ここまでだな」
勝利を確信したDIOが邪悪な笑みを浮かべ瀕死の悟空に一歩一歩詰め寄る、倒れ伏した悟空の血を啜るタメに・・・
しかし――
「ム?」
横から異常に伸びきった拳がDIOに襲い掛かりその進行を阻んだ、そして後方にバックステップするDIO。
「お前の相手は俺だぞぉ!!忘れんなぁっ!!」
見るとすっかりダメージから回復しきったルフィがそこに立ち、猛っていた―――――
―――それは主催者の意図か、はたまた偶然か、
奇しくも長野の山中に飛ばされた彼は草葉の影で世にも恐ろしい光景を目の当たりにしていた。
手足が異常に伸びる麦わら帽子の男と刃物を投げつけ分身する金髪の男との殴り合い、
そしてそれに割って入ったツンツン頭の田舎クサイ男。
「ウキウキキキウキィーー!(訳:じょじょじょじょじょ冗談じゃないのだ!)」
彼は元々アフリカのサバンナに生きる野生の猿であった、気配を殺し気づかれない様にする芸当は得意な方である。
そうして彼は草葉の影に隠れ、事の一部始終を覗き見していた。
『・・・そいつがいきなり襲ってきやがったんだ・・・』
『・・・こんな馬鹿なゲームに本気で乗る気なのか・・・』
『・・・他の参加者を殺そうが・・・このDIOの知った事では・・・』
三人の会話の内容からして金髪の男が悪者である事は一目瞭然。
そして金髪男から麦わら帽子の男を助けようと割って入ったツンツン頭の男が刃物でメッタ刺しにされた。
それを見て復活した麦わら帽子の男も今再び金髪男に挑んでいるが――――
「ウ、ウウ、ちっくしょ〜っ!」
―――結果はご覧の通り、再戦虚しく麦わら帽子の男は金髪男の前に再び地を舐めた。
「フン!余計な手間をかけさせるな小僧!貴様のおかげでヤツの血が栓を空けたばかりの
シャンパンみたいにドクドク外に溢れ出て勿体無いじゃあないか?」
―――既に麦わら帽子の男に興味は無いのか、金髪男は既に虫の息なツンツン頭の方に歩いていく、きっと彼の止めを刺すつもりに違いない。
「小僧・・・貴様は後でじっくりと料理してやる、この男の血を吸った後でな・・・おとなしくそこで待っているがいい」
―――ああ、どうしよう?やはり助けるべきなのだろうか?このままではツンツン頭が死んでしまう!
草葉に隠れて彼は自問自答していた、あの金髪男の得体の知れない力はあまりにも強大だ。
自分なんかが出て行った所でたちまちの内に殺されてしまうだけだろう。
しかしこの武器を使えば・・・・・あるいはあのツンツン頭を助けられるかもしれない!
そんな考えが頭をよぎり、彼は小脇に抱えた己の獲物をチラリと見やる。
そう、彼に支給された武器、それは・・・・・パンツァーファウスト!
およそ100mmもの弾頭直径を持つ弾を命中させれば、あの恐るべき金髪男だって一溜まりも無い筈。
しかし支給された弾はたった五発。
このまま黙って傍観に徹すれば、あの金髪男は草葉に紛れている自分に気づく事はあるまい。
麦わら帽子とツンツン頭の二人は殺されるだろうが、自分だけはまず助かる。
生き残りを考えるなら、たった五発しかない弾をこんな場面で使うのは愚の骨頂といえた。
しかし―――(もしターちゃんなら・・・・)
「フフフ、さよならだ!このDIOの血肉となり生きるがいい」
そう言って意識を失い仰向けになった悟空の前に立ち、血を吸うタメゆっくりと右手を振り上げるDIO。
もはや目の前の『餌』を食らう事しか頭になかった彼は、草葉の影からスコープで狙っている襲撃者の存在など予想もせず―――
ドォン!!
悟空に向け右手を振り下ろした瞬間だった。
雷鳴を思わせる様な凄まじい爆炸音が鳴り響きDIOの即頭部を中心に爆発!もうもうと白煙を上げた。
草葉に紛れていた襲撃者は寸分の狂いもなく見事ターゲットを、その100mm弾頭で撃ち抜いたのだ。
「ウキ!!ウキキキキ!ウッキーーーーー!!(訳:やった!やった!!やったのだーーー!!!)」
そして草葉の影に隠れていた襲撃者がターゲットを仕留めた事に感極まったのか叫びその身を躍らせながら姿を現す。
「な、なんだぁ?アレお前がやったのか?」
大砲を持った猿がいきなり現れたのを見て尻餅をついていたルフィが声を上げる。
そのルフィの言葉に応えるように猿はエッヘンと言わんばかりに胸を張った。
しかし――――
「お、おのれぇ・・・」
立ち込める白煙の中、呪い殺す様な恐ろしい声が響いた。
「ウ、ウキ?」
「う、うそだろ?」
ルフィと猿が一緒になって目を白黒させる、白煙が晴れた中からまだ生きているDIOが姿を現したのだ。
ザ・ワールドの腕を交差させガードした奥から覗かせるDIOの顔は血が大量に滴り、その頭の四分の一は吹っ飛んでいる。
スプラッター映画さながらのその姿は通常の人間ではまず生きていられるモノではない、しかしDIOは生きていた。
そしてその眼光はギラリと襲撃者である猿に向けられていた。
「・・・・・猿?猿だとッ!?たかが猿如きがこのDIOに対してッッッ!!!」
怒りに震えるDIOの形相はまさしく悪鬼羅刹といった表現がピッタリであろうか?
そのドス黒い感情を惜しみなく表情に出しDIOはルフィ達に突撃していく。
「コンニャロ〜!来るなら来いってんだ!!」
DIOを迎え撃たんと迎撃体勢を取るルフィ。
対してDIOは懐から支給品である手裏剣を一本取り出しルフィに投げつける。
顔面目掛け飛んできた手裏剣を間一髪見極めなんとか肩口にそらして受けるルフィ。
「いってぇ!」
手裏剣に気を取られている隙に懐まで飛び込んだDIOはルフィを思い切り殴り飛ばし生い茂った林の奥までぶっ飛ばした。
「貴様は後で料理してやると言った筈だ・・・・・まずはその猿を殺さねば気がすまん!!」
そう言って恐ろしい形相でにじり寄ったDIOは猿の顔面を右手で掴み、その身体を宙吊りにする。
「ウ・・・ウキ・・・・」
「猿の血など吸うのも汚らわしい、このまま顔面を握りつぶしてくれる」
そしてDIOは猿の顔面を握りつぶさんとその凶手に力を込めた瞬間―――
ドォン!
握りつぶす前にDIOの背後が爆裂、その背中から白い煙が立ち上った。
「ぐ!今度はなんだぁ!?」
見ると数m離れた後ろについさっきまで気を失っていた筈の悟空がヨロヨロと左手を膝につけ
今にも倒れそうな姿勢で、しかし右の掌だけはしっかりとDIOに向け立っていた。
「貴様か・・・大人しく気を失っておけばいいものを・・・」
クナイにその身を無残に刺し貫かれ道着を己の血で真っ赤に染めながらも悟空の眼光は少しも揺らがない。
「へ、へへ・・・オラまだ死んじゃいねえぞ?」
「よかろう!ならば貴様の血でこの傷の燻蒸消毒してくれよう!」
頭を抑えながらDIOはその口元にある牙を光らせる。
「なぁ・・・血なんかよりもっといいモンくれてやろうか?」
「なに?いいものだと?」
「かめはめ波だ」
そう言って悟空は両手を合わせその手を光らせ始めた。
「か」
(なんだ?・・・なにをするつもりだ?)
「め」
その姿を見たDIOが本能的に危険を察知したのか――
「は」
掴んでいた猿を放り投げ――
「め」
構えている悟空に突っ込みスタンドを発現させ手刀を振り上げ――
「なにか分からんが食らえ!!」
「波ーーーーッッ!!」
DIOの手刀よりも悟空の行動の方が一瞬だけ早かった。
両手を突き出したと同時にそこから放たれた光波がDIOの腹部をブチ破る。
「な!なぁぁぁにぃぃぃっっ〜〜〜〜っ!!」
叫び声を上げ腹から血を吹き上がらせながら遥か後方まで吹き飛ばされDIOはそのまま地面に倒れ伏した。
そして今の攻撃で全精力を使い果たしのかガックリと膝を突く悟空。
身体のあらゆる部位からは血が止まる事無く地面に滴り落ちている、精神も肉体も既に限界なのであろう
今のかめはめ波で仕留められなかったら自分にはもう打つ手が無い、頼むから起き上がってくれるな―――
しかし悟空のそんな願いも虚しくDIOは上半身をムクリと起き上がらせる。
「殺して・・・やる・・・・・」
幽鬼の様に呟き、悟空を睨み付けるDIO。
「ま、まいったなぁ・・・あれでもくたばらねえなんて・・・・」
笑いながら悟空は半ば諦めたかの様に言う。
頭の四分の一程が欠け腹にガッポリと大きな穴が開いているDIO
全身をクナイに刺され出血多量、そして気まで使い果たした悟空。
どちらも既に限界であったが、その不死身性においてDIOはまだまだ余力があった。
立ち上がり歩を進めるDIO、諦めた様に地面にヒザをつける悟空。
しかしその時林の奥からガサガサと・・・・・・
「ウガー!!もう怒ったぞ!!コンニャローーーッッ!!!」
ついさっきDIOに林の奥までぶっ飛ばされたルフィが両手を広げ怒り心頭に戻ってきた。
(チィ!小僧がいる事を忘れていた!!)
――DIOは考える。
この負傷でも小僧と戦えない事は無い。
しかし忌々しい島の影響でスタンド能力が弱体化し連続して時が止められない今
確実に時間を取られる上に更なる負傷も免れないやもしれん。
この場にいる二人と一匹を殺して血を吸えば傷などいくらでも癒せるが、
殺すのをもたついてる内に夜明けが来てしまうかもしれない。
このDIOにとってそれだけは避けねばならない――
「チィ!仕方あるまい!」
DIOは身を翻しルフィに背を向け走り出して行った。
「あ!コンニャロ!逃げる気か!?」
当然それを追おうとするルフィ、しかし興奮するあまり足元にまで注意が向かなかった。
「イデデデデデデ!!」
DIOは逃げる際に支給された『まきびし』を用意周到に撒いていったのだ。
ルフィはその場にへたれ込みサンダルを脱ぎ素足にフーフーと息を吹きかける。
「ウキ!ウキキ!!」
「ん?どうした猿?」
ルフィがふと見ると猿が慌ただしく声を上げそしてその先には悟空がグッタリと横たわっていた。
「おい!大丈夫か!?死んじまったのか!?」
「ウキキキウキウキウキキキーー!?」
心配したルフィと猿が悟空に必死に声を掛ける。
「あ、ああ・・・・で、でえじょうぶだ・・・心配すんなって」
ブルブルと唇を震わせ何とか『大丈夫』な事をアピールする悟空、しかしその姿はどこから見ても『大丈夫』ではない
「ウキウキキキィウキィ・・・・・」
「へへ、そっかおめえエテ吉って名前なんか?
サ、サンキュー、エテ吉・・・おめえのおかげであいつ追っ払う事が出来た」
言葉が分かるのか悟空は猿に礼を述べる。
「うっは〜、お前、猿と話しできんのか?」
猿――エテ吉と会話した悟空にキラキラと目を輝かせるルフィ
「あ・・・ああ、オラ、ガキの頃からずっと山で暮らしてたからさ・・・猿の言葉とか・・・大体分かんだ」
「へースッゲー!!スッゲー!!」
「へ、へへへ・・・そ、それよりおめえ名前なんてんだ?」
悟空の問いにルフィはスックと立ち上がり鼻をこすりながら答える。
「俺はルフィ!海賊王になる男だ!!」
自信満々に応えるルフィ、その目には一点の曇りも無い。
「そ、そっか・・・オラ孫悟空ってんだ、なぁルフィ、エテ吉、わ・・・わりいんだけどオラをあの家まで運んでって休ませてくんねえかな?
オ、オラさっきのかめはめ波で力(リキ)全部使い果たしちまって・・・もう自分じゃ動けなくってさ・・・鼻糞ほじる力もねえんだ」
そう言って悟空はDIOとの戦闘で外観が少々破壊されたコテージをブルブルと震える指で指し示した。
【長野のコテージ】
【チーム名=スーパーモンキーズ】
【孫悟空@ドラゴンボール】
[状態]:出血多量、各部位に刺傷、極度の疲労、重傷のタメ早急に手当ての必要あり。
[装備]:無し
[道具]:荷物一式、支給品不明
[思考]:1、 フリーザ達を倒す。
【モンキー・D・ルフィ@ONE PIECE】
[状態]:各部位に打撲、基本的に軽傷、疲労小、空腹。
[装備]:無し
[道具]:荷物一式、支給品不明
[思考]:1、食料を探す、悟空の治療。
【エテ吉@ジャングルの王者ターちゃん】
[状態]:無傷、疲労小。
[装備]:パンツァーファウスト(残弾数四発)@ドラゴンボール
[道具]:荷物一式、100m弾頭×4
[思考]:1、悟空の治療。
2、ターちゃん達と合流。
【長野の山中】
【DIO@ジョジョの奇妙な冒険】
[状態]:即頭部を四分の一ほど損失、腹部に巨大な貫通傷、疲労中。
[装備]:手裏剣×9
[道具]:荷物一式、
[思考]:1、夜が明けるまでに太陽から身を隠せる場所を探す。
2、参加者の血を吸い傷を癒す。
「ちっ……変な事に巻き込まれちまったぜ」
舌を打ちながら小さな住宅街と思われる場所を移動する。
「――これからどうするか」
過去に一大勢力マミーファミリーを築いた男は悩んでいた。
あれから信用できる仲間――たけし、ボンチューと出会った。
彼らとなら何とかやっていける。
一緒にいる内にそう信じている自分がいた。
そしてその暖かい世界が新たな自分の定位置なんだと信じていた。
此処の世界に来るまでは。
「なんだありゃ、化物め」
口からビームみたいなのを放った男。
そしてそれをあっけなく倒した奴。
マミーが今までいた世界とは根本からして違ってる事を嫌でも認識させられた。
頭の中で囁く甘い誘惑。
再びファミリーを築き力で他から身を守る事。
強ければ信頼なんてどうでもいい。
信頼をしてそれが裏切られた時のダメージを考えると恐ろしくなった。
そう、顔に傷がありマフィアの一員に見える彼もまだ子供だった。
たけし達を信頼するべきか?
たけしならこの状況でもみんなを引っ張っていってくれると言う自信はあった。
だが、その力がこの世界でも通用するかどうかが問題だった。
悩んで頭の中がこんがらがりつつも歩みを止めないマミー。
彼が十字路の曲がり角で曲がろうとした時、何かにぶつかった。
「きゃぁぁぁぁ!!!」
その声で思考を止め目線を前にすると、衝撃で後ろに転びつつも手と足で何とか距離を取ろうとする女性がいた。
「や、やい。ボクはキ、キミなんて怖くないぞ!」
座った状態で何かに負けないように虚勢を張ってる。
一瞬何かと考えたがすぐ察しはついた。
「あぁコレか」
自分の顔を右手でさすってみると至る所に凹凸を感じる。
つまりはこちらは何もしていないつもりでも顔の傷が勝手に相手を威圧していたらしい。
昔自分で付けた傷だったが、さすっている内にまた傷が痛み始める様な気がした。
いや違う、昔を思い出して心が痛んでいるのか。
マミーの中で昔と今の状態が重なり始める。
「――傷が痛むの?」
ふと意識を戻したら目の前の女性が起きあがってこちらを心配そうな顔で見ていた。
「これは昔の傷だ」
人を目の前にしなが心配されるような顔をしていたのかと思い、自分に苛立つ。
人に心配されるなんて俺らしくない。
そう突っぱねた筈だったがいつの間にか顔に柔らかい物が押しつけられる。
「――よく見たらキミ、まだ子供だもんね……」
「なっ……」
大きく包み込むように抱きしめられている。
反論しようにも強く抱きしめられている所為で巧く喋られない。
それどころか柔らかい物で呼吸すらままらななかった。
「キミもるーしぇクンと同じくらいの年だもんね……そんな子もこんな世界に飛ばされちゃってるなんて……許せないよ」
それから暫くして漸くマミーは彼女の胸から逃げだせた。
別に無理矢理放させようとすれば出来たのだが、先手を挫かれ調子が崩れた。
「――俺が怖くないのか?」
解放されてまず一言目にそれを聞いた。
「最初はゴメンね、でももう怖くないよ。この世界にきてパニックになっていただけだから」
彼女はてへっっと笑い、本当にゴメンと手を合わせて謝った。
「――何故俺を信用している?」
それが今の自分が一番求めている答えだった。
顔に傷がある男をこの世界で見て恐れよりも先に、此方に心配して抱きついてくるその答えが聞きたかった。
「ボクはキミに似た子をしっているからね」
「俺に?――先程のるーしぇって奴か?」
「うん。どうしようもない位もの凄く下品で乱暴でそれでいて我儘なんだけど、本当は優しくて臆病な不器用な男の子」
「はぁ?」
言われてみた通り想像してみたが全くパーツが組み合わさらない。
ましてやそれが自分に似ているなんてちゃんちゃら可笑しい。
「――それだけで、そんな事で人を信頼していいと思っているのか?」
阿保らしいと吐き捨てながら尋ねる。
「ボクは、ボクはずっと一緒に暮らしてきたるーしぇクンを信頼しているから」
照れてはにかみながら彼女はそうハッキリと答えた。
「けっ、信頼なんてそう簡単に口にするもんじゃねぇんだよ」
そう言いながらもマミーはいつの間にか心の痛みが消えていることに気が付いた。
「――やるよ」
マミーはポケットにあったカプセルを放り投げた。
「どうせ、そのるーしぇって野郎を探しに行くんだろ」
そう、たけしとボンチューを探しに行く自分のように。
「此処じゃないよりマシだろ」
カプセルから出てきたのはアタッシュケースとなにやら沢山の容器。
説明書に寄ればマシンガン、電磁ムチ、捕獲ネット、ウォーターカッター等の兵器が内蔵されているらしい。
「俺はこれで十分だからな」
そう言って容器を一つ手に取り楽々と握り潰してみせる。
中からは壁を失った液体が漏れてくる。
「うわー水だ、ありがとう!これだけあればお風呂だって毎日入れるよ!」
目を輝かせて沢山の容器を眺めている。
実際は水を圧縮して出す為大量に必要となる水の換えなのだが。
この辺には民家があるが水道、電機は通っていないらしい。
近くに川が流れていないことはないが汚くて風呂は兎も角、飲み水としては期待できそうになかった。
海水も飲料水として利用するのは面倒だろう。
その点水がこれだけあれば色んな事が出来きるのだろう。
この水の使い道を兵器として見出せなかった自分より似合ったいるのかも知れない。
マミーはそう思いながら相手が喜んでいる内に黙って後ろを向き去ろうとした。
「待って!ボクはヨーコ。大神官の娘ティア・ノート・ヨーコ」
去ろうとするマミーの腕を掴まえて彼女は捲し立てた。
それが自己紹介だったのだと気が付いたのはそれから少し経ってからだった。
「……マミーだ」
「待ってって言ったでしょ!」
去ろうとするマミーを引っ張って「めっ」っと叱る。
「子供を放っておけないよ。お姉さんも一緒に行くからね」
「待っててね」とヨーコは自分のカプセルを渡すと、散らばった水の容器を再びカプセルに収納しようと悪戦苦闘し始めた。
その様子を見ている内にマミーは此処に来て忘れていた物を完全に思い出した。
相手を信頼するからこそ、無理だと思った局面を乗り越えられてきたのだと。
彼の頭の中にはもう当初の迷いは消えていた。
「それ、ボクにはちょっとキツイからさ」
容器を一カ所に集めながらヨーコが言った。
収納に苦戦しているヨーコを後目にマミーはカプセルを放り投げる。
中から出てきたのは白と黄土色を基調にしたスーツ。
確かにこれでは女性は腰回りの露出を気にするかも知れない。
一緒に出てきた説明書を読むと『単純なエネルギー波やマグナム程度の威力なら無効にする柔軟力と衝撃吸収力を兼ね備えた防具』とある。
試しに握り潰してみようとしたがその柔軟力の前では無意味だった。
手足や頭など露出している部分は心許ないが胴体や腰、肩など覆われている面の防御力は信頼できる物なのだろう。
ただ一つの欠点は……
「だせぇ……」
「お待たせマミークン」
アタッシュケースを手にいつの間にか隣にヨーコが立っていた。
「待ってた訳じゃねぇ、そっちが付いてくるんだ」
「はいはい、それで良いから行こう」
マミーを軽くあしらうヨーコ。
ダークシュナイダーですら子供扱いの彼女の前ではどんなに威勢を張っても子供は子供だった。
「けっ」
それが面白くなくマミーは今日何度目かの舌を打った。
【東京都多摩地区/黎明】
【マミー@世紀末リーダー伝たけし!】
[状態]:健康
[装備]:フリーザ軍戦闘スーツ@ドラゴンボール
[道具]:荷物一式
[思考]:1、ヨーコを信頼
2、たけし、ボンチューとの合流
【ティア・ノート・ヨーコ@BASTARD!! -暗黒の破壊神-】
[状態]:健康
[装備]:アタッシュ・ウエポン・ケース@BLACK CAT
[道具]:荷物一式、大量の水が入った容器
[思考]:1、マミーを護ってあげたい
2、るーしぇ(D・S)との合流
246 :
変態:2005/07/11(月) 09:28:20 ID:Z+l/bcAH
ヒソカは一瞬死を覚悟した。
痛みと不自然な熱さが胸に奔る。
だが、それは大したものではなかった。薄皮一枚とはいかなくても、オーラの集中で十分どうにかなる程度だ。ヒソカは困惑する。明らかに先程の斬撃は致命的だったはずだからだ。
更木も困惑していた。ヒソカに黒い紋白蝶の様な羽が生えている。意味が分からない。いろんな意味で。
だが、先程、更木の斬撃をヒソカはあの羽の爆発の反動で上体を逸らされて致命傷を避けたのだし、この羽はヒソカの能力ではない。
ヒソカが自分の背中に付いた羽に気が付き、何故か嬉しそうに微笑む。更木は気分が萎えていくのを感じた。
「興ざめだぜ」
「なら、刀を下ろしてもらおうか?」
事態を傍観していたパピヨンが前に歩み出る。パピヨンもヒソカと同じ羽を持っていた。
更木は呆れたように目を細め、刀を下ろした。
「これは君の力だったのかい?センスの良い力だね」
ヒソカが笑ってパピヨンに言う。
事の成り行きを見守っていた志々雄は二人の蝶を見て思った。
変態だ、と。
247 :
変態2:2005/07/11(月) 09:29:41 ID:Z+l/bcAH
パピヨンには考えがあった。力の限定されたこの空間ではカズキの黒い核金の力も限定されているはずだ。ならば、人間武藤カズキを蝶最高の俺が倒すことも可能かもしれない。
それが出来ないのなら、自分も武藤もこの世界から脱出する術を考えなくてはいけない。
戦闘はあっけないほど簡単に自分の乱入で終わりを迎えた。
「今回は僕の負け。でも、君は僕の獲物だ。またやろう」
「その格好をどうにかしろ」
ヒソカが引き、更木も引いていた。
落ち着いた所で、パピヨンは武装錬金を解き提案する。
「あの主催者共を殺したいと思わないか?」
「横槍とは無粋だね。でも、助かったよ。それに、その意見には賛成だ。あの態度、気に食わないね」
「賛成だな。奴らも強ぇえ」
「賛成だ。あんな奴らの下で踊る気はねぇ」
全員が凶悪な笑みで答える。
ここに、最狂のチームが完成した。
【佐賀県 北部海辺の崖/黎明】
【チーム名=奇人変人】
【パピヨン@武装錬金】
[状態]:健康
[装備]:核鉄LXX@武装錬金
[道具]:荷物一式
[思考]:1カズキとの合流 2主催者を抹殺
【ヒソカ@ハンターハンター】
[状態]:微傷
[装備]:無し
[道具]:荷物一式(支給品不明)
[思考]:1更木と遊ぶ 2知り合いとの合流、パピヨンと行動 3主催者の抹殺
【更木剣八@ブリーチ】
[状態]:微傷
[装備]:ムラサメブレード@バスタード
[道具]:荷物一式 サッカーボール@キャプテン翼
[思考]:1志々雄と決着を付ける 2強いヤツと戦う
【志々雄真実@るろうに剣心】
[状態]:健康
[装備]:無し
[道具]:荷物一式
[思考]:1刀を探す 2剣八と決着を付ける 3主催者の抹殺
「……ダメね。一見単純なように見えるけど複雑な造りだわ」
福島県都市部郊外、月明かりに照らされた女性が溜息をつく。その手は小柄な少年の首、もとい首輪に当てられている。
「そうですか…。じゃあ他の方法を探すしかないのかな…」
「相応の設備があればまだ分からんが……街の様子を見るに、電気が通っているとも思えんしな」
応じる少年と、スーツに帽子を被った紳士風の男性。紳士風の方は右目に眼帯を付けている。
「ええ。最低限の工具があれば分解なり何なり出来ると思ったけど…甘かったみたい。
それに設備があったとしても…肝心の電気が無いんじゃ話にならないわ……」
女性、ブルマは再び溜息をつく。メカに関して異常なまでの才能を持ち、天才の父にも劣らぬ頭脳を持つ彼女であったが、
この事態にはほとほと参っていた。
話は2時間ほど前に遡る。ブルマは住宅街の一角で泣いていた。
元々大金持ちで何不自由なく育ってきた彼女にとって、この異常なまでのゲームはとても耐えられるものでは無かった。
十代の頃はドラゴンボールを探す為に色々と無茶もしたが、若さ故の至りと悟空達の協力もあっての事だった。
あれから歳月が経ち、少女も大人になったがこの現実に直面できるほど強くはない。
泣いて暫く経った頃だろうか? 背後から突然声を掛けられた。ビクッと震え恐る恐る振り向くと……2人の男性が立っていた。
学ランを着た少年とスーツを着た男性。一見なんの変哲も無かったが、この極限下では目に映る者全てが恐怖の対象だった。
そして何より、スーツ姿の男性の右手に握られた、砲身が異様に大きい銃がそれに拍車を掛けた。
「嫌っ!来ないで!!殺さないでぇっ!!」
恐怖で顔を歪ませ、叫ぶ。死にたくない死にたくない。必死に叫び命乞いをした。
「落ち着け!!話を聞くんだ!!」
それを中断させる声。紳士風の男性のものだった。
「オレ達に敵意は無い。殺すなんてもっての他だ。この状況じゃ、疑心暗鬼になっても無理ねえが」
「あの…スヴィンさんの言う様に、ボク達は貴方を襲うつもりはありません。
ボク達は仲間の皆を…このゲームから脱出出来る人を探しているんです…。もし良かったら、ボク達と一緒に来ませんか?」
少年の名は武藤遊戯、紳士風はスヴィン・ボルフィード。偶然近くに居合わせた2人は、お互いに敵意が無い事、仲間を探している等、
目的の一致もあって行動を共にしているらしい。
最初は信じられなかった。だが分け隔てなく接してくれる2人に、徐々にブルマの猜疑心は消え失せていった。
互いの素性を大方話し終え、話題は首輪へと移る。
遊戯は機械について詳しいわけでは無かったし、スヴィンは武器の開発は出来るが首輪についてはお手上げだった。
よって、この面子で最も機械に強いブルマが確認したわけであるが…結果は冒頭の通りである。
これでは暗闇の中、苦労して工務店から拝借してきた工具も役に立たない。
街はまさにゴーストタウンと言って差し支えなかった。月明かりだけが頼りの無人の街。
それだけにブルマのすすり泣く声がホラー映画さながらだったのは遊戯とスヴィンのみが知る。
「…取り合えず、この件は一時保留だな」
スヴィンが呟く。極めて冷静に。確かに現時点では他にどうしようも無かった。
「そうですね…。今は当初の予定通りに、人探しに集中しましょう」
続けて遊戯。首輪が外れない事をあっさり流す2人を見てブルマが問う。
さっさとゲームから抜け出したい彼女にとっては、首輪が外れない事が残念極まりなかったからだ。
「ね、ねえ? 何であんたらそんなに落ち着いていられるの?」
「冷静さを失ったらそれこそ終わりだ。この程度のイレギュラーでいちいち動揺できないさ」
スヴィンのその言葉を最後に、それ以上は何も答えない2人だったが確固たる意志があった。
元国際捜査局、今は掃除屋の人間として活動するスヴィンにとって、冷静に努めるのは当然の事である。
トレインやイヴ、リンス達の安否も気掛かりだが、それ以上に彼等を信頼している。(リンスは微妙だが)
それもあってスヴィンは当面の問題に目をやっていた。
遊戯に関してもこれと同じ事が言える。彼もまた城之内達との交流の中で成長し、逆境にも立ち向かう強さを手に入れた。
例えバラバラになってもずっと仲間である事に変わりは無い。信頼も同じ事。
何よりも…今はもう居ない、もう一人の自分に誓って弱い自分は見せられない。
物言わぬ2人の胸中こそ知らないブルマだったが、この2人の強さは窺い知れた。
「じゃあ、これからどうするの?」
「遊戯の言った通りさ。仲間と協力者を探す。手っ取り早いのは街だろうな」
「けどボク達が探してみた限り、見つかったのはブルマさんだけだったし、探すとしたら他の街ですね」
言いながら遊戯が日本地図を広げる。今現在、自分達が居るのは福島県南部。これより更に南下した場所に街がある。
今後の方針は決まった。しかし不用意に動き回るのも得策ではない。夜間の移動はリスクも伴う。
これらの配慮と、ゲームの参加に気が休まらなかった事もあり、休息を取りつつ明朝に出発する事となった。
【福島県南部/黎明】
【スヴィン・ボルフィード@BLACK CAT】
[状態]健康
[装備]パワードガン@DRAGON BALL
[道具]荷物一式
【武藤遊戯@遊戯王】
[状態]健康
[装備]なし
[道具]荷物一式(支給品は確認済み)
【ブルマ@DRAGON BALL】
[状態] 健康(やや泣き疲れ)
[装備] なし
[道具] 荷物一式(支給品は確認済み)
ドライバー等の工具一式
[共通思考] 1:明朝、南下して街へ
2:仲間と協力者を探す
3:ゲームを脱出
248-249は無しでお願いします
251 :
888:
>>246の修正
ヒソカは全力で上体を反らす。
痛みと不自然な熱さが胸に奔る。
薄皮一枚とはいかなかった……。
ヒソカは胸にオーラを集中し、出血を止める。だが、状況は絶望的だ。更木は返す刃でヒソカの腹を狙っている。
「さっさと斬って、終わりにするぜ」
更木がそう言ってブレードを振りかぶった瞬間、更木の動きが止まる。
「剣を落とさないのは大したものだね」
ヒソカのアッパーが更木の顎を撥ね上げる。ヒソカは先程切られた時に剣にオーラをつけていたのだ。
だが、更木は笑みを深くした。
更木はブレードを自ら捨てると、向かってきたヒソカの首を持って地面に打ち倒す。
更木が更に拳を打ち出そうとした瞬間、更木の髪につけた鈴が爆発音と共に地面に落ちた。
「興ざめだぜ」
「なら、刀を下ろしてもらおうか?」
事態を傍観していたパピヨンが前に歩み出る。その背には羽があり、いつのまにか更木とヒソカの周りには何羽もの黒い蝶が飛んでいる。二人とも、その蝶が威力は先程の爆発で知っている。そして、恐らく劣化した状態では耐え切れないだろうことも知っていた。
事の成り行きを見守っていた志々雄はパピヨンの姿を見て確信する。
この変態共は強い、と。
パピヨンには考えがあった。力の限定されたこの空間ではカズキの黒い核金の力も限定されているはずだ。ならば、人間武藤カズキを蝶最高の俺が倒すことも可能かもしれない。
それが出来ないのなら、自分も武藤もこの世界から脱出する術を考えなくてはいけない。 なにより、あの鼻持ちならない主催者共を生かしておく気もない。
戦闘はあっけないほど簡単に終わりを迎えた。
「つまらねぇ幕引きだぜ。だが、お前との決着はまただ」
「そうみたいだね」
ヒソカと更木、互いにパピヨンの方を、いやその後ろに視線を移動させて言う。
パピヨンの身体能力はやはりこの二人には敵わないらしい。
強襲に対する反応が致命的に遅れていた。
背後からの強襲。
黒い羽が引き毟られる。
「ちっ、向こうを先にやるぞ」
「良いよ。たまには共闘も悪くない」
更木はつまらなそうに、ヒソカは嬉しそうに微笑んで、同時に地を蹴った。
【佐賀県 北部海辺の崖/黎明】
【チーム名=奇人変人】
【パピヨン@武装錬金】
[状態]:微傷
[装備]:核鉄LXX@武装錬金
[道具]:荷物一式
[思考]:1カズキとの合流 2主催者を抹殺
【ヒソカ@ハンターハンター】
[状態]:微傷
[装備]:無し
[道具]:荷物一式(支給品不明)
[思考]:1更木と遊ぶ 2知り合いとの合流、パピヨンと行動 3主催者の抹殺
【更木剣八@ブリーチ】
[状態]:微傷
[装備]:ムラサメブレード@バスタード
[道具]:荷物一式 サッカーボール@キャプテン翼
[思考]:1志々雄と決着を付ける 2強いヤツと戦う
【志々雄真実@るろうに剣心】
[状態]:健康
[装備]:無し
[道具]:荷物一式
[思考]:1刀を探す 2剣八と決着を付ける 3主催者の抹殺