「ガンスリンガー・ガール」ハァハァスレ @+1

このエントリーをはてなブックマークに追加
750名無しかわいいよ名無し:2006/04/08(土) 22:48:19 ID:LI0T+XxE
それと昔提案されて先送りされた義体最強決定戦やりませんか?SS職人さん
義体同士(含む担当官)のガチの殺し合い物語が読みたいです。
どうせ漫画の方もそんな流れになって最終回になだれ込むのは確実ですから。
なるったけ酸鼻で陰惨で暗欝で悲劇的な話にして下さい。
ガンスリ読者は凶悪なサドが多いですからみんな喜びますよ。
751名無しかわいいよ名無し:2006/04/08(土) 22:54:40 ID:LI0T+XxE
義体の持つ悲劇性に萌えているのです
あの子らを幸福にしてはいけない
絶対に幸福にさせない
全ての義体と担当官を不幸のどん底に蹴落としてガンスリは完結しなければなりません
残酷と悲惨はガンスリの華ですから。
752名無しかわいいよ名無し:2006/04/09(日) 14:45:16 ID:JBcmeppi
>なるったけ酸鼻で陰惨で暗欝で悲劇的な話にして下さい。

君は風呂場で猫でも切り刻んでいたらどうかね?www
753名無しさん@専用色:2006/04/09(日) 19:35:47 ID:2ZcaJeF0 BE:87766324-
>>749
現在シリアス系SSは、710氏のリクエストを揉んでいる
最中なので、後回しということで、、。

>痴呆になったリコがカーロスリベラと並んで
>白木葉子邸の縁側でひなたぼっこしている話
>リコとの戦いを前に減量に苦しむエッタの話

とりあえずこれ↑は検討してみます。

>義体最強決定戦やりませんか
正直なところ、現在の私の筆力ではおよそ無理のような気がします。
他の職人さんが復活するまで置いときましょうよ。

>残酷と悲惨はガンスリの華ですから。
それは私も同感ですね。あなたの仰るとおり、私もGSの最終回は、
限りなく悲惨な終わり方をする気がしますよ。

ただ、私はどうも暗い話を書くのが苦手なもんで、、。
754名無しかわいいよ名無し:2006/04/10(月) 07:10:09 ID:iDx6J/+z
>>752
おまいそれ犯罪教唆だぞwwwやめれwwwww
>>753
いつも楽しく作品を拝見させていただいてます。
謙遜しなくてもあなたは文才ありますよ。
俺もSS書きたいんですがあなたの見てると自信無くしますから・・・
755名無しかわいいよ名無し:2006/04/10(月) 07:15:35 ID:iDx6J/+z
>>751
まあ万一ガンスリがハッピーエンドに終わったら相田が読者の(特に2ちゃん)総攻撃に遭うのは必至な訳でwww
756名無しかわいいよ名無し:2006/04/10(月) 07:21:05 ID:iDx6J/+z
悲劇的な最後を迎えるのは、現在比較的ハッピーなジョゼ・エッタとヒルシャー・トリな気がする。
相田は臍曲がりだからな。
で案外リコとクラエスが幸福なラストシーンで終わりそうな。
757名無しさん@専用色:2006/04/11(火) 16:34:02 ID:vZ9VCSeX BE:329121465-
>>754
えー、754さんも書いてみてくださいよー。
私だってまだまだ未熟者です。
自分の過去の作品を見ると顔から火が出る時がありますよ。

是非是非、トライしてみてください。
758名無しさん@専用色:2006/04/11(火) 23:19:25 ID:ORvxbbaI BE:43883322-

>>710 リクエスト
あまりに長くなりそうなので、書きあがったところまで落とします。
759名無しさん@専用色:2006/04/11(火) 23:20:15 ID:ORvxbbaI BE:197473829-

-------------- 剃刀の刃 --------------

「けほっ、、ケホ、ケホ、、」

或る春の昼下がり、俺は珍しく病院棟にいた。傍らのベッドではリコが
栄養剤の点滴を受けている。何かにむせたのか、咳き込んでいる。

一昨日、作戦の直前に突然、リコは倒れた。

本人は大した事ないと言い張ったが、病人など連れていては作戦に支障がある。
俺は迷わず病院へ行くよう命じ、他のフラテッロの協力を得て任務に出た。
突然の事だったので多少混乱したが、作戦は無事完遂、大きな問題もなかった。

義体の戦闘力は高い。しかし、司令塔がなければ機能しない。逆に言えば、
司令塔さえあれば義体はいつでも取換えがきく、、結局はそういうことだ。

あれから2日、リコの様子を見に来た。俺が病室に入ると、リコは顔をあわせるなり
ベッドから起きようとした。「大した事ありません」などと言いながら。
自分の体調管理すら出来ないくせに、何が大丈夫なものか。よろめくリコを腕で
支えると、パジャマ越しに汗の匂いが鼻をつく。……相当発熱しているのが分かる。
760名無しさん@専用色:2006/04/11(火) 23:21:28 ID:ORvxbbaI BE:526593986-

「……何時からだ、リコ」
「えっ?あの、、なんですか?ジャンさん」
「……何時から体調が悪かったのか、と聞いている」

強い調子で問い詰めると、叱られるとでも思ったか、リコは肩をビクリと振るわせた。

「えっと、、あの、、先月の初めくらいからです、、」
「なんだと? ……それなら何故報告しなかった?」
「その、、みんなに迷惑をかけると思って、、」
「病人が作戦に参加する方が、よほど迷惑だ。そうは思わなかったか?」
「……すみません、、」

……使えん奴だ。

リコの体調に気がつかなかった俺も俺だが、自分の立場が理解できない義体など、
道具としても失格だ。俺の教育も、まだまだ不十分だったということか。

「義体を手足のように使うには、時間が必要ですよ、ラパロ大尉」

我ながら名セリフを残したものだ。しかし、もしこれがリコでなくクラエスだったなら、
事を確実に報告してきただろう。そうすればもっと適切な処置ができたろうに。

俺はリコに聞こえるように舌打ちをし、病室を後にした。

-----------------------------------------------------------
761名無しさん@専用色:2006/04/11(火) 23:22:35 ID:ORvxbbaI BE:65824823-

翌日、俺は病棟の医師を訪ねた。無論、リコの病状についてだ。
オフィスには何故か、課長とフェッロの2人も来ている。

「……課長、何故ここに?」
「いや、リコについてな、、少し気になったものでな」
「はぁ………」
「課長、私たちは席を外すべきでは?」
「ああ、そうだな。ジャン、後で私の部屋に来てくれ」
「……ええ、分かりました」

「…………。」
「あの、ジャンさん、早速ですが、説明よろしいですか?」
「ん?…ああ、そうだな、始めてくれ」
762名無しさん@専用色:2006/04/11(火) 23:24:42 ID:ORvxbbaI BE:493682459-

「現在リコには、咳および発熱が認められてます。本人の自覚症状としては、
 これらの他にも肩甲下筋、広背筋にひどい疼痛があるようで…」
「ああ、細かい説明はいらん。要はリコがまだ使い物になるかどうか、その一点だ」
「はぁ…、それについては、まだ何とも、、、」
「そうか、、……で、原因は? やはり義体の寿命が来たということか?」
「いえ、そうではありません。我々も最初は義体の寿命を疑いましたが、それが、、、」
「構わん、続けろ」
「はっ、はい。昨日のレントゲンの結果、患者が重度の肺気腫を患っている事が分かりました」
「なに?……肺気腫、、だと?」
「ええ、つまり肺ガンです」
「…………」
「レントゲンを見る限りでは何とも言えませんが、おそらくは末期に属すると思われます」
「……それで?」
「は?」
「先程の言い方だと、リコの復帰が完全に不可能、という訳でもないようだが?」
「ええ、その通りです。ただ、肺全体を人工臓器に置き換えるのは無理ですから、
 方法としては生体移植しかありません。そうしますと、、、」
「……いちいち中断するな、続けろ」
「はっはい、えっと、もし生体移植となりますと、ドナーの確保から金銭的なものまで
 問題が多いものですから、我々医師としては判断がつきかねまして、、、」
「……だから課長が来ていた、ということか」
「はい……。」
「……分かった、後は我々の仕事だ。御苦労、後で連絡する」

俺は病室を後にし、オフィスへと向かった。途中、喫煙所で一服する。
先程の医師の言葉、そして、これから課長とする相談について俺は思いを巡らせた。
763名無しかわいいよ名無し:2006/04/12(水) 14:20:04 ID:YDZa+7c7
>>760
冷酷で一々セリフがムカつくジャン山に萌えましたw
続きこの調子で頼みます
764名無しかわいいよ名無し:2006/04/12(水) 14:25:12 ID:YDZa+7c7
リコたんをもっとカワイソス(´・ω・`)にして下さいと思う俺は変質者ですか?
765名無しかわいいよ名無し:2006/04/13(木) 09:37:20 ID:zqWQOBHd
変態ですが変質者ではないですよ^^
>>1職人さん乙です!
766名無しかわいいよ名無し:2006/04/13(木) 09:38:30 ID:zqWQOBHd
>>762
職人さん乙です!
間違えました^^;
767名無しかわいいよ名無し:2006/04/13(木) 21:26:11 ID:v95e8LkI
>>760
ジャンがなんかイメージと違う。
傲然としているのは義体に対してだけのような気がするが。
768名無しさん@専用色:2006/04/13(木) 22:59:56 ID:WiYer6OC BE:592418096-
>>762続き

-------------------------------------------------------------

「……来たか、ジャン」
「遅くなりました、申し訳ありません」
「いや、構わん。……ああ、コーヒーでも飲むか? 」
「いえ、結構です。本題に入りましょう」
「そうか、、うむ、そうだな、、」

煙をくゆらせながら、窓の外を見つめるロレンツォ。紫煙に、柔らかな春の陽が反射する。

「それでは……ジャン、まずはお前の意見を聞かせてもらおう」
「私の意見?…いえ、それには及びません。課長の考えに従います」
「ん? …まあ待てジャン、そう結論を急ぐな……」
「では、課長の意見を聞かせてはもらえませんか?」

俺は、つとめて冷静に聞き返した。
結論など、既に出ている筈だ。議論すべきは、その後の事についてだろうに。

「そうか、、。……正直なところ、私は迷っているんだがな、、、」
「迷う? 何をです?」
「先程な、フェッロに試算させてみたんだが、、、生体移植にかかる費用は約50万ユーロ、
 それも、場合によっては、海外で移植を行う必要があるそうだ」
「海外で? 課長、それはリスクが高すぎます。第一義体の技術が漏れる可能性が……」
「…その通りだ。だから迷っているんだがな、、」
「…………」
769名無しさん@専用色:2006/04/13(木) 23:00:38 ID:WiYer6OC BE:230384873-

「……ジャン、もし違っていたらすまんが、お前は、、、リコの治療に反対、という事か?」
「いえ、そういう訳では、、。ですが課長、費用対効果を考えれば、義体の廃棄も選択肢の一つかと」
「うむ、、確かにそれはそうだが、、」
「遅かれ早かれ、こうなる事は分かっていた筈です」
「……そうか、そうだな。お前がそう考えるなら、それが正解なんだろう」
「…………」

「よし、分かった。…結論は、私と部長の二人で出す。それでいいか?ジャン」
「ええ。……私はこれで失礼しても?」
「ああ、構わん。御苦労だったな」

踵を返し、俺は足早にドアへ向かう。

「……なあ、ジャン。ひとつ聞いていいか?」

ドアを明けた瞬間、課長が俺を呼び止めた。俺は、背を向けたまま立止まった。

「……さっきお前は『 廃棄 』と言ったよな。 ……あれは本心か?」

「………………。」

「いや、いいんだ。何でもない、、呼び止めて悪かったな。下がっていいぞ」
「……失礼します」

俺は無言で部屋を出た。何故か俺は、掌に汗をかいていた。
770名無しさん@専用色:2006/04/13(木) 23:15:01 ID:WiYer6OC BE:296208893-

--------------------------------------------------------

それから一時間後、俺は喫煙所で時間をつぶしていた。
煙を吸い込みながら、課長が部屋で言いそびれた事について考える。

ロレンツォ氏、、、……直属の上司ながら、分かりやすい人だ。

「ジャン、お前は後悔しないんだな?」
「ジャン、ジョゼやヒルシャーが反対するんじゃないか?」
「ジャン、他の義体には、どう説明するつもりなんだ?」

「ジャン、、、SSの読者が怒るんじゃないか?」

……恐らくその程度の事だろう。課長も相変わらず甘いものだ。

義体は道具だ。それ以上でも、以下でもない。
だから我々は、必要に応じて義体を調達し、不要になれば当然、廃棄する。
人間は日常的に何か道具を利用し、使い捨てている。……それと同じだ。

義体は、自分が道具である事を認識しない限り、公社では生きてゆけない。
そしてそのことを誰よりも理解しているのは、他でもない義体自身だ。
だから、間違った扱いは、義体を混乱させて彼らを不幸にするだけだ。
幼稚な義体であれば、エルザやヘンリエッタのような不良分子を生み出し、
優秀な義体であれば、トリエラの様に、自我の存在に苦しむ事となる。
そこが課長や他の担当官には理解できていない。

新しいタバコに火をつけ、俺は壁にもたれかかった。
気が付くと、誰かが中庭で楽器を弾いている。恐らくヘンリエッタだろう。
……相変わらず下手な演奏だ。

大きく煙を吸い込むと俺は目をつぶり、音程の外れたエチュードに耳を傾けた。
771名無しさん@専用色:2006/04/13(木) 23:23:27 ID:WiYer6OC BE:789891089-
>>764(リコたんをもっとカワイソス(´・ω・`)にして下さいと思う俺は変質者ですか?
書いてる本人ですら、次第にS的な充実感を感じつつあります。
困ったもんです(笑)

>>767(ジャンがなんかイメージと違う。
うーん、これがなかなか難しいところでしてね。
無駄な時間を費やしたくないジャンの気持ちや、突然の事への焦りが
他の人に対して傲慢な態度を取らせた、とでもお考え下さい(笑)。
ちょっと苦しい言い訳かな。

772名無しかわいいよ名無し:2006/04/14(金) 11:36:51 ID:g8IqVbyL
>>767
>>771
いや、ジャンは下目には何時もあんなもんだと思う。初対面の人物や目上にも文字通り慇懃「無礼」な所があって鼻持ちならない奴だ。
まぁ多少誇張しているがな。
それにSSに登場するキャラの性質は今までもかなり無茶苦茶な脚色を職人がしていたので(例えばドスケベなエッタ・リコに萌えまくりのジャン・痴呆なヒルシャなど)今更イメージ云々を述べるのは相当野暮な話だと思うぞ。
773名無しかわいいよ名無し:2006/04/14(金) 11:49:40 ID:g8IqVbyL
リコは実質人気ナンバーワンヒロインなので、不幸に蹴落とすストーリーには不快を感じる者もいるだろうし、
どうやら変態偽善者のジョゼよりもクールな狂人ジャンの方が腐女子に人気があるようなので、
今後結構叩かれるかも知れないが職人殿はめげずに大作を書き上げて頂きたい。
774名無しかわいいよ名無し:2006/04/14(金) 11:56:28 ID:g8IqVbyL
つーか、まさかあれで終わりじゃないだろうな?>職人殿
775名無しさん@専用色:2006/04/14(金) 18:39:46 ID:cgIriD3C BE:592418669-
>>774
いえ、終わりじゃないですよ。
ちょうど折り返しくらいだと思います、多分。
776名無しかわいいよ名無し:2006/04/15(土) 11:34:50 ID:LfBKYvlL
>>775
読みました。
正直続編読むの怖いです。
毒消しに次はジャン山の優しさを描いたハートウォームな物語も頼みます。
777某SS書き:2006/04/15(土) 21:42:43 ID:uialR4U1
>>776
どうせ書いても

>義体の持つ悲劇性に萌えているのです
>あの子らを幸福にしてはいけない
>絶対に幸福にさせない
>全ての義体と担当官を不幸のどん底に蹴落としてガンスリは完結しなければなりません
>残酷と悲惨はガンスリの華ですから。

・・・な人に罵倒されるだけだからねぇ。
こっちも資料調べたり時間掛けたりして書いてるわけで、評論ならまだしも作風については
何言われようがオイラの作風なんで変えるつもりはないし罵倒される筋合いもないし。

別な作品ネタでノビノビと書いてた方が良いし。
778名無しさん@専用色:2006/04/16(日) 00:45:15 ID:IzPjJZJB BE:263297838-
>>770続き
-----------------------------------------------------

翌日、俺はモニカ部長に呼び出された。要件は言わずと知れている。
思っていたより早めに結論が出た事に、俺は正直安堵していた。
部長の決定とあれば、ジョゼやヒルシャーも容易には反対できないだろう。
結論がどう出ようと、これで不毛な議論をせずに済む。

ドアをノックし、俺は部屋に入った。辺りを見回すが、モニカ部長の他には
誰も見当たらない。課長も来ると思っていたのだが、、どうやらまだのようだ。

「……お呼びですか、部長」
「ええ、忙しい所すまないわね、ジャン。……ああ、お掛けなさい」
「……はい」

俺はソファーに腰掛け、煙草に火をつけた。部長室は来客が多いこともあり、喫煙が許されている。

「あら、煙はやめたんじゃなかったの?」
「私が? 何故です?」
「クローチェの奴が煙を止めたって、随分前に誰かが言ってたわ」
「ああ、それはジョゼでしょう、ヘンリエッタの為に止めたと言ってましたから」
「ああ、そうね、多分そうだわ。ごめんなさい」

「……いいわね男性は、手持ち無沙汰の時に煙草があって。うらやましいわ」
 私なんかほら、コーヒーではどうにも格好がつかないでしょう?」

部長はカップを持ち、俺に振り帰った。
確かに、男二人ならば無言で煙を吸っていても不自然ではないが、
これが女性二人となると、どうも上品には見えない。安っぽさが目に付く。
しかしコーヒーでは様にならない。部長の言うとおり、煙は男にとって
本当に便利な存在だ。

779名無しさん@専用色:2006/04/16(日) 00:46:28 ID:IzPjJZJB BE:87766324-

「……ジャン、もうすぐロレンツォとベルゴンツィが来るわ。そしたら話を始めましょう」
「は? ベルゴンツィ、、ですか?」
「ええそうよ、技術部のベルゴンツィ、知らないかしら?」
「……いえ、知っていますが、、、」

思いがけない名前が出て、俺は少し戸惑った。ベルゴンツィといえば、循環器担当の技術員だ。
かつて“寒い冬”の時代に国を追われ、職場を追われ、今は公社で人工臓器の研究をしている。
一体奴が何故、、、。

……とその時、ドアがノックされた。

「部長、ロレンツォです。技術部の者も一緒です」
「……ああ、お入りなさい」

ドアが開き、課長が入ってきた。後ろにベルゴンツィが続く。
相変わらず身なりに無頓着な奴だ。皺だらけの白衣をまとい、顔は無精髭だらけだ。
医師らしい清潔感が微塵も感じられない。……どうにも苦手だ、こういう奴は。

「ああ、もう来ていたのか、ジャン」
「ジャンさん、ご無沙汰しております」
「……ああ、いつもクラエスが世話になってるな、助かっている」
「とんでもない、こちらこそクラエスのおかげで、、」

差しさわりのない言葉を交わすと、二人は席についた。

「それじゃ、早速ですけど始めましょうか。ロレンツォ、お願い」
「はい、部長」

課長は、ワープロで打たれた資料を俺に差し出した。
出力してまだ間もないのだろう、生温かい。

「ジャン、昨日言ったとおり、部長と私の二人でリコの処遇について検討した。
 結論から言うとだな、リコの治療は無理だ。お前の言う通り、リスクが高すぎる」

予想通りの言葉に、俺は頷いた。恐らくこれはモニカ部長の判断なのだろうが、
客観的に見れば誰だって同じ結論に行き着くはずだ。……俺は間違っていない。

780名無しさん@専用色:2006/04/16(日) 00:47:13 ID:IzPjJZJB BE:87765942-

しかしながら課長は、一呼吸おいた後、俺の予想外の言葉を続けた。

「そこでな、リコの処遇については、技術部に一任する事となった」

……技術部に? 治療しないならば技術部は無関係のはずだが。

「課長、どういうことです?」
「ああ、驚くのも無理はない。……ベルゴンツィ、説明してくれ」

「ええ……。ジャンさん、これは随分前から部長にお願いしていた事なのですが、、
 実は、新薬や新しい人工臓器のテストのために、不要な義体を提供していただきたいのです」

「テスト? ……クラエスのやっているような事か?」

「いえ、違います。クラエスの場合は義体部品の開発が目的ですから、基本的に
 生命へ危険を及ぼす類の実験を行っていません。あれは単なるモニタリングです。
 ……我々が新たに行いたいのは、もっとナイーブな実験なんです。例えば新薬の
 副作用や致死量の調査であったり、各種人工臓器のスポット適用、その他にも……」

ベルゴンツィは矢継ぎ早にまくし立てた。質問を差し挟むヒマすらない。
話しが終わるのを待って、俺は聞き返した。

「……つまりだ、危険すぎて行き場のない実験を、リコで試そうということか。そうだな?」
「まあ、ありていに言えば、そういう事です」
「………………。」

ベルゴンツィはさらりと受け答えをした。……どうにも不快な奴だ。

「ジャン、実はな、去年ローマ国立病院から依頼があったんだ。臨床試験の許可が
 下りなかった新薬や人工臓器のテストを、今後は是非公社で行いたい、、とな」
「ジャン、突然の事で驚いたかもしれないわね、、、。でも、見返りとしてローマ医師会から
 金銭的な援助と、義体候補の優先的提供が約束されたの。……承知してくれないかしら」
「ジャンさん、一応言っておきますが、我々も医者です。治療についても全力は尽くします」

三人の声が耳をつつく。
俺はしばらく沈黙したが、モニカ部長の目を見つめ、そして答えた。

「……分かりました、部長にお任せします」

-----------------------------------------------------------------------
781名無しさん@専用色:2006/04/16(日) 00:57:46 ID:IzPjJZJB BE:219414454-
>>776
これを書き終わったらね。
ラストはもう決まってしまってるので、もうしばらく(?)
暗澹たるお話にお付き合いください。

>>777
まあまあ、そう言わずに。
でも、SSを書くのに考証をしっかりする方って、ホント尊敬しますよ。
なんせ私はいい加減な知識とイキオイだけで書いてるもんで、、。
いけませんね。
782名無しさん@専用色:2006/04/16(日) 01:04:16 ID:IzPjJZJB BE:197473436-
あ、書き忘れてた。

>>773(クールな狂人ジャンの方が腐女子に人気がある)
……同感。
私の姉がそうです。
ガンダムではマ・クベ、銀英ではオーベルシュタイン、ガンスリではジャン。
いかれトンチキ男に惹かれる女性が多いものです。
まあ、ジョゼとかに惹かれるよりかはマシかと思いますけど。
783名無しかわいいよ名無し:2006/04/16(日) 01:56:54 ID:76pLWqIo
洩れの妄想とは違う展開になったな。
ベルゴンツィが出て来て
「こんな事もあろうかと思って、人工肺を開発していたのですが、性能がまだ…」
だと思っていたよ。
784名無しかわいいよ名無し:2006/04/16(日) 02:07:56 ID:lrruCS3x
>>778-780
鬼畜SSクル━━━━ヽ(゚∀゚ )ノ━━━━!!!!
公社がとうとう731部隊化でつか?
あわわわわ((((((;゚Д゚))))))
でも良心の呵責に微かに苦しむジャンの姿に担当官を悪党にイマイチさせ切れない作者の苦悩と葛藤を感じさせて中々グッドです。
オグリッシュな結末を期待して良いんですかね?
さすがにリコをマルタにするのはあまりにもあんまりな気もしますが、、、
785名無しかわいいよ名無し:2006/04/16(日) 02:10:34 ID:lrruCS3x
つか良く考えたら既に公社は子供に改造手術してる時点で限りなく731部隊でしたw
786名無しさん@専用色:2006/04/16(日) 23:43:27 ID:7T/UdZwS BE:307179874-
>>784(オグリッシュな結末を期待して

それだけは勘弁してください(泣
書き手にとっても精神衛生上、よくありません。
いや真面目な話。
787名無しさん@専用色:2006/04/16(日) 23:44:47 ID:7T/UdZwS BE:109707252-

春の地中海は風が強い。気候も、温暖ではあるが、時に冷たい雨が降る。
……あれから一週間が過ぎた。今、俺は一人、シチリアに来ている。

あの日、部長室でのやり取りの直後、俺は課長に休暇を取るよう勧められた。
無用な気遣いではあったが、俺は素直に従うことにした。リコの書類を処分し、
残務をマルコーに任せた俺は、その日の内にシチリアへ向かった。

リコはと言えば、……どうやらあの後、すぐに技術部へ引き渡されたらしい。
“らしい”としか言えないのは、その場に俺がいなかったからだ。

事情を知るマルコーは、俺にも同席する様に求めた。しかし俺は断った。
「部長に任せる」といったその時から、リコは俺の物ではない。
従って俺には立ち合う権利もなければ、義務もない。
リコがどんな表情をし、マルコーに何を言ったか、俺は知らない。
……いや、知りたくもない。

俺は、一週間かけてゆっくりとシチリアを旅した。
エトナ、アグリジェンテ、チェファル、、、どれも子供の頃、家族で来た場所だ。
四月とは言えまだシーズンオフ、何所も彼処も人影はまばらで、寂しさばかりが目に付く。
春風に煽られたシチリアは埃にまみれて、まるで霞がかかったようだ。

最後の日の夕方、俺はこの休暇で初めて、別荘に足を踏み入れた。ここに一人で来るのは初めての事だ。
前に来たのは去年の夏、あの時はジョゼとフェッロ、リコとヘンリエッタがいた。
……それに、無粋な来客もあった。思い出したくもないが、あの時のことはよく覚えている。

買ってきた物で夕食を済ますと、テラスへと出る。肌寒い潮風が吹き抜ける。
そんな中、俺はウィスキーの栓を開けた。……ウィスキーの香りが、潮の匂いに良く合う。
考えてみれば、こうやって一人で酒を飲むのも久しぶりだ。

二杯ほどグラスを空けた所で、俺は携帯が鳴るのに気がついた。一瞬、躊躇する。
この休暇を取るにあたって、俺は自分の携帯に、ある設定をしている。
マルコーの携帯以外、全ての電話番号に対して着信拒否となる様に。
……ということは、マルコーが俺と連絡を取りたがっているという事だ。

躊躇している間に、電話は切れた。席を立ち、カバンから携帯を取り出す。
携帯の着信を見ると、……やはりマルコーからだ。

俺は携帯を上着のポケットに入れ、テラスへと戻った。自分からかけ直す気にはならんが、
急用ならまたかかって来るだろう。技術部の話では、リコは最低でも一月位はもつはずだ。
末期の肺気腫とはいえ、状況がそう急に変わるとも思えん。
俺は気を取り直し、グラスを手に取った。

-------------------------------------------------------------------
788名無しかわいいよ名無し:2006/04/17(月) 01:10:57 ID:oXGJgHL+
そこでマルコーに任せるのか、アンジェのこともあるのに…。
でもよく考えると
ジョゼ:こんなことを頼めるわけが無い
アレッサンドロ:いまいち信用ならん
ヒルシャー:へたれ
ベルナルド:……判断不可
で結局マルコーなんだよな。可哀そうに。てかビーチェー!
789名無しかわいいよ名無し:2006/04/17(月) 06:06:04 ID:RBKa0qnU
>>784
確かに義体はある意味マルタだな。
790名無しかわいいよ名無し:2006/04/17(月) 06:18:16 ID:RBKa0qnU
>>786
小栗なラストまで要求するとは義体萌えもあそこまで行くと犯罪的だなw
話は変わりますがそろそろトリップつけてくれませんかな?
キチガイがあなたになりすましてあなたのSSを承け、訳の分からない物語にする恐れがあるもんですから。
幸いと言って良いのかは分かりませんが今の所住人が少ないからそんな心配はないですけれど。
791名無しかわいいよ名無し:2006/04/17(月) 06:21:27 ID:RBKa0qnU
>>787
リコが置かれている悲惨な状況が目に浮かぶ。
肺癌はただでさえ癌の中で最も苦しいと言われているのにな。
792名無しかわいいよ名無し:2006/04/17(月) 06:27:23 ID:RBKa0qnU
>>788
最初そのレス話の続きかと思って混乱したw
まぁマルコーはジャンと似た匂いがするからジャンとは気が合いそうだな。
俺はマルコー好きだよ。
担当官の中では一番腕っ節が強いしな。
戦技の実力も義体より上だろうし。
君の言う通りビーチェもジャンの後を託す人材としては適任だろう。
冷静だし寡黙だし鼻も利くし。
793 ◆kwai5Y6kNk :2006/04/17(月) 19:06:26 ID:KRhKPtUa BE:197473436-
TEST
794 ◆kwai5Y6kNk :2006/04/17(月) 19:09:03 ID:KRhKPtUa BE:493681695-
SAI TEST
795名無しさん@専用色 ◆VTXfaLMN2Q :2006/04/17(月) 19:23:48 ID:pZRQ/oOt BE:175531744-
MATAMOYA TEST
796名無しさん@専用色 ◆VTXfaLMN2Q :2006/04/17(月) 19:25:15 ID:pZRQ/oOt BE:43883322-

あ、やっと上手くいきました。
なんせPC音痴なもんで、、。
失礼。
797名無しかわいいよ名無し:2006/04/17(月) 22:14:01 ID:8zESQqDc
798名無しさん@専用色 ◆VTXfaLMN2Q :2006/04/17(月) 23:16:49 ID:pZRQ/oOt BE:98736833-
>>787続き

……あれから何時間、たったのだろう。俺はまだテラスにいる。
買って来たウィスキーは、もう空だ。……なのに、何故か酔いが回らない。
俺は酒が強い方ではない。これだけ飲めば、酔い潰れてもおかしくない筈だ、
なのに、飲めば飲むほど頭が冴えてくる。
俺は部屋に入り、書斎のキャビネットからブランデーを取り出した。

……とその時、今度はテラスで携帯が鳴り響く。

慌てて向かおうとするが、急に動くと足元がふらつく。……やはり相当酔っている。
途中、リビングの椅子に躓いた。打ち付けた膝に、鈍い痛みが走る。

結局、俺がテラスにたどり着く前に電話は切れた。強く舌打ちをし、携帯のディスプレイを開く。
着信履歴を見ると、やはりマルコーだ。こんな遅くにかけて来るという事は、やはり急用か……。
返信ボタンを押し、かけ直す。

ペッ ポッ パッ ピッ ペッ ・・・・・・ トゥルルルー・・ トゥルルルー・・・  …ビーッ!! ビーッ!! ビーッ!!

突然、耳慣れない電子音が走る。驚いて表示を見ると、……電池切れだ。
ここ一週間、携帯など全く使っていなかったので、充電するのを忘れていた。
舌打ちをし、再びカバンのある室内へ。……とそこで俺は、はたと気が付いた。
……充電器を持ってきていない。

一週間前、俺は公社を出たあと、そのままシチリアへ来た。着替え等は現地で買えばよい、
そう思って旅支度は何もしなかったのだ。しかし、携帯の充電器とは盲点だった……。
無論、シチリアにコンビニなぞ存在しない。俺は、自身の馬鹿さ加減に呆れかえった。
799名無しさん@専用色 ◆VTXfaLMN2Q

五分後、ブランデーの瓶を片手に、近くの公衆電話へと向かう。途中、何度もラッパ飲みしたが、
どうにも喉にヒリついてむせてしまう。最近、煙が増えているせいで、喉が酷く荒れている。

数分もしない内に、俺は公衆電話に着いた。受話器を取って小銭を入れる、……酔いのせいで
どうにも上手くいかない。何とか硬貨を入れ終わると、俺は公社の電話番号を打ち込んだ。

ペッ ポッ パッ ピッ ペッ ポッ パッ ・・・・・・ トゥルルルー・・ トゥルルルー・・・ トゥルルルー・・ トゥルルルー・・・
トゥルルルー・・ トゥルルルー・・・ トゥルルルー・・ トゥルルルー・・・ トゥルルルー・・ トゥルルルー・・・ トゥルルルー・・ トゥルルルー・・・

……誰も出ない。受話器を置き、もう一度かけ直す。

トゥルルルー・・ トゥルルルー・・・ トゥルルルー・・ トゥルルルー・・・ トゥルルルー・・ トゥルルルー・・・

……やはり繋がらない。警備室に転送されない以上、オフィスには誰かいる筈なのだが……。

仕方なく俺は電話を置き、今度はジョゼの自宅に電話をかけた。
呼び鈴が三回ほど鳴った所で、電話が繋がる。

「はい、クローチェです……」
「ジョゼか? 俺だ、ジャンだ」

「……只今、留守にしておりますので、発信音のあとにメッセージを……」

俺は怒気をはらみつつ、受話器を投げ置いた。どうにもやり場のない怒りがこみ上げて来る。
そらで覚えている電話番号は、この二つだけだ。仕事関係の番号は、全て携帯のメモリーに入っている。
つまり、このままでは連絡の取りようがないと言う事だ。

……酔った頭に血が上る。

俺はブランデーの瓶を電話に叩きつけ、覚束ない足取りで別荘へと急ぎ戻った。

-------------------------------------------------------------------------------