●なんとなくクリステル

テレビはニュースの時間だ。
「・・・・・滝川クリステルです」

お・・・・なかなかイケてるじゃん、この女子アナ。
クリステルか・・・エマニエル夫人？
いけない、いけない。さあ食事にしようっと。

ついみだらな妄想をしそうになった私は、おかめ納豆のしそ風味をかきまぜ、
サトウのレトルトご飯の上にかけた。

今年の流行語大賞は小島よしおの「そんなの関係ねえ」だった。
うーむ。
なるほど。へー。

食事を終えた私は、流しに食器を置いた。

期待

いいね。
トレンディだ。

スイーツ(笑)みたいな

このスレタイ・・・
バカ愛誤は相当のオヤジ？

「栗取物語」・・・・・・・・・。
友達から借りたビデオのタイトルだ。
栗如きの為に・・・・。人はなぜ争うのだろう。

栗取り物語・・・・・クリトリ物語・・・・・クリトリ・・・・

そうだ。またクリステルのニュースの時間だ。
「昨日お伝えしました流行語大賞の一位は小島よしおの「そんなの関係ねえ」ではなく、
東国原知事の「宮崎をどげんかせんといかん」でした。ここにお詫びして訂正いたします」

・・・・間違えんなよ。そんなこと。
私はやるせなさに首を振った。

が、時間の経過とともに、そのようなことが実に、なんとも小さなことであるのに気づいてきた。
「小さいな。俺って・・・・・・くそ。・・・・まだまだだぜ」
ため息がこぼれた。

電話が鳴った。パリの彼女からだ。
その声はただならぬ響きを含んでいた。

田中康夫

ペログリ日記

あ、彼女いたんだ…

「ハーイ、ダーリン、元気？」

「私・・・・前世で赤い壁の部屋に住んでいた
記憶がある・・・・
彼女はつぶやいた。

「人間は壊れた時計なんだ・・・・・・・。
時差を修正する時がくるんだよ。また明日。チャオ」

受話器を戻すと、テレビではクリステルが流行語大賞受賞の喜びに
涙にむせぶ小島よしおを伝えていた。彼女も幾分涙ぐみ、もらい泣きしているようだ。
「ほう・・・・・やさしい娘さんだのう」

夕食を作りキッチンから戻ると、テレビから読経の声が流れていた。
クリステルが唱えているのだ。

「妖気が漂っている・・・・・・」

確かに何者かがこちらを伺っているのを私は感じていた。

続きまだ？

彼女が自殺した、という連絡があったのはそれから数日後の事だった。
モンマルトルのアパルトメントの屋上から飛び降りたのだ。

「赤い壁・・・・・・」

彼女の最後の言葉が脳裏に甦った。
どす黒い赤い壁を闇が包んでいく。

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