ペット苦手を克服しよう2【心のふれあい】

このエントリーをはてなブックマークに追加
6551
チェリー。

マンガの登場人物そのままに、どこからともなく現れて、
用事があるときにはいなくなり、ごはんのときには茶わんの前に
座っていました。
家の中で飼っていたのに、チェリーがひんぱんに戸を開けて
外へ出て行くので、たまりかねた母が玄関の横に置いた座布団。
みょうに気に入ったのか、ずっとそこにいるので、これにかこつけて、
犬小屋ならぬ猫小屋ができました。
訪れる人からは、屋根の上にチェリーがそっくりかえって
寝ているのに、必ず「何犬ですか?」とたずねられていました。
6562:04/11/07 05:29:49 ID:GE1rDydb
そんな笑い話のたえなかったある日、私のおなかに、命が宿りました。
子ども嫌いだったチェリー。
家出をしてしまうかもしれない。
そればかりが気になっていました。
ところが、病院から子どもをつれて門の前まで来たとき、チェリーは、
お帰りといわんばかりに擦りよってきたのです。
「抱いているから、気がつかないんだな」と思い、腰を落として
「ただいま」と、もう一度言ってみました。
でも、「あっそ」とでも言いたげに、ちらっと子どもを見ると、
悠々と小屋へむかっていったのです。
でも、ひとたびよその赤ちゃんがくると、今までそこにいたはずなのに、
消えているチェリー。そして、赤ちゃんが帰るまでは、ぜったいに
もどってきませんでした。
6573:04/11/07 05:30:01 ID:GE1rDydb
チェリーには、いつもお手とお座りをさせてから、ご飯をあげていました。
その光景をじっと見つめていた我が子は、手をだしたくなったのでしょう。
チェリーの頭をなでました。
私は、もうびっくりしてしまいました。
チェリーは、ご飯の前に頭をなでられるのが好きではなく
「やめて」と首をふります。
なのに、この時は、ただじっとして黙々とご飯を食べていたからです。
我が子には障害がありました。
本能的に、この子は危害を加えないとわかるのでしょうか。
チェリーは我が子にだけは心を許していました。
6584:04/11/07 05:30:10 ID:GE1rDydb
あの光景は、今でもよく覚えています。
いとこの家に二日泊まって帰ってきたある日。
チェリーのようすが変でした。
母が言うには、朝から立ち上がらず、ずっと座ったままだと。
あまりに目にあまったので、箱にタオルを入れて座らせていたとのこと。
我が子をだいて、「ほら、チェリーにただいまって言いなさい」と、
子どもの手を、チェリーの背中にさわらせました。
そのとき、チェリーは苦しそうに顔をあげて、私と子どもに
「ニャー」と言ったのです。
思わず私は「待っててくれたんだね」と言ってしまいました。
6595:04/11/07 05:31:16 ID:z8ncjQd+
まだ死んでしまうとも決まっていないのに。
だけど、あとからあとから涙がこみ上げてくるのです。
チェリーの目にも涙がこぼれていました。
「荷物を置いてくるから、ちょっとまっててね」

あの時、なぜそこを離れたのか、今でも悔いが残ります。
きっと、みんなに看取られて死にたかったことでしょう。
チェリー、ほんとうに、ごめんね。
6606:04/11/07 05:31:23 ID:z8ncjQd+
あれから、私たちの部屋以外の網戸は、すべて新しくなりました。
でも、私たちの部屋の網戸は、とうぶん変えられないと
思っています。
チェリーが部屋に入りたくて、夜中にカリカリと
音をたててつぶした網戸の目を。