☆国沢さん、それはないだろう【休憩所】430.5☆

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978名無しさん@そうだドライブへ行こう
黄昏が門を出ようとしたあたりで永田はほとんど無意識のうちに手をのばし、
黄昏の襟首をつかんで思い切りひっぱっていた。

黄昏の両手の肌色が空中で大きくゆれ、黄昏はうしろに転びかけてアスファルトに
手をついた。それひて顔をあげて永田をちらっと見るとすぐに目をそらし、無言のまま
立ち上がると丁寧に手を払った。そして体を横向きにしたまま永田を睨んだ。
永田も黄昏の目から目をそらさず、そのままじっと見つめつづけていた。

黄昏「なに?」
永田「話があるんだよ」
黄昏「誰に?」
永田「君にだよ」
黄昏「誰が?」
永田「僕が君に、だよ」
黄昏「僕にはないよ」
永田「僕が君に、話があるんだ」

黄昏は永田の顔をじっと見ていた。永田は黄昏の顔をじっと見つめていた。永田の
ひざと指さきが小刻みに震えていた。

黄昏「短い話?長い話?その前に、その話は僕に関係があるのかな?」
永田「わからない。でも僕は君に話があるんだ」
黄昏「じゃあ話せよ」

永田「君たちのせいで眠れないんだ」
黄昏「君たちって言うのは?」
永田「君たちだよ」

ふうん、というように黄昏は肯いて目じりを指先でぽりぽりとかいた。
979名無しさん@そうだドライブへ行こう:2010/12/07(火) 01:11:47 ID:BM6nIFOP0
黄昏「まあ仮に僕たち、ってのがあるとして、その僕たちっていうのは君になにをしているんだ」

イジメている、とすぐに言いそうになったが、永田は口にだすことができなかった。
その言い方では何か間違っているような気がした。永田は唾をのみ、あごにちからを入れ、
深呼吸をひとつしてから、君たちは僕たちにたいしてひどいことをしているじゃないかと
言おうと思ったけど、その言い方でも永田や国沢の置かれている状況や、黄昏が
していることはなにひとつ表すことができないように思えた。どう言うことが正しいのかが
見つからず、永田は黙っているしかなかった。

黄昏「なんだよ」
永田「君たちは、日常的に、僕や国沢に、暴力をふるっている」
黄昏「暴力?」
永田「理不尽なことを言ったり、言いがかりをつけたり、嘘をついたり、している。
   国沢が誤字が多いからという理由で、僕や国沢は君たちから暴力を受けている」
黄昏「それをやめてほしいって話なの?これは」
永田「そうかもしれない」
黄昏「かもしれないって何だよ」

黄昏は笑った。「なにそれ」

永田「なんで」

そう言ったきり次の言葉を口に出すことができなかった。黙ったままいると、黄昏が
ためいきをついて、なあ、なんなの、とあきれたような口調で言い、それからまた
ためいきをついた。

永田「なんで」

永田は繰り返した。
980名無しさん@そうだドライブへ行こう:2010/12/07(火) 01:12:32 ID:BM6nIFOP0
永田「なんで・・・君たちはこんなことができるんだ。どうして、・・・あんな無意味なことが
   できるんだ。・・・誰であれ、誰かにたいしてこんな暴力をふるう権利はない。
   どこにもない」

永田は一言一言をなぞるように言った。

永田「僕たちは君たちに暴力を受けるようなことはなにもしていない」
永田「国沢の誤字が多いことを、何も思わないでくれっていっているわけじゃないんだ」

ゆっくりと言葉をつなげながら唾液はあとからあとからあふれるようにでてくるのに
口の中も唇も乾ききっているような違和感だけがずっとしていて、永田は何度も何度も
唇をなめなければならなかった。黄昏はベンチに浅く腰をかけたまま爪をいじっていた。
永田は唾をのみこんで話を続けた。

永田「誰だって国沢の誤字を見れば違和感を持つしそれはもう僕にとっても当然のことなんだ。
   心のなかではなにを思っていてくれてもかまわない。でも、できることなら
   放っておいて、ほしいんだ・・・国沢は自分で選んでこんな誤字を書いている
   わけじゃないんだ。君が誤字を書かないのは君が選んだわけじゃないんだろう?
   その意味で君と僕はおなじなんだよ。違和感があるのは仕方がない。でもだからって
   ・・・暴力をふるっていいってことにはならないんだ。誰にもそんな権利なんてないんだ」

永田はまだ小刻みにふるえつづける指さきをポケットのなかで隠すようにして手を
強くにぎりしめたまま言った。

黄昏「君の言ってることはよくわからないな」
黄昏「よくわからない」
永田「なにが」
981名無しさん@そうだドライブへ行こう:2010/12/07(火) 01:13:16 ID:BM6nIFOP0
黄昏「まず」
黄昏「さっきの話のなかで、それを選べなかったからという点において、僕と君はおなじだと
   これは全然違うよね。ごらんのとおり僕は誤字がないし、君じゃないし、君は誤字じゃ
   なくないし、僕でもない」

黄昏は笑った。

黄昏「君と僕とじゃなにもかもが違うじゃないか。そしてつぎに、君がさっき話したこと、
   なんだったっけ、誰にも暴力をふるう権利がないとか、なにもしないのになぜ放って
   おいてくれないのかとかって言ってたね。そういうふうに考えられるってことが
   僕にはいまいちよくわからない」
永田「なにがわからないんだ」
黄昏「権利があるから、人ってなにかするわけじゃないだろ。したいからするんだよ」
黄昏「あとなんだっけ、そうだ、無意味なことをするなって君は言ったね?無意味だって
   ことには賛成できるけど、そんなの無意味だからいいんじゃないか。無意味だから
   いいんだろ。それにたいして放っておいてほしいと君が感じるのはもちろん
   百パーセント、君の勝手だけど、まわりがそれにたいしてどう応えるかも百パーセント
   まわりの勝手だ。ここんとこはなかなか一致しないもんだよ。君が世界に望む
   態度で世界が君に接してくれないからって世界にたいして文句はいえないだろう?
   そうだろ?つまりいまのことで言えば、なにかを期待して話すのは君の勝手だけど、
   僕がなにを考えてどういう行動にでるのかについては君は原則的にかかわることは
   できないってことだ。それとこれとはべつの話ってことだよ」
黄昏「それに」
黄昏「ちょっと気になったんだけど、君、さっきから誤字がどうとか言ってるけど、
   君の誤字とか、そんなのさ、べつに関係ないんだよ」

永田は黄昏のその言葉に全身がかたくなった。誤字が関係ない?のどのあたりで
鼓動がきこえはじめ、耳の奥がじんじん収縮しているのがわかった。永田は何度も
唇を舐め、息を吐いて息を吸い、しぼるように声をだした。

永田「それは・・・どういう意味で」
982名無しさん@そうだドライブへ行こう:2010/12/07(火) 01:14:06 ID:BM6nIFOP0
黄昏は永田の声を聞いて面白そうに笑った

黄昏「だからさ、君はなんか誤解してるみたいだけど、まあ、君と国沢はいじめられてるよね。
   まあ僕にとってはべつになにも楽しくないし、なんだってかまわないんだけど、まあ
   国スレのほとんどの住人が国沢をからかい、おとしめて、言いがかりや空想虚言を
   言いがかっている。君が言うとおりそれは日常的に行われている。それは認める。
   そして国沢がチャンピオンなのもチャンピンと呼ばれているのも知っている。
   でもさ、そういうのってたまたまのことであって、基本的なところでは誤字がどうとか
   そういったことは関係ないんだよ。国沢が誤字が多いってのは国沢がいじめを
   うけている決定的な要因じゃないんだよ」
永田「言っている意味がわからない」
永田「君たちは何度も何度も・・・いつだって国沢の誤字のことを、これまで何度となく
   誤字をからかって、バカにしてきたじゃないか。国沢をチャンピンと呼びつづけて、
   暴力をふるってきたじゃないか。それなのに、なんで、誤字が関係ないなんてことが
   あるんだよ」
黄昏「だからさ」
黄昏「べつに君じゃなくったって全然いいんだよ。誰でもいいの。たまたまそこに君がいて、
   たまたま僕たちのムードみたいなのがあって、たまたまそれが一致したってだけの
   ことでしかないんだから」
永田「言ってる意味がわからない」

永田はやっとの思いで声をだしておなじことを口にした。

黄昏「なんでわからないかな。だから、国沢がいじめられているのは誤字が多いとか
   そういうこととは関係ないって言ってるんだよ」

黄昏はやれやれというようなためいきをついて言った。

永田「じゃあどうして、何人もいる評論家のなかで、国沢がいじめられる対象になったんだ」
永田「たまたまなんていう理由だけでなぜ僕たちがそんな仕打ちをうけなくちゃならないんだよ」
983名無しさん@そうだドライブへ行こう:2010/12/07(火) 01:14:50 ID:BM6nIFOP0
黄昏「たまたまっていうのは、単純に言って、この世界の仕組みだからだよ」
黄昏「君のいじめに関することだけじゃなくて、たまたまじゃないことなんてこの世界に
   あるか?ないと思うよ?君が生まれてきたのだってたまたま、もちろん僕が生まれて
   きたのも。そしていあわせたのもたまたま。ただ、そのなかでも傾向みたいなのは
   あってさ、たまたまそのときにやりたいことっていうのがでてくるじゃないか。
   欲求っていうのかな。誰かを殴りたいとかそういうたまたまの欲求が、たまたま
   うまくいく場合があるの。君が置かれている状況というのは、そういうたまたまが
   一致した単なるけっかなんだと思うよ」

永田「・・・たまたま?」

永田は意味がよくわからないまま繰りかえした。

黄昏「そう、たまたま。僕は国沢なんてどうでもいいし、さんさんたるがやってることなんて
   何の興味もないよ。その場にいても何も考えていないし、なんの感想も持っていない。
   僕に関して言えばそんなところだよ」

永田「そんなことで」
永田「そんなことで、人にたいして、・・・人を、こんな目に遭わせていいと、そう思ってるの」

黄昏「あのさあ」

黄昏はまたためいきをついて言った。
984名無しさん@そうだドライブへ行こう:2010/12/07(火) 01:17:18 ID:BM6nIFOP0
黄昏「いいとか悪いとかの話になるの、これ?僕は状況を説明してるだけなんだけど」
黄昏「意味なんてなにもないよ。みんなただ、したいことをやってるだけなんじゃないの、
   たぶん。まず彼らには欲求がある。その欲求が生まれた時点では良いも悪いもない。
   そして彼らにはその欲求を満たすだけの状況がたまたまあった。彼等はその欲求を
   満たすために、気ままにそれを遂行してるだけの話だよ。君だってさ、やりたいこと
   ってなにかあるだろう?できることならそれをやってるだろう?基本的に働いている
   原理としてはだいたいおなじだよ」

永田「でもそれが許されないことだってことは、君たちにもわかっているんだろう」
黄昏「さあ、どうだろうね」
黄昏「でもさ、それって重要なことなの?」
永田「じゃあ、なんで匿名でやるんだよ」
永田「君たちにはうしろめたい気持ちがあるんだろう。だからいつだって、こそこそして
   陰に隠れてあんなふうにやるんだろう。それがほかの欲求とおなじだって言うんなら、
   どうして堂々とみんなのまえでやれないんだよ。それが悪いことと知っているから
   だろう。・・・実名でやればいいんだ」
黄昏「なんで?なんでそんな面倒なことする必要があるんだよ」
黄昏「権利の話と一緒だよ」
黄昏「それが正しいことだからって、それをするわけじゃないだろ?したいことが正しい
   ことだから、するわけじゃないだろ?きいてた?僕の話」
永田「そういう、そういうことじゃない」
黄昏「そういうことだよ」

永田「君がもし国沢の立場だったら、いま君が僕に言ったことを言われて、それで納得できるのか」
黄昏「僕は君に納得してくれなんて言ってないじゃないか」