>>18の前後の文章
欲張った設計のCVT
通 メカ系で新しいのはCVTだ。例のジヤトコ製副変速機付き。小さくできるという点が売りだけど、単体重量はウェットで60 s少々ある。
オトナひとり分に相当する。4ATはおそらく半分程度だと思う。
部 そうですね、CVTは重たいですから……。ただ、日産向けのOEMモデルはCVTが中心ですし、ライバルのダイハツもCVTを訴求していますから、
ジヤトコに出資してるスズキとしては、日産向けとあわせてこのCVTをつかわないわけにはいかないのでしょう。副変速機を付けた理由は変速比、つまりレシオカバレージ(レシカバ)を広げることです。
プーリー径を大きくすればレシカバを広げられますが、どんどん重たくなりメカロスも増えます。副変速機をつかえば、プーリー径を従来のCVTより小さくしてもレシカバを稼げるという発想です。
エ その分の機械損失は減るだろうが、プラネタリーギアで4%ほど伝達効率は落ちる。機構も複雑になる。メカロスは増える。
ただし副変速機があることでプーリー比1対1の場面を2カ所つくれる。そこで効率はリカバーする。そういう考え方だな。
T たしかに、入力側と出力側のプーリー径がほぼ同じになるところでつかうと伝達効率がいい。
理論的には、もうひとつクラッチ機構を入れれば副変速3段になってプーリー比1対1の場面を3カ所つくれるが、重量はさらに増えてフリクションロスも増える。
660tエンジンに、これ以上重たいCVTは酷だというところと、あとはコストとの絡みでこのスタイルに落ち着いたのだろう。
チ 走らせてみると、ちょうど時速40qあたりの平坦路だとハイギア側に入る。考えるに、これはモード燃費対応だろう。
時速40qに向けてスロットルを合わせて行くと、あるところで感触が変わる。ロックアップも時速40qやや下のあたりだ。
部 瞬間燃費を見ていると、プラネタリーが高速側ギアに入ると25q/Lあたりまで伸びます。
軽自動車も高速道路の上限速度は時速100qになりましたが、660tという小排気量エンジンでの高速巡航は非常につらいところです。
だから、レシカバを従来型の5・7から7・3付近まで広げて高速巡航燃費を稼ぎたかった。こういう努力は、さすがジヤトコだと思います。欲張った設計です。
チ とは言っても、アルトで走っていると路面のうねりでプーリー比が代わることがある。プーリーレシオの変化は変速であり、つまりプーリーとベルトの間が滑っているわけだ。
これは明らかにメカロスだ。だったらロックアップしちゃえ、ということになると、普通の4ATでいいんじゃない?
T CVTより4ATのほうがフィールはずっといい。燃費でCVTが有利だとデータに表れているポイントも、中高速巡航の一部だけだ。何より4ATのほうが軽い。
部 世界中がCVTを捨てたあとで日本はここに資源集中しました。ひとがやらないところを耕すことは否定しませんが、CVTの燃費を向上させるとなると。重量と制御がどんどん増えます。
通 伝達効率で言えば、プーリーレシオが1対1でもせいぜい80%でしょ。入力側と出力側の差が最大になるところでは60%台だ。
チ だからCVTは変速させたがるわけだ。伝達効率の低いところから脱したい。エンジン回転の美味しいところをつかうと言うよりCVT側の都合だよ。それでも燃費は悪いから、こんどはフューエルカットする。
部 このCVTは、減速側で時速10qあたりまで延々と燃料カットしています。しかも減速燃料カット中にプーリーレシオはなるべく1対1に近づけようとするので、
エンジンのポンプ仕事の分のエンジンブレーキにもあまり期待できません。下り坂でアクセルペダルをオフにするのは危険です。
T セダン系はABS標準装備だし、そのうちVSCも標準装備が義務化になるから、クルマを止める能力はそっちに期待しようという風潮だ。
しかもタイヤは低ころがり抵抗だろ。世の中のひとたちは「低ころがり抵抗」の意味をよく調べてみるべきだ。すべては摩擦という現象なんだから、どんな走行領域でも低ころがりでよいなどというタイヤは存在しない。
エ 自動車メディアも、そのあたりはまったくわかっていないからね。
部 それと、今回はニュートラルアイドルが入っています。スイフトのCVTと同じだと思います。Dレンジで停止すると自動的にNになります。
チ 完全に「引きずり」ゼロではないようだね。つぎの発進待機のために少し引きずっている。
T アイドリングもモード燃費に効くからね。これで1.2%改善できれば自動車メーカーとしては大きい効果になる。