イヤッッホォォォオオォオウ!分割払い!支払16回目
「う〜〜車検車検」
今車検を求めて全力疾走している僕は
予備校に通うごく一般的な男の子
強いて違うところをあげるとすれば
車に興味があるってとこかナー
名前は道下正樹
そんなわけで帰り道にあるホンダのディーラーにやって来たのだ
ふと見ると店頭に一台の高そうな車が並んでいた
ウホッ!いい車・・・
ハッ
そう思ってると
突然ディーラーマンは僕の見ている目の前で
車のエンジンを掛けはじめたのだ・・・!
乗 ら な い か
そういえばこのディーラーは
粘着店員がいることで有名なところだった
いい車に弱い僕は誘われるままホイホイと
試乗車に連れてかれちゃったのだ
よかったのかホイホイついてきて
これはローン中だってかまわないで売っちまう車なんだぜ
こんなこと初めてだけどいいんです・・・
僕・・・S2000みたいな車好きですから・・・
うれしいこと言ってくれるじゃないの
それじゃあ
とことんよろこばせてやるからな
言葉どおりに
それはすばらしいエンジンフィールだった
僕はというと
全身に与えられる快感の波に
身をふるわせてもだえていた
しかしその時予期せぬでき事が・・・
うっ・・・!しゃ、車検・・・
ん?もうかい?意外に早いんだな
ち、ちがう・・・実はさっきから車検に預けたかったんです
このディーラーに来たのもそのためで・・・
そうか・・・いいこと思いついた
お前車検代をこの車の頭金にしろ
えーっ!?頭金にですかァ?
男は度胸!何でもためしてみるのさ
きっといい買い物だぜ
ほら遠慮しないでアクセル踏んでみろよ
彼はそういうとオープンカーの幌をフルオープンにし
初夏の空気を車いっぱいに取り入れた
それじゃ踏みます・・・
くうっ!気持ち良い・・・!
この初めての体験は
トヨタ厨では知ることのなかった絶頂感を
僕にもたらした
あまりに激しい快感に
試乗を終えると同時に
僕の財布の中身は ディーラーのカウンターの前で
あっけなく果ててしまった
ああ――っ!!
ガチャッ
チャーン
アリガトウゴザイマシター
このぶんだと
そうとう奮発していた
みたいだな
財布ン中がスカスカだぜ
はっはっ
どうしたい
あんまり気持ちよくて…
こんなことしたの初めてだから…
はあ…
だろうな
俺も初めてだよ
ところでこのカーナビを見てくれ
こいつをどう思う?
すごく・・・便利です・・・
便利なのはいいからさ
このままじゃおさまりがつかないんだよな
こんどはナビの番だろ
ああっ!!
いいぞ…
良い音声案内で道を教えやがる…!
買・・・買う…
なんだァ?
今買ったばかりなのにまた買うってのか?
現金持ちなんだな
ちっ ちがう…!!
なにイ? 60回払いだとぉ?
お前ここをオニキスと間違えてんじゃねえのか!?
しーましェーン!!
しょうがねえなあ
いいよ、いいよ
俺が信販会社にTELしといてやるからこのまま買っちまえ
借金まみれで買いまくるのも
いいかもしれないしな!
え―――っ!?
――と
こんなわけで
僕の初めてのIYH体験は
クソミソな結果に終わったのでした…