チュンチュン…
俺「くーくー…」
幽霊「起きろーーーーー!!」
俺「うおっ!!」
幽霊「おはよ♪」
俺「お…おはようございます…」
幽霊「ホラ、もう7時!」
俺「マジ?やっべ!」
幽霊「ホラ、早く顔洗って着替えてきなさい!」
俺「はいっ!」
ダッ…
幽霊「もう…全く、私がいないとしょうがないんだから…」
家のドアを空ける
俺「うっす!おはよ!」
妹「あれ?お兄ちゃん、今までどこにいたの?」
俺「車の中!んなことより着替えますんで!どけ、我が妹よ!」
妹「う、うん…」
部屋に入り、ズボンを履きかえる
俺「うお!チャックに皮が…!」
ガチャ…
妹「おに…」
俺「あっ…」
沈黙
妹「ご、ごめん!」
俺「ま、まあいい…で、なんだ?」
妹「あ、えーと…き、昨日は幽霊さんと一緒?」
俺「ああ、気がついたら寝てたよ」
妹「もう、ちゃんと家に帰ってきてよー」
俺「わりいわりいw」
こんな忙しくも楽しい日々が毎日続くと思っていた…
俺にとってはこんな毎日が幸せだった…
車内
俺「ふう…なんとか間に合いそうだ…」
幽霊「大学ってそんなに大変なの?」
俺「さぼってるヤツもいるが俺は頑張ってるのだ」
幽霊「ふーん…」
俺「家が田舎だから朝が大変だが、自家用車で通学できるしまあ悪くない」
幽霊「私もいるしね」
俺「あーそっすね」
いつからだったか…
俺の車にはコイツがいることが当たり前になっていた
最初はかなりびびった
霊なんか信じなかった俺
そんな俺とこいつが出会ったのは大学一年の夏・・・
俺が友人の相談に乗ってやった時だった
その友人は車の免許を取ったと同時にすぐさま車を買いやがった
車は中古のクラウン
嬉しそうに俺に見せびらかしてたっけ・・・
だが、それも一月ほどで終わることになるのだ
俺「何?どうしたのよ、このクラウン?」
ある日、友人が俺の元に一台の車を持ってきた
友人「なんかさ・・・気味悪いんだよ・・・」
俺「は?気味悪い?」
友人は恐る恐る語り出す
友人「運転してたら助手席のあたりから『下手糞!』とか聞こえてきたり・・・」
俺「ふむ」
友人「車に乗り込む時に『あーきったないなー!』って・・・」
俺「ホントかよ〜?」
友人「いやマジなんだって!ここ最近になってそんなのばっかなんだって!」
俺は半信半疑で聞いていたものの、
友人はかなりビビった様子で言う
友人「もしよかったら・・・お前、貰ってくれねえ?」
俺「俺が?」
友人「ああ、お前幽霊なんて信じないし大丈夫だろ?」
俺「んーまあな」
友人「俺も下手に捨てて呪われでもしたらイヤだし」
しばらく考えるものの、俺も大学までのアシが欲しいと思ってたので、
俺「んじゃありがたく使わせて貰うよ」
快く了解した
友人「マジか!?サンキュ!」
俺(ま、本当に幽霊が出るなら廃車にすればいいだけだしな・・・)
と、言うわけでこの車は俺のモノになった
俺「おー・・・さすがはクラウン、古くても乗り味は素晴らしいものだ」
俺はこの車にいちいち感動しながら運転していた
初めての車
毎週日曜になるとピカピカに磨いていた
俺「さあ、今日も綺麗にしてやるぜ?相棒♪」
車を綺麗に磨いていると、
なんだか車が嬉しそうにしている気がして・・・
俺「そうかそうか、お前も嬉しいか」
一人ごとを言いながらもピカピカに磨いていた
妹「お兄ちゃん、明日雨だよ?」
俺「フ・・・関係ないね、車を磨けば俺も光るぜ」
妹「もう・・・何言ってんだか・・・」
そんな日々が一月ほど続いた
季節は夏真っ盛り
そんなある日
本当にいきなりな出来事だった
ある日俺が運転席に乗り込むと、助手席に長い黒髪の女の人がいた
俺「へ?」
女「・・・」
俺は一度目を反らし考える
俺「今・・・なんか見えたような・・・」
気を取りなおしてもう一度中を覗く俺
俺「・・・」
女「・・・」
俺「・・・」
女「・・・こんちは」
女が俺に挨拶をする
俺「だ、誰・・・ですか・・・?」
女「私?この車の・・・守護霊かな?」
時が止まった
俺「はい?」
しゅごれい?
ああ、「守護霊」ね・・・
俺「って・・・んなまさか・・・」
と、よーく見ると・・・
・・・足が無かった
俺「ぎえええええええええええーーーーーーーーー!!!!」
幽霊「うらめしや♪」
俺「・・・!!」
幽霊「・・・とかいってみる」
俺「ウソだ!俺は信じないぞ!誰だアンタは!?なんで俺の車にいる!?」
幽霊「私ね、この車の前のオーナーなの」
俺「はい?」
沈黙
俺(マジに幽霊か?イヤしかしそんなものは存在するハズが・・・)
幽霊「ねえ?」
俺(でも足はねえし・・・気のせいか全体的に透けてるような・・・)
幽霊「ねえってば」
俺(あーもう!どうせ透けるのならその死に装束が透けてれば女体の神秘が・・・)
幽霊「ねえ!聞いてるー!?」
幽霊が俺に顔を近づけて叫ぶ
俺「は、はい・・・なんざましょ?」
かろうじて声を出せた
幽霊「わかった?」
俺「なにが?」
幽霊「私はこの車の前のオーナーで、生前この車が大好きだったから未練から取り付いてんの!OK?」
俺「お、女なのにクラウンっすか?」
幽霊「あーなによー、差別してない?ソレ」
俺「あ、ああ・・・ごめん」
なぜか謝る俺
そもそもなんでコイツはこんなに態度デカイ?
幽霊「私の車に対する情熱は大したモンよ、現にこうして守護霊してるわけだし」
俺(自縛霊だろ・・・)
口には出さない
なんか怖いから
俺「ていうか、そもそもなんで俺のツレを脅かしたりしたんだよ」
幽霊「だってあの人、この車のこと全然大切にしないんだもん」
生まれて初めて幽霊の愚痴を聞く
幽霊「運転は雑だし、車は洗わないし・・・」
俺「でも、そんなモンじゃね?新車買って最初はピカピカにしてたのに一度擦ったら洗わなくなるヤツも多いし」
幽霊「でもさ、車だって綺麗にしてくれたほうが絶対良いよ」
俺「まあ・・・確かにモノを大切にするってのはいいことだわな」
幽霊「うんうん、そーなのよ」
丸め込まれる俺
幽霊「でもさ、今度のオーナーは真面目そうだから出てきたの」
俺「へ?」
俺のことらしい
幽霊「この車は私も同然なんだから♪汚くしちゃダメだよ」
俺(もしかして・・・俺はこれからこいつと一緒に暮らさにゃならんのか・・・?)
俺は頭を抱えた
私怨いる?
妹「どうしたの!?お兄ちゃん?」
さっきの俺の叫び声を聞いて、家から妹が飛び出してくる
俺「マイシスターよ!細木○子を呼べ!」
妹「え・・・?いや、いきなりそんなこと言われても・・・」
俺「じゃあ織田○道を呼んでくれ!」
妹「無理だよう・・・それにあの人今刑務所の中でしょ?」
冷静に返す妹
俺「じゃあこれからアイツと一緒に暮らせと言うのか!?」
俺は助手席を指差す
妹も促されて助手席の幽霊を見る
妹「だれ?」
俺「うーん・・・どう説明すれば・・・」
妹「まさか・・・!」
俺「・・・」
妹「お兄ちゃんの彼j・・・」
俺「違う!アイツの足見ろ足!」
妹「え・・・」
沈黙
妹「・・・」
俺「・・・」
幽霊「・・・」
バタッ・・・
俺「やばい!気絶しやがった!」
幽霊「ええ!?大変!」
俺「お前のせいだろーが!!」
幽霊「私、何にもしてないよ〜」
俺「あの時は大変でしたなあ〜」
車を走らせる
俺「いやー最初はびびったよ」
幽霊「『な、なんでこんな美人のお姉さんが俺の車に!?』・・・とか?」
俺「死ね」
幽霊「いや、もう死んでるし」
ナイスなつっこみ
返す言葉もない
俺「ま、軽い幽霊で拍子抜けしたがな、恐いのよりマシだけど」
幽霊「最近で言うと呪○とか貞○とか?」
俺「なんでそーいうの知ってんだよ・・・」
幽霊「まあ幽霊にも色んなのいるから」
俺「そもそもだ、お前はなぜに死んだのだ?」
幽霊「え・・・」
急に幽霊が静かになる
俺「いや、無理に言わんでもいいが・・・」
聞かないほうが良かったかな・・・?
そう思ってると幽霊がゆっくりと口を開く
幽霊「・・・失恋」
うつむいて幽霊は答えた
俺「失恋?てことは・・・自殺とか?」
幽霊「うん・・・」
幽霊が昔を思い出しながら言う
幽霊「昔・・・付き合ってた人がいてね・・・」
俺「ほう」
幽霊「私、その人のこと大好きで・・・」
俺「ふむ」
幽霊「でも、結局は向こうは遊びだったみたいで・・・」
俺「・・・」
ん?
俺「ちょっとまて」
幽霊「えっ?」
俺「ってことは・・・」
幽霊「?」
俺「・・・お前も中古か!?」
ゴッ・・・!
思いっきり頭を殴られる俺
俺「我ながらウマイと思ったのに・・・」
幽霊「失礼でしょうが!!」
俺「俺のセンスがわからんのか?中古車と中古女をかけてだな・・・」
幽霊「な・ん・で・す・って!?」
俺「いえ、スイマセン」
これ以上は言わない方が身の為だろう
幽霊「もう・・・君と喋ってると失恋で自殺した私がバカみたい・・・」
俺「じゃあ、きっとバカなんだよ」
ガッ・・・!
俺「痛って〜!!」
俺「昨日はあんなに可愛かったのに・・・」
幽霊「私はいつでも可愛いの!」
こんな喧嘩はしょっちゅうだ
俺「さーて、到着ー」
そうこうしているうちに、大学の駐車場に着く
カバンを用意し、キーを抜く
俺「んじゃ、昼に」
幽霊「がんばってね〜」
俺「あいあい」
教室へ向かう
俺「おいっす」
友達「おー」
友人との挨拶とほぼ同時に先生が教室に姿を見せる
どうやら間に合ったようだ
先生「よーし、みんな席についてー」
講義を受ける俺
でも、頭の中はアイツのことでいっぱいだった
ちなみに友達は誰一人としてアイツのことを知らない
妹と俺だけしかアイツのことを知らないのだ
俺(自殺・・・か)
今朝明かされたアイツの死因
俺(自殺なんて絶対しそうにないんだけどな・・・)
正直、少し驚いた
失恋ごときで自殺するヤツではないと思っていた
俺(俺も失恋したら自殺するんだろうか・・・)
耳に入る先生の声も右から左だった
窓から空を見上げる俺
空は晴れてるくせに、
俺の心には変なモヤモヤがかかっていた
昼休み
車内で妹が作ってくれた弁当を頬張る俺
俺「こうやってお前と喋りながら食ってるとこを友達とかに見られたら・・・」
幽霊「私ならひくかな〜」
俺「だろうな」
幽霊「うわ!キモ!」
俺「うっせえ」
幽霊「あの人なんかヤバーイ」
俺「・・・殺しますよ?」
幽霊「フフフ・・・」
俺「何笑ってんだよ・・・」
幽霊「まあ、そう怒るな怒るな」
こんな生活にも慣れていた
そして・・・
俺「それでは、午後の授業に行って参ります」
幽霊「はーい」
――こんな生活がずっと続くと思っていた――
俺「そういえばさ」
幽霊「え?」
帰りの車の中
俺「自殺って言ってたけどやっぱリストカットとかか?」
どうしても自殺のことについて知りたかった俺は、
思い切ってこう切り出した
幽霊「あー・・・」
俺「違うの?」
幽霊「うん・・・」
俺「じゃあ首吊り?」
幽霊「ちょっと・・・違うな〜・・・」
他には・・・
俺「他には・・・なんだろう・・・?」
幽霊「いや〜失恋した時さ・・・」
幽霊の口が開く
幽霊「ウサ晴らしにこの車で爆走してたら・・・」
俺「してたら・・・?」
幽霊「山道でハンドル操作を誤りまして・・・」
俺「ドッカーン・・・と?」
幽霊「・・・」
無言でうなずく幽霊
俺「プッ・・・ハハハハハ!」
幽霊「な!」
俺「バッカで〜!!」
幽霊「ちょ・・・笑うな〜〜!!」
安心した
やはりコイツはバカだったのだ
俺「ん?ちょっと待て!てことはこの車は事故車?」
幽霊「・・・」
俺「おーい・・・」
幽霊「だ、ダメージは少なかったかな・・・」
俺「?」
ちょっと考えてみる
俺「てことはあれか?お前だけガラスあたりに頭ぶつけたりとかで・・・」
幽霊「ア、アハハ・・・」
俺「生命力の無いヤツだな〜」
幽霊「う、うるさいわね〜!」
呆れながら、怒りながら、笑いながら帰り道を走った
そんな毎日がただただすぎていった
そんな毎日は永遠に続くと思っていた
そんなある日 俺は休みを利用して幽霊と(一人で?)ドライブに出かけた
俺「これからいくとこはすっげえところだからな!」
幽霊「う・・うんっ」
小さい頃よくいってた田舎のおじいちゃんの家
一面のひまわりの広場
それを見せてやろうと思っていた
俺「もうすぐつくけど、ちょっと目ぇつぶってろよ」
幽霊「はぁ?どーせ目つぶってるスキに変なこと考えてんでしょ?」
俺「バカ・・お前マ○コついてねーだろ・・」
幽霊「ちゃんとついてるわよ!見せてあげるから、待ってて・・ゴソゴソ」
俺「うわ〜っ!いいっていいって!いいから目つぶれよ!」
ひまわり広場の中心で目をあけさせ、驚かしてやろうと思っていた(・∀・)
目的の場所はもう、すぐそこだった
幽霊「ねえ、○○・・?」
俺「ん?なんだよ」
幽霊「……。うん、やっぱいいやっ」
俺「???」
幽霊のいつもと違う声色に一瞬戸惑ったが、俺は自分の計画に夢中で
そんなことはすぐ忘れてしまっていた
俺「よーし、ついたー!」
俺は助手席のドアを開けた
俺「目、あけてみ?」
幽霊「うん・・・。・・えっ・・!」
青く澄んだ空
眼前にどこまでもひろがる黄色のじゅうたん
俺はこれをみせたかったんだ
幽霊「すごーい…きれー…」
俺「だろ?」
幽霊「生きてたら、もっときれいに見えるのかな…」
俺「死んでても生きてても同じだよ、見えてるのはさ」
幽霊「案外ロマンチストなんじゃん?」
俺「このやろ、せっかくいいこと言ったのにちゃかしやがって!」
幽霊「あははは…あー、おかしい」
俺は早起きしてつくってきたお弁当をひろげ、助手席の左にもたれて食べだした
背中には生きている人間がいるような感覚があった
コイツが幽霊でもなんでも関係ない
ただ、たしかにコイツはここにいる
俺はそれだけで充分だった
幽霊「…あのね、聞いて欲しいことがあるの」
俺「ん?なんだ?」
幽霊「うん・・・」
俺「なんだよ、はやくいえよ、じれってーな」
幽霊「…。今日、ここにこれてよかった!自縛霊生活もこういうことあるからやめられないわ」
俺「おい、俺はこれからもずっとお前に休日サービスする必要あんのかよ?」
幽霊「そーゆうことっ!あ、あたし今度は沖縄とかいきたいな〜」
俺「ムリにきまってんだろー!」
幽霊「あははは・・・ははは・・」
沖縄はちょっとキツい
でも、こんなとこでよかったらまたこよう、
そう思っていた
それから数日
俺はかぜをこじらせ3日ほど寝ていた
そしてかせも治り久しぶりにクラウンにのった
俺「ゴメンゴメン、かぜひいててさ!退屈だった・・ろ?」
助手席には誰かいる感覚はなかった
俺「おい、いねーのか?
おかしいな・・いつもなら俺が来るとウルサイくらいはしゃぐのに・・」
学校についても、幽霊は現れなかった
俺は気になって講義も昼でぬけた
俺「どっかいってんのかな?でもアイツここから動けないはずだし…」
次の日も幽霊は姿をみせなかった
その次の日も、またその次の日も
そしてアイツが姿を見せなくなってから一ヶ月がすぎていた
妹「おにいちゃん、ごはん…いらないの?」
俺「すまん、はらへってないんだ」
妹「まだ、幽霊さんのこと考えてるの?いいかげん忘れなよ!もともとあたしたちとは違うんだよ!?」
俺「うるさい!あいつは幽霊だけど、中身は全部俺らと同じだ!生きてる人間と何もかわらねえんだよ!」
妹「もう知らない!ばか!」
妹は階段をドタドタとおりていった
俺はわかっていた
でも認めたくなかった
アイツはもう現れないかもしれない
いや、そもそも幽霊なんてものがいたのかどうか?
俺は幻をみてたのか?
俺は車にのりこみ、夢中で走った
一度だけつれていった思い出の場所
俺はひまわりの広場に向かって走っていた
今朝の天気予報では晴れだったはずなのに、いつのまにか雨がふっていた
平日の午後 それも田舎道
道を行く車は俺以外ほぼゼロだった
俺「行かなきゃ…俺はまだアイツに話したいことが山ほどある…
連れて行きたいとこだって…」
ひまわりの広場にいけばアイツがいるなんて根拠は全くない
しかし俺はそこにいけばアイツがいる そんな気がしてならなかった
俺「幽霊だっていいよ…
どこでも行きたいとこつれてってやるよ…」
普段言わない独り言が 心が直接しゃべるように なぜか不思議とこぼれた
俺「わがままでもなんでもいいよ…俺のことちゃかせばいいよ…
ありえない恋愛でもしてやるよ…だから…」
いつのまにか涙が絶え間なくながれていた
声を出して泣きながら運転していた
見通しの悪い田舎の山道 悪天候と涙で俺は目の前の急カーブを見逃していた
痛い…。クラウンは半分ほど斜面にめりこんでいる。動くと体中に激痛がはしった
急カーブをまがりきれずそのまま山の斜面につっこんだのだ
俺は車をはうようにして降りた
足が言うことをきかない
よく見るとひざのあたりから鮮やかな色の血がドクドクとながれでている
かまうもんか…こんなの
俺ははって移動しだした
幽霊がこんな俺を見たら逆にホラーだろうな・・ははは
もう30分か…いや1時間くらいははっている気がする
ふと目を前にむけるとひまわり広場が見えた気がした
しかし、まだひまわり広場には程遠いはずだった
俺は意識がとびそうだった
雨がとても冷たかった
気がつくと俺はひまわりの広場にいた
が、いつもいっていたおじいちゃんちのひまわりの広場ではなかった
なにか微妙に違う
俺「あれ?俺ついたのか?」
空は雲ひとつなく晴れていた
ひまわりは視界いっぱいにどこまでも広がっていた
あの日のようだった
俺は走った
身体の痛みはなかった 傷も消えていた
また夢なのか?それでもよかった
少し先に1人の女性の後姿がみえた
肩より少し下の栗色の髪 薄い緑のワンピース
俺「幽霊!お前なんだろ!?」
俺はその女性のもとにかけより 肩をだき 振り向かせた
アイツだった
髪型や服は違い 化粧もしているが たしかにアイツだった
俺「お前…なんでいなくなってたんだよ!」
幽霊「へへっゴメンね!心配してた?」
いつものアイツだった
姿は生きてるときみたいになってるけどいつものアイツだった
俺「あたりまえだろうが!どんだけ心配したと思ってんだよ!」
幽霊「へへ・・」
幽霊は急に涙声になりうつむいた
俺「あっ・・いやゴメン…。怒ってんじゃねーんだよ」
幽霊「・・・。」
俺「悪かったよ、泣くなって!とりあえず車のって帰ろうぜ?」
幽霊「・・帰れないの」
俺「えっ・・・」
幽霊「○○にきいてほしい話があるの・・」
俺は嫌な予感がした
俺「やだよ、聞きたくねーよ・・!」
幽霊「お願い、聞いて!大事な話なの!最後の話になるの!」
聞きたくなかった どうせ別れの話なんだろ?
最後の話ってなんなんだよ 一緒に帰れないってなんなんだよ
幽霊「あたし・・○○に会うことができてよかった
あたしはもう死んだ人なのに、化けてでてるのに普通に接してくれた
いつのまにか、好きになっちゃってた…
でもね・・今のあたしが人を好きになるなんてダメだったの・・」
俺「俺だって好きだよ!お前よりもずっと、お前が好きなんだよ!」
俺は泣きながら叫んだ
幽霊も涙を流しながら話続けた
幽霊「でもね、あたしは恋人に捨てられて自殺したの・・
その人のことを想いつづけるあまりに幽霊になってしまったの
でも今は あなたを好きになってしまった・・
昔の恋人への未練はなくなってしまったの・・
幽霊「だからあたし、もうあの世にいっちゃうみたい…」
幽霊のからだがどんどん透けてきた
俺「やだよっ!行くなよ!俺のことは好きになるな!昔の恋人を想ってていいよ!
行かないでくれよっ・・」
幽霊「・・神様がね、この世を離れる前に好きなところをみてきなさいって
あたし車を離れることができるようになってたの
あたしの実家とかね、高校とか!楽しかったな〜…」
俺「俺はそのあいださみしかったんだよ・・お前がいなくて・・」
幽霊「フフッほーんとにあたしがいないとダメなんだからぁ…。
でもこれからはちゃんと一人でやらなきゃだめだよ?
朝ももう起こしてあげられないんだから・・」
もう幽霊の身体は向こうの景色がはっきりわかるほど透けてきていた
幽霊「あーぁ・・もうそろそろ時間切れっぽいわ・・ちょっとこっちきてくれる?」
俺は幽霊のそばに歩み寄った
幽霊「はい、お別れの握手!」
俺は手を握った 温かかった 幽霊だなんて信じられないほど生身の人間の感触だった
ふと、目がさめた
妹「おにいちゃん!おにいちゃんっ!わかる?おにいちゃんが気づいたよー!」
父と母、それに妹 みんな涙目だった
見回すと白衣きたバーコードのおっさん まるまる太った中年のおばさん看護士
あれ?病院? そっか・・俺車で事故って・・
妹「おにいちゃんっ・・今夜が峠で・・もう少しで死ぬとこだったんだから・・」
まじかよ?九死に一生ってやつか?
妹「これからは少し入院生活だからね!あ〜でもよかった〜・・」
俺はあれから3日間意識不明で、死んでもおかしくない状態だったらしい
親の話ではあのクラウンは廃車になってもう今はバラバラに分解されているだろうとのこと
クラウンを譲ってくれた友人や妹に聞いてもなぜか幽霊のことは覚えてないみたいだった
アイツとすごした時は夢だったのか?
俺は必死に彼女の情報を探した
友人にクラウンの入手先を聞き、ディーラーをたずね
ついに俺は彼女とおもわれる人物にあたることができた
やっぱり夢じゃなかった
彼女の名前は掛川美樹 調べてみると意外と住んでいるところは近くだった
せめて墓参りでもと、俺は彼女の墓にいった
そこにはたしかに掛川美樹の名前があった
俺「やっぱりお前、ほんとにいたんだな・・夢じゃなかったんだ」
目をとじると彼女の顔が今でも鮮明にうかぶ
いつも笑顔だった
俺はふいにあふれそうになった涙を腕でふいた
俺「いつか、何十年後か、俺がそっちいったときはまたドライブしような」
うん、と返事が聞こえた気がした
俺「またあったときは俺、じじいになってるかもしれねーけどな」
笑い声がきこえた気がした
俺「・・じゃあな!」
空は青く澄み渡っていた
秋の香りがすぐそこまできていた
〜 fin 〜