今日はシュウがポリラックの施工のコーチングを自ら買って出てくれた。このポリラック
はネットで調べてもよく判らないことが多い。とりあえずシュウのやり方を完全に吸収で
きるのはありがたい。今日はGTRの登場だ。所有者の元にあるより修理工場に
入っている方が長いのだから思えば不幸な車だ。
今日出てきているメンバーはシュウとミドリと五郎。テツオは木曜の雨に耐えられず、
昨日の早朝に洗ってしまったらしい。
シャンプーの拭き上げまでを無難に終えた。またスピードが上がっている。拭き上げ
完了までに要する時間はシュウと比べても遜色ないところまで来ているだろう。
コーチングと言っても、ポリラックの施工そのものは簡単だ。プラスセーヌをバケツにつ
っこみ絞る。プラスセーヌは水分が抜けると色が変わるので、白っぽくならない程度に絞
るのがコツだ。10円玉大のポリラック原液を取り薄く伸ばす。ルーフを塗り終えるまで
に必要なポリラックは10円玉2枚分。ぱっと見水分で濡れたのかポリラックが
塗れているのかわかり難いがお構い無しだ。シュウはルーフからボンネットまで
一気に塗る。ボンネットを塗り終えたらルーフをいきなり鏡面クロスで拭き上げる。
そしてトランクを塗ってボンネットを拭き上げて・・・。あっという間に終わってしまう。
そこまで終えてヒロシは手を止めた。
「こないだシュウがこのあと洗車スポンジを握ってたように見えたんだけど・・・」
「よく気付いたな。今日それも教える。見ろそのバケツ、見事なポリラック溶液が
出来てるだろ?」
バケツの水は乳白色になっている。プラスセーヌを湿らせたり絞ったりしている内に、
自然と出来上がったポリラック溶液だ。
「こいつを捨てちゃあ勿体無い。そこにスポンジを突っ込んで、その液でホイールを
洗うのさ。」
やってみると、ホイールの汚れがみるみる落ちていく。
「で、一度目できれいにして、二度塗りの時はプラスセーヌでホイールに
も施工するんだ。」
「なるほど。シュウの作業って手先の早さもあるけど、何より効率がいいよね。」
「手先だけ早くなると雑になってくるからな。俺は手先は器用なほうじゃないしな。」
一度目の施工を終えた。
二度目に入ろうと用意を始めた時、シュウに止められた。なんでも二度目は違う方法で
施工するということらしい。
「じゃ〜ん。」
ミドリは霧吹きと薬品のボトルのようなものを持っている。
「これに少し原液を入れるんだ。そして10倍を目安にこの蒸留水で薄める。」
「それって・・・噂のポリラック洗車だね?」
聞けば蒸留水は薬局で買ってきたのだと言う。使えるものはどこからでも入手する彼らは
逞しい。
「お、知ってたか。これも楽だぞ〜。」
霧吹きで吹きかけ、プラスセームでゆっくりと塗り広げていく。塗っているのか
拭き上げているのかよくわからないので複雑な気持だ。施工の順番はほとんど
変わらないがシュウはこのやり方ならトランクまで一気に塗るらしい。
そして拭き上げはやはり鏡面クロス。
最後に余剰成分を水で流してプラスセームで拭き上げ、鏡面仕上げクロスで
乾拭きして完了。
「これだ。このスベスベ感がたまらないね。コーチングありがとう。コーヒー
おごるよ。」
シュウが笑う。
「おいおい。俺が声かけたんだ。終わったかどうかは俺が判断するぞ。」
「え?まだ何かあるのか?」
「じゃじゃーん」
ミドリが今度はフクピカウェットとヘラを持っている。
「え?フクピカ?冗談だろ?折角ポリラック塗ったのに。」
「冗談じゃぁないんだな〜」
五郎はフクピカを1枚取り出し、GTRに力強く擦りつけた。ヒロシは顔面蒼白に
なり五郎の腕を掴んで止めた・・・。
「あれ??」
フクピカはボディには触れていない。五郎が擦っていたのはモール部だ。
「へっへー。ポリラックはモール部につくと白く固まるでしょ。それを固まる
前にこのフクピカウェットで擦ったらきれいになるっす!溝になってるところは
このヘラも使って・・・
ほら。きれいになるでしょ?」
「この方法は五郎君が考え出したんだよ。洗車グッズヲタらしいでしょ?」
「洗車グッズヲタはよけいっす!」
今度こそ作業が終った。今日はいつも気になっていたモール部も黒々としている。
ヒロシは上機嫌で皆に缶コーヒーを配った。
「シュウ。やっぱりこのメンバー・・・凄いね。」
「だろう。お前もその一員だぞ。」
恒例の洗車後の一服だ。
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