AutoBild 47/2004 (11/19号)
Wieviel Schrott steckt in unserem Auto?(マイカー中の屑の割合は?)
20ブランド、7種の評価。《クオリティーレポート2004》が最重要(20)ブランドの長所、
短所を容赦なく明らかにする。
ドイツ自動車業界トップマネージャーが9 月初めにインゴルシュタット(アウディ本社所在地)に
集まりミーティングを行った。報道陣の立ち入りは禁止であった。
自動車メーカー及び部品供給メーカーのトップマネージャー250 名(ヴィンターコルン・アウディ社長、
ピシェッツリーダー・VW 社長も含む)が、「歯に衣を着せない、熱心な」討論(プレスリリース)を
行った。ミーティングを非公開にしたのは、このミーティングのテーマが非常にデリケートな
《品質》問題だったからだ。
品質は「トップが決定を行う項目である。」(プレスリリース)「チャレンジに挑み、共同の道を
みつけ、転機をもたらす」ことがこのミーティングの目的である。本来、マスメディア好きで、
誇り高いドイツのトップマネージャーが密会し、月並みな文句をならべたプレスリリースを
発表したのは一体何故なのか? 彼らが問題を抱えているからである….
ドイツメーカーのジレンマ
ドイツメーカーはいまだに世界最高の車をつくっているという評判をとっている。
しかし、耐久品質及び顧客満足度についてはとっくにトップの座を失ってしまった。
BMW3 シリーズは後軸固定部が破断し、VW のアルミ・エンジンは冬期に凍結し、メルセデス
E-クラスは電子系の故障でエンコした。
外国メーカー-------特に、フランス、イタリアのメーカー-------も品質欠陥問題を出している:
ルノーのスプリング、ブレーキディスクはすぐに駄目になり、プジョーはジャークの出るエンジンで
顧客を怒らせ、フィアットはTUV 検査員の「お馴染みの客」になっている。それでも、顧客は
ドイツメーカーの不具合には特に厳しい。その責任の一端はドイツメーカーにもある。極端な期待を
呼び覚ましたためだ。
「プレミアム」ブランドが、「プレミアム」技術を「プレミアム」価格で売るからには、信頼性も
「プレミアム」でなければならない。ところが現実にはそうではない。アジア・メーカーと異なり、
技術革新(をしなければならないという)圧力がずっと大きいためだ。絶えず新たな技術を上市し、
それが必然的に不具合率を高めている。韓国車ならありあわせの技術で車をこぎれいに梱包して、
安く売ることが出来るかも知れないが、アウディ、BMW、メルセデスはハイテク車両のオファー
以外に道はない。お客がそれを期待しているからだ。
少なくとも、戦略責任者はそう考えている。ユルゲン・フッバート(元メルセデス社長)は
あるインタビューで、「技術革新面でのリーダーシップ」を-------安全性、Exclusivity、
快適性と並び-------《核心価値》の一つに挙げているが、メルセデスが成長する基礎となった
信頼性、耐久性については全く触れていない。アクティブ操舵、Anti-Collision-Assistを問わず、
プレミアムメーカーは絶えず新たな、競合を凌駕した技術を提供しなければならないと考えている。
しかも、開発期間、製品サイクルが益々短くなる傾向にある。
「(開発の)スピードを選ぶか、(製品の)品質を選ぶかという選択肢はない。両方とも
達成しなければならない。」(VDA ゴットシャルク会長)ニューモデル開発に際し、落ち着いた、
継続性のある仕事をするという態度がおろそかになっているのではないかという疑問が残る。
ドイツメーカーの間でも、クオリティーとは単にギャップの寸法を狭くすることや、質感を
向上させることだけではないという認識、強力なブランドを楯に多少の不満は相殺出来ても、
自分の力には限りがあるという認識が非常に徐々にではあるが浸透して来ている。
昔の間違いがいつかは影を落とすからだ。
これはVW が目下痛切に感じている事態で、同社のサービス部門は空気量センサー、点火コイル、
ウインドリフターの不具合についての苦情と戦っている。本誌苦情投書箱に来る郵便の30%弱が
(セアットやスコダを含まぬ)VW ブランドについての苦情である。
既に不具合問題がとっくに解消していても、イメージの喪失は莫大である。品質保障の
最高責任者であるシュリング氏は特に「不具合除去過程」の加速を計画しており、
「問題が打ち上げられてから解決までに18 週間」を目標としている。
アフターサービス部門は早期警報システムとして品質保障体制に組み込まれている。こうして
VW は将来、迅速な対応を行い、苦情が大量に発生してから腰を上げるような事態をなくす。
メルセデスも品質問題について旧悪に起因する大量の苦情を覚悟している。
新社長コルデス氏は既に大規模な「品質攻勢」を予告し、例えばダイムラー・クライスラー社は
「その他のリスクに対する準備金」を年初から 18億ユーロ増やし、総計 110億ユーロにした。
5億7200 万ユーロを稼働車の手直し措置のために準備し、将来、インスペクションの際に、
まだ不具合が出ていない場合でも、特に(電子系)を体系的にチェックする。
だが、それだけで故障の多いE-クラスの問題がおさまるだろうか?
VW フェートンのケーブルハーネスは2110 本のケーブルから構成され、全長が3.9kmにも及ぶ。
完全装備のマイバッハに取り付けられる制御機器の数は77 個である。
マイクロコンピューターの速度が益々速くなるのに伴い、制御機器、センサーの数も増大した。
電子系と無関係だったり、他のパーツとネット結合されていない機械パーツはほぼ皆無となり、
自動車が車輪をつけたコンピューターと化し、まさにそれだからこそ、予測不能のシステムとなった。
1990 年代末の電子系ブームが消え去り、二日酔い気分が蔓延している。「多数のメーカーが
遊び心に身を任せた」と最近、ダイムラー・クライスラー技術担当役員ヴェーバー氏が語っている。
同社の電気/電子部門責任者ヴォルフスリート氏はもっとはっきり、「使用している電子系機器で
今日、信頼性のあるのが50%。残りの50%は長期テストもせずに、急いで車に装備しすぎた」と
語っている。同氏は、それ故、「ゼロ・エラー」を目指す思考転換を求めている。
だが、「言うは易し、行うは難し」である。問題は複合的だからだ。
□ 電子部品の数が膨大になり、電子系がパンク。その結果、機能障害が生じている。
□ 意味のないお遊び(例: シートポジションをキーにメモリー)によりシステムが更に複雑となる。
□ Bus-システム、ハード/ソフトウェアの標準化はまだ完結にほど遠い状態で、このため
部品供給メーカーのコンポーネントは単体では機能するが、他のメーカーのコンポーネントと
組み合わせると不具合が出る。
□ ネット化が高度に進行したため、不具合診断が難しくなり、車がますます不透明になっている。
□ 電子系の開発周期が非常に短くなり、新しいソフト/ハードウェア・ジェネレーションが
上市される度に、コンパティビリティー問題が発生。
□ ソフトウェア業界は伝統的にエラーに対し寛容で、バージョン1.0 が出るとすぐに 1.1 が
出るという具合で、お客が不完全なプログラムのテスターとなっている。
□ 軌道アシスト、カーブアシスト等の将来システムが、ハード/ソフトウェアに対する要件を
更に高度にする。
□ 外部とのネット化が進行する。将来、車と周囲とのコミュニケーションが進めば(Telematik,
電子式料金徴収)、インターネット同様、ハッカーがヴィールスを送り込んで汚染する可能性が
出てくる。これは恐怖のシナリオだ。というのも、以前の状態に車を戻そうとは思っている人は
皆無だからだ。ABS、ESP は安全にとり不可欠な用品となり、70 年代、80 年代の車に比べ
今日の車は信頼性が大きく上昇している
-------システムダウンをする車を含めての話である。
ケヤーなき介護ケース
不具合は、迅速かつ適切に除去されれば許容出来るものだ。マーケティングエキスパートは、
スムーズな手直しアクションの実施により、メーカーがかえって顧客との関係を深め、イメージ
向上が出来るとさえ主張している。
だが、これは理論である。現実には、ワークショップを訪れたり、電話で顧客ケヤー部門と
コンタクトをした時に、大きなフラストレーションの生じるケースが多い。
というのも、出荷した製品に不具合が出た場合、いまだに「トリック、隠す、騙す」が
モットーとなり、正直に認めたり、事態を透明にすることは御法度だからだ。
●例えばBMW。本誌は2004 年初めに3 シリーズの後軸固定部が床鉄板から剥離(はくり)する
可能性のあることを発見したが、BMWはこの設計欠陥に対し次のような珍奇な説明を行っている:
「こうした事態は、出力の大きなエンジンを搭載し、マニュアルギアを装備した教習所の
車ないし(キャンピングカーを)牽引した車で生じている。」
それだけではない。潜在的に(剥離の危険のある)全3 シリーズ車の無償コントロールは、世論の
圧力が増大してから初めて実施された。4 年、5 年稼働車についてはBMWはなるべく忘れて
貰いたかったようだ。
● 別のバリエーション。メーカーは手直しを望んでいるのに、ワークショップが聞く耳をもたない。
例えばVW。1999、2000 モデルイヤーのゴルフ、Bora (55kW、74kW、50kW SDI) はギアのネジに
緩みが出る可能性があるため、VW はワークショップに対しインスペクション時にこの点を特に
チェックするよう要請し、非常に明瞭な作業指示も送った。にもかかわらず、本誌
《ワークショップテスト2001》結果ではその指示に従っていたワークショップは 8社中 1社に
すぎなかった。3 年後、VW は、ギアが損傷したら、コストの70%を負担するとの発表を行った。
過去の手抜きの高価な代償である。現在の間違いの代償は誰が払うのだろうか? (M.メッチュ)