あなたが体験した愛車との別れ

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俺が小学生になったばかりのころ、お袋が免許を取った。親父は免許を持っていなかった。
免許取ったお袋は平日に一人でディーラーに行って車を買ってきた。
数週間後に届いたクルマは5thスカイライン。もちろんMT。
俺の子供の頃の家族旅行の思い出はいつもこのスカイラインとともにある。

歳月は過ぎ俺が高校生になったころ、11年になるスカイラインはまだうちにあった。
しかしもう家族で出かけることもなくなり、ファミリーカーとしての役目は終えていた。
俺が免許を取ったとき、その古いスカイラインを運転することが格好悪く思えてすごくイヤだった。
親父とお袋に頼み込んで新しいクルマに買い換えてもらった。
俺の希望によって買ったのは初代のレガシィ。

納車の日、ピカピカのレガシィがやってきて大はしゃぎの俺。そんな俺の後ろで
お袋は走り去ってゆくぼろいスカイラインの後ろ姿を追っていた。

お袋は泣いていた。

ものすごいショックが俺を襲った。あのクルマはお袋にとってどんな思いが詰まって
いたんだろう? 幼い俺を連れてあちこちドライブするために免許を取り自分で選んだスカイライン。
その瞬間まで全然気が付かなかった。気づいたときにはもうスカイラインの姿は見えなくなっていた。

結局お袋はその後あまりクルマを運転しなくなった。
お袋にとってはあのスカイラインが一生に一台っきりのクルマだった。