おまいらはバイクの免許は持ってないのか??

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殺伐としてきたな、まあ俺の話を聞いてくれよ、一服の清涼剤だ。
オレは大学一年の時、どうせいつかは取る事になるんだから、と車の免許を取得した。
もちろん車なんて買えないから、完全なペーパドライバーだよ。
そのうちバイクがどうしても欲しくなってきたんだ。
学校にバイクで来てる奴らが結構居て、そいつらが楽しそうにバイクで出かけていくのを見て欲しくなってきた。
バイクなら何とか買えるし維持も出来るだろう、ということでオレはバイクの免許を取った。そして中古のTW200を購入、10万だった。
本当はネイキッドが欲しかったオレはTW200についているカバー類を全部外して、でっかい泥よけまで外して、
まるでネイキッドバイクのようにして走っていた。当時はただのオフロードバイクの一つだったTWだが、
今思えば、その当時からオレはストリートカスタムを楽しんでいた事になる。
そのうちオレにも初めて彼女が出来て、よく一緒にバイクに2人乗りででかけた。
新宿や渋谷に買い物に行ったり、海へ行ったり…楽しかった。もはやTW200はオレの体の一部だった。
(つづき)
大学4年生の秋、何かの集まりの後、オレはクラブの後輩のマネージャーの女の子となぜか2人きりになっていた。
前から、その子がオレの事を好きみたいだ、と言う事は聞いていたのでオレは緊張した。
その子は突然オレに「私、先輩の事好き…かも?」と言ってきた、オレは黙っていた。しばらく沈黙が続いた。
するとその子は「でも私、先輩に彼女が居るの知ってるし、先輩に迷惑かけたくないから諦めます」と言った。
またしばらく沈黙が続いた後「ねぇ、先輩のバイクのうしろに乗っけて!」と言ってきた。オレは「もちろん!」と答えて、その子とタンデムで出かけた。
多摩川を越えて、川崎を超えて、横浜を超えて、逗子まで来た。そして2人でずっと海を見ていた。
多分今のオレなら、その後ホテルにその子を連れて行って食ってしまっただろう。
でも、その時のオレはそんな事はしなかった、まだまだオレもウブだったんだ。
家まで送ってあげて「じゃあ」といったその時、突然その子がキスしてきた。そして「にこっ」と笑って家に走って行った。
その後、学校で何度かその子を見かけた事はあったけど、それっきり一度も話さなかった。
(続き)
やがてオレは社会人になった。おそらく誰もが知っている超有名企業だ、給料も良い。
オレは毎日仕事に忙しくだんだんバイクに乗る事が無くなってきた。為替が絡んでくる仕事だったので、昼夜関係なく猛烈に仕事した、仕事が楽しかった。
オレは次々と成果を上げ、給料も上がっていった。そして、しょっちゅうコンパもしたし、もちろんつまみぐいもした。
一流企業で給料も良い、と来ればモテないわけがない。そんな毎日を過ごしているうちに彼女とすれ違いが多くなってきた。
1ヶ月以上会えない日が続いたある日、彼女に別れ話を持ちかけられた。
「私、コウちゃんのこと信じたい、信じてたけど、もう駄目…耐えられない…」そういって彼女は泣いた。そして俺たちは別れた。
皮肉な事に仕事はますます順調で、オレは会社から歩いて5分の超高級マンションをあてがわれた、オレの負担は月5万だ。
なにかの拍子でこのマンションの家賃は月40万だと聞いたとき、びっくりして腰を抜かしたものだ。そして気づくと貯金は優に1000万を超えていた。
オレは初めて車を買う事にした、レンジローバーと言う車を買った。
完全にバイクには乗らなくなり実家に置きっぱなし、バイクの事をすっかり忘れていた。それだけ仕事に女、そして毎日が忙しかった。
(つづき)
オレの学生時代の友人の結婚式で、ひさびさに元彼女と会った。分かれてから4年がたっていた。
聞くと、彼女は俺と別れた半年後に新しい男が出来て、つい最近婚約したらしい。
友人の結婚式の後、俺たちは当然のようにホテルに入り、まるで4年間の2人の空白を埋めるかのようにお互いの体を貪り合った。
激しいからみがおわりオレの腕枕で寝ている彼女はこう言った。
「私、コウちゃんのこと色々ありすぎたせいか、あんまり覚えてないんだよなぁ」、おいおいひどいじゃないか、とオレが言うと
「でもね、コウちゃんの背中はよく覚えてる、多分ほらよく2人でバイクに乗ってたじゃない、だからだよきっと」と彼女。
うれしいような、うれしくないような…しかしオレはこの彼女と別れてからというもの、女とつきあい始めても全然長続きしなかった。
でももう遅い、彼女は半年後にオレの知らない男と結婚するのだ。
バイクかぁ…オレはひさびさに実家に帰って庭の隅に転がるサビだらけのTW200を見た。
キーを差し込み、スタータを押しても全く何の反応もなかった。当然だ、3年も乗ってなかったんだから。
オレは無性にこいつに乗りたくなった、こいつにまたがり思いっきり走りたかった。そして何故か涙が出てきた。
このTW200にはあまりにも多くの思い出が詰まっていたからだ。オレは決心した。
こいつを完全になおしてまた乗ろう、このTW200には永遠に乗り続けるぞ!オレの宝物だ!

あれから2年がたった、TW200は快調だ。そしてオレは父親になった。あと3年くらいしたら娘を後に乗っけて出かけるのが俺の夢だ。
バイクって甘酸っぱくて、ほろ苦いものなんだ。