本スレ1000達成記念(祈念?)短編小説
「なにか?じゃねーよ、バーーーカ! 2004」
−1−
悪夢のような事件から2年が過ぎて、僕は平穏な日々を取り戻した。
そんな時、ある知らせが届いた。
父がカリーナ(95年式)の車検が切れるのを機に廃車にするという。
たかがカリーナ、と言われるかもしれないが、僕にとって、免許を取って
初めて乗ったのがこの車なのだ。今でも愛着がある。
そんな理由もあって、実家に帰省した時には借りて運転することもあった。
その車が廃車にされると聞いて、僕はちょっと感傷的な気分になっていると、
電話の向こうで父は、さらに意外な言葉を発した。
「お前のアルテッツァ、父さんに譲ってくれないか?」
僕は言葉を失った。が、すぐに我に帰り、こう答えた。
「父さん、今度くらい、中古やお下がりじゃなく新車にしたら?」
「いや、うちの会社の車ということにして、下取りの査定よりずっといい値
で買い取ってやるから、悪い話じゃないだろ?」
確かに、僕のアルテッツァはもう5年経って多少くたびれている。
それに、春美とかいう女のせいで、いわくつきの代物になってしまった。
前から欲しかったあの車に買い換えるには、いい時かもしれない。
「わかった。この車、譲るよ。」
父のものすごく嬉しそうな声を聞いて、僕は胸がチクリと痛くなった。
ある意味事故車を売りつけるよりも悪徳だな、と。
(つづく)
昔の事を思い出すと股間もヘタる思いである。
自分の股間のためにはこれで良いのかも知れない・・・
>>952です。
自分の名前間違えた・・(T_T)
小説「なにか?じゃねーよ、バーーーカ! 2004」
−2−
2004年。
もともと販売不振だったところに平成12年排ガス規制が追い討ちをかける
形で、ほとんどの2ドアクーペが市場から姿を消し、国内の各メーカーは4
ドアのスポーツモデル開発に力を注いでいた。
アテンザ、RX−8、ランエボ\・・・など、スペックだけ見れば魅力的な
クルマはたくさんあった。中でも、ホンダが満を持して2003年に発表し
た「アコード・タイプR」はミディアムクラスのセダンの中では圧倒的な性能
を誇り、正直な気持ち、僕も心を動かされ一時は購入を考えた。
アルテッツァもフルモデルチェンジを果たしていたが、2.5リッターのV
6ターボを搭載し、事実上のチェイサー後継車となってボディも肥大化した
それは、「どこがマークUと違うの?」という感じだった。
僕が購入を決めていた車はほかにあった。
見積もりをもらいにネッツへ行くと、案の定、セールスマンに「新型アルテッ
ツァをお買い求めですか?」と言われた。三十を少し過ぎた公務員、まして
初代アルテのオーナーとくれば当然の対応だ。
やんわりとそれを断り、僕は言った。
「MR−S 190ps仕様の見積もりを下さい。」
(つづく)
そうそう、今までオカモトを愛用していたからってずっとオカモトを使いつづけるハズはない。
どうせなら、サガミオリジナルだって使ってみたいのだ。
噂によるとかなり使用感が良いらしい。
もう、他人の話を聞いてるだけで勃ってくる。
小説「なにか?じゃねーよ、バーーーカ! 2004」
−3−
MR−Sが納車される前日、父がアルテッツァを引き取りに来た。
「本当にこのクルマ、引き取るの?だってこれはあの事件の時・・・」
「わかってる。何も言うな。」
後ろに死体が積まれてるのに気付かないなんて、あの時はどうかしてた。
その後、あの事件は新聞やワイドショーで大々的に報道され、僕の実家
の両親にまでマスコミの取材が押しかけたから、この車にまつわる惨劇
のすべてを、父も知っているはずだ。それなのに・・・
ドアを閉めて運転席に乗り込むと、父は帰って行った。
60過ぎの白髪のおっさん、いや爺さんにブルーは似合わなかった。
(つづく)
あれ以来、ムスコも元気が無く人生に張りが無い。
あの事件から早く(ムスコが)立ち直って欲しい物だ。
958 :
名無しさん@そうだドライブへ行こう:02/02/08 15:14 ID:YxFEfe6i
あげますか?
連続小説が始まって、なんだかうれしいですが、なにか?
ゴーストライター氏もがんばってね。
アタマのリフレッシュになる
小説「なにか?じゃねーよ、バーーーカ! 2004」
−4−
僕はシルバーメタリックのMR−Sを手に入れた。
最初はブルーマイカにするつもりだったのだが、本革シート、ソフトトップ
と色が合わないのでやめた。
職場の同僚や近所の人には、公務員がオープンカーで通勤かよ、などと陰口
をたたかれているみたいだが、そんなことは気にしてられない。
まだ独身なんだから、乗りたい車に乗るさ。
そう言えば、昔、うちの役場にも、ロードスターで通勤してた女がいたな。
今ごろは、刑務所の中か。
春美のせいで、「役場の女子職員は男関係がだらしない」と評判が立って、
ほかの女の子はえらい迷惑を被ったそうだ。あれから2年が過ぎた今でも、
一度ついたイメージはなかなか人々の頭から離れないらしい。
秘書とか窓口の受付だとか、接客をメインとする仕事の子には多少なりとも
裏表がある。相手がよほど親しい知り合いでもない限り、100%素のまま
で応対することなどあり得ない。ただ、そういう内部事情を知る立場の僕か
ら見ても今の役場にはいい子が多いから、いつまでも悪い評判が消えないの
は腹立たしかった。
その中でも亜矢(仮名)の可愛さは特別だった。
(つづく)
発展のヨカンですが、なにか?
僕のムスコも新たなキモチでワクワクしてきた。
ムスコはすでに亜矢をロックオン。
一人でコスる時も亜矢の可愛さが頭に過ぎる。
小説「なにか?じゃねーよ、バーーーカ! 2004」
−5−
「田中さん。」
「あ、亜矢ちゃん、なにか?」
「今度、ゆり子先輩のお墓参りに行きませんか?」
「そうか、もうすぐ三回忌だよね。うん、行こう。」
「それと・・・」
「ん?」
「・・・田中さんのあの車、なんていうんですか? お墓参りの時、
あれに乗せて行ってほしいんですけど・・・。」
「あれは『MR-S』って言うんだけど。いいよ、一緒に行こう。」
「えむ・あーる・えす、ですね。じゃ、楽しみにしてます。」
そう言うと亜矢は走り去って行った。
亜矢はゆり子が亡くなる前の年、戸籍係の受付として役場に入った子だ。
事件の前までは、先輩のゆり子に仕事のことだけでなく、プライベート
でもいろいろと相談に乗ってもらっていたらしい。
それだけに、当時の落ち込みようはひどくて、見ていられないほどだっ
たが、僕は自分の受けたショックから立ち直るのが先決で、とても他人
のことなどかまっていられなかった。
それでも、2年経って、二人ともやっとそれまでの自分を取り戻した。
そろそろ、女の子とつきあってみるのも悪くないかもしれない。
ただ、問題なのは、亜矢が僕より10歳も年下ということだ・・・。
(つづく)