少子・高齢化の背景にあるのは、正社員になりたくてもなれない、結婚したくてもできない若者が増えているという現実だ。
「正社員と主婦」というこれまで当たり前と思われていた家族形態が崩れ、それを前提として構築されている
社会保障制度にも、矛盾が拡大している。この問題に詳しい山田昌弘・中央大学教授は
「家族形態や働き方に関わらず、個人単位に社会保障制度を構築することが急務」と主張する。
――山田さんが1997年に、親と同居し続けることによって自分の収入をすべて小遣いとして使う未婚者たちを
パラサイト(寄生)・シングル」と名付けたときは、親離れができない困った人たちの話だと思っていました。
しかし、いま、親にパラサイトしている人の多くは、そうしないと人並みの生活もできない人のようですね。
山田 私が「パラサイト・シングル」という言葉を使い始めたのは、97年のアジア金融危機の直前でした。
そのころは、ほとんどの若者が、男性も女性も正社員で、親から独立しようと思えば独立でき、
結婚しようと思えば結婚できるにもかかわらず、親と同居しながら、大部分の収入を小遣いに使っているという事例が目立ちました。
そうした独身の男女を、パラサイト・シングルと名付けました。
親と同居しながら、リッチな生活を送って、結婚を先延ばしする人たちがパラサイト・シングルだったのですが、
その後アジア金融危機が起きて、若者の経済状況が坂を転げ落ちるように悪化しました。
そのあたりから若者の収入が低下し、雇用の非正規化(フリーター化)が進んだのです。
いまは、自立できるのにしないのではなくて、自立すると生活ができないから、
しかたなく親と同居して、慎ましやかに生活をするという人がほとんどです。
――結婚して家族を養いたいと思っても、養えるほどの経済力がないワーキングプアと呼ばれる若者が増えているのですね。
山田 20年前は「三高」といって、年収が1000万円なければ(結婚相手としては)だめだという女性が多かったのですが、
いまは年収300万円、400万円を稼ぐ未婚男性も少なくなっています。
http://www.nikkei.com/article/DGXNASFK2500E_V21C12A2000000/?dg=1