パピヨンの裁判は5月14日東京地裁815法廷で午後3時から!
「今度はあれにしよう」
次に父親が指差したのは桃の木だった。そこに生っている桃は見事な白桃で、
普段アルカが食卓で食べている桃よりも上質の桃だった。
アルカはまた木にスルスルとよじ登り白桃を取って投げた。
「おいおい、桃はもっと丁寧に投げてくれよ。痛んじゃうだろ?」
「ごめん」
アルカはそう言うと、桃を静かに落とすように父親に渡した。
そうこうするうちにバケツがいっぱいになった。
「もう、これくらいでいいだろう」
父親が言った。二人は山を降りて帰ろうとしたが、その時ふとアルカが変わった木を見つけた。
「なんだアレは―――――?」
アルカは珍らしがってかけ足で木に近づいていった。
その木は他の木とは違って大きくて形が変わっていた。
幹は下が太くて上にいくにしたがってどんどん細くなっている。
幹は漆黒のように真っ黒で木の上半分は枝が多く、その枝には丸い緑の葉が付いている。
さらに、枝にはいくつか木の実がぶら下がっていて、
その木の実もやはり見慣れないものだった。アルカはその木によじ登ろうとしたが、
幹がツルツルでなんの取っ掛かりもないので途中で《ドスン》と尻から落っこちてしまった。
「痛てててて……ちくしょう」
アルカは何か別の方法を考えることにした。
「そうだ!」
「どうした?」
父親はアルカが一体何を思いついたのか分からなかったが、
アルカは釣りに使った細いロープを輪投げのようにして使い、
木の枝にひっかけた。アルカはロープを強く引っ張り、
切れないことを確認してからロープを使って登り始めた。
「あんまり無理するなよ」
父親のそんな言葉は気にもとめずアルカは木に登りきってしまった。
「見たことのない木の実だ―――」
アルカは木の実を手に取ってまじまじと見つめた。
それは真ん丸も真ん丸、野球ボールよりも少し大きいソフトボールぐらいの大きさの木の実だった。
色は真っ白で外は堅い殻で覆われていた。アルカは木の実を父親に投げた。
受け取った父親は木の実をクルクル回しながら見たが、父親にも何の木の実だかよく分からなかった。
アルカはいくつか木の実を取ってから木を下りた。
その後、ふとまわりと見渡すと似たような木がいくつかあることが確認できた。
「間違っても食べるんじゃないぞ」
父親はアルカに忠告した。得体の知れない木の実なんか食べたら何の症状が出るかわからない。
絶対に食べないようにと何度も念を押した。
「わかってるよ」
アルカと父親は木の実と魚を持って帰路についた。