●おまえら男ならヒカルたんハァハァだよな?Part35○

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952黎明 ◆b0moonAH5w :03/02/05 21:50 ID:4XrwkQkn
神様に怒られるのが怖いと、その人は言っていた。
だが彼は神など怖くはなかった。何よりも大切な人をある日突然奪われる恐怖に比べたら、恐
れるべきものなど何があったろう。神の怒りも、神の下す裁きも罰も、怖くはなかった。
いや、いっそ罰されたかった。許しよりも懲罰を。
誰よりも大切なあの人をみすみす失ってしまった自分自身に対して、何らかの罰が必要である
と、彼は感じていたのかもしれない。だから彼は神の怒りをかうような事を、進んで重ねていった
のかもしれない。それともむしろ彼自身が神に対して怒りを感じていたのかもしれない。
ならば彼の行動は神の無情への抗議か、挑発か。
だがそんな怒りも、今ではもはや甘い闇の向こうに遠く霞んで。

そして今、彼を襲う恐怖は寒さだった。
どれほど暖めても、温もりを感じる事ができなかった。
冷えて黒く固まった心を、暖めて溶かして欲しいなどと思いはしなかった。ただひと時、ぬくもりを
感じられればそれだけでいい。それ以上は欲しくない。初めはそう思っていた。
だが、甘い夢を見せる香はその代償として身体が震えるほどの寒さを彼にもたらした。香の見せ
る夢にまどろんでいる間はいい。けれどひとたびその香りが途絶えると、彼の身体は耐え切れぬ
ほどの飢餓感と、絶望的な寒さに襲われた。そしてそれを治めるための香を得ても、身体の芯か
ら冷え冷えと漂う空虚な闇は、やはり彼からぬくもりを奪ったままだった。
もはや彼を暖めるのは直接に肌に触れる人肌の温もりだけだった。だがそれも触れているその時
だけで離れてしまえばまた、同じような寒さに震える。けれどそれでも、何も無いよりは、例え一時
だけでも構わない。それなしには自分の生命さえ保てぬほどに、彼は人肌の温もりを欲した。
「寒い。」
小さく呟いて身体を震わせる。
呟きながら、この身を暖めてくれる誰かが来るのを待っていた。
953学生さんは名前がない:03/02/05 22:40 ID:6PFU4Zvs
期待(;´Д`)ハァハァ
954学生さんは名前がない:03/02/06 09:30 ID:ew194RJO
●○●○●○●○●○…考慮時間中にロビーでCCレモン


>947 ホントに打ったらヤマネコ終わちゃうyo。
955学生さんは名前がない:03/02/06 17:28 ID:MUerq2TJ
冷えたヒカルたんを抱いて暖めてやりたい。
もちろん、身も心もだ。
956黎明 ◆b0moonAH5w :03/02/06 22:20 ID:fJYi6xGv
また、誰か来た。
それが誰であるかもわからずに、彼はいつものようにその人の首に腕を絡ませ、唇に唇を重ね、
その人の体温を確かめるように身体を摺り寄せる。
だが、その人の反応はいつもとは違った。
いきなり身体を突き飛ばされてもまだ彼はぼうっとしたまま、焦点の定まらない目で、その人物を
見あげた。見下ろす視線が、黒く光る一対の眼光が、甘い闇を切り裂くように彼を射た。
「僕がわからないのか?」
鋭い声が彼を責める。反射的にその光から逃れようとしたが、両手で肩を掴まれていて、逃げる
事はできなかった。いや、彼の身体に、逃げ出すだけの力は、残されていなかった。
「だれ…だ…よ…」
口を利くのは久しぶりで、思うように舌が回らず、途切れ途切れにしか話せない。
「近衛!」
近衛、だって?そんな名はもう捨てた。彼を守りきれなかった自分に、今更守れるものなどない。
「誰…だ、よ……知らねぇよ、おまえなんか…!」
折角最近では忘れていられたのに、なんで今更思い出させようとなんてするんだ。
出てけ。おまえなんか知らない。おまえなんか呼んでない。
「なぜ、こんな所で、こんな事をしているんだ…!」
「な…んだよ、おまえになんか、関係ぇねぇよ…、どうでも…いいじゃねぇか、そんな事…」
そう言いながら目の前の身体に抱きつき、袂から手を差し入れ、裸の肌の温もりを求めた。けれ
どその身体は彼の望む温もりを与えようとはせず、彼の身体を引き剥がした。
「やめないか!」
「なんだ…よ、何しに…来たんだ…、俺を…暖っためてくれるんじゃなかったら、こっから…
出てけ、よ…!」
957黎明 ◆b0moonAH5w :03/02/06 22:21 ID:fJYi6xGv
「どうぞ手荒になさいませぬよう。」
彼をこの部屋へと案内した女房が、香炉を手に低く声をかける。そこから広がる甘い香りが一段
と濃密に室内を満たすと、少年の目はまたとろりと溶けて甘い香の闇に沈んでいった。彼はその
女房を睨みつけたが、彼女はその視線をやんわりと受け流し、「どうぞごゆるりと」と、不気味な笑
みを残して消えていった。

何もかもを甘く包み込むような濃い香りの闇をじんわりと照らす小さな明りの元で、香のもたらす
まぼろしに心を奪われた少年を、信じられない、という思いで見つめる。
ふっくらと可愛らしかった頬はこけ、顎は細くとがり、健やかな血の色を失って窶れ果てたその顔
は、どこか淫靡であった。大きな瞳は憂いに満ち、甘い香の効果に焦点の合わないその眼差しは
妖艶ですらあった。ほっそりと白い首が少女めいた面差しを支え、すっかり肉の落ちた肩は薄く、
腕は細く、これがかつて剣技の冴えを称えられた、幼くとも勇敢な少年検非違使と同じ人間である
とは、俄かには信じがたいほどであった。ましてやその彼が、魔の香に囚われ、相手構わず肌の
暖かさを求める程に堕ちていようとは。

少年のその様子に、耳に入った噂がほぼ真実に近かった事を思い知らされて、暗澹たる思いで
彼は横たわる少年を見つめた。この少年ががこれ程までに変貌してしまうまで見つけ出せなかっ
た自分を、いや、彼が彼のあるべき所から姿を消すまで、何もせず、何もできずに、ただ傷ついた
彼から目をそらす事しかできなかった自分を、呪った。
そしてここまで堕ちてゆくに足る程の少年の絶望を、苦しみを思い、そして彼をこれ程の闇に追い
落とした人物の儚さを嘆いた。
そうして束の間、痛ましい眼差しで少年を眺めた後に、彼は意を決したように眦をきりりと上げて立
ち上がった。
958黎明 ◆b0moonAH5w :03/02/06 22:21 ID:fJYi6xGv
引き戸の外に控えていた先程の女房が、同じように微笑んだまま、彼を迎えた。
睨みつける視線も気にかけず、つと立ち上がると彼に目配せし、ついて来い、というように身を翻
した。廊下を渡り、女の向かった部屋は、どこか異国の香りの漂う豪華な調度で設えられた部屋
だった。部屋の中央に女は腰をおろし、勧められるままに彼も女の向かいに腰をおろす。
悠然と座るそのさまと、傍らに使える女童の態度からこの女がただの女房でなくこの屋敷の主で
ある事に気付き、彼は眼を見張った。高貴な身分の女性がこのように人前に姿をあらわすなどと
は考えがたい事であった。けれど女は彼の驚き、非難するような眼差しを平然と受ける。
女の醸し出す空気は、先程までいた室内を満たしていたものと同じように、甘く、からみつくように
ねっとりと甘く、その空気は彼にとってはひどく不快であった。
なぜ、かの少年が、この屋敷にあのような状態でいるのかわからない。けれど、それが、この得体
の知れない女の意の結果であろうという事だけが、彼にはわかった。
それならば、と、彼は意を決して女を見据えた。本来であれば目通りも許されぬであろう高貴な存
在に向かって、臆する事もなく。
959黎明 ◆b0moonAH5w :03/02/06 22:23 ID:fJYi6xGv
「彼を返していただく。」
低く鋭い声で彼は言った。
彼のきつい眼差しに、けれど女は髪の毛一筋ほども怯む事は無くただそれを受け止め、その顔
に笑みを浮かべたまま、変わらぬ甘く柔らかな声で、言葉を返した。
「返す、とは、これはまた異な事を。」
ぎらりと彼女を睨みつけると、彼女は、ほほ、と小さく笑って言った。
「雨に震えている仔犬を拾って、望むものを与えてやったというのに、そのような目で睨まれる謂
れはありませぬ。」
彼の視線を軽く流した女に向かって、低く、押し殺したような声で彼は尋ねた。
「彼が、何を望んだというのです?」
「熱い人肌と甘い夢。わたくしはただ、あの者の望むものを与えただけ。」
夢見るようにうっとりと、彼女は言った。
それから、その夢見る眼差しのまま、続けた。
「あの者を返せ、と言うそなたは、あの者をどこへ返すと、そしてあの者に何を与えられるというの
です?」
「彼自身を、彼自身のいるべき所へ。」

「ほ、」
彼女は大きく目を見開き、可笑しそうに笑い出した。
「ほほ、ほほほほほほ、それはそれは…ほほ、まあ、可笑しい。」
彼女は立ち上がって彼ににじり寄り、覗き込むようにその目を見ながら、尋ねた。
間近に目と目が合って、ぞくり、と背筋が震えた。
深い、底の知れないような黒目がちの瞳のその色に、我知らず、自分の背を嫌な汗が伝い落ちる
のを感じた。
この目に、この闇に、飲み込まれてはいけない。
「それでは、そなたの望むものは何です?」
歌うように彼女は問い掛ける。
「そなたはそなた自身の望みを、本当にわかっているのですか?」
960日記 ◆IMTfjwVpA2 :03/02/07 00:31 ID:H18toNqF
 静寂が部屋を包んだ。緒方はヒカルの傍らに膝をついたまま、暫くその寝顔を見つめていた。
相変わらず顔色は悪く、頬に濃い影が落ちている。だが、寝顔はあどけない。以前の
ヒカルそのままだ。
 スウスウと小さな寝息が聞こえる。安らかだが、暑いのか額に少し汗をかいていた。
 緒方は、ヒカルの額にかかる前髪を静かに掻き上げた。そこに手を置き、熱がないのを
確認するとホッと息を吐いた。頭を軽く撫でてやると、微かに笑ったように見えた。
こんな消えてしまいそうな笑みではなく、あの輝くような笑顔が見たいと思った。
 ヒカルは元気で無邪気な悪ガキでいて欲しいのだ。

――――――ピンポーン
緒方は現実に引き戻された。慌てて、インターフォンをとった。
「はい?」
「……ボクです。」
一瞬の沈黙。その後で、相手が応えた。
 緒方は躊躇った。今、アキラを招き入れていいものだろうか?アキラが突然訪ねてくるなんて
よほどのことだ。アキラと関係があったとき、彼は来る前には必ず連絡を入れていた。
合い鍵を渡した後は、部屋で待っていることもあったが、大概事前に電話をかけてきた。
―――――それほど、せっぱ詰まっているってことか……
 ゆっくりと、キーを解除した。
961学生さんは名前がない:03/02/07 12:09 ID:59LbvnwZ
冷え性の女は不感症だっていうが、
冷えきってるヒカルたんはイかされてても、感じてるのか?
阿片窟みたいなところに囲いこまれたヒカルたん(;´Д`)ハァハァ

でも、ヤパーリ元気で無邪気な悪ガキのヒカルたんが(・∀・)イイ!
962学生さんは名前がない:03/02/07 21:01 ID:8y1/mbaU
ホッシュホッシュ(;´Д`)
963黎明 ◆b0moonAH5w :03/02/07 22:02 ID:V+CxwT1U
むしろ俺にそのエロ書きの才をわけてくれよ、イブンさんよ。
あと平安時代のこと教えて欲しいよ。どこでベンキョーしてるんだ?わっかんねーんだよ。
あああ、時代考証がどうのとかは見逃してくれると非常にありがたい。

ついでに補足
1.名前表記について
本来であれば平安モノだから漢字表記にすべきなのでしょうが、
一般名詞の光(ひかり)と固有名詞の光(ヒカル)とで混乱しそうなので
やむなくカタカナ表記にしました。明もつられてアキラになりました。
ああ、ルビふれないのが辛いなあ。

2.アキラの使役する式神について
PSやってないんで(それで書いてるってのがまず無謀だ)、アキラんとこに
越智がいるなんて知らずに書き始めてしまいました。後から知ったけど、
やっぱり邪魔なので抹殺する事にしました。ゴメンな、オッチー。
式はむしろ夢枕陰陽師のイメージ。
964黎明 ◆b0moonAH5w :03/02/07 22:03 ID:V+CxwT1U
夕陽が山々を染め始めようとする刻、都の外れに牛車が着き、一人の少年が屋敷に運び入れ
られた。
少年を運ぶ手助けとなっていた男は、屋敷の主が目配せするとすっといなくなった。
寝台に横たえられた少年を、そのやつれ果てた姿を、またもや悲痛な眼差しで見下ろした。
薄暗がりの部屋から、この屋敷の明るい部屋へ移され、薄紅く染まる柔らかな光のもとで彼を
間近に見ると、彼の顔も、身体も薄汚れており、また、衣には甘ったるいかおりが染み付いてい
て、清浄な筈のこの屋敷の空気までも汚されるようだ。
彼の身を清め、衣服を替えなければ、そう思って式を呼ぶ。
童の持ち来た湯に布を浸して絞り、それから汚れた衣服を取り払った。
だが、灯りの下に露わにされたその身体を見下ろして、それを拭き清めようとする手は止まり、
その手の持ち主は小さく眉をひそめた。
痩せた体と、陽に当たらずに白くなった皮膚は、妙な嗜虐芯をそそるものがあった。実際、彼を
乱暴に扱う者も少なからずいたようで、彼の身体には愛撫の跡だけでなく、痣や縛られたような
跡が古いものから新しいものまで数多く残されていた。
その傷から目を逸らしながら、少年の身体を清め、新たな衣で彼の身体を包んだ。
その時少年がうっすらと目を開いたので、思わず喜びに彼の名を呼んだ。
「近衛…!」
965黎明 ◆b0moonAH5w :03/02/07 22:04 ID:V+CxwT1U
「なんだ…よ、それ?知らねえよ…そんな名前。」
たどたどしく、けれど呼びかけを否定する言葉に、唇を噛みながら、けれどもう一度問う。
「では、君の名は?」
「知らねえ。忘れたよ。要らねえんだよ、名前なんか。」
「名がなければ呼ぶのに困る。君が忘れたというのなら僕が教えてやる。近衛、」
「その名で呼ぶな!」
その呼び名は、嫌いだ。
嫌いだ。訳なんか分からない。でも、そう呼ばれるのは嫌だ。
「では…ヒカル、」
ヒカル、と、呼びかけられて、不意に涙がこぼれそうになった。
その呼び名は遠い甘やかな記憶を呼び起こした。
昔、自分をそんな風に呼んだ人がいたような気がする。あれは、誰だったろう。うららかな春の
日差しのような優しい笑み。柔らかな声で、ヒカル、と呼びかけたのは、あれは、誰だったろう。
「……それなら、いい。」
ぽつりと言った後に、自分にそう呼びかけた人物に改めて目をやった。
「…あんた…、誰?」
「…賀茂明。」
「ふ…ん。」
つまらなさそうに見返し、ふとかち合った視線に、怯えたように目をそらした。
何がそんなに恐ろしいのかわからない。わからないけれど、今、自分を見つめている真っ直ぐな
眼差しが、とてつもなく恐ろしいと感じた。
闇を切り裂く鋭い光。泥のような安寧に浸っていた自分を白日の下にさらけ出すようなその視線。
その光は、見たくなかった真実を照らし、目を逸らしていた自分自身の姿をさらけ出し、事実を眼
前に突きつける。闇が光を恐れるように、ヒカルはその光を本能的に怖れた。
恐ろしくて逃げ出したいのに、起き上がる事もできず、ましてやこの光から逃れる事などできない。
逃げ出す事ができないまま、ただ顔を背け、ぎゅっと目を瞑った。
恐怖はそのまま飢餓感と寒さをもたらす。その予感に怯えて、彼は身を縮めた。
966黎明 ◆b0moonAH5w :03/02/07 22:05 ID:V+CxwT1U
重苦しい思いを抱えたまま、アキラは自分を拒むように小さく縮こまるヒカルを、ただ眺めた。
香の効果とはいえ、ヒカルが自分を認めないのが、悲しかった。
彼とは親しい友であった筈ではないか?いや、実際にはそれ程親しかった訳ではないのかもしれ
ない。けれど、顔も、名も、忘れられてしまっている事に、やはり衝撃を受けた。いや、それだけで
はなく、自分の存在そのものが忘れ去られてしまっているのかもしれない。そんな恐怖を感じて、
ぞくりと背筋が震えた。
自分が、自分自身の存在が、彼から拒絶されているような気がした。

否。
気がした、のではない。
彼は正しく拒絶していたのだ。彼から最も大切な人を無情に奪ったこの世を、この憂世にあるもの
全てを、自らの存在を賭けて拒絶し、否定していたのだ。

何故、と声に出さずにアキラは問う。
答えのわかりきった問いを。
それほどまでに、彼を失った事は君にとって苦痛だったのか。
彼を失った君の心には僕のことなど欠片も残っていないのか?それほどまでに、君にとって彼は
大きな存在だったのか。彼を失ったら全てを失ってしまっても構わないと言うほどに。
それほどに、彼のいない世界は君にとって意味の無いものなのか。
967黎明 ◆b0moonAH5w :03/02/07 22:05 ID:V+CxwT1U
固く目を閉じている身体が小さく震えている。乾いた唇から何か言葉が漏れた。
「どうした、近衛。」
彼の呟きをもう一度拾おうと、口元に耳を寄せた。
「寒い…」
「寒いのか?今、掛け物を…」
「違う…」
ヒカルは近づいてきたアキラに抱き縋り、そのまま、その身体を床に引き倒した。
「な……や…めろっ…!」
抗おうとするアキラに尚も取りすがりながら、ヒカルの手はアキラの身体を探ろうとする。
「なんでだ…」
襟元の紐を解きながらヒカルは言った。
「俺が…キライか?」
ヒカルの身体を必死に押し戻し、襟元を押さえながら、アキラが返した。
「…そんな事、僕が聞きたい。僕などどうでもいいいくせに、どうして、こんな事ができるんだ。」
「だって、寒いんだ。寒いんだよ、俺。」
「寒い、寒いって、暖めてくれる人なら、誰でもいいって言うのか、君は!?」
「そうだよ!誰でもいいよ!」
ヒカルはアキラの身体に取り縋った。
「寒いんだ。寒くて、寒くて、死にそうなんだ。俺を、あっためてくれよ…」
目の前の鋭い光を放つ黒い瞳が恐ろしい。けれど、今自分を暖めてくれる人はこの人しかいない
のだから。そう思ってガチガチと歯音を立てながら、それでもヒカルはアキラに必至に取り縋った。
アキラの衣を掴む彼の手も、全身も、がたがたと震えていた。指先は本当に冷たかった。縋り付く
ヒカルの身体から、冷え冷えとした空気が伝わってくるような気がした。
実際、彼の悪寒も震えも、香を求める体の作用に過ぎないのだろうが、けれど彼が訴える寒さも
また、彼にとってはまた真実なのだとはわかっていた。
けれど訴えるその瞳はそれでもどこか虚ろで。
968黎明 ◆b0moonAH5w :03/02/07 22:06 ID:V+CxwT1U
耐え切れずに、アキラはヒカルの身体をかき抱いた。この抱擁は彼の身体の震えを鎮めるため
だと言い訳を浮かべながら、アキラはヒカルの細い身体を抱きしめた。我が身の温もりが少しで
も彼に伝わるようにと、抱きしめる腕に力を込めた。寒い、と漏らす言葉を裏切るような熱い涙が、
その抱擁に応えるように、アキラの胸を濡らした。
抱きしめた腕の中で、ヒカルの唇がアキラの首筋から胸元へと這い、手が衣の下を這い、下半
身をさぐり始める。
その愛撫に、ヒカルの求めているものは単に温かい身体に過ぎず、賀茂明という名の一個の人
間ではない事をまたもや思い知らされて、知っていたはずの事実にそれでもアキラは絶望する。
その絶望と怒りに、アキラの身体が震えた。
「やめろ…」
アキラの身体を―身体だけを―求めるヒカルの愛撫を避け、彼の身体を引き剥がして、震える
声でアキラは言った。
「寒いというのなら、抱いてやる。暖めるだけなら、いくらだって抱きしめてやる。
でも、それだけだ。それ以上はなしだ。」
「それじゃ足んねぇんだよ!そんなんで、あったまったりできねぇよ!もっと…」
そして縋るような目で見上げて、アキラに泣きついた。
「寒いんだよ…!なんとかしてくれよ……!」
だが、縋りつくヒカルの視線から逃れるように目を逸らせたアキラに、ヒカルは怒りをぶつけた。
「それもできないんなら、俺を元の場所に戻せよ!!あっちのほうがよっぽどましだ。
奴らは、少なくともおまえみたいに尻込みしたりしないで、俺を暖めてくれたよ!
それがおまえに出来ないんなら、俺をあそこに帰せよ!!」
969黎明 ◆b0moonAH5w :03/02/07 22:07 ID:V+CxwT1U
ヒカルの言葉を受けて、アキラの双眸が黒く燃え上がる。一瞬、その炎にヒカルはたじろいだ。
燃えるような目でヒカルを真っ直ぐに見据えたまま、アキラはヒカルに乱された着衣を乱暴に脱
ぎ捨てた。半身を起こし両手を後ろについて、怯えるようにそのまま後ずさろうとしたヒカルの肩
を捕らえ、ヒカルの身体を覆う布を剥ぎ取っていく。
そうして互いに一糸纏わぬ姿になって、アキラはヒカルの身体を抱きしめた。
アキラの身体は熱かった。体温以上に、熱く滾る激情が、火傷しそうに熱くヒカルの身体を包み
込んだ。そして次第に、彼の身体の中心で激しくその存在を主張する熱い陽物が力強くヒカル
の下腹部を刺激し始めるのを、ヒカルは感じた。
ヒカルはそれが欲しかった。欲しくて欲しくて、堪らなかった。その熱い楔を自分の中に打ち込ん
で欲しかった。外からだけでなく、内からも、自分を暖めて欲しかった。冷え切ってしまった身体
を内部から熱い熱で燃え立たせて欲しかった。
「…なあ、おまえ、」
「アキラだ。」
悲痛な響きを抑えきれずにもう一度、アキラが自分の名を告げる。
「アキラ、」
強い力で抱きしめられたまま、かすれるような声でヒカルがその名を呼んだ。
「おまえが、欲しい…」
動けるものならば、自分から彼の熱い塊を導いて内部に納めたかった。それが駄目ならせめて
その熱い塊を握り締めて、その熱を感じたかった。けれどヒカルの身体を拘束するように強く抱き
しめるアキラの腕の力がそれを許さず、ヒカルは求めているものがそこに確かにあるのを感じな
がらも、決してそれを得ることは許されなかった。だから、懇願するようにアキラに訴えた。
「おまえが、欲しいんだ。おまえの熱いそれを俺の中にくれよ…!」
970黎明 ◆b0moonAH5w :03/02/07 22:08 ID:V+CxwT1U
「駄目だ。」
けれどヒカルの耳に届いたのは、その熱い身体から発せられたのだとは信じられないほどの
冷ややかな声だった。
それでもあきらめきれずに、ヒカルは僅かに自由の残された下肢でアキラの熱を刺激するよ
うに動かすと、それは頭上から発せられた冷たい声を裏切るように熱く震え、その質量を増し、
熱い涙を零した。

なぜだ。俺はおまえが欲しくて堪らないのに、おまえだって、そんなに熱くなっているくせに、
どうして俺を拒むんだ。どうして俺の求めるその熱を、俺にくれようとしないんだ。俺が一番に
欲しいのはそれなのに。おまえのそれだって、俺を欲しがって泣いてるじゃないか。熱く力強く、
俺を求めているじゃないか。それなのに、それなのにどうして。

望むものがすぐそこにあるのに、それが与えられないのが、それを奪い取ることも出来ないの
が悔しくて、背に回した手で、彼の背中に爪を立てた。その痛みに、アキラが小さな声を漏らし
た。その声は、先ほどの拒否の声とは別物のように熱く、ヒカルの耳に届いた。その熱がもっと
もっと欲しくて、ヒカルは更に爪を立てた。悔しさともどかしさのあまりヒカルの目からこぼれ落
ちた熱い涙がアキラの裸の胸を濡らした。それに応えるように、アキラの腕に力がこめられた。
更にアキラの下肢はヒカルの動きを封じ込めるように、ヒカルの下半身をも押さえ込み、抱きし
める腕の強さはますます力強く、ヒカルは息をすることさえ、困難なほどだった。
出口を封ぜられた熱が二人の身体を煽り、ぴったりと強く抱き合っている身体は、全身が熱く
燃えていた。アキラから発せられる熱い火は触れ合っている部分からじわじわとヒカルを侵食
し、その火が自分の皮膚に、身体に、頭の芯にまで熱く燃え移った事を、ヒカルは感じていた。
ヒカルはいつしか寒さを忘れていた。忘れていたことにさえ、気付かなかった。
971日記 ◆IMTfjwVpA2 :03/02/08 00:09 ID:YcsCjaG8
 「すみません。突然、お伺いして…」
そう言いながら頭を下げたアキラの視線が、一点で止まった。明るい色のスニーカー。
「進藤が来ているんですか?」
声が弾むのを押さえられない。ここ数日、ヒカルをどうしても捕まえることが出来なかった。
もしかしたらという気持ちはあったが、本当にここで会えるとは……
 緒方は黙って、部屋の奥へ視線を巡らせた。
「静かにな。寝ているんだ…」
アキラを招きながら、自分も足音をたてないように移動する。アキラもそれに習って、
静かに靴を脱いだ。
 ソファの上で眠っているヒカルを見たとき、胸が熱くなった。その傍らに屈んで、顔を
覗き込む。久しぶりに見たヒカルの寝顔。長い睫毛、痩せた頬。手合いの日に会ったときより、
幾分顔色は良いようだ。
 胸の鼓動が早くなる。なくしてしまった宝物を見つけたような気分だ。小さいとき、
庭に埋めた初めてもらった碁石。目印がなくなりあちこち掘り返して、結局見つけられなかった。
穴だらけになった庭を見て、お母さんに酷く叱られたっけ……あの石は今も庭のどこかに
埋まっているのかな…
 そんなことを考えつつ、ヒカルの髪に指を絡めて弄ぶ。アキラは飽きることなく、
ヒカルの寝顔を見つめ続けた。
972日記 ◆IMTfjwVpA2 :03/02/08 00:10 ID:YcsCjaG8
 ヒカルの髪を弄りながら、アキラは緒方に訊ねた。
「ねえ、緒方さん…進藤はどうしてボクを避けるんですか?」
「緒方さんは、知っているんでしょう?」
 背後で、陶器のぶつかる硬質な音がする。首だけで振り返ると、緒方がアキラのために
紅茶を入れてくれたところだった。
「これ、入れるか?」
緒方がブランデーの瓶を振って見せた。アキラは笑って、受け取った。
「入れすぎるなよ。前に進藤が酔っぱらってしまって…」
そこまで言って、言葉を切った。複雑な表情をしている。言いにくいことなのだろうか?
「どうなったんですか?」
アキラは先を促した。
「………キスをされた…」
「酔うと気前がよくなるんだな…」
酒には弱そうだ、しっかり見張っておいた方がいいぞ、と冗談半分に、そのくせ顔つきだけは
真面目に緒方は言った。
 嫉妬するより先に、吹き出してしまった。ヒカルを起こさないようにと、声を殺して笑う。
ますます苦しい。涙を拭きながら緒方を見た。面白い情報をありがとう。でも…。
「緒方さん…」
知りたいのはそんなことじゃない。緒方は黙って紅茶を口に運ぶ。
「緒方さん!」
焦れて彼を睨み付けた。視線がぶつかる。色素の薄い瞳が硝子を連想させた。
「―――――――言えない。」
静かに、だが、キッパリと緒方は言った。
973日記 ◆IMTfjwVpA2 :03/02/08 00:10 ID:YcsCjaG8
 どうして?今、自分はこんなに苦しい。それなのに――――――
「お願いです……でないと…」
 眠っているヒカルをチラリと流し見た。そっと手を伸ばして、ヒカルの手を軽く握る。
また逃げたりしないように、ちゃんと捕まえておかないと……。すると、アキラに応えるように
ヒカルも握り返してきた。自分にはヒカルが必要だ。ヒカルだって……。
「お願いします!ボクは…進藤が…」
「意地悪をしているわけじゃない…オレの口からは、本当に言えないんだ…」
緒方は痛ましげにアキラを見、そのままその後ろで眠っているヒカルに視線を移した。
「……緒方さん!」
「オレがキミに話したと知ったら、進藤が余計に傷つく…これ以上、進藤を傷つけたくない…」
 アキラは唇を噛み締めた。
―――――緒方さんには、わからない…
ヒカルが緒方を頼りにしているという事実。
そのことに自分がどれほど嫉妬しているか…どれだけ自分が羨望しているか……
『ボクがもっと大人だったら…そうしたら…』

 無理やり気持ちを押さえ付けて「わかりました」と、漸く一言だけ言った。アキラの
気持ちを察したのか、緒方は、苦笑混じりに告げた。
「進藤のオレへの態度は…まあ…アレだ…親のあとをヨチヨチついてまわるひよこみたいなもんだ…」
嫉妬をするようなものではない―――――そう言った。
974日記 ◆IMTfjwVpA2 :03/02/08 00:10 ID:YcsCjaG8
 アキラは、再びヒカルの脇に跪いた。片手はまだ、ヒカルの手を握ったままだ。
眠っているヒカルはとても幸せそうに見えた。汗で、髪が額に張り付いている。
 髪を軽く払ったとき、ヒカルがうっすらと目を開けた。
「とうや……」
ふんわりと笑って、手を伸ばす。ヒカルの指先が頬に触れた。感触を確かめるように、
何度も撫でる。
 その指の動きがぴたりと止まった。夢の続きを彷徨っていたような瞳が、徐々に光を取り戻し始めた。
「や……なんで…」
ヒカルの身体が小刻みに震える。
 アキラは、握っている手に力を込めた。
「進藤…」
「いや、見るな…」
手を引こうとするヒカルを自分の方へ引き寄せる。
 その途端にヒカルはけたたましい悲鳴を上げた。
「進藤!」
強く握れば、握るほどヒカルは身を捩って暴れた。
「………進藤…」
仕方なく手を離す。ヒカルは素早く手を胸の中に抱え込んだ。ソファの上で、小さく身体を
縮めて震えている。
「……見ないで…お願い…」
聞き取れないほど小さな声で、背中越しに哀願した。
 こんなヒカルを見るのは辛い。でも、自分には見ているだけしか出来ないのだ。ヒカルは
自分の手を必要としていない。もっと大きな手が欲しい。
「…わかったよ…今日は帰るから…」
 アキラは立ち上がって、緒方に向き直った。
「お邪魔しました。失礼します。」
975日記 ◆IMTfjwVpA2 :03/02/08 00:11 ID:YcsCjaG8
 夢の中で、ヒカルはとても幸せだった。隣にはアキラの笑顔があった。あの優しい瞳で
ヒカルを包んでくれていた。重ねた手の温もりが、夢とは思えないほどリアルで、ヒカルは
その温かさに縋った。
『オレ、ずーっと逢いたかったんだ…』
 遠くで何か話し声がする。ヒカルの意識は少しずつ覚醒していった。
『やだよ…オレはもっと夢を見ていたいんだよ…眠っていたいんだ…』
だけどヒカルの意志に反して、どんどん声が大きくなる。
 うるさいなと思いながら、目を開ける。間近にアキラの顔があった。
『なぁーんだ…これも夢じゃん…』
それなら、何をしてもいいよな―――――
ヒカルはゆっくりと手を伸ばした。頬に触れる…サラサラと髪が手にかかった。
『わ――――すっげーリアル……』
感触を確かめるように、何度も頬を撫でた。
『あれぇ?』
指先から伝わる体温が、ヒカルに何かを告げている。
『うそだ…』
アキラの温もりを残したまま、ヒカルの指先は凍ってしまった。
 「進藤…」
懐かしい声。いつもヒカルを抱きしめながら、顔の紅くなるような睦言を囁く少し掠れた
甘い声。
『イヤだ…聞きたくない…だって、まだ…勇気がでない…!』
もう少し…もう少しだけそっとしておいて欲しい。そうしたら、ちゃんと話すから……。
 握られた手が痛い。……?握られた手?慌てて、手を引こうとした。が、予想外の
力で引っ張られた。
その瞬間、あの時の恐怖が甦った。力任せにヒカルを床にひき倒し、暴力でもって引き裂いた。
「あああぁぁ………!やだ、やだ、やめてよ!いやぁ―――――――――――!!」
やめて…怖いよ……
ヒカルはアキラが手を離すまで、叫び続けた。
976日記 ◆IMTfjwVpA2 :03/02/08 00:11 ID:YcsCjaG8
 アキラが緒方に挨拶をしている。その間も、ヒカルは、タオルケットにくるまって震えていた。
――――――――キイ…
ドアを開ける音。
 そして、バタンと重い音が耳に届いた。
「塔矢!」
ヒカルは急いで、跳ね起きた。裸足のまま、玄関を飛び出すと、走ってアキラを追いかけた。
いや、走っているつもりだった。実際は、ふらふらとよろめきながらでなければ、前に進めなかった。
「………塔矢………塔矢…」
 ヒカルが漸くエレベーターホールまでたどり着いたとき、もうすでにアキラはいなかった。
「……………塔矢…」
ヒカルはペタンとその場に座り込み、地面に突っ伏して泣いた。しばらくそうしていたが、
手の甲で顔をこすると、ゆっくりと立ち上がった。そして、来たときと同じように、
ふらつきながら、緒方の部屋へと戻った。
 緒方は玄関で待っていた。ヒカルを迎えに行こうかどうしようかと迷っていた様だった。
「………先生…塔矢が行っちゃった…オレ…間に合わなかったよぉ…」
ヒカルは緒方に縋り付いた。広い胸に顔を埋めて泣いた。
「…だって……怖かったんだ…すごく怖かったんだよぉ…」
 今度こそ本当に愛想を尽かされたかもしれない…まだ、何にも話していないうちに嫌われて
しまった。そう思うと涙が止まらない。
 緒方が大きな手で優しく背中をさすってくれた。
977学生さんは名前がない:03/02/08 04:01 ID:IIloXf9y
黎明タンと日記タンとイブンタン激しく期待保守!ミ・∀・ミ
978学生さんは名前がない:03/02/08 15:07 ID:FTIJ2IJ9
緒方十段 大人の自制心





                   ……あるのか?あるのか、そんなモン?
979学生さんは名前がない:03/02/08 23:34 ID:VRtZLbQ1
     キ        //   /::::::://O/,|      /
      ュ     / |'''  |:::::://O//.|     /
      .ッ       \ |‐┐ |::://O/ ノ   ヾ、▼〃ヾ    
       :       |__」 |/ヾ. /    / ∩゚ー゚)
         ヽ /\  ヽ___ノ / . へ、,/  ヽ  ∪
        /  ×    /  { く  /     O―、⊃
        く  /_ \   !、.ノ `ー''"
  /\        ''"  //
 | \/、/           ゙′        
 |\ /|\ ̄
   \| 
980学生さんは名前がない:03/02/09 00:53 ID:bqb2mspP
sage
981学生さんは名前がない:03/02/09 03:00 ID:xNRjPccc
保守
982学生さんは名前がない:03/02/09 13:37 ID:kUxncKtH
保守
983学生さんは名前がない:03/02/09 14:12 ID:olBmyqtw
あげあげ
984学生さんは名前がない:03/02/09 14:13 ID:xNRjPccc
ヒカルたん…
985イブン ◆40mc48HIKA :03/02/09 14:53 ID:3YWqGnZy
>>930-936
昼過ぎに伊角の屋敷に現れた近衛ヒカルは、きちんとした正装をしていた。
浅葱の袍に、飾り太刀。
ちょうど腰のくびれた辺りにやなぐいを負ったその立ち姿が、なんとも色っぽい
気がして、伊角は牛車の中から見惚れた。
「さすがに、伊角さんの警護は初めてだからね。いつもの格好で行こうとしたら、
 最初ぐらいちゃんとして行けって、じいちゃんに怒られちゃったよ」
そう言って、ヒカルが笑顔を見せる。
話をきくと、初めて藤原佐為の警護に行った時はその藤原佐為がまだ無位無官だった
から、最初から身軽な狩衣姿だったらしい。
そして、その話をしてから伊角は少し後悔する。
佐為の名前を出すときに、ヒカルが苦しそうな顔をしたからだ。
しかし、それを口に出して謝ったりしたらさらにヒカルを傷付ける気がして、その
まま黙っていた。
牛車で内裏へと進む道すがら、ヒカルは他の随身達とともに徒歩で伊角に付き従う。
行き帰りの警護を固める随身達は、伊角の父の代からのおかかえの衛士が殆どで、
平均年齢は三十代から四十代。その中で、若いヒカルの姿はいやがおうにも目立った。
内裏に辿り着くと随身達は下がり、伊角は近衛ヒカルだけを脇に付き従えて殿上に昇る。
朝から、まさに夢にまで見た近衛ヒカルを傍に置いていることに、意味もなく浮かれて
いた伊角だったが、そこに来て自分のあさはかさを心底呪うことになった。
いつも自分をとりまく空気と、何かが違う。
その原因が近衛ヒカルであることはすぐにわかった。
あいさつをする貴族達の、あるいは女房達の自分に向けられる視線は、普段と変わ
らぬ、地位あるものに向けられる敬意に満ちたものなのに、後ろの若い武官を目に
したとたんに、その意味が変わる。
好奇と、悪意と、憐憫に満ちたその雰囲気。
藤原佐為の死を誰も口にすることはないが、その事実は内裏の誰もが知るところだ。
もちろん、その佐為に常に付き従っていた警護の少年検非違使の顔も、皆が知って
いる。
そして、その行方を誰もが気にいていた。だが、心配していたのではない。興味なの
だ。純粋な。
藤原佐為とヒカルの公にできない関係については、色恋に鈍い伊角でさえ気付いて
いた。ならば、他にもこの二人の特別な間柄について感づいている者は、いくらでも
いるのではないのだろうか?
その上で、彼らは近衛ヒカルの近況を知りたくて仕方がないのだ。
そして、それを醜聞にしたてあげるか、憐れただよう悲恋譚に仕立てあげるかは、その
話を料理する女房貴族の気分次第。どうするにしても、この位もたいして高くない
検非違使の話は、内裏に勤める人々にとってはいい暇つぶし。
そして伊角の後悔は、内庭をはさんだ向こうの渡り廊下を歩く人物を目にして、いよいよ
深くなった。
菅原顕忠がいた。帝のたったひとりの囲碁指南役。空気が凍った気がした。
伊角は恐る恐る近衛ヒカルを盗み見る。
ヒカルはまっすぐ前を見ている。菅原のいるほうには目線さえ向けていない。けれど、
気付いているのだ。そこにその人がいることに。でなけでば、この近衛ヒカルを包む、
押しつぶされそうなほどの緊張感はなんだというのだ。
藤原佐為を、その地位から追い落とした人物。それだけではない。伊角は、二年前
座間邸で起こった事件でも、菅原とヒカルの因縁も知っている。
菅原はこちらに顔を向け、ヒカルの姿に気付くと、口の端だけを上げて笑って、歩み
去っていった。
伊角は、ヒカルの内裏での立場も、そこで彼がどんな思いをするかも深く考えず、ただ
うきうきとしていた自分を恥じた。ヒカルの心を思いやってやれなかった自分を責めた。
伊角は、あらためてヒカルの方を見た。きっと自分は相当に不安そうな顔をしていたの
だろう。
自分を見返す検非違使は、ほんの少しだけ笑った。
「伊角さんが気にすることないからね」
そして、前を見、ふと真顔にもどってつぶやいた。
「いつまでも、逃げてるわけにはいかないし」
987黎明 ◆b0moonAH5w :03/02/09 18:57 ID:al9+xVdG
やがて眠りについた彼に衣を着せ掛け、彼の身体を覆うように掛け物をかけ、アキラはそっと
室内を出た。それから火をおこした火鉢を持って戻り、部屋の隅に置いてから、眠っているヒカ
ルの顔を覗き込んだ。
手を伸ばして涙の跡の残る頬に触れようとしたが、突然、弾かれたように手を引き、身体の内か
らわきあがる熱を振り払うように、アキラは夜の闇に彷徨い出た。

どうしたら彼を救えるのだろう。いや、どうする事が彼を救う事になるのだろう。
いや、自分が彼を救おうと考える事自体が、傲慢な事なのではないか。

振り返りながら、アキラはこの先の道の困難さを思った。
あのように熱く激しく求められて、これからも拒み通す自信など無かった。拒むどころか、自分
の身体は、彼以上に熱く激しく、彼を求めていた。その事を彼も知っていたから、その欺瞞に気
付いて、彼は自分を責めた。
欺瞞だ。
彼のためだなんて。
それでも彼を抱くことをしないのは、なぜなのだろう。
身体だけでなく、自分という人間を、欲して欲しいから?
熱を求めるのでなく、自分自身を求めて欲しいから?
そんな自分の強欲さに、自分が抱えている、ヒカルの抱える闇に劣らぬ程の暗い闇に、アキラ
は絶望的な気分になった。
こんな闇を抱えている自分が、彼を救おうなんて、とんでもない思い上がりなのかもしれない。
988黎明 ◆b0moonAH5w :03/02/09 18:58 ID:al9+xVdG
ならばいっそ、救おうなどという大それた望みなど放棄して、共に闇に堕ちてしまうのもいいか
も知れない。そんな甘い誘惑に一瞬、飲み込まれそうになりながら、けれども、思いとどまる。
堕ちたところで、彼の闇と自分の闇とは異なるのだ。
同じ闇に堕ちられるのなら、厭うものなど何もない。いっそ、それこそが望ましい。けれど彼の
闇の中にいるのは自分ではなく逝ってしまったあの人で、闇の中にあってさえ、彼は変わらず
同じ人を見つめ続けている。
それが、それこそが耐え難いから、自分は彼を闇から引きずり出そうとしているのだろうか。
結局、彼を救うなどと言う事は大義名分や言い訳に過ぎないのかもしれない。
ただ、闇の中に失った人だけを見つめる彼に耐えられないから。
だからこうやって無理矢理に彼を闇から引き摺り出そうとしているのかもしれない。
彼のためではなく、単に自分のために。
彼に生きていて欲しいと思うのは、元のような、その名の通りの明るい日の光のような彼に戻っ
て欲しいと思うのは、何よりもそういった彼を愛する自分のためで。
989黎明 ◆b0moonAH5w :03/02/09 18:59 ID:al9+xVdG
天を見上げ、降るような星々を仰ぎ見る。夕刻には低い空に細く光っていた月は既に沈み、そこ
には見えない。
天を見上げながら、宮中にその才を名高く知られたこの歳若い陰陽師は、天に見える幾千万の
光を、その現象と理(ことわり)とを思った。天にある日も月も星も、みな整然として乱れなく、定め
られた刻に定められた通りに昇り、また、沈んでいく。それらを計り、数え、天の動きから地の動
きを図ることも、彼の才の一つであった。
人々の目には異常とも見える月の赤さも、妖しく強く光りはじめた星も、長く尾を引くほうき星も、
日中に太陽が削られゆき昼日中に都が闇に包まれる事でさえ、全ては天の理の内で、不思議
な事など何一つなく、そうあるべき理由の元に正しい結果としてそう見えるのだということを、彼は
知っていた。ただ、何も知らぬ人にはその過程は見えないから、突然あらわれる現象にある時は
怖れ惑い、ある時は吉兆を見るだけなのだ。

天地(あめつち)の理はゆるぎなく秩序立てられ、その幾何学模様は整然と美しく、流れゆく万象
は彼の目には手に取るように明瞭で、それを見る彼を魅了した。
けれどそれでは、美しく優しかったあの人が自ら命を絶たねばならなかった事も、天の理なのか。
あらかじめ定められた秩序の内なのか。
そんな事はない、と、否定したい気持ちとは裏腹に、それもが正しく秩序であることを認めざるを
得ない自分がいる。それすらも定められた条理の内で、正当な因果として、なるべくしてそうなっ
たのだと言う事は、才長けた陰陽師である彼には否定できない事であった。
世界を司る真理は唯一絶対の真理で、ただそれを見るひとが、ただ一つの真理のうちにそれぞ
れ異なる真実を見るに過ぎないのだ。
それらを深く知った上で、陰陽師は自らの無力を嘆く。陰陽道などと言うものは、所詮、ひとの生
き死ににも、苦しみにも、悲しみにも、何の力にもならぬのだと。
990学生さんは名前がない:03/02/09 22:50 ID:xNRjPccc
ほしゅ。


久方ぶりに足を踏み入れた内裏という場所は、以前と変わらず華やぎと混沌が
支配する世界だった。
ヒカルは、刺すような好奇の視線の数々を身に受けながら、伊角の後ろにしたがって
歩く。
もちろん、目の前にいる彼の身を守ることが、今のヒカルの最重要事項であったから、
どんな狼藉者が伊角を傷つけようとやってきても、すぐに対処できるように、警戒は
おこたらない。
内裏の貴族、女房達が自分をどんな目で見るかなど、とうに予想がついていた。
「死」という穢れに関わりたくないと、当初は佐為について口をつぐんでいた彼、
彼女らも、時がたって、今は興味の方が先にたっている。
ヒカルにとって、もちろん菅原顕忠がいることも、予想の内だった。
遠めに見える彼は、幾人もの取り巻き警護役に囲まれて、そのものものしさはいっそ
滑稽な程で。
今はただひとりの帝の囲碁指南役となったことが、よほど誇らしいのか、胸を張り、
頭を高くあげて。
ヒカルが彼を見るたび、今でも体を支配するのは怒りより恐怖だ。その男にあの
屋敷で嬲られた記憶は、二年たった今もヒカルの心に、太い棘となって刺さっていて、
その痛みは、時折、思い出したようにヒカルの夢の中に悪夢となってあらわれる。
そしてその悪夢に追われて飛び起きるたび、ヒカルの冷や汗に濡れた背中をそっと
抱き寄せて、慰めるようにさすってくれたかの人は、今は冷たい水の底にいる……
――伊角が、心配そうにこちらを見ているのに気付いた。
「伊角さんが気にすることないからね」
警護役の自分が、主人である伊角に気を使わせてどうするんだと、自分を戒める。
でも、それだけじゃない。
「いつまでも、逃げてるわけにはいかないし」
独り言のように、その思いは口をついて出た。
そう、佐為は死んでしまったけれど、自分はまだ生きている。
生きている以上、向かい合って越えてゆかなければならないものは沢山ある。
けれど、そう強がりを言うには、ヒカルにとって内裏という場所は、あまりにも、
佐為との思い出に満ちていた。
彼の囲碁指南の仕事の終わるのを待って、控えの部屋から眺めた空の色も。
人気のない時に、柱の影で密かに交わした口付けの味も。
二年半前、殿上に上がるようになったヒカルが覚えている内裏の景色の中には、
常に佐為の姿があった。
内裏に植えられた花々の、その四季の移ろいとともに。
春には桜の木の下に。
夏は橘の木の横に。秋の紅葉に。冬の椿に。
ヒカルが止めるのも聞かず、雪の薄く積もった内裏の中庭に降り、白い椿と赤い椿を
手折ってきて、まず白い花をヒカルの頭に挿し、首をかしげ、それから赤い花を挿して
満足そうに「やっぱり、ヒカルには赤い花の方が似合う」と、子供みたいな顔をして
嬉しそうに笑っていた佐為。
(いけない)
また、甘やかな記憶の中に潜っていってしまっていた自分に気付く。
ヒカルは、歩き始めた伊角の背中を慌てておいかけた。
若いながら、内裏内で政治的な影響力を持つ伊角は、専用の控え室を与えられていた。
議事の前の最後の書状の仕上げや、友人達との意見交換はおもにここで行われる。
仕事が長引いてしなったときは、そのままこの場が臨時の寝室になることもある。
伊角に案内されて、ヒカルが始めて訪れたその場所にはずでに先客がいた。
「よう、今日から伊角さんの警護だって? よろしく頼むぜ!」
そう言って、貴族とは思えないざっくばらんな口調で話掛けてきたのは和谷助秀だ。
その他に知らない人間が二人。
「門脇さんと、岸本」
和谷が紹介してくれた。取りあえず型通りの挨拶を交わす。
「あぁ、俺も様付けじゃなくて、さんでいいから」
と、砕けた調子で言う門脇の横で、岸本と紹介された男だけは、黙ってヒカルを
睨みつけた。
何やら、その眼光に意味のわからない敵意が込められている気がして、ヒカルは
心の中で首をすくめる。
「でさぁ、伊角さん、今度の豊明節会の仕切り役の事だけど……」
政治的な話が始まってしまうと、ヒカルはさっぱりわからない。
ぼんやりと聞き流しているうちに、時間はたって、伊角は御前での会議に出るため
に部屋を出た。
その場所までの短い距離も、用心のためにヒカルは付き従う。
清涼殿の中へ消える伊角を見送って、先ほどまでいた部屋に帰るために振り返ると、
そこに賀茂アキラがたっていた。びっくりした。さっきまで何の気配もなかったのに。
まるで妖しかなにかみたいだ。
「おま…。そんなとこに、なんで突っ立ってんだよ」
賀茂アキラは憂鬱そうな顔をしてヒカルを誘う。
「ちょっと、いいかな」
994イブン ◆40mc48HIKA :03/02/10 09:35 ID:HcunCJ5u
外伝は長くかいてるわりに話が進まないなー、困った困った
と思っていたら、今、気付いたんだけど、とぎれとぎれに書いてるから
そう感じただけで、これまだ、門脇話より話が短いんだな……。なんてこった。
995heat capacity ◆GLA8qNt5N2 :03/02/10 17:07 ID:h4m9o7Pp
振り絞るような声だった。
俺はその時漸く、先程塔矢が怒っていたように感じたのは、あいつが自分自身の事を責
めていたからだと気付いた。
本当なら、俺に対して腹を立てられたっておかしくところだろう?
なのに、自分が悪いんじゃないかって、少しも俺の事責めないで。
そうなんだ。こいつ、結局の所誠実なんだよな。優しいんだ。
腕の温もりが泣きたくなる程心地よくて、──だから、俺はこの温もりだけで充分だ。
「もう一度、言ってくれよ……」
「え?」
少し困惑した風な塔矢の声に知らず笑みが漏れる。
『好きだ』それだけの言葉が、俺にとってどれだけ絶大な効果を持ってるかなんて、知
らないんだろうな。
自分勝手に満足出来るだけの言葉ならいくつだって掛けてもらったから、言うだけ言っ
てみたけれど、別に俺は塔矢の返事を期待してはいなかった。
けれど、生真面目なあいつは、少し考えた後ちゃんと言ってくれた、好きだよ、って。
俺は塔矢の背中に腕を回すと強くしがみついた。
「もっかい」
「愛してる、誰よりも。キミだけが大切なんだ」
「……うん」
そのままお互いの体温を暫く感じあう。
頬を塔矢の肩に少しだけ擦り付けて俺はあいつの顔を正面から捉えた。
「塔矢…抱いてよ」
996heat capacity ◆GLA8qNt5N2 :03/02/10 17:08 ID:h4m9o7Pp
「…でも」
困ったように俯いた塔矢の顔を下から覗き込む。
「身体、冷えちゃったんだ。温めてくれよ」
手をとってその手の平に軽くキスする。俺の身体は本当に冷たくなっていた。
塔矢が、柔らかく微笑って俺の耳にキスをしてきた。そのまま頬、鼻筋を辿って漸く唇
に辿り着く。
でも触れるだけのキスを繰り返すのに焦れて、俺が塔矢の唇に軽く噛み付くと、塔矢は
仕返しとばかりに俺の唇を覆ってきた。
暫くして俺の腹にあいつのが当たって、思わず身を引く。
なんだ、やっぱりやりたかったんじゃん。こんなに元気なクセに。
そう言うと、塔矢は憮然とした表情になって唇を引き結んだ。
機嫌を損ねるのが嫌だったから耳許にゴメン、と小さく囁いてから言った。
「入れる? いーよ、オレ」
俺の臆面もない言葉に、塔矢が一瞬たじろいだのが分かった。
「けど、まだ……」
「平気。それより早く欲しいから……、っん」
言いながら自分の手で招き入れる。『そこ』が異様にぬるぬるしていた。暫くして漸く
俺は出血していた事に気付いた。痛いというよりは、熱かったから気付かなかったんだ。
塔矢の熱か、自分の熱か良く分からなかったけれど、まるで溶け合ってるみたいだった。
997heat capacity ◆GLA8qNt5N2 :03/02/10 17:09 ID:h4m9o7Pp
「進藤…進藤……っ」
塔矢の掠れた声が、俺を呼ぶ。
目眩がしそうな程幸せで。幸せで、気が狂いそうだった。
今ならこのまま死んでもいいな、そうふと思った瞬間、言葉がするりと飛び出した。
「もし、オレが碁を打てなくなったら、オマエどうする?」
唐突な質問に塔矢は面喰らったみたいだった。それでも考え考え言葉を紡ぎ出す。
「碁が打てない、という状況自体あまり考えられないけど……」
そして心底不思議そうな顔をして続けて言った。
「どうするとか、どうしないとかいう問題じゃないだろう。碁あってのキミじゃなくて、
キミあっての碁なんだから」
その言葉が漸く回転の鈍い脳に浸透した瞬間。
「あ……」
身体の中にあるモノが急に質感を持って。いや違う、自分が今まで感覚を閉ざしていた
のだと気付いた時には、身体が快感に悲鳴を上げはじめた。
背筋をぞくぞくとしたものが一気に駆け上がり、全身に震えが走る。
「! 進藤…、力、…抜いて……っ」
「…わっ…かんね……、っできない……っ」
塔矢が俺を必死で宥めようと頬に触れる。
けれど、それすらも今は俺の身体にいたずらに刺激を与えるだけだった。
「とぉや、う、うごかない、で…、…カ、ラダ…ヘンに……っ、んぁ…っ!」
塔矢のが自分の中でどんどん大きくなっている気がする。
そう感じれば感じる程、俺は力の抜き方が分からなくなって軽いパニックに陥った。
998heat capacity ◆GLA8qNt5N2 :03/02/10 17:10 ID:h4m9o7Pp
塔矢が苦しそうに息を吐く。
目を閉じて、少し震えている唇から再度ゆっくりと深い息を吐くと、顳かみの辺りから
一筋汗が流れ落ちた。
俺の頬を濡らしたそれが、耳の方に流れていくのに全身が総毛立つ。
塔矢、と名前を呼ぶとあいつは眉間に皺を寄せたまま、それでも無理に笑おうとした。
なんだかよく分からないけど、胸がいっぱいになる。
何度も突き上げられて、声が掠れる程泣いて、気持ち良すぎて、辛くて。
それでもあいつの背中に回した手を離そうとはしなかった。

気がつくと、俺の目の前に静かな寝息を立てている塔矢が居た。
自分が気を失っていたのだと気付いたのは、いつの間にかこざっぱりした浴衣に着替え
ていたからだ。
風呂にも入れてくれたんだろう、自分の髪が塔矢の髪と同じ匂いがするのがなんだか落
ち着かない。
塔矢の髪に手を伸ばすと指の間からサラサラと流れ落ちた。
身を包む倦怠感はどうしようもなかったけれど、心はいつになく穏やかだった。
もしかして、これが愛しいって事なんだろうか。
不意に急激な眠気が襲ってきた。
「塔矢……」
規則正しく聞こえていた寝息が、途絶える。
「もしお前がオレをひとりぼっちにしたら、オレは死んでやる」
暫くして、塔矢の腕が俺の身体に伸びてきて、強く強く抱きしめられた。
塔矢の遣る瀬無い思いが直に伝わってきて、俺も精一杯しがみつく。
持て余した感情が、ただただ溢れていた。

<了>
999学生さんは名前がない:03/02/10 17:23 ID:2Yv4qBpv


  ▼〃ヾ 
  (,,゚Д゚) ∧____     オレガ バッサリキメテヤル!
 |┼ ̄|つ=| |――――>    
 \_/ |  ∨ ̄ ̄ ̄ ̄ 
   ∪∪,         
1000学生さんは名前がない:03/02/10 17:23 ID:2Yv4qBpv

    o = o
  . 〃〃ヾ▼ ゛o
  . o (゚▽゚,)っ    ヨッ! 1001ゲト!!
   ゙ と゚。~^ツ′   
      |・。゚.つ
      し'´ヽ
    γ'⌒ヽ,  
    i     i  ))
    ヽ、_,ノ 
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