○おまえら男ならヒカルたんハァハァだよな?Part13●
952 :
学生さんは名前がない:02/07/16 04:10
門脇たんをもてあそぶなんて、
ヒカルたんはいつからそんな悪い子に…。
どーでもいいがポスター、
棋院が色子をあっせんしてるみたいだ…。
全身の骨が軋んでいるんじゃないかってぐらい、どこもかしこも痛い痛いと悲鳴をあげていた。
二日酔いの朝だって、こんなにひどかなかったと誰かに文句を言いたくなるぐらい、頭痛がする。
耳元では、蚊だか蜂だかが100万匹は集まってわんわん騒ぎ立ててるみたいに煩い。
胸の上にはなにか重いものが乗っかっていて、身動きどころか呼吸もままならない。
自分がどこにいるのか確かめたくて、必死になって瞼を開けようとしているんだけど、まるで針と糸で縫いとめられているみたいに、ぴくりとも動かない。
俺、一体どうしちゃったんだろ?
ただただ痛む身体を持て余し、暗闇の中でぶっ倒れている。
暑くもなければ、寒くもない。
ただ、身体が痛いだけだ。
ただ、頭が痛いだけだ。
俺、もしかして死んじゃったのかな?
なんで?
なんで死んじゃったのかな?…………
しばらく考えた。
頭が割れそうに痛かった。それでも、我慢して考えた。
真っ暗闇の中に、ふっと白い面影が浮かんだ。
切れ長の瞳を限界まで見開き、引きつっていた白い顔……。
―――――塔矢。
心の中に、その大事な名前がすっと浮かんだ。
少しだけ、頭痛がおさまったみたい。
塔矢は、いっつも俺のこと、我侭だ、自分勝手だって文句を言うけどさ。
自分だって相当なもんだよ。
いつだって、俺のこと振りまわしてさ。囲碁のことしか頭になくて……。
そう思ってたら、いきなり「好きだ」なんて言ってきてさ。
あんな精錬潔白そうな顔してさ、コクったその日にキスまでしやがったんだぜ、あいつは。
塔矢アキラ若先生は!
ずっと一緒にいてくれるって俺を騙くらかしといて。
…………やっぱり俺をひとりにしたくせに。
俺をひとりにしておいても自分は平気なくせに、ひとりが嫌な俺が他の人に懐くと不実だとか言って責めたてる。
それでも、大切だと思ってたんだけどな……。
届かなかったみたいだ。
でもまあ、それでもいいや。
どんなに一緒にいたって、どんなに大切に思ったって、分かり合えない事はある。
自分の気持ちだって、ちゃんとわからないのにね。
人の気持ちまで理解しようなんて、所詮不可能なわけで………。
でもよかった。
塔矢が轢かれなくて―――。
咄嗟に塔矢の身体を突き飛ばしてたけど、あいつ大丈夫だったかな?
怪我なんてしてないかな?
つつじの植えこみがクッション代わりになってりゃいいけど。
ほら、あいつ運動神経悪そうじゃん。
前、そんなこと言ったら、失礼だって例の如く青筋立てて怒ってたけど。
なんだかほっとしたら……、意識が遠くなってきた。
頭痛は気にならなくなってきたけど、やっぱ身体は痛いまんまで、それならこのまま意識を飛ばしたほうが楽でいいな……なんて、暢気なこと考えてたときだった。
いきなり、腰の辺りにスンゲー痛みが走った。
息が詰まった。
そうでなくても身体中痛いのに、なんなんだって慌てていると、今度はわき腹の辺りに痛みが走った。
それは強烈過ぎて、俺は生理的な涙をぽろぽろ零しながら、手足を丸めて身体を反転し痛みがきたほうに背中を向けた。
その背中に続けざまに衝撃が加えられる。
(ああ、俺、いまボコにされてる。二、三人に蹴り飛ばされている)
薄れていく意識の中で、ぼんやりとそんなことを考えていた。
これで完全に死ねるかも……。
そう思ったとき、髪の毛を鷲掴みにされ、上半身を引き起こされた。
ぱちぱちと頬を叩かれる。
なにか、耳元で喚いているけど、なにを言っているのか、わからない。
起きろと命令されたような気がした。
別に素直に従うつもりじゃないけど、このままでは痛くて自分が損だから、もう一度だけ瞼を上げる努力をした。
さっきよりは少し回復してんのかな。
薄ぼんやりとした光を感じた。
大きく肩で息をつき、力を掻き集める。
眩しいほどの光が、俺の眼を射る。
二重、三重にぶれちゃいるけど、険しい顔つきの男が、目の前で怒鳴っている。
俺はその男がなにを怒鳴っているのか、てんでわかんなくってさ、小さく頭を左右に振ってみた。掴みしめられた髪が、きしきしと攣れて痛んだ。
男がまた怒鳴る。
もうやめてくれよ。折角頭痛がおさまったっていうのに、またぶり返すじゃないか。
また、瞼が重くなる。
今度こそ、もうダメだと思ったとき、鋭い制止の声がかかった。
「おやめなさい!」
俺はすぐには信じられなかった。
でも、俺が間違うはずがない。
だって、そうだろ?
だって、2年もの間、俺の頭の中に直接響いた声なんだ。
「見たところ、まだ子供ではないか。放しておやり」
俺は、最後の力を振り絞って、両目を開いた。
扇子で口元を隠した男が、少し高いところから、俺を見下ろしている。
間違いない。
懐かしい姿に、俺の目に幕がかかる。
ダメだ、ダメだ、ダメだ!
泣いてる場合じゃないんだ。
泣いてたら……、佐為の姿がぼやけちゃう。
でも、涙を拭おうにも腕が動かない。
………佐為
俺は呟いた。声になったかどうかはわかんないけど、嬉しくて嬉しくて、懐かしい姿に呼びかけた。
――――――――佐為
髪を掴んでいた手が離れた。下に叩きつけられたとき、頬にじゃりっとした感触があった。
湿った土の匂いがする。
そんなことを考えながら、俺はゆっくりと意識を手放していった。
でも意識を失う最後り瞬間まで、佐為から目を逸らす事はなかった。
ウッキーたんキタ━━━(゚∀゚)━( ゚∀)━( ゚)━( )━( )━(゚ )━(∀゚ )━(゚∀゚)━━━!!!!!
ああああ待ってたよー!!!
なんかすげー切ないけどヒカルたんどーなっちまうんだろう…(;´Д`)
気になる、気になるぞハァハァ
せつねえ━( )━(T )━(ДT )━(TДT)━(TДT)━(TД)━( T)━( )━━━━━━!!
ヒカルたんの世界はこのまま自己完結したっきりなんだろうかハァハァ(;´Д`)
自ら孤独になるなヒカルたん。オレならいつでもどこでもハァハァさせてあげられる!
┃ ┏━┃ ┃┃
━┏┛ ┏━┃ ━━(゚∀゚)━━┛ ┃┃
━┏┛ ┛ ┃ ┛┛
┛ ┛ ┛┛
はあ、なんかこう美しいAAでも作れたら貼っておきたい
芳香漂うウッキーたんの文章、痺れるよ
こっちの隙間を空けておいたら続編きぼーんできるんだろーか…
いま続き書いてまつ。
10レスぐらいいただけると嬉しいでつ。
ハイホー!歓喜歓喜歓喜(・∀・)
んじゃ次スレで熱く滾ってるんで10レスと言わずうpきぼーん
他の山猫さんも登場きぼんぬ(´∀`)
962 :
学生さんは名前がない:02/07/16 14:44
唇にぬるりとして生暖かいものが触れた感触に、俺は思わず目を開けていた。
ぼやけた視界に、おかっぱ頭が揺れていた。
「塔矢?」
俺は一生懸命口を動かしたけど、甲高い声がキャンキャン叫んでいるようにしか聞こえない。
「塔矢、落ちつけよ」
そう行ったんだけどさ、自分でもスンゴイ掠れた声だってわかる。
これじゃ、なに言ってるかわかんねえよな。
目を擦ってぱちぱち瞬きを繰り返すと、少しだけ視界がはっきりとした。
目の前の塔矢は、なんか一回り縮んだ感じだ。
「塔矢、おまえさ……」
今度は、さっきよりは少しだけましな声がでたんだけど、俺は最後まで話すことができなかった。
だってさ、目の前の塔矢ったらさ、頭に赤いリボン結んでんだぜ。
「なんで…?」
俺の質問に答えもしないで、塔矢はいきなり立ちあがって、キャンキャン叫びながらいなくなった。
俺は、それを見送りながら、頭を傾げてた。
だってさ、だってさ、塔矢、赤いリボンだけでも変なのに、和服なんだぜ。それも赤い袴!
「なんなんだよ、一体……」
俺の言葉が、すっとどこかに吸いこまれていく。
そうな風に感じるほど、静かだった。
俺は肘をついて、体を起こした。
俺は見たこともないような部屋に寝かされてた。
板の間に、ゴザみたいのを敷いて、その上に布団。掛け布団の代わりに着物が一枚掛けてあった。枕は、変な木の箱みたいなヤツ。
その近くに、お盆があって、木の鉢と木のスプーンがあった。
それ見て、ようやく合点が行った。
俺の唇に触れた、ぬるりとして生暖かいものは、どうやらこのお粥みたいなもんらしい。
(塔矢が食わせてくれたのかな?)
そう思ったら、自分がスゴク腹ぺこだってことに気がついた。
(食べてもいいのかな?)
食べさせようとしてたぐらいだから、食べても怒られないとは思うけど、全然知らないとこにいるから、なんとなく不安で塔矢が戻ってくるのを待とうと思った。
周囲をゆっくり見渡すと、あんま馴染みのないものが次々目に入ってくる。
天井は高くて、きれいな絵が描いてある。花とか鳥の絵。
それがちゃんとわかる程度に明るい。ってことは、どうやらまだ昼間みたい。
天井の辺りは明るいんだけど、俺の回りし少しだけ暗くなっている。
なんか衝立みたいなので、囲ってあるんだよね。
衝立も、屏風みたいなヤツじゃなくて、模様の浮きでた特別きれいなゴザみたいのが木の枠にぶら下がっている。
そうやって辺りを観察していると、スッスッって衣擦れがして、誰かがこちらに近づいてくる。
塔矢かな? って思ったら、衝立と衝立の間から、案の定おかっぱ頭がひょいと中を覗き込む。
「塔矢」と声をかけようとして、俺は寸でのところで言葉を飲みこんだ。
塔矢じゃない。そりゃ、確かに塔矢はおかっぱ頭だけど、こんな肩より長くない。
それにそれに……、目の前にいる子はどう見たって、小学生ぐらいで、間違いなく………女の子だった。
「おやかたさま!」
女の子は後ろを振り向くと、甲高い声を張り上げた。
すると、それに答えるように、穏やかな声が聞こえてきた。
「わかった、わかった。そう急かすでない」
俺は、条件反射みたいに、目頭が熱くなった。
だって、その声は俺のよく知ってる声だから……。
衝立が一つ、すっと後ろに動き、そこにするりと入りこむように姿を現したのは、
――――――佐為だった。
「佐為………」
俺はもうそれ以上、言葉に出来なかった。
ずっと会いたかった。
佐為が、いきなり姿を消して、もう何年になるんだろう。
三年? 三年は過ぎだよね。
この三年の間、夢に出てきてくれたのだって、あの扇子をくれたときだけで。
会えないってわかってたけど、それでも俺は会いたかった。
そんな俺の気持ちも知らず、佐為は女の子に丸いゴザの座布団みたいのを運ばせて、そこにあぐらをかいて座った。それからおもむろに口を開いたんだ。
「なにを泣く?」って。
「ひでーや………」
俺は、佐為が涼しい顔でこんなこと言うからさ、スッゴク悔しくって、涙なんて見せたのが悔しくて、両手の甲でぐいぐい涙を拭った。
だけどさ、とまんないんだ。
次から次って感じで、溢れてくるんだ。
やんなる。涙腺ぶっ壊れたみたいだ。
「そなた、なぜそのように泣く?」
おまえに会えて嬉しいからだなんて、言ってやるもんか。
「身体はいかがじゃ? 当家の滝口が乱暴をしてすまなかったのう。
三日もの間、意識を取り戻さぬ故、案じておった。おや、まだ葛を食しておらぬのか。コギミ」
コギミと言うのは、どうやらおかっぱの女の子の名前らしい。
佐為に「あい」と頷いてから、女の子は枕元に座り、木の鉢とスプーンを手に取った。
口元にスプーンが近づいてくる。
「自分でできるよ」
俺は自分よりずっと小さな女の子に食べさせてもらうのが恥ずかしくて、そう言った。
すると、女の子は佐為を目で伺い、佐為はのんびりと頷いた。それだけでこの二人は意思の疎通ができるようで、女の子は鉢とスプーンを俺の手に渡してくれた。
俺は、二人が見守るなか、お粥みたいなものを口に運んだ。
舌に感じたのは、仄かな甘味だった。
お粥とは全然違う味だったから、ちょっと驚いたけど、とろりとしていてまずくはなかった。ううん、美味しかった。
「これ、なに?」
「葛湯じゃ、甘蔓の汁をたっぷり落したから、甘かろう?」
俺は大きく頷くと、食べることに専念した。
佐為の話だと、俺は三日の間、気を失っていたってことだよな。
その間、さっきみたいにこの子がこれを食べさせてくれてたのかな?
でも、育ち盛りだから、これで足りるはずないよね。
俺、かなり腹減ってるみたい。
あっという間に鉢の中身は空っぽになった。
「ひもじいようじゃな。コギミ、少し早いが夕餉をこちらに運んでおくれ」
「おやかたさまは如何されます?」
「ああ、私の膳もこちらに運んでおくれ」
「あい」と頷くと、女の子はパタパタと足早に去っていった。
足音が遠ざかると、また静けさが戻ってくる。
俺は、なにから話せばいいのかわからなくて、ただただじっと佐為を見つめていた。
もしまた佐為と会えたら、あれも言おう、これも言おうって、考えたことがあった。
夢の中で扇子を渡されたとき、もう会えないんだって、なんとにく理解した。
それでも、ふとした拍子に、佐為に話しかける自分がいた。
いま、目の前に間違いなく佐為がいるのに、それだけで胸が一杯でなにも言えない。
「そなた、なぜそのような目で私を見る?」
先に口を開いたのは、佐為だった。
「目?」
佐為は、ほんの少し眉をひそめて、頷いた。
「そうじゃ、いまにも泣き出しそうな瞳で、私を見ているぞ。
当家の滝口に責められているときも、いまのような瞳で私を見ておった」
「だって……」
葛湯のおかげか、目覚めたときよりはかなりましになったけど、やっぱりまだ声はがさついている。
「大儀か?」
「タイギ?」
「身体は辛くないか?」
俺は頷いた。絶好調じゃないけどさ、蹴られた腹と背中を別にすれば、頭痛もないし、かなり楽。
「それでは、膳が運ばれるまで、少し話そうか」
「うん」と俺が返事をすると、佐為はふわっと笑ってくれた。
「まず、聞きたいことが二、三ある。そなた、名をなんと申す?」
俺は自分の耳を疑った。
「なぜ、私の名前を知っておるのじゃ?」
そのとき、俺の心臓は絶対鼓動を打つことを忘れていたと思う。
そのぐらい、佐為の言葉は、ショックだった。
?
うっきータンキタ━━━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━━━━!!!!!!
こりゃーしみるな・・・最初から一気読みしてくるよ。倉庫番さんグッジョブ!
970
「塔矢――?」
ヒカルは寝起きのちょっとかすれた声で、アキラを呼んだ。
返事はない。
部屋の中にアキラはいなかった。
「今日も仕事かな?こんな早くから――」
寝ぼけた頭で、他の部屋を徘徊する。
テーブルの上には、ヒカルのリュックが置いてある。
リュックに手を伸ばそうとして、ギクリとした。
中に入れたはずのキーケースが、リュックと並べて置いてあった。
見られた―――――――――――?
アキラは怒って出ていったのだ。
ヒカルはペタリと座り込んだ。
涙があふれてきた。
小さな子供みたいに、わあわあと声を上げて泣いた。
「ただいま」
アキラが部屋に入ると、ヒカルが床の上に伏せて、大泣きしていた。
「進藤…!どうしたんだ?」
驚いて側に駆け寄った。
ヒカルが、はじかれたように涙に濡れた顔を上げた。
大きく目を見開き、そして、顔を歪ませた。
アキラにしがみついて、また泣き始めた。
「ど…どこ……行って……たん…だ…よぉ…」
「ご飯を買いに行っていたんだよ。ほら。」
しゃくり上げるヒカルに、コンビニの袋を見せた。
「黙って……行くな…よ…」
ごめん―――と一言謝って、ヒカルの背中を撫でた。
ヒカルの手に、キーケースが握られているのが見えた。
ああ…それでか――
確かに、気にならないと言えば嘘になるが…。
いや、はっきりと言って気になる。
本当はあの鍵を取り上げて、投げ捨ててしまいたい。
緒方さんに会わないでくれ―――――と、叫びたい。
だが、ヒカルがアキラを必要としている以上に、アキラにはヒカルが必要だった。
ヒカルの手を自分から離せるほど、強くない。
無理強いして、ヒカルが離れていくことが怖かった。
けれど、自分の知らないところで、緒方とヒカルはますます親しくなっている。
自分だけが置き去りにされているような気がした――――。
「―――さんの鍵……か…」
アキラは小さく呟いた。
『緒方さんの鍵か――――』
アキラの小さな呟きは、何だか悲しげだった。
それは、どちらに対してなんだろう……。
オレが先生の鍵を持っていたから―――?
それとも…先生がオレに鍵を渡したから――――――?
毎週、和谷のところで行う研究会も、気がそぞろで身が入らない。
みんなに溜息をつかれて、「もう帰れ」と追い出された。
「あ――――っ もう!こんなことじゃ碁に集中できないよ!」
ヒカルは自室のベッドの上で、何度も寝返りをうった。
眠ろうとして目を瞑っても、アキラと緒方のことが気になる。
「本当に…困る…………」
悲しくて仕方がない。
二人のことを考えると涙が出そうだ。
本当は、アキラと緒方が仲直りしてくれればいいのだ。
それで、もし、アキラが去ったとしても―――。
その時は辛くてしょうがないだろうが………諦める。
ヒカルにとっては、アキラが誰より大事なのだ。
緒方がたった一言…大切な言葉を言いさえすれば―――。
そうすれば、この痛みはなくなる。
別の痛みが生まれるかもしれないけれど、
大丈夫だ…きっと…我慢できる。
「平気だよ…オレ…」
泣きたくないのに、勝手に涙がでてくる。
「一人になっても平気だ……」
ウソだ。
アキラが離れたと思って大泣きしたくせに―――!
「平気だ…」
両手を顔の前で交差させた。
佐為の顔が瞼の裏に浮かんだ。
眠る前は、いつも楽しいことを考えるようにしていた。
そうすれば、悲しい夢を見ないですむ。
佐為の笑顔にきっと会える……。
朝、目覚めたとき、楽しい気分でいられる…そう信じていた。
でも、夢の世界が楽しいほど、現実は悲しかった。
一人きりだと言うことを思い出させた。
やっぱり、夢は夢でしかないのだ―――――
佐為が存在しない世界にいることを、強く強く感じさせる。
それでも、寂しい夢を見たくなくて、夜毎の儀式のように繰り返した。
しかし、その儀式を最近はしないことの方が多かった。
現実も悪くないと思えるようになったからだ。
佐為……塔矢……
「オレ…また…独りになっちゃうのかな…」
緒方先生もこんな切ない思いをしているのかな…。
涙がこぼれた。
止めようと息を詰めたら、喉の奥がヒューヒューと鳴った。
その夜の夢の中に、思い人は現れてはくれなかった。
ウッキーたん、
つ、続きは、また新スレのヤマネコ・タイムの時でつか?
ヒカルたん(;´Д`)ハァハァ…
再生たん北北北北来たっ!!!
待ってたよー!
今からじっくり読むぞーん。
緒方のマンションのインターフォンを押した。
やっぱり今日も留守らしい。
緒方は忙しいのだから、家にいる方が珍しいのだ。
鞄の中から合い鍵をとりだした。
溜息がでた。
本当はこの鍵を使いたくはない。手の中でそれを弄んだ。
一瞬、帰ろうかと思った。
いや、だめだ。首を振る。
ヒカルは思い切って鍵を差し込んだ。
広い部屋の中に、たった一人でいるのは心細かった。
部屋の主に早く帰ってきて欲しい。
そうでないと、挫けてしまいそうだ。
馬鹿なことをしようとしている。
また、緒方に怒られるのだろうか。
でも、これ以上ないくらい考え続けて出した結論だ。
今日は何を言われても、絶対に退いたりしない。
緒方の言うように、確かに、自分は子供だが……子供にだって言い分があるのだ…。
不意にアキラの顔が思い浮かんだ。
頭を振って、それを払おうとした。が、巧くいかなかった。
「あ…そうだ…」
ヒカルは奥の部屋に行き、水槽の前に立った。
悠々と自由に流れていく鮮やかな色。
魚達の乱舞は、次第にヒカルの心を落ち着けてくれた。
ヒカルは、ただ無心にそれを見つめ続けた。
玄関の扉を開けた時、見慣れたスニーカーが目に入った。
ああ…来ているのか…。
そっと、静かに扉を閉めた。
部屋の奥に入るとヒカルが水槽の前に立っていた。
暗い部屋の中、水槽の仄かな灯りがヒカルの顔をぼんやりと照らした。
「進藤?」
声をかけると、ヒカルは顔を上げた。が、またすぐ水槽に目をやった。
「どうした?灯りもつけないで。」
スイッチに手を伸ばして、緒方が言った。
「奇麗だね…魚…」
ヒカルは、自在に泳ぎ回る鮮やかな色の群を見つめていた。
緒方もヒカルの傍らに立って、水槽の熱帯魚を眺めた。
水流に揺れる水草……その間を自在にすり抜けていく魚達……。
蛍光灯の光が、魚の姿をより一層美しく飾った。
二人は暫く黙ったままだった。
緒方はヒカルの横顔に視線を向けた。
――――何を考えているのだろう――――
視線を感じたのか、ヒカルが緒方を見上げた。
大きな黒い瞳……吸い込まれそうだった。
「先生――――塔矢のことだけど…」
ヒカルが口を開いた。
また、その話か――――うんざりした。
「先生――――塔矢のことだけど…」
ヒカルがそう言った時、緒方の眉がピクリと動いた。
僅かに表情が険しくなった。
かまわず先を続けた。
「オレ、やっぱり塔矢に言った方がいいと思う……」
ヒカルは緒方から視線を逸らさなかった。
緒方が大きく溜息をついた。
「その話はもう終わりだとこの前言っただろう?」
ヒカルはもう一度繰り返した。
緒方が応じるまで何度でも言うつもりだった。
「それで、俺が言ったとして―――アキラと前みたいになったらどうするんだ?
お前、それでもいいのか?」
緒方がイライラと言い放った。
同じ話を何度もするな――――と、言外に匂わせている。
ヒカルはぐっと息を呑み込んだ。深呼吸して心を落ち着けた。
「いい……よ――」
緒方の目を見据えて言った。
緒方は、瞬間言葉に詰まった。
今…こいつは何を言った…?
本気で言っているのか?
馬鹿なことを言うな―――――!
と、怒鳴ろうとして……出来なかった。
ヒカルの瞳があまりに静かに澄んでいたので…。
緒方はヒカルの視線を、真っ直ぐ受け止めることが出来なかった。
思わず、目を逸らした。
逸らした時点で、負けたと思った。
「お前…正気か…?本当に平気なのか?」
ヒカルがアキラと離れて平気でいられるわけがない。
いや、それよりアキラはどうなるんだ!?
煙草を取り出し火を点けようとした。
動揺している心を静めようと思った……うまく点かない。
チッと小さく舌打ちをした。
緒方は、火の点いていない煙草を灰皿にねじ込んだ。
「すんだことだと言っただろう…?」
声を押し殺して言った。
あれだけ言ったのにまだわからないのか?
どうすれば、この子供は納得するんだ。
「まだ、すんでねぇよ!!」
突然、ヒカルが叫んだ。
自分の正面に回り込んで、両腕を掴んだ。
細い指先が腕に食い込んでくる。
緒方を見つめるヒカルの瞳に、涙が溜まっていった。
ちょっと、一度にうpしすぎかな。
いったん休憩するか。
え――――――――――――――――――っっっっっ!?
休憩―――――――――――――――――っっっっっ!?(;´Д`)
いや、いいでつ。わがまま言わんでつ。待ってまつ。
つーか、スレ消費してスマソ。
全然構いませぬ!
たくさん読めて幸せなり〜〜〜
ハァハァ(;´Д`)ハァハァヒカルたんハァハァ…
「ちがう…!ちがうよ!」
すんだことなんかじゃない!
「だって……先生は…塔矢に…何も言ってねぇじゃんか!」
緒方がなくしたと思っている物は、ちゃんと手の中にあるのに…!
緒方が気づけば、すぐにでも戻ってくるのに…!
どうしてそれがわからないのだろう…。
ヒカルと同じ後悔をして欲しくない。
ヒカルがいくら言ってもだめなのだ。
自分で気づかなければ…!
「ちゃんと言わなきゃだめなんだよ…!大切な人にそのことを…!」
自己満足でも何でもいい…言わなきゃもっと後悔する。
アキラだって今のままじゃ―――――
本当のことを知らないまま、先生を憎み続けるの?
そんなの辛い……塔矢も…先生も…それからオレも…。
とても苦しい……。
「オレのことはオレの問題なんだよ…先生には関係ねェ…」
緒方がヒカルに遠慮をしているのなら、それは間違いだ。
絶対に間違っている。
苦しい 苦しい 苦しい 苦しくて痛い
「わかってよ……」
―――為…佐為…助けてよ…苦しいんだよ……すごくすごく痛いんだよぉ
ヒカルは緒方の胸にすがった。
泣きながら拳を広い胸に叩き付ける。
「俺のことは俺の問題だ。お前には関係ない。」
何度、ヒカルに向かって言っただろうか?
今、ヒカルが同じ言葉を自分に言っている。
胸が痛い。
殴られたせいではない。
胸の奥のずっと深いところ…見えないところが痛い。
ヒカルを守ろうとして、かえって傷つけていた。
緒方がヒカルを守ろうとしたように、ヒカルも緒方を守ろうとした。
アキラと自分のことで、ヒカルはずっと傷ついていた。
ヒカルが緒方の顔を見上げている。
涙で汚れた頬を拭おうともしない。
「すまなかった…」
その途端、ヒカルは声を上げて泣き始めた。
ヒカルの薄い体をそっと抱きしめた。
ヒカルは緒方の胸に顔を埋めた。
しゃくり上げるヒカルを宥めるように、低い声が優しく囁く。
「お前は言ったのか?大切な人に…」
緒方の胸に顔を押しつけたまま、ヒカルは黙って首を振った。
言えなかった…。肝心なことは何一つ…。
だって、ずっと一緒だと思っていたから…。
突然いなくなるなんて思っても見なかった。
『ありがとう』…『ごめん』…それから…『大好き』……。
大事なことは何も言っていない。
『さよなら』さえも…。
…佐為…大好き――――
今はもう、夢の中でしか会えない。
「…辛かったな……」
大きな手が背中をさすった。
止まりかけた涙が、また、溢れてきた。
自分の腕の中で、泣き続けるヒカルの髪をそっと梳いた。
壊さぬよう、出来るだけ優しく。
ヒカルの額や頬に口づける。
瞼に唇を押し当て、そのまま目に溜まっている涙を舌で拭った。
詳しいことはわからない。
でも、ヒカルも大切な人を失ったのだと朧気ながら理解した。
アキラとは別の大事な人……。
その相手は、もう二度とヒカルの手の中には、戻ってこないのだろう………。
泣いているヒカルを宥めるのは二度目だ。
あの時とは違う感情が芽生えているのを、緒方は自覚していた。
嗚咽を漏らす唇にそっと触れた。
ヒカルは嫌がるそぶりを見せなかった。
力を抜いて緒方に体を預けている。
「いいのか…?」
ヒカルの耳に唇を寄せて囁いた。
ヒカルは目を閉じて、小さく頷いた。
再生たんキタ━━━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━━━━!!!!!!
つ、続きを!続きを!いよいよオガヒカキャモーン?ハァハァ(;´Д`)ハァハァ(;´Д`)
レス消費が心苦しいんで新スレでマンセーしてます
…モウ1000ゲトアキタ
ダレカナンカヤッテヨ
〃ヾ▼ ノ
⊂(゚−゚⊂⌒ヽつ
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
ヒカルたんもお疲れなんだな…。
とりあえずお兄さんと一緒においで。
いい所につれていってあげるよ〜(;´Д`)ハァハァ
再生さんキタ━(゚∀゚)━( ゚∀)━( ゚)━( )━(゚ )━(∀゚ )━(゚∀゚)━!!!!!
三者三様の心の動きにどきどきしながら読んで待つ!
ヒカルたん、今から書くんだけど、5レス分予約しといていい?
ヘタレさんはこないのかな………?
イイヨウッキータン
ミンナヨミタキャカキコムナヨ!!
_______ _____/
V
〃ヾ▼
(゚▽゚*)
| U テクテク
| |〜 )))
U゛ヽ)
ウッキーたん、ヒカルたんはもう寝ちゃったみたいだぞ(w
是非うpしてくだ佐為!
頭がかーっとして、怒鳴りつけたいのか、泣きたいのか、どっちがどっちだかわかんなかった。寒くもないのに歯がカチカチ鳴って……、それが嫌でグッと奥歯を噛み締めた。
「うん? 何故そのように怖い顔をする?」
佐為こそ、怖いぐらい真面目な表情だった。
「佐為――――」
しかし、俺はその先を続けられなかった。
衝立がすっと動かされ、女の人たちが膳が運んできたんだ。
その人たちのいでたちに、俺は本当になんて言っていいかわからなかった。
「嘘だろ……」と呟くのが精一杯だった。
顔を俯き加減にして、衝立の中に入ってきたのは、"雛人形"だった。
いや、あのね、本物の雛人形じゃないよ。
ちゃんとね、れっきとした大人の女の人だ。
でもね、着てんのが雛人形の衣装みたいなんだ。
十二単っていうの? 何枚も着物を重ね着にして、下は袴。
髪の毛は床に届くぐらい長くてさ。
顔は見えなかった。だってさ、凄いんだよ。重そうなお膳をさ、片手でもって、もう片方の手で扇子開いて顔隠してんだよ。お膳置くとき、手がプルプルしてんの。重けりゃ両手で持てばいいのに。
「何故、顔を隠す?」
俺の疑問を、先に言葉にしたのは佐為だった。
「鬼の子に顔を見せては……」
蚊の鳴くような小さな声で、女の人はそう言った。
「鬼の子ではないと、言ったつもりだが?」
「前髪が……」
「髪は病やなにやらで色が抜けることもあると、薬師が申していたではないか」
「………」
女の人は黙りこむ。
佐為はしばらく睨んでいたけど、ふうってため息ついて、女の人に命じた。
「食事の後に醍醐を持て。水菓子を添えてな」
「お館様も……?」
「私はいらぬ」
女の人は、軽く頭を下げるとみな一斉に席を立った。
後に残ったのは、俺と佐為とコギミという女の子だけだった。
「小君、おまえも怖ければ無理をせずともよいのだぞ」
コギミは首を横に振った。
「小君は、怖くなどございませぬ。なんども汗をお拭きいたしましたもの、角などございませんでした」
はきはきと答える女の子に、佐為は苦笑を見せた。
「小君は賢いのう。女房たちのように頑迷なのは困り者ではあるが、もう少しやわらこう話すがよいぞ」
佐為がそう言うと、女の子は「あ」って、口元を抑えた。
少ししゅんとなって、「あい」と口に中で答える。
元気のなくなった女の子を慰めるように、佐為は優しく頭を撫でてやる。
俺は、そんな遣り取りを呆然と眺めていた。
「さて、暖かいうちに食すとしよう」
佐為は俺のほうに向き直ると、女の子に見せていた優しい表情で言ってくれた。
その表情に励まされ、俺はようやく口を開くことができた。
「ねえ!?」
俺は聞きたいことで一杯だった。
「鬼の子って俺のこと?」
佐為も女の子も目をまん丸に見開いて、俺を見ていた。
「なんで、俺が鬼の子なんだよ? それに、それに…あの女の人たちはなに? なんのコスプレ? なんであんなお雛様みたいなカッコしてんの? ねえ、今はいつ? ここはどこなんだよ!」
一気に喋った。喋ってるうちに、なんだか興奮しちまって、終わりのほうはスンゴイ早口になっていた。
「そなた……、鬼の子といわれて口惜しいのか?」
悔しいとか悔しくないとかそんなことじゃなくて、訳がわかんなくて、なんか混乱してるっていうか。
でも、喚いているうちに、なんとなく状況は理解してて。
これが夢でないなら、これ……そういうことだよね。
漫画やアニメでよく見たやつ。
タイムスリップ?
俺、トラックに轢かれたショックかなんかで、佐為が生きてた時代にタイムスリップしちゃったってことだよね?
「泣くな」
佐為に言われて、俺はガキンチョみたいにうーうー呻きながら泣いていることに、気がついた。
「私と小君は、そなたを人の子と承知しておるゆえ」
「コギミ?」
俺が女の子を見ると、女の子はこくんと頷いた。
「君がずっと世話してくれたんだ?」
大人の女の人たちは、なにしろ俺を鬼の子だと思って怖がってるらしい。近づきもしなかったんだろう。
「ありがとう」
俺がお礼を言うと、女の子は嬉しそうに笑った。
その笑顔に、俺は嬉しくなった。だってね、女の子は笑うとね、塔矢に似てたんだ。
髪型だけじゃなくて、笑顔もね、塔矢に似てた。
「そなたが鬼の子でないというなら、小君のためにも、名前を教えてはくれまいか?」
なぜ俺が名前を教えると、コギミのためになるかはわからなかったけど、進藤ヒカルだって教えてやった。
「光?」
佐為が聞き返すから、俺はそうだと頷いてやった。
すると、佐為は女の子と顔を見合わせてから、突然吹き出したんだ。
「小君、聞いたか。我が家にはなんとも麗しい光の君がおいでじゃ」
「はい。は…い、お館様………」
笑いを修めた佐為の説明によると、最近「光」って名前の、絶世の美貌を誇る貴公子を主人公にした物語が流行ってるんだってさ。
ああ、どうせ! 俺は絶世の美貌でもなけりゃ、貴公子ってガラでもないよ。
だからって、そんなに馬鹿笑いしなくてもいいだろ!
でも、そのおかげで、会話は弾んだ。
「それでは、これからそなたのことを"光君"とお呼びしようか?」
「ヒカルでいい」
和やかな雰囲気の中、俺は出された料理に箸をつけた。
膳には、焼き魚に野菜の煮物にお吸い物、フライドポテトみたいなのもあった。お吸い物には鶏肉みたいのが入ってて、これが一番美味しかった。
全体に薄味だったけど、まずくない。食べられる。
ただ、ご飯がちょっと違う。口にいれたら、モチッていうかネチッとしてて、おこわみたいな感じだった。
あとで聞いたら、蒸してあるんだって。
日本人はずっと米を主食にしてきたって学校で習ったけど、食べ方は時代によっていろいろだったんだろうね。
「シンドウは、どのように書く?」
きれいに箸を使いながら、佐為が尋ねる。
考えてみれば、佐為がモノ食ってんの見るの初めてなんだよね。
俺は、指先で板の間の上にゆっくりと進藤と書いた。書き順が違ってないかとひやひやした。
「進むに藤……で、進藤か。藤の文字を用いるからには、そなたも藤原の一門なのか?」
俺はどうしようかと迷った。
だって、本当のことを言っても、すぐには信じてもらえないよね。っていうか、どう説明したらいいんだろう。
俺は交通事故のショックでタイムスリップしましたって?
交通事故って言葉の説明から始めなきゃいけないよな。
仕方がないんで、嘘をつくことにした。
俺ねえ、誰かさんのおかげで、嘘つくの上手だからさ。
「俺、凄い田舎で生まれて、よくわからない。藤原とは関係ないと思う」
たしか、藤原一族って大貴族だったよな。
ああ、こんなことなら社会もっとちゃんと勉強しておくんだった。
俺いつも佐為に手伝ってもらってさ……。
「ほう、鄙からまいったか。随分変わった衣服を着ているとは思ったが……。
して、何用があって都に上がってまいった?」
俺はゴクって生唾を飲みこんだ。
「碁…だよ」
佐為の傍においてもらえるかどうかは、これから先の「嘘」次第。
そう思うとどうしても緊張する。
「都には、藤原佐為っていう強い碁打ちがいるって聞いた。どうしても弟子にしてもらいたくって、俺……都にきたんだ」
「弟子?」
「うん」
「ひとりでか?」
「うん」
「私は、神の一手を極めんといまだ修行の身、弟子は取らない心積もり」
佐為はきっぱりと言った。
ここで怯むわけにはいかねえ。
だって、俺ここ追い出されたら、行くとこないし。
それ以前に、やっと佐為に会えたんだ。
そりゃ、俺のことを知る前の……、生きてる佐為だけど、やっぱ少しでも長くそばにいたいよ。
俺はね、時代劇で見たのを参考にして、ばっと板の間に下りて土下座をすると、必死になっていったんだ。
「俺! 流行病で父さんも母さんも死んじゃったんだ。天涯孤独の身の上なんだ。
でも、碁が打ちたくて。どうせどこかの家で働いて生きていくなら、藤原佐為の家って決めてきたんだ。俺と打ってよ。
弟子とらないって、最初から決めないで、俺と打ってから決めてよ」
俺は、佐為の返事を待った。
呼吸するのも忘れて、返事を待った。
待っている間、じりじりと身の内が焼け焦げていくような気がした。
打ちたい、打ちたい、打ちたい。
佐為と打ちたい。
どうしても打ちたい。
置いてもらえなくてもいい。
一局だけでもいい。
どうしても、佐為ともう一度打ちたい。
かちゃっと食器がなった。
「顔を上げなさい」
佐為がいった。でも、俺は顔を上げられなかった。
打ってくれると約束してくれるまで、顔は上げられないと思った。
「ヒカル、夕餉を終えたら打ちましょう」
俺は恐る恐る顔を上げた。
佐為は微笑んでいた。
昔……、いつも俺の傍らにあった笑顔。
佐為は、この優しいまなざしで、いつも俺を見守っていてくれた。
俺は、懐かしくて、懐かしくて………胸が一杯だった。
この進藤の一言で俺の何かが外れた。
「進藤、」
「ん?何?」
「お前にとって塔矢アキラって何なんだ。」
「何って…ライバルだよ。うん、今なら自信持ってライバルだって言える。」
「本当に?本当にそれだけなのか?」
「え、う、うん。そうだよ。他に何がある?」
質問の意図が解らない、といった戸惑いの表情を俺にむける。上目遣いで媚びる様な
―――まるで誘っている様な。
勿論進藤は意識なんてしてないだろう。だが、自分のその表情がどれだけ男を煽るか
自覚した方がいい。
腹が立つ。俺以外が見るのは。
特に、塔矢には見せたくない。
「ああ、でもな、塔矢はどう思っているんだろうな。」
「へ?」
「確かにお前は、今は立派に塔矢のライバルとしての棋力ががある。
でも、ライバルってそんな関係か?学校の帰りに一緒に碁会所寄ったり検討しあった
り?違うだろ?和谷がいつも言ってるじゃないか、「先生が塔矢門下を倒せって五月蝿い
んだ〜」ってさ、
普通はそうだよ。俺は森下先生の意見に賛成だ。ライバルは競い合うモノで馴れ合うもの
じゃあない。もっと殺伐とすべきだ。
それなのにお前はどうだ?
塔矢塔矢塔矢塔矢塔矢!!お前の心の中には常に塔矢アキラがいる!ライバル?
それだけなのか?本当に?お前はそう思っていても、塔矢はお前に対してライバルだという
感情だけしか持ってないのか?そう言い切れるか?
俺は?!俺はお前の何だ?!」
右手で間にある碁盤を押しのけ、左手で進藤の肩を押し、カーペットの上に倒す。
鈍い音がし、苦痛に顔を歪める進藤の右手にある扇子を掴み、「なんだよこの扇子は!
座間先生の真似か?!座間先生の真似したって塔矢には勝てないぞ!!」
「違ッ」
1000ゲトー
プチの小説と被ってるが、コレだけは外せない事情があるんだ。スマソ。
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もう書けないので、新しいスレッドを立ててくださいです。。。