●おまえら男ならヒカルたんハァハァだよな?part2●
ヒカルが慌ててかがもうとする前に給仕が業務的に素早く拾いあげ立ち去る。
「何やってんだよ進…、あれ!?、塔矢アキラじゃねーか!」
和谷もステージの方を見て驚いたようだった。
「珍しいな、塔矢門下って独特っていうか、こういう派手な場所にはあまり
出て来ないって聞いてたけど…。」
進行役が華々しいアキラの戦績を紹介する。確かにアキラはあまり居心地の
良さそうな顔はしていない。どちらかといえば、魂が半分抜けているような、
そんなふうに見えた。でもそれはヒカルの希望的な感想かもしれない。
ただ、こうして何かある毎に自分とアキラの距離を感じさせられる。
囲碁の力ならいつか必ず追い付く。追い抜いてみせる。
でもそうじゃない何かが、まだ自分とアキラを隔てている。
同じ空間にいながら、そう感じてしまう。
ようやくステージ上から解放されたアキラが会場の方に視線を向けた。
ヒカルは何気なく人垣の影に入って隠れ、アキラの様子を見ていた。
…自分に気が付くはずはない。こんなところにオレが来ているなんて、
思ってもいないはずだ。
アキラは2人の男性に呼び止められしきりに何か話し掛けられていた。
一人は協会の人っぽかったがもう一人は酒のグラスを片手に馴れ馴れしく
アキラの肩に手を置いたり背中をポンポンと何度も叩いたりしている。
「あのスケベそうな中年、出版関係の奴だよ。塔矢アキラに本でも書かせる
つもりかもな。…ま、オレ達には関係ないか。」
そう言って和谷は別のテーブルへ移動していった。
グラスを持った男の片手が、何かを払うようにアキラの腰に触れた。
それを見たヒカルは背中に火が走るようにカッと熱くなるのを感じた。