●おまえら男ならヒカルたんハァハァだよな?part2●

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896失着点・境界編
「パーティー…?」
ピンと来なくて気のない聞き返し方をする。
「以前2冠とか取ってた人で、今度戦後の棋譜選集とか出したらしくて、
その人のキジュの誕生日祝いとか何とかを兼ねた出版記念…だっけ。
森下先生に『お前も顔出しとけ』って言われちゃって…。『進藤も連れ来い』
ってさ。」
あまり面白みがありそうとは思えなかったが、最近和谷とつるむ機会もあまり
なかったし、気分が少しは変えられるかと思った。
「わかった。行くよ。」
ゆうべあれからアキラから特に電話もなかったし、こちらからする気も
なかった。
パーティー会場は都内でも有名なホテルの大広間だった。
スーツを着て来るようにとは言われていたが、公共施設とかでのお年寄りの
寄り合いのお誕生日会みたいなものを想像していたヒカルは少し気が引けた。
華やかなシャンデリアの下、森下先生のお知り合いに一通りの挨拶を
させられた後、囲碁界の他にもいろんな業界人らしき人物らが
お祝いの言葉を述べているステージから遠く離れた場所で、ヒカルと和谷は
もっぱら口にする料理を選ぶ事に専念していた。
そしてパーティーの主役が花束を受け取るセレモニーが始まった時、
ヒカルは何気なくそちらの方を見て、手にとったばかりの皿を落とした。
若い女流棋士と供に塔矢アキラが花を持って現れたのだ。