●おまえら男ならヒカルたんハァハァだよな?part2●
鍵さえ開けてしまえば後はこっちのものとばかりに加賀は勢いをつけて窓枠に飛び乗った。
瞬間左の手のひらに鋭い痛みが走ったが、加賀は躊躇うことなく侵入し、
暗い内部を愛用の100円ライターで照らした。
最初に目に入ったのは、使い道のなさそうな木材の山だった。
その横には折りたたみ式のテーブルとパイプ椅子が3つ。
後ろの壁には十年以上も前のカレンダーが掛けられたまま放置されていた。
反対側を照らすとダンボール箱が2つ置いてあり、左側の方には巨大なネジが、
右側には用途不明の金具が無造作に詰め込まれていた。
備え付けの棚にあるのは作業用のヘルメットと埃をかぶったスプレー缶だけ。
その下には透明なゴミ袋に包まれた年代モノの石油ストーブがあった。
「さーて、どうしたもんかな」
すぐに妙案は浮かばず、加賀はポケットに手を入れ所持品を確認する。
ジーンズの前ポケットには将棋の駒が数個入っていた。
将棋部の後輩と対局し、負けた相手の王将をそのまま持ち帰ってきてしまったのだ。
「いっけね…酒が入るとついやっちまうんだよ」
胸ポケットにはタバコ、ジーンズの尻には財布。
「あれ、なんだこれ?」
皮ジャンのポケットに入っていたのは、カラオケボックスで飲んだカクテルの瓶だった。
もちろん中身などとっくに飲んでしまって空っぽの状態だ。
こんなものを何故大事にしまい込んでいたのだろう?
その理由は加賀自身にもよくわからない。それだけ酔っ払っていたという事だろうか。
「…これは使えるかもな……」
加賀は気持ちを落ち着かせるため、タバコに火を点けた。