●おまえら男ならヒカルたんハァハァだよな?part2●
「…あいつら、好き放題やってやがる」
加賀は忌々しげに舌打ちした。怒りのあまり、角材を握る手にも力が篭もる。
ヒカルを助けようと何度も物置小屋の影から出て行きかけた。
だが、相手は5人。多勢に無勢で返り討ちに合うのがオチだとなんとか思い留まった。
「助けに行ってボコられたらカッコわりィしな。元々勝てないケンカにゃ
首突っ込まない主義なんだよ、オレ様は」
どう冷静に考えてみても今の加賀に勝ち目はない。
見張りの2人は下っ端の雑魚だろうが、ヒカルを押さえつけている3人は
腕っ節の強いことで有名なチンピラどもだ。
「こんな棒っきれだけじゃまず無理だな。ちくしょう、他になんかねぇかな…」
小屋の後ろ側に回り込んだ加賀は、換気用のガラス窓に目を付けた。
もしかしたら鍵が開いているかもしれないと試しに手を掛けてみたが、
加賀の期待も空しく、その窓はしっかりと施錠されていた。
──チッ。ここはダメか。
諦めかけたその時。
前の道路を、一台のバイクが騒音を撒き散らしながら走って来るのが見えた。
見張りの2人は奥で行われている悪事が道路から見えないよう、さりげなく体で壁を作る。
──ラッキー。
加賀は近づいてくるバイクの音に合わせて、窓ガラスに石をぶつけた。
小気味良い音が響いたような気がしたが、どうやら巧い事騒音にかき消されたらしい。
誰も気付いていない事を目で確認すると、加賀は割れたガラスの隙間から手を差し込み、
慎重に鍵を回した。