●おまえら男ならヒカルたんハァハァだよな?part2●

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798失着点・境界編
寿司折りの一つを持っていくよう芦原が勧めるのを断って、ヒカルは
アパートを出た。
「気をつけて帰りなよ。」
心配そうに玄関で見送る芦原とは対照的にキッチンの奥でアキラはコンロの
前に立つ。そして声が出ないように口の中でつぶやいた。
「…ごめん…、進藤…。」
帰りの地下鉄の中でヒカルはドア際に立ちの窓の暗闇を睨み続けていた。
あの部屋で誰かと居合わせたのは初めてだった。
碁会所や、棋院会館で他の誰かと一緒にアキラと向かうのとは違う。
あの部屋であれだけ深く激しく結びつき合い、ついさっきまでもああいう
行為をしていた。
そこに侵入者を、他の誰かを普通に招き入れる事ができるアキラが、
やはりヒカルにとっての常識を超える人種に思えた。
自分はアキラのものになってしまっている。悔しいけど。
でも自分はアキラを完全に自分のものにしきっていない。
そんなふうに感じた。
あの時、アキラに呼び止めてもらいたかった。
芦原がいるのもかまわず、自分の腕を掴んで部屋の中に連れ戻し
首筋にキスをねだるアキラの姿を願ったのだ。
そうすれば自分だって骨が軋む程アキラを抱き締めて芦原を睨み返す事が
できた。これでわかっただろう、気安くここへ足を踏み入れるな、と…
「…どうかしている。」
電車は暗闇の中を走りつ続ける。一つの方向へ。