●おまえら男ならヒカルたんハァハァだよな?part2●
「伊角さん、どうしたんだよ?」
老人をおぶり、公園の前を横切ろうとした伊角をベンチでコーラを飲んでいた和屋が呼び止めた。
「お爺さん、ぎっくり腰だって。あっちの信号で車に轢かれそうになって。家、すぐ傍だって言うし、家まで送ってあげようと思って」
「へえ。・・あれ?」「おお、和屋君か!」「進藤の爺ちゃ・・お爺さんじゃん!」驚いた和屋に伊角も小さく笑った。
「ジイちゃん!まったくも−っ!年なんだからタクシー拾って来いっての!ホントにごめんな、和屋、伊角さん」
ヒカルは困った顔をして祖父を家に担ごうしてよろける。
「イイよ、進藤。このまま部屋まで運ぶから」「ごめん」ヒカルは伊角を誘導し、和室に布団をひき寝かせる。
「元気そうじゃん、進藤」和屋が冷蔵庫を開けてジュースを出そうとするヒカルに言った。
「オレはいつだって元気だよ」「嘘つけ!いくらお前、早打ち得意だっていっても、昨日の対局何だよ」
「あ・・足、ちょっと捻ったみたいでさ!あんま座ってられなくて」「足ぃ?」「もう大丈夫。みんな今日はオフなんだ」
「ああ、・・・そうだ、進藤、伊角さん、今夜オレんちこない?もんじゃ大会しようぜ!ハハ。進藤、伊角さんてもんじゃ食った事ないんだってさ!」
「ええっマジ?」「そんなに驚く事か?」「食わせてやろうぜ進藤、スペシャルもんじゃ!ベビースターかってこなきゃ」
「ええ、それお菓子いれるのか?和屋!?」「スゲ―!食ってみてぇ!」「じゃあ決まりだな、来いよ」ヒカルがはしゃぐ。
和屋はホッとした。最近元気がなくて、またいつぞやのスランプ再びかと思ったら、どうやら違うみたいだ。
少し足を引きずりながら、ヒカルが鞄を取ってきた。
「本当に、足大丈夫か?転んだのか?お前いつも慌しいからなぁ」「和屋に言われたくないやい!」ヒカルは膨れて、また笑った。
伊角は黙って遠慮するヒカルの鞄を持ち、三人は和屋のアパートに向かった。