●おまえら男ならヒカルたんハァハァだよな?part2●
残されたヒカルは左の頬を両手で押さえたまま、長い間その場に立ち尽くしていた。
触れられた頬が痺れるように熱い。まるでアキラの熱が飛び火したかのように
ジンジンと疼き、それと呼応するように脈も速くなっていく。
アキラの懐かしい温もりにヒカルの胸は締め付けられた。
何かを確かめるように触れてきたアキラの手。
それが実は待ちわびていた感触なのだと気付き、ヒカルはひどく戸惑う。
いままでアキラを避けてきたのは、指一本触れられたくなかったからだ。
触れられればきっと、嫌でも思い出してしまう。
みっともない痴態を演じた、あの日の自分を。
そう思っていたのに、今はアキラの悲しげな表情が脳裏に焼き付いて離れない。
振り切るように、ヒカルはエレベーターに飛び乗った。
「…初めて見た…アイツのあんな顔」
ヒカルは古いエレベーターの壁に、握り締めた両手を強く叩きつけた。
そしてうなだれたまま低く呟く。
「──アイツにあんな顔をさせたの、オレじゃねェか…」