●おまえら男ならヒカルたんハァハァだよな?part2●

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531失楽園
――アキラくんは、オマエを満足させられたか?
緒方に喉の奥で笑いながら問われ、ヒカルはギクリと身体を震わせた。
「………」
ヒカルは一度小さく口を開き、だが言葉を紡ぐことは適わなかった。
アキラの存在は未だヒカルの最奥でジクジクと燻りつづけている。
「まァ、オマエもアキラくんを満足させられはしないだろうから、お子様同士
せいぜい乳繰り合って楽しむんだな」
ヒカルは首を振った。この男の言うことは訳が判らない。
満足したとか、させたとか、あの時の行為はそういう次元の問題ではなかった。
立ちすくむヒカルを一瞥すると、緒方は興味を無くしたように肩を竦め
備え付けの灰皿に煙草を捻じ込んだ。磨き抜かれた革靴を鳴らしてヒカルに
背を向ける。
「――ああ進藤。一つアドバイスをしてやろうか」
…と、緒方は立ち止まり、ヒカルを振り返った。
「いらねェよっ」
緒方の言葉は、悪い毒を孕んでいるような気がしてならない。ただでさえ混乱した
自分たちの関係が更に思ってもみなかった方向へ行くような――そんな予感に、
ヒカルは両手で自分の耳を必死に押さえた。
「まぁそう言うな。アキラくんは背中が弱い。特に左側を攻めてやれ。……ただし、」
緒方は口の端を僅かに上げ、色素が極端に薄い瞳でヒカルを見据えた。
「…アキラくんの後ろに触れていいのはオレだけだ」
その瞬間、緒方の視線に心臓を射抜かれたかと思った。