●おまえら男ならヒカルたんハァハァだよな?part2●

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474敗着
車のクラクションと人のざわめき。
俯いてのろのろと歩を進める慣れた道順。
一呼吸おいて駅ビルの看板を見上げる。
(ったく、どんな顔して行けばいいんだよ・・・。)
ポケットの中で鍵をチャラチャラといじりながらヒカルは迷っていた。
今日こそは、今日こそはと思いつつ日が経ってしまった。
かといって、
「いきなりここは、なあ。」と呟き鍵をぎゅっと握る。
「何やってるんだ?」
いきなり声を掛けられびくりとし、振り返ると緒方十段が立っていた。
「あ・・・、緒方、先生・・・。」
一瞬ヒカルの脳裏にアキラの眼差しが映る。
「碁会所に行くんじゃないのか?」
「あ、いや、今日は、その」
とヒカルが言い澱んでいると、何かを察した様に緒方が目を向けた。
「それとも、別の所か?」
と言って見たのは塔矢の部屋がある方向だった。
この人は、やっぱり塔矢と・・・。
知らず目つきが険しくなったヒカルをせせら笑うかのように緒方は
「・・・俺と来るか?」
真っ直ぐにヒカルに向き直り訊いてきた。
「え・・・?」
「近くに車を停めてある。どうする?」
ヒカルはぎゅっとバックパックの肩紐を握りしめ、無言のままでいた。
(緒方先生は、塔矢と)
訊いてみたいことは山のようにあった。
「フン」
緒方は鼻で笑い勝手に歩き出した。
一瞬躊躇したヒカルは、だがしかし、緒方の背中を追いかけた。