●おまえら男ならヒカルたんハァハァだよな?part2●

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205失楽園
いつもの何倍も時間をかけ、ヒカルは日本棋院の自動ドアを潜った。
「いてててて…。塔矢のヤツ、好き放題やりやがって……!」
言葉でアキラを詰りながらも、どうしてもアキラを憎むことはできない。
あれはアキラだけの責任ではなかった。自分も夢中でアキラを求めていた。
あのとき、昇りつめた瞬間に2人で共有した快感をヒカルは忘れるつもりはなかった。
「…どうかしたのか?」
不意に横から声を掛けられ、ヒカルはビクリと背筋を伸ばした。
途端に強い痛みが局部から脳天まで突き抜ける。
「イテッ」
「オイオイ、大丈夫か?」
腰を庇うために思わず屈んだヒカルの前に立った緒方九段は、自販機で買ったらしい
煙草のパッケージを破り、1本を口に銜えた。ヒカルの視線は緒方の右手に吸い寄せられる。
その目が覚めるほどの鮮やかな赤に、ヒカルは覚えがあった。
「その煙草…」
「ん?」
緒方は首を傾げて続きを促し、ライターで火を点ける。深く吸い、アキラよりも
数倍はサマになる仕種で煙を吐き出した。
「塔矢のウチにもあった。」
「ああ。この間オレがアキラくんのアパートに忘れていったからな。」
ねっとりとした笑みを浮かべ、緒方はヒカルを頭から爪先までを視線でじっくりと検分した。
「……な、なんですかっ」
「ふうん…。アキラくんは、オマエを満足させられたか?」